(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品の搭載面を有する板状の基板底部と、該基板底部上で前記搭載面を囲むように配置された枠状の基板堤部と、を備え、前記搭載面と前記基板堤部の内壁面との連続箇所が該基板堤部の上部側から前記搭載面側に向けて厚みを厚くする曲面を成しており、かつ前記搭載面が椀状に凹んでいることを特徴とする実装用基板。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の電子部品実装用のパッケージの一例を示す分解斜視図である。
図9は、
図8のX−X線断面模式図である。この
図9は、
図8に示したパッケージの構成部材のうち実装用基板だけを抽出して示している。電子部品100を搭載するためのパッケージは、実装用基板101の上面に蓋体103が接合された構成となっている。実装用基板101は、セラミック製の基板底部105とその上面に一体的に形成されたセラミック製の基板堤部106とを備え、その基板堤部106の上面には金属層107が形成されており、この金属層107の上面にさらに蓋体103が接合される構成となる。この場合、蓋体103と金属層107とは、ロウ材を介して、例えば、シーム溶接等の接合方法を用いて接合される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、携帯電話やICカード等の電子装置が普及しているが、これらの電子装置は高性能化に加えて、ますます小型化や薄型化が要求されてきており、そのため、これらの電子装置に組み込まれる電子部品100やこれを搭載した電子部品実装用のパッケージについても一層の小型化や薄型化が求められている。
【0004】
ところが、パッケージの小型化や薄型化を図るためには、これを構成している基板底部105や基板堤部106の面積を小さくするとともに、これらの厚みを薄くする必要があるが、これら基板底部105および基板堤部106の厚みtが薄くなってくると、これら基板底部105および基板堤部106自体の機械的強度の低下とともに、これらが一体化されても撓み易くたわみやすいことから、基板底部105と基板堤部106との境界辺りにクラックや欠けが生じやすいという問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のパッケージの一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示したパッケージを構成する実装用基板のX−X線断面模式図である。
【
図3】(a)は、本実施形態の他の実装用基板を示す外観斜視図であり、(b)は、搭載面が椀状に凹んでいる構造を示す断面模式図である。
【
図4】(a)は、本実施形態の他の実装用基板を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のC−C線断面図である。
【
図5】本実施形態の実装用基板の製造工程を示す模式図である。
【
図6】本実施形態の他の実装用基板の製造工程を示すものであり、
図3に示した構造の実装用基板の製造工程を示す模式図である。
【
図7】本実施形態の他の実装用基板の製造工程を示すものであり、
図4に示した構造の実装用基板の製造工程を示す模式図である。
【
図8】従来のパッケージの一例を示す分解斜視図である。
【
図9】
図8に示した実装用基板のX−X線断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のパッケージの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示した実装用基板のA−A線断面模式図である。
【0012】
本実施形態の実装用基板は、電子部品10を搭載するための搭載面1を有する板状の基板底部3と、基板底部3上で搭載面1を囲むように配置されている枠状の基板堤部5とを備えている。また、搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sが、この基板堤部5の上部5u側から搭載面1側に向けて厚みtを厚くする曲面を成している。ここで、基板底部3と基板堤部5とは、搭載面1を基板堤部5側に延長した境界によって分かれる。なお、この基板堤部5の上面5usには、
図1に示したように、蓋体7などの金属部材を接合するための金属層8が設けられる場合がある。
【0013】
本実施形態の実装用基板では、基板底部3の搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sの厚みtが、
図2に符号t
1、t
2、t
3と示すように、基板堤部5の上部5u側から搭載面1側に向けて厚くなっている。また、この連続箇所Sが、基板堤部5の上部5u側から搭載面1側に向けて厚みtを厚くする曲面を成している。基板底部3の搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sがこのような形状であると、基板底部3の搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとが所定の角度で接し、折れ曲がった形状になっていないことから、基板堤部5の基板底部3との境界辺りにクラックや欠けの起点となる箇所がほとんど無くなっており、これにより基板底部3と基板堤部5との境界辺りの機械的強度が高くなり、クラックや欠けの発生を低減することができる。
【0014】
また、基板底部3と基板堤部5とは一体的に形成されていることが望ましい。基板底部3と基板堤部5とが一体的に形成されていると、これらの接合界面におけるシール性を高めることができる。この場合、搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sが曲面を成している部分は、基板底部3の搭載面1を囲む全周囲に形成されていることが望ましい。これにより基板底部3の搭載面1を囲む全周囲にわたって、機械的強度が高まり、クラックや欠けの発生を低減することができる。
【0015】
また、基板底部3と基板堤部5とは同じ材質であるのがよい。基板底部3と基板堤部5とが同じ材質であると、同時焼成される際に、基板底部3と基板堤部5との焼結速度が近いことから実装用基板の反りや変形を低減することができる。例えば、蓋体7を接合した際の変形を小さくすることが可能となり、変形により発生する残留応力が小さくなり、急
激な温度変化に晒されるような環境においてもクラック等の欠陥の発生を防止することが可能となる。
【0016】
ここで、同じ材質というのは、基板底部3および基板堤部5に含まれる主成分のセラミック成分が同じであるという意味である。この場合、主成分とは、基板底部3および基板堤部5に含まれるセラミック成分の含有量が80質量%以上である場合をいう。
【0017】
なお、基板底部3および基板堤部5は、高い熱伝導性を有し、かつ高強度であるという点でアルミナを主成分とし、これにSiおよびMgなどの添加剤を含有するものが望ましい。
【0018】
図3(a)は、本実施形態の他の実装用基板を示す外観斜視図であり、(b)は、搭載面が椀状に凹んでいる構造を示す断面模式図である。本実施形態の実装用基板を局部的にさらに変化させた構造について説明すると、搭載面1が椀状に凹んでいることが望ましい。上述した実装用基板は、搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sが基板堤部5の上部5u側から搭載面1側に向けて厚みtが厚くなる曲面を成しているものであったが、これに加えて、搭載面1が椀状に凹んでおり、基板堤部5の内壁面5aから搭載面1の中央領域に至る面が曲面を有し凹んだ形状であると、基板堤部5の変形に応じて基板底部3が撓みやすくなり、さらにクラックや欠けの発生率を低減することができる。
【0019】
また、搭載面1が椀状に凹んだ構造の場合には、搭載面1が平面であるときよりも、基板堤部5の上部5uから搭載面1までの高さhが大きくなり、内容積を大きくすることができる。例えば、搭載される電子部品10が水晶振動子のような縦に振れる能動素子であった場合には、実装用基板の外形サイズを大きくしなくても振幅のより大きい水晶振動子を搭載することができる。
【0020】
なお、この場合でも、基板底部3における搭載面1の反対側の面は平面状になっていることが望ましい。基板底部3における搭載面1の反対側の面が平面状になっていると、実装用基板をマザーボードや金属基体などに均等な高さで実装接続することができ、高い実装信頼性を得ることができる。
【0021】
図4(a)は、本実施形態の他の実装用基板を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のC−C線断面図である。
【0022】
また、本実施形態の実装用基板では、基板堤部5は、内壁面5aに導体部9が形成されているとともに、該導体部9は内壁面5aに面一であることが望ましい。例えば、
図4に示すように、実装用基板を構成する基板堤部5の上面5usに形成された金属層8に電気めっきを行うための配線として、基板堤部5の内部に導体部9が形成される場合があるが、実装用基板が小型化され、基板堤部5の厚みtが薄くなってくると、導体部9を基板堤部5の内部に形成することが出来なくなってくることから、導体部9を基板堤部5の内壁面5aに形成する必要がでてくる。このようなときに、導体部9を基板堤部5の内壁面5aに埋設し面一となるようにすると、搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sを補強することができる。
【0023】
また、導体部9が基板堤部5の内壁面5aに面一となるように埋設されていると、導体部9の埋設された分だけ基板堤部5内の容積を大きくすることが可能となり、これによりさらに大きい電子部品を搭載することが可能となり、高出力のパッケージを得ることができる。
【0024】
本実施形態のパッケージは、上述した実装用基板の搭載面1に水晶振動子等の電子部品
10が実装され、基板堤部5の上部5uに蓋体7が設けられていることを特徴とするものである。このパッケージは、電子部品10用の搭載面1を有する板状の基板底部3と、基板底部3上で搭載面1を囲むように配置された枠状の基板堤部5と、基板堤部5の上面5usに周状に配置された金属層8と、を備えており、搭載面1と基板堤部5の内壁面5aとの連続箇所Sが、この基板堤部5の上部5u側から搭載面1側に向けて厚みtを厚くする曲面を成す構成である。これにより基板堤部5の厚みtが薄くなってもクラックや欠けの発生が少なく機械的強度に優れた電子部品実装用のパッケージを得ることができる。なお、本実施形態の実装用基板には、必要に応じて、その表面や内部に、電子部品10や外部電源と接続するための導体層を設けてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の実装用基板および電子部品実装パッケージの製造方法について説明する。
図5は、本実施形態の実装用基板の製造工程を示す模式図である。まず、
図5(a)に示すように、基板底部3および基板堤部5を形成するためのグリーンシート21を準備する。このグリーンシート21は、例えば、Al
2O
3粉末を主成分とし、これにSiO
2粉末およびMgO粉末を所定量添加した混合粉末により得られたものである。
【0026】
次に、
図5(b)に示すように、グリーンシート21の一方の面側から凸部23を有する金型によりグリーンシート21をプレス成形する。このとき凸部23に対応する部分が凹部25aとなる凹状成形体25を形成することができる。この場合、本実施形態の実装用基板を作製する方法によれば、グリーンシート21が金型の凸部23によって加圧されて形成された凹部25aの壁部25aa(焼成後に基板堤部5となる部分)と床部25ab(焼成後に基板底部3となる部分)とは一体物として形成される。また、このとき使用する金型が凸部23の角部23aに丸みを有するものであることから、凹状成形体25の凹部25aの隅部25cを曲面にすることができる。
【0027】
次に、この凹状成形体25を所定の温度条件で焼成することにより、本実施形態の実装用基板を得ることができる。
【0028】
図6は、本実施形態の他の実装用基板の製造工程を示すものであり、
図3に示した構造の実装用基板の製造工程を示す模式図である。金型として、凸部23の中央の面が丸く膨らんだ形状を有するものを用いると、焼成後には、
図3(a)(b)に示すような搭載面1が椀状に凹んでいる構造の実装用基板を得ることができる。なお、
図5に示した凹状成形体25が焼成前後で10%以上の焼成収縮(線収縮率)するようなセラミック材料により構成される場合にも、凹部25aの底の面が椀状に凹んだ形状を有する実装用基板にすることができる。
【0029】
図7は、本実施形態の他の実装用基板の製造工程を示すものであり、
図4に示した構造の導体部9を有する実装用基板の製造工程を示す模式図である。基板堤部5の内壁面5aに導体部9が設けられる実装用基板を形成する場合には、
図7に示すように、グリーンシート21の表面に予め導体パターン27を形成し、この導体パターン27の上側から凸部23を有する金型により加圧する。こうして基板堤部5の内壁面5aに導体部9が埋設され、しかもその導体部9が内壁面5aと面一となる構造の実装用基板を得ることができる。
【実施例】
【0030】
Al
2O
3粉末93質量%に対して、SiO
2粉末を5質量%、MgO粉末を2質量%の割合で混合した後、さらに、有機バインダーとしてアクリル系バインダーを19質量%、有機溶媒としてトルエンを混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて平均厚みが400μmのグリーンシートを作製した。
【0031】
次に、作製したグリーンシートに対し、金型を用いて、80℃の温度で加熱プレスを行い、切断して、
図2、
図3および
図4にそれぞれ示すような構造の凹状成形体を形成した。
図4の凹状成形体に形成した導体パターンはMoを主成分とする導体ペーストを適用した。また、
図9に示す構造の試料は2枚のグリーンシートを用意し、このうちの1枚に金型の打ち抜き加工によって凹部となる穴を形成し、これをもう1枚のグリーンシートに重ねることによって凹状成形体を作製した。
【0032】
次に、還元雰囲気中、1400℃、1時間の条件にて焼成を行った。焼成後の実装用基板の金属層(メタライズ層)にはニッケル、金めっきを順に施した。
【0033】
得られた実装用基板は、平面の面積が3mm×3mm、基板底部の厚みが0.1mm、基板堤部の平均厚みが0.15mm、基板堤部の搭載面からの高さが0.2mmであった。
【0034】
次に、得られた実装用基板について落下試験を行い、実装用基板の損傷の状態を観察した。落下試験後に損傷した状態というのは、倍率が20〜50倍の観察において、例えば、実装用基板の基板底部と基板堤部との接合部分にクラックや欠けが見られたものとした。また、基板底部と基板堤部との界面に発生したクラックについても確認を行った。落下試験はJIS C0044−1995の自然落下試験方法を用いて行った。この場合、落下の高さは1mおよび2mとし、落下の回数は2回とした。このとき試料は基板底部が床面に対して垂直な方向に向き、かつ基板底部の1辺が床面にほぼ平行になるように落下させた。試料数は20個とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、作製した試料のうち搭載面と基板堤部の内壁面との連続箇所が基板堤部の上部側から搭載面側に向けて厚みを厚くする曲面を成している形状とした試料No.1〜4では、高さ1mの落下試験での不良個数が20個中4個以下、高さ2mの落下試験での不良個数が20個中11個以下であった。この中で、実装用基板の基板底部の搭載面を椀状に凹んだ形状にした試料No.2〜4では、高さ2mの落下試験での不良個数が20個中8個以下であった。さらに、基板堤部のコーナー部に導体部を面一になるように埋設させた試料No.3、4では、高さ1mの落下試験での不良個数が20個中2個以下、高さ2mの落下試験での不良個数が20個中7個以下であった。
【0037】
これに対し、搭載面と基板堤部の内壁面との連続箇所が直角な形状の試料No.5では、高さ1mの落下試験での不良個数が20個中8個、高さ2mの落下試験での不良個数が20個中18個であった。