特許第6231367号(P6231367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231367
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】有機劣化物除去剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20171106BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20171106BHJP
   C10M 149/04 20060101ALN20171106BHJP
   C10M 149/10 20060101ALN20171106BHJP
   C10M 149/06 20060101ALN20171106BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20171106BHJP
   C10M 105/34 20060101ALN20171106BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20171106BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20171106BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C10M161/00
   C10M169/04
   !C10M149/04
   !C10M149/10
   !C10M149/06
   !C10M133/06
   !C10M105/34
   !C10M107/02
   C10N20:04
   C10N30:04
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-255081(P2013-255081)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-61894(P2015-61894A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-172329(P2013-172329)
(32)【優先日】2013年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅弘
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−197509(JP,A)
【文献】 特開2003−253285(JP,A)
【文献】 特開平07−157786(JP,A)
【文献】 特開2005−146010(JP,A)
【文献】 特表2012−520359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基、アンモニウム基、及び窒素含有複素環基から選ばれる少なくとも何れかの窒素含有基と不飽和基とを有する窒素含有単量体が重合した窒素含有重合体と、イミン単量体が重合しイミノ基を窒素含有基とする窒素含有重合体との少なくとも何れかでありその重量平均分子量を300〜100,000とする重合体、及び
下記化学式(1)
N ・・・(1)
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数4〜22のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数4〜22のアルキル基であり、但しR及びRの双方が水素原子である場合を除く。)
で示されるアミン化合物
からなる窒素含有物質を含んでおり、前記重合体と前記アミン化合物との重量比を2〜8:8〜2とすることを特徴とする有機劣化物除去剤。
【請求項2】
前記窒素含有単量体が、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、アンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、及び窒素含有複素環基を有する単量体から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の有機劣化物除去剤。
【請求項3】
前記重合体が、前記窒素含有単量体と窒素非含有単量体との共重合体であることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項4】
前記窒素非含有単量体が、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーから選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項3に記載の有機劣化物除去剤。
【請求項5】
前記重合体が、前記窒素含有単量体の10〜60重量部と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体の10〜85重量部と、マクロモノマーの5〜30重量部との共重合体であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項6】
前記窒素含有単量体が、
下記化学式(2)
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ独立して同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、nは2〜8の正数である)で表されるアミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、
下記化学式(3)
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びRはそれぞれ独立して異なり、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、フェニル基、他の原子が置換したフェニル基、Xはハロゲン化物イオン又は酸の陰イオン残基、mは2〜8の正数である)で表されるアンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、
又は、
下記化学式(4)
【化3】
若しくは、下記化学式(5)
【化4】
で表される窒素含有複素環基を有する単量体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項7】
前記重合体が、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体及び/又はアンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体と、マクロモノマーとが共重合し重量平均分子量を4,000〜100,000とする共重合体であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項8】
前記重合体が、窒素含有複素環基を有する単量体と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体と、マクロモノマーとが共重合し重量平均分子量を4,000〜100,000とする共重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項9】
前記重合体が、前記イミン単量体が重合しイミノ基を窒素含有基とする窒素含有重合体であって、ε−カプロラクトン由来の重量平均分子量を500〜4,000とするポリエステルオリゴマーで形成された側鎖と、重量平均分子量を300〜40,000とするポリイミンで形成された主鎖とからなる繰返単位を有し、該側鎖と該主鎖との組成重量比が80:20〜97:3であり、下記化学式(6a)
【化5】
(式中、R10は炭素数1〜4のアルキル鎖)で表される繰返単位Sと、下記化学式(6b)
【化6】
(式中、R10は前記と同じ、Qは該繰返単位ごとに同一又は異なり下記化学式(7)
【化7】
(式中、R11は炭素数7〜17のアルキル鎖、R12は炭素数2〜5のアルキレン鎖、u=5〜15である)で表される側鎖基又は水素原子とし、その全繰返単位のうち少なくとも一つを該側鎖基とする)で表される繰返単位Tとを、規則的又は不規則的に結合し、前記繰返単位S:前記繰返単位T=1:1〜2:1で前記繰返単位S及び前記繰返単位Tを夫々10〜500含むものであることを特徴とする請求項1に記載の有機劣化物除去剤。
【請求項10】
前記重合体が、前記窒素含有単量体と、炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数2〜18のアルケニル基を含有するアルケニル(メタ)アクリレート類、炭素数2〜4のアルキル基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルキルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルケニル基を含有するアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、並びに炭素数1〜18のアルキルアルケニル基を含有するアルキルアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルキルアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類から選ばれる少なくとも何れかの飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体との共重合体であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項11】
前記重合体が、前記窒素含有単量体と、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルケニル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリエステルマクロモノマー、及び末端(メタ)アクリロイル基含有ポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも何れかのマクロモノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項12】
記アミン化合物のアミン価を30〜450mgKOH/gとすることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の有機劣化物除去剤。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の有機劣化物除去剤と、潤滑成分とを含有することを特徴とする潤滑剤。
【請求項14】
前記有機劣化物除去剤を2〜20重量部と、ポリオレフィン及び脂肪酸エステルから選ばれる前記潤滑成分を80〜98重量部とを、含有することを特徴とする請求項13に記載の潤滑剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤に添加されるもので、樹脂液や可塑剤を含む潤滑剤中で有機物の酸化や変質により生じた劣化物や不溶物のような不溶性の有機劣化物を分散除去するために用いられる有機劣化物除去剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂液や可塑剤を含む潤滑剤が部分的に高温や高圧に曝されると潤滑剤を構成する有機物が劣化し、すす状のカーボンかすやスラッジを生成することが頻繁にある。カーボンかすとは、有機物から構成される潤滑剤の熱的、機械的、化学的な変質及び酸化により生じた劣化物であり、スラッジとは、前記劣化物や潤滑剤中の異物等が結びつき集合体となって、被潤滑部に付着堆積する不溶物である。このような劣化物や不溶物である有機劣化物は、潤滑剤中で凝集及び沈殿又は堆積することで、潤滑剤の機能を損ない、品質及び性能の低下を生じさせる。
【0003】
このような問題を改善するものとして、例えば特許文献1に、アミノアルコールからなるディーゼルエンジン用潤滑油添加剤が開示されている。陸上用及び船舶用のディーゼルエンジン用潤滑油の清浄性を向上させ、これにより潤滑油の寿命を延長することができるものである。また、特許文献2に内燃エンジンにおけるピストンの清浄性を向上させる、鉱油をベースとした潤滑油組成物が開示されている。この潤滑油組成物中に含有される分散剤としてコハク酸イミド誘導体等が用いられており、サスペンションにおいて酸化から生じる固体及び液体汚染物質を保持し、金属部分へのスラッジの凝結及び沈殿又は堆積を防ぐことができる。
【0004】
このような従来の清浄性を向上させた潤滑剤では市場で要求されるカーボンかすやスラッジに対し十分な除去性能が得られないため、各種潤滑剤中の不要成分を十分に分散して安定化し、除去できるものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−100485号公報
【特許文献2】特開2005−054193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、樹脂液や可塑剤を含む潤滑剤中における加熱処理、圧力処理、異物混入、雰囲気ガスの酸素、SO、NO等による変質や酸化等によって生じたカーボンかすやスラッジに対する吸着性、分散性、安定性を一層向上し、これらの不溶性の有機劣化物を除去することができ、汎用性を有し簡便に製造することができる安価な有機劣化物除去剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された有機劣化物除去剤は、アミノ基、アンモニウム基、及び窒素含有複素環基から選ばれる少なくとも何れかの窒素含有基と不飽和基とを有する窒素含有単量体が重合した窒素含有重合体と、イミン単量体が重合しイミノ基を窒素含有基とする窒素含有重合体との少なくとも何れかでありその重量平均分子量を300〜100,000とする重合体、及び下記化学式(1)
N ・・・(1)
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数4〜22のアルキル基、Rは水素原子又は炭素数4〜22のアルキル基であり、但しR及びRの双方が水素原子である場合を除く。)で示されるアミン化合物からなる窒素含有物質を含んでおり、前記重合体と前記アミン化合物との重量比を2〜8:8〜2とすることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1に記載されたものであって、前記窒素含有単量体が、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、アンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、及び窒素含有複素環基を有する単量体から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜2の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、前記窒素含有単量体と窒素非含有単量体との共重合体であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の有機劣化物除去剤は、請求項3に記載されたものであって、前記窒素非含有単量体が、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーから選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜3の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、前記窒素含有単量体の10〜60重量部と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体の10〜85重量部と、マクロモノマーの5〜30重量部との共重合体であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜5の何れかに記載されたものであって、前記窒素含有単量体が、下記化学式(2)
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ独立して同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、nは2〜8の正数である)で表されるアミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、下記化学式(3)
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R、R及びRはそれぞれ独立して異なり、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、フェニル基、他の原子が置換したフェニル基、Xはハロゲン化物イオン又は酸の陰イオン残基、mは2〜8の正数である)で表されるアンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、又は、下記化学式(4)
【化3】
若しくは、下記化学式(5)
【化4】
で表される窒素含有複素環基を有する単量体であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜6の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体及び/又はアンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体と、マクロモノマーとが共重合し重量平均分子量を4,000〜100,000とする共重合体であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜7の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、窒素含有複素環基を有する単量体と、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体と、マクロモノマーとが共重合し重量平均分子量を4,000〜100,000とする共重合体であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1に記載されたものであって、前記重合体が、前記イミン単量体が重合しイミノ基を窒素含有基とする窒素含有重合体であって、ε−カプロラクトン由来の重量平均分子量を500〜4,000とするポリエステルオリゴマーで形成された側鎖と、重量平均分子量を300〜40,000とするポリイミンで形成された主鎖とからなる繰返単位を有し、該側鎖と該主鎖との組成重量比が80:20〜97:3であり、下記化学式(6a)
【化5】
(式中、R10は炭素数1〜4のアルキル鎖)で表される繰返単位Sと、下記化学式(6b)
【化6】
(式中、R10は前記と同じ、Qは該繰返単位ごとに同一又は異なり下記化学式(7)
【化7】
(式中、R11は炭素数7〜17のアルキル鎖、R12は炭素数2〜5のアルキレン鎖、u=5〜15である)で表される側鎖基又は水素原子とし、その全繰返単位のうち少なくとも一つを該側鎖基とする)で表される繰返単位Tとを、規則的又は不規則的に結合し、前記繰返単位S:前記繰返単位T=1:1〜2:1で前記繰返単位S及び前記繰返単位Tを夫々10〜500含むものであることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜8の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、前記窒素含有単量体と、炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数2〜18のアルケニル基を含有するアルケニル(メタ)アクリレート類、炭素数2〜4のアルキル基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルキルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルケニル基を含有するアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、並びに炭素数1〜18のアルキルアルケニル基を含有するアルキルアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類及び/又はアルキルアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類から選ばれる少なくとも何れかの飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体との共重合体であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜8の何れかに記載されたものであって、前記重合体が、前記窒素含有単量体と、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルケニル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリエステルマクロモノマー、及び末端(メタ)アクリロイル基含有ポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも何れかのマクロモノマーとの共重合体であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の有機劣化物除去剤は、請求項1〜11の何れかに記載されたものであって、前記窒素含有物質が少なくとも前記アミン化合物を含み、前記アミン化合物のアミン価を30〜450mgKOH/gとすることを特徴とする。
【0019】
の有機劣化物除去剤は、前記窒素含有物質が、前記重合体と前記アミン化合物とからなりその重量比を2〜8:8〜2とすることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の潤滑剤は、請求項1〜12の何れかに記載の有機劣化物除去剤と、潤滑成分とを含有することを特徴とする。
請求項14に記載の潤滑剤は、請求項13に記載されたものであって、前記有機劣化物除去剤を2〜20重量部と、ポリオレフィン及び脂肪酸エステルから選ばれる前記潤滑成分を80〜98重量部とを、含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機劣化物除去剤は、潤滑剤と共に使用されることで、潤滑剤中で生じるカーボンかすやスラッジに選択的に吸着し、分散することができ、潤滑剤の機能を損なわず、その性能を維持し、潤滑剤の品質低下を防ぐことができる。また、潤滑剤中で凝集及び沈殿又は堆積する不溶性の有機劣化物である不溶成分粒子を分散して安定化させることで、潤滑剤の性能低下を引き起こす不要成分を被潤滑部から除去することができる。
【0022】
また、この有機劣化物除去剤は、有機劣化物の除去性に優れ、安価で簡便に製造することができ、汎用的で各種潤滑剤に添加して用いることができる。この有機劣化物除去剤を含有する潤滑剤は、熱的、機械的、化学的な変質及び酸化により生じた劣化物を分散させ、潤滑剤中で凝集・沈殿・堆積を生じさせない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の有機劣化物除去剤は、アミノ基、アンモニウム基、及び窒素含有複素環基から選ばれる少なくとも何れかの窒素含有基と不飽和基とを有する窒素含有単量体が重合した窒素含有重合体と、イミン単量体が重合しイミノ基を窒素含有基とする窒素含有重合体との少なくとも何れかの重合体、及び/又はアミン化合物である窒素含有物質を含むものである。有機劣化物除去剤は、潤滑剤に添加されて使用されるものであり、潤滑剤中に生じる劣化物や不溶物である有機劣化物に窒素含有物質が選択的に吸着され、それらを分散させることで、潤滑剤中における不要成分を被潤滑部から除去することができるというものである。
【0025】
有機劣化物除去剤に含有される重合体は、共重合体又は単重合体であり、その重量平均分子量(Mw)を300〜100,000とする。
【0026】
重合体となる窒素含有単量体としては、例えば、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、アンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、窒素含有複素環基を有する単量体が挙げられる。これらの窒素含有単量体は、1種単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0027】
この重合体は、前記の窒素含有単量体と、前記窒素含有単量体とは異なる別の単量体、例えば窒素非含有単量体との共重合体であってもよい。窒素非含有単量体としては、具体的に、飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、マクロモノマーが挙げられる。これらの窒素非含有単量体は、1種単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の有機劣化物除去剤に含まれる重合体の好ましい例を(A)〜(E)に示す。
【0029】
(A)窒素含有単量体としてアミノ基含有(メタ)アクリレート単量体及び/又はアンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体と、窒素非含有単量体として飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーとを含む重合成分が、共重合している共重合体が挙げられる。
【0030】
アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体としては、前記化学式(2)で表されるもので、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
アンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体としては、前記化学式(3)で表され、1分子中に第4級アンモニウム基と(メタ)アクリロイル基とをひとつずつ有するものである。具体的には、2−ヒドロキシ−3(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエタノールアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルフェニルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。前記列記において、前記化学式(3)中の対イオンXがClのものとして例示したが、対イオンがBr、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO3−、HPO、CSO、OHのような別なイオンであるものであってもよい。
【0032】
飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート類や炭素数2〜18のアルケニル基を含有するアルケニル(メタ)アクリレート類、より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、それらの不飽和誘導体;炭素数2〜4のアルキル基を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;炭素数1〜18のアルキル基を含有するアルキルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類やアルキルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルケニル基を含有するアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類やアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、炭素数1〜18のアルキルアルケニル基を含有するアルキルアルケニルモノアルキレングリコール(メタ)アクリレート類やアルキルアルケニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、これらのうちより具体的には、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリオキシエチレンノニルフェノール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
マクロモノマーとしては、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーであって、例えば、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリアルケニル(メタ)アクリレートマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリエステルマクロモノマー、末端(メタ)アクリロイル基含有ポリスチレンマクロモノマーが挙げられる。より具体的には、マクロモノマーAA−6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:メチルメタクリレート、数平均分子量:6000;東亞合成化学工業株式会社製の商品名)、マクロモノマーAW−6S(末端基:メタクリロイル基、セグメント:イソブチルメタクリレート、数平均分子量:6000;東亞合成化学工業株式会社製の商品名)、マクロモノマーAB−6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:ブチルアクリレート数、平均分子量:6000;東亞合成化学工業株式会社製の商品名)、マクロモノマーAS−6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:スチレン換算の数平均分子量:6000;東亞合成化学工業株式会社製の商品名)が挙げられる。これらの末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマーは、1種単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
これらの重合成分から得られる共重合体である(メタ)アクリル系共重合体の数平均分子量は、4,000〜100,000が好ましい。分子量が4,000より低い場合には、潤滑剤中に生じる劣化物や不溶物である有機劣化物に選択的に吸着し、それらを分散させることで、潤滑剤中における不要成分を被潤滑部から除去する能力が低下する恐れがある。100,000より高い場合には、有機劣化物除去剤の粘度が高くなり過ぎて、取り扱い難くなることがある。(メタ)アクリル系共重合体の数平均分子量は、特に6,000〜50,000が好ましい。その分子量は、アルキルメルカプタン等の重合調整剤を添加して共重合させることにより、適切に調節できる。
【0035】
この(メタ)アクリル系共重合体は、溶液重合により製造されることが好ましい。具体的には、窒素含有単量体の10〜60重量部と、(メタ)アクリレート単量体の10〜85重量部と、マクロモノマーの5〜30重量部とを、重合開始剤の存在下、適当な不活性溶媒中で重合させ、(メタ)アクリル系共重合体を製造する。その反応温度は70〜150℃、好ましくは80〜130℃である。反応時間は1〜15時間、好ましくは4〜8時間である。
【0036】
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0037】
不活性溶剤は、得られる(メタ)アクリル系共重合体を溶解することができ、潤滑剤に混和できるものが好ましい。具体的には、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のセロソルブアセテート系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。また、水や、水と混和性を有する溶剤や、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等を用いることができる。これらの不活性溶剤は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0038】
(B)別の重合体としては、窒素含有単量体として前記化学式(4)で表される窒素含有複素環基を有する単量体であるビニルピリジンと、窒素非含有単量体として飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーとを含む重合成分が、共重合している共重合体が挙げられる。
【0039】
ビニルピリジンとしては、2−ビニルピリジンであってもよく、4−ビニルピリジンであってもよく、これらを併用してもよい。
【0040】
(C)別の重合体としては、窒素含有単量体として前記化学式(5)で表される窒素含有複素環基を有する単量体である1−ビニルイミダゾールと、窒素非含有単量体として飽和又は不飽和で無置換又はヒドロキシ置換又はグリコール基若しくはポリグルコール基置換の(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーとを含む重合成分が、共重合している共重合体が挙げられる。
【0041】
これらの(B)及び(C)で例示した共重合体である(メタ)アクリル/ビニル系共重合体の原料となる重合成分に含まれる(メタ)アクリレート単量体、及びマクロモノマーは、それぞれ、(A)で例示したものと同様のものを用いることができる。また、(メタ)アクリル/ビニル系共重合体は、前記と同様の方法及び重量比で重合することができ、その数平均分子量が4,000〜100,000であると好ましい。
【0042】
(D)また別の重合体としては、イミン単量体が重合しており、イミノ基を窒素含有基としたポリイミン鎖を主鎖とし、ポリエステル鎖を側鎖とする窒素含有重合体が挙げられる。この重合体は、重量平均分子量が300〜40,000のポリイミンからなる主鎖に、重量平均分子量が500〜4,000でポリエステルが側鎖として結合しているものである。この側鎖と主鎖とを成す組成重量比は、80:20〜97:3である。
【0043】
重合体を構成する繰返単位を下記化学式(6a)及び(6b)に示す。
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
前記化学式(6a)及び(6b)中、R10は炭素数1〜4のアルキル鎖である。
【0046】
前記化学式(6a)に表される繰返単位S(以下、Sと略す場合を含む)と、前記化学式(6b)に表される繰返単位T(以下、Tと略す場合を含む)とは、重合体中に、夫々10〜500含まれるものである。その構成比は、S:T=1:1〜2:1である。このSとTとは、規則的又は不規則的に結合して重合体を形成している。結合例としては、例えば、SとTとが、「−S−T−」のように交互に結合し繰返し結合していてもよく、「−S−S−T−」を一つのブロックとして繰返し結合していてもよい。また、SとTとがランダムで繰返し結合していてもよく、「−S−T−」や「−S−S−T−」のようなブロックがランダムで繰返し結合していてもよい。
【0047】
前記化学式(6b)中、Qは繰返単位ごとに同一又は異なり、ポリエステルオリゴマーから得られる下記化学式(7)で表される側鎖基である。また、この繰返単位のうちの一部のQが水素原子であってもよい。
【0048】
【化10】
【0049】
式中、R11は炭素数7〜17のアルキル鎖、R12は炭素数2〜5のアルキレン鎖、u=5〜15である。側鎖基は、ポリエステルオリゴマーから得られる基である。
【0050】
この共重合体の原料である重合成分に含まれるポリエステルオリゴマーは、ε−カプロラクトン由来のものである。例えば、ε−カプロラクトンと飽和脂肪酸とを重合することで得ることができるポリエステルである。また、側鎖であるポリエステル鎖は、その末端にカルボキシル基を有していてもよい。
【0051】
(E)さらに別の重合体としては、前記共重合体(A)〜(C)で例示した各アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体、アンモニウム基含有(メタ)アクリレート単量体、及び窒素含有複素環基を有する単量体のうち何れかの窒素含有単量体が、重合した単重合体が挙げられる。
【0052】
本発明の有機劣化物除去剤は、これらの重合体を単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0053】
本発明の有機劣化物除去剤に含有されるアミン化合物は、下記化学式(1)に示される第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物である。
N ・・・(1)
【0054】
は炭素数8〜22で直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。Rは水素原子又は炭素数4〜22で直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基である。Rは水素原子又は炭素数4〜22で直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基である。R〜Rはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、第1級アミン化合物のようにR及びRの双方が水素原子となる場合は除かれ、R及びRで一方が水素原子の場合、他方はアルキル基となる。
【0055】
及びR〜Rのアルキル基は、夫々炭素数8〜22及び炭素数4〜22のアルキル基を有していれば置換基を有していてもよく、具体的にはカーボンかすに含まれるカルボキシル基のような吸着性の置換基以外の非吸着性の置換基を有していてもよい。非吸着性の置換基としては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基、フェニル基、アシル基、アルキルオキシ基、ベンゾイル基、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル基のような炭化水素基、複素環基、水酸基、シラノール基、パーフルオロアルキル基、フッ素原子のようなハロゲン原子が挙げられる。これらの置換基は、前記の炭素数に含まれない。
【0056】
アミン化合物としては、例えば、ジステアリルアミン、トリオクチルアミン、N−ペンチルジオクチルアミン、ジオクチルアミン、ジブチル−2−エチル−ヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオレイルアミン等のアルキルアミンが挙げられる。
【0057】
これらの第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物は、第1級アミン化合物と異なり立体障害が大きいため、アミン基で吸着したカーボンかす等の有機劣化物を包み込むようにしつつ、それらの有機劣化物を引き離して安定に分散させることができる。また、これらのアミン化合物が有する長鎖アルキル基により、立体障害が大きくなるため、より安定して分散させることができる。このようなアミン化合物は、小さい分子であるため有機劣化物を吸着し易く、さらに長鎖アルキル基を有するため、低分子でありながら高分子である重合体と同様に吸着した有機劣化物を引き離しつつ安定して分散させることができる。
【0058】
本発明の有機劣化物除去剤は、これらのアミン化合物を単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。この有機劣化物除去剤に含まれるアミン化合物は、アミン価が30〜450mgKOH/gであると好ましい。
【0059】
アミン価の測定方法は、以下の通りである。アミン価は試料1g中の第1級、第2級及び第3級アミンの総量を中和するのに要する塩酸量を苛性カリのmg数に換算した値を指す。先ず100ml三角フラスコに試料を計量し、中性混合溶剤、例えばキシレン/イソプロピルアルコール=8/2(体積比)の混合溶液を使用直前にフェノールフタレインを指示薬に使用し、0.1mol/dmエタノール水酸化カリウム溶液で中和滴定を行い、中和した中性溶剤を使用して溶解させる。次にブロムクレゾールグリーンを指示薬に使用し、0.2mol/dmエタノール性塩酸で滴定し、中和滴定を行い、緑色から黄色に変わる点を終点とする。中和するのに要した0.2mol/dmエタノール性塩酸滴定量から、下記の計算式を用いてアミン価を算出する。
【0060】
アミン価=(11.22×A×f)/S
A:0.2mol/dmエタノール性塩酸使用量(ml)
f:0.2mol/dmエタノール性塩酸のファクター
S:試料採取量(g)
【0061】
本発明の有機劣化物除去剤は、重合体やアミン化合物である窒素含有物質のみからなっていてもよく、他の窒素含有有機化合物や添加剤を含有していてもよい。有機劣化物除去剤は、重合体のみ又はアミン化合物のみからなっていてもよく、重合体とアミン化合物との混合物のみからなっていてもよい。窒素含有物質における重合体とアミン化合物との重量比は、2〜8:8〜2であると好ましい。有機劣化物除去剤は、重合体及びアミン化合物を含むことで、高分子量で巨大分子である重合体が吸着できなかった有機劣化物に対して、低分子量で1μmを下回るような小さい分子であるアミン化合物が吸着するため、相乗効果により、吸着性、分散性、安定性をより一層向上させることができる。
【0062】
有機劣化物除去剤は、重合体やアミン化合物である窒素含有物質の他に、活性剤や樹脂等を含む混合物であってもよい。さらに、有機劣化物除去剤は、不活性溶剤に溶解された溶液状であってもよい。有機劣化物除去剤は任意の濃度で希釈されていてもよく、10%〜90%の濃度で希釈されていることが好ましい。
【0063】
不活性溶剤としては、潤滑剤に混和できる有機溶剤であって、具体的な有機溶剤としては、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のセロソルブアセテート系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤等が挙げられる。また、水や、水と混和性を有する溶剤や、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤も用いることができる。これらの不活性溶剤は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0064】
本発明の潤滑剤は、有機劣化物除去剤を2〜20重量部と、ポリオレフィン及び脂肪酸エステルで例示される潤滑成分を80〜98重量部と、必要に応じて酸化防止剤、消泡剤のような第三成分を1〜5重量部とが、含有されたものである。
【0065】
この潤滑剤は、高温・高圧の過酷な物理的環境に曝されたり、回転・撹拌・振動等の過酷な機械的環境に曝されたり、化学物質に接触する劣悪な化学的環境に曝されたりしても、熱的、機械的、化学的な変質及び酸化により生じたカーボンかすやスラッジのような劣化物を潤滑剤中に、分散させることができる。そのため、潤滑剤は、これら劣化物を潤滑剤中で凝集・沈殿・堆積を生じさせないので、潤滑剤の寿命を延ばすことができる。その結果、潤滑剤の交換頻度を低減したり、潤滑剤を用いた機械装置やその部品の消耗を軽減したりすることが、できる。
【実施例】
【0066】
本発明を適用する有機劣化物除去剤を実施例1〜15に示し、本発明の適用外である比較除去剤を比較例1〜7に示す。
【0067】
(実施例1)
環流冷却器、温度計、撹拌機、及び滴下槽を備えた装置にキシレン50重量部を入れて、液温を100℃に保温した。窒素雰囲気下で、エチルアクリレート20重量部、マクロモノマーAA−6(メチルメタクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、ライトエステルDM(ジメチルアミノエチルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)20重量部、ドデシルメルカプタン0.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部の混合溶液を約3時間かけてキシレンに滴下した。滴下終了後、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を加え、100℃で2時間反応させメタクリル系共重合体を合成した。
【0068】
得られた共重合体について、異なる分子量の分子を分離できるゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、下記条件で共重合体を分子量ごとに溶出し、その分子量分布を求めた。カラムは昭和電工株式会社製で製品名SB−806HQを2本、SB−802.5HQを1本連結して使用した。溶出溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に10mMのLiBrを溶かし使用した。予め分子量既知のポリエチレングリコール標準物質から校正曲線を得ておき、この共重合体の分子量分布と比較して、共重合体の重量平均分子量を求めた。その結果、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)が、ポリエチレングリコール換算で43,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は71mgKOH/gであった。
【0069】
(実施例2)
キシレンに滴下する混合溶液の組成を2−エチルヘキシルメタクリレート20重量部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート10重量部、マクロモノマーAB−6(ブチルアクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、ライトエステルDM(ジメチルアミノエチルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)10重量部、ドデシルメルカプタン1重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例1と同様にしてメタクリル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル系共重合体の重量平均分子量が21,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は36mgKOH/gであった。
【0070】
(実施例3)
キシレンに滴下する混合溶液の組成をブチルメタクリレート10重量部、マクロモノマーAA−6(メチルメタクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、ライトエステルDM(ジメチルアミノエチルメタクリレート、共栄社化学株式会社製)10重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート20重量部、ドデシルメルカプタン2.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例1と同様にしてメタクリル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル系共重合体の重量平均分子量が14,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は36mgKOH/gであった。
【0071】
(実施例4)
環流冷却器、温度計、及び撹拌機を備えた装置にラウリン酸60重量部、ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製:プラクセルM)500重量部、及びテトラブチルチタネート0.2重量部を仕込み、窒素雰囲気下、180℃で8時間反応し、ポリエステルオリゴマーを合成した。これにポリイミンとしてポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製:SP−006)56重量部を追加し、180℃で反応させた。8時間反応させることで、黄色ワックス状の有機劣化物除去剤を得た。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、重合体の重量平均分子量が25,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は65mgKOH/gであった。
【0072】
(実施例5)
環流冷却器、温度計、及び撹拌機を備えた装置にステアリン酸90重量部、ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製:プラクセルM)500重量部、及びテトラブチルチタネート0.2重量部を仕込み、窒素雰囲気下、180℃で8時間反応し、ポリエステルオリゴマーを合成した。これにポリイミンとしてポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製:SP−006)59重量部を追加し、180℃で反応させた。8時間反応させることで、黄色ワックス状の有機劣化物除去剤を得た。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、重合体の重量平均分子量が23,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は64mgKOH/gであった。
【0073】
(実施例6)
環流冷却器、温度計、及び撹拌機を備えた装置にラウリン酸90重量部、ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製:プラクセルM)700重量部、及びテトラブチルチタネート0.2重量部を仕込み、窒素雰囲気下、180℃で8時間反応し、ポリエステルオリゴマーを合成した。これにポリイミンとしてポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製:SP−018)79重量部を追加し、180℃で反応させた。8時間反応させることで、黄色ワックス状の有機劣化物除去剤を得た。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、重合体の重量平均分子量が32,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は78mgKOH/gであった。
【0074】
(実施例7)
環流冷却器、温度計、撹拌機、及び滴下槽を備えた装置にキシレン50重量部を入れて、液温を100℃に保温した。窒素雰囲気下で、エチルアクリレート20重量部、マクロモノマーAA−6(メチルメタクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、2−ビニルピリジン(有機合成薬品工業株式会社製)20重量部、ドデシルメルカプタン0.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部の混合溶液を約3時間かけてキシレンに滴下した。滴下終了後、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を加え、100℃で2時間反応させメタクリル/ビニル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル/ビニル系共重合体の重量平均分子量が、27,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は107mgKOH/gであった。
【0075】
(実施例8)
キシレンに滴下する混合溶液の組成を2−エチルヘキシルメタクリレート20重量部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート10重量部、マクロモノマーAB−6(ブチルアクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、2−ビニルピリジン(有機合成薬品工業株式会社製)10重量部、ドデシルメルカプタン1重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例7と同様にしてメタクリル/ビニル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル/ビニル系共重合体の重量平均分子量が23,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は53mgKOH/gであった。
【0076】
(実施例9)
環流冷却器、温度計、撹拌機、及び滴下槽を備えた装置にキシレン50重量部を入れて、液温を100℃に保温した。窒素雰囲気下で、エチルアクリレート20重量部、マクロモノマーAA−6(メチルメタクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、1−ビニルイミダゾール(BASFジャパン株式会社製)20重量部、ドデシルメルカプタン0.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部の混合溶液を約3時間かけてキシレンに滴下した。滴下終了後、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を加え、100℃で2時間反応させメタクリル/ビニル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル/ビニル系共重合体の重量平均分子量が、25,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は120mgKOH/g以下であった。
【0077】
(実施例10)
キシレンに滴下する混合溶液の組成を2−エチルヘキシルメタクリレート20重量部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート10重量部、マクロモノマーAB−6(ブチルアクリレートマクロモノマー、東亜合成化学工業株式会社製)10重量部、1−ビニルイミダゾール(BASFジャパン株式会社製)10重量部、ドデシルメルカプタン1重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例9と同様にしてメタクリル/ビニル系共重合体を合成した。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、メタクリル/ビニル系共重合体の重量平均分子量が、24,000である有機劣化物除去剤を得た。アミン価は58mgKOH/gであった。
【0078】
(実施例11)
ジステアリルアミン50重量部及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い、有機劣化物除去剤を得た。アミン価は57mgKOH/gであった。
【0079】
(実施例12)
トリオクチルアミン20重量部、ジオレイルアミン30重量部、及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い、有機劣化物除去剤を得た。アミン価は65mgKOH/gであった。
【0080】
(実施例13)
実施例1で得られた有機劣化物除去剤30重量部、ジオクチルアミン20重量部及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い有機劣化物除去剤を得た。アミン価は68mgKOH/gであった。
【0081】
(実施例14)
実施例2で得られた有機劣化物除去剤20重量部、ジステアリルアミン30重量部及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い、有機劣化物除去剤を得た。アミン価は42mgKOH/gであった。
【0082】
(実施例15)
実施例4で得られた有機劣化物除去剤30重量部、ジステアリルアミン20重量部及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い、有機劣化物除去剤を得た。アミン価は42mgKOH/gであった。
【0083】
(比較例1)
キシレンに滴下する混合溶液の組成をブチルメタクリレート25重量部、ライトエステルDQ−100(ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、共栄社化学株式会社製)10重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ドデシルメルカプタン2.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例1と同様にして共重合体を合成し、比較除去剤を得た。共重合体の重量平均分子量は18,000であった。アミン価は1mgKOH/g以下であった。
【0084】
(比較例2)
キシレンに滴下する混合溶液の組成をブチルメタクリレート25重量部、2−ビニルピリジン10重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ドデシルメルカプタン2.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例1と同様にして共重合体を合成し、比較除去剤を得た。共重合体の重量平均分子量は19,000であった。アミン価は52mgKOH/gであった。
【0085】
(比較例3)
キシレンに滴下する混合溶液の組成をブチルメタクリレート25重量部、1−ビニルイミダゾール10重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート15重量部、ドデシルメルカプタン2.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部とし、その他の条件を実施例1と同様にして共重合体を合成し、比較除去剤を得た。共重合体の重量平均分子量は20,000であった。アミン価は120mgKOH/gであった。
【0086】
(比較例4)
環流冷却器、温度計、及び撹拌機を備えた装置にヒドロキシステアリン酸800重量部及びテトラブチルチタネート0.2重量部を仕込み、窒素雰囲気下、180℃で脱水縮合反応を8時間行い、ポリエステルオリゴマーを合成した。これにポリイミンとしてポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製:SP−012)75重量部を追加し、180℃で反応させた。8時間反応させることで、黄色軟ワックス状の比較除去剤を得た。重量平均分子量を実施例1と同様に測定した結果、重合体の重量平均分子量は21,000である比較除去剤を得た。アミン価は75mgKOH/gであった。
【0087】
(比較例5)
アミノアルコールとしてモノイソプロパノールアミンを使用し比較除去剤とした。
【0088】
(比較例6)
コハク酸イミド誘導体としてアルケニサクシンモノイミド(日本ルーブリゾール株式会社製:Lubrizol6406)を使用し比較除去剤とした。
【0089】
(比較例7)
1,6−ジアミノヘキサン50重量部及びミネラルスピリット50重量部を計りとり、還流管、撹拌モーター、撹拌羽根、及び加熱器を備えたフラスコ内で、60℃、3時間撹拌混合を行い、比較除去剤を得た。アミン価は484mgKOH/gであった。
【0090】
実施例及び比較例で得られた各除去剤の性能試験を行った。
【0091】
(潤滑剤組成物の調整)
DOS(セバシン酸ジオクチル(2−エチルヘキシル))500重量部、ポリオレフィン(出光興産株式会社製:リニアレンPAO V−50)500重量部を2Lビーカーに計りとり、翼径8cmのディスパーを用いて1500rpmで、30分間撹拌した。得られた混合物を潤滑剤組成物(潤滑成分)とした。
【0092】
(カーボンかす(カーボンブラック)除去性試験)
潤滑剤が雰囲気ガス下で高温に曝され酸化して生成した酸化劣化物のカーボンかすや、有機物の不完全燃焼下で生成される化合物のモデル物質として、カーボンブラックを代用し、カーボンかす除去試験を実施した。140mlのガラス瓶に前記潤滑剤組成物80重量部、ノルマルヘキサン12重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製:#25)5重量部、実施例及び比較例の各除去剤を3重量部計りとり、翼径4cmディスパーにて3000rpmで10分間混合してカーボンブラック分散試験試料とした。分散試料は常温で7日間静置後、カーボンブラックの沈降の有無について、以下の評価基準に基づき目視評価を行った。
◎:沈降物なし(除去性が極めて良好である)
○:沈降物がごく微量にあり(除去性が良好である)
△:沈殿物がある(除去性やや不良)
×:沈殿物が多い(除去性不良)
【0093】
(カーボンかす(樹脂酸化劣化物)除去性試験)
潤滑剤が雰囲気ガスにより酸化して生成した酸化劣化物のカーボンかすモデル物質として、メタクリル(MMA)樹脂を窒素雰囲気下で高温保持した樹脂酸化劣化物を代用し、樹脂酸化劣化物の除去試験を実施した。MMA樹脂(三菱化学株式会社製:アクリペットVH)を窒素雰囲気下、350℃で3時間保持し酸化劣化した有機物である樹脂酸化劣化物を得た。50mlのガラス瓶に前記樹脂酸化劣化物0.1g、ミネラルスピリット20g、実施例及び比較例の各除去剤を0.05g加え酸化劣化物分散試験試料とした。分散試料はペイントシェイカーを用いて10分間撹拌し、常温で7日間静置後、酸化劣化物の沈降の有無について、以下の評価基準に基づき目視評価を行った。
◎:沈降物なし(除去性が極めて良好である)
○:沈降物がごく微量にあり(除去性が良好である)
△:沈殿物がある(除去性やや不良)
×:沈殿物が多い(除去性不良)
【0094】
(スラッジ除去性試験)
潤滑剤成分の熱分解物や異物混入により生成した不溶物であるスラッジのモデル物質として、原油蒸留分から得られる残油であり粘度が高く、さまざまな不純物を含む重油を使用した。50mlのガラス瓶に重油0.1g、ミネラルスピリット20g、実施例及び比較例の各除去剤を0.05g加えスラッジ分散試験試料とした。分散試料はペイントシェイカーを用いて10分間撹拌し、常温で7日間静置後、スラッジの沈降の有無について、以下の評価基準に基づき目視評価を行った。
◎:沈降物なし(除去性が極めて良好である)
○:沈降物がごく微量にあり(除去性が良好である)
△:沈殿物がある(除去性やや不良)
×:沈殿物が多い(除去性不良)
【0095】
(評価結果)
本発明を適用する有機劣化物除去剤の実施例1〜15を添加した試験と、本発明を適用外の比較除去剤の比較例1〜7を添加したカーボンブラック、樹脂酸化劣化物、スラッジの除去性試験の試験結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1より、本発明を適用する実施例1〜15の有機劣化物除去剤は、カーボンブラック、樹脂酸化劣化物、スラッジの除去性試験の評価が良好で除去対象物の沈降を生じないことが明らかとなった。特に、重合体とアミン化合物とを含む実施例13〜15の有機劣化物除去剤は、カーボンブラック、樹脂酸化劣化物、及びスラッジの全ての有機劣化物に対して極めて良好な除去性を示し、種々の有機劣化物に対して優れた除去性を有することが明らかとなった。それに対し、本発明を適用外の比較例1〜7の有機劣化物除去剤は、カーボンブラック、樹脂酸化劣化物、スラッジの全ての除去性において不良又はやや不良であり、除去対象物の沈殿物が多く検出された。本発明の有機劣化物除去剤は、種々の有機劣化物を除去することができ、例えば、大きさ、種類、性質等が異なる複数の有機劣化物が混在していても、吸着性、分散性、安定性を損なわず優れた除去性を示すことができ、汎用的に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の有機劣化物除去剤は、各種潤滑剤に添加して使用することができ、有機物で構成される潤滑剤の劣化物や不溶物のような有機劣化物を除去するものとして汎用される。また、この有機劣化物除去剤を含有する潤滑剤は、擦れ合う機械装置やその部品のために用いられる。