特許第6231393号(P6231393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231393
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】内部オレフィンスルホン酸塩組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/14 20060101AFI20171106BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20171106BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20171106BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20171106BHJP
   C07C 309/20 20060101ALN20171106BHJP
   C07C 303/06 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C11D1/14
   C11D1/29
   A61K8/46
   A61Q19/10
   A61Q5/02
   !C07C309/20
   !C07C303/06
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-16425(P2014-16425)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-177620(P2014-177620A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-25319(P2013-25319)
(32)【優先日】2013年2月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】光田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】堀 寛
(72)【発明者】
【氏名】土井 康裕
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−035609(JP,B1)
【文献】 特開昭49−078706(JP,A)
【文献】 特開昭55−056196(JP,A)
【文献】 特開2003−081935(JP,A)
【文献】 特公昭44−004657(JP,B1)
【文献】 特開昭56−055498(JP,A)
【文献】 特開昭59−027995(JP,A)
【文献】 特開昭59−222466(JP,A)
【文献】 特開昭60−032759(JP,A)
【文献】 特開昭61−134366(JP,A)
【文献】 特開2001−072655(JP,A)
【文献】 特開2001−114749(JP,A)
【文献】 特開2001−247534(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125940(WO,A1)
【文献】 特開2015−027974(JP,A)
【文献】 特開2015−027977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/14
A61K 8/46
A61Q 5/02
A61Q 19/10
C11D 1/29
C07C 303/06
C07C 309/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項2】
炭素数12及び炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩におけるスルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が、28質量%以下である請求項1記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項3】
炭素数12及び炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩におけるヒドロキシ体の含有量と炭素数12及び炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量の質量比(ヒドロキシ体/オレフィン体)が、50/50〜100/0である請求項1又は2記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項4】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の原料内部オレフィンの含有量が、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して5.0質量%未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項5】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の無機化合物の含有量が、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して7.5質量%未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項6】
原料内部オレフィンを含有し、かつ二重結合が2位に存在する原料内部オレフィンの含有量が15〜40質量%である原料内部オレフィン組成物をスルホン化処理した後、中和し、次いで加水分解処理することにより得られる請求項1〜5のいずれか1項に記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項7】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が80/20〜90/10である請求項1〜6のいずれか1項に記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項8】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜20/80である請求項1〜6のいずれか1項に記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の内部オレフィンスルホン酸塩組成物を配合してなる洗浄剤組成物。
【請求項10】
(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ内部オレフィンスルホン酸塩中の当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である洗浄剤組成物。
【請求項11】
(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩と(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩の合計含有量が、0.1〜80質量%である請求項9又は10記載の洗浄剤組成物。
【請求項12】
アルキル硫酸塩及びアルキルポリオキシアルキレン硫酸塩から選ばれる1種以上を含有する請求項9〜11のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項13】
洗浄剤組成物が、毛髪用シャンプー、身体用洗浄料、衣料用洗剤、又は台所用洗剤である請求項9〜12のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤の基剤として有用な内部オレフィンスルホン酸塩組成物、及び内部オレフィンスルホン酸塩を含有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アニオン性界面活性剤、特にアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシアルキレン硫酸塩は、洗浄力及び起泡力に優れていることから家庭用及び工業用の洗浄成分として広く用いられている。アニオン性界面活性剤の一つとして、オレフィンスルホン酸塩、特に二重結合をオレフィン鎖の末端ではなく内部に有する内部オレフィンを原料として得られる内部オレフィンスルホン酸塩が報告されている。
【0003】
このような内部オレフィンスルホン酸塩は、一般に内部オレフィンをガス状三酸化硫黄含有ガスと反応させてスルホン化し、その得られたスルホン酸を中和後、更に加水分解することにより得られ、例えば、特許文献1〜3には、これを改良した製法が開示されている。
こうして得られる内部オレフィンスルホン酸塩は、生分解性等が良好であることが知られているが、起泡性、泡質をはじめとする洗浄剤としての基本性能に関しては、アルキルポリオキシアルキレン硫酸エステル塩等の汎用界面活性剤と比較して未だ十分とはいえず、更なる向上が望まれている。更に、近年の節水に対する意識の高まりや、消費者嗜好の多様化により、衣料用洗剤、食器用洗剤、シャンプー等の主活性剤に用いる場合には、良好な起泡性に加えて、軽やかな泡質や瞬間的な泡切れ性という新たな付加価値も求められている。具体的には、洗浄時には気泡が大きく、かつ気泡密度及び泡粘度が低いことにより、軽やかな泡質をもたらして速やかに泡を行き渡せることを可能とするとともに、すすぎ時には瞬時に消泡する瞬間的な泡切れ性を有することにより、快適な洗浄と短時間でのすすぎを容易にする界面活性剤組成物の開発が望まれている。このような付加価値は、例えば毛髪用シャンプーや身体洗浄料において有用である。すなわち、起床後外出前や就寝前の限られた時間内に毛髪や体を洗う習慣のある人が増えつつあるが、泡を毛髪全体に行き渡らせたり、毛髪のすみずみまで十分に濯いだりするのにとかく時間を要する傾向にある。これらは、泡質が微細で泡の粘性が高いことに由来するところが大きい。そのため、軽やかな泡質と瞬間的な泡切れ性を有する界面活性剤組成物をシャンプーに配合することができれば、短時間のうちに十分に洗浄することが可能となり、快適な洗浄が可能となるだけでなく乾燥後のすっきりした感触をもたらすことも可能となり、節水の実現にも繋がる。
【0004】
そこで、特許文献4には、洗浄成分として、可溶化力、浸透力、界面張力低下能を付与することを目的とした特定の内部オレフィンスルホン酸が開示され、例えばシャンプーとして使用した場合は、泡立ちが良好できしみなく感触が向上することが開示されている。また、特許文献5には、洗浄力向上を目的として特定の内部オレフィンスルホン酸塩が記載され、シャンプーや液状せっけんなどへの応用例が開示されている。その一方、特許文献6には、炭素数が異なる複数の内部オレフィンスルホン酸塩を含有する界面活性剤を用いたオイル回収促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−272564号公報
【特許文献2】特開昭61−134366号公報
【特許文献3】特開昭60−32759号公報
【特許文献4】特開2003−81935号公報
【特許文献5】米国特許第5078916号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/129051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの文献に記載の組成物であっても、毛髪や皮膚等に適用する洗浄剤として、良好な起泡性のみならず、軽やかな泡質と瞬間的な泡切れ性をともに高いレベルで発現させるには、依然としてさらなる改善を要する。
したがって、本発明は、良好な起泡性、軽やかな泡質及び瞬間的な泡切れ性を十分に高めることができる内部オレフィンスルホン酸塩組成物、及び内部オレフィンスルホン酸塩を含有する洗浄剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、内部オレフィンスルホン酸塩の脂肪族鎖の鎖長、その比率その他の種々の条件について検討した結果、炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩と炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩との比率を一定の範囲としつつ、これらの合計含有量を一定の範囲にすれば、良好な起泡性に加えて、軽やかな泡質と瞬間的な泡切れ性を兼ね備えた内部オレフィンスルホン酸塩組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である内部オレフィンスルホン酸塩組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な起泡性に加えて、洗浄時には速やかに泡を行き渡せることを可能とする大きな気泡で気泡密度や泡粘度が低い軽やかな泡質をもたらしつつ、すすぎ時には瞬時に消泡することを可能とする瞬間的な泡切れ性をもたらして快適な洗浄ができるだけでなく、洗浄後、例えばタオルで拭き取るなどして乾燥させた際にも、洗浄剤の残留感を伴うことなく良好な感触を十分にもたらすこともできる内部オレフィンスルホン酸塩組成物及び内部オレフィンスルホン酸を含有する洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
<内部オレフィンスルホン酸塩組成物>
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物は、(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である。
【0011】
本発明において、内部オレフィンスルホン酸塩は、前述のように原料である内部オレフィン(二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン)をスルホン化、中和及び加水分解することにより得られるスルホン酸塩である。すなわち、内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ−サルトンが生成し、β−サルトンの一部は、γ−サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩と、オレフィンスルホン酸塩へと転換する(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。なお、かかる内部オレフィンとは、二重結合の位置が炭素鎖の1位に存在する、いわゆるα−オレフィンを微量含有する場合も含む広義の意味である。ここで、得られるヒドロキシアルカンスルホン酸塩のヒドロキシ基は、アルカン鎖の内部にあり、オレフィンスルホン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある。また、得られる生成物は、主にこれらの混合物であり、またその一部には、微量の炭素鎖の末端にヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカンスルホン酸塩、又は炭素鎖の末端に二重結合を有するオレフィンスルホン酸塩が含まれる場合もある。本明細書では、これらの各生成物及びそれらの混合物を総称して内部オレフィンスルホン酸塩という。また、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体(以下、HASということがある)、オレフィンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体(以下、IOSということがある)という。
【0012】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)は、10/90〜90/10であって、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性及び乾燥後の感触の点から、25/75〜90/10が好ましく、50/50〜90/10がより好ましく、75/25〜90/10がより好ましく、80/20〜90/10が更に好ましい。また、本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)は、起泡性の点から、10/90〜80/20が好ましく、10/90〜70/30がより好ましく、10/90〜30/70が更に好ましく、10/90〜20/80が更に好ましい。
【0013】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(以下、HPLC−MSと省略)により測定した数値である。具体的には、HPLCにより炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩と炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を分離し、それぞれをMSにかけることで同定する。そのHPLC−MSピーク面積から内部オレフィンスルホン酸塩の成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)を求める。
【0014】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の成分(A)と成分(B)の合計含有量は60〜100質量%であって、起泡性、泡質の軽さ、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、成分(A)と成分(B)の合計含有量の下限は、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、96.5質量%以上が更に好ましく、97質量%以上が更に好ましい。
【0015】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩におけるスルホン酸基は、前記の製法から明らかなように、オレフィン鎖又はアルカン鎖の内部に存在する。本発明においては、起泡性、泡質の軽さ、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が低く、より内部に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が高いのが好ましい。炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩の両方について、スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が低い方がより好ましい。
【0016】
本発明の炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩(成分(A)及び成分(B))におけるスルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、軽やかな泡質、及び瞬間的な泡切れ性の点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、28質量%以下が好ましく、25質量%未満であることがより好ましく、23質量%以下であることが更に好ましく、22質量%以下であることが更に好ましい。また、成分(A)及び成分(B)におけるスルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、コストと生産性の点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、15質量%以上がより好ましく、19質量%以上が更に好ましい。
成分(A)及び成分(B)におけるスルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、これらの観点を総合すると、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、5質量%以上28質量%が好ましく、7質量%以上28質量%未満がより好ましく、7質量%以上25質量%未満が更に好ましく、15質量%以上23質量%以下が更に好ましく、19質量%以上22質量%以下が更に好ましい。
【0017】
また、当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の1位に存在するα−オレフィンスルホン酸塩の含有量は、軽やかな泡質、及び瞬間的な泡切れ性の点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、2.8質量%未満が好ましく、2.0質量%以下がより好ましい。当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の1位に存在するα−オレフィンスルホン酸塩の含有量は、コスト及び生産性の観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。これらの観点を総合すると、当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の1位に存在するα−オレフィンスルホン酸塩の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、0.01質量%以上2.8質量%未満がより好ましく、0.1質量%以上2.8質量%未満がより好ましく、0.3質量%以上2.8質量%未満が更に好ましい。
【0018】
なお、炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩におけるスルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、核磁気共鳴スペクトル等の方法により測定できる。具体的には、後記の実施例に記載のガスクロマトグラフィーを用いた方法により測定した数値である。
【0019】
また、炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩におけるヒドロキシ体の含有量とオレフィン体の含有量の質量比(ヒドロキシ体/オレフィン体)は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、50/50〜100/0であることが好ましく、60/40〜100/0であることがより好ましく、70/30〜100/0であることが更に好ましく、75/25〜100/0が更に好ましく、75/25〜95/5が更に好ましい。
【0020】
本発明の炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩中のヒドロキシ体及びオレフィン体の含有量の質量比は、後記の実施例に記載の方法により測定できる。
【0021】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の炭素数18以上の内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、好ましくは5質量%以下であって、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。炭素数18以上の内部オレフィンスルホン酸塩の含有量の下限は0質量%、すなわち不可避的に混入する場合を除き、炭素数18以上の内部オレフィンスルホン酸塩を含有しないことが好ましい。
また、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、炭素数18以上の内部オレフィンスルホン酸塩においても、当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が低く、より内部に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が高いのが好ましい。
【0022】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物は前述のように内部オレフィンをスルホン化、中和、加水分解することにより得られることから、当該組成物中には未反応の原料内部オレフィン及び無機化合物が残存する可能性がある。これらの成分の含有量は少ないほうが好ましい。
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物中における原料内部オレフィンの含有量は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して5.0質量%未満が好ましく、3.0質量%未満がより好ましく、1.5質量%未満が更に好ましく、1.0質量%未満が更に好ましく、0.05質量%未満がより更に好ましい。
【0023】
未反応の内部オレフィンの含有量は、後記実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物中における無機化合物の含有量は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して7.5質量%未満が好ましく、5.0質量%未満がより好ましく、3.0質量%未満が更に好ましく、1.0質量%未満がより更に好ましい。
【0025】
ここで、無機化合物には、硫酸塩、アルカリ剤が含まれ、これらの無機化合物の含有量は、電位差滴定で測定できる。具体的には、後記実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物には、前記成分(A)及び成分(B)以外の炭素数を有するヒドロキシ体及びオレフィン体が含まれていてもよい。成分(A)及び成分(B)以外のヒドロキシ体及びオレフィン体の炭素数は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、8〜24が好ましく、16〜20がより好ましく、16〜18が更に好ましく、16が更に好ましい。これらの種々の炭素数を有するヒドロキシ体及びオレフィン体は、原料として用いる内部オレフィンに由来するものである。
【0027】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物には、その他成分として、例えば、上記成分以外に媒体となる水、pH調整剤、減粘剤、有機溶媒、多価アルコール類が含まれていてもよい。
【0028】
<内部オレフィンスルホン酸塩組成物の製造方法>
内部オレフィンスルホン酸塩組成物は、炭素数8〜24の原料内部オレフィンを含有する原料内部オレフィン組成物をスルホン化し、中和し、加水分解して製造することができる。より具体的には、例えば、特許第1633184号公報、特許第2625150号公報、Tenside Surf.Det.31(5)299(1994)等に記載の方法により製造することができる。
【0029】
本発明において原料内部オレフィンとは、前記の如く、実質的に二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィンをいう。原料内部オレフィン中における二重結合が1位に存在するα-オレフィンの含有量は、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性、及び乾燥後の感触の点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、2.8質量%未満が好ましく、2.0質量%以下がより好ましい。原料内部オレフィン中における二重結合が1位に存在するα-オレフィンの含有量は、コスト及び生産性の観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。これらの観点を総合すると、当該スルホン酸基の位置がオレフィン鎖又はアルカン鎖の1位に存在するα−オレフィンスルホン酸塩の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計含有量中に、0.01質量%以上2.8質量%未満がより好ましく、0.1質量%以上2.8質量%未満が更に好ましく、0.3質量%以上2.8質量%未満が更に好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
原料内部オレフィンの炭素数は、得られる内部オレフィンスルホン酸塩組成物の軽やかな泡質、及び瞬間的な泡切れ性の点から、8〜24が好ましく、12〜20がより好ましく、12〜18がより好ましく、12〜16が更に好ましく、12〜14が更に好ましく、12及び14が更に好ましい。原料として使用される内部オレフィンは、1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
原料内部オレフィン組成物をスルホン化し、中和し、加水分解して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物を得る場合、原料内部オレフィン組成物中における二重結合が2位に存在する内部オレフィンの含有量は、15〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。
【0031】
内部オレフィンスルホン酸塩組成物を合成する際に、原料内部オレフィン組成物中における二重結合が2位に存在する原料内部オレフィンの含有量は、ガスクロマトグラフ(以下、GCと省略)により測定することができる。具体的には、後記の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0032】
前記原料内部オレフィン組成物は、パラフィン成分を含有していてもよい。該パラフィン成分の含有量は、起泡性の点から、5質量%未満が好ましく、3質量%未満がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0033】
前記パラフィン成分の含有量は、例えば、GC−MSにより測定することができる。
【0034】
スルホン化反応は、原料内部オレフィン組成物1モルに対し、三酸化硫黄ガスを1〜1.2モル反応させることにより行うことができる。反応温度は、20〜40℃で行うことができる。
【0035】
中和は、スルホン酸基の理論値に対し、1〜1.5モル倍量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、2−アミノエタノール等のアルカリ水溶液を反応させることにより行なわれる。
【0036】
加水分解反応は、水の存在下90〜200℃で30分〜3時間反応を行えばよい。これらの反応は、連続して行うことができる。また反応終了後は、抽出、洗浄等により精製することができる。
【0037】
なお、内部オレフィンスルホン酸塩組成物を製造するにあたり、原料内部オレフィン組成物として、炭素数8〜24に分布を有する原料内部オレフィンを用いてスルホン化、中和、加水分解の処理を行って内部オレフィンスルホン酸塩組成物を製造してもよい。また、単一の炭素数を有する原料内部オレフィンを用いてスルホン化、中和、加水分解の処理を行って内部オレフィンスルホン酸を製造し、異なる炭素数を有する複数種の内部オレフィンスルホン酸塩を混合することによって、内部オレフィンスルホン酸塩組成物を製造してもよい。
【0038】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物は、良好な起泡性に加えて、軽やかな泡質、瞬間的な泡切れ性をともに高いレベルで発現するので、洗浄成分として有用である。具体的には、毛髪用シャンプー、身体用洗浄料、衣料用洗剤、台所用洗剤等の家庭用洗浄剤に使用することができ、特に毛髪用シャンプー基剤として有用である。
【0039】
<洗浄剤組成物>
本発明の洗浄剤組成物は、前記本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物と同様、(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ内部オレフィンスルホン酸塩中の当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%であること以外は特に制限はない。目的に応じて、その他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、他の界面活性剤、増泡剤、補助剤などが挙げられる。洗浄剤組成物中の内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、0.1〜80質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、2〜30質量%が更に好ましい。
【0040】
前記の他の界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシアルキレン硫酸塩が好ましい。前記補助剤としては、特に制限はないが、例えば、水、ポリマー、油剤、シリコーン、保湿剤、粘度調節剤、防腐剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、パール光沢剤、色素、香料、酵素、漂白剤、漂白活性化剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物は、例えば前記のようにして得られた内部オレフィンスルホン酸塩組成物を配合することにより製造でき、さらに前記成分を混合することにより製造してもよい。
【0042】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の内部オレフィン組成物及び洗浄剤組成物を開示する。
【0043】
<1>(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
【0044】
<2>内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が、好ましくは25/75〜90/10であり、より好ましくは50/50〜90/10であり、更に好ましくは75/25〜90/10であり、更に好ましくは80/20〜90/10である<1>の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<3>内部オレフィンスルホン酸塩組成物における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が、好ましくは10/90〜80/20であり、より好ましくは10/90〜70/30であり、更に好ましくは10/90〜30/70であり、更に好ましくは10/90〜20/80である<1>の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<4>内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の成分(A)と成分(B)の合計含有量の下限が、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは96.5質量%以上であり、更に好ましくは97質量%以上である<1>〜<3>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<5>炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩の、スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が、好ましくは28質量%以下であり、より好ましくは25質量%未満であり、更に好ましくは23質量%以下であり、更に好ましくは22質量%以下であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは19質量%以上である<1>〜<4>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<6>炭素数12及び14の内部オレフィンスルホン酸塩の、ヒドロキシ体の含有量とオレフィン体の含有量の質量比(ヒドロキシ体/オレフィン体)は、好ましくは50/50〜100/0であり、より好ましくは60/40〜100/0であり、更に好ましくは70/30〜100/0であり、更に好ましくは75/25〜100/0であり、更に好ましくは75/25〜95/5である<1>〜<5>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<7>炭素数18以上の内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、その下限は好ましくは0質量%である<1>〜<6>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<8>内部オレフィンスルホン酸塩組成物中における原料内部オレフィンの含有量が、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して好ましくは5.0質量%未満であり、より好ましくは3.0質量%未満であり、更に好ましくは1.5質量%未満であり、更に好ましくは1.0質量%未満であり、より更に好ましくは0.05質量%未満である<1>〜<7>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<9>内部オレフィンスルホン酸塩組成物中における無機化合物の含有量が、内部オレフィンスルホン酸塩量に対して、好ましくは7.5質量%未満であり、より好ましくは5.0質量%未満であり、更に好ましくは3.0質量%未満であり、より更に好ましくは1.0質量%未満である<1>〜<8>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<10>内部オレフィンスルホン酸塩組成物中の前記成分(A)及び成分(B)以外の炭素数を有するヒドロキシ体及びオレフィン体の炭素数が、好ましくは8〜24であり、より好ましくは16〜20であり、更に好ましくは16〜18であり、更に好ましくは16である<1>〜<9>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<11>原料内部オレフィンを含有し、かつ二重結合が2位に存在する原料内部オレフィンの含有量が、好ましくは15〜40質量%である原料内部オレフィン組成物をスルホン化処理した後、中和し、次いで加水分解処理することにより得られる<1>〜<10>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<12>原料内部オレフィン組成物における二重結合が2位に存在する原料内部オレフィンの含有量が、より好ましくは15〜35質量%である<11>の内部オレフィンスルホン酸塩組成物。
<13><1>〜<12>いずれか1の内部オレフィンスルホン酸塩組成物を配合してなる洗浄剤組成物。
<14>(A)炭素数12の内部オレフィンスルホン酸塩及び(B)炭素数14の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、当該成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が10/90〜90/10であり、かつ当該成分(A)及び成分(B)の合計含有量が60〜100質量%である洗浄剤組成物。
<15>内部オレフィンスルホン酸塩の含有量が、好ましくは0.1〜80質量%である<13>又は<14>の洗浄剤組成物。
<16>好ましくはアルキル硫酸塩及びアルキルポリオキシアルキレン硫酸塩から選ばれる1種以上を含有する<13>〜<15>いずれか1の洗浄剤組成物。
<17><13>〜<16>いずれか1の洗浄剤組成物を毛髪に適用して洗浄した後、すすぐ、毛髪の洗浄方法。
<18><13>〜<16>いずれか1の洗浄剤組成物を皮膚に適用した後、すすぐ、皮膚の洗浄方法。
<19><13>〜<16>いずれか1の洗浄剤組成物の、毛髪を洗浄するための使用。
<20><13>〜<16>いずれか1の洗浄剤組成物の、皮膚を洗浄するための使用。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。また、各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0046】
(1)測定条件
(i)内部オレフィンの二重結合位置の測定方法
内部オレフィンの二重結合位置は、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと省略)により測定した。具体的には、内部オレフィンに対しジメチルジスルフィドを反応させることでジチオ化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積より内部オレフィンの二重結合位置を求めた。
尚、測定に使用した装置および分析条件は次の通りである。GC装置「HP6890,HEWLETT」(PACKARD社製)、カラム「Ultra−Alloy−1HTキャピラリーカラム」(30m×250μm×0.15μm、フロンティア・ラボ株式会社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度350℃、He流量4.6mL/min.
【0047】
(ii)スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量の測定方法
スルホン酸基の結合位置は、GCにより測定した。具体的には、内部オレフィンスルホン酸塩に対しトリメチルシリルジアゾメタンを反応させることでメチルエステル化誘導体とした後、各成分をGCで分離した。それぞれのピーク面積比を質量比として、スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量を算出した。
尚、測定に使用した装置および分析条件は次の通りである。GC装置「アジレントテクノロジー6850」(アジレントテクノロジー社製)、カラム「HP−1キャピラリーカラム」(30m×320μm×0.25μm,アジレントテクノロジー社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度300℃、He流量1.0mL/min.、オーブン(60℃(0min.)→10℃/min.→300℃(10min.)。
【0048】
(iii)ヒドロキシ体/オレフィン体の質量比の測定方法
ヒドロキシ体/オレフィン体の質量比は、HPLC−MSにより測定した。具体的には、HPLCによりヒドロキシ体とオレフィン体を分離し、それぞれをMSにかけることで同定した。そのGC−MSピーク面積から各々の割合を求めた。
尚、測定に使用した装置および条件は次の通りである。HPLC装置「アジレントテクノロジー1100」(アジレントテクノロジー社製)、カラム「L−columnODS4.6×150mm」(一般財団法人化学物質評価研究機構製)、サンプル調製(メタノールで1000倍希釈)、溶離液A(10mM酢酸アンモニウム添加水)、溶離液B(10mM酢酸アンモニウム添加メタノール)、グラジェント(0min.(A/B=30/70%)→10min.(30/70%)→55min.(0/100%)→65min.(0/100%)→66min.(30/70%)→75min.(30/70%))、MS装置「アジレントテクノロジー1100MS SL(G1946D))」(アジレントテクノロジー社製),MS検出(陰イオン検出 m/z60−1600、UV240nm)
【0049】
(iv)原料内部オレフィンの含有量の測定方法
原料内部オレフィンの含有量は、GCにより測定した。具体的には、内部オレフィンスルホン酸塩水溶液にエタノールと石油エーテルを添加した後、抽出し石油エーテル相にオレフィンを得た。そのGCピーク面積からオレフィン量を定量した。
尚、測定に使用した装置および分析条件は次の通りである。GC装置「アジレントテクノロジー6850」(アジレントテクノロジー社製)、カラム「Ultra−Alloy−1HTキャピラリーカラム15m×250μm×0.15μm」(フロンティア・ラボ株式会社製)、検出器(水素炎イオン検出器(FID))、インジェクション温度300℃、ディテクター温度350℃、He流量3.8mL/min.
【0050】
(v)無機化合物の含有量の測定方法
無機化合物の含有量は、電位差滴定や中和滴定により測定した。具体的には、Na2SO4の含有量は、硫酸根(SO42-)を電位差滴定によって求めることで定量した。また、NaOHの含有量は、希塩酸で中和滴定することで定量した。
【0051】
(vi)パラフィン成分の含有量の測定方法
パラフィン成分の含有量は、GCにより測定した。具体的には、内部オレフィンスルホン酸塩水溶液にエタノールと石油エーテルを添加した後、抽出し、石油エーテル相にパラフィンを得た。そのGCピーク面積からパラフィン量を定量した。
なお、測定に使用した装置および分析条件は原料内部オレフィンの含有量の測定と同様である。
【0052】
(2)内部オレフィンの製造
[製造例A] 炭素数12、2重結合2位33.1質量%の内部オレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−ドデセン「リニアレン12、出光興産株式会社製」(6000g(35.6モル)、固体酸触媒としてプロトン性β―ゼオライト(CP−814E、Zeolyst社)180g(原料α―オレフィンに対して3質量%)を仕込み、攪拌下、120℃にて20時間、反応を行った。続いて、粗内部オレフィンを蒸留用フラスコに移し、124−136℃/7.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数12の内部オレフィンを得た。得られた内部オレフィンの二重結合分布は、C1位0.5質量%、C2位33.1質量%、C3位質量23.7質量%、C4位21.2質量%、C5位15.0質量%、C6位6.6質量%であった。
【0053】
[製造例B] 炭素数14、2重結合2位31.8質量%の内部オレフィンの合成
攪拌装置付きフラスコに1−テトラデセン「リニアレン14、出光興産株式会社製」(6000g(30.6モル)、固体酸触媒としてプロトン性β−ゼオライト(CP−814E、Zeolyst社)180g(原料α−オレフィンに対して3質量%)を仕込み、攪拌下、120℃にて20時間、反応を行った。続いて、粗内部オレフィンを蒸留用フラスコに移し、124−136℃/7.5mmHgで蒸留することでオレフィン純度100%の炭素数14の内部オレフィンを得た。得られた内部オレフィンの二重結合分布は、C1位1.3質量%、C2位31.8質量%、C3位23.8質量%、C4位21.0質量%、C5位8.6質量%、C6、7位の合計が13.6質量%であった。
【0054】
(3)内部オレフィンスルホン酸塩の製造
[製造例1] (C12内部オレフィンスルホン酸塩の合成)
製造例Aで得た炭素数12の内部オレフィン(二重結合が2位に存在する内部オレフィンの含有量が33.1質量%)を、外部にジャケットを有する薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で三酸化硫黄ガスを用いてスルホン化反応を行った。スルホン化反応の際のSO3/内部オレフィンのモル比は1.09に設定した。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.5モル倍量の水酸化ナトリウムで調製したアルカリ水溶液へ添加し、攪拌しながら30℃、1時間中和した。中和物をオートクレーブ中で160℃、1時間加熱することで加水分解を行い、C12内部オレフィンスルホン酸ナトリウム粗生成物を得た。該粗生成物300gを分液漏斗に移し、エタノール300mLを加えた後、1回あたり石油エーテル300mLを加えて油溶性の不純物を抽出除去した。この際、エタノールの添加により油水界面に析出した無機化合物(主成分は芒硝)も、油水分離操作により水相から分離除去した。この抽出除去操作を3回おこなった。水相側を蒸発乾固することで、C12内部オレフィンスルホン酸ナトリウムを得た。得られた内部オレフィンスルホン酸ナトリウム中のヒドロキシ体(ヒドロキシアルカンスルホン酸ナトリウム)/オレフィン体(オレフィンスルホン酸ナトリウム)の質量比は92/8であった。また、得られた内部オレフィンスルホン酸ナトリウム中に含有される原料内部オレフィンの含有量は100ppm未満(GC検出下限未満)、無機化合物は0.2質量%であった。さらに、スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は21.0質量%であった。
【0055】
[製造例2] (C14内部オレフィンスルホン酸塩の合成)
製造例Bで得た炭素数14の内部オレフィン(二重結合が2位に存在する内部オレフィンの含有量が31.8質量%)から、製造例1と同様の条件でC14内部オレフィンスルホン酸ナトリウムを得た。
得られた内部オレフィンスルホン酸ナトリウム中のヒドロキシ体/オレフィン体の質量比率は93/7であった。また、得られた内部オレフィンスルホン酸ナトリウム中の原料内部オレフィンの含有量は100ppm未満(GC検出下限未満)、無機化合物は0質量%であった。さらに、スルホン酸基が2位に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は21.7質量%であった。
【0056】
[製造例3]
製造例1で得られた組成物と製造例2で得られた組成物を、質量比10:90で配合及び混合して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物1を得た。
【0057】
[製造例4]
製造例1で得られた組成物と製造例2で得られた組成物を質量比25:75で配合及び混合して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物2を得た。
【0058】
[製造例5]
製造例1で得られた組成物と製造例2で得られた組成物を質量比50:50で配合及び混合して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物3を得た。
【0059】
[製造例6]
製造例1で得られた組成物と製造例2で得られた組成物を質量比75:25で配合及び混合して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物4を得た。
【0060】
[製造例7]
製造例1で得られた組成物と製造例2で得られた組成物を質量比90:10で配合及び混合して、内部オレフィンスルホン酸塩組成物5を得た。
【0061】
<毛髪評価>
表1に示すプレーンシャンプーで毛束(ブリーチ、ヘアカラーなどの処理をしていない日本人毛、約20cm、15g)を洗浄後、表2に示すプレーンリンスを塗布した後、水道水ですすぎ、評価用トレスを得た。
製造例3〜7で得た内部オレフィンスルホン酸塩組成物1〜5をイオン交換水に溶解することにより調製した内部オレフィンスルホン酸塩組成物の13質量%水溶液を用い、5人の専門パネラーが、以下に示す評価基準、評価方法により、起泡性、泡質の軽やかさ、すすぎ時の泡切れ性、及び洗浄後にタオルで拭き取って乾燥した際における感触(残留感の無さ)の評価を行った。(具体的には、表3に示す洗浄剤組成物1.0gを評価用トレスに取り、泡立て、洗浄、すすぎの操作を行った。)結果を表3に示す。
なお、表3には、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩(AES)、α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)及び第二級アルキルスルホン酸塩(SAS)についての評価結果も示した。これらの界面活性剤の洗浄剤組成物中における濃度を13質量%に調製した。
【0062】
【表1】
【0063】
(プレーンシャンプーの製造)
各成分をビーカーに取り、80℃に加温後、混合し、均一に溶解したことを確認した後、冷却して、プレーンシャンプーを得た。
【0064】
【表2】
【0065】
(プレーンリンスの製造)
塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム及びステアリルアルコールをビーカー(A)に入れ、80℃に加温して融解させた。別のビーカー(B)に精製水およびメチルパラベンをビーカーに取り、攪拌しながら80℃に加温し、均一に溶解したことを確認した。その後、ビーカー(B)を80℃で攪拌しながら、ビーカー(A)中の混合液を加え、30分乳化を行い、加熱を中止し、室温まで冷却して、プレーンリンスを得た。
【0066】
<評価基準・評価方法>
・起泡性
5:起泡性が非常に良い
4:起泡性が良い
3:普通の起泡性(参考比較例3:SASと同等)
2:起泡性が悪い
1:起泡性が非常に悪く洗えない
・泡質の軽やかさ
5:泡質が非常に軽く、気泡が大きく、洗いやすい
4:泡質がやや軽く良い
3:泡質が普通(参考比較例1:AESと同等)
2:泡質がやや重く、悪い
1:泡質が非常に重く、洗いにくい
・すすぎ時における泡切れ性
5:すすいだ瞬間に泡切れが起こり(消泡)、すすぎやすい
4:泡切れがすばやい
3:普通(参考比較例2:AOSと同等)
2:泡切れが遅い
1:泡切れが非常に遅く、すすぎにくい
・洗浄後にタオルで拭き取って乾燥した後の感触
5:洗浄剤の残留感がなく、非常にすっきりとした洗いあがり
4:ややすっきりとした洗いあがり
3:普通(参考比較例1:AESと同等)
2:やや洗浄剤の残留感があり、あまりすっきりとしない洗いあがり
1:洗浄剤の残留感が強く、全くすっきりしない洗いあがり
【0067】
<手洗い評価>
製造例3〜7で得た内部オレフィンスルホン酸塩組成物1〜5をイオン交換水に溶解することにより調製した内部オレフィンスルホン酸塩組成物の13質量%水溶液を用い、5人のパネラーが手洗いを行い、以下に示す評価基準、評価方法により、起泡性、すすぎ時の泡切れ、及び洗浄後にタオルで拭き取って乾燥した際における感触(残留感の無さ)の評価を行った。具体的には、表3に示す内部オレフィンスルホン酸塩組成物を用いて調製した13質量%水溶液1.0gを手に取り、泡立て、洗浄した後、すすぎ、その後にタオルで拭き取って乾燥した。結果を表3に示す。
・起泡性
5:起泡性が非常に良い
4:起泡性が良い
3:普通の起泡性(参考比較例3:SASと同等)
2:起泡性が悪い
1:起泡性が非常に悪く洗えない
・すすぎ時における泡切れ性
5:すすいだ瞬間に泡切れが起こり(消泡)、すすぎやすい
4:泡切れがすばやい
3:普通(参考比較例2:AOSと同等)
2:泡切れが遅い
1:泡切れが非常に遅く、すすぎにくい
・洗浄後にタオルで拭き取って乾燥した後の感触
5:洗浄剤の残留感がなく、非常にすっきりとした洗いあがり
4:ややすっきりとした洗いあがり
3:普通(参考比較例2:AOSと同等)
2:やや洗浄剤の残留感があり、あまりすっきりとしない洗いあがり
1:洗浄剤の残留感が強く、全くすっきりしない洗いあがり
【0068】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の内部オレフィンスルホン酸塩組成物は、良好な起泡性、軽やかな泡質、及び瞬間的な泡切れ性をともに高いレベルで発現できるので、毛髪用シャンプー、身体用洗浄料、衣料用洗剤、台所用洗剤、住居用洗剤等の家庭用洗浄剤分野で好適に利用することができ、さらに、化粧品用乳化剤、工業用乳化剤、工業用洗浄剤等にも好適である。