【実施例1】
【0032】
図1は、本実施例1に係る装飾部材が装着されたステアリングホイールを示す斜視図である。
図2は、同装飾部材を示す斜視図であり、
図3は、
図2に示したIII−III線における断面図である。
なお、以下の説明において、前後方向及び左右方向とは、
図1に示したステアリングホイールをニュートラル位置の状態にてリム部が水平面上に配されるように保持したときの平面視における前後方向及び左右方向を言う。また、上方とは、運転者側から見たときのステアリングホイールの手前側(表面側)の方向を言い、下方とは、ステアリングホイールの奥側(裏面側)の方向を言う。
【0033】
本実施例1のステアリングホイール10は、ステアリングホイール本体11と、ステアリングホイール本体11の中央部に取り付けられ、押圧されることにより下方に向けて移動することが可能なステアリングパッド20と、ステアリングパッド20の内部に装着される図示しないエアバッグ装置と、ステアリングパッド20の左右両側でステアリングホイール本体11に取り付けられる左右一対のフィニッシャー12と、ステアリングホイール本体11の裏側に被せられる合成樹脂製のボディカバー(ロアカバー)13とを有する。
【0034】
この場合、ステアリングホイール本体11は、ステアリングシャフトが連結される図示しないボス部と、運転者が把持する環状のリム部11aと、ボス部及びリム部11a間を連結する複数のスポーク部11bとを有する。左右のフィニッシャー12は、ボス部の上面側におけるステアリングパッド20の左右両側の位置に、左側又は右側のスポーク部11bから下方側のスポーク部11bにまたがるように配されている。また、フィニッシャー12は、合成樹脂を用いて成形されており、メタリック調を呈する表面外観を備える。
【0035】
なお、本発明において、ステアリングホイール本体11、エアバッグ装置、フィニッシャー12、及びボディカバー13の構成は特に限定されず、任意に変更することが可能である。例えば、
図1に示したステアリングホイール10のフィニッシャー12の部分に、オーディオ装置やカーナビゲーション装置を操作する操作ボタン等を配設することも可能である。
【0036】
本実施例1のステアリングパッド20は、熱可塑性樹脂又はオレフィン系エラストマーからなる基部部材21と、基部部材21の表面に貼着される表皮材30とを有する。また、基部部材21は、エアバッグ装置の周囲を取り囲むように配されてエアバッグ収容部を構成する縦壁部23と、縦壁部23の上端部に一体化され、ステアリングパッド20の運転者に対向する外面形状を形成する表板部24とを有する。
【0037】
基部部材21の縦壁部23は、上下方向に直交する断面が略矩形状を呈するように前後左右に配される4つの側壁部を有しており、各側壁部の下端部には、エアバッグ装置を固定するリベットを挿通させるための複数の挿通孔23aが穿設されている。
【0038】
基部部材21の表板部24は、縦壁部23より内側に配され、エアバッグ装置の上面側を覆う蓋部25と、縦壁部23から外側に向けて張り出すように延出する延出部26とを有する。この場合、基部部材21の縦壁部23と蓋部25とによりエアバッグ収容部が構成される。なお、表板部24は、ステアリングホイール10のデザイン等に応じて種々の形状を採用することが可能である。
【0039】
表板部24の蓋部25は、当該蓋部25の裏面(下面)側に凹溝状に形成され、エアバッグ装置の作動時にエアバッグの膨張圧を受けることにより破断可能なテアライン25aと、テアライン25aの破断によって扉部を形成する扉予定部25bと、扉予定部25bと縦壁部23の間に配される基端部25cとを備える。
【0040】
表板部24(延出部26)の前端部は、
図2に示すように、ステアリングホイール本体11の左右のスポーク部11bの形状に対応するように下方側に折り曲げられて形成されており、また、表板部24の左右側縁部も、
図2及び
図3に示すように、下方側に折り曲げられた形状を有する。更に、表板部24の左右側縁部よりも少し内側の位置の上面には、表皮材30の後述する第1及び第2基布31,32の縫合部35を収容可能な左右の収容溝部27が、表板部24の左右側縁に沿って、前後方向に対して少し傾斜して連続的に形成されている。
【0041】
本実施例1の収容溝部27は、表板部24の主上面に対して窪むように凹設されており、主上面と略平行に配される底面部27aと、底面部27aから立ち上がる内側側壁部27b及び外側側壁部27cとを有する。ここで、表板部24の主上面とは、表板部24における蓋部25の上面を含んで連続的に形成される平滑な上面を言う。
【0042】
この場合、表板部24における主上面の表面部(主上面部)は、
図4に示すように、表皮材30の第1基布31が貼着される第1表面部28aを形成する。収容溝部27の底面部27a及び外側側壁部27cと、表板部24の収容溝部27よりも外側に配される表面部は、表皮材30の第2基布32が貼着される第2表面部28bを形成する。また、収容溝部27の内側側壁部27bは、第1表面部28aと第2表面部28bの間に配される段差部28cを形成している。
【0043】
この段差部28cにおける収容溝部27の底面から表板部24の主上面までの高さ方向(上下方向)の寸法は、表皮材30の後述する縫合部35の厚さに対応して、表皮材30を表板部24に貼着したときに縫合部35の厚さを収容溝部27で吸収する大きさに設定されており、それにより、第1表面部28aに貼り付けた表皮材30の外面(上面)と、収容溝部27に収容された縫合部35の外面(上面)とを、段差のない連続する単一の平滑面に形成することができる。
【0044】
更に本実施例1では、
図4に示すように、第1表面部28aを形成する表板部24の主上面部と、段差部28cを形成する収容溝部27の内側側壁部27bとが、稜線状に角張らないように、湾曲面状に形成された湾曲面部28dを介して接続されている。また、この湾曲面部28dには、複数の微細な凹凸部29が、基部部材21の表皮材30に対する接着強度を低減させる低減手段として、収容溝部27の長さ方向に沿って筋状に形成されている。
【0045】
特に、本実施例1の湾曲面部28dにおける複数の微細な凹凸部29は、表板部24の第1表面部28aから収容溝部27の内側側壁部27bにかけて、
図5に示すように、所定の大きさの凹部29aと凸部29bとが所定の間隔をもって交互に規則的に形成されることにより構成されている。この場合、各凸部29bの頂端を結んで形成される湾曲面は、表板部24の主上面と収容溝部27の側壁面とに連続して滑らかに繋がるように形成されている。
【0046】
更に本実施例1において、各凸部29bの頂端を結んで形成される湾曲面から凹部29aの谷底までの距離で規定される凹凸部29の深さ寸法は、0.1mm以上0.5mm以下に、好ましくは0.2mm以上0.4mm以下に設定される。
【0047】
このような深さ寸法をもって複数の凹凸部29が湾曲面部28dに形成されることによって、湾曲面部28dに接着剤22を吹き付けて塗布したときに、凸部29bの表面に塗布された接着剤22を、隣接する凹部29a内に流れ込ませて溜めることが可能となる。
【0048】
それにより、凸部29bの表面に残って表皮材30に対して接着力を発揮する接着剤22の量を効果的に低減でき、また、凹部29a内に溜まる接着剤22を表皮材30に接触させ難くし、その溜まった接着剤22が表皮材30に対して接着力を発揮することを抑制することができる。
【0049】
なお本発明において、湾曲面部28dに設ける微細な凹凸部29の形態は限定されるものではなく、後述するように凸部の表面に塗布された接着剤を凹部内に導くことが可能であれば、例えば凹部と凸部とが収容溝部の長さ方向に直交する方向に沿って筋状に設けられていても良く、また、凹部や凸部が特定の形状を備えずに無作為に(ランダムに)設けられ、湾曲面部の表面がシボ模様を呈するように形成されていても良い。更に、凹部や凸部が特定の形状を備えない場合でも、凹凸部の深さ寸法は上述の範囲の大きさに設定されることが好ましい。
【0050】
上述のような本実施例1における複数の微細な凹凸部29は、基部部材21を成形する際に、その成形用金型における基部部材21の湾曲面部28dを成形する部分のキャビティ面に、対応する凹凸部を設けておくことにより、容易に形成することが可能である。
【0051】
なお、本発明において、基部部材21の湾曲面部28dに複数の微細な凹凸部29を設ける方法は特に限定されるものではなく、例えば湾曲面部に凹凸部が設けられていない基部部材を射出成形した後に、成形された基部部材の湾曲面部に対して、切削加工やサンドブラストなどの物理処理を施すことや、エッチングによる化学処理を施すことによって、凹凸部を形成することも可能である。
【0052】
本実施例1における表皮材30は、表板部24の主上面に貼着される第1基布31と、第1基布31の左右側縁部に縫合される左右一対の第2基布32とを有しており、これらの第1基布31及び第2基布32は、天然皮革又は合成皮革を所定の形状に裁断することにより形成されている。また、第1基布31及び第2基布32は、僅かに伸び縮みができるような弾性を備えている。なお、本発明において、第1基布31及び第2基布32の材質は特に限定されず、任意に変更することができる。
【0053】
また、第1基布31における表板部24の略中心部となる部分には、装飾体としてのエンブレム31aが取り付けられている。更に、第1基布31には、第1基布31の上面側から下面側に貫通する複数の小さなピンホール31bが、基部部材21の表板部24に形成したテアライン25aの位置に沿って、レーザー加工により穿設されている。
【0054】
このような複数のピンホール31bが形成されていることより、図示しないエアバッグ装置が作動して基部部材21がエアバッグの膨張圧を受けることによってテアライン25aが破断するときに、表皮材30もテアライン25aに沿って破断させることができる。それによって、ステアリングパッド20にエアバッグを膨張展開させる開口部を安定して形成することが可能となる。なお、各ピンホール31bは、第1基布31の上面側における直径が、ステアリングパッド20を上面側から見たときにピンホール31bを視認することができない程の小さい大きさで形成されている。
【0055】
この表皮材30は、第1基布31の左右側縁部に左右の第2基布32をそれぞれ縫製により接合することによって、左右方向の中央部を基準にして左右対称的な形状に作製されている。
ここで、第1基布31と左側の第2基布32とを縫合する方法について具体的に説明する。
【0056】
先ず、第1基布31の左側端面と第2基布32の右側端面(内側側端面)との位置を合わせるようにして、第1基布31の外面側となる第1面と、第2基布32の外面側となる第1面とが、互いに対向する向きで第1基布31と第2基布32とを重ね合せる。このとき、所定の形状に裁断された第1基布31や第2基布32に裁断誤差が生じているような場合は、第1基布31の左側端面の位置と第2基布32の右側端面の位置を調整して第1及び第2基布31,32を重ね合せることにより、その裁断誤差を吸収することが可能である。
【0057】
次に、第1基布31と第2基布32とを重ね合せた状態で、第1基布31の左側縁部と第2基布32の内側側縁部(右側縁部)とを、位置が合わせられた第1基布31の左側端面と第2基布32の右側端面の位置から少し内側に入った位置にて縫い合わせる。このとき、第1基布31と第2基布32を縫い合わせる第1縫い目線(第1シームライン)35aが、第1及び第2基布31,32の側端面に沿うように形成される。
【0058】
第1基布31と第2基布32を第1縫い目線35aで縫い合わせた後、第1基布31を、当該第1基布31の第1面が露呈するようにして、第1縫い目線35aに沿ってU字状に折り返す。このとき、第1縫い目線35aは、折り返された第1基布31の内面(裏面)側に隠される。続いて、第1基布31が折り返された状態を保持した状態で、第1縫い目線35aと第1及び第2基布31,32の側端面との間の位置にて、第1基布31の折り返し部分と第2基布32とを第2縫い目線35bで縫い合わせる。
【0059】
これにより、第1縫い目線35aと第2縫い目線35bとを有する縫合部(接合部)35で、第1基布31と左側の第2基布32とが重ね合わされた状態で一体化される。またこの場合、第2縫い目線35bは、第1基布31の外面に模様として表出することにより表皮材30の意匠性を高めている。更に、縫合部35は、第1基布31と第2基布32との間で表皮材30の色調及び/又は質感が切り替わる基布の切替部となる。
【0060】
そして、上述のように第1基布31と左側の第2基布32とを縫い合わせると同時に(又は縫い合わせた後に)、当該第1基布31の右側縁部と右側の第2基布32とが、左側の第2基布32の場合と同様の手順で、第1縫い目線35a及び第2縫い目線35bで縫い合わせられる。
【0061】
これにより、第1基布31と左右の第2基布32とが、第1基布31の左右の側縁部が折り返されて、左右の第2基布32の内側側縁部上に重ねられた状態で縫合一体化された表皮材30が作製される。このように第1基布31と左右の第2基布32とが第1縫い目線35a及び第2縫い目線35bにより縫合された表皮材30は、縫合部35にて切り替わる第1及び第2基布31,32の2種類の色彩及び/又は質感を備えており、ステアリングパッド20に高級感や優れた意匠性を持たせることができる。
【0062】
なお、本実施例1では、第1基布31と左右の第2基布32とを縫製により縫合一体化しているが、本発明において、第1基布31と第2基布32とを接合する手段は特に限定されるものではなく、例えば接着又は溶着等によって第1基布31と第2基布32とを接合一体化して表皮材30を作製することも可能である。
【0063】
次に、上述のように作製された表皮材30を、基部部材21の表面に貼り付けるために、先ず、基部部材21の表板部24の上面と表板部24の左右側縁部の下面(裏面)とに、接着剤22をノズルから噴射して吹き付ける。このとき、接着剤22として、例えばクロロプレンゴム系の液状の接着剤22を用いることが好ましい。また、接着剤22を噴射するノズルとして、ノズルの直径が2.0mm以上2.5mm以下に設定されたノズルを用いることが好ましい。
【0064】
上記ノズルを用いて接着剤22を吹き付けることにより、基部部材21の表板部24の上面全面に接着剤22が塗布されるが、このとき、表板部24の主上面部(第1表面部28a)と収容溝部27の内側側壁部27b(段差部28c)との間に配される湾曲面部28dには、複数の微細な凹凸部29が形成されている。
【0065】
従って、湾曲面部28dに塗布された接着剤22のうち、凸部29b上の接着剤22は、当該接着剤22の自重により凹部29aの谷底側に吸い込まれるように流入するため、
図5に示すように、湾曲面部28dの各凹部29aに接着剤22を溜めると同時に、凸部29b上の接着剤22の量(厚さ)を減らすことができる。なお本発明では、例えば接着剤を、ローラー等を用いて湾曲面部28dに塗り付けることによって、凹凸部29の凸部29bの頂端部のみに塗布することも可能である。
【0066】
更に本実施例1では、基部部材21に接着剤22を吹き付けて塗布した後、その基部部材21を加熱雰囲気中に曝して、接着剤22の一部を予備硬化させることにより、湾曲面部28dの凸部29b上に薄く塗布されている接着剤22の接着力を意図的に低下させている。
【0067】
基部部材21を加熱雰囲気中で処理した後、第1基布31と左右の第2基布32とが縫合部35で縫合された表皮材30を、基部部材21の表板部24に被せるように重ね合わせる。このとき、表皮材30の左右の縫合部35を、
図3に示すように、当該縫合部35と各収容溝部27の内側側壁部27bとの間に空間部37が形成されるようにして、基部部材21の左右の収容溝部27に挿入して収容するとともに、表皮材30の左右の縫合部35間に配される第1基布31を、基部部材21の左右の収容溝部27間に配される表板部24の主上面に被せる。
【0068】
このように本実施例1では、表皮材30の縫合部35における第1及び第2基布31,32の端面と、基部部材21の収容溝部27の内側側壁部27bの側壁面との間に空間部37が形成されるようにして表皮材30を基部部材21に被せることにより、例えば第1基布31や第2基布32に裁断誤差が生じたときに、その裁断誤差を吸収するように第1基布31の側端面と第2基布32の側端面の位置を相互にずらした場合でも、表皮材30の縫合部35を基部部材21の収容溝部27内に安定して収容することができる。
【0069】
更に、上述のように表皮材30の縫合部35を基部部材21の収容溝部27に挿入するとともに、表皮材30の左右の縫合部35より外側に配される第2基布32を、基部部材21における収容溝部27の外側側壁部27cと表板部24の左右側縁部とに密着させるように貼り付ける。更に、表皮材30の第2基布32を、基部部材21の表板部24の左右側縁部の下面(裏面)側に回り込ませて、表板部24の左右側端縁を第2基布32で包み込むようにして貼り付ける。
【0070】
そして、表皮材30を基部部材21の表板部24に被せて貼り付けた後、その表皮材30の外面側にプレス部材を押し当てて、表皮材30を基部部材21に向けて弾性的にプレスすることにより、表皮材30を基部部材21に強固に且つ綺麗に接着(圧着)させることができる。このとき、表皮材30の縫合部35と基部部材21の収容溝部27の内側側壁部27bとの間には空間部37が形成されているため、プレス部材によるプレスの作用により、表皮材30(第1基布31)が空間部37内に圧入される。
【0071】
その後、プレス部材によるプレスが解除されたときに、本実施例1では、基部部材21における表板部24の主上面部と収容溝部27の内側側壁部27bとの間が湾曲面部28dで形成されているため、表皮材30の縫合部35と基部部材21の収容溝部27の内側側壁部27bとの間に空間部37が形成されていても、基部部材21に貼着した表皮材30の上面(外面)側に筋状の線が表れることを防止できる。
【0072】
更に本実施例1では、接着剤22を塗布した基部部材21の湾曲面部28dに複数の微細な凹凸部29が形成されていることにより、上述のように、凸部29b上の接着剤22を凹部29aの谷底側に流入させて凸部29b上の接着剤22の接着力を低下させている(
図5を参照)。
【0073】
また、湾曲面部28dに凹凸部29が形成されていることにより、当該湾曲面部28dに表皮材30を貼り付けたときに、各凸部29bでは表皮材30が接着するものの、凹部29aと表皮材30との間には空隙が形成され、各凹部29aが第1基布31と離間して第1基布31が接着されない非接着部分が構成される。このように湾曲面部28dの各凹部29aにおいて表皮材30との接着を妨げる非接着部分が形成されていることにより、湾曲面部28dの表皮材30に対する有効な接着面積を低下させ、それによって、表皮材30に対する接着力(接着強度)を弱めることができる。
【0074】
すなわち、基部部材21の湾曲面部28dでは、凸部29b上の接着剤22の量を少なくするとともに、凹部29aによる非接着部分を形成することにより、表皮材30に対する接着力を局部的に効果的に弱めている。このため、プレス部材で表皮材30を基部部材21に向けて弾性的にプレスして表皮材30を基部部材21に圧着した後、そのプレスを解除することによって、湾曲面部28d以外の基部部材21の表面部では表皮材30が強固に接着した状態で固定されるものの、基部部材21の湾曲面部28dでは、表皮材30の弾性力(張力)が働くことにより、表皮材30が接着状態で固定されず、湾曲面部28dに沿って湾曲した状態から押圧前の平面的な状態に弾性的に戻り易くなる。
【0075】
その結果、
図7を用いて説明したような少し窪んだ形状の凹み部66が表皮材30の外面に形成されることを防止でき、又は、凹み部66が表皮材30の外面に形成されたとしても、その凹み部66の窪み具合を小さくして凹み部66をぼかして目立たなくすることができる。
【0076】
以上のようにして表皮材30が貼り付けられた本実施例1のステアリングパッド20では、基部部材21の主上面部(第1表面部28a)と収容溝部27の底面部27a(第2表面部28b)との間に、表皮材30の縫合部(接合部)35の厚さに対応する段差部28cが形成されていても、表皮材30の外面に、従来のような外見上の違和感を生じさせる筋状の線や、少し窪んだ形状の凹み部66が表れることを防止し、滑らかな面を形成することができる。それにより、ステアリングパッド20の外観品質が向上し、高級感のある良好な美感が安定して得られる。
【0077】
しかも、本実施例1のステアリングパッド20では、基部部材21の収容溝部27に表皮材30の縫合部35を収容して、第1基布31と第2基布32とを略同じ高さ位置に配置しているため、第1基布31の表面と第2基布32の表面とを連続した面のように見せることができ、ステアリングパッド20の見栄えが更に高められている。
【0078】
なお、本実施例1では、基部部材21の湾曲面部28dに複数の微細な凹凸部29を設けることにより、湾曲面部28dの表皮材30に対する有効な接着面積を低下させて、基部部材21の表皮材30に対する接着強度を低減させる低減手段が構成されている。
【0079】
しかし、本発明では、接着強度の低減手段を、例えば基部部材21の湾曲面部28dに微細な凹凸部29を設けずに、湾曲面部28dを滑らかな湾曲面状に形成し、且つ、その湾曲面部28dに接着剤22を塗布した後に、複数の微細な粉状物(粉体微粒子)を吹き付けて付着させることによって構成することも可能である。この場合、曲面部に付着させる微細な粉状物として、例えば、粒子が細かい砂や、粒径が200μm〜800μm(好ましくは500μm)程度の砥石を用いることが好適である。
【0080】
またその他に、滑らかな湾曲面状に形成された湾曲面部28dに接着剤22を塗布した後に、当該湾曲面部28dに、接着剤22の活性を減殺させるオイル樹脂をローラー等で塗布することによって、基部部材21の表皮材30に対する接着強度を低減させる低減手段が構成されていても良い。
【0081】
また、上述した実施例1では、基部部材21に、表皮材30の縫合部35を収容する凹状の収容溝部27が設けられているが、本発明は、基部部材21の第1基布31を貼着する第1表面部28aと第2基布32を貼着する第2表面部28bとの間に、表皮材30の縫合部35の厚さに対する段差部28cが形成されていれば、凹状の収容溝部27の形態を備えないステアリングパッドにも適用することができる。
【0082】
すなわち、上述の実施例1における基部部材21の収容溝部27では、第2基布32を貼着する第2表面部28bが、収容溝部27の底面部27a、収容溝部27の外側側壁部27c、及び、収容溝部27よりも外側に配される表面部により構成されており、第2基布32は、収容溝部27の底面部27aから外側にむけて、クランク状に折り曲げられながら第2表面部28bに貼り付けられている。
【0083】
しかし、本発明は、例えば
図6に基部部材の変形例を示すように、基部部材41が、上述の実施例1のような収容溝部27を備えておらず、第1基布31を貼着する第1表面部48aと、第1表面部48aから段差部48cを介して低位に形成され、第2基布32を貼着する平面状の第2表面部48bとを有している場合にも、同様に適用することができる。この場合、第1表面部48aと段差部48cとの間には、複数の微細な凹凸部49が接着強度の低減手段として形成された湾曲面部48dが設けられている。
【0084】
このような湾曲面部48dを備えた
図6の基部部材41の表面に、接着剤を吹き付けて塗布した後、上述の実施例1の場合と同様に、第1及び第2基布が縫合部で縫合された表皮材を、その縫合部と段差部48cとの間に空間部が形成されるように被せ、更に、プレス部材を表皮材の外面側に押し当てて弾性的にプレスする。それによって、表皮材が基部部材41に接着固定されたステアリングパッドが製造される。
【0085】
このように製造されたステアリングパッドでも、基部部材41に貼着された表皮材の外面に、外見上の違和感を生じさせる筋状の線や、少し窪んだ形状の凹み部が表れることが防止されるため、ステアリングパッドの外観品質が向上し、高級感のある良好な美感が安定して得られる。