(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231401
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター用インク供給システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20171106BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20171106BHJP
B41J 2/195 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/195
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-35337(P2014-35337)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162233(P2014-162233A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/777,845
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511281800
【氏名又は名称】インクス インターナショナル インク カンパニー
【氏名又は名称原語表記】INX INTERNATIONAL INK COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ラカーゼ,ジョン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リン,フェンロング
【審査官】
村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−196208(JP,A)
【文献】
米国特許第06428156(US,B1)
【文献】
特開2011−051172(JP,A)
【文献】
特表2011−520654(JP,A)
【文献】
特開2009−178996(JP,A)
【文献】
特開2012−096524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口(207)と吸入口(209)とを有する、供給された再循環インクを収容する第1容器(101)と、
上記排出口からのインクの供給を受けるための吸入端(104)と、圧力端(106)とを有する、自システム内に実質的に無脈流のインクの流れを発生させるよう構成された再循環ポンプ(111)と、
螺旋状に形成されたインク管(307)と、上記螺旋状の一方の端と熱的接触をする第1および第2加熱要素(303a、303b)とを備え、上記圧力端との間に設置されたフィルター(113)を有する上記圧力端からのインクを受けるための吸入口(302)と、排出口(304)とを有する加熱ユニット(115)と、
供給インクの圧力および温度を検知するための第1圧力センサ(105b)と、第1温度センサ(107b)とが設置されたプリントヘッドインク供給管(402)と、
上記プリントヘッドインク供給管から供給されたインクを受け入れるための供給インク取入口(116)と、未噴射インクを送るための戻り口(114)とを有する再循環インク噴射プリントヘッド(109)と、
上記戻り口からインクを受け入れる戻りインク管(408)とを備え、
上記戻りインク管は、第1容器の上記吸入口と流体連通しており、戻りインクの圧力および温度を検知するために上記戻りインク管に設置された第2圧力センサ(105a)と第2温度センサ(107a)とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンター用インク供給システム(100)。
【請求項2】
上記第1容器内において圧力を低く維持するために選択的に加圧可能な上記第1容器と流体連通しているエアーポンプ(119)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項3】
上記システムに導入するための充填用インクを収容する上記第1容器と流体連通している第2容器(123)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項4】
上記第1容器内において圧力を低く維持するために選択的に加圧可能な上記第1容器と流体連通しているエアーポンプをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のインク供給システム。
【請求項5】
上記再循環ポンプの圧力端との間に設置され、上記第1容器と流動連通し、圧力調整バルブ(117)を含むバイパス管(129)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項6】
上記システムに導入するための充填用インクを収容する上記第1容器と流体連通している第2容器をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のインク供給システム。
【請求項7】
上記第1容器内において圧力を低く維持するために選択的に加圧可能な上記第1容器と流体連通しているエアーポンプをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のインク供給システム。
【請求項8】
小型収容部材(701)と、
上記小型収容部材に実質的に保持されたインク流体回路であって、上記小型収容部材に封入された再循環タンク(101)と、上記再循環タンクからインクを実質的に無脈流で引き込み、そして実質的に無脈流でインクを該インク流体回路内に送り出すよう構成され、上記小型収容部材に封入された再循環ポンプ(111)と、上記再循環ポンプに押し出
されたインクを加熱するために上記小型収容部材に設置された加熱ユニット(115)と、上記小型収容部材に設置され、上記加熱ユニットから受け入れたインクと、1つまたはそれ以上のプリントヘッドから受け入れた戻りインクの圧力と温度とを検知するよう構成された第1および第2圧力センサと第1および第2温度センサとを備えるセンサユニット(103)とを備えたインク流体回路と、
上記小型収容部材に収容され、上記センサに応答し、上記再循環ポンプの速度と、上記加熱ユニットの温度とを調整するために作動可能なよう構成された制御システム(500)とを備えており、
上記再循環タンクは、上記再循環タンクから空気を除去するために動作可能であるエアーポンプ(119)と流体連通しており、
上記加熱ユニットが、管(307)を備え、上記管を通してインクが送られ、上記管は二重螺旋形に形成され1つまたはそれ以上の加熱要素と熱的接触していることを特徴とする軽量インク供給システム(100)。
【請求項9】
上記インク流体回路が、上記再循環ポンプによって送り出されたインクを、上記流体回路内の流体圧力が閾値を超えた時に上記再循環タンクに送るためのバイパス線(129)をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の軽量インク供給システム。
【請求項10】
上記制御システムが、
上記センサユニットから導出される計測圧力差を得るステップと、
上記センサユニットから導出される計測温度を得るステップと、
上記計測圧力差と、少なくとも1つの予め規定された許容圧力とを比較し、上記計測温度と少なくとも1つの予め規定された許容温度とを比較するステップと、
上記比較に応じて上記再循環ポンプの速度を変更するステップと、
上記比較に応じて、上記加熱ユニットが発生する熱の温度を変更するステップとを実行するための制御論理を備えたメモリを有するコンピュータベースプロセッサーであることを特徴とする請求項9に記載の軽量インク供給システム。
【請求項11】
上記小型収容部材は、走査用プリントヘッド(109)に、上記プリントヘッドが走査する時に上記走査用プリントヘッドと共に移動するよう設置されることを特徴とする請求項8に記載の軽量インク供給システム。
【請求項12】
上記再循環タンクは、上記再循環タンクから空気を除去するために動作可能であるエアーポンプと流体連通していることを特徴とする請求項11に記載の軽量インク供給システム。
【請求項13】
上記加熱ユニットが、管を備え、上記管を通してインクが送られ、上記管は二重螺旋形に形成され1つまたはそれ以上の加熱要素と熱的接触していることを特徴とする請求項12に記載の軽量インク供給システム。
【請求項14】
上記インク流体回路が、上記再循環ポンプによって送り出されたインクを、上記流体回路内の流体圧力が閾値を超えた時に上記再循環タンクに送るためのバイパス線をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載の軽量インク供給システム。
【請求項15】
上記制御システムが、
上記センサユニットから導出される計測圧力差を得るステップと、
上記センサユニットから導出される計測温度を得るステップと、
上記計測圧力差と、少なくとも1つの予め規定された許容圧力とを比較し、上記計測温度と少なくとも1つの予め規定された許容温度とを比較するステップと、
上記比較に応じて上記再循環ポンプの速度を変更するステップと、
上記比較に応じて、上記加熱ユニットが発生する熱の温度を変更するステップとを実行するための制御論理を備えたメモリを有するコンピュータベースプロセッサーであることを特徴とする請求項14に記載の軽量インク供給システム。
【請求項16】
実質的に一定のインク流体圧力を発生させ、インク液を加熱するための加熱ユニット(115)の吸入口(302)と流体連通している排出口(106)を有するギアポンプ(111)と、
上記加熱ユニットによって加熱されたインクと機能的に接触するよう設置された第1温度センサ(107b)と第1圧力センサ(105b)と、
再循環用プリントヘッドから受け入れたインクと機能的に接触するように設置された第2温度センサ(107a)と第2圧力センサ(105a)と、
上記第1および第2温度センサと上記第1および第2圧力センサに応答し、ポンプの速度と上記加熱ユニットが発生する熱を調整するよう構成された制御システム(500)とを備えており、
上記プリントヘッドから受け入れたインクが内部に送られ、そこから上記ギアポンプがインク液を引き込む一つの再循環容器(101)と、上記容器内を実質的に真空に保つための蠕動性エアーポンプ(119)をさらに備え、
上記加熱ユニットが、管(307)を備え、上記管を通してインクが送られ、上記管は二重螺旋形に形成され1つまたはそれ以上の加熱要素と熱的接触していることを特徴とするインクジェットプリンター用のインク流体回路。
【請求項17】
上記流体回路の外部に設置され、上記流体回路に選択的にインクを導入するよう調整された供給タンク(123)をさらに備え、上記供給タンクは上記1つの再循環容器と流体連通していることを特徴とする請求項16に記載のインク流体回路。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景〕
〔技術分野〕
本発明は、概してインクジェットプリンターに関し、特に再循環して供給されたインクを使用するインクジェットプリンターに関する。
【0002】
〔関連技術の記載〕
インクジェットプリンターのインク液の液滴はインクジェット用のプリントヘッドのノズルから、例えば、特に塗工紙でもよいが、受容層に噴射される。通常、インクジェット用のプリントヘッドは列になっているノズルを有し、各ノズルは、異なる場所へインクを噴射する。各ノズルは同時にインクの噴射をすることも可能である。上記インクは、例えば、圧力波を作り出す熱アクチュエーターや圧電性アクチュエーターを利用してノズルから噴射される。通常、インク液の大きさを一定に保つことができるようにすること、または、インク液の大きさを変化させて記録可能なプリンターにおいては、インク液の大きさを自在に制御することができるようにすることが目的とされる。インク液の大きさを確実に一定にするための主な条件の1つは、プリントヘッドにおけるインクの圧力を、使用される当該プリントヘッドに適した一定の範囲内で安定させることである。
【0003】
プリントヘッドのノズルにおけるインクの圧力は種々の方法によって一定に保つことが可能である。例えば、小型インクジェットプリンターには、上記プリントヘッドを収容するシャトルに設置されたインク容器(ink reservoir)内に設けられた負圧発生部材を採用することが多い。大型プリンターや業務用インクジェットプリンターでは、上記インクの圧力または上記インクの上方の空気(大気)の圧力を直接制御することによって、インクタンク内の圧力を調節し安定させるシステムを該インクタンクに備えることが多い。
【0004】
従来のデザインが克服しなければならない問題は、インク液の大きさがばらばらになって、印刷の質を低下させてしまうことになる圧力の変動である。このような圧力の変動はダイヤフラムインクポンプやインペラインクポンプによって生じ得る。従来のシステムでは、圧力を調節する部材を加えることで、このような圧力の変動、又は振動を軽減しようとしたが、その結果、大型で、かつ複雑で扱いにくいシステムになってしまった。特に、上記プリントヘッドがプリンターシステムによって制御されるキャリッジキャリッジ(carriage)に設置されており、印刷物が大きく、印刷物にインクを塗布する時に上記プリントヘッドが印刷物を往復するようになっている大型の走査用プリントヘッドを使用する場合に振動が悪化する。これら大型の従来技術システムは、(時には2つの)再循環タンクと、フィルターと、ポンプと、加熱器とを備えているが、上記キャリッジは、実際に走査する際にそれらの重みに耐えられないので、これらは常に固定状態でなければならない。したがって、従来のインク供給システムは、長さのある管を有したプリントヘッドに接続されていなければならず、印刷中にプリントヘッドのキャリッジが止まったり動いたりする毎に、上記管の内部に圧力の振動が生じてプリントヘッドに送られることになる。さらに、インク供給管とインク戻り管が長いということは、熱の損失が大きいことを意味し、従来のシステムでは加熱器を追加することでこの問題を軽減しようとしている。しかしながら、加熱器を追加すると、UV硬化性インクが過熱され、その結果、早すぎる段階で硬化を促してしまい、化学的な安定性を損なうことになる。
【0005】
〔要約〕
本発明の要点を述べるために、本発明のある態様と、効果と、新規な特徴とが本明細書に記載されている。本発明の特定の実施形態のいずれかに基づいて、必ずしもすべての効果が達成されるわけではないことが理解されるべきである。したがって、本発明は、本明細書に記載または提案されているような複数の他の効果を必ずしも実現することなく、本明細書に記載の1つの効果または複数の効果を実現または最大限利用することで具体化または実施してもよい。
【0006】
インクジェットプリンター用インク供給システムは、実質的に無脈流のインクの流れを発生させるように構成された再循環ポンプに連結した再循環タンクを含んでいる。少なくとも1つの加熱要素と熱的接触をする螺旋状に形成されたインク管を有する加熱ユニット(heating assembly)は、上記ポンプからインクを受け入れ、該インクがプリントヘッドに入る時と該プリントヘッドから戻される時に、インクの特性を計測する温度センサと圧力センサとを備えたセンサユニットに送り出す。上記の戻されたインクは、それから再循環タンクに移され、そこから上記ポンプが再循環インクを引き込む。上記再循環タンク内を実質的に真空に保つために、エアーポンプが上記再循環タンクに連結されている。
【0007】
別の実施形態も、添付された図面を参考にした下記に記載の実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。また、本発明は開示されたいかなる特定の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
図面において、同一の参照番号は、同一または機能的に類似の要素を示している。また、参照番号の左端の数字は当該参照番号が最初に表示された図面を示している。
【0009】
図1は、インク供給システムの一例の機能概略図である。
【0010】
図2は、上記システムに利用されるよう調整された再循環タンクの一例の断面図である。
【0011】
図3は、加熱ユニットの一例の分解図である。
【0012】
図3Aは、収容部材を取り外した上記加熱ユニットを示す図である。
【0013】
図4は、センサブロックユニットの一例の斜視図である。
【0014】
図4Aは、
図4のセンサブロックユニットの分解図である。
【0015】
図4B−Bは、
図4のB―B線に沿った上記センサブロックユニットの断面図である。
【0016】
図4C−Cは、
図4のC―C線に沿った上記センサブロックユニットの断面図である。
【0017】
図5は、制御システムの一例の機能概略図である。
【0018】
図6は、制御システムとして機能するよう調整可能なコンピュータベースシステムの一例の機能概略図である。
【0019】
図7は、収容部材内に設置または、該収容部材に保持された上記インク供給システムの構成例の立面図である。
【0020】
〔詳細な説明〕
本発明の種々の実施形態およびその効果は
図1〜
図7を参照することで最もよく理解できる。各図面の各要素は必ずしも原寸通りに描かれているものではなく、その代わりに、各実施形態の原理を明確に示すために強調して示されている。全図面を通して、種々の図面の同一および対応する部分には同一番号が用いられている。
【0021】
また、本明細書において、「実施形態」、「一実施形態」、「種々の実施形態」またはこれらの別のいずれの形態に言及することは、特定の実施形態と共に記載された本発明の特定の特徴または態様が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書中の様々な箇所における、「一実施形態において」、「別の実施形態において」という記載、またはこれらの別の表示方法は必ずしもその全てがそれぞれの個々の実施形態に言及しているわけではない。
【0022】
一例として挙げるインク供給システム100は、本質的には流体回路であり、再循環ポンプ111の吸入端104に連結した流出口を有する再循環容器101を備え、再循環ポンプ111の圧力端106は、再循環ポンプ111との間にフィルター113を有する加熱ユニット115に連結されている。しかしながら、フィルター113の位置は、設計上好適なように、加熱ユニット115の上流側または下流側のいかなる適した位置にしてもよい。フィルター113を加熱ユニット115の上流側に設置するように設計すれば、加熱ユニット115を温度センサ105の近くに設置することができる。加熱ユニット115から出たインクは圧力センサ105と温度センサ107とを含むセンサブロックユニット103と、1つまたはそれ以上の再循環プリントヘッド109に連結したプリントヘッド供給インク管116に送られる。噴射されなかったインクは、戻り管114を介して供給システム100に再導入される。より詳細に後述されるように、第1組の圧力センサ105と温度センサ107は、プリントヘッド供給インク管116につながり、第2組の圧力センサ105と温度センサ107は戻りインク管114につながっている。したがって、インクが上記プリントヘッドに入る前と該プリントヘッドから出てすぐに、圧力と温度の計測が行われる。戻りインク102は、センサブロックユニット103から流れ出て、再循環容器101に送られる。システム100は、再循環容器101と流体連通しているエアーポンプ119を備えており、再循環容器101とエアーポンプ119との間には、流出検知センサ121が設置されている。さらに、逆止弁117が再循環ポンプ111の圧力端106からのバイパス線129に連結しており、該逆止弁から排出されたインクが再循環容器101に流入する。
【0023】
図2は収容室202を画定する収容部205を備える再循環容器101の一例の断面図である。収容室202内では、例えば浮きなどを含んだ流体レベル検知ユニット203が、インクの最小の閾値を検知可能な適当な深さまで伸びている。流体レベル検知ユニット203は、(後述の)コンピュータベース制御システムに関わる流体レベル信号201を発生するよう構成されている。流出管207は、再循環ポンプ111の吸入端104に連結し、流入管209は、センサブロック103からの戻りインク102を収容室内に送るために収容室202内に伸びている。注入口212は、上記システムの起動時または上記収容室内の流体レベルが低い時に、該システムに導入される充填用インク(fill ink)110を受け入れるために設置されている。注入口212は、インクが上に向かって飛び散って、流体レベル検知ユニット203に干渉することを防ぐとともに、充填用ポンプ(fill pump)によって導入され得る気泡を消散するために、収容部205の内壁に画定された扇形の縁214へ供給インク110を送る。吹出口216は、エアーポンプ119に連結した送気管112に連結している。
【0024】
再循環ポンプ111は、振動を起こさないように上記システム内にインクを送り出し、自吸できるようなポンプが選択される。当然のことながら、望ましい流れと圧力でプリントヘッドにインクが送られるようにすべきである。再循環ポンプ111は、ギアポンプであることが好ましく、特に外部ギアポンプであることが好ましい。一実施形態では、再循環ポンプ111はモーター131によって駆動し、動的な封入ではなく、静的な封入になるように、該再循環ポンプは該モーターに磁力で連結され、それによって信頼性が大きく向上する。さらに、モーター131はブラシのないモーターであることが好ましい。再循環ポンプ111の速度によってシステム100内のインクの圧力が制御されることが理解されるであろう。
【0025】
ここで
図3および
図3Aを参照すると、加熱ユニット115の一例が、第1および第2収容部材301a、301bと、第1および第2平面加熱要素303a、303bと共により詳細に示されている。収容部材301a、301bは、(下記に詳述するが)加熱要素303a、303bにエネルギーを供給し、コントローラーに連結した制御線305a、305bを取り囲んで保持している。
図3Aに、より簡潔に示すように、上記加熱ユニットは、二重螺旋状に形成されることが好ましく、フィルター113を介して再循環ポンプ111からインクを受け入れる取入口302と、センサブロックユニット103への注入口に連結した排出口304とを有するインク管307を保持している。第1および第2加熱要素303a、303bは当該螺旋状の両側に配置される。インク管307の長さは、好ましくは、流体の取り入れ温度、流出速度および流出量を考慮して、関連技術の当業者に理解されるような、第1および第2加熱要素303a、303bによって発生した熱を移すことができる長さであれば十分である。実施形態の一例では、上記管の長さは約3メートルである。この長さは、インクが排出口304を介して加熱ユニット115から出て、プリントヘッドで使用されるために約40度〜約50度でセンサブロック103に到達できるのに十分であることが実証された。加熱ユニット115は、インクが加熱ユニット115に入り、該加熱ユニットから出るまでにインクの温度を約25度上昇させるのに適していることが好ましい。しかし、本システムを初めて利用した直後は、上記インクが適温になるまで複数回循環させることが必要となることがある。
【0026】
従来技術システムの典型例では、インクに熱を伝える収容部を加熱する。しかし、この構成では、タンクとインクとの間の表面接触面積が少なく、またタンク内の乱流が少ないため概して十分な加熱ができない。別のシステムでは、短い長さの加熱管(約1フィート)を有する熱交換器を使用している。より長い管(約3フィート)を備えた上記の二重螺旋管の形態は、コスト効率が良く、インクが加熱管へ接触する接触表面を増加させる簡易な方法であって、インクの流れによって加熱されたインクが混ざり、それによって、インクが流れずに過熱されてしまう滞留(インクが静止している)領域が無くなることを確実にする。
【0027】
一例として挙げるセンサブロックユニット103は、
図4〜
図4Cに示すように、温度センサおよび圧力センサの設置保持構造を備えている。
図4および
図4Aにおいて、センサブロックユニット103は、設置ブロック407と圧力センサ制御基板405とを包む外部収容ユニット401、403を備えている。
図4のB―B線および
図4のC―C線の断面図に示すように、設置ブロック403は、該設置ブロック内に概して垂直に画定され、加熱ユニット115の排出口304と連結した注入端404と、適当なプリントヘッド(不図示)の対応する注入口に連結されたプリントヘッド供給インク管116内に画定された2つの排出口406a、406bとを有する供給インク注入チャネル402を含んでいる。本例におけるチャネル402は、両排出口406a、406bにインクを供給するために分岐している(図中「C」)。同様に、戻りインクチャネル408は、供給インク注入チャネル402と平行に設置ブロック407内に画定され、該戻りインクチャネルは、適当なプリントヘッド(不図示)の対応する排出口に連結した戻りインク管114に画定された2つの注入口410a、410bを有している。注入口410a、410bは、ブロック407の内部で再循環タンク101の流入管209に連結した排出口412まで伸びている1つの戻りインクチャネル408に合流する。
【0028】
設置ブロック407は、向かい合う該設置ブロックの壁によって画定される一対の第1実装ボーリング穴414a、414bをさらに備えており、実装ボーリング穴414a、414bは、それぞれの対応する最も近いチャネル402、408と交差する深さまで伸びている。第1および第2温度センサ107a、107bは、例えば、サーミスターであって、供給インクまたは戻りインクのどちらかがチャネル408、402を通った時に、第1および第2温度センサ107a、107bが流体に接するように、ボーリング穴414a、414bに挿入されている。温度センサ107は、以下により詳細に再度説明する制御システムに連結された制御線409を含んでいる。同様に、ブロック403は、供給インクチャネル402および戻りインクチャネル408内の流体圧力を検知するための圧力センサ105a、105bを収容するよう設計された向かい合う上記ブロックの壁によって画定される一対の第2実装ボーリング穴416a、416bを有している。断面図において、各圧力センサ107は、各分岐(図中「C」)付近または各分岐におけるインクのそれぞれの流れに接触するように設置されていることが分かる。さらに、圧力センサ107は、上記制御システムに連結される制御基板405に連結される。本実施形態例では、両圧力センサ107は、インクシステム内のプリントヘッドの近くの同じ場所に位置している。しかしながら、一次システム要素(例えば、ポンプ、タンク、フィルター、加熱ユニットなど)をプリンタヘッドから遠くに離さなければならない実施形態でも、上記圧力センサはプリントヘッドの近くに設置するべきである。
【0029】
上述したように、一例として挙げるシステム100は、吹出口216に連結した空気112を介して再循環タンク101と流体連通しているエアーポンプ119を含むことが好ましい。エアーポンプ119は、センサブロックユニット103において望ましい圧力を得るために、必要に応じて再循環タンク101に空気を供給し、または再循環タンクから空気を取り除く蠕動ポンプとしてもよい。作動モード、待機モード、排気モードを含むエアーポンプ119の作動は、その時の状態に基づいた望ましい圧力を維持するために構成された制御論理アルゴリズムに従って制御システムによって制御される。蠕動ポンプの利点は、電源が切れていても空気を閉じ込めて再循環タンク101内の真空を保つことである。これは、従来システムと比較して、インクを節約し、ユーザの不満を減らす大きな特性である。さらに、送気管112は、送気管112に入るインクやインクの泡沫を検知することができる流出センサ121を含んでいる。センサ121が管112に入るインクまたはインクの泡沫を検知した場合、センサ121から、該管の閉鎖や排気を命じる制御システムに検知信号が発信される。
【0030】
インク供給システムの設計に精通した人ならば、従来システムの典型例では、インクが大量にこぼれてからのみ作動するフロートセンサ(float sensor)を備えた大型で重量のある流出トラップタンク(overflow trap tank)を利用していることを認識するであろう。この従来システムでは、ユーザがこぼれたインクを除去するための保守手順を追加する必要があり、それによって多くの時間とインクが無駄になることは言うまでもない。一方、送気管上の流出センサ121は、インクが再循環タンク101から大量に流出するかなり前に作動するので、インクを節約し、保守の必要性を減らすことになる。さらに、上記のことから、従来技術システムより安価でかつ小型で軽量な装置になる。
【0031】
システム100は、新たなインクを導入するために、その排出口がフィルター127に連結した充填用ポンプ125の吸入端116に連結した大量インク供給容器123を備えた構造を含むことが好ましい。充填用インク118はバイパス線129を介して再循環タンク101に送られる。また、逆止弁133をフィルター127とバイパス線129との間に設置してもよい。逆止弁133は充填用インク118が上記システムに導入されている間はつねに開いている。逆止弁133の目的は、充填用ポンプ125が作動していない時でも、再循環容器101内に維持された真空状態によって、供給容器123からインクを吸い上げられるからである。これによって、再循環容器101のインクが溢れ、該インクが送気管112に流れていってしまうが、流出センサ121が作動した時に上記システムは停止されることになる。したがって、逆止弁133は充填用ポンプ125が作動していない間は閉じている。
【0032】
また、フィルター113、125は、約5ミクロン(5μ)より大きいサイズのゲルや粒子をインクから取り除くよう構成されていることが好ましい。さらに、接触器(またはガス抜き器)を、再循環ポンプ111の排出口とセンサブロックユニット103との間に位置するインク再循環経路内に含んでもよい。
【0033】
動作にあたって、再循環ポンプ111が吸入端104からインクを引き込む再循環タンク101から再循環インクを引き込み、該インクを圧力端106に流す。フィルター113を通った後、インクは加熱ユニット115に入り、そこから加熱インク108として出ていき、センサブロックユニット103まで送られ、センサブロックユニット103を介して該インクはプリントヘッド供給インク管116からプリントヘッド109へ導入されるまで流れていく。該インクの温度および圧力は、該インクがプリントヘッド109に流れる前に、温度センサ107と圧力センサ105によって計測される。噴出されなかった戻りインクは、戻り管114を介して、センサブロックユニット103に戻り、そこで該インクの温度および圧力が温度センサ107と圧力センサ105によってそれぞれ再度測定され、センサブロックユニット103から排出された戻りインク102は再循環タンク101に再び戻される。
【0034】
再循環ポンプ111の圧力端106に、例えば、フィルターの詰まりや、または下流部での他の障害物によって、管やプリントヘッドなどのいずれかにおいて圧力がかかりすぎた場合、逆止弁117が開いてインクがバイパス線を流れて再循環タンク101に戻れるようにする。このような時、圧力センサ105によって計測されるセンサブロックユニット103の供給端への圧力は閾値より低くなり、それによって、過度の圧力が解消するまで動作を停止させるよう構成された制御システムに送られる警告信号が発信される。
【0035】
システム100のインクレベルは、流体レベル検知ユニット203を介して上記制御システムによって監視される。インクレベルが予めセットされた閾値に到達した場合、上記制御システムは、充填用ポンプ125に圧力を加えて大量供給タンク123からインクを再び供給し始めるよう構成されている。
【0036】
図5は、上述した種々の要素がコンピュータベース制御システム500に連結されているシステム100内に用いられ得る信号ネットワークの一例の機能図である。本例では、制御システム500は、それぞれ再循環タンク100と大量インク供給タンク123からの入力流体レベル情報信号502、504として、センサブロッユニット103、再循環ポンプ111、および/またはモーター131からの圧力および温度信号506と、それらと共に、送気管流出検知器121からの流体検知信号518を受信するよう構成されている。制御システム500は、下記に記載するように、制御システム500に受信した入力に基づいて種々の制御命令を発信させる制御論理を備えており、その制御命令には以下のものがある:(1)センサブロックユニット103から受信した圧力信号506に基づきシステム100の圧力を増加させる必要がある場合の、再循環ポンプモーター131への加圧命令508;(2)上記再循環タンクの真空状態が弱まった場合の、エアーポンプ119への加圧、減圧および排ガス命令510、または送気管112内で流体が検知された場合の、減圧または排ガス命令:(3)システム100内の流体レベルが低すぎる場合の、供給インクポンプ125への加圧および減圧命令512;(4)インク温度が作動するにあたっての許容範囲外であることを示す温度信号506に応じた加熱ユニット115への加圧命令514。逆止弁117が開放された場合は、上記システムを終了するために、上記と同じ情報経路が用いられる。
【0037】
上述のようなシステムの圧力調整は、プリントヘッド109の注入口および出口でのセンサブロックユニット103内のプリントヘッド供給インク管116および戻りインク管114における圧力を測定することで実施される。一実施形態では、受容可能なシステムの圧力の閾値は、供給インク管116と戻りインク管114との間の圧力の差として規定される。上述したように、圧力センサ105は圧力信号を制御システム500に送る。制御システム500は、上記測定差を算出し、そして、システムの圧力が許容範囲内にあるかどうか該測定差と1つまたは複数の閾値とを比較する制御論理を備えている。制御システム500が、上記圧力測定差が許容圧力値外であると判断した場合、制御システム500は、再循環ポンプ111とモーター131に命令信号を送って、再循環ポンプ111の速度を加速または減速させ、システムの圧力を増加または減少させる。
【0038】
同様に、システムの温度調整は、プリントヘッド供給インク管116および戻りインク管114におけるインクの温度を測定することで実施される。一実施形態では、システムの許容温度の閾値は、供給インク管116および戻りインク管114に関する平均温度として規定される。温度センサ107は、平均測定温度を算出し、そして温度が許容範囲内であるかどうか該平均測定温度と1つまたは複数の閾値とを比較する制御論理を備えるよう構成された制御システム500に、温度信号506を送る。制御システム500が、上記平均測定温度が許容温度値外であると判断した場合、制御システム500は、命令信号514を上記加熱ユニットに送って、加熱ユニット115内の熱を増加させたり減少させたりする。
【0039】
制御システム500は、当業者によって理解されるように、1つまたはそれ以上のコンピュータベースプロセッサーであってもよい。そのようなプロセッサーは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gated array(FPGA))、特定用途向け集積チップ(application specific integrated chip(ASIC))、プログラマブル回路基板(programmable circuit board(PCB))、マイクロコントローラー、またはその他の適当な集積チップ(IC)機器によって実現してもよい。
【0040】
図6を参照すると、プロセッサー600は、実際はコンピュータシステムを備えている。そのようなコンピュータシステムは、例えば、通信バス603に連結した1つまたはそれ以上の中央演算処理装置(CPU)を含んでいる。上記コンピュータシステムは、例えば、限定されるわけではないが、フラッシュメモリ、リードオンリーメモリ(ROM)、またはランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ605を含むことができ、さらに二次メモリ607も含むことができる。上記二次メモリは、例えば、ハードディスクドライブおよび/またはリムーバブル記録ドライブを含むことができる。上記リムーバブル記録ドライブは、周知の方法によりリムーバブル記録ユニットからの読み取りおよび/または該リムーバブル記録ユニットへの書き込みを行う。上記リムーバブル記録ユニットは、フロッピーディスク、磁気テープ、光ディスクなどであり、上記リムーバブル記録ドライブによって読み取りおよび書き込みが行われる。上記リムーバブル記録ユニットは、コンピュータソフトウェアおよび/またはデータを内蔵したコンピュータ利用可能な記録媒体を含んでいる。
【0041】
二次メモリ607は、コンピュータプログラムまたは他の命令を上記コンピュータシステムにロードさせる他の同様の手段を含むことができる。そのような手段は、例えば、リムーバブル記録ユニットやインターフェースを含むことができる。上記の例として、(ビデオゲーム機器に見られるような)プログラムカートリッジやカートリッジインターフェースと、(EPROMまたはPROMのような)リムーバブルメモリチップと、連結ソケットと、その他のリムーバブル記録ユニットと、ソフトウェアおよびデータを上記リムーバブル記録ユニットから上記コンピュータシステムに移すインターフェースとが挙げられる。
【0042】
(制御論理609とも呼ばれる)コンピュータプログラムは、上記メインメモリおよび/または二次メモリに記録される。コンピュータプログラムは、通信インターフェースを介しても受け入れられる。そのようなコンピュータプログラムが実行された時、上記コンピュータシステムが本明細書に記載された本発明の特定の特徴を実行できるようにする。特に、上記コンピュータプログラムは、実行された時、制御プロセッサー600が本発明の特徴を実行し、および/または実行させることを可能にするものである。
【0043】
プロセッサー600と上記のプロセッサーメモリは、上記プロセッサーを、上述したような特定の予め規定された方法で起動させるデータおよび命令を示す論理ロジックまたはその他の基盤構造を持つよう構成されるのが好ましい。上記制御論理は1つまたはそれ以上のモジュールとして実行されるのが好ましい。上記モジュールは上記プロセッサーメモリに備わり、1つまたはそれ以上のプロセッサーを実行するよう構成されるのが好ましい。上記モジュールは、特定のタスクを実行するソフトウェアまたはハードウェア要素を含んでいるが、これに限定されるわけではない。したがって、モジュールは、例えば、ソフトウェア要素、プロセス、機能、サブルーチン、プロシージャ、属性、集合要素、タスク要素、オブジェクト指向のソフトウェア要素、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、電気回路、データなどの要素を含んでもよい。制御論理は、いかなる適当な入力/出力装置に成り得る通信バス603に連結されたコンピュータインターフェース611を利用した上記メモリにインストールしてもよい。コンピュータインターフェース611は、予め構成された変更またはカスタマイズのいずれかにしたがって、ユーザが上記制御論理を変更できるよう構成されてもよい。
【0044】
上記制御論理は、従来は、1つまたはそれ以上の上記メモリ記録装置にあるデータ構造内における上記プロセッサーによるデータビットの操作およびこれらデータビットの管理を含んでいる。このデータ構造は、プロセッサーメモリ内に記録されたデータビットの集合体が物理的に編成されるようにし、特定の電気または磁気要素を示す。上記のような記号的な表現は、当業者が他の当業者に効率的に記述内容および発見事項を伝えるために用いられる手段である。
【0045】
上記制御論理は、概して、プロセッサーが実行する一連のステップになると考えられる。これらのステップは、概して、物理量の操作を必要とする。必ずしも必須ではないが、通常は、これらの物理量は、記録、移送、結合、比較、または操作することが可能である電気、磁気、または光信号の形態を有している。これらの信号を、ビット、値、要素、記号、文字、文、用語、数字、レコード、ファイルなどと称するのは当業者にとっては通常のことである。しかしながら、これらの用語および他の用語はプロセッサーの動作に適した物理量と関連すべきであること、またこれらの用語は上記コンピュータ内および上記コンピュータの作動中に存在する物理量に適用される単なる従来の表示に過ぎないということに留意すべきである。
【0046】
上記プロセッサー内での操作は、操作する人が行う手動操作に関連することが多い、追加、比較、移動、検索などの言葉で称されることが多いことが認識されるべきである。人が操作に関わらないことが必要であったり、望ましいことさえあるということが認識されるべきである。本明細書に記載の動作は、上記プロセッサーまたはコンピュータと相互作用する操作する人またはユーザと協働して実行される機械の動作である。
【0047】
本明細書に記載の上記プログラム、モジュール、プロセス、方法などは、実施例にすぎず、いかなる特定のプロセッサー、装置、またはプロセッサー言語に関連または限定されるものではないことも認識されるべきである。むしろ、様々なタイプの汎用性の計算機または計算装置を、本明細書に記載された内容にしたがって作成されたプログラムと共に使用してもよい。同様に、例えばリードオンリーメモリ(ROM)のような不揮発性メモリや、例えばASIC、FPGA、PCB、マイクロコントローラ、またはマルチチップモジュール(MCM)のような要素に記録された組込み論理またはプログラムを有する専用プロセッサーシステムを使用して、本明細書に記載の制御機能方法を実行するための専用装置を作成することが好ましいことが明らかになるだろう。本明細書に記載の機能を実行するためにハードウェア機器を実装することは関連技術の同業者にとっては自明であろう。
【0048】
ソフトウェアを利用して本発明を実行する実施形態においては、上記のリムーバブル記録ドライブ、メモリーチップ、または通信インターフェースを使用して、該ソフトウェアをコンピュータプログラム製品に記録し、上記コンピュータシステムにロードすることができる。上記制御論理(ソフトウェア)は、制御プロセッサーによって実行された時、該制御プロセッサーに本明細書に記載した本発明の特定の機能を実行させる。さらに別の実施形態では、本発明の特徴はハードウェアとソフトウェアとを組み合わせて実施可能である。
【0049】
図7は、走査用プリントヘッドを使用した印刷において特に効果的であるコンパクトなデザインを実現するシステム100の構成を示している。上記で特定した要素、つまり、再循環タンク101と、再循環ポンプ111と、該再循環ポンプのモータ131と、制御システム500とが小型収容部701に設置されている。フィルター113は、収容部701の上方に伸びる、上記ポンプからの排出口に固定され、収容部701の裏側に設置された加熱ユニット115の注入口に連結した管を有している。センサユニットブロック103は、走査用プリントヘッドとしてもよい1つまたはそれ以上のプリントヘッドに接続可能となるように収容部701の外部に設置されている。そのコンパクトなデザインおよび軽さと、そして、従来技術のシステムにおいてこれまで設置されていた要素を排除したことで、収容部701に、設置、収容、または保持されるインク回路を備える上記システムは、上記プリントヘッドが印刷物を往復する時に該プリントヘッドとともに移動するように、上記プリントヘッド、つまりプリントヘッドキャリッジに完全に設置されてもよい。
【0050】
システム100は従来の再循環インク供給システムに対していくつかの効果を奏することが理解されるであろう。コンパクトなシステム100は、走査する(つまり、印刷物に対応して移動する)プリンヘッドプリンターとの使用に適するように従来のシステムよりもはるかに少ない場所を必要とし、従来のシステムよりもはるかに軽い。複雑な構造が無いことから、信頼性が大きく増し、インク漏れが少なくなり、さらに問題が起こった時の修理も容易となる。上記のコンパクトなデザインは製造するコストも安く、そのため、印刷産業においてより安価な選択肢となる。
【0051】
この新規なデザインの効果からもいくつかの効果が得られる。例えば、上記エアーポンプに結合する再循環タンク101のデザインによって上記インク回路内の気泡が少なくなる。さらに、従来システムの多くが再循環タンク101を2つ使用する。そのため、本明細書に記載のシステムにおいて、再循環タンク101が1つだけ必要であることは、大きさ、重さ、コスト面で大きな利点である。再循環タンク101が1つだけ必要なことから、第二タンクと、レベルセンサと、エアーポンプと、流出検知器とがあるために、本システムが大きく、重くなってしまうことがない。システム100は、調整に対する応答性が非常によい。例えば、上述したように、再循環ポンプ111の速度によって、圧力センサでの供給側から戻る側のインクの圧力の差を制御する。上記ポンプの速度を変えることによって、センサブロックユニット103において計測される圧力の差をほとんどすぐに(例えば、約200ミリ秒またはそれ以下)変化させる。本デザインの一実施形態における更なる効果は、エアーポンプ119が上記戻る側の圧力を制御し、それによって、確実に目標圧力を保つために、上記圧力の差、および上記戻る側の圧力の計測の両方を利用することができることである。ファームウェアでは、上記再循環ポンプは、圧力の差を維持するために制御され、上記エアーポンプは上記の戻る側の目標圧力を維持するために制御される。上記流体回路内のインクの速度に関連した螺旋状の管303を有する加熱ユニット115のデザインは、温度変化への応答性も高める。システムの応答性が良いことは、テンポが速い時、インクを継続的に大量に使用するような活発な印刷状況、または付属のプリントヘッドの噴射の開始と停止を短時間で何度も切り替える時に特に望ましい。
【0052】
また、このシステムは、複数の自給式の、独立して制御されるインク供給システム100をプリンターに導入できるという大きな効果も奏する。複数の大型のプリントヘッドの列を有する従来の大型印刷機、または多色刷りの大型の印刷機では、複数のインク供給システムが、1つの制御システムと真空ポンプを共有することが多く、そのため非常に複雑な制御アルゴリズムが必要となり、その結果、さらなる保守をすることになる。さらに、そのような従来システムでは、複数の異なる種類のインクが使用され得るため、1つの管理システムが複数のセンサで監視して複数のポンプで制御しなければならない各種類ごとに特有の温度および圧力の設定基準を要することになりかねない。それに対して、本明細書で開示した上記システムは、専用の制御システムと、センサの列と、制御とを含み、その結果、システム100は、他のシステム100を構成する方法とは独立して、特定のインクに個別に合わせることができる。
【0053】
上述したように、また関連した図面に示したように、本発明は、再循環インクを要するインクジェットプリンター用のインク供給システムを備えている。本発明の特定の実施形態について記載したが、本発明の変形例は、特に上述した内容を考慮して当業者によって実施可能であるため、本発明はこれに限定されないことが認識されるだろう。したがって、本発明は、本システムの精神および範囲を具体化する特徴や他の改良点を実施する上記のような変形例を含むように添付の請求項によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】インク供給システムの一例の機能概略図である。
【
図2】上記システムに利用されるよう調整された再循環タンクの一例の断面図である。
【
図3A】収容部材を取り外した上記加熱ユニットを示す図である。
【
図4】センサブロックユニットの一例の斜視図である。
【
図4A】
図4のセンサブロックユニットの分解図である。
【
図4B-B】
図4のB―B線に沿った上記センサブロックユニットの断面図である。
【
図4C-C】
図4のC―C線に沿った上記センサブロックユニットの断面図である。
【
図6】制御システムとして機能するよう調整可能なコンピュータベースシステムの一例の機能概略図である。
【
図7】収容部材内に設置または、該収容部材に保持された上記インク供給システムの構成例の立面図である。