特許第6231394号(P6231394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231394アクリル系接着剤の反応率測定方法、及びアクリル系接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231394
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】アクリル系接着剤の反応率測定方法、及びアクリル系接着剤
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20171106BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20171106BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20171106BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20171106BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171106BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20171106BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G01N30/88 P
   C09J133/04
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J11/06
   G01N30/04 P
   G01N30/74 E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-18388(P2014-18388)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145815(P2015-145815A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】上澤 尚也
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 韓国特許第10−2010−1142804(KR,B1)
【文献】 特開2014-17368(JP,A)
【文献】 特開2012-204059(JP,A)
【文献】 特開平10-67977(JP,A)
【文献】 特開2007-56110(JP,A)
【文献】 特開2003-301155(JP,A)
【文献】 特開2004-233199(JP,A)
【文献】 特開2000-265145(JP,A)
【文献】 特開2002-337274(JP,A)
【文献】 特開2011-190336(JP,A)
【文献】 特開2012-41525(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0113119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/88
C09J 9/02
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 133/04
G01N 30/04
G01N 30/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物を内標準物質として用い、アクリル系接着剤を含む試料溶液を液体クロマトグラフィーにて分離し、紫外検出器により未反応のラジカル重合性化合物を検出する反応率測定方法。
【化1】

式中、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基からなる群より選択される基であり、Rは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルコキシ基からなる群より選択される基である。
【請求項2】
前記フルオレン骨格を有する化合物が、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)、ビスフェノールフルオレン(BPFL)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)からなる群より選択される1種以上である請求項1記載の反応率測定方法。
【請求項3】
前記アクリル系接着剤が、前記フルオレン骨格を有する化合物を含有する請求項1又は2記載の反応率測定方法。
【請求項4】
前記フルオレン骨格を有する化合物の配合量が、0.01wt%以上5.0wt%以下である請求項3記載の反応率測定方法。
【請求項5】
下記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物と、ラジカル重合性化合物と、反応開始剤とを含有するアクリル系接着剤。
【化2】

式中、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基からなる群より選択される基であり、Rは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルコキシ基からなる群より選択される基である。
【請求項6】
前記フルオレン骨格を有する化合物が、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)、ビスフェノールフルオレン(BPFL)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)からなる群より選択される1種以上である請求項5記載のアクリル系接着剤。
【請求項7】
前記フルオレン骨格を有する化合物の配合量が、0.01wt%以上5.0wt%以下である請求項5又は6記載のアクリル系接着剤。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のアクリル系接着剤に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合性化合物を含有するアクリル系接着剤の反応率測定方法、及びアクリル系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路材料として、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)などが広く使われている。ACFの不良発生の要因としては、回路電極内での硬化度のバラツキが推測されている。異方性導電接続では、多数の電極を一括に且つ均一に接続させるため、相対的に熱伝導性の大きい電極上と、相対的に熱伝導性の低い電極間の部位で、反応率に差が生じるものと思われる。
【0003】
しかしながら、従来のDSC、FT−IRなどによる分析では、必要となるサンプル量が多く、電極上、電極間などの微小領域の反応率を精度良く測定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−251789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、微量のサンプルでも精度良くアクリル系接着剤の反応率測定を行うことができる反応率測定方法、及びアクリル系接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、内標準物質としてフルオレン骨格を有する化合物を用いることにより、微量のサンプルでも精度良く反応率測定を行うことができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明に係る反応率測定方法は、下記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物を内標準物質として用い、アクリル系接着剤を含む試料溶液を液体クロマトグラフィーにて分離し、紫外検出器により未反応のラジカル重合性化合物を検出することを特徴とする。
【0008】
【化1】

式中、Rは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基からなる群より選択される基であり、Rは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルコキシ基からなる群より選択される基である。
【0009】
また、本発明に係るアクリル系接着剤は、前記記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物と、ラジカル重合性化合物と、反応開始剤とを含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る異方性導電接着剤は、前記アクリル系接着剤に導電性粒子が分散されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フルオレン骨格を有する化合物が、紫外検出器に高い感度を示すため、微量のサンプルでも精度良く反応率を測定することができる。また、フルオレン骨格を有する化合物は、アクリル系接着剤の硬化反応に関与しないため、予めアクリル系接着剤に配合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】硬化前のアクリル系接着剤の分析結果の一例を示すクロマトグラムである。
図2】硬化後のアクリル系接着剤の分析結果の一例を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.アクリル系接着剤の反応率測定方法
2.アクリル系接着剤
3.実施例
【0014】
<1.アクリル系接着剤の反応率測定方法>
本実施の形態に係るアクリル系接着剤の反応率測定方法は、下記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物を内標準物質として用い、アクリル系接着剤を含む試料溶液を液体クロマトグラフィーにて分離し、紫外検出器により未反応のラジカル重合性化合物を検出する。
【0015】
【化2】

式中、Rは、水素原子(−H)、炭素数1〜3のアルキル基(−CH2n+1:n=1〜3)、炭素数1〜3のアルコキシ基(−OC2n+1:n=1〜3)からなる群より選択される基であり、Rは、ヒドロキシル基(−OH)、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基(−C2nOH:n=1〜3)、炭素数1〜3のヒドロキシアルコキシ基(−OC2nOH:n=1〜3)からなる群より選択される基である。
【0016】
(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物の具体例としては、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF:R=H、R=OCOH)、ビスフェノールフルオレン(BPF:R=H、R=OH)、ビスクレゾールフルオレン(BCF:R=CH、R=OH)などが挙げられる。(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物は、紫外線吸収能が高いため、紫外検出器に高い感度を示し、微量のサンプルでも精度良く反応率を測定することができる。
【0017】
なお、紫外検出器で検出可能な一般的な内標準物質として、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ベンゾトリアゾール(BTZ)などがあるが、検出感度が十分ではなく、多量に添加しなければならない。また、BHTは、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート(BPEFA)と、BTZは、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4−HBA)とピーク検出位置が重なるため、汎用性が低い。
【0018】
液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance liquid Chromatography)であり、試料溶液を分離剤が充填された分離カラムに通過させ、分離剤に対する分配、吸着のしやすさの程度などの差から、これを複数の成分に分離する。
【0019】
分離剤(充填剤)としては、HPLC用の粒径が2〜30μm程度のシリカゲル、オクタデシル基、シアノプロピル基などの基で結合された化学結合型シリカゲル、ポーラスポリマー、イオン交換樹脂などを挙げることができる。
【0020】
紫外検出器としては、試料溶液に紫外光を照射し、試料溶液による吸光度を測定するものであれば、特に限定されるものではなく、HPLCによる分析で汎用されている紫外吸光度検出器を用いることができる。
【0021】
次に、反応率測定の詳細について説明する。本技術は、予めアクリル系接着剤にフルオレン骨格を有する化合物を所定量配合しても、アクリル系接着剤の試料溶液にフルオレン骨格を有する化合物を所定量添加しても良い。アクリル系接着剤を溶解させる溶媒としては、アセトニトリル、アセトンなどを用いることができる。
【0022】
図1及び図2は、それぞれ硬化前及び硬化後のアクリル系接着剤の分析結果の一例を示すクロマトグラムである。紫外検出器によって得られたクロマトグラムのピーク強度は、通常ピーク面積又はピーク高さで表されるが、以下では、ピーク高さによる反応率の算出方法について説明する。
【0023】
先ず、硬化前のアクリル系接着剤、及び完全硬化後のアクリル系接着剤のクロマトグラムから内標準物質と未反応モノマーとの強度比を求め、例えば、硬化前を反応率0%とし、完全硬化後を反応率100%として、強度比と反応率との関係線を作成する。そして、未知試料のクロマトグラムから内標準物質と未反応モノマーとの強度比を求め、作成した関係線から反応率を求めることができる。
【0024】
このように(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物を内標準物質として用いることにより、微量のサンプルでも精度良く反応率を測定することができる。
【0025】
<2.アクリル系接着剤>
本実施の形態に係るアクリル系接着剤は、下記(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物と、ラジカル重合性化合物と、反応開始剤とを含有する。
【0026】
【化3】
式中、Rは、水素原子(−H)、炭素数1〜3のアルキル基(−CH2n+1:n=1〜3)、炭素数1〜3のアルコキシ基(−OC2n+1:n=1〜3)からなる群より選択される基であり、Rは、ヒドロキシル基(−OH)、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基(−C2nOH:n=1〜3)、炭素数1〜3のヒドロキシアルコキシ基(−OC2nOH:n=1〜3)からなる群より選択される基である。
【0027】
(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物の具体例としては、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF:R=H、R=OCOH)、ビスフェノールフルオレン(BPF:R=H、R=OH)、ビスクレゾールフルオレン(BCF:R=CH、R=OH)などが挙げられる。
【0028】
以下では、アクリル系接着剤に導電性粒子が分散されてなる異方性導電接着剤について説明する。(1)式に示すフルオレン骨格を有する化合物は、異方性導電接着剤に配合されても、熱圧着時に分解せず、また、硬化反応に関与しないため、反応率測定の際には、紫外検出器に高い感度を示すことができる。このため、この異方性導電接着剤を用いれば、電極上、電極間などの微小領域の反応率を精度良く測定することができる。
【0029】
フルオレン骨格を有する化合物の配合量は、0.01wt%以上5.0wt%以下であることが好ましく、0.2wt%以上1.0wt%以下であることがより好ましい。配合量が少なすぎる場合、測定ピークが小さくなり、内標準物質として機能せず、配合量が多すぎる場合、異方性導電フィルムとしての特性が悪化してしまう。
【0030】
ラジカル重合性化合物としては、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー、若しくはそれらにエポキシ基、ウレタン基、アミノ基、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基等を導入した変性単官能、又は多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマーいずれの状態で用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。
【0031】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、少なくとも1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また、それらの変性物としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリルアクリレート、エチルメタクリルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等が挙げられる。これらは1種あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
反応開始剤としては、有機過酸化物、光ラジカル重合開始剤などを用いることができる。有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等から1種または2種以上を用いることができる。また、光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類およびその誘導体、チオキサントン類、ビスイミダゾール類等から1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
導電性粒子は、従来の異方性導電フィルムで用いられている導電性粒子を使用することができ、例えば、金粒子、銀粒子、ニッケル粒子等の金属粒子、ベンゾグアナミン樹脂やスチレン樹脂等の樹脂粒子の表面を金、ニッケル、亜鉛等の金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を使用することができる。このような導電性粒子の平均粒径としては、通常1〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。
【0034】
また、異方性導電接着剤は、膜形成樹脂、シランカップリング剤、リン酸エステル、無機フィラー、応力緩和剤などを含有しても良い。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキル化セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤としては、γ−グリシドプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
このような異方性導電接着剤を用いれば、電極上、電極間などの微小領域の反応率を精度良く測定することができるため、安定した接合条件を短時間で得ることが可能となる。
【実施例】
【0036】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、内標準物質としてビスフェノールエタノールフルオレン(BPEF)を用い、HPLC(High performance liquid chromatography)にてアクリル系の異方性導電接着剤の反応率を測定し、標準偏差について評価した。また、比較例として、DSC(Differential scanning calorimetry)、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)にて測定した反応率の標準偏差についても評価した。また、本技術を使用して、実装体の配線上、配線間の反応率を測定し、接続信頼性の評価を行った。さらに、BPEFの添加量について検討を行った。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
異方性導電フィルム、及び実装体は、次のように作製した。
【0038】
[異方性導電フィルムの作製]
下記配合の異方性導電接着剤を使用した。配合は、フェノキシ樹脂(商品名:YP50、新日鉄住金化学(株))40質量部、ポリウレタン(商品名:N−5196、日本ポリウレタン工業(株))40質量部、リン酸エステル(商品名:PM−2、日本化薬(株))2質量部、シランカップリング剤(商品名:A−187、モメンティブ・パフォーマンスマテリアルズ(株))2質量部、2官能アクリレート(商品名:DCP、新中村化学工業(株))3質量部、アクリル酸エステル(商品名:SG−P3、(長瀬ケムテックス(株))5質量部、ジアシルパーオキサイド(商品名:パーロイルL、日本油脂(株))5質量部、及び平均粒子径(D50)10μmの導電性粒子(積水化学(株))3質量部の合計100質量部とした。この配合にBPEFを所定量添加した組成物をPET(Polyethylene Terephthalate)に塗布し、60℃の熱風で4分間乾燥させることにより、厚み16μmのフィルム状の異方性導電接着剤を得た。
【0039】
[実装体の作製]
評価基材として、FPC(200μmP、L/S=1/1、PI/Cu=25/12μm、Auメッキ)、及びガラス基板(ITOベタガラス、10Ω/□、0.7mmt)を用いて実装体を作製した。ガラス基板上に異方性導電フィルムを貼り付け、45℃、1MPa、2secの条件で加熱加圧した後、PETを剥離し、仮圧着を行った。異方性導電フィルム上にFPCを配置し、所定温度、2MPa、5secの条件で加熱加圧し、実装体を得た。
【0040】
<3.1 測定値の標準偏差>
前述のように0.5wt%のBPEFを配合した異方性導電フィルムを用いて実装体を作製した後、HPLC、DSC、及びFT−IRを用いて、異方性導電フィルムの反応率の測定を行った。実装体からFPCを引き剥がし、2.0mm×0.2mmの配線上、及び2.0mm×0.2mmの配線間から測定用サンプルのサンプリングを行った。
【0041】
[HPLC]
HPLC分析装置として、Waters社製UPLC(UV検出器接続)を用いた。測定用サンプル0.005mgをアセトニトリルに溶解し、これを分離カラム(10cm、40℃)に注入し、クロマトグラムを得た。分析条件は以下の通りとした。
【0042】
アセトニトリル常温抽出−HPLC/DAD法
抽出:アセトニトリル 30μL
グラジェント条件:A60%、B40%(1分間保持)→5分後にA1%、B99%(6分間保持)、A=HO、B=ACN
流量:0.4mL/min
注入量:5μL
解析波長:210−400nm
【0043】
得られたクロマトグラムからBPEFとアクリルモノマーとの測定強度比を求め、予め作成したBPEFとアクリルモノマーとの測定強度比と反応率との関係線より、反応率を求めた。上記操作を計3回繰り返した。
【0044】
表1に示すように、圧着温度が130℃の場合の反応率の測定結果は、1回目75.5%、2回目79.4%、及び3回目79.2%であり、標準偏差は、0.4726であった。また、圧着温度が140℃の場合の反応率の測定結果は、1回目86.3%、2回目86.8%、及び3回目85.2%であり、標準偏差は、0.8185であった。圧着温度が150℃の場合の反応率の測定結果は、1回目91.1%、2回目92.0%、及び3回目91.0%であり、標準偏差は、0.5508であった。
【0045】
[DSC]
示差熱分析装置(DSC6200、セイコーインスツルメント(株))を用いて、測定用サンプル5.0mgを、30℃から250℃まで10℃/minで昇温させ、DSCチャートを得た。
【0046】
未硬化(圧着前)のサンプルをリファレンスとした。未硬化のサンプルの発熱量と圧着後の未知サンプルの発熱量との差分を求め、未硬化のサンプルの発熱量を1として未知サンプルの反応率を算出した。未知サンプルの測定は、3回(N=3)行った。なお、発熱量は、DSCチャートの面積より求めた。
【0047】
表1に示すように、圧着温度が130℃の場合の反応率の測定結果は、1回目72.0%、2回目83.2%、及び3回目75.7%であり、標準偏差は、5.7064であった。また、圧着温度が140℃の場合の反応率の測定結果は、1回目82.6%、2回目78.9%、及び3回目88.1%であり、標準偏差は、4.6293であった。圧着温度が150℃の場合の反応率の測定結果は、1回目94.2%、2回目86.8%、及び3回目90.2%であり、標準偏差は、3.7041であった。
【0048】
[FT−IR]
フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR−4100、日本分光社製)を用いて、測定用サンプル0.02mgを、透過法にて測定した。
【0049】
未硬化(圧着前)のサンプルのアクリルモノマー(不飽和基)の測定強度と、圧着後の未知サンプルのアクリルモノマー(不飽和基)の測定強度との比から、未知サンプルの反応率を算出した。未知サンプルの測定は、3回(N=3)行った。
【0050】
表1に示すように、圧着温度が130℃の場合の反応率の測定結果は、1回目68.7%、2回目79.6%、及び3回目74.2%であり、標準偏差は、5.4501であった。また、圧着温度が140℃の場合の反応率の測定結果は、1回目77.8%、2回目82.0%、及び3回目89.7%であり、標準偏差は、6.0352であった。圧着温度が150℃の場合の反応率の測定結果は、1回目88.8%、2回目87.3%、及び3回目93.8%であり、標準偏差は、3.4034であった。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、DSC、FT−IRを用いた測定では、測定値の標準偏差が大きくなり、精度が低かった。また、サンプル量が多く必要であり、後述するような配線上、配線間の反応率の測定は困難である。一方、HPLC−UV検出を用いた測定では、UV検出に対する感度が高いBPEFにより、少量のサンプルで精度の良い反応率測定を行うことができた。
【0053】
<3.2 実装体の配線上、配線間の反応率の測定>
前述のように0.5wt%のBPEFを配合した異方性導電フィルムを用いて実装体を作製した後、HPLCを用いて、異方性導電フィルムの反応率の測定を行った。実装体からFPCを引き剥がし、2.0mm×0.2mmの配線上の測定用サンプル、2.0mm×0.2mmの配線間測の定用サンプル、及び配線上と配線間の測定用サンプルのサンプリングを行った。
【0054】
[HPLC]
HPLC分析装置として、Waters社製UPLC(UV検出器接続)を用いた。測定用サンプル0.005mgをアセトニトリルに溶解し、これを分離カラム(10cm、40℃)に注入し、クロマトグラムを得た。分析条件は以下の通りとした。
【0055】
アセトニトリル常温抽出−HPLC/DAD法
抽出:アセトニトリル 30μL
グラジェント条件:A60%、B40%(1分間保持)→5分後にA1%、B99%(6分間保持)、A=HO、B=ACN
流量:0.4mL/min
注入量:5μL
解析波長:210−400nm
【0056】
得られたクロマトグラムからBPEFとアクリルモノマーとの測定強度比を求め、予め作成したBPEFとアクリルモノマーとの測定強度比と反応率との関係線より、反応率を求めた。上記操作を計3回繰り返し、平均値を求めた。
【0057】
また、0.5wt%のBPEFを配合した異方性導電フィルムを用いて作製した実装体に対し、環境試験(60℃、95%、500hr)を行い、導通抵抗を測定した。導通抵抗は、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7561、横河電機社製)を用いて4端子法にて測定した。信頼性試験の評価は、導通抵抗が3Ω以上であるものを「NG」、3Ω未満であるものを「OK」とした。
【0058】
表2に示すように、圧着温度が130℃の場合、配線上の反応率は75%、配線間の反応率は82%、配線上及び配線間の反応率は80%であり、信頼性試験の評価はNGであった。また、圧着温度が140℃の場合、配線上の反応率は83%、配線間の反応率は89%、配線上及び配線間の反応率は86%であり、信頼性試験の評価はOKであった。また、圧着温度が150℃の場合、配線上の反応率は88%、配線間の反応率は93%、配線上及び配線間の反応率は90%であり、信頼性試験の評価はOKであった。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、配線上は、銅などの金属の高い熱伝導率の影響で熱逃げが大きく、蓄熱しないため、配線間に比べ、ACFの硬化がし難い傾向にあることが分かった。このように、本技術では、サンプルが少量でよいため、配線上、配線間などの局所的な反応率を精度良く測定することができる。
【0061】
<3.3 BPEFの添加量>
次に、異方性導電フィルムに配合されるBPEFの添加量の影響について検討した。異方性導電フィルム、及び実装体は、前述と同様のものを使用し、異方性導電フィルムへのBPEFの添加量を変え、実装体の異方性導電フィルム部分の外観、ピール強度、押し込み性、及び測定のし易さについて評価した。
【0062】
実装体の異方性導電フィルム部分の外観の評価は、目視により気泡無しの場合を「◎」、小さい気泡ありの場合を「○」、大きい気泡ありの場合を「△」、浮きが生じた場合を「×」とした。また、実装体のピール強度(JIS K6854)の評価は、90°ピール強度が10N/25mm以上の場合を「◎」、90°ピール強度が8N/25mm以上10N/25mm未満の場合を「○」、90°ピール強度が6N/25mm以上8N/25mm未満の場合を「△」、90°ピール強度が6N/25mm未満の場合を「×」とした。また、押し込み性の評価は、実装体の導通抵抗が1Ω以下であるものを「◎」、1Ω以上2Ω未満であるものを「○」、2Ω以上5Ω未満であるものを「△」、5Ω以上であるものを「×」とした。導通抵抗は、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7561、横河電機社製)を用いて4端子法にて測定した。また、測定のし易さの評価は、目視によりクラムトグラムのピークが見易い場合を「◎」、ピークが普通に見える場合を「○」、ピークが見え難い場合を「△」、見えない場合を「×」とした。
【0063】
表3に示すように、BPEFの添加量が0.01wt%の場合、外観の評価は◎、ピール強度の評価は◎、押し込み性の評価は◎、測定のし易さは△であった。また、BPEFの添加量が0.1wt%の場合、外観の評価は◎、ピール強度の評価は◎、押し込み性の評価は◎、測定のし易さは○であった。また、BPEFの添加量が0.2wt%の場合、外観の評価は◎、ピール強度の評価は◎、押し込み性の評価は◎、測定のし易さは◎であった。また、BPEFの添加量が0.5wt%の場合、外観の評価は◎、ピール強度の評価は◎、押し込み性の評価は◎、測定のし易さは◎であった。また、BPEFの添加量が1.0wt%の場合、外観の評価は◎、ピール強度の評価は◎、押し込み性の評価は○、測定のし易さは◎であった。また、BPEFの添加量が5.0wt%の場合、外観の評価は○、ピール強度の評価は△、押し込み性の評価は△、測定のし易さは◎であった。また、BPEFの添加量が10.0wt%の場合、外観の評価は△、ピール強度の評価は×、押し込み性の評価は×、測定のし易さは◎であった。また、BPEFの添加量が30.0wt%の場合、外観の評価は×、ピール強度の評価は×、押し込み性の評価は×、測定のし易さは◎であった。
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、BPEFを異方性導電フィルムに配合して使用する場合、その配合量は、0.01wt%以上5.0wt%以下であることが好ましく、0.2wt%以上1.0wt%以下であることがより好ましいことが分かった。BPEFの配合量が大きくなると、測定のし易さは向上するものの、圧着時にACFに気泡が発生し、ピール強度、及び押し込み性を悪化させてしまうことが分かった。
図1
図2