(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のエンジンでは、過給時にEGR弁を開いてEGRガスを燃焼室へ還流させるときに、新気バイパス通路から吸気通路への新気の導入を遮断するために、バイパス弁を全閉状態にすることになる。このとき、バイパス弁より上流の新気バイパス通路にかかる大気圧とバイパス弁より下流の新気バイパス通路にかかる過給圧との圧力差が大きくなり、バイパス弁にかかる負荷が増大する。これにより、
図9に示すように、ネジ機構93のバックラッシ98の分だけ弁軸94と共に弁体91が開方向へ動き、弁体91と弁座92との間に隙間が生じ、バイパス弁より上流の新気バイパス通路へ吸気が漏れるおそれがある。この漏れた吸気にはEGRガスが含まれることから、バイパス弁より上流の新気バイパス通路にEGRガスが侵入すると、その部分で酸性の凝縮水が発生し腐食が生じるおそれがある。また、バイパス弁には、過給圧による負荷やエンジンの振動が作用することから、弁体91と弁座92との間で摩耗や異音が生じるおそれがある。一方、過給圧による吸気の漏れを防止するためにリターンスプリング100の付勢力を大きくすることが考えられる。しかし、その場合は、リターンスプリング100の付勢力に抗して弁体91を開弁させるためにアクチュエータを高出力化する必要があり、そのためにアクチュエータを大型化する必要がある。しかし、そのような構成では、バイパス弁が大型化したり、コストアップしたりすることになる。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、アクチュエータに要求される推力を増大させることなく全閉時の
吸気の漏れを防止し、併せて耐振動の信頼性を向上させることを可能とした
新気導入弁を備えた新気導入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
過給機と排気還流装置を備えたエンジンに設けられる新気導入装置であって、エンジンは、吸気通路と、排気通路とを含み、吸気通路には、同通路を流れる吸気量を調節するための吸気量調節弁が設けられ、過給機は、吸気量調節弁より上流の吸気通路に配置されたコンプレッサと、排気通路に配置されたタービンと、コンプレッサとタービンを一体回転可能に連結する回転軸とを含み、排気還流装置は、エンジンの燃焼室から排気通路へ排出される排気の一部を排気還流ガスとして吸気通路へ流して燃焼室へ還流させる排気還流通路と、排気還流通路における排気還流ガスの流れを調節するための排気還流弁とを含み、排気還流通路は、その入口がタービンより下流の排気通路に接続され、その出口がコンプレッサより上流の吸気通路に接続され、吸気量調節弁より下流の吸気通路へ新気を導入するための新気導入通路と、新気導入通路を流れる新気量を調節するための新気導入弁とを備えた新気導入装置において、新気導入弁が、ハウジングと、ハウジングに設けられた流路と、流路に設けられた弁座と、弁座に対して着座可能に設けられた弁体と、弁体を弁座の座面に対して直角方向へ往復動させるための弁軸と、弁軸を軸線方向へ往復動させるためのネジ機構と、ネジ機構は、弁軸の軸線方向に所定のバックラッシを有することと、ネジ機構を駆動させるためにハウジングに設けられたアクチュエータと、ハウジングと弁体との間に設けられ、弁体を弁座へ着座させる閉方向へ付勢するためのリターンスプリングとを備え、弁座に対する弁体の開度を調節することにより流路を流れる
新気を制御する
ように構成され、弁体は、弁軸に対し所定の範囲で軸線方向へ往復動可能に設けられることと、弁体と弁軸との間に設けられ、弁体と弁軸とを互いに離間させる方向へ付勢するリリーフスプリングと、リリーフスプリングの付勢力が、弁体を弁座から離間させる開方向へ移動させるときのアクチュエータによる推力よりも小さく、かつ、弁体が弁座に着座した状態において弁体に対し開方向へ
過給機による最大過給圧が作用しても弁体を着座状態に保持できる強さに設定されることと
、弁体の移動方向が、新気が流出する方向と平行に設定されることと、弁座の座面が、新気が流出する方向における弁座の上流側に位置すると共に、弁体と弁軸が、弁座の上流側に配置されることとを備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、開弁時には、弁体が弁軸においてリターンスプリングの付勢力により閉方向へ付勢された状態で保持される。一方、閉弁時には、ネジ機構がアクチュエータにより駆動されて弁軸が軸線方向へ移動することにより、弁体が弁座に着座し全閉状態となる。このとき、リターンスプリングの付勢力が弁体に作用することで、弁体が弁座に押さえ付けられる。更に、アクチュエータが動作すると、バックラッシ分の空転を経てネジ機構が逆側で螺合し、弁体がリリーフスプリングの付勢力に抗して更に弁座に押さえ付けられる。従って、この状態で弁体に対し開方向へ
最大過給圧が作用しても弁体が全閉状態のまま保持される。また、リリーフスプリングの付勢力が弁体を開方向へ移動させるアクチュエータの推力より小さいので、アクチュエータに要求される推力が比較的小さくなる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、リリーフスプリングの付勢力は、リリーフスプリングの付勢力とリターンスプリングの付勢力との和が、弁体の質量
と弁軸の質量との合計の質量と振動加速度との積に、開方向における
最大過給圧と弁体の受圧面積との積を加えた値より大きい関係を満たすことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、全閉時には、弁体にリターンスプリングの付勢力とリリーフスプリングの付勢力との両方が作用し、弁体が弁座に押さえ付けられる。このとき弁体に作用する付勢力が、弁体の質量
と弁軸の質量との合計の質量と振動加速度との積に、開方向における
最大過給圧と弁体の受圧面積との積を加えた値より大きい。従って、弁体に対し開方向へ
最大過給圧が作用しても弁体が全閉状態のまま保持される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、リターンスプリングの付勢力は、弁体に要求される耐振動加速度と弁体の質量との積より大きいことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、リターンスプリングの付勢力が、弁体に要求される耐振動加速度と弁体の質量との積より大きいので、弁体に振動が加わっても、リターンスプリングの付勢力により弁体の振動が抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至3の何れかに記載の発明によれば、
新気導入弁のアクチュエータに要求される推力を増大させることなく全閉時の
過給圧による吸気の漏れを防止することができ、併せて耐振動の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明におけ
る新気導入装置を具体化した
一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に、この実施形態における過給機、排気還流装置(EGR装置)及び新気導入装置を備えたエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6の直近であってエアクリーナ6より下流の吸気通路3には、吸気通路3を流れる吸気量を計測するためのエアフローメータ54が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0020】
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0021】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0022】
また、過給機7に隣接して吸気通路3には、コンプレッサ8を迂回する吸気バイパス通路37が設けられる。この吸気バイパス通路37には、吸気バイパス弁38が設けられる。この吸気バイパス弁38を必要に応じて開くことにより、コンプレッサ8より下流の吸気通路3における過給圧を吸気バイパス通路37を介してコンプレッサ8より上流の吸気通路3へ逃し、過給圧を低減させるようになっている。
【0023】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、コンプレッサ8の下流側であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。この電子スロットル装置14は、本発明の吸気量調節弁の一例に相当し、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのDCモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。この電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル(図示略)の操作に応じてスロットル弁21がDCモータ22により開閉駆動され、開度が調節されるように構成される。タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
【0024】
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するためのインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。点火プラグ29とイグナイタ30により点火装置が構成される。
【0025】
この実施形態において、低圧ループ式のEGR装置は、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17における排気流量(EGR流量)を調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、触媒コンバータ15より下流の排気通路5と、コンプレッサ8より上流の吸気通路3との間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aが、コンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。また、EGR通路17の入口17bは、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続される。
【0026】
EGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
【0027】
図1に示すように、EGR弁18は、ポペット弁として、かつ、電動弁として構成される。すなわち、EGR弁18は、モータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。モータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、ステップモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークだけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。
【0028】
この実施形態では、EGR装置に対応して新気導入装置が設けられる。
図1に示すように、新気導入装置は、大気側から電子スロットル装置14(スロットル弁21)より下流の吸気通路3へ新気を導入するための新気導入通路41と、新気導入通路41を流れる新気量を調節するための電動式の新気導入弁42とを含む。新気導入通路41は、その入口41aがエアフローメータ54より下流であってEGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3に接続され、その出口41bが電子スロットル装置14(スロットル弁21)より下流の吸気通路3に接続される。新気導入弁42の開度が調節されることにより、スロットル弁21より下流の吸気通路3へ新気導入通路41から流れる新気量が調節される。
【0029】
ここで、エンジン1の減速運転時にEGR弁18を全閉にしても、EGR通路17の出口17aから電子スロットル装置14までの吸気通路3の経路が比較的長いことから、そこにEGRガスが残留することがある。この残留EGRガスが燃焼室16に流れ込むと、エンジン1が失火を起こすおそれがある。そこで、この実施形態では、エンジン1の減速運転時に、スロットル弁21より下流の吸気通路3へ流れるEGRガスを希釈して燃焼室16のEGR率を減衰させるために、新気導入弁42を開いて、スロットル弁21より下流の吸気通路3へ新気を導入するようになっている。一方、この実施形態では、過給機7が動作する過給時には、新気導入通路41から吸気通路3への新気の導入を遮断するために、新気導入弁42を全閉にするようになっている。
【0030】
次に、新気導入弁42の構成について説明する。
図2に、全閉状態の新気導入弁42を断面図により示す。この実施形態で、新気導入弁42は、ポペット弁として、また、電動弁として構成され、全閉状態と全開状態との間で開度が連続的に可変に構成される。新気導入弁42は、ハウジング61と、そのハウジング61に設けられた流路62と、流路62に設けられた弁座63と、弁座63に対して着座可能に設けられた弁体64と、弁体64を弁座63の座面に対して直角方向へ往復動させるための弁軸65と、弁軸65をその軸線方向へ往復動させるためのネジ機構66と、ネジ機構66を駆動させるためにハウジング61に設けられたステップモータ67と、ハウジング61と弁体64との間に設けられ、弁体64を弁座63へ着座させる閉方向へ付勢するためのコイルスプリングからなるリターンスプリング68とを備える。ステップモータ67は、本発明のアクチュエータの一例に相当する。
【0031】
後述するように、ネジ機構66は、互いに螺合する雄ネジ85と雌ネジ84により構成され(
図3〜
図5参照)、弁軸65の軸線方向に所定のバックラッシ87を有する。新気導入弁42は、弁座63に対する弁体64の開度を調節することにより流路62を流れる新気を制御するようになっている。また、弁体64は、弁軸65に対して所定の範囲で軸線方向へ往復動可能に設けられる。弁体64と弁軸65との間には、弁体64と弁軸65とを互いに離間させる方向へ付勢するコイルスプリングからなるリリーフスプリング69が設けられる。このリリーフスプリング69の付勢力は、弁体64を弁座63から離間させる開方向へ移動させるときのステップモータ67による推力よりも小さく、かつ、弁体64が弁座63に着座した状態(全閉状態)において弁体64に対し開方向へ吸気の最大圧力(最大過給圧)が作用しても弁体64を全閉状態に保持できる強さに設定される。
【0032】
ここで、リリーフスプリング69の付勢力Frfは、リリーフスプリング69の付勢力Frfとリターンスプリング68の付勢力Frtとの和が、弁体64の質量と弁軸65の質量との合計の質量mvと振動加速度avとの積に、開方向における最大過給圧PSmaxと弁体64の受圧面積Spとの積を加えた値より大きい関係を満たすように設定される。すなわち、次式(1)に示す関係を満たす。
Frf+Frt>av*mv+PSmax*Sp ・・・(1)
開方向における最大過給圧PSmaxは、弁体64の前後差圧であり、吸気通路3から新気導入通路41の出口41bに作用する最大過給圧と新気導入通路41に作用する大気圧との差圧を意味する。また、弁体64の受圧面積Spは、全閉時に弁座63の弁孔63aに面する弁体64の表面積を意味する。また、リターンスプリング68は、弁体64に生じる振動を吸収する耐振動機能を有し、リターンスプリング68の付勢力Frtは、弁体64に要求される振動加速度avと弁体64の質量
と弁軸65の質量との合計の質量mvとの積より大きくなるように設定される。すなわち、次式(2)に示す関係を満たす。
Frt>av*mv ・・・(2)
また、弁体64の移動方向は、弁座63の弁孔63aから新気が流出する方向(
図2の下方向)と平行に設定されている。すなわち、弁孔63aから新気が流出する方向が、弁孔63aの軸線方向L1であるのに対し、弁体64の移動方向が弁孔63aの軸線方向と平行をなしている。
【0033】
更に詳細に説明すると、
図2に示すように、ステップモータ67は、樹脂製のハウジング61に収容されたステータ71と、ステータ71の内側で回転するロータ72とを含む。ステータ71は、樹脂製のボビン73を含む。ボビン73には、複数のヨーク74がインサート成形により一体に成形される。ボビン73には、その下端部に形成されたフランジ部73aと、フランジ部73aの下方へ突出する円筒状のヘッド部73bとを含む。ハウジング61は、その上部にコネクタ部61aを含み、コネクタ部61aに各端子75が配置される。ボビン73の上部には、ロータ72の上端部を受け入れ回転可能に支持す
る金属製の軸受プレート76が設けられる。ボビン73の外周部には、コイル77が設けられる。コイル77の端末部は各端子75に接続される。
【0034】
ステータ71は、ハウジング61により覆われる。ハウジング61の下端開口部は、ボビン73のフランジ部73aにより封鎖される。フランジ部73aの外周とハウジング61との間にはシール用のOリング78が設けられる。ハウジング61の下端部外周には、取付フランジ部61bが形成され、固定用のボルト(図示略)が挿通されるようになっている。
【0035】
ボビン73のヘッド部73b内には、樹脂製のリテーナ79が圧入される。リテーナ79は、二重円筒状をなし、ヘッド部73b内に圧入される外筒部79aと、その内側に位置する内筒部79bと、外筒部79aと内筒部79bとを連結する連結部79cとを含む。外筒部79aの上端部内側には、軸受80を介して、ロータ72のために設けられた金属製の軸受スリーブ81が回転可能に支持される。内筒部79bの内側は、非円形のガイド孔79dとなっている。このガイド孔79dには、金属製の弁軸65のスライド部65aが軸回り方向に回り止めした状態で軸線方向へスライド可能に挿入される。
【0036】
ロータ72は、樹脂製のロータ本体82と、ロータ本体82の外周部に設けられたマグネット83とを含む。中空円筒状に形成されたロータ本体82の上端部には、支持部82aが突設される。ロータ本体82の中空部内には、雌ネジ84が形成される。ロータ本体82の下部には、軸受スリーブ81が一部インサート成形されて固着される。軸受スリーブ81の下半部は、リテーナ79の外筒部79aの内側にて軸受80を介して回転可能に支持される。
【0037】
このように、ロータ72は、リテーナ79がヘッド部73bの内側に圧入されることにより、ステータ71に組み付けられる。併せて、ロータ本体82の支持部82aが、ボビン73の軸受プレート76の軸孔内に回転可能に支持される。マグネット83は、ヨーク74の内側面にて所定の隙間を隔てて回転可能に配置される。
【0038】
ロータ本体82に設けられた雌ネジ84には、弁軸65上に設けられた雄ネジ85が螺合される。また、弁軸65のスライド部65aは、リテーナ79の内筒部79b内にて軸回り方向に回り止めされた状態で、軸線方向へスライド可能に挿入される。従って、ロータ72の回転(正転及び逆転)により、雌ネジ84と雄ネジ85の螺合を介して、弁軸65が軸線方向、すなわち
図2の上下方向へ往復動することになる。
【0039】
弁軸65の先端部、すなわち
図2の下端部には、筒状のスリーブ86と弁体64が設けられる。スリーブ86はその内部に内フランジ部86aを含む。弁軸65の下端部軸上にはフランジ部65bが設けられる。スリーブ86は、その内フランジ部86aが弁軸65のフランジ部65bに係合するように組み付けられる。弁体64は、中空状の略弾丸形状をなし、スリーブ86の内側にて軸線方向へ往復動可能に支持される。弁軸65の先端(
図2の下端)には、他の部分より小径で軸線方向へ伸びるピン部65cが形成される。弁体64の中空部64aには、ピン部65cと同軸に配置され、ピン部65cが挿入される穴部64bが形成される。弁体64は、このピン部65cと穴部64bとが係合する範囲で、弁軸65に対して軸線方向へ往復動可能に設けられる。リテーナ79の内筒部79bには、リターンスプリング68が外嵌される。このリターンスプリング68は、リテーナ79の連結部79cとスリーブ86の内フランジ部86aとの間に介在され、弁体64と共にスリーブ86を下方へ、すなわち弁体64が弁座63に着座する閉方向へ付勢する。このようなリターンスプリング68の配置構成により、リターンスプリング68に、弁体64に生じる振動を吸収する耐振動機能が与えられている。フランジ部65bより先端(
図2の下端)側の弁軸65上にはリリーフスプリング69が外嵌される。このリリー
フスプリング69は、弁軸65のフランジ部65bと弁体64の中空部64aの底壁との間に介在され、弁体64を下方へ、すなわち弁体64と弁軸65とを互いに離間させる方向へ付勢する。また、スリーブ86の内側であって弁体64の上端には、フランジ部65bに係合可能なストッパ70が設けられる。このストッパ70は、弁体64の全閉時に弁軸65が下方へ移動するとき、フランジ部65bがストッパ70に係合することで弁軸65のそれ以上の移動を規制するようになっている。
【0040】
次に、新気導入弁42の動作について説明する。
図3に、新気導入弁42の主要部の全開状態を概略図により示す。
図4に、新気導入弁42の主要部の閉弁途中を概略図により示す。
図5に、新気導入弁42の主要部の全閉状態を概略図により示す。
図3に示すように、新気導入弁42の全開状態では、リターンスプリング68は最大限に圧縮された状態で弁体64を下方(閉方向)へ付勢し、リリーフスプリング69は最大限に伸長した状態で弁体64を弁軸65から最大限に離間させる。この状態では、弁体64がリターンスプリング68の付勢力により下方(閉方向)へ付勢されるので、リターンスプリング68が耐振動機能を発揮し、弁体64の振動を抑えることができる。すなわち、新気導入弁42の開弁時の耐振動性を確保することができる。この状態からステップモータ67に閉弁信号が入力されることにより、ロータ72が回転する。これにより、雌ネジ84と雄ネジ85との螺合を介して、リターンスプリング68の付勢力も加担してスリーブ86と共に弁軸65が下方へ移動し、弁体64が弁座63へ向けて閉弁し始める。このとき、雄ネジ85のネジ山下面が雌ネジ84のネジ山上面に係合する関係でロータ72の回転力が弁軸65へ伝えられる。
【0041】
その後、
図4に示すように、弁体64が弁座63に着座することにより全閉状態となる。このとき、リリーフスプリング69が作動し、その付勢力により弁体64が弁座63に押し付けられる。従って、この状態では、弁体64に吸気通路3の側から過給圧や振動が作用しても弁体64が開方向へ動くことはない。すなわち、新気導入弁42の全閉時には、吸気の漏れを防止することができ、耐振動性を確保することができる。
【0042】
その後、ロータ72が更に回転することにより、バックラッシ87の分だけ雌ネジ84が回転するときに、雌ネジ84と雄ネジ85の螺合が一旦解除されるが、間もなく、雌ネジ84のネジ山下面が雄ネジ85のネジ山上面に係合して雌ネジ84と雄ネジ85が螺合する。この間、ステップモータ67に作用する荷重はリターンスプリング68の付勢力のみとなる。そして、ロータ72が更に回転することにより、リリーフスプリング69が作動し、その付勢力により弁体64が弁座63に押し付けられ、弁軸65が下方へ移動する。また、リリーフスプリング69の付勢力がステップモータ67に荷重として作用する。
図5に示す状態では、リリーフスプリング69の付勢力Frfにより、雌ネジ84と雄ネジ85とのバックラッシ87を相殺して弁体64を弁座63に押し付けて全閉状態に保持することができる。このとき、ロータ72へはリリーフスプリング69の付勢力Frfのみが荷重として作用することになる。
【0043】
一方、
図5に示すように弁体64が弁座63に着座した全閉状態において、ステップモータ67に開弁信号が入力されることにより、ロータ72が上記と逆方向へ回転する。このとき、リリーフスプリング69の付勢力も加担して弁軸65が上方へ移動し、やがて
図4に示すように、リリーフスプリング69が伸び切った状態となる。その後、バックラッシ87の分だけ雌ネジ84が逆方向へ回転し、雌ネジ84と雄ネジ85の螺合が一旦解除されるが、間もなく、雌ネジ84のネジ山上面が雄ネジ85のネジ山下面に係合して雌ネジ84と雄ネジ85が螺合する。この間、ステップモータ67に作用する荷重はリターンスプリング68の付勢力のみとなる。そして、ロータ72が更に逆方向へ回転すると、リターンスプリング68の付勢力に抗して弁軸65が上方へ移動し、
図3に示すように弁体64が弁座63から離れて開弁する。そして、弁体64が弁座63から最大限に離れることにより全開状態となる。
【0044】
図6に、ステップモータ67のステップ数(step)に対する弁体64の弁座63への押さえ荷重の関係をグラフにより示す。
図7に、ステップモータ67のステップ数(step)に対するステップモータ67に対する負荷の関係をグラフにより示す。
図6及び
図7とも、太線は本実施形態の測定結果を示し、破線は従来例の測定結果を示す。
図6に太線で示すように、本実施形態では、開弁側から閉弁側へ弁体64を移動させるとき、ステップ数「100〜7」の間では、弁体64の弁座63への押さえ荷重は「0」のままとなる。そして、弁体64が弁座63に当たり始めるステップ数「7」では、振動分要求荷重だけ弁体64の弁座63への押さえ荷重が増大する。これは、リターンスプリング68による付勢力Frtに相当する。そして、ステップ数「7〜0」の間では、ネジ機構66のバックラッシ87の分だけロータ72が空転することから、弁体64の弁座63への押さえ荷重に変化はない。やがて、ネジ機構66が再び螺合しストッパ70に当たるまで、ステップ数「0〜−5」の間では、過給圧分要求荷重だけ弁体64の弁座63への押さえ荷重が増大する。これは、リリーフスプリング69による付勢力Frfに相当する。これに対し、
図6に破線で示すように、従来例では、リリーフスプリングを持たないことから、弁体が弁座に当たり始めるステップ数「7」では、振動分要求荷重及び過給圧分要求荷重だけ弁体の弁座への押さえ荷重が一気に急増する。この急増分だけ、リターンスプリングによる付勢力を確保する必要がある。
【0045】
図7に太線で示すように、本実施形態では、開弁側から閉弁側へ弁体64を移動させるとき、ステップ数「100〜7」の間では、ステップモータ67の負荷が徐々に減少する。この減少分はリターンスプリング68による付勢力Frt、すなわち過給圧分要求荷重に相当する。そして、弁体64が弁座63に当たり始め、バックラッシ87の分だけロータ72が空転するステップ数「7〜0」の間では、ステップモータ67の負荷はゼロになる。そして、ネジ機構66が再び螺合すると、ステップ数「0〜−5」の間で、過給圧分要求荷重だけステップモータ67の負荷が増大する。これは、リリーフスプリング69による付勢力Frfに相当する。つまり、全閉時には、バックラッシ87の内の荷重はリリーフスプリング69の付勢力Frfによって決まる。そのため、リターンスプリング68の付勢力Frtを強化することなく、リリーフスプリング69を加えることで、過給圧に打ち勝って弁体64を全閉状態に押さえられる荷重を得ることができる。これに対し、
図7に破線で示すように、従来例では、リリーフスプリングを持たないことから、ステップ数「100〜7」の間では、ステップモータの負荷が徐々に減少するが、弁体が弁座に当たり始めるステップ数「7」で、振動分要求荷重及び過給圧分要求荷重だけステップモータに負荷がかかることになる。従って、弁体が弁座に着座し始めるまでの間で、ステップモータの負荷がモータ推力限界を越える状態があり得る。すなわち、単に過給圧に打ち勝つためにリターンスプリングの付勢力を強化しただけでは、弁体を閉方向へ移動させるためにステップモータの推力を限界推力以上に設定しなければならない。
【0046】
以上説明したこの実施形態の新気導入弁42によれば、弁体64がリターンスプリング68の付勢力Frtにより閉方向へ付勢されるので、開弁時には、弁体64が弁軸65において閉方向へ付勢された状態で保持される。これにより、リターンスプリング68が、弁体64に対して耐振動機能を発揮する。このため、エンジン1の運転時に新気導入弁42としての耐振動の信頼性を向上させることができる。一方、閉弁時には、ネジ機構66がステップモータ67により駆動されて弁軸65が軸線方向へ移動することにより、弁体64が弁座63に着座し、全閉状態となる。このとき、リターンスプリング68の付勢力Frtが弁体64に作用することで、弁体64が弁座63に押さえ付けられる。更に、ステップモータ67が動作すると、バックラッシ87の分の空転を経てネジ機構66が逆側で螺合し、弁体64がリリーフスプリング69の付勢力Frfに抗して弁座63に押さえ付けられる。従って、この状態で弁体64に対し開方向へ最大過給圧が作用しても弁体64が全閉状態のまま保持される。また、リリーフスプリング69の付勢力Frfが弁体64を開方向へ移動させるステップモータ67の推力より小さいので、ステップモータ67に要求される推力が比較的小さくなる。このため、新気導入弁42のステップモータ67に要求される推力を増大させることなく全閉時の過給圧による吸気漏れを防止することができる。
【0047】
この結果、新気導入弁42より上流の新気導入通路41へEGRガスの侵入を防止することができ、その部分での酸性の凝縮水の発生を防止し、腐食の発生を防止することができる。また、新気導入弁42で、全閉時には、過給圧により弁体64に負荷がかかり、エンジン1の振動が作用するが、リターンスプリング68とリリーフスプリング69により弁体64が弁座63に押さえ付けられる。このため、弁体64と弁座63との間で摩耗や異音の発生を抑えることができる。一方、新気導入弁42では、全閉時に過給圧による吸気漏れを防止するためにリターンスプリング68の付勢力Frtを大きくする必要がないので、新気導入弁42をリターンスプリング68の付勢力Frtに抗して開弁するためにステップモータ67の推力を必要以上に増大させる必要がない。このため、ステップモータ67を大型化する必要がなく、新気導入装置のコスト低減を図ることができる。
【0048】
この実施形態によれば、全閉時には、弁体64にリターンスプリング68の付勢力Frtとリリーフスプリング69の付勢力Frfとの両方が作用し、弁体64が弁座63に押さえ付けられる。このとき弁体64に作用する付勢力、すなわち二つの付勢力Frt,Frfの和が、弁体64の質量
と弁軸65の質量との合計の質量mv
と振動加速度avとの積に、開方向における最大過給圧PSmaxと弁体64の受圧面積Spとの積を加えた値より大きい。従って、弁体64に対し開方向へ最大過給圧PSmaxが作用しても弁体64が全閉状態のまま保持される。このため、新気導入弁42のステップモータ67に要求される推力を増大させることなく全閉時の過給圧による吸気漏れを防止することができる。
【0049】
この実施形態では、リターンスプリング68の付勢力Frtが、弁体64に要求される
振動加速度avと弁体64の質量mvとの積より大きいので、弁体64に振動が加わっても、リターンスプリング68の付勢力Frtの作用により弁体64の振動が抑えられる。すなわち、新気導入弁42につき、全閉時に過給圧による吸気漏れを防止しながら、合わせて弁体64の耐振動機能を確保することができる。
【0050】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0051】
例えば、前記実施形態では、アクチュエータの一例としてステップモータ67を使用したが、DCモータを使用することもできる。