(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流位相検出部は、前記制御パルス信号のパルス幅と前記端子電圧のパルス幅の関係にもとづいて、前記電流位相検出信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサレス方式において逆起電力を検出するためには、コイルに流れる電流をゼロにする必要がある。
【0006】
120度通電方式では、あるひとつの相のコイルに着目すると、120度正方向通電区間、60度非通電区間、120度負方向通電区間、60度非通電区間を繰り返す。したがって、60度非通電区間を利用することにより、逆起電力を容易に検出することができる。
【0007】
一方、180度通電方式(正弦波駆動方式)では、各コイルには常に電流が流れており、120度通電方式のように非通電区間を利用することができない。そこで180度通電方式では、逆起電力のゼロクロス点が発生するであろう時刻を含むように検出区間を設定し、検出区間において、ドライバの出力を強制的にハイインピーダンス状態とする必要がある。
【0008】
ファンモータなどの静粛性が要求される用途では、180度正弦波駆動が採用される場合があるが、ロータの位置検出、あるいはコイル電流の位相検出のために長い検出区間(非通電区間)を設定すると、180度通電方式の本来の利点である静粛性を損ない、また振動が発生するという問題がある。
【0009】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低騒音および/または低振動でモータを駆動可能なモータ駆動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、ブラシレスDCモータの駆動装置に関する。駆動装置は、相ごとにパルス変調された制御パルス信号を生成する駆動信号生成部と、相ごとに、制御パルス信号に応じたデューティ比を有しかつ所定のデッドタイムが挿入された駆動電圧を生成し、各相のコイルに印加するドライバと、所定の相において、制御パルス信号に対応して所定の相のコイルの一端に生ずる端子電圧のパルス幅にもとづいて、コイルに流れる電流の位相を示す電流位相検出信号を生成する電流位相検出部と、を備える。
【0011】
デッドタイムの間、コイルの一端はハイインピーダンス状態となっており、ドライバからコイルに流れ込む向き(ソース方向という)にコイル電流が流れるときには、端子電圧は接地電圧付近となり、コイルからドライバに流れ込む向き(シンク方向)にコイル電流が流れるときには、端子電圧は電源電圧付近となる。したがって、デッドタイムにおける端子電圧のパルス幅は、コイル電流の向きに応じてデッドタイム分、変化する。
この態様によれば、端子電圧のパルス幅を利用することにより、非通電区間を挿入することなく、コイル電流の位相情報を得ることができ、ひいてはモータを低騒音および/または低振動で駆動することができる。
なお本明細書において、パルス幅とは、矩形信号のハイレベル区間の長さ、あるいはローレベル区間の長さを意味する。
【0012】
電流位相検出部は、制御パルス信号のパルス幅と端子電圧のパルス幅の関係にもとづいて、電流位相検出信号を生成してもよい。
制御パルス信号はパルス変調されているため、そのデューティ比(パルス幅)は、時々刻々と変化する。この態様によれば、制御パルス信号のパルス幅と端子電圧のパルス幅の相対的な関係にもとづいて、任意のタイミングにおいて、コイル電流の向きを判定できる。
【0013】
ある態様において駆動装置は、電流位相検出信号にもとづいて、通電波形の周波数を調節する周波数調節部をさらに備えてもよい。
これにより、モータを、高トルクおよび/または、高効率で回転させることができる。
【0014】
周波数調節部は、所定の相のコイル電流の向きが反転する電流ゼロクロス点と位相基準とが所定の関係を満たすように、電流位相検出信号にもとづいて通電波形の周波数を調節してもよい。
【0015】
周波数調節部は、位相基準に応じて定められたタイミングにおいて電流位相検出信号が示すコイル電流の向きにもとづいて、通電波形の周波数を調節してもよい。
【0016】
周波数調節部は、ある期間にわたる複数の電流位相検出信号にもとづいて、所定の相のコイル電流の向きが反転する電流ゼロクロス点を検出してもよい。
ある期間にわたり電流位相検出信号をモニタすることにより、電流位相検出信号が示す電流の向きが反転することを検出することができる。
【0017】
電流位相検出部は、駆動電圧を所定のしきい値電圧と比較し、検出パルス信号に変換する電圧コンパレータと、検出パルス信号のパルス幅を測定し、パルス幅検出値を生成するカウンタと、制御パルス信号のパルス幅に応じたパルス幅指令値とパルス幅検出値を比較するデジタルコンパレータと、を備えてもよい。
【0018】
ドライバは、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含んでもよい。デジタルコンパレータは、ハイサイドトランジスタのオン時間を示すパルス幅指令値に定数を加算した値と、パルス幅検出値を比較してもよい。定数は、デッドタイムの長さに応じて定められてもよい。
【0019】
ブラシレスDCモータは三相モータであり、電流位相検出部は、U相、V相、W相それぞれにおいて、制御パルス信号のパルス幅と端子電圧のパルス幅を比較してもよい。
これにより、応答性を高めることができる。
【0020】
ブラシレスDCモータは三相モータであり、電流位相検出部は、所定の相において、コイル電流が増加する区間と、コイル電流が減少する区間の両方において、制御パルス信号のパルス幅と端子電圧のパルス幅を比較してもよい。
これにより、応答性を高めることができる。
【0021】
しきい値電圧は、駆動電圧のハイレベル電圧の略1/2であってもよい。
【0022】
ある態様の駆動装置は、電流位相検出信号にもとづいて、制御パルス信号の位相を調節する位相調節部をさらに備えてもよい。
【0023】
ある態様において駆動装置は、所定の相のコイルに生ずる誘起電圧がゼロとなる電圧ゼロクロス点を検出する電圧ゼロクロス検出部をさらに備えてもよい。位相調節部は、電流位相検出信号にもとづいて所定の相のコイル電流の向きが反転する電流ゼロクロス点と、電圧ゼロクロス点が一致するように、制御パルス信号の位相を調節してもよい。
【0024】
電圧ゼロクロス検出部は、ホール素子からのブラシレスDCモータのロータの位置を示す一対のホール信号を比較し、ホール検出信号を生成するホールコンパレータを含んでもよい。
【0025】
電圧ゼロクロス検出部は、ブラシレスDCモータの所定の相のコイルの端子をハイインピーダンスとした状態で、端子電圧とコイルの中点電圧を比較する逆起電力検出コンパレータを含んでもよい。
【0026】
ブラシレスDCモータは、ファンモータであってもよい。
【0027】
本発明の別の態様は冷却装置に関する。冷却装置は、ファンモータと、ファンモータを駆動する上述のいずれかの駆動装置と、を備えてもよい。
【0028】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、上述の冷却装置を備えてもよい。
【0029】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のある態様によれば、低騒音および/または低振動でモータを駆動できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る冷却装置200を備える電子機器100を示すブロック図である。電子機器100は、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどの計算機、あるいは冷蔵庫やテレビなどの家電製品であり、冷却対象、たとえばCPU102を備える。冷却装置200は、送風によってCPU102を冷却する。
【0035】
冷却装置200は、ファンモータ202および駆動装置300を備える。ファンモータ202は、三相ブラシレスDCモータであり、冷却対象のCPU102に近接して配置される。駆動装置300は、ファンモータ202のトルク(回転数、あるいは印加電圧)を指示するための制御入力信号(以下、単に制御信号という)S1にもとづいてファンモータ202を駆動する。冷却装置200は、モジュール化されて市販、流通される。
【0036】
ファンモータ202は、スター結線されたU相、V相、L相のコイルL
U、L
V、L
Wと、図示しない永久磁石を備える。
【0037】
駆動装置300は、ひとつの半導体基板上に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。駆動装置300の電源端子には、電源電圧V
CCが供給され、その接地端子には接地電圧V
GNDが供給される。また駆動装置300の出力端子OUTU〜OUTWは、ファンモータ202のコイルL
U、L
V、L
Wの一端と接続される。
【0038】
駆動装置300は、駆動信号生成部310、ドライバ320、電流位相検出部330、を備え、ファンモータ202を180度正弦波駆動する。
【0039】
駆動信号生成部310は、相ごとにパルス変調された制御パルス信号S2を生成する。制御パルス信号S2を平滑化した信号は、正弦波もしくはそれに類した波形を有しており、また平滑化した信号の振幅は、制御信号S1に応じている。本実施の形態では、駆動信号生成部310は、U相、V相、W相それぞれの制御パルス信号S2
U〜S1
Wを生成する。
図1にはU相のみが示される。
【0040】
ドライバ320は、U相、V相、W相それぞれについて、制御パルス信号S2
U、S2
V、S2
Wに応じたデューティ比を有しかつ所定のデッドタイムT
Dが挿入された駆動電圧V
U、V
V、V
Wを生成し、U相、V相、W相のコイルL
U、L
V、L
Wそれぞれの一端に印加する。
【0041】
たとえばドライバ320は、プリドライバ322およびブリッジ回路324を含む。ブリッジ回路324は、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を含むプッシュプル形式で構成される。プリドライバ322は、制御パルス信号S2にもとづいて、ハイサイドトランジスタM1をオン、ローサイドトランジスタM2をオフするハイレベル時間T
ON、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を両方オフするデッドタイムT
D、ハイサイドトランジスタM1をオフ、ローサイドトランジスタM2をオンするローレベル時間T
OFF、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2を両方オフするデッドタイムT
D、を順に繰り返す。
【0042】
ハイレベル時間T
ONにおいて、駆動電圧V
Uは電源電圧V
CCとなり、ローレベル時間T
OFFにおいて駆動電圧V
Uは接地電圧V
GNDとなる。
【0043】
電流位相検出部330は、所定の相(ここではU相とする)において、制御パルス信号S2
Uに対応してU相のコイルL
Uの一端(OUTU)に生ずる端子電圧V
Uのパルス幅にもとづいて、コイルL
Uに流れる電流I
Uの位相を示す電流位相検出信号S3
Uを生成する。
【0044】
好ましくは電流位相検出部330は、制御パルス信号S2
Uのパルス幅と端子電圧V
Uのパルス幅の関係にもとづいて、電流位相検出信号S3
Uを生成する。
【0045】
図2(a)、(b)は、デッドタイムにおけるドライバ320の状態を示す回路図である。デッドタイムにおいて、ハイサイドトランジスタM1およびローサイドトランジスタM2は両方オフとなり、出力端子OUTUがハイインピーダンス状態となる。
図2(a)には、デッドタイムにおいて、ドライバ320からコイルL
Uに流れ込む向き(ソース方向という)にコイル電流I
Uが流れる状態が示される。このとき、コイル電流I
Uは、ローサイドトランジスタM2のボディーダイオードを経由して流れ、したがって端子電圧V
Uは、接地電圧V
GND付近となる。
【0046】
図2(b)には、デッドタイムにおいて、コイルL
Uからドライバ320に流れ込む向き(シンク方向という)にコイル電流I
Uが流れる状態が示される。このとき、コイル電流I
Uは、ハイサイドトランジスタM1のボディーダイオードを経由して流れ、したがって端子電圧V
Uは、電源電圧V
CC付近となる。
【0047】
図3は、ドライバ320の状態を示す波形図である。この実施の形態では、ハイサイドトランジスタM1のゲートパルス信号V
GHは、制御パルス信号S2のハイレベル時間よりもデッドタイムT
D短い時間、ハイレベルとなり、ローサイドトランジスタM2のゲートパルス信号V
GLは、制御パルス信号S2のローレベル時間よりもデッドタイムT
D長い時間、ハイレベルとなる。
【0048】
I
U>0の期間、端子電圧V
Uのパルス幅Tbは、制御パルス信号S2のパルス幅Taより長くなる。反対にI
U>0の期間、端子電圧V
Uのパルス幅Tbは、制御パルス信号S2のパルス幅Taより短くなる。
【0049】
この性質を利用して、電流位相検出部330は、端子電圧V
Uのパルス幅にもとづいて、コイル電流I
Uの向き、すなわちその位相情報を得る。
【0050】
図1に戻る。電流位相検出部330の構成は特に限定されないが、たとえば電流位相検出部330は、電圧コンパレータ332、カウンタ334、デジタルコンパレータ336を含む。
【0051】
電圧コンパレータ332は、端子電圧V
Uを所定のしきい値電圧V
THと比較し、検出パルス信号S4に変換する。カウンタ334は、クロック信号CKを利用して検出パルス信号S4のパルス幅(本実施の形態ではハイレベルの時間Tb)を測定し、パルス幅検出値S5を生成する。
【0052】
駆動信号生成部310は、現在の制御パルス信号S2
Uのパルス幅Taに応じたパルス幅指令値S6を、デジタルコンパレータ336に対して出力する。デジタルコンパレータ336は、パルス幅指令値S6とパルス幅検出値S5を比較することにより、コイル電流I
Uの向きを判定し、判定結果に応じた電流位相検出信号S3
Uを生成する。
【0053】
パルス幅指令値S6は、ハイサイドトランジスタM1のオン時間T
ONHを示してもよい。デジタルコンパレータ336は、パルス幅指令値S6に定数Kを加算した値と、パルス幅検出値S5を比較してもよい。定数Kは、デッドタイムT
Dの長さに応じて定められてもよい。パルス幅指令値S6が、クロック信号CKの周期T
CKを単位として、ハイサイドトランジスタM1のオン時間T
ONHを表すものであり、定数Kが、クロック信号CKの周期T
CKを単位としてデッドタイムT
Dの長さを表すとき、デジタルコンパレータ336は、S6+Kと、S5を比較してもよい。S6+Kは
図3のTaに対応し、S5は
図3のTbに対応する。
【0054】
あるいは、パルス幅指令値S6は、ローサイドトランジスタM2のオフ時間T
OFFLを示してもよい。デジタルコンパレータ336は、パルス幅指令値S6から定数Kを減算した値S6−Kと、パルス幅検出値S5を比較してもよい。S6−Kは
図3のTaに対応し、S5は
図3のTbに対応する。
【0055】
このように、実施の形態に係る駆動装置300によれば、端子電圧V
Uのパルス幅Tbを利用することにより、非通電区間を挿入することなく、コイル電流I
Uの向きつまりその位相を判定することができ、ひいてはファンモータ202を低騒音および/または低振動で駆動することができる。
【0056】
本発明者は、端子電圧V
Uのパルス幅Tbを利用したコイル電流の位相判定に代えて、デッドタイムT
Dに対応して端子電圧V
Uに生ずる突起部分T
D’の電圧レベルを利用して位相判定を行う技術(以下、比較技術という)についても検討した。
【0057】
一般的にデッドタイムT
Dは極めて短く設定される。加えて、ハイサイドトランジスタM1、ローサイドトランジスタM2のターンオン時間、ターンオフ時間は、デッドタイムT
Dに比べて無視できない程度に長く、ターンオン時間、ターンオフ時間は、トランジスタ素子ごとにばらついてしまう。かかる事情から、端子電圧V
Uの突起部分T
D’が発生するタイミングを正確に予測することは困難である。これらの理由から、比較技術によってコイル電流の位相判定することは難しい。
【0058】
これに対して、実施の形態に係る位相判定方法では、端子電圧V
Uのパルス幅に着目しているため、端子電圧V
Uの突起部分T
D’が時間的に前後したとしても、その影響を抑制しつつコイル電流の位相を検出できる。
【0059】
続いて、電流位相検出部330により検出されたコイル電流の位相情報の利用方法について説明する。
【0060】
図1の駆動装置300は、上述の構成に加えてさらに、周波数調節部340を備える。
【0061】
周波数調節部340は、電流位相検出信号S3
Uにもとづいて、駆動電圧V
U〜V
Wの波形(通電波形という)の周波数を調節する。通電波形の周波数は、パルス幅変調のスイッチング周波数ではなく、駆動電圧V
U、V
V、V
Wの包絡線の周波数に相当する。
【0062】
より具体的には、周波数調節部340は、U相のコイル電流I
Uの向きが反転する電流ゼロクロス点と位相基準とが所定の関係を満たすように、電流位相検出信号S3
Uにもとづいて通電波形の周波数fを調節する。
【0063】
図4は、駆動電圧(通電波形)V
U、コイル電流I
U、電流ゼロクロス点の関係を示す図である。位相基準は、位相基準と電流ゼロクロス点が一致したとき(φ=0)に、駆動効率が高くなるように、もしくは、高トルクが得られるように定められる。
【0064】
図5は、通電波形の周波数fと、位相基準と電流ゼロクロス点の位相差φの関係を示す図である。周波数調節部340は、電流ゼロクロス点が位相基準より遅れている場合、周波数fを高め、反対に電流ゼロクロス点が位相基準より進んでいる場合、周波数fを低下させる。
【0065】
周波数調節部340による周波数制御により、位相差φがゼロに維持され、ファンモータ202を最適な回転数で駆動することができ、高効率を実現することができる。
【0066】
図6(a)〜(c)は、周波数調節部340による周波数制御の例を示す図である。
図6(a)、(b)では、周波数調節部340は、位相基準に対応してひとつ、あるいは複数の検出タイミングが設定され、各検出タイミングにおけるコイル電流I
Uの向きにもとづいて、周波数fを制御する。
【0067】
図6(a)では、位相基準に検出タイミングT
1が設定される。そして、検出タイミングT
1において、(i)コイル電流I
Uが正のとき、つまりコイル電流I
Uの位相が遅れているとき、周波数fに係数α(α>1)を乗算して周波数fを高め、(ii)コイル電流I
Uが負のとき、つまりコイル電流I
Uの位相が進んでいるとき、周波数fに係数β(β<1)を乗算し、周波数fを低下させる。
【0068】
図6(b)では、位相基準の前後かつ近傍に、複数の検出タイミングT
1、T
2が設定される。そして、複数の検出タイミングT
1、T
2それぞれにおけるコイル電流I
Uの向きの組み合わせに応じて周波数fを調節する。(i)検出タイミングT
1、T
2おいて、コイル電流I
Uがいずれも正のとき、コイル電流I
Uの位相が遅れていると判定され、周波数fに係数α(α>1)を乗算して周波数fを高める。また(ii)検出タイミングT
1、T
2おいて、コイル電流I
Uがいずれも負のとき、コイル電流I
Uの位相が進んでいると判定され、周波数fに係数β(β<1)を乗算して周波数fを低下させる。(iii)検出タイミングT
1におけるコイル電流I
Uが正、検出タイミングT
2におけるコイル電流I
Uが負であるとき、電流ゼロクロス点が位相基準の近傍(T
1〜T
2の間)に含まれると判定され、周波数fは維持される。
図6(b)の制御によれば、周波数が振動するのを防止できる。
【0069】
検出タイミングは、3個以上設けてもよい。この場合、位相差φの大きさを判定できるため、位相差φに応じて係数α、βを変化させてもよい。これにより、系を高速に安定化させることができる。
【0070】
図6(c)では、周波数調節部340は、ある期間Tにわたる複数の電流位相検出信号S3
Uにもとづいて、U相のコイル電流I
Uの向きが反転する電流ゼロクロス点の時刻を測定する。この制御では、位相差φの長さを測定することができるため、位相差φがゼロとなるようなフィードバック制御を行うことができる。たとえば周波数調節部340は、P(比例)コントローラ、PI(比例積分)コントローラ、PID(比例積分微分)コントローラで構成してもよい。
【0071】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る駆動装置300aを示す回路図である。駆動装置300aは、
図1の駆動装置300の周波数調節部340に代えて、位相調節部350および電圧ゼロクロス検出部360を備える。
【0072】
位相調節部350は、電流位相検出部330により生成される電流位相検出信号S3
Uにもとづいて、制御パルス信号S2
U、S2
V、S2
Wの位相、言い換えれば駆動電圧V
U〜V
W(通電波形)の位相を調節する。
【0073】
電圧ゼロクロス検出部360は、所定の相(たとえばU相)のコイルL
Uに生ずる誘起電圧がゼロとなる電圧ゼロクロス点を検出し、電圧ゼロクロス点ごとにレベルが遷移する電圧ゼロクロス検出信号S7を生成する。たとえば電圧ゼロクロス検出部360は、ロータの位置を示す一対のホール信号を生成するホール素子204と、ホール素子204からのホール信号を比較し、ホール検出信号S7を生成するホールコンパレータ362を含んでもよい。
【0074】
位相調節部350は、U相のコイル電流I
Uの向きが反転する電流ゼロクロス点と電圧ゼロクロス点が一致するように、電流位相検出信号S3
Uにもとづいて制御パルス信号S2の位相を調節する。
【0075】
以上が駆動装置300aの構成である。
この駆動装置300によれば、電流位相検出信号S3にもとづいて、転流制御を行うことができる。すなわち、位相調節部350は、電流位相検出信号S3にもとづいて進相角(あるいは遅相角)を決定し、電圧ゼロクロス検出信号S7が示す電圧ゼロクロス点に対して、進相角(遅相角)シフトさせたタイミングで、転流を行う。つまり位相調節部350は、転流のタイミングに電流位相検出信号S3を反映することにより、コイル電流I
Uと誘起電圧eの位相関係を所定の関係(たとえば同相)に近づけることができ、高効率、あるは高トルクでファンモータ202を駆動することができる。
【0076】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0077】
(第1の変形例)
第1、第2の実施の形態において、電流位相検出部330は、U相の端子電圧V
Uのパルス幅にもとづいて、電流位相検出信号S3を生成する場合を説明したが本発明はそれには限定されない。たとえば電流位相検出部330は、U相、V相、W相すべての相において、端子電圧V
U〜V
Wのパルス幅を測定してもよい。
第1の実施の形態では、周波数調節部340は、U〜W相それぞれの、電流ゼロクロス点と位相基準の位相差φ
U〜φ
Wにもとづいて周波数制御を行ってもよい。この場合、U相のみに着目する場合に比べて3倍の速度で周波数制御が可能となる。
あるいは周波数調節部340は、位相差φ
U〜φ
Wを平均化し、平均値にもとづいて位相制御を行ってもよい。これは相ごとに位相差のばらつきが大きい場合に有効である。
【0078】
また第2の実施の形態では、位相調節部350は、U〜W相それぞれの、電流ゼロクロス点と電圧ゼロクロス点の差にもとづいて、通電波形の位相制御を行ってもよい。この場合、U相のみに着目する場合に比べて3倍の速度で周波数制御が可能となる。
あるいは、位相調節部350は、U〜W相で得られた電流ゼロクロス点と電圧ゼロクロス点の差を平均化し、平均値にもとづいて位相制御を行ってもよい。これは相ごとに位相差のばらつきが大きい場合に有効である。
【0079】
あるいは、V相のみ、W相のみの端子電圧のパルス幅を測定してもよいし、任意の2つの相の組み合わせにおいて端子電圧のパルス幅を測定してもよいし、
【0080】
(第2の変形例)
図3、
図4、
図6では、コイル電流I
Uが減少する区間において、端子電圧のパルス幅を測定する例を説明したが、本発明はそれには限定されない。たとえば電圧ゼロクロス検出部360は、コイル電流が増加する区間とコイル電流が減少する区間の両方において、あるいはコイル電流が増加する区間のみにおいて、端子電圧のパルス幅を測定してもよい。
【0081】
(第3の変形例)
実施の形態では、各信号のハイレベル区間をパルス幅としたが、本発明はそれには限定されない。電流位相検出部330は、制御パルス信号S2
Uのパルス幅を、そのローレベルの時間Tcとして、端子電圧(つまり検出パルス信号S4)V
Uのパルス幅を、ローレベルの時間Tdとして、パルス幅を比較してもよい。
【0082】
パルス幅指令値S6は、ローサイドトランジスタM2のオン時間T
ONLを示してもよい。デジタルコンパレータ336は、パルス幅指令値S6に定数Kを加算した値S6+Kと、パルス幅検出値S5を比較してもよい。S6+Kは
図3のTcに対応し、S5は
図3のTdに対応する。
あるいはパルス幅指令値S6は、ハイサイドトランジスタM1のオフ時間T
OFFHを示してもよい。デジタルコンパレータ336は、パルス幅指令値S6から定数Kを減算した値S6−Kと、パルス幅検出値S5を比較してもよい。S6−Kは
図3のTcに対応し、S5は
図3のTdに対応する。
【0083】
(第4の変形例)
第2の実施の形態では、電圧ゼロクロス点を検出するためにホール素子204を利用する場合を説明したが本発明はそれには限定されない。たとえば電圧ゼロクロス検出部314は、ブラシレスDCモータの所定相(たとえばU相)のコイルL
Uの端子をハイインピーダンスとした状態で、端子電圧V
Uとコイルの中点電圧V
COMを比較する逆起電力検出コンパレータを含んでもよい。
【0084】
あるいは電圧ゼロクロス検出部360は、コイル、エンコーダやレゾルバなどを利用して、ロータの位置、すなわち電圧ゼロクロス点を検出してもよい。
【0085】
(第5の変形例)
第2の実施の形態では、コイル電流I
Uの位相を、誘起電圧eの位相と一致させる場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。モータの種類や用途によっては、それらの位相が完全に一致しているときよりも、わずかにずれているときの方が効率あるいはトルクの観点から好ましい場合も想定される。この場合、電圧ゼロクロス点に対して検出区間を前後にシフトさせることで、コイル電流の位相の目標位置を任意に設定できる。
【0086】
(第6の変形例)
実施の形態では、コイル電流I
Uの位相を、端子電圧のパルス幅とそれのもととなる制御パルス信号のパルス幅との比較にもとづいて検出する場合を説明したが本発明はそれには限定されない。たとえば検出タイミングが固定されており、制御パルス信号のパルス幅が所定値に固定される場合、端子電圧のパルス幅をその所定値に応じたしきい値と比較すればよい。
【0087】
(第7の変形例)
ブラシレスDCモータの相数は特に限定されず、たとえば単相であってもよい。
【0088】
(第8の変形例)
実施の形態において、冷却装置200を電子機器に搭載してCPUを冷却する場合について説明したが、本発明の用途はこれには限定されず、発熱体を冷却するさまざまなアプリケーションに用いることができる。さらにいえば、本実施の形態に係る駆動装置300の用途は、ファンモータの駆動に限定されるものではなく、その他の各種モータの駆動に用いることができる。
【0089】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。