特許第6231415号(P6231415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231415
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】実装用基板および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20171106BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01L23/12 F
   H05K1/18 R
   H01L23/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-48940(P2014-48940)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2015-173208(P2015-173208A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山元 泉太郎
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−269448(JP,A)
【文献】 特開平11−266036(JP,A)
【文献】 特開平09−116187(JP,A)
【文献】 特開2004−179198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/04
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の主面に電子部品を搭載するための搭載面を備えた実装用基板であって、前記搭載面が椀状に凹んでおり、前記搭載面は前記主面から少なくとも一段深くなった段差部を介して設けられており、前記段差部は、前記主面に垂直な縦内壁面と前記主面に平行な横内壁面との連続箇所が曲面となっていることを特徴とする実装用基板。
【請求項2】
前記基板は、前記搭載面に対して線方向に伸びるビア導体を有していることを特徴とする請求項1に記載の実装用基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の実装用基板の前記搭載面に電子部品が実装されていることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装用基板および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9(a)は、従来の電子装置の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。水晶応用製品等の電子部品100が実装された電子装置101は、実装用基板102の上面に蓋体103が接合される構成となっている。実装用基板102は、セラミックスやFR−4などの絶縁材料によって形成される基板の主面に電子部品100を収容するためのキャビティ部107を有する構成となっている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、携帯電話やICカード等の電子装置が普及しているが、これらの電子装置101は高性能化に加えて、ますます小型化や薄型化が要求されてきており、そのため、このような電子装置101に組み込まれる電子部品100やこれを実装するための実装用基板102についても一層の小型化や薄型化が求められている。
【0004】
ところが、電子装置101の小型化や薄型化を図るためには、これの基材である実装用基板102の面積を小さくするとともに、厚みtを薄くする必要があるが、実装用基板101の厚みtが薄くなってくると、機械的強度が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−135711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、機械的強度の高い実装用基板とそれを用いた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実装用基板は、基板の少なくとも一方の主面に電子部品を搭載するための搭載面を備えた実装用基板であって、前記搭載面が椀状に凹んでおり、前記搭載面は前記主面から少なくとも一段深くなった段差部を介して設けられており、前記段差部は、前記主面に垂直な縦内壁面と前記主面に平行な横内壁面との連続箇所が曲面となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の電子装置は、上記の実装用基板の前記搭載面に電子部品が実装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的強度の高い実装用基板とそれを用いた電子装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明の実装用基板の一実施形態を模式的に示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
図2】(a)は、本実施形態の他の態様の実装用基板を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線断面図であり、搭載面が主面から一段深くなった段差部を介して設けられている構造を示すものである。
図3】本実施形態の他の態様の実装用基板を示す断面模式図であり、基板の主面と搭載面との間に設けられた段差部の谷折れ部分が曲面となっている構造を示すものである。
図4】(a)は、本実施形態の他の態様の実装用基板を示す外観斜視図、(b)は、(a)のC−C線断面図であり、搭載面内に形成されたビア導体が基板を厚み方向に貫通している構造を示すものである。
図5】(a)は、本発明の電子装置を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。
図6】本実施形態の電子部品収納用セラミック基板の製造工程を示す模式図である。
図7】本実施形態の他の電子部品収納用セラミック基板の製造工程を示すものであり、図2および図3に示した構造の電子部品収納用セラミック基板の製造工程を示す模式図である。
図8】本実施形態の他の電子部品収納用セラミック基板の製造工程を示すものであり、図4に示した構造の電子部品収納用セラミック基板の製造工程を示す模式図である。
図9】(a)は、従来のパッケージの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a)は、本発明の実装用基板の一実施形態を模式的に示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。図1(b)の実装用基板1の断面図において搭載面5の下側に記した破線Bは、図9に示した従来の実装用基板101のキャビティの断面形状の比較として示したものであり、本実施形態の実装用基板1のキャビティとの断面形状の違いを表すものである。
【0012】
本実施形態の実装用基板1は、基板3の少なくとも一方の主面3aに電子部品を搭載するための搭載面5を備えたものであり、その搭載面5は椀状に凹んだ形状となっている。言い換えると、本実施形態の実装用基板1は、キャビティ構造をした搭載面5が周縁部5a側から中心部5c側に向けて次第に深くなる、いわゆる曲面CSの形状を有するものとなっている。
【0013】
搭載面5がこのような構造であると、図1(b)に示しているように、搭載面5が厚み方向に深く掘られたいわゆる井戸型の形状(図1(b)では破線Bで示している。)である従来の構成と比較して、搭載面5の周縁部5a付近の厚みが厚く、基板3に曲面CSと破線Bとで囲まれた凹状メニスカス部Mが残っている分だけ基板3の撓み量を小さくすることができる。また、搭載面5が曲面CSであるために、搭載面5を含む基板3に荷重がかかったときにも、応力が分散しやすくなる。これにより機械的強度の高い実装用基板を得ることができる。
【0014】
なお、図1(a)(b)には、図示していないが、この実装用基板1の搭載面5上にも図9(a)(b)に示したような蓋体が設けられる。この場合、搭載面5が上記のように椀状に凹んでいる形状(曲面CS)であることから、蓋体を曲面CSの途中に置くこともでき、蓋体の設置が容易になるとともに、実装用基板1に蓋体を重ねてもトータルの厚みを薄くすることができる。
【0015】
そして、実装用基板1の搭載面5に蓋体を設置しやすい構造としては、図2(a)(b)に示すようなものを挙げることができる。
【0016】
図2(a)は、本実施形態の他の態様の実装用基板を示す外観斜視図である。(b)は、(a)のB−B線断面図であり、搭載面5が主面3aから一段深くなった段差部Sを介して設けられている構造を示すものである。ここで、図2(a)の搭載面5に記した実線
は山折れ部Y、破線は谷折れ部Tを示す。図2では、段差部Sにおける基板3の主面3aに垂直な縦内壁面をSv、主面3aに平行な横内壁面をShという符号で表している。縦内壁面Svおよび横内壁面Shにより段差部Sが形成される。
【0017】
搭載面5が椀状に凹んでいることに加えて、搭載面5の周縁部に階段状の段差部Sを設けた場合には、後述する図5(a)(b)に示す電子装置11のように、椀状に凹んだ部分に蓋体15がはめ込まれる構造となり、これにより基板3の変形が抑えられ、蓋体15をはめ込んだときの実装用基板1の機械的強度をより高くすることができる。
【0018】
また、搭載面5に段差部Sを設けた場合には、主面3aから椀状に凹んだ搭載面5の底までの深さを深くすることができるため、電子部品のサイズに制限はあるものの、電子部品が主面3aから突出しない実装形態を実現するのに好適なものとなる。この場合、搭載面5の底の部分は依然として椀状に凹んだ形状であることから、基板3の強度も維持される。
【0019】
このとき、段差部Sの深さdは、蓋体15を一部でも基板3に埋設できるものであれば極力薄い方が良く、例えば、基板3の厚みtの1/3以下であることが望ましい。なお、図2(a)(b)では、段差部Sが1段の構造しか示していないが、本実施形態の実装用基板では、段差部Sは2段、3段と複数の段数で構成されていても同様の効果を得ることができる。
【0020】
図3は、本実施形態の他の態様の実装用基板を示す断面模式図であり、基板3の主面3aと搭載面5との間に設けられた段差部Sの谷折れ部Tが曲面CSとなっている構造を示すものである。図3では、上記した図2(b)に示した段差部Sの形状を破線Bで示しており、基板3の主面3aに垂直な縦内壁面をSv、主面3aに平行な横内壁面をShという符号で表している。
【0021】
この実装用基板1では、段差部Sは、主面3aに垂直な縦内壁面Svと主面3aに平行な横内壁面Shとの連続箇所が曲面CSとなっていることが望ましい。基板3の主面3aに形成された搭載面5が図3に示すような形状であると、段差部Sに、図2(a)(b)に示したような所定の角度で折れ曲がった部分(谷折れ部T)が無くなり、段差部Sにも凹状メニスカス部Mを残すことができることから、図2(a)(b)に示した構造よりも機械的強度の高い実装用基板1を得ることができる。
【0022】
図4(a)は、本実施形態の他の態様の実装用基板を示す外観斜視図、(b)は、(a)のC−C線断面図であり、搭載面5内に形成されたビア導体Vが基板3を厚み方向に貫通している構造を示すものである。
【0023】
本実施形態の実装用基板1は、基板3にビア導体Vを有するものにも好適なものとなる。例えば、ビア導体Vの一端が基板3の搭載面5に露出し、他端が基板3の搭載面5とは反対側の主面3bに貫通しているような構造である場合に、ビア導体Vが搭載面5に対し
線方向に伸びるように配置されていることが望ましい。ここで、ビア導体Vが搭載面5に対して線方向に伸びている状態というのは、ビア導体Vの軸が搭載面5に対して垂直な方向だけではなく±10°角度を変えた範囲にあるものまで含む意味である。
【0024】
ところで、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)等の電子部品が実装用基板1の搭載面に搭載され、また、この実装用基板がマザーボードである外部回路基板上に実装されている構成を想定した場合、実装用基板は、電子部品と外部回路基板との間で、電子部品の配線回路と外部回路基板の配線回路との間でインピーダンスなどの抵抗成分を整合させる役割を果たすものとなっている。通常、実装用基板の搭載面(一次実装側と
呼ばれることがある。)の接続用パッドのピッチは電子部品の接続用パッドのピッチに対応するものとなっているが、実装用基板の搭載面とは反対側の裏面(二次実装側と呼ばれることがある。)の接続パッドのピッチは外部回路基板の配線ピッチに対応するものとなるため、搭載面側よりも接続パッドのピッチが大きくなっている。このため、通常の実装用基板では、表面や内部に形成される配線回路を絶縁層を介して形成し、絶縁層を貫通させたビア導体を介して配線回路を展開し、搭載面5側の一次実装側から裏面の二次実装側に至る間に配線ピッチが広がるように設計されている。
【0025】
これに対し、図4(a)(b)に示す本実施形態の実装用基板1では、ビア導体Vが搭載面5に対して線方向に伸びるように配置されていることから、実装用基板1の搭載面5側における接続パッドのピッチが小さくても、配線回路の展開に因らず、裏面側に露出する接続パッドのピッチを広くすることが可能になる。そして、このような実装用基板1では、配線回路の層数を減らすことができる分だけビア導体の数を減らすことができることから、より小面積かつ薄型の実装用基板1を得ることができる。
【0026】
図5(a)は、本発明の電子装置を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。本実施形態の電子装置11は、上述した実装用基板1の搭載面5に水晶振動子等の電子部品13が実装されていることを特徴とするものである。この電子装置11では、搭載面5が椀状に凹んでいる形状(曲面CS)であることから、上述した理由により、実装用基板1の撓み量を小さくすることができ、高い機械的強度を有する電子装置11を得ることができる。なお、本実施形態の電子装置11には、必要に応じて、電子部品13を樹脂封止しても良いが、搭載面5を覆うように蓋体15を設けると、実装用基板1をより変形し難くすることができる。また、実装用基板1の表面や内部に、電子部品13や外部電源と接続するための導体層を設けてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の実装用基板および電子装置の製造方法について説明する。図6は、本実施形態の実装用基板の製造工程を示す模式図である。まず、図6(a)に示すように、基板3を形成するためのグリーンシート21を準備する。そのグリーンシート21は、例えば、Al粉末を主成分とし、これにSiO粉末およびMgO粉末を所定量添加した混合粉末により得られたものである。
【0028】
次に、図6(b)に示すように、グリーンシート21の一方の面側から球面状をした凸部23を有する金型によりグリーンシート21をプレス成形する。このとき凸部23に対応する部分が椀状の凹部25aとなる。
【0029】
なお、搭載面5を図2(a)(b)および図3(a)(b)に示すような形状にするときにも、それぞれ焼成後の搭載面5の形状に対応する凸部23を備えた金型を用いれば良いが、搭載面5の深さが浅いものであれば、図7(a)および図7(b)にそれぞれ示しているように、凸部23の先端に段差部Sの部分だけ加工できるようにした金型(球面状をした凸部23が形成されていない)を用いても同様の形状を有する実装用基板1を得ることができる。この場合には、凹状成形体25として焼成前後で15%以上焼成収縮(線収縮率)するセラミック材料を用いるのが良い。
【0030】
図8は、図4に示す実装用基板を作製する工程を示した模式図である。この場合には、グリーンシート21の表面の金型の凸部23が当たる部分にビア導体用の導体パターン27を形成し、次いで、この上面側から金型によりプレスする。このとき導体パターン27が凹状成形体25中に埋め込まれると同時に下方側に向かって広がるように埋設される。次いで、この凹状成形体25を焼成することにより、図4に示すような実装用基板1を得ることができる。
【実施例】
【0031】
Al粉末93質量%に対して、SiO粉末を5質量%、MgO粉末を2質量%の割合で混合した後、さらに、有機バインダーとしてアクリル系バインダーを19質量%、有機溶媒としてトルエンを混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて平均厚みが200μmのグリーンシートを作製した。
【0032】
次に、作製したグリーンシートに対し、金型を用いて、80℃の温度で加熱プレスを行い、切断して、図1図2および図3にそれぞれ示すような構造の凹状成形体を形成した。また、図4の凹状成形体に形成した導体パターンはMoを主成分とする導体ペーストを適用した。また、図9に示す構造の試料については凸部が断面視で矩形状の金型を用いて同様の加圧条件で作製した。
【0033】
次に、還元雰囲気中、1400℃、1時間の条件にて焼成を行った。
【0034】
得られた実装用基板は、いずれも平面の面積が5mm×5mm、椀状に凹んだ部分の深さは基板厚みの約1/4〜1/3、基板の平均厚みが0.15mm、椀状に凹んだ搭載面の直径が約3mmであった。段差部は基板厚みの約1/5とした。
【0035】
次に、得られた実装用基板について強度試験を行い、実装用基板の強度を測定した。強度試験はオートグラフを用いて、作製した実装用基板を両端で支え、裏面側から直径2mmの鉄製の棒によって加圧する方法により行った。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、作製した試料のうち搭載面を椀状に凹んだ形状とした試料No.1〜4では、強度が0.85kgf以上であったが、搭載面の形状が断面視で矩形状であった試料No.5は強度が0.77kgfであった。
【符号の説明】
【0038】
1・・・・・・・実装用基板
3・・・・・・・基板
3a・・・・・・主面
5・・・・・・・搭載面
5a・・・・・・周縁部
5c・・・・・・中央部
11・・・・・・電子装置
13・・・・・・電子部品
15・・・・・・蓋体
CS・・・・・・曲面
M・・・・・・・凹状メニスカス部
S・・・・・・・段差
T・・・・・・・谷折れ部
Y・・・・・・・山折れ部
Sv・・・・・・縦内壁面
Sh・・・・・・横内壁面
V・・・・・・・ビア導体
21・・・・・・グリーンシート
23・・・・・・凸部
25・・・・・・凹状成形体
25a・・・・・凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9