特許第6231427号(P6231427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231427
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】高純度の硫酸溶液の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/74 20060101AFI20171106BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C01B17/74 Z
   C02F1/04 C
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-91206(P2014-91206)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-218423(P2014-218423A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年4月25日
【審判番号】不服2016-5109(P2016-5109/J1)
【審判請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】102115629
(32)【優先日】2013年5月1日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】102138283
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】510040271
【氏名又は名称】聯仕電子化學材料股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】竇科帝
(72)【発明者】
【氏名】張廣誠
(72)【発明者】
【氏名】▲くん▼月明
(72)【発明者】
【氏名】▲ちゃん▼宏文
(72)【発明者】
【氏名】許韋軒
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 三崎 仁
【審判官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−231107(JP,A)
【文献】 特表2003−519066(JP,A)
【文献】 特開昭56−045808(JP,A)
【文献】 特開昭50−001993(JP,A)
【文献】 特開平6−127908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B17/74, C01B17/88, C01B17/90, C01F1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸、前記硫酸よりも高沸点の第1溶液、過酸化水素、水、酸素及び不溶性不純物を含む混合溶液を提供するステップと、
前記混合溶液を重力によって大気圧下で流させ、第1予熱工程、第2予熱工程及び蒸留工程を順次に行って、第2溶液を形成し、前記第1予熱工程では前記過酸化水素、前記水と前記酸素を取り除き、前記第2予熱工程と前記蒸留工程では前記水を取り除き、前記第1予熱工程の温度が前記第2予熱工程の温度より低く、且つ前記第2予熱工程の温度が前記蒸留工程の温度より低いステップと、
前記第2溶液に対して蒸発工程を行って、340℃〜350℃の間にある温度で、前記不溶性不純物及び前記第1溶液を取り除き、三酸化硫黄(SO)、硫酸及び水を含む第1ガスを取得するステップと、
濃度が96重量パーセントを超えた硫酸溶液によって前記第1ガスを吸収して、前記硫酸溶液によって前記第1ガスを吸収した後で、吸収されなかった前記第1ガスを取り除く脱ガス工程を行い、濃度が少なくとも96重量パーセントであり、夾雑物が0.1十億分率モル濃度(ppb)以下である高純度の硫酸溶液を形成するステップと、
を少なくとも含む高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項2】
前記第1予熱工程の温度は、120℃を超え、前記第2予熱工程の温度は、160℃〜200℃の間にあり、前記蒸留工程の温度は、340℃〜350℃の間にある請求項1に記載の高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項3】
前記混合溶液は、触媒材料を含む請求項1に記載の高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項4】
前記第1予熱工程は、触媒材料を前記混合溶液に加えることを含む請求項1に記載の高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項5】
前記高純度の硫酸溶液の濃度は、96重量パーセント〜98重量パーセントの間にある請求項1に記載の高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項6】
前記脱ガス工程の後で、少なくとも、前記高純度の硫酸溶液を冷却する冷却工程を更に含む請求項1に記載の高純度の硫酸溶液の調製方法。
【請求項7】
硫酸、前記硫酸よりも高沸点の第1溶液、過酸化水素、水、酸素及び不溶性不純物を含む混合溶液を収納するためのものであり、頂部には供給口が設けられ、底部には第1パイプと接続した吐出口が設けられた原料槽と、
前記第1パイプによって前記原料槽と接続して、前記混合溶液を注入するものであって、前記第1パイプによって前記原料槽と接続し、温度が120℃を超える第1予熱槽と、第2パイプによって前記第1予熱槽と接続し、且つ前記第1予熱槽より低い第1高度に設けられ、温度が160℃〜200℃の間にある第2予熱槽と、第3パイプによって前記第2予熱槽と接続し、且つ前記第2予熱槽より低い第2高度に設けられ、温度が340℃〜350℃の間にある蒸留塔と、を含む第1硫酸純化装置と、
第4パイプによって前記蒸留塔と接続し、且つ前記蒸留塔より低い第3高度に設けられたものであって、前記第4パイプによって前記蒸留塔と接続して、前記第1溶液に対して蒸発工程を行って、三酸化硫黄(SO)、硫酸及び水を含む第1ガスを形成する、温度が340℃〜350℃の間にある蒸発塔と、第5パイプによって前記蒸発塔に接続され、硫酸溶液である吸収剤を含み、前記第1ガスを吸収して、少なくとも96重量パーセントの濃度の高純度の硫酸溶液を形成する吸収塔と、を含む第2硫酸純化装置と、
第6パイプによって前記吸収塔と接続して、前記高純度の硫酸溶液を収集する収集槽と、
を備え、前記吸収塔と前記収集槽の間に、更に、吸収されなかった前記第1ガスを取り除く脱ガス塔が接続された高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項8】
前記原料槽の前記混合溶液は、触媒材料を含む請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項9】
前記第1予熱槽の前記混合溶液は、触媒材料を含む請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項10】
前記第1予熱槽の温度は、前記第2予熱槽の温度より低く、且つ前記第2予熱槽の温度は、前記蒸留塔の温度より低い請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項11】
前記硫酸溶液の濃度は、96重量パーセントを超える請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項12】
前記高純度の硫酸溶液の濃度は、96重量パーセント〜98重量パーセントの間にある請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【請求項13】
記脱ガス塔と前記収集槽の間に、更に、第1冷却器が接続されている請求項7に記載の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸溶液の調製方法に関し、特に、高純度の硫酸溶液の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体産業、液晶ディスプレイ、太陽エネルギー産業等の電子産業の基材のエッチング廃棄物には、消耗し尽くされなかった強酸・強アルカリのエッチング液(例えば、硫酸)以外に、半導体や、液晶ディスプレイのガラス基材、太陽電池素子からエッチングされた不純な汚染物質等がある。現在、上記産業で生じたエッチング廃液も、常に廃棄物として処理されるため、環境に深刻な負担を掛けるだけでなく、経済効率にも合わない。
【0003】
半導体産業のプロセス作業では、少なくとも96重量パーセント(wt%)の硫酸溶液と30重量パーセントの過酸化水素を、適当な比で混合して調製された洗浄液で、ウェハ洗浄の工程を行う。ウェハ洗浄の工程は、80℃〜120℃の温度で行われるため、洗浄液における過酸化水素の一部が酸素と水に分解することがある。
【0004】
ウェハ洗浄の工程を行った後の硫酸廃液は、過酸化水素から分解した水により洗浄液における硫酸の濃度が低下する以外に、複数回の洗浄工程を経過した後で、上記ウェハに含まれる一部の物質がエッチングされて硫酸廃液の中に残留して、不溶性不純物を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、業界では、硫酸廃液の処理方法を探して見ているが、硫酸廃液の処理コストが高すぎ、含まれる夾雑物が多いため、半導体等の電子産業プロセスのニーズに対応できる高純度の硫酸溶液として回収することが困難である。
【0006】
従って、現在、業界では、硫酸廃液から高純度の硫酸溶液を調製する方法を見出すように試みている。従来の調製方法は、真空又は減圧(大気圧より低い)によって蒸留を行うものであるが、低気圧の蒸留条件で、硫酸の沸点が低下し、蒸留に必要な温度もそれに伴って低下するため、硫酸よりも低沸点の化合物を効果的で完全に取り除くことができず、高純度の硫酸が得られない。
【0007】
なお、硫酸の沸点まで加熱することで生じた硫酸ガスに対して、続いて凝縮装置で硫酸ガスの凝縮作業を行うが、高温の硫酸ガスが凝縮装置の材質と接触すると、硫酸ガスにより凝縮装置の材質がエッチングされやすいため、凝縮装置の材質が崩壊して硫酸ガスを汚染することで、生じた硫酸溶液の純度に影響を与えてしまう。
【0008】
これに鑑みて、硫酸廃液の再利用の問題が克服された高純度の硫酸溶液の調製方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の一態様は、第1予熱工程、第2予熱工程、蒸留工程、蒸発工程を順次に行って、三酸化硫黄(SO)、硫酸及び水を含む第1ガスを取得し、硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、濃度が少なくとも96重量パーセントであり、夾雑物が0.1十億分率モル濃度(ppb)以下である高純度の硫酸溶液を形成する高純度の硫酸溶液の調製方法を提供するものである。
【0010】
次に、本発明の別の態様は、大気圧で加熱して三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを取得し、硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、濃度が少なくとも96重量パーセントであり、夾雑物が0.1ppb以下である高純度の硫酸溶液を形成する高純度の硫酸溶液の調製用のシステムを提供するものである。
【0011】
本発明の前記態様によれば、高純度の硫酸溶液の調製方法を提示する。一実施例において、まず、硫酸、硫酸よりも高沸点の第1溶液、過酸化水素、水、酸素及び不溶性不純物を含む混合溶液を提供する。
【0012】
次に、混合溶液を重力によって大気圧下で流させ、第1予熱工程、第2予熱工程及び蒸留工程を順次に行って、第2溶液を形成し、第1予熱工程では過酸化水素、水と酸素を取り除き、第2予熱工程と蒸留工程では水を取り除き、第1予熱工程の温度が第2予熱工程の温度より低く、且つ第2予熱工程の温度が蒸留工程の温度より低い。
【0013】
そして、第2溶液に対して蒸発工程を行って、硫酸の沸点より高く且つ第1溶液の沸点より低い温度で、不溶性不純物及び第1溶液を取り除き、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを取得する。
【0014】
その後、硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、濃度が少なくとも96重量パーセントであり、夾雑物が0.1ppb以下である高純度の硫酸溶液を形成する。
【0015】
本発明の他の態様によれば、原料槽と、第1硫酸純化装置と、第2硫酸純化装置と、収集槽と、を備える高純度の硫酸溶液の調製用のシステムを提供する。
【0016】
前記原料槽は、混合溶液を収納するためのものであり、頂部には供給口が設けられ、底部には第1パイプと接続した吐出口が設けられている。
【0017】
前記第1硫酸純化装置は、第1パイプによって原料槽と接続して、混合溶液を注入するものであって、第1予熱槽と、第2予熱槽と、蒸留塔と、を含むものである。第1予熱槽は、第1パイプによって原料槽と接続している。第2予熱槽は、第2パイプによって第1予熱槽と接続し、且つ第1予熱槽より低い第1高度に設けられている。蒸留塔は、第3パイプによって第2予熱槽と接続し、且つ第2予熱槽より低い第2高度に設けられている。
【0018】
前記第2硫酸純化装置は、第4パイプによって蒸留塔と接続し、且つ蒸留塔より低い第3高度に設けられたものであって、蒸発塔と、吸収塔と、を含むものである。蒸発塔は、第4パイプによって蒸留塔と接続して、第1溶液に対して蒸発工程を行って、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを形成する。吸収塔は、第5パイプによって蒸発塔に接続され、硫酸溶液である吸収剤を含み、第1ガスを吸収して、濃度が少なくとも96重量パーセントであり、夾雑物が0.1ppb以下である高純度の硫酸溶液を形成する。
【0019】
前記収集槽は、第6パイプによって吸収塔と接続して、高純度の硫酸溶液を収集する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高純度の硫酸溶液の調製方法によれば、大気圧で加熱して、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを取得し、硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、高純度の硫酸溶液を形成する。廃液の排出を減少し、硫酸廃液の処理コストを大幅に低減させるだけでなく、純化により得られた高純度の硫酸溶液が、また半導体産業や他の工業プロセスに再利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
下記図面の説明は、本発明の上記または他の目的、特徴、メリット、実施例をより分かりやすくするためのものである。
図1】本発明の一実施例による高純度の硫酸溶液の調製方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施例による高純度の硫酸溶液の調製用のシステムを示す部分模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
先に述べられたように、本発明は、大気圧で加熱して、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを取得し、硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、少なくとも96重量パーセントの濃度の高純度の硫酸溶液を形成する高純度の硫酸溶液の調製方法を提供する。以下、図1に合わせて、本発明の一実施例の高純度の硫酸溶液の調製方法を説明する。
【0023】
高純度の硫酸溶液の調製方法
【0024】
図1を参照されたい。図1は、本発明の一実施例による高純度の硫酸溶液の調製方法を示すフロー模式図である。
【0025】
1. 混合溶液を提供する
【0026】
まず、工程110に示すように、硫酸、硫酸よりも高沸点の第1溶液、過酸化水素、水、酸素及び不溶性不純物を含む混合溶液を提供する。
【0027】
一実施例において、上記混合溶液は、半導体プロセスで生じた硫酸廃液から選ばれたものである。一例示において、上記混合溶液は、ウェハ洗浄の工程を行った後の濃度約60重量パーセントの硫酸を含む洗浄廃液から選ばれたものである。別の例示において、上記混合溶液は、半導体産業、液晶ディスプレイ、太陽エネルギー産業等の電子産業の基材エッチング廃棄物から選ばれたものである。
【0028】
一実施例において、前記混合溶液に触媒材料を選択的に加えることで、過酸化水素を分解して、混合溶液中の硫酸の濃度を向上させ、更に後の純化工程のエネルギーコスト及び時間コストを低減することができる。この触媒材料は、混合溶液中の酸液による腐食を耐えることができる。この触媒材料の具体例としては、例えば、金属白金触媒、金属ニッケル触媒、金属ジルコニウム触媒、他の適当な触媒材料又は上記材料の任意の組み合わせがある。
【0029】
上記混合溶液に触媒材料が加えられた場合、触媒材料により過酸化水素が分解されて生じた酸素は、圧力の発生で硫酸の純化に影響を与えないように、脱ガス装置によって排出されなければならない。
【0030】
2. 第1硫酸純化工程を行う
【0031】
次に、上記混合溶液を重力によって大気圧下で流させ、第1予熱工程、第2予熱工程及び蒸留工程を順次に行って、硫酸よりも低沸点のものを取り除いて、第2溶液を形成する。第1予熱工程の温度は、第2予熱工程の温度より低く、且つ第2予熱工程の温度は、蒸留工程の温度より低い。
【0032】
2.1 第1予熱工程を行う
【0033】
工程120に示すように、混合溶液を大気圧で少なくとも120℃加熱して、過酸化水素を水と酸素に分解するだけでなく、更に混合溶液中の過酸化水素、水と酸素を取り除く第1予熱工程を行う。
【0034】
一実施例において、第1硫酸純化工程を行う前に、混合溶液に触媒材料を加えなかった場合、上記第1予熱工程は、過酸化水素を分解して、混合溶液中の硫酸の濃度を向上させるように、触媒材料を混合溶液に加える工程を選択的に含んでよい。この触媒材料は、混合溶液中の酸液による腐食を耐えることができ、且つ高温の環境(即ち、第1予熱工程の温度)でも過酸化水素を効果的に分解することができる。この触媒材料の具体例としては、例えば、金属白金触媒、金属ニッケル触媒、金属ジルコニウム触媒、他の適当な触媒材料又は上記材料の任意の組み合わせがある。
【0035】
一例示において、混合溶液に触媒材料が加えられた場合、120℃で、1分間を経た後、混合溶液中の過酸化水素の残留濃度は、9.7%であり、硫酸の濃度は、67%である。
【0036】
混合溶液に触媒材料が加えられていない場合、120℃で第1予熱工程を行い、15分間を経た後、混合溶液中の過酸化水素の残留濃度は、約60%であり、硫酸の濃度は、約67.58%である。
【0037】
2.2 第2予熱工程を行う
【0038】
そして、工程130に示すように、上記第1予熱工程で処理された混合溶液に対して第2予熱工程を行う。この第2予熱工程は、混合溶液を大気圧で160℃〜200℃の間に加熱して、混合溶液中の水を取り除き、60重量パーセント〜80重量パーセントの間の硫酸を含む第3溶液を形成する工程である。
【0039】
一実施例において、前記各工程中の混合溶液に触媒材料が加えられていない場合、上記第2予熱工程は、混合溶液に残っている過酸化水素を更に分解するように、触媒材料を混合溶液に加える工程を選択的に含んでよく、これにより、混合溶液中の硫酸の濃度を向上させ、更に、下記蒸留工程のエネルギーコスト及び時間コストを低減することができる。
【0040】
この触媒材料は、酸液による腐食を耐えることができ、且つ高温の環境(即ち、第2予熱工程の温度)でも過酸化水素を分解することができる。この触媒材料の具体例については、前記の通りであるが、ここで詳しく説明しない。
【0041】
2.3 蒸留工程を行う
【0042】
その後、工程140に示すように、上記第3溶液に対して蒸留工程を行う。この蒸留工程は、第3溶液を大気圧で340℃〜350℃の間に加熱して、第3溶液中の水を取り除いて、98重量パーセントの硫酸を含む混合溶液である第2溶液を形成する工程である。
【0043】
3.第2硫酸純化工程を行う
【0044】
次に、上記第2溶液に対して第2硫酸純化工程を行って、硫酸よりも高沸点のものを取り除き、硫酸溶液で吸収して、少なくとも96重量パーセントの濃度の高純度の硫酸溶液を形成する。
【0045】
3.1 蒸発工程を行う
【0046】
工程150に示すように、上記第2溶液に対して蒸発工程を行う。この蒸発工程は、第2溶液中の硫酸を三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスとして揮発させ、後の処理のために第1ガスを収集し、かつ第2溶液中の硫酸よりも高沸点の第1溶液と不溶性不純物を取り除く工程である。
【0047】
一実施例において、上記第1ガスは、28重量パーセントの三酸化硫黄を含む。別の実施例において、上記第1ガスは、52重量パーセントの硫酸を含む。さらに別の実施例において、上記第1ガスは、20重量パーセントの水を含む。
【0048】
一実施例において、蒸発工程は、硫酸を三酸化硫黄(SO)と水に分解させる。一例示において、上記蒸発工程は、大気圧で340℃〜350℃の間に加熱する。別の例示において、上記蒸発工程は、大気圧で340℃〜345℃の間に加熱する。さらに別の例示において、上記蒸発工程は、大気圧で345℃〜350℃の間に加熱する。
【0049】
一実施例において、上記不溶性不純物は、半導体プロセスに由来するものであり、ウェハ洗浄工程において、ウェハに含まれる一部の物質、例えば、重金属、有機物等の物質が、エッチングされて硫酸廃液の中に残留する。
【0050】
3.2 硫酸溶液によって第1ガスを吸収する
【0051】
そして、工程160に示すように、濃度が96重量パーセントを超えた硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、高純度の硫酸溶液を形成する。
【0052】
一実施例において、上記高純度の硫酸溶液の濃度は、少なくとも96重量パーセントである。一例示において、上記高純度の硫酸溶液の濃度は、96重量パーセント〜98重量パーセントの間にある。
【0053】
一実施例において、上記高純度の硫酸溶液に含まれる夾雑物は、0.1十億分率モル濃度(ppb)以下である。実際のニーズに応じて異なるが、電子グレードの品質、例えば、200ppb又は他の数値であってよい。ユーザのニーズ又は異なる製品に応じて異なるが、他の例示において、前記高純度の硫酸溶液に含まれる夾雑物は、0.1ppb〜100ppb、0.1ppb〜1ppb、1ppb〜10ppb、10ppb〜100ppbであってもよい。
【0054】
一実施例において、上記夾雑物は、金属不純物であってよい。一例示において、上記金属不純物は、銀、アルミニウム、金、バリウム、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、カドミウム、コバルト、クロム、銅、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、水銀、カリウム、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、ニオブ、ニッケル、鉛、アンチモン、スズ、ストロンチウム、タンタル、チタン、タリウム、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム及びそれらの任意の組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。
【0055】
また、前記得られた高純度の硫酸溶液は、場合によって、吸収されなかった第1ガスを取り除くために、脱ガス工程を選択的に行ってもよい。次に、脱ガス工程の後で、場合によって、高純度の硫酸溶液を冷却するために、更に冷却工程を選択的に行ってもよい。
【0056】
注意すべきなのは、前記得られた高純度の硫酸溶液は、半導体産業、液晶ディスプレイ、太陽エネルギー産業等の工業プロセスに必要な硫酸又は硫酸系の混酸製品を提供するために、更に後処理を選択的に行ってよい。硫酸又は硫酸系の混酸製品については、従来のプロセスで行ってよいが、これは当業者に熟知されるものであり、ここで別に詳しく説明しない。
【0057】
高純度の硫酸溶液の調製用のシステム
【0058】
一実施例において、上記高純度の硫酸溶液の調製方法は、従来の反応システム又は図2の反応システム200で行ってよい。以下、図2の高純度の硫酸溶液の調製用のシステム200を例として説明する。
【0059】
図2を参照されたい。図2は、本発明の一実施例による高純度の硫酸溶液の調製用のシステムを示す模式図である。
【0060】
本発明におけるここで言う「混合溶液」とは、主に、ウェハ洗浄の工程が行われた後の硫酸廃液、又は半導体産業、液晶ディスプレイ、太陽エネルギー産業等の電子産業の基材エッチング廃棄物であり、硫酸、硫酸よりも高沸点の第1溶液、過酸化水素、水、酸素及び不溶性不純物を含む。
【0061】
一実施例において、図2の反応システム200は、原料槽210と、第1硫酸純化装置220と、第2硫酸純化装置230と、収集槽240と、を備えてよい。
【0062】
一実施例において、上記原料槽210は、混合溶液を収納するためのものであり、原料槽210の頂部には供給口210aが設けられ、原料槽の底部には第1パイプ222aと接続した吐出口210bが設けられている。
【0063】
一実施例において、前記原料槽210中の混合溶液には、触媒材料が選択的に加えられてよい。前記混合溶液に触媒材料が加えられた場合、原料槽210には、触媒材料により過酸化水素が分解されて生じた酸素を取り除くための脱ガス装置(図示せず)が繋がらなければならない。これにより、装置における圧力変化によって硫酸純化の效果が更に影響されないようにすることができる。
【0064】
一実施例において、上記原料槽210中の混合溶液の触媒材料は、酸液による腐食を耐えることができる。この触媒材料の具体例としては、例えば、金属白金触媒、金属ニッケル触媒、金属ジルコニウム触媒、他の適当な触媒材料又は上記材料の任意の組み合わせがある。
【0065】
一例示において、原料槽210には、混合溶液を原料槽210に注入させるようにさらに設けられたパイプラインが繋がっている。別の例示において、原料槽210には攪拌設備(図示せず)が設けられてよい。さらに別の例示において、吐出口210bは、混合溶液の排出のために、原料槽210の底部、或いは、例えば底部の中央または片側に設けられている。
【0066】
一実施例において、上記第1硫酸純化装置220は、第1パイプ222aによって原料槽210と接続して、混合溶液を第1硫酸純化装置220に注入する。一例示において、原料槽210と第1硫酸純化装置220との間に、混合溶液を第1硫酸純化装置220に注入する吐出ポンプ212が更に設けられている。別の例示において、吐出ポンプ212は、混合溶液の流速を制御できる。
【0067】
一実施例において、上記第1硫酸純化装置220は、第1予熱槽222と、第2予熱槽224と、蒸留塔226と、を含む。第1硫酸純化装置220では、高度の高いものから第1予熱槽222、第2予熱槽224及び蒸留塔226の順に並べられて、混合溶液が重力によって第1硫酸純化装置220を流れるようにする。且つ、第1予熱槽222の温度は、第2予熱槽224の温度より低いが、第2予熱槽224の温度は、蒸留塔226の温度より低い。
【0068】
一実施例において、上記第1予熱槽222、第2予熱槽224及び蒸留塔226の材料としては、ホウケイ酸ガラス、合成石英及びそれらの任意の組み合わせであってよいが、それらに限定されない。
【0069】
一実施例において、上記第1予熱槽222は、第1パイプ222aによって原料槽210と接続している。一例示において、過酸化水素、水と酸素を取り除くために、第1予熱槽222の温度は、120℃を超えている。
【0070】
一実施例において、原料槽210中の混合溶液に触媒材料が加えられていない場合、第1予熱槽222中の混合溶液に触媒材料を選択的に加えることで、過酸化水素を分解し、混合溶液中の硫酸の濃度を向上させ、更に純化プロセスのエネルギーコスト及び時間コストを低減することができる。
【0071】
前記第1予熱槽222中の混合溶液の触媒材料は、酸液による腐食を耐えることができ、且つ高温(即ち、第1予熱槽の設定温度)でも、混合溶液中の過酸化水素を効果的に分解することができる。この触媒材料の具体例としては、例えば、金属白金触媒、金属ニッケル触媒、金属ジルコニウム触媒、他の適当な触媒材料又は上記材料の任意の組み合わせがある。
【0072】
一例示において、第1予熱槽222中の混合溶液に触媒材料が加えられた場合、120℃で、1分間を経た後、混合溶液中の過酸化水素の残留濃度が9.7%であり、硫酸の濃度が67%である。
【0073】
前記第1予熱槽222中の混合溶液に触媒材料が加えられていない場合、120℃で、15分間を経た後、混合溶液中の過酸化水素の残留濃度は、約60%であり、硫酸の濃度は、約67.58%である。
【0074】
一実施例において、上記第2予熱槽224は、第2パイプ224aによって第1予熱槽222と接続し、且つ第1予熱槽222より低い第1高度に設けられている。一例示において、第2予熱槽224の温度は、水を取り除き、60重量パーセント〜80重量パーセントの間の硫酸を含む第3溶液を形成するように、160℃〜200℃の間である。
【0075】
一実施例において、前記原料槽210又は第1予熱槽222中の混合溶液に触媒材料が加えられていない場合、第2予熱槽224中の混合溶液に触媒材料を選択的に加えることで、混合溶液に残っている過酸化水素を更に分解して、硫酸の濃度を向上させることができる。
【0076】
前記第2予熱槽224の混合溶液に添加された触媒材料は、酸液による腐食を耐えることができ、且つ高温(即ち、第2予熱槽224の設定温度)でも、混合溶液に残っている過酸化水素を分解することができる。この触媒材料の具体例については、前記の通りであるが、ここで別に詳しく説明しない。
【0077】
一実施例において、上記蒸留塔226は、第3パイプ226aによって第2予熱槽224と接続し、且つ第2予熱槽224より低い第2高度に設けられている。一例示において、蒸留塔226の温度は、混合溶液中の水を取り除き、98重量パーセントの硫酸を含む混合溶液である第2溶液を形成するように、340℃〜350℃の間である。
【0078】
一実施例において、上記第1硫酸純化装置220は、凝縮装置228を更に含む。凝縮装置228は、第7パイプ228aによって第1予熱槽222、第2予熱槽224及び蒸留塔226と接続して、第1予熱槽222、第2予熱槽224と蒸留塔226で取り除かれた例えば過酸化水素、水、酸素及び硫酸よりも低沸点の物質等のような廃気を収集する。一例示において、上記凝縮装置228には、第2冷却器228cと第1廃液槽228bを設けることで、第2冷却器228cを利用して廃気を冷却し又は廃液を形成し、且つ第1廃液槽228bに貯蔵することができる。
【0079】
一実施例において、蒸発塔232と吸収塔234を含む上記第2硫酸純化装置230は、第4パイプ232aによって蒸留塔226と接続し、且つ蒸留塔226より低い第3高度に設けられている。
【0080】
一実施例において、上記蒸発塔232は、加熱して硫酸を気化させ、部分的に三酸化硫黄と水に分解させて、混合溶液の不溶性不純物及び硫酸よりも高沸点の第1溶液を取り除くものである。一例示において、上記蒸発塔232は、大気圧で340℃〜350℃の間に加熱される。別の例示において、上記蒸発塔232は、大気圧で340℃〜345℃の間に加熱される。別の例示において、上記蒸発塔232は、大気圧で345℃〜350℃の間に加熱される。
【0081】
一実施例において、上記蒸発塔232は、第4パイプ232aによって蒸留塔226と接続して、第1溶液に対して蒸発工程を行い、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを形成する。
【0082】
一実施例において、上記蒸発塔232には、第2冷却器233が設けられてよい。第2冷却器233は、第8パイプ233aによって蒸発塔232と接続して、蒸発塔232に残った、不溶性不純物と第1溶液を含む液体を収集する。一例示において、上記第2冷却器233には、上記不溶性不純物と第1溶液を貯蔵する第2廃液槽233bが設けられてよい。
【0083】
一実施例において、上記吸収塔234は、第5パイプ234aによって蒸発塔232に接続されており、濃度が96重量パーセントを超えた硫酸溶液である吸収剤を含み、第1ガスを吸収して、少なくとも96重量パーセントの濃度の高純度の硫酸溶液を形成する。一例示において、高純度の硫酸溶液の濃度は、96重量パーセント〜98重量パーセントの間にある。
【0084】
一実施例において、上記吸収塔の材料としては、テフロン(Teflon)(登録商標)を含んでよいが、これに限定されない。
【0085】
一実施例において、上記吸収塔234には、更に、循環ポンプ235、熱交換器234b、濃度コントローラ234cが設けられている。一例示において、上記循環ポンプ235は、吸収塔234内の硫酸溶液を流動させて、第1ガスを吸収することに用いられる。さらに別の例示において、熱交換器234bは、吸収塔234の温度を制御して、過度に高温になることを防止することに用いられる。別の例示において、濃度コントローラ234cは、吸収塔234内部の硫酸溶液の液面高度を制御することに用いられ、且つユーザのニーズ又は異なる製品によって、純水を注入して高純度の硫酸溶液の濃度を調整する。
【0086】
一実施例において、上記収集槽240は、第6パイプ240aによって吸収塔234と接続して、高純度の硫酸溶液を収集する。
【0087】
一実施例において、上記収集槽240と吸収塔234の間に、更に、吸収されなかった第1ガスを取り除くための脱ガス塔236が接続されている。一例示において、上記脱ガス塔236と収集槽240の間に、更に、高純度の硫酸溶液を冷却する第1冷却器238が接続されている。
【0088】
まとめて言えば、本発明の高純度の硫酸溶液の調製方法及びそれによって純化された高純度の硫酸溶液は、電子グレードの品質を有し、後処理を行うことで、半導体産業、液晶ディスプレイ、太陽エネルギー産業等の工業プロセスに必要な硫酸又は硫酸混酸製品を提供することができる。
【0089】
ここで補充すべきなのは、本発明では、特定の化合物、特定のプロセス、特定の反応条件、特定の応用方式又は特定の設備等を例示として、本発明の高純度の硫酸溶液の調製方法及び高純度の硫酸溶液の調製用のシステムを説明したが、当業者には明らかなように、本発明がこれらに限定されず、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、本発明の高純度の硫酸溶液の調製方法については、他の化合物、他のプロセス、他の反応条件、他の応用方式、他の相当のレベルの設備によって行ってもよい。
【0090】
まとめて言えば、上記本発明の実施形態から、本発明の高純度の硫酸溶液の調製方法によれば、大気圧で加熱して、三酸化硫黄、硫酸及び水を含む第1ガスを取得し、且つ硫酸溶液によって第1ガスを吸収して、高純度の硫酸溶液を形成するメリットがあることが判明した。廃液の排出を減少し、硫酸廃液の処理コストを大幅に低減させるだけでなく、純化により得られた高純度の硫酸溶液が、また半導体産業や他の工業プロセスに再利用されることができる。
【0091】
また、蒸留工程を行う前に、本発明の混合溶液に触媒材料を選択的に加え、過酸化水素を分解して、混合溶液中の硫酸の濃度を向上させ、後の純化工程のエネルギーコスト及び時間コストを更に低減することができる。
【0092】
本発明を実施例で前述の通り開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0093】
100 高純度の硫酸溶液の調製方法
110〜170 工程
200 システム
210 原料槽
210a 供給口
210b 吐出口
212 吐出ポンプ
220 第1硫酸純化装置
222 第1予熱槽
222a 第1パイプ
224 第2予熱槽
224a 第2パイプ
226 蒸留塔
226a 第3パイプ
228 凝縮装置
228a 第7パイプ
228b 第1廃液槽
228c 第2冷却器
230 第2硫酸純化装置
232 蒸発塔
232a 第4パイプ
233 第2冷却器
233a 第8パイプ
233b 第2廃液槽
234 吸収塔
234a 第5パイプ
234b 熱交換器
234c 濃度コントローラ
235 循環ポンプ
236 脱ガス塔
238 第1冷却器
240 収集槽
240a 第6パイプ
図1
図2