特許第6231412号(P6231412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231412
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】原料加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/33 20060101AFI20171106BHJP
   F27B 7/08 20060101ALI20171106BHJP
   F27B 7/10 20060101ALI20171106BHJP
   F27B 7/18 20060101ALI20171106BHJP
   F27B 7/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F27B7/33
   F27B7/08
   F27B7/10
   F27B7/18
   F27B7/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-44704(P2014-44704)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169375(P2015-169375A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390034212
【氏名又は名称】株式会社チサキ
(73)【特許権者】
【識別番号】391009969
【氏名又は名称】國井 大藏
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】地崎 達
(72)【発明者】
【氏名】國井 大藏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】安間 淳司
【審査官】 瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−272166(JP,A)
【文献】 特開2005−201511(JP,A)
【文献】 特開2003−287369(JP,A)
【文献】 特開2010−117075(JP,A)
【文献】 特開2012−007783(JP,A)
【文献】 特開昭50−109878(JP,A)
【文献】 米国特許第05997289(US,A)
【文献】 特開平05−026577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/33
F27B 7/02
F27B 7/08
F27B 7/10
F27B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延びる軸線を中心として筒状に形成され該軸線を回転中心として選択的に正逆回転する筒状体が軸線方向一端に形成された開口部に、被加熱対象物たる原料の筒状体内への投入のための原料供給管が位置して設けられ、筒状体の軸線方向他端に、加熱後の原料を製品として炉外へ排出する排出部が設けられており、上記筒状体の原料が筒状体外周面からの加熱により、もしくは筒状体内の原料の自燃あるいは高温気体の流通により加熱される原料加熱装置において、
排出部は、筒状体の他端寄り域で該筒状体の内部に、もしくは筒状体の他端から軸線方向外方に延長された延長筒部の内部に内筒状体が配されることで、該内筒状体と筒状体もしくは延長筒部との間に環状空間を形成し、該環状空間内で上記筒状体もしくは延長筒部と内筒状体とで螺旋板部材を保持し、軸線方向でみたときに、上記環状空間が螺旋板部材により隙間なく占められており、
上記排出部が、半径方向で、内筒状体の範囲での中心排出部と、上記環状空間の範囲での周囲排出部とで形成され、
筒状体の正回転時に、上記螺旋板部材が上記環状空間への原料の進入あるいは周囲排出部への排出方向移動を阻止し、原料が筒状体と内筒状体との半径差の段差を乗り越えて内筒状体の内部を排出方向に移動して中心排出部から排出され、筒状体の逆回転時に、螺旋板部材が上記環状空間で原料の排出方向移動を許容し、原料が周囲排出部から排出される、
ことを特徴とする原料加熱装置。
【請求項2】
筒状体は、軸線方向で該筒状体の一端と排出部との間に、原料を撹拌しながら他端へ向け搬送する搬送手段が設けられていることとする請求項1に記載の原料加熱装置。
【請求項3】
搬送手段は、筒状体に固定取付され該筒状体の内部を区分するように軸線方向に延びる仕切板と、該仕切板の面から起立して上記軸線方向に対して傾角をもつように設けられた複数のガイド板を有して形成されていることとする請求項2に記載の原料加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒あるいは塊状の原料を加熱処理する装置としては、横方向に軸線をもつ筒状体内に原料を該筒状体の一端から投入し、筒状体を上記軸線を中心に回転することで原料を攪拌しながら加熱し、加熱処理後に筒状体の他端から排出する横型原料加熱処理装置が広く用いられている。この装置は、筒状体が一端から他端に向け若干下方に傾いて配設されているか、あるいは筒状体内に搬送手段を有しているかにより、筒状体の原料は加熱を受けながら一端から他端へ向け搬送される。
【0003】
かかる横型加熱処理装置は、加熱処理能力を高めようとすると横方向に大型化してそれぞれ設置床面積を要する傾向があるので、横方向で大型化することなく、筒状体内での原料の加熱時間を長くするための方策を備えた装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、内部に搬送手段が設けられた筒状体の原料排出側となる軸線方向他端に、筒状体の内径よりも小さい径の開口が形成された環状端壁を設け、該開口を加熱後の原料の排出部とすることで、環状端壁に堰の機能をもたせて、筒状体の底部に原料を留めて長時間攪拌そして加熱するようにしており、十分に加熱された後、攪拌回転中に上記環状端壁を乗り越えた原料を順次排出することとしている。かくして、堰として機能する環状端壁を設けることで、筒状体が軸線方向で長く形成しなくとも、筒状体に長時間滞留して十分に加熱されるとともに、堰機能により筒状体内での原料の充填量を大きくでき、処理能力が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−112704
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、筒状体に環状端壁を設けて排出部に堰の機能をもたせた横型原料加熱装置は、筒状体が一方向のみに回転されていて、通常、同一種の原料を連続して筒状体内へ供給して加熱する、連続した通常運転のもとで操業される。この通常運転のもとでは、堰機能をもつ特許文献1装置は、既述したように、装置を大型化することなく、原料の加熱時間を長くとれるともに筒状体での充填量を大きくでき、処理能力が向上するという利点を得る。
【0007】
一方、処理されるべき原料の種類を変えるとき、あるいは装置の保守のときには、筒状体の原料が筒状体内に残存することなく、すべて排出してから、装置の運転を停止したいという要請がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1による装置では、排出部には環状端壁が設けられていて、これが堰の機能をもっていて、筒状体底部にある原料の排出を阻止しているので、装置停止の際に筒状体内の原料をすべて排出したいという上述の要請には応えることができない。すなわち、特許文献1の装置では、通常運転のときの利点が装置停止の際には、問題点となってしまう。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、装置を大型化することなく高い処理能力を維持したまま、装置停止の際、原料を筒状体に残すことなく、容易に完全排出のできる原料加熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る原料加熱装置は、横方向に延びる軸線を中心として筒状に形成され該軸線を回転中心として選択的に正逆回転する筒状体が軸線方向一端に形成された開口部に、被加熱対象物たる原料の筒状体内への投入のための原料供給管が位置して設けられ、筒状体の軸線方向他端に、加熱後の原料を製品として炉外へ排出する排出部が設けられており、上記筒状体の原料が筒状体外周面からの加熱により、もしくは筒状体内の原料の自燃あるいは高温気体の流通により加熱される。
【0011】
本発明では、かかる原料加熱装置において、排出部は、筒状体の他端寄り域で該筒状体の内部に、もしくは筒状体の他端から軸線方向外方に延長された延長筒部の内部に内筒状体が配されることで、該内筒状体と筒状体もしくは延長筒部との間に環状空間を形成し、該環状空間内で上記筒状体もしくは延長筒部と内筒状体とで螺旋板部材を保持し、軸線方向でみたときに、上記環状空間が螺旋板部材により隙間なく占められており、
上記排出部が、半径方向で、内筒状体の範囲での中心排出部と、上記環状空間の範囲での周囲排出部とで形成され、
筒状体の正回転時に、上記螺旋板が上記環状空間への原料の進入あるいは周囲排出部への排出方向移動を阻止し、原料が筒状体と内筒状体との半径差の段差を乗り越えて内筒状体の内部を排出方向に移動して中心排出部から排出され、筒状体の逆回転時に、螺旋板が上記環状空間で原料の排出方向移動を許容し、原料が周囲排出部から排出される、
ことを特徴としている。
【0012】
このような構成の本発明によると、通常運転時と運転停止時では、原料加熱装置は、次のように操作され作動する。
【0013】
<通常運転時>
通常運転時には、筒状体は正回転駆動される。原料供給管から筒状体内に投入された原料は、筒状体の外周面からの間接加熱、もしくは原料が可燃物を含有している場合には、自燃あるいは高温気体の流通による直接加熱により加熱されながら、筒状体の他端へ向け搬送される。加熱処理された原料は、他端に達すると、筒状体の底部に位置する下層分が環状空間内の螺旋板部材により周囲排出部へ向けた他端への移動が阻止されて、原料の上層分が内筒状体の範囲内に位置して該内筒状体内に進入して他端へ向け移動し中心排出部から排出される。
【0014】
<装置停止時>
装置を停止したいときには、停止直前に筒状体を逆回転駆動する。筒状体の逆回転により、螺旋板部材も筒状体とともに逆回転するので、筒状体の底部に位置する原料の下層分、すなわち、環状空間に位置する原料は、逆回転する該螺旋板部材により環状空間内を他端に向け搬送され周囲排出部から排出される。この排出は、螺旋板部材により積極的に行われるので短時間で完全に行われる。
【0015】
かかる本発明によれば、上記螺旋板部材は、最少で2旋回分だけ設けれられていれば、十分機能するし、また、そのピッチを小さくしても機能は確保されるので、筒状体、すなわち、装置の軸方向での大型化とはならない。
【0016】
本発明において、筒状体は、軸線方向で該筒状体の一端と排出部との間に、原料を撹拌しながら他端へ向け搬送する搬送手段が設けられているようにすることができる。かかる搬送手段を設けても、環状空間に設けられた螺旋板部材の機能が阻害されることはないので、搬送手段により原料の筒状体内での搬送速度を抑制し筒状体内での滞留時間をさらに長くすることになり有利である。
【0017】
また、本発明において、搬送手段は、筒状体に固定取付され該筒状体の内部を区分するように軸線方向に延びる仕切板と、該仕切板の面から起立して上記軸線方向に対して傾角をもつように設けられた複数のガイド板を有して形成されているようにすることができる。この場合は、仕切板の一方の板面でのガイド板と他方の板面でのガイド板の傾角の方向を、同じにしたり逆にしたりして、原料を一端から他端に向け一方向で搬送し、あるいは、仕切板の一端側と他端側で仕切板一方の板面側と他方の板面側とで原料を循環流を形成しながら筒状体の滞留時間をさらに長くし、原料供給管からの投入原料の量に相当する分だけ、後続の原料に押されて他端側の排出部から排出することができる。
【発明の効果】
【0018】
排出部は、筒状体の他端寄り域で該筒状体の内部に、もしくは筒状体の他端から軸線方向外方に延長された延長筒部の内部に内筒状体が配されることで、該内筒状体と筒状体もしくは延長筒部との間に環状空間を形成し、該環状空間内で上記筒状体もしくは延長筒部と内筒状体とで螺旋板部材を保持し、軸線方向でみたときに、上記環状空間が螺旋板部材により隙間なく占められていて、上記排出部が、半径方向で、内筒状体の範囲での中心排出部と、上記環状空間の範囲での周囲排出部とで形成されるので、筒状体の正回転時に、上記螺旋板が上記環状空間への原料の進入あるいは周囲排出部への排出方向移動を阻止し、原料が筒状体と内筒状体との半径差の段差を乗り越えて内筒状体の内部を排出方向に移動して中心排出部から排出され、筒状体の逆回転時に、螺旋板が上記環状空間で原料の排出方向移動を許容し、原料が周囲排出部から排出される結果、装置を大型化することなく高い処理能力を維持したまま、装置停止の際、原料を筒状体に残すことなく容易に完全排出ができる、という効果を得る。このことにより、筒状体内に存在する通常運転時の粉粒体の筒状体容積に対する体積割合を大きくすることができ、その滞留時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態装置の軸線を通る面での縦断面で示す概要構成図である。
図2】第一実施形態装置の変形例における主要部を示す縦断面図である。
図3】第二実施形態装置の主要部を示し斜視図である。
図4】第二実施形態装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第一実施形態>
図1に示される第一実施形態の原料加熱装置1は、横方向に延びる軸線Xを中心とする円筒状をなし該軸線Xを回転中心として選択的に正逆回転駆動を受ける筒状体10を有している。図1にて、筒状体10の回転方向を、実線で正回転、破線で逆回転を示している。上記筒状体10は、軸線方向の両端位置に環状フランジ10A,10Bが外周面に取り付けられており、該環状フランジ10A,10Bがローラ等の軸受部材11A,11Bにより回転可能に支持されており、図示しない駆動手段により回転駆動を受けるようになっている。
【0022】
上記筒状体10は、一端(図1にて左端)寄りに端壁12を有し、該端壁12には中心に開口12Aが形成されていて、該開口12Aに、原料を筒状体10内へ投入供給するための原料供給管13が突入配置されている。該原料供給管13は非回転であり、回転する筒状体10の上記開口12Aとの間に隙間を形成していて、該筒状体10の回転を可能としている。また、筒状体10の端壁12に形成された開口12Aと原料供給管13との間の隙間から、原料が自燃によらずに加熱する場合、高温気体を送入することにより、この高温気体により筒状体10内の原料を直接加熱することができる。
【0023】
上記原料供給管13から投入される原料は被加熱対象物であり、主として粉粒状、塊状をなしており、本発明では、例えば、筒状体内で焼成される石灰石等の鉱石や、あるいは、破砕された廃棄物で可燃物を含有しているもの等、種々の原料を被加熱対象物としているが、図1の状態の装置では、鉱石の加熱処理に有利である。
【0024】
上記筒状体10は、他端側(図にて右側)が開口されており、該筒状体10から軸線X方向に延長された延長筒部14が設けられている。該延長筒部14は筒状体10と同径であり、筒状体10に取り付けられる形態あるいは筒状体10と一体的に、すなわち筒状体10の一部をなす形態としてもよい。前者の形態は、既存の装置の筒状体に接続して本発明装置を得る場合に有利であり、後者の形態は、新規に装置を設計する場合に有利である。
【0025】
本実施形態では、筒状体10は金属製等の良伝熱性材料で作られている。該筒状体10の他端側には、筒状体10よりも小径の内筒状体15が螺旋板部材16を介して上記筒状体10の内径面に取り付けられている。すなわち、筒状体10、螺旋板部材16そして内筒状体15は一体に連結されていて一緒に回転する。
【0026】
上記内筒状体15は軸線X方向で両側に開口している。また、螺旋板部材16は、その螺旋巻回が少なくとも周方向で2回以上周回する範囲にわたっていれば十分であり、多数回にわたり周回している必要はない。上記螺旋板部材16は、軸線X方向一端側から見たときに、筒状体10と内筒状体15の間の環状空間17は、半径方向にも周方向にも螺旋板部材16により占められていて、他端側に向けた視界は完全に遮断されている。
【0027】
上記内筒状体15は軸線方向に完全に開口しているので、該内筒状体15の内部を通して原料の排出が可能であり、該内筒状体15内に中心排出部18Aを形成する。これに対して、筒状体10と内筒状体15との間の環状空間17は、螺旋板部材16が存在しているので、通常運転時には筒状体10が正回転しており、その正回転により螺旋板部材16は原料の他端方向への移動、すなわち排出方向への移動が阻止されて、螺旋板部材16は原料に対して堰の機能を有するようになる。一方、運転停止直前に筒状体10が逆回転すると、螺旋板部材16は搬送部材として機能し原料を積極的に排出する。すなわち、この逆回転時には、上記環状空間17は、周囲排出部18Bを形成する。かくして、回転方向により異なる二種の排出部を得ることができ、中心排出部18Aと周囲排出部18Bの両者で排出部18を形成する。
【0028】
上記筒状体10は、非回転の外筒壁体20により周囲が包囲されていて、該筒状体10の一端側で環状フランジ10Aの存在部分と延長筒部14の部分のみが上記外筒壁体20から軸線X方向で突出している。
【0029】
上記筒状体10は、一端側の端壁12と上記内筒状体15との間の軸線X方向での範囲は、内部に何も設けられておらず空洞である。
【0030】
ただし、後に他の形態として説明するように、筒状体0内に搬送手段30(図1にて二点鎖線で示されている)を設けてもよい。このような搬送手段を有しない場合、筒状体10は、原料を筒状体10内で他端に向け搬送することができるように、軸線Xを他端に向け若干の下り傾斜をもって設定することが好ましい。
【0031】
上記外筒壁体20は、耐熱材料で作られていて、半径方向では、上記筒状体10の周囲に環状隙間21を形成しており、軸線X方向の両端で上記筒状体10の回転を許容しつつ上記環状隙間を回転シール(図示せず)でシールされている。
【0032】
上記外筒壁体20は、軸線X方向での他端位置に送気管22そして一端側位置に排気管23が接続されており、筒状体10の外周面を加熱するための加熱ガスが上記送気管22から流入し、上記環状隙間21を一端に向け流れ上記排気管23から排出されるようになっている。
【0033】
このように構成される本実施形態の原料加熱装置1は次のように運転される。
【0034】
<通常運転>
原料を連続して加熱処理する通常運転の場合は、外部から送気管22を経て加熱ガスを送入する。加熱ガスは環状隙間21内を周方向に拡散しつつ軸線X方向で一端側へ流れ、筒状体10を加熱した後、排気管23から排出される。
【0035】
筒状体10は、正回転しており、該筒状体10内へ原料供給管13から原料が投入される。該原料は、筒状体10の底部に堆積層を形成し、筒状体10の回転により攪拌されながら、軸線X方向で他端へ向け搬送される。環状隙間21を流れる加熱ガスで加熱された筒状体10を介して加熱された原料は加熱処理済の製品として排出部18へ向け移動する。排出部18では、環状空間17内の螺旋板部材16が正回転しているので、該環状空間17を経て周囲排出部18Bから上記製品としての原料が排出されることを阻止する。すなわち、螺旋板部材16は堰として機能している。したがって、原料は、筒状体10の底部での堆積層の上層分で内筒状体15の範囲にある原料のみが中心排出部18Aから排出される。かくして、堆積層の下層分の原料は排出されず筒状体10内に留まり長時間加熱を受ける。
【0036】
<装置停止時>
装置の保守、原料の種類の変更等の際、装置を一旦停止して筒状体10内を全く空にする必要がある場合には、適宜時期に、環状隙間21への送気管22からの加熱ガスの送入を停止し、これとともに、あるいは、その後に筒状体10を逆回転させる。筒状体10に一体的に取り付けられている螺旋板部材16も逆回転するので、環状空間17への原料の進入を可能とし、該環状空間17へ進入した原料は積極的に他端に向け螺旋板部材16により搬送されて周囲排出部18Bから排出される。かくして、筒状体10の底部における原料は排出されて、筒状体10には原料は残存しなくなる。筒状体10の逆回転による原料の排出はきわめて短時間で行われてしまう。原料の排出が完了したことを確認後、筒状体10の逆回転を停止、装置の運転停止となる。
【0037】
図1の形態は、装置を新規に設計する場合に有利であり、特に、図1に見られるように、環状隙間21を流通する加熱ガスにより外周面から加熱される筒状体10の他端により延長されて外筒壁体20から軸線方向に突出するように延長筒部14を設けることとしているが、既存の装置に対しては、筒状体10の他端側部の内部に内筒状体15そして螺旋板部材16を追加的に設けることが可能である。
【0038】
図2は、原料自体が可燃物を含有していて、筒状体10内で原料が自燃により加熱処理される形式の筒状体10を有する既存装置の該筒状体10内に内筒状体15と螺旋板部材16とを追加して設けた例である。図2の例では、筒状体10は原料の自燃を可能とするように耐熱材料で作られている。上記内筒状体15と螺旋板部材16自体は、図1の場合と全く同じである。したがって、螺旋板部材16が取り付けられている内筒状体15を筒状体10の他端側部の内部に配し、これを筒状体10に対して適宜手段で取り付けるだけで追加工事は終了する。
【0039】
<第二実施形態>
図1に示された第一実施形態装置では、筒状体10には特段の搬送手段が設けられておらず、円筒状の筒状体10の軸線Xを他端に向け若干下方に傾けることで、原料を上記筒状体10の一端側から他端側へ搬送しているが、図3に示される第二実施形態の例では、筒状体10内に搬送手段30を備えている。この搬送手段30は、図1にて、二点鎖線で示された装置に配設される。
【0040】
図3にて、搬送手段30は仕切板31と複数のガイド板32とを有している。仕切板31は、軸線Xに平行な板面を有して筒状体10の内周面に取り付けられて、該筒状体10の軸線方向両端の連通域を除いて、筒状体10内の空間を複数に区分している。ガイド板32は、仕切板31の両面に位置するガイド板32Aとガイド板32Bとから成っていて、両者ともに仕切板31の板面からそれぞれ起立して複数設けられている。ガイド板32Aとガイド板32Bは、図3では、軸線Xに対して傾角を有している。ガイド板32Aの傾角とガイド板32Bの傾角は、図3では一見互いに逆のように見えるが、それぞれのガイド板32A,32Bが取り付けられている仕切板31の板面31A,31Bが筒状体10の回転により同じ方向を向く位置にきたとき、同じ方向に傾斜することとなり、筒状体10が正回転する通常運転時(図3の回転方向)に、仕切板31が筒状体10の底部から原料を掻き上げてから、上方を向くこととなった一方の板面31A上の原料は筒状体10の回転によりガイド板32A上を滑落して実線矢印Pで示される他端方向へ搬送される。次に筒状体10がさらに半回転すると原料は他方の板面31Bで掻き上げられて、上方を向いた板面31B上の原料は、さらなる筒状体10の回転により、ガイド板32B上を滑落する。その際、他方の板面31B側のガイド板32Bの傾角は一方の板面31Aが上方を向いたときの傾角と同じ方向なので、原料はやはり矢印P方向、すなわち他端方向へ搬送される。かくして、原料は、仕切板31で攪拌され、ガイド板32(32A及び32B)により搬送速度を規制されながらゆっくりと搬送され、排出部18から排出される。原料の排出は、図1の場合と同様、中心排出部18Aから行われる。
【0041】
次に、運転停止の際は、筒状体10の底部に残存する原料が上記搬送手段30の他端から搬出されて搬送手段30の他端と排出部18との間の軸線方向範囲に滞留するようになってから、筒状体10の回転を停止し、その後逆回転する。
【0042】
かくして図1の場合と同様の要領で、原料は排出部18の周囲排出部18Bから排出される。図3の形態の場合、原料が搬送手段30の軸線方向範囲内に残存しているうちに筒状体10を逆回転すると原料がガイド板32A,32Bによって軸線方向一端側に向け搬送されてしまうので、排出が困難となる。したがって、上述したように、原料が搬送手段30からすべて搬出されてから、すなわち原料が搬送手段30の他端と排出部18の間に滞留するようになってから筒状体10を逆回転させねばならない。
【0043】
次に、ガイド板32A,32Bが第二実施形態の変形例としての図4のように取り付けられている場合は、仕切板31A,31Bが上方を向くように位置したとき、ガイド板32A,32Bは互いに逆の傾角をもつようになる。したがって、筒状体10が図4のように正回転する通常運転の場合、仕切板31により区分された二つの空間内の原料は、軸線方向で互いに逆方向に搬送される。その結果、原料は、仕切板31の両端側の連通域の空間を経て、仕切板31の両板面31A,31Bに沿って該仕切板31のまわりを循環する。循環する原料は、一端(図4にて左端)で原料供給管から順次供給される原料により、筒状体10内の原料の増量分だけ、他端側で排出部の中心排出部18Aから排出される。
【0044】
装置の運転停止のときに、筒状体10が逆回転されると、上記仕切板31まわりの循環が逆方向となるだけで、原料は循環中に他端側の連通域で排出部18の直前位置を通るので、その際に周囲排出部18Bから排出され、筒状体10内に残留しなくなる。
【符号の説明】
【0045】
1 原料加熱装置
10 筒状体
13 原料供給管
14 延長筒部
15 内筒状体
16 螺旋板部材
17 環状空間
18 排出部
18A 中心排出部
18B 周囲排出部
X 軸線
図1
図2
図3
図4