特許第6231363号(P6231363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター・ベルパール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000002
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000003
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000004
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000005
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000006
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000007
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000008
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000009
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000010
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000011
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000012
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000013
  • 特許6231363-混合ガスの分離装置および方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231363
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】混合ガスの分離装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/053 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B01D53/053
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-243638(P2013-243638)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100752(P2015-100752A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】511064096
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ベルパール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】横須賀 秀作
(72)【発明者】
【氏名】西田 元昭
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−077878(JP,A)
【文献】 実開平01−077828(JP,U)
【文献】 実開平02−038431(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去することにより上記混合ガスから目的成分を製品ガスとして分離する吸着工程と、上記吸着工程で吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させて上記吸着剤を再生する再生工程を、交代で受け持つ複数の吸着槽と、
定常運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、製品ガス供給路に送り出す前に一時的に貯留する製品ガス貯留槽と、
上記定常運転の前に行う浄化運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、上記製品ガス貯留槽を経由させずに上記製品ガス供給路に導入する単数または複数のバイパス路と、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入するよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御する弁制御手段と、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、上記各吸着槽の出口側に還流させる複数の還流路とを備え、
上記弁制御手段は、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する
ことを特徴とする混合ガスの分離装置。
【請求項2】
製品ガス貯留槽より上流にはガス濃度検知器が設けられておらず、
上記浄化運転のあいだ、上記製品ガス供給路に設けたガス濃度検知器により、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度を検知する
請求項記載の混合ガスの分離装置。
【請求項3】
混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去することにより上記混合ガスから目的成分を製品ガスとして分離する吸着工程と、上記吸着工程で吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させて上記吸着剤を再生する再生工程を、複数の吸着槽によって交代で受け持ち、
定常運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、製品ガス供給路に送り出す前に一時的に製品ガス貯留槽に貯留し、
上記定常運転の前に行う浄化運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、単数または複数のバイパス路により、上記製品ガス貯留槽を経由させずに上記製品ガス供給路に導入し、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入するよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御し、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、複数の還流路により、上記各吸着槽の出口側に還流させ、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する
ことを特徴とする混合ガスの分離方法。
【請求項4】
製品ガス貯留槽より上流にはガス濃度検知器を設けることなく、
上記浄化運転のあいだ、上記製品ガス供給路に設けたガス濃度検知器により、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度を検知する
請求項記載の混合ガスの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上のガスが混合された混合ガスを分離して、目的とするガスを製品ガスとして発生させる混合ガスの分離装置および方法に関するものである。この装置および方法は、例えば、混合ガスとして空気を分離することにより、製品ガスとして窒素ガスまたは酸素ガスを発生することができる。
【背景技術】
【0002】
〔PSA方式〕
2種以上のガスが混合された混合ガスを分離して、目的とするガスを製品ガスとして得る方式として、圧力変動吸着方式(以下「PSA方式」という)が知られている。
【0003】
上記PSA方式では、例えば、混合ガスとして空気を分離することにより、製品ガスとして窒素ガスまたは酸素ガスを発生させることができる。
【0004】
窒素ガスを発生させる場合、酸素を吸着する吸着剤を充填した吸着塔を使用する。上記吸着塔に加圧した空気を供給し、空気中の酸素分子を吸着剤に吸着させて分離する。そして、吸着されなかった窒素ガスを製品ガスとして得る。
酸素ガスを発生させる場合、窒素を吸着する吸着剤を充填した吸着塔を使用する。上記吸着塔に加圧した空気を供給し、空気中の窒素分子を吸着剤に吸着させて分離する。そして、吸着されなかった酸素ガスを製品ガスとして得る。
【0005】
上記吸着搭では、加圧状態で混合ガスを流すことにより、吸着対象のガス分子が吸着剤に吸着される。これを吸着工程という。
また、上記吸着搭では、充填された吸着剤の吸着能力がリミットに達したとき、内部の圧力を開放することにより、吸着剤に吸着されたガス分子を吸着剤から放出させ、再び吸着できるように吸着剤を再生する。これを再生工程という。
【0006】
そして、一般にPSA方式のガス分離装置では、第1の吸着搭と第2の吸着塔、少なくとも2つの吸着搭を準備する。第1の吸着搭で吸着工程を行っているあいだ、第2の吸着搭で再生工程を行う。そして、第1の吸着搭において吸着剤の吸着能力がリミットに達すると、第1の吸着搭を吸着工程から再生工程に切換え、第2の吸着搭を再生工程から吸着工程に切り換える。
【0007】
第1の吸着搭と第2の吸着搭においてそれぞれ吸着工程と再生工程を交互に行う。このとき、第1の吸着搭と第2の吸着搭で同じ工程を同時に行わないよう、第1の吸着搭と第2の吸着搭における吸着工程と再生工程の切換えを行う。
【0008】
吸着工程と再生工程が終了したときには、吸着工程を終えた吸着搭から再生工程を終えた吸着搭に対してガスを移送し、第1の吸着搭と第2の吸着搭の間で圧力を均一化する。これを均圧工程という。
【0009】
このようにして、第1の吸着搭と第2の吸着搭のいずれかが吸着工程を行っているあいだ、もう一方で再生工程を行う。そうすることで、目的とする製品ガスを、ほぼ途切れないで発生させることができる。
【0010】
〔準備運転〕
PSA方式のガス分離装置では、目的に応じて必要とされる所定純度の製品ガスを製造する。このガス分離装置は一般に、日中に稼動させて夜間に停止したり、平日に稼動して土日に停止したり、稼動と停止を繰り返す。
【0011】
このとき、装置を停止させて一定時間が経過した後、再び稼動させるとき、初期に分離して得られるガスは純度が低く、製品ガスにすることができない。したがって、分離して得られるガスが目的とする所定純度に達するまでに準備運転が必要である。ところが、準備運転においても、製品ガスを製造する時と同じだけのエネルギーを消費する。したがって、準備運転を短時間に終わらせ、所定純度の製品ガスの製造に速やかに移行することが求められている。
【0012】
また、近年では、製品ガスに求められる純度がますます高くなっている。必要とする純度が高ければ高いほど、準備運転に要する時間は長くなる。このため、近年になって、準備運転の時間を短縮することに対する要望は、ますます高くなっている。
【0013】
〔従来技術〕
このような背景のもと、PSA方式のガス分離装置において、準備運転の時間を短縮するために様々な提案がなされてきた。従来技術として、下記の特許文献1〜4に示す文献が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公昭61−32243号公報
【特許文献2】特開平3−213114号公報
【特許文献3】特開平3−262513号公報
【特許文献4】特開平3−288512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
〔文献の開示〕
以下に述べる文献の説明において、括弧内の符号は各文献に記載されたものである。
【0016】
上記特許文献1は、つぎの事項を開示する。
圧力スイングにより窒素を濃縮する方法において、窒素濃縮を終了する際、均圧工程において装置を停止し、均圧工程の終了した吸着器(16)の内部残留ガスを、放出弁(14)により、吸着工程での原料ガスの流れと反対方向に系外へ減圧放出する。また、減圧排気が終了した後、吸着器(16)の出口に設けられた濃縮窒素貯留タンク(11)から濃縮窒素ガスの一部を、濃縮窒素ガス供給弁(15)を介し、吸着工程での原料ガスの流れと反対方向に流し、吸着器(16)内を濃縮窒素ガスで置換する。
【0017】
上記特許文献2は、つぎの事項を開示する。
吸着槽(5a,5b)を用いて混合ガスから製品対象ガスを抽出し、その製品対象ガスを製品貯留槽(8)内に貯留するに際し、製品貯留槽(8)の排気コントロール弁(13)を開いて製品貯留槽(8)内の残存ガスを排気しつつ、上記製品対象ガスを製品貯留槽(8)内に充填する。
【0018】
上記特許文献3は、つぎの事項を開示する。
吸着槽(19,20)に対し吸着工程−再生工程を含む工程を交番的に繰り返して窒素ガスを分離し、これを製品槽(21)に貯留する方法において、上記工程を停止するに際し、上記製品槽(21)内の圧力を上記連続工程における最高圧力よりも高い圧力に上昇させ、その後上記工程を停止する。
【0019】
上記特許文献4は、つぎの事項を開示する。
吸着槽(19,20)に対し吸着工程−再生工程を含む工程を交番的に繰り返して窒素ガスを分離し、これを貯留する方法において、上記工程を停止するに際し、上記吸着槽(19,20)内の残留ガスを所定の時間もしくは所定の圧力になるまで排出させた後、上記吸着槽(19,20)を密閉する。
【0020】
〔文献の課題〕
上記特許文献1では、均圧工程が終了した吸着器(16)の内部残留ガスを減圧放出する。また、減圧排気した後に吸着器(16)内を濃縮窒素ガスで置換する。この状態で装置を停止する。これにより、装置を停止したときに吸着器(16)内に残留する酸素ガスおよび窒素ガスが少なくなり、再稼動したときに分離ガスに混入する酸素ガスが少なくなる。その分だけ準備運転の時間は短縮される。
【0021】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、つぎの課題が残っている。
上記特許文献1の技術では、減圧排気や濃縮窒素ガスによる置換を行ったとしても、吸着器(16)内に酸素ガスが残留するのは避けられない。そして、装置を再び稼動したときには、吸着器(16)内に残留した酸素ガスが濃縮窒素貯留タンク(11)内に流れ込み、濃縮窒素貯留タンク(11)内の濃縮窒素の純度を低下させる。このため、近年のように高純度の製品ガスが求められるようになると、純度が低下した濃縮窒素貯留タンク(11)内に充填する製品ガスの純度を引き上げる必要があるため、長時間の準備運転が必要になる。
【0022】
上記特許文献2では、大気成分で満たされた状態の製品貯留槽(8)について、装置を起動したときに、製品貯留槽(8)の残存ガスを排気しながら製品対象ガスを製品貯留槽(8)内に充填して置換する。
【0023】
しかしながら、上記特許文献2に記載された技術では、つぎの課題が残っている。
上記特許文献2の技術では、製品ガスに要求される純度が高ければそれだけ、製品貯留槽(8)の内部のガスを高純度の製品ガスに置換するのに時間を要する。このため、近年のように高純度の製品ガスが求められるようになると、大気成分で満たされた状態の製品貯留槽(8)内に充填する製品ガスの純度を引き上げる必要があるため、長時間の準備運転が必要になるのである。
また、吸着槽(5a,5b)内に酸素ガスが残留するのが避けられない。そして、装置を再び稼動したときには、吸着槽(5a,5b)内に残留した酸素ガスが製品貯留槽(8)内に流れ込み、製品貯留槽(8)内の濃縮窒素の純度を低下させる。このため、近年のように高純度の製品ガスが求められるようになると、純度が低下した製品貯留槽(8)内に充填する製品ガスの純度を引き上げる必要があるため、長時間の準備運転が必要になる。
【0024】
上記特許文献3では、上記製品槽(21)内の圧力を連続工程における最高圧力よりも高い圧力に上昇させ、その後上記工程を停止する。工程を再開したときに、吸着槽(19,20)内の圧力を連続運転中よりも高圧にできる。吸着槽(19,20)内の圧力が高ければそれだけ、吸着剤に吸着される酸素量が多くなる。装置を再稼動したときに早期に所定濃度の製品ガスを得るようにしたものである。
【0025】
しかしながら、上記特許文献3に記載された技術では、つぎの課題が残っている。
上記特許文献3の技術では、製品槽(21)内の圧力を高い圧力として停止したとしても、吸着槽(19,20)内に酸素ガスが残留するのは避けられない。そして、装置を再び稼動したときには、吸着槽(19,20)内に残留した酸素ガスが製品槽(21)内に流れ込み、製品槽(21)内の濃縮窒素の純度を低下させる。このため、近年のように高純度の製品ガスが求められるようになると、純度が低下した製品槽(21)内に充填する製品ガスの純度を引き上げる必要があるため、長時間の準備運転が必要になる。
【0026】
上記特許文献4では、残留ガスを排出した状態で上記吸着槽(19,20)を密閉して停止する。その後に大気成分が吸着槽(19,20)内に侵入するのを防止する。
【0027】
しかしながら、上記特許文献4に記載された技術では、つぎの課題が残っている。
残留ガスを排出した状態で上記吸着槽(19,20)を密閉し、大気成分の侵入を防止したとしても、吸着槽(19,20)内に酸素ガスが残留するのは避けられない。そして、装置を再び稼動したときには、吸着槽(19,20)内に残留した酸素ガスが製品槽(21)内に流れ込み、製品槽(21)内の濃縮窒素の純度を低下させる。このため、近年のように高純度の製品ガスが求められるようになると、純度が低下した製品槽(21)内に充填する製品ガスの純度を引き上げる必要があるため、長時間の準備運転が必要になる。
【0028】
〔目的〕
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、装置の起動時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる混合ガスの分離装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するため、本発明はつぎの構成を採用した。
【0030】
〔請求項1〕に記載の混合ガスの分離装置は、
混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去することにより上記混合ガスから目的成分を製品ガスとして分離する吸着工程と、上記吸着工程で吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させて上記吸着剤を再生する再生工程を、交代で受け持つ複数の吸着槽と、
定常運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、製品ガス供給路に送り出す前に一時的に貯留する製品ガス貯留槽と、
上記定常運転の前に行う浄化運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、上記製品ガス貯留槽を経由させずに上記製品ガス供給路に導入する単数または複数のバイパス路と、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入するよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御する弁制御手段と、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、上記各吸着槽の出口側に還流させる複数の還流路とを備え、
上記弁制御手段は、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する
ことを要旨とする。
【0031】
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離方法は、
混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去することにより上記混合ガスから目的成分を製品ガスとして分離する吸着工程と、上記吸着工程で吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させて上記吸着剤を再生する再生工程を、複数の吸着槽によって交代で受け持ち、
定常運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、製品ガス供給路に送り出す前に一時的に製品ガス貯留槽に貯留し、
上記定常運転の前に行う浄化運転において、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを、単数または複数のバイパス路により、上記製品ガス貯留槽を経由させずに上記製品ガス供給路に導入し、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入するよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御し、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、複数の還流路により、上記各吸着槽の出口側に還流させ、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0032】
〔請求項1〕および〔請求項〕に記載の発明は、上記構成を採用したことにより、つぎの作用効果を奏する。
すなわち、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入できる。こうすることにより、起動初期に上記各吸着槽から排出された純度の低い上記製品ガスは、上記製品ガス貯留槽に導入されない。したがって、上記製品ガス貯留槽内に充填された上記製品ガスの純度を低下させることがない。このため、上記製品ガス貯留槽内の製品ガスの純度を引き上げるために必要とされていた準備運転が節減される。本発明によれば、装置の起動時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。特に、近年のように高純度の製品ガスが求められる情況において、起動時間を短縮する効果は絶大である。
【0033】
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離装置は、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入する浄化運転を行うよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御する弁制御手段を備える。
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離方法は、
上記浄化運転において、休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスを上記バイパス路に導入する浄化運転を行うよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御する。
【0034】
このような構成を採用したことにより、本発明は、つぎの作用効果を奏する。
休止状態の装置を起動したときに上記浄化運転を行うことにより、起動初期に上記各吸着槽から排出された純度の低い上記製品ガスは、上記製品ガス貯留槽に導入されない。したがって、上記製品ガス貯留槽内に充填された上記製品ガスの純度を低下させることがない。このため、上記製品ガス貯留槽内の製品ガスの純度を引き上げるために必要とされていた準備運転が節減される。本発明によれば、装置の起動時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。特に、近年のように高純度の製品ガスが求められる情況において、起動時間を短縮する効果は顕著に現れる。
【0035】
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離装置は、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、上記各吸着槽の出口側に還流させる複数の還流路をさらに備え、
上記弁制御手段は、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する。
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離方法は、
上記バイパス路を経由した製品ガスの少なくとも一部を、複数の還流路により、上記各吸着槽の出口側に還流させ、
上記浄化運転を、上記吸着槽内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽が交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路により、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する。
【0036】
このような構成を採用したことにより、本発明は、つぎの作用効果を奏する。
上記浄化運転のうち上記高圧浄化工程では、上記吸着工程と同様に、混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去する。一方、上記浄化運転のうち上記低圧浄化工程では、上記再生工程と同様に、上記吸着剤に吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させる。上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記還流路により上記製品ガスを還流させることにより、上記吸着剤に吸着された上記除去成分は、上記吸着剤から放出されやすくなり、吸着剤の再生効果が高くなる。このような浄化運転を行うことにより、上記各吸着槽において分離される製品ガスの純度が速やかに高くなり、準備運転時間をより短縮することができる。
【0037】
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離装置は、
製品ガス貯留槽より上流にはガス濃度検知器が設けられておらず、
上記浄化運転のあいだ、上記製品ガス供給路に設けたガス濃度検知器により、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度を検知する。
〔請求項〕に記載の混合ガスの分離方法は、
製品ガス貯留槽より上流にはガス濃度検知器を設けることなく、
上記浄化運転のあいだ、上記製品ガス供給路に設けたガス濃度検知器により、上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度を検知する。
【0038】
本発明において、このような構成を採用した場合には、つぎの作用効果を奏する。
上記浄化運転のあいだ上記各吸着槽から排出された上記製品ガスの濃度を、上記製品ガス供給路に設けたガス濃度検知器により検知し、製品ガス貯留槽より上流にはガス濃度検知器を設けない。したがって、浄化運転中の浄化状態を正確に検出できる。どのような運用が行われたとしても、浄化運転を完了できるタイミングが明確に把握できる。つまり、念のために浄化運転を延長するようなことをしなくてすむ。浄化運転の時間を不必要に長くしなくてすむ。また、ガス濃度検知器の装備を節約し、設備コスト、メンテナンスコスト、計器のチェック作業等を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の混合ガスの分離装置の第1実施形態を示す構成図である。
図2】本発明の混合ガスの分離方法の第1実施形態を示す工程図である。
図3】定常運転において各吸着槽が実施する工程を示す図である
図4】定常運転におけるガスの流れを説明する図である。
図5】定常運転におけるガスの流れを説明する図である。
図6】定常運転におけるガスの流れを説明する図である。
図7】浄化運転において各吸着槽が実施する工程を示す図である
図8】浄化運転におけるガスの流れを説明する図である。
図9】浄化運転におけるガスの流れを説明する図である。
図10】浄化運転におけるガスの流れを説明する図である。
図11】本発明の混合ガスの分離装置の第2実施形態を示す構成図である。
図12】実施例1・2と比較例の起動時間を示す線図である。
図13】モレキュラーシーブにおける窒素と酸素の時間に対する吸着量を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0041】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態の混合ガスの分離装置の構成を示す図である。
【0042】
この例は、本発明を空気分離装置に適用した例を示す。この装置および方法では、原料となる混合ガスとして空気を使用する。上記空気中の酸素を除去成分として吸着し、目的成分として窒素を分離する。こうして、窒素ガスを製品ガスとして生成する。
【0043】
〔全体構成〕
この装置は、圧力スイング方式により空気から酸素を吸着して窒素を分離する複数の吸着槽(第1吸着槽1A,第2吸着槽1B)と、上記第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出される製品ガスである窒素ガスを一時的に貯留する製品ガス貯留槽3とを備えている。
【0044】
上記第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bには、圧縮機10から原料ガスとなる圧縮された空気を導入する。上記第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bは、後述する吸着工程と再生工程を交代で受け持って、製品ガスである窒素ガスを排出する。製品ガス貯留槽3に貯留された製品ガスは、製品ガス供給路4により、窒素ガスを使用する設備などに供給される。
【0045】
また、上記第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出された製品ガスを、製品ガス貯留槽3を経由させずに製品ガス供給路4に導入するバイパス路5を備えている。上記バイパス路5を使用することにより、休止状態の装置を起動するときに、上記第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出される製品ガスの純度を所定の基準値に上昇させるための浄化運転を行う。
【0046】
〔吸着槽〕
図示した装置では、2つの吸着槽(第1吸着槽1A,第2吸着槽1B)を備えている。上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bはそれぞれ、混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去することにより上記混合ガスから目的成分を製品ガスとして分離する吸着工程と、上記吸着工程で吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させて上記吸着剤を再生する再生工程を、交代で受け持つ。
【0047】
この例は、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bにおいて、空気中の酸素を除去成分として吸着し、目的成分として窒素を分離する。このため、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bに充填する吸着剤として、酸素を優先的に吸着するモレキュラーシーブを使用する。
【0048】
上記吸着工程では、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bに対し、入口側(図示の下側)から原料ガスとなる圧縮された空気を導入する。第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1B内は加圧状態となり、原料ガス中の酸素が優先的に吸着剤に吸着される。酸素の吸着によって分離された窒素が、出口側(図示の上側)から製品ガスとして排出される。
【0049】
この吸着工程を行っているときの第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの内部は、酸素濃度に勾配がある。製品ガスを出す出口付近では酸素が吸着されている。反対に原料ガスが導入される入口付近では十分に酸素が吸着されていない。出口側は酸素濃度が低く、入口側は酸素濃度が高い。
【0050】
上記再生工程では、吸着工程において高圧となった上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bを、入口側(図示の下側)から大気圧に開放し、内部のガスを排出する。これにより、吸着剤に吸着された酸素が吸着剤から離脱し、吸着剤の吸着能力を回復させる。
【0051】
〔製品ガス貯留槽〕
上記製品ガス貯留槽3は、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された上記製品ガスを、製品ガス供給路4に送り出す前に一時的に貯留する。
【0052】
〔配管構造〕
上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bにはそれぞれ、圧縮機10から原料空気を供給するための第1原料ガス導入路11Aおよび第2原料ガス導入路11Bが連通している。上記第1原料ガス導入路11Aおよび第2原料ガス導入路11Bは、それぞれ第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの入口側(図示の下側)に接続されている。
【0053】
上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bにはそれぞれ、上記製品ガス貯留槽3に対して製品ガスを送り出すための第1製品ガス排出路12Aおよび第2製品ガス排出路12Bが連通している。上記第1製品ガス排出路12Aおよび第2製品ガス排出路12Bは、それぞれ第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの出口側(図示の上側)に接続されている。
【0054】
上記第1製品ガス排出路12Aと第2製品ガス排出路12Bには、両者を連通させる均圧路13が接続されている。上記均圧路13は、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bのあいだで吸着工程と再生工程を切り換えるときに、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bを互いに連通させて内部圧力を均一化するためのものである。
【0055】
上記第1製品ガス排出路12Aと第2製品ガス排出路12Bには、両者を連通させるパージガス路14が接続されている。上記パージガス路は、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bのうち一方が吸着工程を行っているときに、再生工程を行う他方に対して製品ガスの一部を流して吸着剤の再生を促進するためのものである。
【0056】
また、上記第1製品ガス排出路12Aおよび第2製品ガス排出路12Bは、下流側において合流路12Cに合流し、この合流路12Cが上記製品ガス貯留槽3に対して接続している。第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された製品ガスは、合流路12Cを介して製品ガス貯留槽3に導入される。
【0057】
上記製品ガス貯留槽3には、上述した製品ガス供給路4が接続されている。
【0058】
上記製品ガス貯留槽3の入口側に当たる上記合流路12Cと、上記製品ガス貯留槽3の出口側に当たる製品ガス供給路4を連通させるように、バイパス路5が接続されている。
上記バイパス路5は、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された製品ガスを、上記製品ガス貯留槽3を経由させずに上記製品ガス供給路4に導入する。この例では1つの製品ガス供給路4が設けられている。
【0059】
上記製品ガス供給路4から分岐して、第1還流路7Aおよび第2還流路7Bが設けられている。上記第1還流路7Aは、その下流側が第1製品ガス排出路12Aに接続されている。上記第1還流路7Aは、製品ガス供給路4を流れる製品ガスを、第1吸着槽1Aの出口側に還流させるためのものである。上記第2還流路7Bは、その下流側が第2製品ガス排出路12Bに接続されている。上記第2還流路7Bは、製品ガス供給路4を流れる製品ガスを第2吸着槽1Bの出口側に還流させるためのものである。上記第1還流路7Aおよび第2還流路7Bの分岐点は、後述する製品ガス供給弁29よりも上流側である。
したがって、上記第1還流路7Aおよび第2還流路7Bは、上記バイパス路5を経由した製品ガスを、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの出口側に還流させる。なお、上記バイパス路5を経由した製品ガスの一部を、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの出口側に還流させるようにしてもよい。
【0060】
上記第1原料ガス導入路11Aおよび第2原料ガス導入路11Bには、それぞれ第1排気路16Aおよび第2排気路16Bが連通している。上記第1排気路16Aおよび第2排気路16Bは、排気ガス路15に連通している。上記第1排気路16A,第2排気路16B、排気ガス路15は、再生工程において、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出される排ガスを排出するためのものである。
【0061】
〔弁の配置構造〕
上記第1原料ガス導入路11Aおよび第2原料ガス導入路11Bには、それぞれ第1原料ガス導入弁21Aおよび第2原料ガス導入弁21Bが設けられている。また、上記第1製品ガス排出路12Aおよび第2製品ガス排出路12Bには、それぞれ第1製品ガス排出弁22Aおよび第2製品ガス排出弁22Bが設けられている。
【0062】
上記第1原料ガス導入弁21Aおよび第2原料ガス導入弁21Bが、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bに対する原料空気の供給と停止が制御される。上記第1製品ガス排出弁22Aおよび第2製品ガス排出弁22Bが、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから製品ガスの排出と停止が制御される。
【0063】
すなわち、上記第1原料ガス導入弁21Aおよび第2原料ガス導入弁21B、第1製品ガス排出弁22Aおよび第2製品ガス排出弁22Bを開閉制御することにより、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bにおける吸着工程の切換えが制御される。
【0064】
上記均圧路13には均圧弁23が設けられている。上記均圧弁23が、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、上記均圧路13は、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bにおいて、吸着工程から再生工程に切り換えるとき、および再生工程から吸着工程に切り換えるときに、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bを互いに連通させて内部圧力を均一化する均圧工程が制御される。
【0065】
上記パージガス路14にはオリフィス24が設けられている。上記オリフィス24は、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bのうち一方が吸着工程を行っているときに、再生工程を行う他方に対して製品ガスの一部を流す際に流量を絞るものである。
【0066】
上記バイパス路5にはバイパス弁35が設けられている。上記バイパス弁35は、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された製品ガスを、上記製品ガス貯留槽3を経由させずに上記製品ガス供給路4に導入するときに開弁させる。第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された製品ガスを、上記製品ガス貯留槽3に導入する定常運転のときは閉弁させる。上記バイパス弁35は、後述する弁制御手段6によって開閉制御される。
【0067】
上記合流路12Cにおけるバイパス路5への分岐よりも下流側には、貯留槽入口弁34Aが設けられている。また、上記製品ガス供給路4におけるバイパス路5への分岐よりも上流側には、貯留槽出口弁34Bが設けられている。貯留槽入口弁34Aおよび貯留槽出口弁34Bが、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、製品ガス貯留槽3に対する製品ガスの導入と停止が制御される。
【0068】
上記製品ガス供給路4の下流側には、製品ガス供給弁29が設けられている。上記製品ガス供給弁29が、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、製品ガスの供給と停止を制御する。
【0069】
上記第1還流路7Aには第1還流弁27Aが設けられている。また、上記第2還流路7Bには第2還流弁27Bが設けられている。上記第1還流弁27Aおよび第2還流弁27Bが、後述する弁制御手段6によって開閉制御されることにより、上記バイパス路5を経由した製品ガスの少なくとも一部を、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの出口側に還流させるか停止させるかを制御する。
【0070】
上記バイパス弁35、貯留槽入口弁34Aおよび貯留槽出口弁34B、上記第1還流弁27Aおよび第2還流弁27Bを、後述する弁制御手段6によって開閉制御することにより、浄化運転が制御される。
【0071】
上記第1排気路16Aおよび第2排気路16Bにはそれぞれ、第1排気ガス弁25Aおよび第2排気ガス弁25Bが設けられている。上記第1排気ガス弁25Aおよび第2排気ガス弁25Bを、後述する弁制御手段6によって開閉制御することにより、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排ガスを排出するか停止するかを制御する。つまり、上記第1排気ガス弁25Aおよび第2排気ガス弁25Bを開閉制御することにより、上記再生工程の切換えを制御する。
【0072】
〔その他の機器〕
この装置は、製品ガス貯留槽3より上流にはガス濃度検知器が設けられていない。そして、上記浄化運転のあいだ、上記製品ガス供給路4に設けたガス濃度検知器としての酸素濃度センサ17により、上記各吸着槽1A,1Bから排出された上記製品ガスの濃度を検知する。
【0073】
また、上記製品ガス供給路4には、流量センサ18が設けられている。また、上記排気ガス路15には、サイレンサ19が設けられている。
【0074】
〔弁制御手段〕
この装置は、上記弁構造の項目において説明した各種の弁を開閉制御するための弁制御手段6を備えている。
【0075】
上記弁制御手段6は、まず、定常運転において、吸着工程と再生工程と均圧工程の切換えを制御する。
【0076】
また、弁制御手段6は、休止状態の装置を起動したときの浄化運転を制御する。
すなわち、上記浄化運転において、上記弁制御手段6は、
休止状態の装置を起動したときに、上記各吸着槽1A,1Bから排出された上記製品ガスの濃度が所定の基準値になるまで、上記各吸着槽1A,1Bから排出された上記製品ガスを上記バイパス路5に導入する浄化運転を行うよう、複数のガス流路に設けられた複数の弁を制御する。
【0077】
また、上記弁制御手段6は、
上記浄化運転を、上記吸着槽1A,1B内を高圧にして行う高圧浄化工程と、上記吸着槽1A,1B内を低圧にして行う低圧浄化工程とを、上記複数の吸着槽1A,1Bが交代で受け持つように弁を制御し、
さらに、上記還流路7A,7Bにより、上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽1A,1Bに対して上記製品ガスを還流させるよう弁を制御する。
【0078】
以上に述べた構造の装置において、上記定常運転および浄化運転において弁制御手段6が行う詳細な弁の開閉制御については後述する。
【0079】
〔起動工程〕
図2は、休止状態の装置を起動するときの起動工程を示す図である。図に示すように、装置を起動すると、まず、後に詳述する浄化運転を行う。この浄化運転では、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出される製品ガスが所定の純度になるまで、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1B内を浄化する。
【0080】
すなわち、上述したように、定常運転で吸着工程を行っているときの第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの内部は、出口側は酸素濃度が低く、入口側は酸素濃度が高い。このため、吸着剤が吸着している酸素分子は、入口側で多く、出口側で少ない。これは、再生工程において酸素分子が離脱する状態にも関係する。すなわち、再生工程が完了した時点で、入口側の吸着剤に残る酸素分子が多く、出口側の吸着剤に残る酸素分子が少ない。この状態で装置の運転を停止し、停止時間が長くなるにつれ、入口側と出口側の酸素濃度が均一化する。第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの内部空間に残るガスと、吸着剤が吸着保持しているガスとのあいだで、分子拡散による分子平衡が進むことにより、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの内部全体の吸着剤において、ガスの吸着状態が同じようになる。つまり、本実施形態の吸着剤は、ガス成分による吸着速度の差を利用してガスを分離している。
【0081】
図13は、モレキュラーシーブにおける窒素と酸素の時間に対する吸着量を示す線図である。このように、例えばモレキュラーシーブであれば、窒素よりも酸素の方が吸着される速度が速く、この速度差を利用して、酸素を優先的に吸着させて窒素を分離している。したがって、装置の停止時間が長くなると、吸着剤には酸素も窒素も両方吸着されてしまい、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1B内全体の吸着剤が平衡状態となる。この状態から装置を再稼動すると、起動の初期は、特に出口側の吸着剤から多くの酸素が離脱して、製品ガスの純度が低下する。このような、第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bの内部における酸素濃度の勾配を、定常運転中の状態に戻すために浄化運転を行なうのである。
【0082】
上記浄化運転は、上述したように、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出される製品ガスを、製品ガス貯留槽3に導入せずにバイパス路5を経由して製品ガス供給路4に導入する。また、製品ガス供給路4に導入された製品ガスを、第1還流路7Aおよび第2還流路7Bを介して、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bのうち低圧浄化工程を行っている側の出口側に還流させる。上記浄化運転は、上記酸素濃度センサ17で検知される製品ガスの酸素濃度が、所定の基準値を下回るまで続けられる。
【0083】
上記浄化運転において、上記酸素濃度センサ17で検知される製品ガスの酸素濃度が所定の基準値を下回ると、準備運転を行う。この準備運転では定常運転と同様に、吸着工程,均圧工程,再生工程の切換え運転を行う。したがって、この準備運転では、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bから排出された製品ガスは、一旦製品ガス貯留槽3に導入され、製品ガス貯留槽3から製品ガス供給路4に導入される。
【0084】
この準備運転では、製品ガス貯留槽3を経由した製品ガスの純度を酸素濃度センサ17で確認するために実施する。上記準備運転は、上記酸素濃度センサ17で検知される製品ガスの酸素濃度が、所定の基準値を下回るまで続けられる。
【0085】
上記準備運転において、上記酸素濃度センサ17で検知される製品ガスの酸素濃度が所定の基準値を下回ると、後に詳述する定常運転が行われる。
【0086】
つぎに、定常運転および浄化運転について詳しく説明する。
【0087】
〔定常運転〕
まず、定常運転の動作について説明する。
図3は、定常運転において、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bで行われる工程のサイクルを説明する図である。
【0088】
第1吸着槽1Aで吸着工程を行うあいだ、第2吸着槽1Bでは再生工程を行う。反対に、第2吸着槽1Bで吸着工程を行うあいだ、第1吸着槽1Aでは再生工程を行う。また、第1吸着槽1Aにおいて、吸着工程から再生工程に移行するとき、および再生工程から吸着工程に移行するとき、いずれも均圧工程を行う。同様に、第2吸着槽1Bにおいて、再生工程から吸着工程に移行するとき、および吸着工程から再生工程に移行するとき、いずれも均圧工程を行う。このように、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bでは、吸着工程と再生工程を交代で受け持つ。このとき、吸着工程と再生工程のあいだには均圧工程を行う。
【0089】
図4は、第1吸着槽1Aで吸着工程を行ない、第2吸着槽1Bで再生工程を行なうときのガスの流れを示す図である。なお、図4図6では、ガスが流れている流路を太線で示した。
【0090】
定常運転のあいだは、弁制御手段6の制御により、貯留槽入口弁34A、貯留槽出口弁34B、製品ガス供給弁29を常に開いている。これにより、吸着工程と再生工程を行うあいだおよび均圧工程のあいだも、常に製品ガス供給路4を通して製品ガスを目的のところに供給する。
【0091】
弁制御手段6の制御により開く弁は、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、第2排気ガス弁25Bである。弁制御手段6の制御により閉じる弁は、第2原料ガス導入弁21B、第2製品ガス排出弁22B、第1排気ガス弁25A、均圧弁23、バイパス弁35、第1還流弁27A、第2還流弁27Bである。
【0092】
圧縮機10を出た圧縮空気が、第1原料ガス導入路11Aを通って第1吸着槽1Aに導入される。第1吸着槽1Aで酸素が吸着除去されて分離した窒素ガスは、第1製品ガス排出路12Aおよび合流路12Cを通って製品ガス貯留槽3に一時的に貯留される。製品ガス貯留槽3に貯留された製品ガスは、製品ガス供給路4を通って目的とするところに供給される。
【0093】
一方、第1吸着槽1Aから排出された製品ガスの一部は、パージガス路14および第2製品ガス排出路12Bを通って、第2吸着槽1Bの出口側に導入される。第2吸着槽1Bの出口側に導入された製品ガスは、第2吸着槽1Bの内部を吸着工程と逆方向に流れ、第2製品ガス導入路11B、第2排気路16B、排気ガス路15を通って外部に排出される。このとき、吸着剤から酸素が離脱し、吸着剤の吸着能力が回復する。
【0094】
図5は、図4の状態から均圧工程に移行したときのガスの流れを示す図である。弁制御手段6の制御により閉じる弁は、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、第2排気ガス弁25Bである。弁制御手段6の制御により均圧弁23が開く。
【0095】
この均圧工程では、それまで吸着工程が行われて内部が高圧になっている第1吸着槽1Aから、それまで再生工程が行われて内部が低圧(大気圧)になっている第2吸着槽1Bに向かってガスが流れる(図示の矢印X)。また、均圧工程のあいだは、製品ガス貯留槽3に一時的に貯留されている製品ガスが、製品ガス供給路4を通して目的のところに供給される。
【0096】
図6は、上記均圧工程のつぎに、第1吸着槽1Aで再生工程を行ない、第2吸着槽1Bで吸着工程を行なうときのガスの流れを示す図である。
【0097】
弁制御手段6の制御により開く弁は、第2原料ガス導入弁21B、第2製品ガス排出弁22B、第1排気ガス弁25Aである。弁制御手段6の制御により閉じる弁は、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、第2排気ガス弁25B、均圧弁23、バイパス弁35、第1還流弁27A、第2還流弁27Bである。
【0098】
圧縮機10を出た圧縮空気が、第2原料ガス導入路11Bを通って第2吸着槽1Bに導入される。第2吸着槽1Bで酸素が吸着除去されて分離した窒素ガスは、第2製品ガス排出路12Bおよび合流路12Cを通って製品ガス貯留槽3に一時的に貯留される。製品ガス貯留槽3に貯留された製品ガスは、製品ガス供給路4を通って目的とするところに供給される。
【0099】
一方、第2吸着槽1Bから排出された製品ガスの一部は、パージガス路14および第1製品ガス排出路12Aを通って、第1吸着槽1Aの出口側に導入される。第1吸着槽1Aの出口側に導入された製品ガスは、第1吸着槽1Aの内部を吸着工程と逆方向に流れ、第1原料ガス導入路11A、第1排気路16A、排気ガス路15を通って外部に排出される。このとき、吸着剤から酸素が離脱し、吸着剤の吸着能力が回復する。
【0100】
つぎに行う均圧工程では、弁の開閉制御は図5に示した状態と同様である。ガスの流れる方向が逆になり、それまで吸着工程が行われて内部が高圧になっている第2吸着槽1Bから、それまで再生工程が行われて内部が低圧(大気圧)になっている第1吸着槽1Aに向かってガスが流れる(図示の矢印Y)。
【0101】
そして次に、再び図4の状態となり、第1吸着槽1Aで吸着工程を行ない、第2吸着槽1Bで再生工程を行なう。以下、同様に繰り返す。
【0102】
〔浄化運転〕
つぎに、装置の起動時に、上述した定常運転にはいる準備として行う浄化運転について説明する。
図7は、浄化運転において、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bで行われる工程のサイクルを説明する図である。
【0103】
第1吸着槽1Aで高圧浄化工程を行うあいだ、第2吸着槽1Bでは低圧浄化工程を行う。反対に、第2吸着槽1Bで高圧浄化工程を行うあいだ、第1吸着槽1Aでは低圧浄化工程を行う。また、第1吸着槽1Aにおいて、高圧浄化工程から低圧浄化工程に移行するとき、および低圧浄化工程から高圧浄化工程に移行するとき、いずれも均圧工程を行う。同様に、第2吸着槽1Bにおいて、低圧浄化工程から高圧浄化工程に移行するとき、および高圧浄化工程から低圧浄化工程に移行するとき、いずれも均圧工程を行う。このように、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bでは、高圧浄化工程と低圧浄化工程を交代で受け持つ。このとき、高圧浄化工程と低圧浄化工程のあいだには均圧工程を行う。
【0104】
上記高圧浄化工程は、定常運転における吸着工程と同様に、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bに対し、入口側(図示の下側)から圧縮空気を導入する。第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1B内は加圧状態となり、空気中の酸素が優先的に吸着剤に吸着される。酸素の吸着によって分離された窒素が、出口側(図示の上側)から排出される。
【0105】
上記低圧浄化工程は、定常運転における再生工程と同様に、高圧浄化工程において高圧となった上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bを、入口側(図示の下側)から大気圧に開放し、内部のガスを排出する。これにより、吸着剤に吸着された酸素が吸着剤から離脱する。
【0106】
上記均圧工程は、定常運転における均圧工程と同様であり、第1吸着槽1Aと第2吸着槽1Bを互いに連通させて内部圧力を均一化する。
【0107】
図8は、第1吸着槽1Aで高圧浄化工程を行ない、第2吸着槽1Bで低圧浄化工程を行なうときのガスの流れを示す図である。なお、図8図10では、ガスが流れている流路を太線で示した。
【0108】
浄化運転のあいだは、弁制御手段6の制御により、バイパス弁35を常に開き、貯留槽入口弁34Aおよび貯留槽出口弁34Bを常に閉じている。これにより、製品ガス貯留槽3を、ガスの流れから隔離する。
【0109】
弁制御手段6の制御により開く弁は、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、バイパス弁35、第2還流弁27B、第2排気ガス弁25Bである。弁制御手段6の制御により閉じる弁は、製品ガス供給弁29、第2原料ガス導入弁21B、第2製品ガス排出弁22B、均圧弁23、貯留槽入口弁34A、貯留槽出口弁34B、第1還流弁27A、第1排気ガス弁25Aである。
【0110】
圧縮機10を出た圧縮空気が、第1原料ガス導入路11Aを通って第1吸着槽1Aに導入される。第1吸着槽1Aで酸素が吸着除去されて窒素ガスが分離される。これが高圧浄化工程である。高圧浄化工程で分離された窒素ガスは、第1製品ガス排出路12A、合流路12C、バイパス路5を通って製品ガス供給路4に導入される。このとき、窒素ガスは製品ガス貯留槽3に導入されない。
【0111】
上記製品ガス供給路4に導入された窒素ガスは、第2還流路7B、第2製品ガス排出路12Bを通って第2吸着槽1Bの出口側に供給される。第2吸着槽1Bの出口側に供給された窒素ガスは、第2吸着槽1B内を高圧浄化工程と反対方向に流れる。このとき、吸着剤から酸素が離脱し、吸着剤が浄化される。
【0112】
さらに、第1吸着槽1Aから排出されたガスの一部は、パージガス路14および第2製品ガス排出路12Bを通って、第2吸着槽1Bの出口側に導入される。第2吸着槽1Bの出口側に導入されたガスは、第2吸着槽1Bの内部を高圧浄化工程と逆方向に流れ、第2製品ガス導入路11B、第2排気路16B、排気ガス路15を通って外部に排出される。このとき、吸着剤から酸素が離脱し、吸着剤が浄化される。
【0113】
これが低圧浄化工程である。低圧浄化工程を経たガスは、第2排気路16Bおよび排気ガス路15を通って外部に排出される。
【0114】
図9は、均圧工程を行なうときのガスの流れを示す図である。
弁制御手段6の制御により閉じる弁は、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、第2排気ガス弁25Bである。弁制御手段6の制御により均圧弁23が開く。ガスの流れは、それまで高圧浄化工程が行われて内部が高圧になっている第1吸着槽1Aから、それまで低圧浄化工程が行われて内部が低圧(大気圧)になっている第2吸着槽1Bに向かってガスが流れる(図示の矢印X)。
【0115】
図10は、第1吸着槽1Aで低圧浄化工程を行ない、第2吸着槽1Bで高圧浄化工程を行なうときのガスの流れを示す図である。
【0116】
弁制御手段6の制御により開く弁は、第2原料ガス導入弁21B、第2製品ガス排出弁22B、バイパス弁35、第1還流弁27A、第1排気ガス弁25Aである。弁制御手段6の制御により閉じる弁は、製品ガス供給弁29、第1原料ガス導入弁21A、第1製品ガス排出弁22A、均圧弁23、貯留槽入口弁34A、貯留槽出口弁34B、第2還流弁27B、第2排気ガス弁25Bである。
【0117】
圧縮機10を出た圧縮空気が、第2原料ガス導入路11Bを通って第2吸着槽1Bに導入される。第2吸着槽1Bで酸素が吸着除去されて窒素ガスが分離される。これが高圧浄化工程である。高圧浄化工程で分離された窒素ガスは、第2製品ガス排出路12B、合流路12C、バイパス路5を通って製品ガス供給路4に導入される。このとき、窒素ガスは製品ガス貯留槽3に導入されない。
【0118】
上記製品ガス供給路4に導入された窒素ガスは、第1還流路7A、第1製品ガス排出路12Aを通って第1吸着槽1Aの出口側に供給される。第1吸着槽1Aの出口側に供給された窒素ガスは、第1吸着槽1A内を高圧浄化工程と反対方向に流れる。このとき、吸着剤から酸素が離脱する。これが低圧浄化工程である。低圧浄化工程を経たガスは、第1排気路16Aおよび排気ガス路15を通って外部に排出される。
【0119】
つぎに行う均圧工程では、弁の開閉制御は図9に示した状態と同様である。ガスの流れは、それまで高圧浄化工程が行われて内部が高圧になっている第2吸着槽1Bから、それまで低圧浄化工程が行われて内部が低圧(大気圧)になっている第1吸着槽1Aに向かってガスが流れる(図示の矢印Y)。
【0120】
そして次に、再び図8の状態となり、第1吸着槽1Aで高圧浄化工程を行ない、第2吸着槽1Bで低圧浄化工程を行なう。以下、同様に繰り返す。
【0121】
〔第2実施形態〕
図11は、本発明の第2実施形態を示す。
【0122】
この例は、複数のバイパス路(第1バイパス路5Aと第2バイパス路5B)を備えた例である。すなわち、この装置では、第1製品ガス排出路12Aと第2製品ガス排出路12Bにそれぞれ対応し、第1バイパス路5Aと第2バイパス路5Bが設けられている。第1バイパス路5Aと第2バイパス路5Bには、それぞれ第1バイパス弁35Aと第2バイパス弁35Bが設けられている。また、第1製品ガス排出路12Aと第2製品ガス排出路12Bは、それぞれ製品ガス貯留槽3の入口近くまで配管されている。それ以外は、図1に示す装置と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この例は、上記第1実施形態で単数であったバイパス路5が複数(第1バイパス路5Aと第2バイパス路5B)になっただけであり、同様の動作によって同様の機能を発揮し、同様の作用効果を奏する。
【0123】
〔作用効果〕
上記各実施形態で説明した装置および方法では、以下の作用効果を奏する。
【0124】
すなわち、休止状態の装置を起動したときに、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された上記製品ガスを上記バイパス路5に導入できる。こうすることにより、起動初期に上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された純度の低い上記製品ガスは、上記製品ガス貯留槽3に導入されない。したがって、上記製品ガス貯留槽3内に充填された上記製品ガスの純度を低下させることがない。このため、上記製品ガス貯留槽3内の製品ガスの純度を引き上げるために必要とされていた準備運転が節減される。本発明によれば、装置の起動時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。特に、近年のように高純度の製品ガスが求められる情況において、起動時間を短縮する効果は絶大である。
【0125】
休止状態の装置を起動したときに上記浄化運転を行うことにより、起動初期に上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された純度の低い上記製品ガスは、上記製品ガス貯留槽3に導入されない。したがって、上記製品ガス貯留槽3内に充填された上記製品ガスの純度を低下させることがない。このため、上記製品ガス貯留槽3内の製品ガスの純度を引き上げるために必要とされていた準備運転が節減される。本発明によれば、装置の起動時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。特に、近年のように高純度の製品ガスが求められる情況において、起動時間を短縮する効果は顕著に現れる。
【0126】
上記浄化運転のうち上記高圧浄化工程では、上記吸着工程と同様に、混合ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させて除去する。一方、上記浄化運転のうち上記低圧浄化工程では、上記再生工程と同様に、上記吸着剤に吸着された上記除去成分を上記吸着剤から放出させる。上記低圧浄化工程を行う側の吸着槽に対して上記第1還流路7Aおよび第2還流路7Bにより上記製品ガスを還流させることにより、上記吸着剤に吸着された上記除去成分は、上記吸着剤から放出されやすくなり、吸着剤の再生効果が高くなる。このような浄化運転を行うことにより、上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bにおいて分離される製品ガスの純度が速やかに高くなり、準備運転時間をより短縮することができる。
【0127】
上記浄化運転のあいだ上記第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bから排出された上記製品ガスの濃度を、上記製品ガス供給路4に設けた酸素濃度センサ17により検知し、製品ガス貯留槽3より上流にはガス濃度検知器を設けない。したがって、浄化運転中の浄化状態を正確に検出できる。どのような運用が行われたとしても、浄化運転を完了できるタイミングが明確に把握できる。つまり、念のために浄化運転を延長するようなことをしなくてすむ。浄化運転の時間を不必要に長くしなくてすむ。また、ガス濃度検知器の装備を節約し、設備コスト、メンテナンスコスト、計器のチェック作業等を低減することができる。
【0128】
〔変形例〕
上述した各実施形態および実施例では、窒素ガスを製品ガスとして生成する装置および方法について説明した。
【0129】
本発明は、酸素ガスを製品ガスとして生成する装置および方法に適用することもできる。この場合は、吸着槽に充填する吸着剤として窒素を優先的に吸着するゼオライトを使用し、空気中の窒素を除去成分として吸着し、目的成分として酸素を分離する。
【0130】
また、本発明は、混合ガスとして空気を使用する場合に限らず、各種の混合ガスから除去成分を吸着剤に吸着し、目的成分を分離して製品ガスとする装置および方法に適用することができる。
【0131】
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【実施例】
【0132】
つぎに、実施例について説明する。
図1に示す装置により、停止状態の装置を起動してから、製品ガスが目的とする基準濃度に達して定常運転を開始できるようになるまでの時間を計測した。
基準濃度:窒素99.999%
停止時間:15時間、63時間
【0133】
(1)実施例1
装置を起動してから、図8図10で説明したように、バイパス路5を利用した高圧浄化工程、均圧工程、低圧浄化工程を繰り返すことによる準備運転を行った。このとき、第1還流路7Aおよび第2還流路7Bから第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bへの窒素ガスの還流は行わなかった。
(2)実施例2
装置を起動してから、図8図10で説明したように、バイパス路5を利用した高圧浄化工程、均圧工程、低圧浄化工程を繰り返すことによる準備運転を行った。このとき、第1還流路7Aおよび第2還流路7Bから第1吸着槽1Aおよび第2吸着槽1Bへの窒素ガスの還流も併せて行った。
(3)比較例
装置を起動してから、図4図6で説明した吸着工程、均圧工程、再生工程を繰り返すことによる準備運転を行った。なお、準備運転においては、製品ガス供給弁29を閉じ、製品ガス貯留槽3から排出されてきたガスを図示しない大気放出路により大気に放出した。
【0134】
図12は、上記実施例1、実施例2および比較例についての試験結果を示す。装置の停止時間を横軸に、製品ガスが目的とする基準濃度に達して定常運転を開始するまでの時間を縦軸にしてプロットした。図から明らかなように、比較例に対して実施例1では、準備に要する時間がかなり短縮し、実施例2ではさらに短縮した。
【符号の説明】
【0135】
1A:第1吸着槽
1B:第2吸着槽
3:製品ガス貯留槽
4:製品ガス供給路
5:バイパス路
5A:第1バイパス路
5B:第2バイパス路
6:弁制御手段
7A:第1還流路
7B:第2還流路
10:圧縮機
11A:第1原料ガス導入路
11B:第2原料ガス導入路
12A:第1製品ガス排出路
12B:第2製品ガス排出路
12C:合流路
13:均圧路
14:パージガス路
15:排気ガス路
16A:第1排気路
16B:第2排気路
17:酸素濃度センサ
18:流量センサ
19:サイレンサ
21A:第1原料ガス導入弁
21B:第2原料ガス導入弁
22A:第1製品ガス排出弁
22B:第2製品ガス排出弁
23:均圧弁
24:オリフィス
25A:第1排気ガス弁
25B:第2排気ガス弁
27A:第1還流弁
27B:第2還流弁
29:製品ガス供給弁
34A:貯留槽入口弁
34B:貯留槽出口弁
35:バイパス弁
35A:第1バイパス弁
35B:第2バイパス弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13