(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部は、観察領域内の血流速度分布の表示に加え、さらに、最低の中心周波数の超音波の送受波により得られた受信信号に基づく算出が可能な血流の最高速度まで延びた、血流速度と色との対応関係を表わすカラースケールを表示するものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記送信部は、前記プローブに、中心周波数に応じて被検体内の異なる深さに焦点を結ぶ超音波ビームを送波させるバースト波信号を送信するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
前記送信部は、前記プローブに、1種類のバースト波信号について連続して複数回ずつ、前記複数種類のバースト波信号について順次に、送信するものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
前記送信部は、前記プローブへの、前記複数種類のバースト波信号の送信を、1種類のバースト波信号について1回ずつ循環的に複数サイクルに渡って繰り返すものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【背景技術】
【0002】
被検体、とりわけ人体の内部の画像を写し出す装置の1つとして、超音波を送受信して得た受信信号に基づいて画像を表示する超音波診断装置が知られている。その超音波診断装置には、通常、受信信号に基づいて被検体内の観察領域内の血流分布をカラー表示する機能が備えられている。
【0003】
この超音波診断装置では、電圧印加を受けて振動して超音波を送波し、また超音波による振動を受けて電圧信号を発生する超音波振動子が多数個配列された超音波探触子を備えたプローブが使われる。このプローブの超音波探触子を被検体の体表に宛てがい、超音波探触子を構成している多数個の超音波振動子のそれぞれに、所定の遅延パターンに従ってそれぞれ遅延された、中心周波数f
0の複数のパルスからなるバースト波信号を印加する。すると、その超音波探触子から被検体内に、中心周波数f
0の、所定の深さ位置に焦点を結ぶ超音波ビームが所定の方向に送波される。そしてその反射超音波を、超音波探触子を構成する複数の超音波振動子のそれぞれでピックアップして複数の信号を得、それら複数の信号を所定の遅延パターンに従ってそれぞれ遅延させて互いに加算する。これにより、被検体内に延びる超音波ビームを表わす、RF信号としての受信信号が得られる。この超音波送受信が複数回繰り返され、その間の超音波のドプラ遷移による位相の変化Φ(t)が求められて、その位相の変化Φ(t)と中心周波数f
0とから、
【0004】
【数1】
【0005】
但し、Tは送受信の繰返し周期
Cは音速
V
d(t)は超音波ビーム方向のドプラ速度(血流速度)
tは時刻
である。
が算出される。そして、観察領域内の各点の速度V
dを、通常は体表に近づく向きの血流が赤、遠ざかる向きの血流が青で、かつV
dの大きさを色の輝度で表現する。
【0006】
ここで、上記の構成において、パルスの中心周波数f
0は一定のため、被検体内のある深度範囲内の血流速度を検出しようとしたとき、超音波送受信の繰返し周波数PRF=1/T(Tは繰返し周期)に応じて、計測できる最大速度Vmaxが制限される。繰返し周波数PRFが高いほど速い血流まで検出できるが、血流速度を表示することのできる観察領域の深度が浅くなる。これは、超音波を送波しその超音波が戻ってきて受波が終ってからでないと次の送波ができないためである。
【0007】
また、血流速度を算出するにあたっては、血流以外の、臓器等の動きに起因する成分を除去するためにMTIフィルタが用いられて低周波数成分がカットされる。繰返し周波数PRFが高いとそのMTIフィルタのカットオフ周波数も高く、検出可能な最低の血流速度が高くなり、これが問題となる場合もある。
【0008】
血流によるドプラ遷移は、血液中の多数の赤血球等での超音波の反射に起因するが、多数の赤血球等によるランダムな散乱反射により、いわゆるスペックルノイズが発生し、これにより弱め合う干渉が発生した点においては受信信号が弱まって、算出される位相の変化が激しく、分散が大きく、速度が正確に求められなくなるケースが頻繁に発生する。
【0009】
特許文献1には、2つの周波数の超音波を送受信して位相差を補正する提案がなされている。しかながら、上記の(1)式に基づく血流速度Vd(t)を算出するには、中心周波数f
0で割り算する必要があるにも拘わらず、2つ存在する中心周波数をどのように使って血流速度を算出するのか不明である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
ここでは先ず、比較例として、従来の典型的な超音波診断装置について説明し、それに続いて、本発明の一実施形態の超音波診断装置を説明する。
【0025】
図1は、従来の一例としての超音波診断装置の構成を表わすブロック図である。
【0026】
この超音波診断装置1Aには、プローブ10と、送信部11と、受信部12と、制御部13が設けられている。
【0027】
プローブ10には、多数の超音波振動子が配列された超音波探触子(不図示)が備えられている。その超音波探触子が、被検体としての人体の体表に宛がわれる。
【0028】
送信部11はパルス信号を生成し、プローブ10の超音波探触子を構成する多数の超音波振動子それぞれに向けてパルス信号を送信する。このパルス信号は、1つのパルス信号につき、中心周波数f
0であって長さが複数波長のバースト信号である。この生成されたバースト波信号は、人体内の超音波ビームの延びる向き、およびその超音波ビームの焦点の深さに応じて定められる遅延パターンに従ってそれぞれ遅延されて、各超音波振動子に印加される。すると、それら多数の超音波振動子それぞれから超音波が送波され、それらの超音波の干渉作用により、所望の向きに延び、かつ所望の深さ位置に焦点を持つ超音波ビームが人体内に送り込まれる。人体内に送り込まれた超音波ビームは、その超音波ビームが人体内の浅い位置から深い位置へと進むに従って人体内の各深さ位置で反射されて超音波探触子に戻り、多数の超音波振動子のそれぞれで受波される。したがってこの受波により得られる信号は、時間軸が超音波探触子からの人体内の深さに対応している。
【0029】
受信部12では、それら多数の超音波振動子での受波により、各超音波振動子で得られた信号を、これも人体内において超音波ビームの延びる向きや焦点の深さ等に応じた遅延パターンに従ってそれぞれ遅延させて互いに加算する。こうすることにより、人体内を所望の向きに延びる超音波ビームを表わす、RF(Radio Frequency)信号としての受信信号が生成される。この受信部12で生成された受信信号は、Bモード処理部14とMTIフィルタ15に入力される。
【0030】
制御部13は、送信部11からのバースト波信号の送信タイミングや、受信部12での受信タイミングを制御する。また制御部13は、この他にも、この超音波診断装置1Aの動作全体の制御を担っている。
【0031】
表示部19にBモード像、すなわち人体内の超音波反射率分布に基づく画像を表示するときは、送信部11では、プローブ10から人体内に向けて、人体内の観察領域内において順次に向きの異なる超音波ビームが送波されるように、順次異なる遅延パターンに基づいて遅延させたバースト波信号がプローブ10に送信される。受信部12でも同様に、その超音波ビームが送波された向きの超音波ビームが生成されるように遅延加算される。
【0032】
受信部12でこのようにして得られた受信信号は、Bモード処理部14に入力されてBモード用の画像処理が施され、座標変換部17に入力される。
【0033】
受信部12で得られる受信信号は、各超音波ビームに沿う深さ方向を時間軸とする信号である。これに対して、表示部19では、ラスタスキャンの向きに並ぶピクセルデータからなる画像信号に基づいて画像が表示される。そこで、座標変換部17では、Bモード処理部14から入力されてきた信号が表示部19での表示に適したピクセルデータの配列からなる信号に変換される。
【0034】
この座標変換部17から出力された信号は画像合成部18に入力される。この画像合成部18では、Bモード像と人体内の血流を表わすカラードプラ画像を合成する。人体内の血流を表わすカラードプラ画像は、通常は、Bモード像に重ねて表示される。カラードプラ画像を表示することなく、Bモード像のみ表示することもある。
【0035】
この画像合成部18で合成された画像は表示部19に入力され、図示しない表示画面上に画像が表示され、診断に供される。
【0036】
また、人体内の血流を表わすカラードプラ画像を表示させるときは、上記のBモード像の生成に加えて以下の処理が行われる。
【0037】
プローブ10からは人体内の同一の向きに延びる超音波ビームが複数回(例えば8回)送波され、かつプローブ10で受波されるように、送信部11によるバースト波信号の遅延、受信部12での遅延加算が行われる。
【0038】
この人体内の同一の向きへの送受信が、観察領域内に延びる超音波ビームの各向きそれぞれについて行われる。
【0039】
このようにして得られた受信信号はMTIフィルタ15に入力される。MTIフィルタ15はハイパスフィルタの一種であり、ここでは血流のドプラ遷移に起因する成分が通過され、臓器等の動きに起因する成分がカットされる。
【0040】
MTIフィルタ15を通過した後の受信信号は、カラードプラ処理部16に入力される。このカラードプラ処理部16では入力されてきた受信信号の複素自己相関が算出され、その複素自己相関から位相差が算出され、その位相差に基づいて血流速度等が算出される。この血流速度等は、超音波ビーム上の各点ごとに行われる。超音波ビームは観察領域内で順次向きを変えるため、観察領域内の2次元的な各点について血流速度等が算出される。この算出された血流速度等を表わすデータは座標変換部17に入力されて座標変換を受け、画像合成部18においてBモード像に重ねられる。そして表示部19でBモード像に重ねられた血流分布が表示される。この血流分布は、通常は、プローブ10の、体表に宛てがわれている超音波探触子に向かう向きの血流が赤、遠ざかる向きの血流が青で表示される。さらに血流の速度が、赤あるいは青の色の輝度で表示される。このようにして、観察領域内の血流分布が表示されて診断に供される。
【0041】
以下、このカラードプラ処理部16での処理を説明する。
【0042】
図2は、複数回(ここではN回)の超音波ビームを送波するときに送信部で生成されるパルス信号送受信間隔の模式図である。
【0043】
ここでは、パルス信号1,2,…,N−1,NからなるN個のパルス信号が示されている。この図では、パルス信号が単純化されて示されているが、パルス信号1つずつが、中心周波数f
0であって長さが複数波長のバースト信号である。ここでは、パルス信号の繰返し周期をT、繰返し周波数をPRFと称する。T=1/PRFの関係にある。
【0044】
送信部11でこの
図2に模式的に示すパルス信号がプローブ10に同一の遅延パターンで送信されたときの受信部12で受信されさらにMTIフィルタ15を経由してカラードプラ処理部16に入力されてきた受信信号は、
【0046】
但し、S(n,t)はMTIフィルタからの出力信号
nは、送受信信号の番号であって、
図2に示す、n=1,2,…,N−1,N
tは、各受信信号ごとの基準時刻からの時間
A(n,t)は、振幅
e
jθ(n,t)は、位相
jは、虚数単位
I(n,t)は、実部
Q(n,t)は、虚部
である。
【0047】
カラードプラ処理部16では、この受信信号S(n,t)の複素自己相関
【0049】
但し、*は複素共役を表わす。
が算出される。この複素自己相関R(1,t)の実部Reと虚部Imは、以下の通りとなる。
【0052】
カラードプラ処理部16では、さらにこの複素自己相関から位相差
【0055】
この位相差Φ(t)と、ドプラ角周波数ω
d(t)、ドプラ周波数f
d(t)は、
【0060】
但し、Cは音速である。
から分かるように、ドプラ周波数f
dは、送信周波数f
0に比例する。これらの関係から、血流速度、すなわち超音波ビーム方向のドプラ速度、V
d(t)が、
【0063】
さらに、カラードプラ処理部16では、血流のパワーPower(t)、および分散Var(t)を算出することもできる。血流のパワーPower(t)、および分散Var(t)は、それぞれ
【0067】
図3は、表示部で観察領域内の血流分布が表示される際に一緒に表示されるカラースケールの一例を示した図である。
【0068】
この
図3に示すV
dmaxは、カラードプラ処理部16で算出可能な最高の血流速度のうち、超音波ビームに沿って体表に近づく向上に流れる血流の最高速度である。また、−V
dmaxは、超音波ビームに沿って体表から離れる向きに流れる血流の最高速度である。
【0069】
したがって、このカラースケールは、中央よりも上の半分が赤色、下の半分が青色であって、かつ中央から離れるほど高輝度となっている。観察領域内の各点の血流速度は、このカラースケールに対応させ、その点の血流速度と向きに応じた色と輝度で表示される。
【0070】
ここで、このカラードプラ処理部16で求めることが可能な算出可能速度範囲について考察する。
【0071】
位相差Φ(t)は、上記の(6)式に従って算出される。したがって、この位相差Φ(t)は、
【0073】
の制限を受ける。したがって最高のドプラ周波数f
dmaxは、
【0075】
となる。ここで、Tは、送受信の繰返し周期、PRFは、送受信の繰返し周波数(
図2参照)である。
【0078】
の制限を受ける。ここでDepthは観察領域の最高深さ、Cは音速である。超音波は音速Cで人体内を進み反射して音速Cで戻ってくる。したがって送受信の繰返し周波数PRFが高いと、観察可能な深度Depthが浅くなることを意味する。このことから、算出可能な最高速度V
dmaxは、
【0080】
となる。この(16)式は、送受信の繰返し周波数PRFに応じて、すなわち観察の深さDepthに応じて、最高速度V
dmaxが制限されることを意味している。
【0081】
次に、算出可能な最低速度V
dminについて考察する。
【0085】
ここで、fcutoffは、MTIフィルタ15のカットオフ周波数である。このMTIフィルタ15のカットオフ周波数は、通常、送受信の繰返し周波数PRFの一定のパーセンテージK%
で決められる。したがって、(17)式は、
【0088】
このように、最高速度V
dmax、最低速度V
dminが送受信の繰返し周波数PRFに応じて制限を受け、人体内の深い点を観察しようとすると、繰返し周波数PRFを下げる必要があり、高速の血流を測定することができないことになる。一方、繰返し周波数PRFを上げると、今度は、(18)式から分かるように最低速度V
dminが上がり、低速の血流を観察できないことになる。
【0089】
次に、
図1に示す超音波診断装置1Aが抱えているもう1つの問題点について説明する。
【0090】
血流速度は血液中の多数の赤血球等で超音波が反射する際のドプラ遷移に基づいて算出されるが、多数の赤血球等での散乱反射によりスペックルノイズが発生し、干渉によって受信信号が弱まる箇所が生じる。受信信号が弱まると、算出される位相差が激しく変動し、血流速度が正しく算出されないケースが頻繁に発生する。
【0091】
図4は、受信信号の一例とその受信信号に基づいて算出された血流速度を示した図である。
図4(A)、
図4(B)のいずれについても、横軸は時間軸、すなわち人体の深さに対応する軸である。
図4(A)の縦軸は受信信号の振幅、
図4(B)の縦軸は血流速度である。
【0092】
図4(A)には、2つの受信信号がほぼ重なるようにして示されている。ここでは、2つの受信信号どうしの区別は不要であり、振幅の大小のイメージで十分である。
【0093】
図4(A)に示す受信信号には、受信信号が弱まった領域a,bが存在し、
図4(B)に示す血流速度は、その領域a,bについて、特に領域aについて、大きく変動している。これは、スペックルノイズにより誤って算出された血流速度である。
【0094】
以上の比較例としての超音波診断装置の説明を踏まえ、次に本発明の一実施形態の超音波診断装置について説明する。
【0095】
図5は、本発明の一実施形態としての超音波診断装置の構成を表わすブロック図である。この
図5において、
図1に示す比較例としての超音波診断装置1Aの構成要素と同一の構成要素には、
図1に付した符号と同一の符号を付して示す。またここでは、前述の比較例との相違点について説明する。
【0096】
この
図5に示す超音波診断装置1Bには、2つのMTIフィルタ15_1,15_2と2つのカラードプラ処理部16_1,16_2と、合成部20が備えられている。2つのカラードプラ処理部16_1,16_2は、本発明にいう1次算出部の一例に相当し、合成部20は、本発明にいう2次算出部の一例に相当する。
【0097】
図6は、送信部から送信されるバースト波信号の送信タイミングを示した図である。
【0098】
ここではある深度までの血流速度を検出するために、必要なPRFを定めてそのPRFに固定する。比較例(
図1)で採用されている送信周波数f
0を用いる場合より更に速い血流速度を検出するため、ここでは、その送信周波数f
0より低い第1周波数f
1、ここではf
1=(2/3)f
0のバースト波信号を送信する。また送信周波数f
0を用いる場合より更に遅い血流速度を検出するため、その送信周波数f
0より高い第2周波数f
2、ここではf
2=(4/3)f
0を送信する。
【0099】
図6(A)は、1つの送信方式を示しており、ここでは、送信周波数f
1のバースト波信号の送信が繰り返された後、送信周波数f
2のバースト波信号の送信が繰り返されている。
【0100】
また
図6(B)では、送信周波数f
1のバースト波信号と送信周波数f
2のバースト波信号が交互に繰り返し送信されている。
【0101】
図6(A)、
図6(B)のいずれの送信方式の場合であっても、送信周波数f
1のときの受信信号はMTIフィルタ15_1に入力され、送信周波数f
1に応じたフィルタリングが行われてカラードプラ処理部16_1に入力される。これと同様に、送信周波数f
2のときの受信信号はMTIフィルタ15_2に入力され、送信周波数f
2に応じたフィルタリングが行われてカラードプラ処理部16_2に入力される。
【0102】
カラードプラ処理部16_1では、送信周波数f
1の受信信号から、血流速度V
d1が
【0104】
により算出される。但し、f
d1はドプラ周波数である。
【0105】
このカラードプラ処理部16_1で算出される最大、最小血流速度は、
【0108】
但し、V
dmax1,V
dmin1は、送信周波数f
1の場合の最大、最小血流速度、
V
dmax,V
dminは、送信周波数f
0の場合の最大、最小血流速度、K
0,K
1は、送信周波数がそれぞれf
0,f
1のときの、MTIフィルタのカットオフ周波数を定める各パーセンテージ((18)式参照)である。
【0109】
また、これと同様に、もう1つのカラードプラ処理部16_2では送信周波数f
2の受信信号から、血流速度V
d2が、
【0111】
により算出される。但し、f
d2はドプラ周波数である。
【0112】
このカラードプラ処理部16_2で算出される最大、最小血流速度は、
【0115】
但し、V
dmax2,V
dmin2は、送信周波数f
2の場合の最大、最小血流速度、
V
dmax,V
dminは、送信周波数f
0の場合の最大、最小血流速度、K
0,K
2は、送信周波数がそれぞれf
0,f
2のときの、MTIフィルタのカットオフ周波数を定める各パーセンテージ((18)式参照)である。
【0116】
図7は、2つのカラードプラ処理部で算出可能な血流速度の範囲を示した図である。
【0117】
図7(A)は、送信周波数f
1=(2/3)・f
0のときの受信信号に基づく算出可能な血流速度の範囲を示しており、
図7(B)は送信周波数f
2=(4/3)・f
0のときの受信信号に基づく算出可能な血流速度の範囲を示している。
【0118】
さらに
図7(C)は、送信周波数f
0(f
1<f
0<f
2)のときの受信信号に基づく算出可能な血流速度の範囲を示している。
【0119】
図5に示す合成部20では、2つのカラードプラ処理部16_1,16_2で算出された血流速度の算出値に基づき、以下の演算により最終的な血流速度が算出される。
【0120】
血流速度の算出値が血流速度領域R1の範囲内にあるときは、カラードプラ処理部16_1の算出値、すなわち、血流速度V
d、パワーPower、および分散Varとして、
V
d=V
d1
Power=Power1
Var=Var1
但し、V
d1,Power1,Var1は、送信周波数f
1のときの受信信号から 算出される血流速度、パワー、および分散である。
が採用される。
【0121】
また、血流速度の算出値が血流速度領域R2の領域内にあるときは、カラードプラ処理部16_2の算出値、すなわち、
V
d=V
d2
Power=Power2
Var=Var2
但し、V
d2、Power2、Var2は、送信周波数f
2のときの受信信号から算出される血流速度、パワー、分散である。
が採用される。
【0122】
また、血流速度の算出値が、血流速度領域R0の領域内にあるときは、2つのカラードプラ処理部16_1、16_2の双方での算出が可能であるので、双方での算出値の平均値
【0124】
が算出され、この平均値としての血流速度、パワー、分散が採用される。
【0125】
このように、本実施形態では2つの送信周波数f
1,f
2を採用していることで血流速度の算出可能範囲が広がっている。すなわち、
図5に示す超音波診断装置1Bでの算出可能最大、最小血流速度V
ndmax,V
ndminは、
【0127】
となる。但し、ここでは、2つのMTIファイル15_1,15_2それぞれにおけるカットオフ周波数を定める、繰り返し周波数PRFの割合K
1(%),K
2(%)は、いずれも、K
1=K
2=K
0((18)式参照)とし、
図1の超音波診断装置1Aにおける割合K
0(%)に揃えている。
【0128】
このように、本実施形態によれば、観察可能な最大、最小血流速度の範囲を広げることができる。
【0129】
尚、ここでは、K
1=K
2=K
0としているが、表示された画像を観察した結果クラッタ成分が少ないと判断されるときには、さらに遅い血流も検出できるようにもK
1とK
2を別々に設定してもよい。
【0130】
また、血流速度の検出精度とカラードプラ画像の分解能はトレードオフの関係にあるが、本実施形態の超音波診断装置1Bでは、送信周波数f
1,f
2を切り替えて用いるため、
図1に示す超音波診断装置1Aのように単一の送信周波数f
0を採用した場合と比べ、そのトレードオフが緩和され、検出速度や分解能が向上する。
【0131】
さらに、本実施形態の場合、複数の中心周波数の超音波ビームを繰り返し送波するため、S/Nが高く、異なる中心周波数の超音波パルス受波で検出されるドプラ速度の加算平均により、多数の赤血球からの散乱反射に起因する血流速度の誤検出が低減され、血流速度の検出精度が向上する。
【0132】
これまでは、送波される超音波ビームの焦点については説明しなかったが、この焦点は、送信周波数f
1の超音波ビームと送信周波数f
2の超音波ビームとで同一であってもよく、あるいは、人体内の深さ方向に互いに異ならせてもよい。
【0133】
図8は、焦点を異ならせたときの超音波ビームの概略図である。ここでは、送信周波数f
1の超音波ビームについては、送信周波数f
0の超音波ビームの焦点よりも浅い位置に焦点が形成されている。一方、送信周波数f
2の超音波ビームのついては、送信周波数f
0の超音波ビームの焦点も深い位置に焦点が形成されている。尚、全体の扇形の領域Dは観察領域Dを表わしており、点線Lは、超音波ビームの延びる向き、すなわち超音波の進行方向を表わしている。
【0134】
図9は、単一の送信周波数f
0を採用したときの超音波ビーム形状のシミュレーション結果を示した図である。ここでは、送信周波数f
0=3MHz,焦点距離=80mmが採用されている。ここでは、
図9(A),
図9(B)のいずれについても、超音波ビームの強度分布が等高線で表わされている。但し、
図9(A)は斜視図的、
図9(B)は平面的に表わされている。後述する
図10、
図11においても同様である。また(a)は、送信側の超音波ビーム、(b)は、受信側の超音波ビーム、(c)は、送受信双方を総合したときの超音波ビームである。また、どの図においても、xは超音波振動子の配列方向、zは深さ方向を表わしている。
【0135】
図10は、2つの送信周波数f
1,f
2を採用したときの超音波ビーム形状のシミュレーション結果を示した図である。ここでは、送信周波数f
1=2MHz、f
2=4MHzが採用されている。焦点距離はどちらの送信周波数f
1,f
2を用いた場合も80mmである。
【0136】
図10(A)の送信側超音波ビームは、送信周波数f
1の超音波ビームと送信周波数f
2の超音波ビームを重ねたものである。
図10(B)の受信側超音波ビーム、
図10(C)の送受信双方を総合した超音波ビームについても同様である。
【0137】
図9と
図10を比較すると、2つの送信周波数f
1,f
2を採用した
図10の場合の方が、単一の送信周波数f
0を採用した
図9の場合よりも、焦点付近の音響パワーが強く、ビーム幅も狭まっていることが分かる。
【0138】
図11は、2つの送信周波数f
1,f
2を採用し、かつ別々の焦点を形成したときの超音波ビーム形状のシミュレーション結果を示した図である。ここでは、
図10の場合と同様、送信周波数f
1=2MHz、f
2=4MHzが採用されている。また、焦点に関しては送信周波数f
1=2MHzの超音波ビームについては焦点距離=60mm、送信周波数f
2=4MHzの超音波ビームについては、焦点距離=120mmとしている。
【0139】
図11(A)は、
図10(A)と同様、送信周波数f
1の送信側超音波ビームと送信周波数f
2の送信側超音波ビームを重ねて示したものである。
【0140】
図11(B)の受信側超音波ビーム、
図11(C)の送受信双方を総合した超音波ビームについても同様である。
【0141】
図10と
図11を比較すると、
図11の場合、送信周波数f
1の超音波ビームと送信周波数f
2の超音波ビームとで焦点を変たことにより、観察領域全範囲内(特に遠距離)の音響パワーが強く、ビーム幅も狭まっている。これを採用すると、カラードプラ画像の分解能をさらに改善でき、全領域の血流検出精度も高めることができる。
【0142】
尚、ここでは、2つの送信周波数f
1,f
2を採用した場合について説明したが、例えば3つの送信周波数f
1,f
0,f
2を採用してもよく、本発明は2つ以上の送信周波数を採用すればよい。