(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたヒートポンプサイクル装置では、空気熱源か地中熱源のいずれか一方を熱源とするため、特に、冬季の寒冷地等において外気温が低く暖房負荷が過大になるような場合には暖房出力が不足しがちになることが想定される。
【0006】
このため、地中熱ヒートポンプに加勢して空気熱ヒートポンプによってさらに暖房出力を向上させるために、第1圧縮機、第1加熱熱交換器、第1膨張弁、地中熱源熱交換器を有する地中熱ヒートポンプと、第2圧縮機、第2加熱熱交換器、第2膨張弁、空気熱源熱交換器を有する空気熱ヒートポンプとを備え、第1加熱熱交換器と第2加熱熱交換器とを直列に連結し、地中熱ヒートポンプおよび空気熱ヒートポンプの双方を作動させ、放熱端末側の熱媒(循環液)を加熱して放熱端末による暖房運転を行うヒートポンプサイクル装置が創案されている。(例えば、未公開である特願2012−175620)。
【0007】
このような地中熱ヒートポンプと空気熱ヒートポンプとを直列に連結したヒートポンプサイクル装置において、外気温度が低い場合に暖房運転を行っているときは、空気熱ヒートポンプを構成する空気熱源熱交換器が着霜することがあり、空気熱源熱交換器は着霜すると熱交換効率が低下するため、空気熱源熱交換器の除霜をする必要がある。
【0008】
上記除霜の動作としては、空気熱ヒートポンプを構成する第2膨張弁を全開とすると共に空気熱ヒートポンプの冷媒の流れ方向を暖房運転時の冷媒の流れ方向とは逆転させ、第2圧縮機から吐出された高温の冷媒を、空気熱源熱交換器に直接供給して空気熱源熱交換器に発生した霜を溶かし、空気熱源熱交換器から流出した冷媒を、第2膨張弁で減圧されることなく第2膨張弁を通過させ、第2加熱熱交換器を流通させて、再び第2圧縮機に戻している。(除霜動作)
【0009】
この除霜動作を行う時に、放熱端末により暖房される被空調空間を無暖房状態としないように、地中熱ヒートポンプの作動と加熱循環ポンプの駆動を継続させることが考えられるが、暖房運転時と同様の回転速度で加熱循環ポンプを駆動させると、地中熱ヒートポンプの第1加熱熱交換器で加熱された循環液は、第2加熱熱交換器を流通する際に、空気熱ヒートポンプの冷媒側に吸熱され、第2加熱熱交換器を流出し放熱端末へ供給される循環液の温度は低下するため、そのような状態が長々と続くと暖房感を損ねてしまうという問題あり、その時間を極力短くするべく除霜動作を行う時間を短縮する必要があった。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、除霜動作時間を短縮させ、できるだけ暖房感を損なうことがない複合熱源ヒートポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1では、放熱端末に循環液を循環させる加熱循環ポンプを有する加熱循環回路と、この加熱循環回路に配設された凝縮器としての第1加熱熱交換器と、前記加熱循環回路に配設された凝縮器としての第2加熱熱交換器と、地中から採熱して回路内を循環する第1冷媒を加熱する地中熱源熱交換器と、前記第1冷媒を圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機から吐出された前記第1冷媒を流通させる前記第1加熱熱交換器と、前記第1加熱熱交換器から流出した前記第1冷媒を減圧する第1膨張弁と、を有し、前記第1加熱熱交換器を介して前記循環液を加熱する第1ヒートポンプ回路と、外気から採熱して回路内を循環する第2冷媒を加熱する空気熱源熱交換器と、前記第2冷媒を圧縮する第2圧縮機と、前記第2圧縮機から吐出された前記第2冷媒を流通させる前記第2加熱熱交換器と、前記第2加熱熱交換器から流出した前記第2冷媒を減圧する第2膨張弁と、前記第2冷媒の流れ方向を切り換える切換弁と、を有し、前記第2加熱熱交換器を介して前記循環液を加熱する第2ヒートポンプ回路と、動作を制御する制御装置と、を備え、前記第1加熱熱交換器は、前記加熱循環回路における前記第2加熱熱交換器の上流側に直列に配設され、前記第1ヒートポンプ回路および前記第2ヒートポンプ回路を作動させると共に前記加熱循環ポンプを駆動させて前記循環液を加熱する暖房運転を行う複合熱源ヒートポンプ装置であって、前記制御装置は、前記切換弁を、前記第2冷媒の流れ方向が前記暖房運転時の前記第2冷媒の流れ方向と逆になるように切り換えて、前記第2圧縮機から吐出された前記第2冷媒を前記空気熱源熱交換器に供給して前記空気熱源熱交換器に発生した霜を溶かす除霜動作を実行すると共に、当該除霜動作時に前記加熱循環ポンプを所定の除霜回転速度で駆動させる除霜動作制御手段を有し、前記暖房運転時に前記除霜動作制御手段が前記除霜動作を実行する場合には、前記第2膨張弁の開度は、前記暖房運転時よりも所定の開度まで拡大し、前記加熱循環ポンプの所定の除霜回転速度は、前記暖房運転時の回転速度よりも低く設定した回転速度と
し、前記放熱端末に前記循環液を循環させ、前記放熱端末による暖房を継続した状態で前記除霜動作を行うものとした。
【0012】
また、請求項2では、前記制御装置は、前記除霜動作時に、前記第1ヒートポンプ回路の前記第1圧縮機を最大回転速度で駆動させるものとした。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1によれば、除霜動作時に、加熱循環ポンプが暖房運転時における回転速度よりも低い回転速度で駆動すると、暖房運転時と比較して、単位時間当たりの循環液の循環流量が減少し、温度効率が上がるため、第1加熱熱交換器から流出する循環液Lの温度が高くなり、第2加熱熱交換器に流入する循環液の温度が高くなるので、第2加熱熱交換器において循環液側から第2冷媒側に吸熱される熱が多くなり、第2圧縮機から吐出されて空気熱源熱交換器に供給される第2冷媒の温度も上がるため、空気熱源熱交換器に発生した霜も溶けやすくなり、除霜動作時間を短縮することができ
、放熱端末による暖房も継続できるものである
。
【0014】
また、請求項2によれば、除霜動作時に、第1ヒートポンプ回路の第1圧縮機を最大回転速度で駆動させることで、除霜動作が行われる前の第2ヒートポンプ回路の暖房出力分を、できるだけカバーするように第1ヒートポンプ回路の暖房出力を増加させるので、第1加熱熱交換器において、第1冷媒側から循環液側に吸熱される熱が多くなり、第1加熱熱交換器から流出する循環液の温度を高めることができ、第2加熱熱交換器に流入する循環液の温度が高くなり、第2加熱熱交換器を流出する循環液の温度も高く保つことができ、放熱端末へ供給される循環液の温度低下をできるだけ抑制し、暖房感を損ねないようにできるものであり、さらに、第1加熱熱交換器から流出する循環液の温度を高めることができるため、第2加熱熱交換器に流入する循環液の温度が高くなるので、第2加熱熱交換器において循環液側から第2冷媒側に吸熱される熱が多くなり、第2圧縮機から吐出されて空気熱源熱交換器に供給される第2冷媒の温度も上がるため、空気熱源熱交換器に発生した霜も溶けやすくなり、除霜動作時間を短縮することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る複合熱源ヒートポンプ装置1の構成について適宜
図1と
図2を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、複合熱源ヒートポンプ装置1は、第1ヒートポンプ回路40(
図2参照)を備える地中熱ヒートポンプユニット4と、第2ヒートポンプ回路50(
図2参照)を備える空気熱ヒートポンプユニット5とを有している。また、複合熱源ヒートポンプ装置1は放熱端末36に熱媒としての循環液L(例えば、温水や不凍液)を循環させる負荷側循環回路としての加熱循環回路30と、熱源側循環回路としての地中熱循環回路20と、複合熱源ヒートポンプ装置1の動作を制御する制御手段としての制御装置6(61、62、63)と、制御装置6に信号を送るリモコン60とを有している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る複合熱源ヒートポンプ装置1は、地中熱源を利用して放熱端末36側の循環液Lを加熱する第1ヒートポンプ回路40の第1加熱熱交換器41と、空気熱源を利用して放熱端末36側の循環液Lを加熱する第2ヒートポンプ回路50の第2加熱熱交換器51とを加熱循環回路30に対して直列に接続した複合熱源ヒートポンプ装置であり、加熱循環回路30を循環する循環液Lの流れに対して、第1加熱熱交換器41が第2加熱熱交換器51よりも上流側に配設されている。この複合熱源ヒートポンプ装置1は、暖房装置および冷房装置として機能させることができるが、以下の実施形態においては主として暖房装置として使用している場合の構成要素および動作について説明する。
【0018】
第1ヒートポンプ回路40は、第1冷媒C1を圧縮する能力可変の第1圧縮機43と、第1圧縮機43から吐出された高温の第1冷媒C1を流通させ、この高温の第1冷媒C1と加熱循環回路30を流れる循環液Lとの熱交換を行う第1凝縮器としての第1加熱熱交換器41と、第1加熱熱交換器41から流出する第1冷媒C1を減圧する第1減圧手段としての第1膨張弁44と、第1膨張弁44からの減圧された低温の第1冷媒C1と地中熱循環回路を流れる熱媒H1との熱交換を行う第1蒸発器としての地中熱源熱交換器45と、これらを環状に接続する第1冷媒配管42とを備えて構成されている。この第1ヒートポンプ回路40は、第1冷媒C1が循環すると共に、第1加熱熱交換器41を介して加熱循環回路30を流れる循環液Lを加熱する。
【0019】
また、
図2に示す地中熱ヒートポンプユニット4において、符号42aは、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1の温度を検出する第1冷媒吐出温度センサであり、符号42bは、第1膨張弁44から地中熱源熱交換器45までの第1冷媒配管42、つまり低圧側の第1冷媒配管42に設けられ、低圧側の第1冷媒C1の温度を検出する第1冷媒温度センサである。
【0020】
第2ヒートポンプ回路50は、第2冷媒C2を圧縮する能力可変の第2圧縮機53と、第2圧縮機53から吐出された高温の第2冷媒C2を流通させ、この高温の第2冷媒C2と加熱循環回路30を流れる循環液Lとの熱交換を行う第2凝縮器としての第2加熱熱交換器51と、第2加熱熱交換器51から流出する第2冷媒C2を減圧する第2減圧手段としての第2膨張弁54と、第2膨張弁54からの減圧した低温の第2冷媒C2を流通させ、この低温の第2冷媒C2と送風ファン56の作動により送られる空気との熱交換を行う第2蒸発器としての空気熱源熱交換器55と、これらを環状に接続する第2冷媒配管52とを備えて構成されている。この第2ヒートポンプ回路50は、第2冷媒C2が循環すると共に、第2加熱熱交換器51を介して加熱循環回路30を流れる循環液Lを加熱する。
【0021】
第2冷媒配管52には、第2ヒートポンプ回路50における第2冷媒C2の流れ方向を切り換える切換弁としての四方弁58が設けられており、四方弁58は、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、第2加熱熱交換器51、第2膨張弁54、空気熱源熱交換器55の順に流通させ、第2圧縮機53に戻す流路を形成する状態(暖房運転時の状態)と、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、空気熱源熱交換器55、第2膨張弁54、第2加熱熱交換器51の順に流通させ、第2圧縮機53に戻す流路を形成する状態(除霜動作時の状態)とに切り換え可能なものである。
本実施形態では、空気熱源熱交換器55が低温となり、着霜した場合に、第2圧縮機53から吐出される第2冷媒C2が空気熱源熱交換器55に向けて流れるように四方弁58が切り換えられて、第2圧縮機53からの高温の第2冷媒C2により空気熱源熱交換器55に発生した霜が溶かされるようになっている。
【0022】
また、
図2に示す空気熱ヒートポンプユニット5において、符号52aは、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2の温度を検出する第2冷媒吐出温度センサであり、符号52bは、第2膨張弁54から空気熱源熱交換器55までの第2冷媒配管52、つまり低圧側の第2冷媒配管52に設けられ、低圧側の第2冷媒C2の温度を検出する第2冷媒温度センサであり、符号57は外気温度を検出する外気温センサである。
【0023】
なお、第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の冷媒としては、R410AやR32等のHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。
【0024】
第1加熱熱交換器41、地中熱源熱交換器45、および第2加熱熱交換器51は、例えばプレート式熱交換器で構成されている。このプレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、冷媒を流通させる冷媒流路と熱媒である流体を流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されている。
【0025】
地中熱循環回路20は、地中熱源熱交換器45と、地中熱源熱交換器45を流通する第1冷媒C1を加熱する熱源として地中に設置された地中熱交換器23と、これらを環状に接続する地中熱配管21とを備えて構成されている。また、地中熱配管21には、地中熱循環回路20に熱媒H1としてエチレングリコールやプロピレングリコール等を添加した不凍液を循環させる回転速度(単位時間当たりの回転数)可変の地中熱循環ポンプ22が設けられている。なお、
図2における符号24は、熱媒H1を貯留し地中熱循環回路20の圧力を調整する地中用シスターンである。
【0026】
ここで、地中熱循環回路20では、暖房運転を行う際に、地中熱交換器23によって地中から地中熱を採熱し、その熱を帯びた熱媒H1が地中熱循環ポンプ22により地中熱源熱交換器45に供給される。そして、地中熱源熱交換器45にて、地中熱源熱交換器45の冷媒流路を流通する第1冷媒C1と地中熱源熱交換器45の流体流路を流通する熱媒H1とが対向して流れて熱交換が行われ、地中熱交換器23にて採熱された地中熱が第1冷媒C1側に汲み上げられて第1冷媒C1が加熱され、地中熱源熱交換器45は蒸発器として機能するものとなる。
【0027】
加熱循環回路30は、第1凝縮器としての第1加熱熱交換器41と、第2凝縮器としての第2加熱熱交換器51と、被空調空間を加熱する床暖房パネルやパネルコンベクタ等の負荷端末としての放熱端末36と、これらを上流側から順に環状に接続する加熱配管31とを備えて構成されている。また、加熱配管31には、加熱循環回路30に循環液Lを循環させる加熱循環ポンプ32が設けられており、放熱端末36毎に分岐した加熱配管31の各々には、その開閉により放熱端末36への循環液Lの供給を制御する熱動弁33がそれぞれ設けられている。なお、放熱端末36は、
図2では2つ設けられているが、1つであってもよく、3つ以上であってもよく、数量や仕様が特に限定されるものではない。
【0028】
このように、加熱循環回路30において第1凝縮器としての第1加熱熱交換器41と第2凝縮器としての第2加熱熱交換器51とが直列に接続されており、加熱循環回路30を循環する循環液Lは、第1加熱熱交換器41を流通した後で、第2加熱熱交換器51を流通して、放熱端末36に供給されるように構成されている。
【0029】
なお、
図2に示す加熱循環回路30において、符号34は、加熱配管31に設けられ放熱端末36から第1加熱熱交換器41に流入する循環液Lの温度を検出する戻り温水温度センサであり、符号35は、循環液Lを貯留し加熱循環回路30の圧力を調整する暖房用シスターンである。
【0030】
制御装置6は、地中熱循環回路20、第1ヒートポンプ回路40、および加熱循環回路30の動作を制御する地中熱ヒートポンプ制御装置61と、第2ヒートポンプ回路50の動作を制御する空気熱ヒートポンプ制御装置62と、除霜動作を制御する除霜動作制御手段としての除霜動作制御装置63とを備えている。制御装置6は、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えており、外気温センサ57や温度センサ42a、42b等の各温度センサ、およびリモコン60からの信号を受けて、複合熱源ヒートポンプ装置1の動作を制御できるようになっている。
【0031】
除霜動作制御装置63は、空気熱源熱交換器55の除霜動作を実行するとき、加熱循環ポンプ32を所定の除霜回転速度で駆動させ放熱端末36による暖房運転を継続した状態で、除霜動作を行う。
加熱循環ポンプ32の所定の除霜回転速度は、暖房運転時における回転速度よりも低く設定されている。例えば、暖房運転における回転速度が3500rpmとすると、加熱循環ポンプ32の除霜回転速度は、3500rpmよりも低い2500rpmとすることができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、暖房運転時の加熱循環ポンプ32の回転速度を3500rpmとし、除霜動作を行っている時の加熱循環ポンプ32の除霜回転速度を2500rpmとしたが、これに限定されるものではなく、暖房運転における加熱循環ポンプ32の回転速度、および除霜回転速度は、ヒートポンプ装置の仕様や圧縮機の性能、設置環境、熱負荷等を勘案しながら、必要な暖房出力と除霜動作時間とのバランスを考慮して適宜設定される。
【0033】
前記除霜動作は、第2圧縮機53で圧縮された高温の第2冷媒C2を空気熱源熱交換器55に供給して、空気熱源熱交換器55の除霜を行う動作である。
除霜動作の形態は、
図3に示すように、暖房運転時(
図1参照)と逆方向に第2冷媒C2を循環させて除霜する形態である。
【0034】
具体的には、
図3に示す除霜動作は、第2膨張弁54を除霜動作前の暖房運転時よりも所定の開度まで拡大、ここでは全開まで拡大すると共に、四方弁58を除霜動作時の状態に切り換えて第2冷媒C2の流れ方向が暖房運転時の第2冷媒C2の流れ方向と逆になるようにし、第2圧縮機53から吐出された高温の第2冷媒C2を、空気熱源熱交換器55に供給して空気熱源熱交換器55に発生した霜を溶かす。空気熱源熱交換器55にて霜との熱交換で温度低下し、空気熱源熱交換器55から流出した第2冷媒C2は、第2膨張弁54で減圧されることなく第2膨張弁54を通過し、第2加熱熱交換器51を流通して、再び第2圧縮機53に戻るものである。この除霜動作時、第2加熱熱交換器51では、第2冷媒C2と循環液Lとの間で熱交換が行われ、循環液Lの熱が第2冷媒C2側に吸熱されて空気熱源熱交換器55の除霜用の熱として利用される。
【0035】
前記除霜動作の開始は、例えば、外気温センサ57で検出した外気温度、または外気温度と第2冷媒温度センサ52bで検出した冷媒温度が、所定の除霜開始条件に達したか否かを制御装置6が判断して、除霜開始条件に達していると判断したら除霜動作を開始することができる。また、除霜動作の完了は、第2冷媒温度センサ52bで検出する空気熱源熱交換器55を流通してきた第2冷媒C2の温度が、所定の除霜終了条件に達したか否かを制御装置6が判断して、除霜終了条件に達したと判断したら除霜動作を終了することができる。
【0036】
次に、
図1および
図2に示す複合熱源ヒートポンプ装置1の動作について説明する。
リモコン60から放熱端末36による被空調空間の加熱の指示がなされると、制御装置6は、外気温センサ57の検出する外気温度に基づき、地中熱源を利用する第1ヒートポンプ回路40および空気熱源を利用する第2ヒートポンプ回路50のうち、熱源として採熱効率のよい方を選択して作動させる。
【0037】
例えば、春季や秋季のように外気温度がそれほど低くない場合(例えば、5℃以上)で、暖房負荷が小さい場合には、制御装置6は、空気熱源を利用する第2ヒートポンプ回路50のみを作動させる。この場合、制御装置6は、第2圧縮機53、第2膨張弁54、送風ファン56、および加熱循環ポンプ32の駆動を開始させ、暖房運転が開始される。暖房運転が開始されると、第2加熱熱交換器51では加熱循環ポンプ32により循環される循環液Lと第2圧縮機53から吐出された高温高圧の第2冷媒C2とが熱交換され、加熱された循環液Lが放熱端末36に供給され被空調空間を加熱すると共に、空気熱源熱交換器55では、送風ファン56の作動により送られる空気と第2膨張弁54から吐出された低温低圧の第2冷媒C2とが熱交換され、空気熱により第2冷媒C2を加熱し蒸発させる。なお、この場合、加熱循環回路30を循環する循環液Lは、第1加熱熱交換器41も通過することになるが、このときには第1ヒートポンプ回路40は作動していないため、第1加熱熱交換器41では加熱されることなく通過する。
【0038】
一方、冬季のように外気温度が低い場合(例えば、5℃以下)には、制御装置6は、地中熱源を利用する第1ヒートポンプ40のみを作動させる。この場合、制御装置6は、第1圧縮機43、第1膨張弁44、地中熱循環ポンプ22、および加熱循環ポンプ32の駆動を開始させ、暖房運転が開始される。暖房運転が開始されると、第1加熱熱交換器41では加熱循環ポンプ32により循環される循環液Lと第1圧縮機43から吐出された高温高圧の第1冷媒C1とが熱交換され、加熱された循環液Lが放熱端末36に供給され被空調空間を加熱すると共に、地中熱源熱交換器45では、地中熱循環ポンプ22により循環され地中熱交換器23を介して地中熱を採熱した熱媒H1と第1膨張弁44から吐出された低温低圧の第1冷媒C1とが熱交換され、地中熱により第1冷媒C1を加熱し蒸発させる。なお、この場合、加熱循環回路30を循環する循環液Lは、第2加熱熱交換器51も通過することになるが、このときには第2ヒートポンプ回路50は作動していないため、第2加熱熱交換器51では加熱されることなく通過する。
【0039】
また、暖房運転の立ち上げ時や、第1ヒートポンプ回路40または第2ヒートポンプ回路50のどちらか一方が作動して暖房運転を行っている時に、外気温度がさらに低下する等して暖房負荷が大きくなり、一方の作動のみでは所望の暖房出力が得られないとき等に、制御装置6は、第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の両方を作動させた暖房運転を行う。第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の両方を作動させた暖房運転を例とした場合、制御装置6は、第1圧縮機43、第1膨張弁44、地中熱循環ポンプ22、第2圧縮機53、第2膨張弁54、送風ファン56、および加熱循環ポンプ32を駆動させて暖房運転が行われる。暖房運転中は、第1加熱熱交換器41では、加熱循環ポンプ32により循環される循環液Lと第1圧縮機43から吐出された高温高圧の第1冷媒C1とが対向して流れて熱交換が行われて循環液Lが加熱され、また、第2加熱熱交換器51では、加熱循環ポンプ32により循環される循環液Lと第2圧縮機53から吐出された高温高圧の第2冷媒C2とが対向して流れて熱交換が行われて
循環液Lが加熱される。このように、加熱循環回路30を循環する循環液Lは、第1加熱熱交換器41で加熱された後、第2加熱熱交換器51でもさらに加熱されて放熱端末36に供給され、放熱端末36を流通するときに循環液Lの熱が被空調空間に放熱されることで被空調空間の暖房が行われるものである。
【0040】
次に、暖房運転中に空気熱源熱交換器55の除霜動作が行われる場合の複合熱源ヒートポンプ装置1の動作を説明する。ここでは、第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の両方を作動させて暖房運転を行っているときに除霜動作が開始される場合について説明する。
【0041】
第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の両方を作動させると共に、加熱循環ポンプ32を駆動させて循環液Lを循環させ、第1加熱熱交換器41および第2加熱熱交換器51にて循環液Lを加熱して、加熱された循環液Lを放熱端末36に供給する暖房運転を行っている最中に、制御装置6が、例えば、外気温センサ57で検出した外気温度と第2冷媒温度センサ52bで検出した冷媒温度が、所定の除霜開始条件に達したと判断すると、除霜動作制御装置63は、除霜動作を開始すると共に、加熱循環ポンプ32を予め設定された所定の除霜回転速度で駆動させる。このとき、第1ヒートポンプ回路40は作動を継続しているので、暖房運転を継続した状態で除霜動作が開始されることとなる。
【0042】
前記除霜動作は、先に
図3を交えて説明したように、第2膨張弁54を全開とすると共に、四方弁58を除霜動作時の状態に切り換えて第2冷媒C2の流れ方向が暖房運転時の第2冷媒C2の流れ方向と逆になるようにし、第2圧縮機53から吐出された高温の第2冷媒C2を、直接的に空気熱源熱交換器55に供給して空気熱源熱交換器55に発生した霜を溶かし、空気熱源熱交換器55から流出した第2冷媒C2を、第2膨張弁54で減圧されることなく第2膨張弁54を通過させ、第2加熱熱交換器51を流通させて、再び第2圧縮機53に戻す。
【0043】
この除霜動作時、第2加熱熱交換器51では、第2冷媒C2と循環液Lとの間で熱交換が行われ、循環液Lの熱が第2冷媒C2側に吸熱されて、その熱が空気熱源熱交換器55の除霜用として利用されるものであるが、除霜動作を行っている時の加熱循環ポンプ32は、除霜動作が行われる前の暖房運転時における回転速度よりも低い所定の除霜回転速度で駆動している。ここで、第1加熱熱交換器41に流入する循環液Lの温度が一定で、第1加熱熱交換器41において第1冷媒C1から循環液Lに一定の熱量が与えられた場合を想定すると、加熱循環ポンプ32の回転速度を、例えば3500rpmとしたときよりも2500rpmと低くしたときの方が、単位時間当たりの循環液Lの循環流量が減少し、温度効率が上がるため、第1加熱熱交換器41から流出する循環液Lの温度が高くなるものである。よって、除霜動作時に、加熱循環ポンプ32が所定の除霜回転速度で駆動すると、除霜動作が行われる前の暖房運転時と比較して、単位時間当たりの循環液Lの循環流量が減少し、第1加熱熱交換器41から流出する循環液Lの温度が高くなる、すなわち、第2加熱熱交換器51に流入する循環液Lの温度が高くなるので、第2加熱熱交換器51において循環液L側から第2冷媒C2側に吸熱される熱が多くなり、第2冷媒C2の温度もその分上昇し、第2圧縮機53から吐出されて空気熱源熱交換器55に供給される第2冷媒C2の温度も上がるため、空気熱源熱交換器55に発生した霜も溶けやすくなるものである。したがって、除霜動作時の加熱循環ポンプ32の回転速度を、除霜動作が行われる前の暖房運転時の回転速度と同じ回転速度で駆動させるよりも、それよりも低く設定された所定の除霜回転速度で駆動させた時の方が、除霜動作時間を短縮することができるものである。
【0044】
また、前記除霜動作時は、第1ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を最大回転速度(例えば、90rps)で駆動させており、除霜動作が行われる前の第2ヒートポンプ回路50の暖房出力分を、できるだけカバーするように第1ヒートポンプ回路40の暖房出力を増加させるので、第1加熱熱交換器41において、第1冷媒C1側から循環液L側に吸熱される熱が多くなり、第1加熱熱交換器41から流出する循環液Lの温度を高めることができるため、第2加熱熱交換器51に流入する循環液Lの温度が高くなり、第2加熱熱交換器51を流出する循環液Lの温度も高く保つことができ、放熱端末36へ供給される循環液Lの温度低下をできるだけ抑制し、できるだけ暖房感を損ねないようにできるものである。さらに、第1加熱熱交換器41から流出する循環液Lの温度を高めることができるため、第2加熱熱交換器51に流入する循環液Lの温度が高くなるので、第2加熱熱交換器51において循環液L側から第2冷媒C2側に吸熱される熱が多くなり、第2冷媒C2の温度もその分上昇し、第2圧縮機53から吐出されて空気熱源熱交換器55に供給される第2冷媒C2の温度も上がるため、空気熱源熱交換器55に発生した霜も溶けやすくなり、除霜動作を行っている時間を短縮することができるものである。
なお、第1圧縮機43の前記最大回転速度は、厳格に適用する趣旨ではなく、許容回転速度や許容回転速度から安全率を見込んだもの等も含まれるものとする。
【0045】
そして、制御装置6が、第2冷媒温度センサ52bで検出する空気熱源熱交換器55を流通してきた第2冷媒C2の温度が、所定の除霜終了条件に達したと判断すると、除霜動作を終了させ、四方弁58を暖房運転時の状態(
図1参照)に切り換えて加熱循環ポンプ32の回転速度を暖房運転時の回転速度に戻し、除霜動作前に行われていたような第1ヒートポンプ回路40および第2ヒートポンプ回路50の両方を作動させた暖房運転に戻るものである。
【0046】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る複合熱源ヒートポンプ装置1は、除霜動作時間を短縮させることができ、できるだけ暖房感を損なうことがないものである。