特許第6231428号(P6231428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231428Li含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231428
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】Li含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20171106BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20171106BHJP
   C04B 35/01 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
   C04B37/02 B
   C04B35/01
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-92534(P2014-92534)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2014-231639(P2014-231639A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-95696(P2013-95696)
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武富 雄一
(72)【発明者】
【氏名】金丸 守賀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎太郎
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/086650(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/142289(WO,A1)
【文献】 特開2012−136417(JP,A)
【文献】 特表2011−521421(JP,A)
【文献】 特開平11−157844(JP,A)
【文献】 特開2010−202930(JP,A)
【文献】 特許第3152108(JP,B2)
【文献】 特開2012−020911(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086557(WO,A1)
【文献】 特開平11−049562(JP,A)
【文献】 特開2000−239838(JP,A)
【文献】 特開2013−53324(JP,A)
【文献】 特開2002−146523(JP,A)
【文献】 特開2002−69627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C04B 35/01
C04B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li含有酸化物スパッタリングターゲットとバッキングプレートが、ボンディング材を介して接合されたターゲット接合体において、
前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの曲げ強度が20MPa以上であり、
前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートを貼り合わせた後の、前記Li含有酸化物スパッタリングターゲット端面と前記バッキングプレート端面との距離である基準位置からのずれが1.0mm以下であることを特徴とするLi含有酸化物ターゲット接合体。
【請求項2】
前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗の平均値は100Ω・cm以下であり、最大値は1000Ω・cm以下である請求項1に記載のLi含有酸化物ターゲット接合体。
【請求項3】
前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットに含まれるC量およびSi量は、いずれも0.01質量%未満に抑制されたものである請求項1または2に記載のLi含有酸化物ターゲット接合体。
【請求項4】
前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの表面粗さRaが0.1μm以上、3.0μm以下である請求項1〜のいずれかに記載のLi含有酸化物ターゲット接合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のLi含有酸化物ターゲット接合体を製造する方法であって、液体の水およびアルコールを使用しない条件下で製造することを特徴とする、Li含有酸化物ターゲット接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li含有酸化物スパッタリングターゲットとバッキングプレートが、ろう材などに代表されるボンディング材を介して接合されたLi含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルト酸リチウムなどのLi含有遷移金属酸化物や、リン酸リチウムなどのLi含有リン酸化合物などのLi含有酸化物を用いた薄膜二次電池は、充放電可能で、且つ、薄型軽量である。そのため、薄膜太陽電池や、薄膜熱電素子、無線充電素子などの各種デバイスと組み合わせて用いられるほか、例えばクレジットカードなどへの電力源としても用いられ、その需要が急速に高まっている。
【0003】
Li含有酸化物薄膜の製造には、当該薄膜と同じ材料のスパッタリングターゲットをスパッタリングするスパッタリング法が好適に用いられている。スパッタリング法によれば、成膜条件の調整が容易であり、スパッタリングターゲットと同一組成の薄膜を大面積の基板上に容易に成膜できるなどの利点がある。
【0004】
一般に、スパッタリング法に用いられるスパッタリングターゲットは、バッキングプレートにはんだなどのボンディング材でボンディングされたターゲット接合体の状態で用いられる。バッキングプレートは支持体と呼ばれる。また、はんだなどのろう材でボンディングすることはろう付けと呼ばれる。
【0005】
図1および図2に、一般的なターゲット接合体21の概略図を示す。図1は、ターゲット接合体の平面図であり、図2は、図1のA−A線拡大縦断面図である。図1および図2では、複数のスパッタリングターゲット24a〜24dを配置している。これは、スパッタリング法による大型基板への成膜の需要増加に伴ってスパッタリングターゲットの大きさも大型化する傾向にあるが、スパッタリングターゲットによっては大型化が難しいものもあるためである。
【0006】
図1のターゲット接合体21は、4枚のスパッタリングターゲット24a〜24dと、これらを固定(支持)するバッキングプレート23と、複数のスパッタリングターゲット24a〜24dとバッキングプレート23とを接合するボンディング材31a〜31cとで構成されている。複数のスパッタリングターゲット24a〜24dの間には、バッキングプレート23のたわみにより隣接するスパッタリングターゲット同士が接触して欠陥が生じないように、隙間Tが設けられている。複数のスパッタリングターゲット24a〜24dの隙間Tの裏側(ボンディング材31a側)には、隙間Tを塞ぐように、裏打ち部材25が必要に応じて設けられている。スパッタリングターゲット24a〜24dとバッキングプレート23との間には、均一な隙間Tを形成することができるようにスペーサー32が配置されている。裏打ち部材は当板とも呼ばれる。
【0007】
これらのうちバッキングプレート23は、上述したようにスパッタリングターゲット24a〜24dを支持する目的のほか、成膜時に加熱されたスパッタリングターゲット24a〜24dを冷却するなどの目的で用いられる。そのためバッキングプレート23には、一般に熱伝導率の高い純Cu製、Cu合金製、純Al製またはAl合金製、純Ti製の金属材料が汎用されている。バッキングプレート23の上に取り付けられるスパッタリングターゲット24a〜24dは、形成される薄膜に応じた金属材料から構成される。また、スパッタリングターゲット24a〜24dとバッキングプレート23を接合するボンディング材31a〜31cとしては、熱伝導性と導電性が良好な低融点はんだ材料であるIn基はんだ、Sn基はんだなどの金属などや、エラストマーなどの弾性材料が一般に用いられている。
【0008】
ターゲット接合体21は、焼結体を機械加工して得られるスパッタリングターゲット24a〜24dと、バッキングプレート23の間に、ボンディング材31a〜31cを配置した後、加熱処理してボンディング材を溶融させてスパッタリングターゲットとバッキングプレートを融着して貼り合わせ(ボンディング加工)、この状態で室温まで冷却することによって得られる。
【0009】
ところが、スパッタリングターゲットとバッキングプレートが異なる材料の場合、熱膨張率に差があるため、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの熱膨張後の収縮差や、ボンディング材の凝固収縮によって生じる応力など、加熱処理や冷却過程に起因してターゲット接合体に反りが生じる。ターゲット接合体に反りが生じると、スパッタリングターゲットが割れたり、反ったターゲット接合体をスパッタ装置に取り付けることが困難となって割れたりするなどの問題が生じる。このような、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの熱膨張差による反りを抑制するため、一般的に、ボンディング後、室温まで冷却した後に矯正を行なったり、室温までの冷却過程において拘束を行なったりし、ターゲット接合体を平坦化させている。上記矯正方法として、例えば、接合体に生じた反りを相殺する方向に機械的に力を加える方法が挙げられる。また、上記拘束方法として、例えば、錘をおいたり、クランプしたりする方法が挙げられる。しかしながら、一旦、反ったターゲット接合体を矯正により平坦にすると、残留応力によりスパッタ中またはライフエンド近くで反りが再発し、ターゲットの割れやパーティクルの発生が生じ易い。その結果、成膜歩留まりが著しく低下してしまう。
【0010】
本発明で対象とするLi含有酸化物スパッタリングターゲットを用いたLi含有酸化物ターゲット接合体においても、Al系やCu系のバッキングプレートとの熱膨張率差により、ターゲット接合体の反りや割れなどが大いに懸念されるが、上記課題解決のために提案された技術はない。
【0011】
例えば特許文献1には、高密度で平均結晶粒径が適切に制御されたLi含有遷移金属酸化物ターゲットが開示されており、これにより、得られる膜の成分組成に変動が生じず、均一で安定したスパッタ膜が得られる旨記載されている。
【0012】
一方、Li含有酸化物ターゲット接合体以外のターゲット接合体における反りや割れを防止する技術として、例えば特許文献2が挙げられる。
【0013】
特許文献2は、特にセラミックスターゲットを対象とし、セラミックスターゲットのバッキングプレートへのボンディングまたは使用中に発生するターゲットの反りや割れを効果的に低減または防止する技術に関する。特許文献2では、「セラミックスのような脆性材料では機械的な矯正や変形を与える過程で材料強度以上の機械的応力を負荷してしまうことによって、かえって割れを発生する場合がある。」との事情に鑑みてなされたものであり、セラミックスターゲットの製造工程において割れが発生し易い方向があるという特有の現象を見出し、セラミックス材料の機械加工の研削方向を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO2008/012970号パンフレット
【特許文献2】特開2001−26863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように特許文献2は、セラミックス材料に特有の現象を考慮して開示された技術であって、本発明のようなLi含有酸化物を用いたターゲット接合体に直ちに適用できるものではない。また、上記特許文献1では、Li含有酸化物ターゲット接合体の反りなどの防止は、全く言及していない。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、Li含有酸化物スパッタリングターゲットと、Al系やCu系などのバッキングプレートとを、ボンディング材を介してターゲット接合体とする際の反りや割れの発生を抑制し得るLi含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決し得た本発明のLi含有酸化物ターゲット接合体は、Li含有酸化物スパッタリングターゲットとバッキングプレートが、ボンディング材を介して接合されたターゲット接合体において、前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの曲げ強度が20MPa以上であり、前記Li含有酸化物スパッタリングターゲットと前記バッキングプレートを貼り合わせた後の、前記Li含有酸化物スパッタリングターゲット端面と前記バッキングプレート端面との距離である基準位置からのずれが1.0mm以下であるところに要旨を有する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、上記Li含有酸化物ターゲット接合体は、液体の水およびアルコールを使用しない条件下で製造されたものである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、上記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗の平均値は100Ω・cm以下であり、最大値は1000Ω・cm以下である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、上記Li含有酸化物スパッタリングターゲットに含まれるC量およびSi量は、いずれも0.01質量%未満に抑制されたものである。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、上記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの表面粗さRaは0.1μm以上、3.0μm以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、Li含有酸化物スパッタリングターゲットと、Al系やCu系などのバッキングプレートとを、ボンディング材を介してターゲット接合体とする際の反りや割れの発生を効果的に抑制し得るLi含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一般的なターゲット接合体の構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のA−A線拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明に到達した経緯について説明する。
【0025】
本発明者らは、反りや割れの少ないLi含有酸化物ターゲット接合体を提供するため、鋭意検討を重ねてきた。その結果、本発明のようにLiを含むスパッタリングターゲットを用いた場合、Li以外の金属系スパッタリングターゲットや、特許文献2に記載のセラミックス系スパッタリングターゲットを用いた場合に比べ、以下に示すように種々の点で異なる挙動が見られることが判明した。
【0026】
(i)反りが発生したLi含有酸化物ターゲット接合体に対し、スパッタリングターゲットの反りを抑制するための矯正処理や拘束を行なうと、スパッタリングターゲットが割れ易くなった。
【0027】
(ii)Li含有酸化物スパッタリングターゲットを用いてスパッタする際、スパッタ面からの再付着膜の堆積が非常に多かった。再付着膜は、Arなどのスパッタガスによりスパッタリングターゲットから叩き出された粒子が、スパッタリングターゲットの非エロージョン部分に再付着して形成されるものである。再付着膜がスパッタリングターゲットのエロージョン部分に侵入するとアーキングの原因になる。また、再付着膜がスパッタ中に剥がれると、パーティクルとなり、成膜歩留まりの低下を招く。
【0028】
(iii)Liを含むターゲットは、他のセラミックス材料に比べて熱膨張係数が大きい。例えば、Li含有酸化物の代表例であるコバルト酸リチウムは10.6×10-6/℃、リン酸リチウムは14.4×10-6/℃であるのに対し、ZnOは5.3×10-6/℃である。
【0029】
(iv)ボンディング加工の際、金属系ターゲットと同様の処理を行なってもスパッタ中にLi含有酸化物ターゲットが剥がれることが判明した。この現象は、Li含有酸化物ターゲットとバッキングプレートとの接合率を高めても見られることが判明した。
【0030】
(v)比抵抗が低いLi含有酸化物スパッタリングターゲットをボンディングして接合体に加工すると、当該スパッタリングターゲット表面の比抵抗が増加し、成膜後に異常放電を起こすことが判明した。異常放電が起こると、スパッタリングターゲットの割れやパーティクルが発生する。
【0031】
そこで、上記の現象が起る原因を究明するため、更に検討を行なった。その結果、Liを含むスパッタリングターゲットは吸湿性が非常に高く、一旦、水分を吸湿したスパッタリングターゲットは脆くなり、吸水によって機械的強度が顕著に低下するため、当該スパッタリングターゲットとバッキングプレートの熱膨張差による反りを抑制するための矯正や拘束により、割れ易くなることを突き止めた。この現象はLiを含むターゲットに特有のものである。
【0032】
また、ボンディング接合後におけるLi含有酸化物スパッタリングターゲット表面の比抵抗の増加は、上記スパッタリングターゲット中に含まれる不純物元素であるSiおよびCのコンタミによって引き起こされることを突き止めた。
【0033】
そこで更に検討を重ねた結果、Li含有酸化物ターゲット接合体を得るまでの一連の工程を、非水系の条件下である吸湿し難い環境下に制御したり、吸湿した水分がLi含有酸化物スパッタリングターゲットに再付着したりしないように制御する方法が有効であることが判明した。このようにして吸湿を抑えることにより、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの強度は低下せず高いレベルで維持され、当該ターゲット接合体の反りや割れを著しく低減できることが分かった。更に、Li含有酸化物スパッタリングターゲットのマスキング工程や、上記ターゲットとバッキングプレートを接合するボンディング工程などに用いられる部材;例えば耐熱テープなどのマスキングテープや、シリコーンゴムシートなどの緩衝材を使用しない場合は、スパッタリングターゲット中に含まれるSi、Cのコンタミ量が低減され、ボンディング接合後におけるLi含有酸化物スパッタリングターゲット表面の比抵抗の増加も抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0034】
本発明において、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの吸湿を抑える方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0035】
一般にターゲット接合体は、品質検査なども含めると以下の工程を経て製造される。
(1)粉末原料を焼結して焼結体(本発明ではLi含有酸化物焼結体)を得る工程
(2)上記の焼結体に対し、冷却水をかけながら機械加工してスパッタリングターゲット(本発明ではLi含有酸化物ターゲット)を得る工程
(3)このようにして得られたスパッタリングターゲットと、バッキングプレートを接合する工程
(4)接合の後、室温まで冷却した後に矯正したり、室温まで冷却中に拘束したりしてターゲット接合体を得る工程
(5)このようにして得られたターゲット接合体の品質を検査するため、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合率を測定する工程
(6)ターゲット接合体の外観に付着したろう材や酸化物を、研磨するなどして除去する工程
(7)ターゲット接合体を、アルコールなどを用いて洗浄する工程
【0036】
上記(1)〜(7)の工程のうち、水が関与する工程としては(2)、(5)、(7)が挙げられる。例えば(5)の工程では、一般に水浸超音波探傷による検査が行なわれるため、スパッタリングターゲットは水に濡れ、探傷中は水に浸漬した状態となる。よって、これらの工程は、できるだけ水やアルコールなどを使用せず非水系の条件下で行なうことが推奨される。すなわち、(2)の工程は、水を使わない乾式加工を行なうこと、(5)の工程では、水に濡れないような接合率検査を行なうこと、(7)の工程では、アルコールを使わないこと、などが挙げられる。更には、上記(3)の工程では、仮焼きを行なうことも推奨される。
【0037】
ここで「非水系の条件下」とは、液体の水およびアルコールを使用しない条件下を意味する。本発明では、ターゲット接合体を製造するための上記一連の工程のうち、液体の水およびアルコールが関与する工程の少なくとも一つ以上を上記「非水系の条件下」で行なう。最も好ましくは、水およびアルコールが関与する全ての工程を、上記「非水系の条件下」で行なう。
【0038】
具体的には、まず上記(2)の工程において、液体の水を用いない乾式加工を行なうことが推奨される。水を用いないこと以外は、従来の湿式加工と同じである。また、使用する加工機の種類は限定されず、湿式加工に用いられる加工機をそのまま使用することができる(後記する実施例を参照)。
【0039】
次に、上記(3)の工程において、ボンディング材を配置する前に、Li含有酸化物スパッタリングターゲットを仮焼きすることが推奨される。これにより、一旦吸湿した水分を除去することができる。仮焼きは、ボンディング材を配置する直前に行なうことが推奨される。
【0040】
仮焼きの具体的な方法は、使用するLi含有酸化物スパッタリングターゲットの種類や上記スパッタリングターゲットの寸法などによっても相違する。例えば、ボンディング材としてろう材を用いる場合、ろう材を塗布する前のホットプレート上での加熱を行なうに当たり、室温から仮焼き温度までの平均昇温速度を、おおむね1.5〜2.0℃/分で行なうことが推奨される。また、仮焼きは、おおむね180±20℃の温度で、おおむね30分以上、120分以下の範囲で行なうことが推奨される。仮焼き条件が上記の範囲を下回ると、仮焼きの効果が得られず、再度吸湿してスパッタリングターゲット接合面からの気泡の発生が増加する。また、仮焼き条件が上記の範囲を超えると、熱によるスパッタリングターゲットの酸化が顕著になり、スパッタ特性が悪化する。
【0041】
また、Liは熱膨張係数が大きく、スパッタ中の熱による膨張によるスパッタリングターゲット同士の隙間部での干渉を抑えて割れやパーティクルの発生を防止することが必要である。そのためには、ボンディング加工の後、室温まで冷却するに当たり、所望とするスパッタリングターゲット間の隙間の幅(スパッタリングターゲット間の隙間部、詳細は後述する)を確保できるように、冷却時にスペーサーを挿入するなどして所望の隙間を確保させ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの貼り合わせ完了温度から室温までの平均冷却速度を、おおむね15℃/時間以上、50℃/時間以下に制御することが推奨される。これにより、スパッタリングターゲットだけの収縮を抑えることができ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートが追随して収縮するようになる。平均冷却速度が上記範囲を上回るとサーマルショックによってターゲットが割れ易くなる。また、熱収縮が顕著となり位置ずれ(以下で後述する)が制御できなくなる。一方、平均冷却速度が上記範囲を下回ると、熱によるスパッタリングターゲットの酸化が顕著になり、スパッタ特性が悪化する。
【0042】
また、上記(3)の工程において、スパッタリングターゲットとバッキングプレートを貼りあわせた後に、Li含有酸化物スパッタリングターゲット同士の高低差を抑えて均一にするために(詳細は後述する。)、Li含有酸化物ターゲット接合体の上に、おおむね、0.02kg/cm2以上、0.05kg/cm2以下の応力を加えることが推奨される。応力付与手段としては、例えば、Li含有酸化物ターゲット接合体の上に錘を置いたり、Li含有酸化物ターゲット接合体をクランプで固定したりするなどの方法が挙げられる。応力が上記範囲を下回ると、ボンディング材(ろう材)の厚みを均一化できずに、Li含有酸化物スパッタリングターゲット同士の高低差が大きくなる。一方、応力が上記範囲を超えると、Li含有酸化物ターゲット接合体が応力に耐え切れずに割れてしまう。
【0043】
また、上記(3)の工程において、ろう材の付着を防止するためにターゲットのスパッタ面および側面を覆うのに用いられる耐熱テープなどのマスキングテープや、ホットプレート上にスパッタリングターゲットを置くための緩衝材として使われるシリコーンゴムシートなどの部材を使用しないことが推奨される。これにより、Li含有酸化物スパッタリングターゲット中に含まれるSi、Cのコンタミ量を低減することができる。
【0044】
更には、上記(5)および(7)の工程のように、ターゲット接合体の製造後、その品質改善や品質検査のための各工程においても、極力、非水条件下で行なうことが推奨される。
【0045】
以下、本発明について詳述する。
【0046】
(曲げ強度)
本発明は、Li含有酸化物スパッタリングターゲットとバッキングプレートが、ボンディング材を介して接合されたLi含有酸化物ターゲット接合体において、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの曲げ強度が20MPa以上である点に特徴がある。前述したように本発明では、非水系にて上記ターゲット接合体を製造しているため、ターゲットの材料強度が大きくなる。その結果、その後の矯正においてもターゲットが割れることなく、反り(後記する。)を低減することができる。
【0047】
上述した割れなどを考慮すると、上記Li含有酸化物スパッタリングターゲットの曲げ強度は高いほど良く、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上である。
【0048】
本発明において「Li含有酸化物」とは、少なくともLiと酸化物が含まれていれば良い。代表的には、Li含有遷移金属酸化物(遷移金属として例えばCo、Mn、Ni、Fe)、Li含有リン酸化合物(例えばリン酸リチウム)、Li含有ホウ酸化合物(例えばホウ酸三リチウム)などが挙げられる。本明細書では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットを、単にLi系ターゲットと略記する場合がある。
【0049】
(反り)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体の反りは小さいほど良く、Li含有酸化物ターゲット接合体の全長(mm)に対して1.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは1.0mm/全長mm以下、更に好ましくは0.5mm/全長mm以下である。
【0050】
前述したようにターゲット接合体の反りが生じると、ターゲットが割れ易くなり、放電異常およびパーティクルの発生による成膜歩留まり低下を招く。本発明によれば、反りの少ないLi含有酸化物ターゲット接合体が得られるため、上記問題を解消できる。
【0051】
本発明では、Li含有酸化物ターゲット接合体を構成するLi含有酸化物スパッタリングターゲットの大きさは何ら限定されず、例えば、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの長辺が300mm以上の大きいものを用いることもできる。また、Li含有酸化物スパッタリングターゲット材の形状も特に限定されず、長方形状、円盤状などの平板状のものが使用される。
【0052】
(位置ずれ)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体の位置ずれ(ターゲット接合体の基準位置からのずれ、詳細は後述する。)は少ない程良く、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。上記位置ずれ上記範囲を超えると、スパッタ面に対する再付着膜の堆積面積率が50%以上となり、膜欠陥が増加し、成膜歩留まりが低下する。
【0053】
ここで、ターゲット接合体の基準位置について説明する。一般に、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの両方の接合面にろう材を塗布して接合した後、ろう材が冷えて固まる前に、基準位置に対して位置決めを行なう。基準位置とは、バッキングプレート端面とスパッタリングターゲット端面からの距離であり、上記の位置ずれは、対向するバッキングプレートとスパッタリングターゲットの端面同士の距離のずれを測定することによって判定する。この位置ずれは、前述したように、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの貼り合わせ完了温度〜室温までの平均冷却速度を制御することによって調節することができる。平均冷却速度が上記範囲を上回るとサーマルショックによってターゲットが割れる。また、熱収縮が顕著となり位置ずれが制御できなくなる。一方、平均冷却速度が上記範囲を下回ると、熱によるスパッタリングターゲットの酸化が顕著になり、スパッタ特性が悪化する。
【0054】
(隙間の幅)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体は、前述した図1に示すように、2枚以上の複数のLi系ターゲットから構成されていても良い。その場合、Li系ターゲット同士の隙間の幅(Li系ターゲット間の隙間部)は、0.1mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。
【0055】
隙間の幅を上記範囲に限定した理由は以下のとおりである。一般にスパッタリングターゲット間の隙間部では、スパッタリングターゲットを構成する成分以外のもの(例えば、ろう材、バッキングプレート)がスパッタされるため、スパッタリングターゲット間の隙間部は出来るだけ狭い方が良い。しかし、スパッタリングターゲット同士を突き合わせてスパッタすると、スパッタ中の熱でスパッタリングターゲットが膨張し接合部に割れが発生し、パーティクル発生による成膜歩留まりが低下する。前述したようにLi系ターゲットは、セラミックス材料などに比べて熱膨張係数が大きいため、スパッタ中の熱による膨張によって当該ターゲット同士が隙間部で干渉することによって割れやパーティクルが生じることが判明した。パーティクルの発生を抑制するためには、上記のとおり、Li系ターゲット間の隙間部は0.1mm以上であることが好ましい。但し、Li系ターゲット間の隙間が大きくなり過ぎると、隙間部から隙間に対向する基板へ不純物としてスパッタされ、成膜される膜の品質不良を招くため、その上限を0.5mm以下にすることが好ましい。
【0056】
上記範囲の隙間部を得るためには、前述したとおり、ボンディング冷却時にスペーサーを挿入するなどして隙間を確保させ、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの貼り合わせ完了温度から室温までの平均冷却速度を15℃/時間以上、50℃/時間以下に制御することが推奨される。これにより、Li系ターゲットだけの収縮を抑えることができ、Li系ターゲットとバッキングプレートが追随して収縮するようになる。平均冷却速度が上記範囲を下回ると隙間部が大きくなり、またサーマルショックによってLi系ターゲットが割れる。一方、平均冷却速度が上記範囲を超えると、隙間部が小さくなる。
【0057】
(Li含有酸化物スパッタリングターゲット同士の高低差)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体が2枚以上のLi系ターゲットからなる場合、Li系ターゲット同士の高低差は±0.5mm以下であることが好ましい。
【0058】
上述したとおりLi系ターゲットは吸湿性が高いため、スパッタチャンバー内で吸湿した水分を放出する。Li系ターゲット同士の高低差が大きいと、放出した水分がチャンバーから排出される前に、当該水分が、高低差の高いターゲットの隙間部エッジへ再付着する。そのため、エッジでの放電安定性が損なわれ、エッジの欠けによるパーティクルが発生し、成膜歩留まりが低下する。
【0059】
Li系ターゲット同士の高低差を上記範囲内に均一にするためには、前述したように、ターゲット接合体の上に所定の応力を加えることが推奨される。
【0060】
(スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合率)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体の接合率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。ここで接合率とは、バッキングプレートと接合されるスパッタリングターゲットの面において、上記面全体の面積に対する、Inと密着している部分の面積の割合を指す。
【0061】
上記の限定理由は以下のとおりである。Li系ターゲットは吸湿性が高く、ボンディングの際にターゲットを加熱すると、吸湿した水分を放出するため、ろう材中に気泡が発生し、接合率を低下させることが分かった。接合率が低くなると、スパッタ中のターゲットの冷却効率が低下し、Li系ターゲット中に冷却不良が生じる。本発明者らの実験によれば、スパッタ中の熱により、冷却不良を起こした箇所に割れが発生しパーティクルの発生による成膜歩留まりの低下を起こすことが分かった。
【0062】
接合率を上記範囲まで高めるためには、上述したように、吸湿した水分を除去するために、ボンディングの前に所定の仮焼きを行なうことが有効である。これにより、ろう材中への気泡の発生が抑制され、接合率を90%以上に高めることができる。
【0063】
(ろう材の厚み)
ボンディング材としてろう材を用いる場合、ろう材の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上である。
【0064】
上記のとおり、仮焼きにより、吸湿し易いLi系ターゲット中の水分を放出することができるが、本発明者らの検討結果によれば、ろう材の厚みが0.1mm未満になると、気泡によってろう材がはじかれ、接合率が低下することが判明した。上述した仮焼きを行ない、且つ、ろう材の厚みを0.1mm以上とすることによって、接合率の低下を抑えることができる。なお、ろう材の厚みの上限は、引け巣の起こらない範囲であれば特に限定されない。
【0065】
(ボンディング後のLi含有酸化物スパッタリングターゲットの表面粗さRa)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体において、ボンディング後のLi系ターゲット表面粗さRaが0.1μm以上であることが好ましい。Raは、JIS B 0601:2001に基づき算出される。
【0066】
一般にターゲットの表面粗さRaが大きくなると、アーキングの起点となり、成膜安定性が損なわれるため、Raは出来るだけ小さく、表面が平滑であることが好ましい。しかし、本発明で対象とするLi系ターゲットは吸湿性が高く、スパッタチャンバー内で、吸湿した水分を放出する。そのため、Raが0.1μmを下回ると、スパッタ面の比表面積が低下し、十分な水分の放出が起こらず、初期放電の異常を引き起こすことが、本発明者らの実験結果によって判明した。Raを0.1μm以上に制御することによって、水分の放出に十分な比表面積が得られ、安定した放電を維持することができる。
【0067】
上記のようにRaを制御する方法は特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。具体的には、例えば、機械加工によるスパッタ面の仕上げ方法やボンディング後のターゲット表面を振動研磨機で研磨する際、不織布などを用いて調整する方法などが挙げられる。
【0068】
(接合面に存在する酸化In層の厚み)
本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体において、ろう材としてIn基はんだを用いた場合、Li系ターゲットの接合面における酸化In層の厚みは、好ましくは100μm以下である。
【0069】
ここで、酸化In層を制御した理由について説明する。本発明者らの検討結果によれば、Li系ターゲットとバッキングプレートとの接合率が非常に高い場合(例えば90%以上、更には95%以上)であっても、スパッタ中に、Li系ターゲットが剥がれたり、ろう材の溶け出しが起こって異常放電が生じる場合があることが分かった。これは、Li系ターゲットの吸湿性が高いため、ボンディング時にターゲットを加熱すると水分の放出が起こる。このとき、ろう材として用いたIn中に水蒸気が含まれると、Li系ターゲット界面近傍に酸化Inの層が全面に渡って存在するようになる。その結果、たとえ、見かけ上の接合率は良好であってもスパッタ中の冷却効率が落ち、スパッタ中にLi系ターゲットが剥がれ、異常放電を生じることが分かった。そこで更に検討を行なった結果、上記の酸化In層を100μm以下に低減すれば上記問題を解消できること;そのためには、ボンディング材による接合の前に所定の仮焼きを行なうことが有効であることが分かった。
【0070】
(ターゲット接合体に加工したときのLi含有酸化物スパッタリングターゲット中のSi、Cの含有量)
上記Si量およびC量は、いずれも0.01質量%未満に制御されていることが好ましい。これにより、ボンディング後における上記ターゲットの比抵抗の増加が抑えられる。以下、この点について、詳しく説明する。
【0071】
スパッタリングターゲットをボンディング加工してターゲット接合体を得る場合、一般に上記スパッタリングターゲットのスパッタ面および側面は、ろう材が付着しないようにアルミホイルなどのマスキング材で覆われる。このマスキング材は、耐熱テープ、カプトンテープなどのマスキングテープで固定されることもある。また、セラミックス系スパッタリングターゲットのような割れやすい材料の場合、サーマルショックによるボンディング中の割れを防止するため、例えばホットプレート上に緩衝材としてシリコーンゴムシートなどを使用し、その上にスパッタリングターゲットを置くことがある。或いは、上述したサーマルショックによる割れを防止するため、温度制御のためにアルミホイルなどの保温カバーを設ける場合もある。
【0072】
ところが、こうして得られたターゲット接合体をスパッタすると、異常放電によって割れることが分かった。本発明者らがその原因を調査した結果、スパッタリングターゲット表面の比抵抗が著しく上昇していることが分かった。更にその原因を詳しく調査した結果、Li系ターゲットでは、マスキングテープやシリコーンゴムシートなどが接触した面にSiおよびCがコンタミすることにより、上記ターゲット表面の比抵抗が上昇することが判明した。その理由は詳細には不明であるが、Cのコンタミは、Li系ターゲット表面に絶縁性物質の炭酸リチウムLi2CO3が生成することが考えられる。また、Siのコンタミは、Li系ターゲット表面でSiがシロキサン成分に変化することが考えられる。そこで、SiやCのコンタミを誘発するマスキング材や緩衝材などの部材は使用しないことにした。これにより、コンタミのないLi含有酸化物ターゲット接合体を得ることができる。
【0073】
本発明によれば、上記方法を採用することにより、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗の平均値を、例えば100Ω・cm以下、上記比抵抗の最大値を例えば1000Ω・cm以下に低減することができる。上記比抵抗は、後記する実施例に記載の方法で測定される。
【0074】
以上、本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体について詳述した。
【0075】
本発明の特徴部分は、Li系ターゲットの高い吸湿性を考慮し、その製造工程を出来るだけ吸湿し難い条件下で行なうことによって、Li系ターゲットの曲げ強度の低下を防止して高いレベルを確保し、その結果、Li含有酸化物ターゲット接合体の反りや割れなどを防止したところにある。また、本発明の他の特徴部分は、ろう材の付着を防止するために用いられるマスキングテープや、緩衝材として使われるシリコーンゴムシートなどの部材を使用しないことで、Li含有酸化物スパッタリングターゲット中に含まれるSi、Cのコンタミ量を低減して、ボンディング後におけるターゲット表面の比抵抗の増加を抑制したところにある。よって、本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体を構成する各要件は、通常用いられるものであれば特に限定されない。
【0076】
以下、前述した図1および図2を参照しながら本発明に用いられる好ましい構成要件を説明する。但し、本発明の構成は図1に限定する趣旨では決してない。例えば図1では、裏打ち部材25を用いたが、省略することもできる。
【0077】
バッキングプレート23は、各種公知のものを用いることができる。耐熱性、導電性、熱伝導性に優れたバッキングプレートとして、銅、各種銅合金、アルミニウム、各種アルミニウム合金などが用いられる。
【0078】
ボンディング材31a〜31cとしては、代表的にはIn基材料またはSn基材料などの低融点はんだ材料、エラストマーなどの弾性材料が用いられる。これらのうち、In基材料としては、例えば、Inなどが挙げられる。Sn基材料としては、例えばSn−Zn合金などが挙げられる。好ましくはIn基材料である。図2において、ボンディング材31a〜31cは、同一または異なる低融点ハンダボンディング材を使用しても良いが、作業効率などを考慮すると、同じ材料を用いることが好ましい。
【0079】
スパッタリングターゲット24a〜24dの間に設けられた隙間Tの幅は、使用するLi系ターゲット、ボンディング材31a〜31c、バッキングプレートプレート23の種類やサイズなどに応じて適切に設定されることが好ましい。おおむね、0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0080】
スペーサー32は、スパッタリングターゲット24a〜24dとバッキングプレート23との間に、均一な隙間を形成することができるように配置されるものである。スペーサーは、導電性や熱伝導性に優れたものであれば特に限定されず、スパッタリングターゲットの分野に通常用いられるものであれば、すべて使用することができる。スペーサー32としては、例えばCuワイヤなどが挙げられる。
【0081】
裏打ち部材25は、各ターゲット部材の隙間からボンディング材が漏出しないように、隙間Tの裏側(ボンディング側、バッキングプレートに対向する側)に設けられる。裏打ち部材25としては、導電性や熱伝導性に優れており、スパッタリングターゲットの分野に通常用いられるものを用いることができる。
【0082】
また、本発明に係るLi含有酸化物ターゲット接合体の製造方法は、上述した工程に留意すること以外は、通常、用いられる方法を採用することができる。
【0083】
例えば、Li含有酸化物焼結体を製造する方法として、酸化物の粉末原料を用意し、黒鉛型の成形型にセットし、ホットプレスによる焼結を行なう方法が挙げられる。黒鉛型への充填に当たっては、後記する実施例のように、上記原材料粉末を予備成形することなく直接、充填しても良い。或いは、上記原材料粉末を別の金型に一旦充填し、金型プレスで予備成形した後、黒鉛型に充填しても良い。ここで予備成形は、ホットプレス工程で所定の型にセットする際のハンドリング性を向上させる目的で行なわれるものであり、例えば、約0.5〜1.0tonf/cm2程度の加圧力を加えて予備成形体とすることが好ましい。好ましいホットプレス条件は、焼結温度:700〜1000℃、保持時間:100時間以下、焼結中の雰囲気:真空、窒素などである。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0085】
実施例1
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体およびリン酸リチウム(Li3PO4)焼結体を用い、以下のようにして曲げ強度を測定した。更に、各焼結体を用いて製造したターゲット接合体の反りを以下のようにして測定した。
【0086】
(酸化物焼結体の作製)
コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を以下のようにして製造した。
【0087】
原料粉末として、市販のLiCoO2粉末(純度99.99%以上、平均粒径10μm
以下の微粒材)を用いた。
【0088】
上記の原材料3kgを予備成形することなく直接、黒鉛型の成形型にセットし、ホットプレスによる焼結を行ない、酸化物焼結体を得た(サイズ:φ300mm)。ホットプレス条件は、焼結温度:930℃、保持時間:1.5時間、焼結中の雰囲気:真空または窒素、面圧は300kgf/cm2とした。
【0089】
リン酸リチウム(Li3PO4)焼結体を以下のようにして製造した。
【0090】
原料粉末として、市販のLi3PO4粉末(純度99.9%以上、平均粒径5μm以下)を用いた。
【0091】
上記の原材料1.5kgを予備成形することなく直接、黒鉛型の成形型にセットし、ホットプレスによる焼結を行ない、酸化物焼結体を得た(サイズ:φ300mm)。ホットプレス条件は、焼結温度:920℃、保持時間:1.5時間、焼結中の雰囲気:真空、面圧は250kgf/cm2とした。
【0092】
このようにして得られたコバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体およびリン酸リチウム(Li3PO4)焼結体に対し、大気雰囲気下にて、以下の湿式加工または乾式加工を行なった。
【0093】
(a)湿式加工
上記の各酸化物焼結体を平面研削盤にて所定の厚み(3mm)へ研削し、次に平面研削盤を用いて所定の寸法(幅4mm、全長50mm)となるように切断した。湿式加工では、一連の研削、切断、最終仕上げ工程において、酸化物焼結体に冷却水をかけながら行なった。
【0094】
(b)乾式加工
上記(a)の湿式加工において、一連の工程において冷却水を使用せずに行なったこと以外は、上記(a)と同様の加工を行なった。
【0095】
次に、このようにして得られた各酸化物焼結体の曲げ強度を、JIS R 0601:2001に準拠して測定した。詳細には、曲げ強度測定用試料として、全長50mm、幅4mm、厚さ3mmのサイズのものを用意し、精密万能試験機(インストロン製5584型)を用い、試験速度0.5mm/min、試験温度:室温、下部スパン:30mmで曲げ強度を測定した。
【0096】
(ターゲット接合体の作製)
上記のようにして得られた各焼結体を表1の条件で加工し、厚さ6mm×短辺110mm×長辺170mmのスパッタリングターゲットに加工した。このようにして得られた各スパッタリングターゲットをホットプレートへ載せて、2℃/分の平均昇温速度で表面温度が180±10℃になるまで仮焼きした後、上記温度で30分保持した。昇温中はスパッタリングターゲットの表面温度を制御するために、保温カバーとしてアルミ箔をかぶせた。次に、スパッタリングターゲットの接合面側へInを塗布し、Inを塗布した冷却板と貼り合わせた後、28.8℃/時間の平均冷却速度で室温まで冷却してターゲット接合体を得た。このようにして得られたターゲット接合体のスパッタ面を定盤へ接地し、冷却板上にストレートエッジを置き、ストレートエッジから冷却板までの隙間を「ターゲット接合体の反り」と定義して、その隙間をデプスゲージを用いて測定した。本実施例では、ターゲット接合体の反りが1.5mm以下のものを合格、反りが1.5mm超のものを不合格とした。
【0097】
これらの結果を表1にまとめて示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1のNo.3、4、6に示すように、本発明で推奨する乾式法によりLiCoO2焼結体およびLi3PO4焼結体を製造した場合は、20MPa以上の高い曲げ強度が得られた。また、曲げ強度の高い上記焼結体を用いて得られたターゲット接合体の反りは小さく、全長に対して1.5mm以下に抑制された。
【0100】
これに対し、乾式法でなく、表1のNo.1、2、5に示すように湿式法にて上記焼結体を製造すると、曲げ強度が20MPaを大きく下回った。また、このように曲げ強度の低い上記焼結体を用いて得られたターゲット接合体の反りは大きくなり、全長に対して1.5mmを超えた。反りが大きいと割れが発生し易くなり、放電異常やパーティクルが発生して成膜歩留まりが低下する。
【0101】
なお、上記の例では、平面研削盤を用いて研削したが、加工機の種類はこれに限定されず、グラインディングセンターを用いたときも同様の結果が得られた(表には示さず)。
【0102】
上記の結果から、吸湿性が高いLi含有酸化物スパッタリングターゲットを製造するには、乾式法により、素材となる酸化物焼結体を製造することが極めて有効であることが分かる。これにより、当該焼結体の水分が除去されるため、曲げ強度が低下せず高い強度レベルを維持できたと考えられる。そのため、上記スパッタリングターゲットを用いて得られるターゲット接合体は、反りや割れの問題を解消することができた。
【0103】
実施例2
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を用い、以下のようにしてターゲット接合体の位置ずれ、隙間の幅、再付着膜の堆積面積率を測定した。
【0104】
前述した実施例1のNo.3において、同じサイズのスパッタリングターゲット(厚さ6mm×短辺110mm×長辺170mm)を2枚用意し、短辺同士が隣り合うように冷却板と貼り合わせた後、表2に記載の平均冷却速度で室温まで冷却したこと以外は上記実施例1のNo.3と同様にしてターゲット接合体を得た。
【0105】
このようにして得られたターゲット接合体の位置ずれを測定するため、まず、冷却板の端からターゲット側面までの距離を、デプスゲージを用いて測定した。測定は、ターゲットの短辺と長辺の両側面に対して行ない、ターゲットに対してそれぞれ向かいあった測定値の差を2で割って求めた。本実施例では、上記のようにして算出されたターゲット接合体の位置ずれが1.0mm以下のものを合格とした。
【0106】
また、ターゲット同士を隣り合わせた隙間の幅は、隙間ゲージを隙間へ挿入して測定した。本実施例では、上記のようにして測定された隙間の幅が0.1mm以上、0.5mm以下のものを合格とした。
【0107】
また、スパッタ面に対する再付着膜の堆積面積率は、スパッタされたスパッタ面を撮影し、得られた写真を2値化して再付着膜が堆積した面積を、スパッタ面の面積で割ることによって測定した。本実施例では、上記のようにして測定された再付着膜の堆積面積率が50%以下のものを合格とした。
【0108】
これらの結果を表2にまとめて示す。表2の最右欄には「総合評価」の欄を設け、ターゲット接合体の位置ずれ、隙間の幅、および再付着膜の堆積面積率の全てが合格のものに「合格」、いずれか一つでも不合格のものに「不合格」と記載した。
【0109】
【表2】
【0110】
表2のNo.1〜3に示すように、貼り合わせ完了温度から室温までの平均冷却速度(表2の「合計」の平均冷却速度の欄を参照)を15〜50℃/時間に制御した場合は、ターゲット接合体の位置ずれも1.0mm以下と小さく、隙間の幅も0.1〜0.5mmの範囲に調整され、再付着膜の堆積面積率も50%以下に抑えられた。
【0111】
これに対し、表2のNo.4のように上記平均冷却速度が50℃/時間を超えて製造した場合、ターゲットの熱収縮が顕著が顕著となるため、ターゲット接合体の位置ずれ、および隙間の幅が大きくなった。ターゲット接合体の位置ずれが大きくなると再付着膜の堆積面積率も増加し、成膜歩留まりが低下する。
【0112】
実施例3
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を用い、以下のようにしてターゲット同士の高低差、およびろう材の厚みを測定した。
【0113】
具体的には、前述した実施例2と同様の方法で2枚のターゲットを冷却板と貼り合わせた後、貼り合わせ後の応力が表3に記載の数値となるようにターゲットの上に錘を設置すると共に、貼り合わせ完了温度から室温までの平均冷却速度を28.8℃/時間に制御してターゲット接合体を得た。
【0114】
このようにして得られたターゲット接合体におけるターゲット同士の高低差は、2枚のターゲットのうちの高い方を基準として、高い方の表面から低い方の表面までの距離を、デプスゲージを用いて測定した。本実施例では、上記のようにして測定されたターゲット同士の高低差が±0.5mm以下のものを合格とした。
【0115】
また、ろう材の厚みは、2枚のターゲットを冷却板と貼り合わせた後、ターゲット表面から冷却板表面までの高さをデプスゲージを用いて測定し、この測定値からターゲット厚みを引いて算出した。本実施例では、このようにして算出されたろう材の厚みが0.1mm以上のものを合格とした。
【0116】
これらの結果を表3にまとめて示す。表3の最右欄には「総合評価」の欄を設け、ターゲット同士の高低差、ろう材の厚み、および貼り合わせ後の応力の全てが合格のものに「合格」、いずれか一つでも不合格のものに「不合格」と記載した。
【0117】
【表3】
【0118】
表3のNo.1、2に示すように、貼り合わせ後の応力を0.02〜0.05kg/cm2の範囲に制御した場合は、ターゲット同士の高低差が±0.5mmに抑えられるため、ターゲットエッジでのパーティクルの発生を防止できる。また、ろう材の厚みも0.1mm以上となるため、接合率が低下することもない。
【0119】
これに対し、表3のNo.3のように貼り合わせ後の応力が0.02kg/cm2を下回ると、ろう材の厚みが大きくなってターゲット同士の高低差も大きくなり、ターゲットエッジでのパーティクルが発生するようになる。
【0120】
実施例4
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を用い、以下のようにしてスパッタリングターゲットとパッキングプレートとの接合率(単に接合体と呼ぶ。)、および酸化Inの厚みを測定した。
【0121】
具体的には、前述した実施例1のNo.3において、ターゲットへInを塗布するまでの仮焼き条件(室温から仮焼き温度までの平均昇温速度、および180℃±10℃の温度における保持時間)を表4のように変化させたこと以外は上記実施例1のNo.3と同様にしてターゲット接合体を得た。
【0122】
このようにして得られたターゲット接合体の接合率を測定するに当たっては、ターゲット接合体が水に漏れないようにフィルムでカバーした後、水浸超音波探傷にて測定した。本実施例では、このようにして測定された接合率が90%以上のものを合格とした。
【0123】
また、酸化In層の厚みはターゲット接合体を切断し、接合面の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察し、得られた写真から算出した。本実施例では、このようにして算出された酸化In層の厚みが100μm以下のものを合格とした。
【0124】
これらの結果を表4にまとめて示す。表4の最右欄には「総合評価」の欄を設け、接合率、および酸化In層の厚みの両方が合格のものに「合格」、いずれか一つでも不合格のものに「不合格」と記載した。
【0125】
【表4】
【0126】
表4のNo.1、2に示すように、仮焼き時間が30〜120分の範囲内であれば、接合率を90%以上、酸化In層の厚みを100μm以下に抑えられるため、異常放電の発生を防止することができる。
【0127】
これに対し、表4のNo.3のように仮焼き時間が長くなると、熱によるターゲットの酸化によって接合率が低下し、スパッタ特性が悪化する。一方、表4のNo.4のように仮焼き時間が短くなると、水分の放出によって酸化In層が厚く形成されるため、たとえ接合率は90%以上であっても、スパッタ中にInが溶け出して異常放電を生じるようになる。
【0128】
実施例5
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を用い、ボンディング後のターゲットの表面粗さRaを測定した。そして、得られた各ターゲットを用い、成膜実験を行なった。
【0129】
具体的には、前述した実施例1のNo.3において、ターゲット表面の表面粗さRaが表5の範囲となるように不織布を用いて研磨したこと以外は上記実施例1のNo.3と同様にしてターゲット接合体を得た。Raは、JIS B 0601:2001(基準長さ0.8mm)に基づき、触針式表面粗さ計を用いて測定した。
【0130】
成膜実験は、以下のとおり行なった。
【0131】
DC放電スパッタによる成膜
成膜装置:DCマグネトロンスパッタ装置を使用
成膜条件:基板温度20℃、DC放電パワー160W
スパッタガス圧:3mTorr
スパッタガスとしてArガスを使用、成膜膜厚500nm
成膜手順:
各ターゲットを上記のスパッタ装置に装着し、ターゲットに対向する基板ステージ上にガラス基板を装着した。チャンバー内を真空ポンプで8×10-4Pa以下の真空に引いた。次に、マスフローを用いて上記のスパッタガスをチャンバー内に供給した。スパッタガス圧を3mTorrに調整した後、DC(直流)電源を用いてターゲットに高電圧を印加し、プラズマ放電させた。このときの放電パワーは160Wで行ない、500nmの膜厚になるよう成膜を実施した。
【0132】
これらの結果を表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
表5のNo.1〜3は、ターゲットの表面粗さRaが0.1〜3.0μmの範囲内に制御されているため、安定した放電を維持することができた。
【0135】
これに対し、表5のNo.4のようにRaが0.1μmを下回ると、吸湿した水分を充分放出することができず、初期放電において異常放電によるアーキング痕が発生した。
【0136】
実施例6
本実施例では、Li含有酸化物スパッタリングターゲットの素材として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)焼結体を用い、ボンディング前後の比抵抗並びにC量、Si量を測定した。
【0137】
具体的には、前述した実施例1において、マスキングテープとしてシリコーン系テープ(日東電工製のカプトンテープ)、緩衝材としてシリコーンゴムシート(タイガースポリマー製のシリコーンゴムシート)、保温カバーとしてアルミ箔の各部材を表6に示すように配置したこと以外は上記実施例1と同様にしてターゲット接合体を得た。
【0138】
詳細には表6のNo.2では、ターゲットのスパッタ面の表面と側面をアルミ箔で覆った。
【0139】
また、表6のNo.3では、ターゲットのスパッタ面および側面の全面をシリコーン系テープで塞いだ。ターゲットの接合面は何もしていない。
【0140】
また、表6のNo.4、No.5では、ホットプレートにシリコーンゴムシートを敷き、その上にターゲットを置いた。No.5では、更にターゲットのスパッタ面の表面と側面をアルミ箔で覆った。
【0141】
ボンディング前後の比抵抗は、四端子法により測定した。詳細には、上記部材が接触した面における比抵抗を、各端子間の距離が1.5mmであるロレスターGP(三菱化学アナリテック社製)の測定器を用いて測定した。測定は4回行ない、その平均値および最大値を求めた。本実施例では、このようにして求められたボンディング前後の比抵抗の平均値が100Ω・cm以下、ボンディング前後の比抵抗の最大値が1000Ω・cm以下のものを合格とした。
【0142】
また、ボンディング前後のC量およびSi量をそれぞれ、燃焼−赤外線吸収法および吸光光度法を用いて測定した。本実施例では、このようにして求められたボンディング前後のC量が0.01質量%未満、ボンディング前後のSi量が0.01質量%未満のものを合格とした。
【0143】
これらの結果を表6にまとめて示す。
【0144】
【表6】
【0145】
表6のNo.1、2は、ターゲットにマスキングテープやシリコーンゴムシートを配置せずにボンディングしたため、接触面における比抵抗は増加せず、C量およびSi量も低く抑えられた。
【0146】
これに対し、表6のNo.3〜5のようにターゲットにマスキングテープやシリコーンゴムシートを接触させてボンディングを行なうと、ボンディング後にC量およびSi量が増加し、接触面の比抵抗が上昇することが分かった。
【符号の説明】
【0147】
21 ターゲット接合体
23 バッキングプレート
24a〜24d スパッタリングターゲット
25 裏打ち部材
31a、31b、31c ボンディング材
32 スペーサー
T 隙間
図1
図2