(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キンクおよび圧壊に対する改良された抵抗性をePTFE移植片にもたらすべく、螺旋状に巻き付けたポリマー製のコイル若しくはPTFE製の支持要素を直接取り付けることは公知である。このePTFE製の移植片は、移植片の外側表面へのPTFE製コイルの接合を保証するのに十分な温度まで加熱される。しかしながら、この方法は、巻き付けられた支持構造の材料がその下側にある移植片の材料と実質的に異なる材料から作られている複合移植片に対して、必ずしも良好に機能するわけではない。例えば、その下側にある移植片が織物表面を有しているときに、巻き付けられたPTFE支持部材を通常の溶融方法によって、取り付けようと試みると、織物層を弱めるおそれがある。それはPTFEの溶融温度(327℃)が、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート、240〜258℃)のような通常の移植可能な織物の溶融温度範囲より実質的に高いからである。これは、その溶融温度範囲がその下側にある移植体の溶融温度範囲より高い、外側に巻き付けられる他の支持構造にも当てはまる。
【0007】
きわめて異なる材料を接合して一体化された組立体を形成することは、材料の物理的なおよび化学的な違いに関連した多くの挑戦を含んでいる。例えば、いくつかの場合、ある巻き付けられた支持構造は、その下側にある移植片を損傷させること無しに取り除かれることを妨げる方法で取り付けられることが意図される。他の場合、巻き付けられた支持構造は、キンクおよび圧壊に対する抵抗の役割を実行するのには十分であるが、その下側にある移植片の本体を損傷させること無しに除去できるような方法で取り付けられなければならない。そのような取り外し可能な支持構造は、移植片の構造全体における構造の一体性を損失する危険なしに、医師が移植片を患者に合わせて調整できるようにする。溶融温度、表面特性、分子量、生体適合性、柔軟性、溶解性、伸長率といった固有の特性の相違は、圧壊およびキンクに対する抵抗性を有した移植可能な人工器官を製造するための互いに異なるポリマー構造の接合を困難とする寄与因子の一部である。
【0008】
したがって、移植片を損傷させることなしにコイルまたは他の外側支持要素にしっかりと取り付けることができるとともに、異種物質の接合に関連した困難を解決する複合移植片の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の一例が提供する移植可能な人工器官は、
(a) 外側の織物表面を有した全般的に管状の本体、および(b) 本体のキンクおよび圧壊に対する抵抗性のうち少なくとも一つを高めるように構成された、本体の外側織物表面に取り付けられる支持構造、を備える。支持構造は、第1の構成要素および第2の構成要素を有している。第2の構成要素は(i) ポリマー材料を含み、(ii) 第1の構成要素および本体より溶融温度が低く、(iii) 第1の構成要素を本体に接続する。
【0010】
実施形態の一例によれば、移植可能な人工器官の本体は、生体適合性ポリマーから作られた内側層を含むことができる。
【0011】
実施形態の一例によれば、外側織物表面は、それらの間に隙間若しくは細孔を具備したフィラメントまたは糸(yarns)を含む外側織物層の外側表面を有することができる。第2の構成要素は、隙間または細孔の内部に延び、それによって、支持構造の第1の構成要素を外側織物層に機械的に接続する。
【0012】
実施形態の一例によると、外側織物層はフィラメントまたは糸の編物、織物または組物のパターンを含み、支持構造の第2の構成要素は、第1の構成要素の除去が実質的にパターンを損傷させないように外側織物層に
除去できるように接続される。本発明の織物パターンは、編物、織物、組物または他の紡いだ繊維構造を含む任意の有用なパターンから選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
実施形態の一例によると、支持構造は、外側織物層からの第1の構成要素の除去は第2の構成要素の一部を除去するが、第2の構成要素のうちの残りの部分は外側織物層に接続されたままとなるように構成できる。
【0014】
実施形態の一例によると、生体適合性エラストマーの接着剤は、内側層の外側表面を、外側織物層の内側表面に接合する。
【0015】
実施形態の一例によると、第1の構成要素の溶融温度は約130℃〜170℃であり、かつ第2の構成要素の溶融温度は約60℃〜105℃である。
【0016】
実施形態の一例によると、第1の構成要素はポリプロピレンから作られる。
【0017】
実施形態の一例によると、第2の構成要素はポリエチレンから作られる。
【0018】
実施形態の一例によると、支持構造は外側の織物表面の周りに巻き付けられる。螺旋状の巻き付けを含む、様々な形態の巻き付けを用いることができる。
【0019】
実施形態の一例によると、内側層は、ePTFE、ポリウレタン、シリコーンおよびアクリレートのうちの少なくとも一つから作られる。生体適合性ポリマーの組合せもまた用いることができる。
【0020】
実施形態の一例によると、内側層はePTFEから作られる。
【0021】
実施形態の一例によると、第2の構成要素は、第1の構成要素の周りに配置される。好ましくは、第1の構成要素はコア要素であり、第2の構成要素は部分的に若しくは完全にコアを覆う層またはシース(sheath)である。
【0022】
実施形態の一例によると、以下を備える移植可能人工器官が提供される。(a)(管腔若しくは血液接触層と称される)生体適合性の内側の層と、生体適合性の内側の層の周りに配置された外側の織物層とを有する全般的に管状の本体と、(b) 外側の織物層に取り付けられるとともに本体のキンクおよび圧壊に対する抵抗性のうち少なくとも一つを高めるように構成された支持構造とを備え、前記支持構造は、コア要素およびコア要素を囲む外側のシース要素を具備したビード若しくはコイルを有しており、前記外側シース要素は、コア要素の溶融温度より低くかつ本体の溶融温度より低い溶融温度のポリマーである。好ましく、コア要素もまたポリマー製の構成要素である。支持構造は、コア要素をシース要素で覆うことによって、若しくは同時押出技術によって、成形できる。
【0023】
本発明の実施形態の一例による移植可能な人工器官を準備する方法は、(a) 前記人工器官の全般的に管状である本体の外側織物表面に支持構造を塗布段階であって、前記支持構造は、第1の構成要素と前記第1の構成要素の周りに配置された第2の構成要素とを有しており、前記第2の構成要素はポリマー製であってその溶融温度が前記第1の構成要素および前記本体のそれより低い段階、および(b) 前記第2の構成要素が前記第1の構成要素を前記本体に接続するように、前記第1の構成要素若しくは前記本体ではなく前記第2の構成要素を溶融させる段階、を備える。
【0024】
実施形態の一例によると、本発明の方法は、前記本体を成形するための予備的な段階であって、生体適合性ポリマーの内側層の上に織物の外側層を配置する段階、および、生体適合性エラストマーの接着剤を用いて前記外側層と前記内側層を接続する段階、をさらに備える。
【0025】
本発明の実施形態の一例による人工器官を対象に移植する方法は、(a) 前記対象に対する前記人工器官の適切な寸法を決定する段階であって、前記人工器官は、全般的に管状の本体と、前記本体の外側表面に取り付けられるとともに前記本体のキンクおよび圧壊に対する抵抗性のうちの少なくとも1つを高めるように構成された支持構造とを備えており、前記支持構造は、第1の構成要素および第2の構成要素を有していて、前記第2の構成要素の溶融温度は前記第1の構成要素および前記本体のそれより低く、前記第2の構成要素は前記第1の構成要素を前記本体に接続する段階、(b) 前記支持構造が前記本体の残りの部分に沿って接続されている間、前記適切なサイズに一致する前記人工器官の少なくとも一つの端部から前記第1の構成要素を取り除く、段階、および(c) 前記人工器官を対象に植設する段階、を備える。
【0026】
上述した実施例としての実施形態のうちのいずれかの組合せは、本発明の一部として含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の実施形態の一例による人工器官10を示している。この人工器官10は全般的に管状であり、例えば生体適合性ポリマーから製造されたチューブである内側層14と、少なくとも部分的に前記内側層14の周りに配置される、例えば管状の織物層である外側層12と、を有した移植可能な複合人工器官を備える。人工器官10は、任意の所望の厚さ、例えば0.1mm〜約2mmとすることができるが、その厚さは装置の外側表面16から内側表面へと測定される。
【0029】
以下に詳述するように、2つの層12、14は、例えば接着剤を用いて接合できるとともに、支持構造22により支持される。この支持構造22は、第1の材料と、この第1の材料より融点が低い、第1の材料の上に配置される第2の材料とを有している。この新規な支持構造は、移植片を傷付けることなしに、支持構造の移植片に対する接合を保証するのに十分な温度へと移植片を加熱できるようにする。
【0030】
複合人工器官
内側層14は、ePTFE、ポリウレタン、アクリレート、シリコーン、コポリマーおよびそれらの組み合わせのような生体適合性ポリマーといった、生体適合性の材料から製造できる。一つの実施形態において、内側層14は、ePTFE、ポリウレタン、シリコーンおよびアクリレートのうちの少なくとも一つから製造される。
【0031】
外側の織物層12は、内側層14とは異なる少なくとも一つの特性を有した生体適合材料から形成できる。例えば、外側の織物層12は、糸から形成された平らな、成形された、撚られた、仕上げがなめらかでない、防縮加工された、若しくは防縮加工されていない織物とすることができる。糸は、天然繊維若しくは合成繊維とすることができる。合成繊維は、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む熱可塑性材料であるが、それらには限定されない。糸は、マルチフィラメント、モノフィラメントまたは紡績タイプとすることができる。マルチフィラメント糸は、高められた柔軟性を示す。モノフィラメント糸は、圧壊に対する抵抗性を高めるために有用である。
【0032】
本明細書において、用いる「PTFE」という用語は、ポリテトラフルオロエチレンを指すとともに、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレンから製造された任意の構造を指す。「ePTFE」という用語は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを指すとともに、少なくとも部分的に延伸ポリテトラフルオロエチレンから製造された任意の構造を指す。
【0033】
内側層14は、例えばペースト押出工法で形成されたPTFEの延伸により製造できる。PTFEの押出品は、細長い原線維によって、相互に接続されたノードから画成される微孔構造を有したePTFEを形成する従来技術において、周知の方法で、延伸しかつ焼成できる。ノード間の距離は節間距離(IND)と呼ばれるが、
延伸および焼成プロセスの間に使用されるパラメータによって、変化させることができる。
延伸および焼成プロセスの結果、内側層14の構造の中に細孔が生じる。細孔のサイズは内側層14のINDによって、定まる。
【0034】
外側の織物層12は、人工器官の長期にわたる開通性に寄与し得る増強された細胞内部成長を促進するために、組織に接触する表面として設計できる。内側層14は、漏れを最小化すると共に概ね抗血栓性の表面をもたらすために、血液に接触する表面として用いることができる。ある場合には、
前記外側の織物層12は、血液に接触する表面として設計することができ、かつ前記内側層14は、組織に接触する表面として用いることができる。
【0035】
内側層14と外側の織物層12は、接着剤20を用いて互いに接合できる。接着剤は、溶液としてスプレーコーティングする方法により、内側層14の外側表面に若しくは外側織物層12の内側表面に塗布できる。しかしながら、接着剤20を塗布するために他の公知の方法を用いることができる。
【0036】
接着剤20には、様々な生体適合性のエラストマー接着剤、例えばウレタン、ポリカーボネートウレタン、スチレン/イソブチレン/スチレン系熱可塑性エラストマ(SIBS)、シリコン、およびそれらの組み合わせを含めることができる。他の類似の材料も予測される。最も望ましくは、接着剤には、マサチューセッツ州ナティックのBoston Scientific Corporationによって、CORETHANE(登録商標)の名前で販売されているポリカーボネートウレタンを含めることができる。このウレタンは、好ましくは7.5%のCorethane、2.5W30をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に溶かした接着剤溶液として提供される。
【0037】
高度に疎水性の材料であるePTFEから製造される内側層14については、エラストマー接着剤20を用いることが有用であり、それはePFTE構造の細孔に入り込んで接着性を高める。弾性を有した接着剤の一つの種類の実例は、脂肪族化合物のマクログリコールと芳香族化合物若しくは脂肪族化合物のジイソシアナートとの反応から形成されるものである。
【0038】
モノフィラメント生体適合性ポリマー支持構造
図2〜
図4を参照すると、人工器官10は、圧壊および/またはキンクに対する抵抗力を高めるために支持構造22が巻き付けられている。支持構造22は、人工器官10の全長に沿って、若しくは実際に選択された部分、例えば追加の支持を必要とする部分に沿って延びることができる。支持構造22は、人工器官の層とは別個に、例えば鋳造若しくは押し出しによって、製造できる。
【0039】
支持構造22は、溶融温度が異なる材料を含むことができる。図示するように、支持構造22は、第1の構成要素23より融点が低い第2の構成要素24によって、少なくとも部分的に囲まれた第1の構成要素23を有している。第2の構成要素24は、少なくとも部分的に第1の構成要素23の周りに配置される。第1の構成要素23および第2の構成要素24は、同時押出加工できる。第2の構成要素24は、溶融およびその後の冷却が起こると、人工器官10の外側織物層12にある隙間または細孔の内部に延びるとともに、第1の構成要素23上での保持の生成に十分なだけ第1の構成要素23の周りを包む限りにおいて、本体10に対する接続の前に第1の構成要素23を完全に囲んでいる必要がない。支持構造22は、シースとなる第2の構成要素24によって、囲まれるコアとなる第1の構成要素23を有することができる。
【0040】
第2の構成要素24は、望ましくは第1の構成要素23より融点が低いポリマー材料から製造される。例えば、第2の構成要素24はポリエチレンポリマーを含むことができ、かつ第1の構成要素23はポリプロピレンポリマーを含むことができる。このことは、第2の構成要素24が人工器官10の織物層12の隙間または細孔の内側に流れ込むように支持構造22の第2の構成要素24を溶融させるのに十分に高い溶融温度ではあるが、支持構造22の第1の構成要素23若しくは人工器官10の内側層14および外側織物層12を溶融させるには十分に高くない温度へと、人工器官10を加熱できるようにする。これにより、第2の構成要素24は第1の構成要素23を人工器官10に接合する。
【0041】
支持構造22は、任意の断面構造を有することができる。支持構造22の断面は、それを介して人工器官10の外側織物層12に溶着できる表面領域が最大となるように選択できる。支持構造22の断面は、外側織物層12上での支持構造22の高さを制限することによって、人工器官10の外側の凹凸または粗度を最小化するべく、例えば半円形若しくは三日月形を選択することもできる。
【0042】
支持構造22の全体的な寸法および幾何学的形状は、使用する材料および人工器官10の所望する最終特性に応じて、調整できる。
【0043】
支持構造22は、本願明細書において、更に議論するように、取り外すことができるように若しくは取り外すことができないように、外側織物層12に取り付けることができる。一つの実施形態において、医師は、患者に対して人工器官10を寸法決めし若しくは調整するために、外側織物層12から支持構造22を取り除き若しくは解くことができる。
【0044】
他の実施形態において、支持構造22は、第1の構成要素23(すなわち、コア)および第2の構成要素24(すなわち、シース)を溶融させるのに十分な、160℃を超える温度に加熱できる。ポリマー製の支持構造は、適切に人工器官の周りに配置されず若しくは人工器官を包んでいない場合、溶融して人工器官の表面16から簡単に離間する。しかしながら、溶融プロセスの間にポリマーの支持構造が含まれている場合は、両方のポリマーは、人工器官10の外側織物層12に流れ込んで平坦になり若しくは場合によっては凹んで、例えば小さい直径で供給する機構のために小さな輪郭を達成する。いくつかの実施形態において、全体的な輪郭は、その下側にある人工器官10の輪郭と本質的に同一であり若しくはほんのわずかだけ上回る。
【0045】
他の実施形態において、支持構造22は人工器官10の基礎の部分のみに付加することができ、例えば、取り外し可能なポリマー製の支持によって、端部を支持し若しくは支持しないことにより、カスタマイズ可能な人工器官を生じさせる。カスタマイズ可能な端部は、医師が人工器官10を適切な長さに切断しつつ移植するために必要な縫合を生じさせることができるようにする。
【0046】
一実施形態において、第1の構成要素23は、例えばポリプロピレンから製造されてその融点は約130℃〜170℃であり、かつ第2の構成要素24は例えばポリエチレンから製造されてその融点は約60〜 105℃である。
【0047】
図2に示したように、人工器官10は、それに螺旋状に巻き付けられてそれに接続されたポリマー製の支持構造22を有している。図示した人工器官10のポリマー製支持構造22は、モノフィラメントであるが、例えば、より小さな二つ若しくはより多くのフィラメントの組物とすることができる。あるいはまた、ポリマー製支持構造は、外側織物層12の周りにそれぞれ巻き付けられた、二つ若しくはより多くのフィラメントから構成できる。各フィラメントは、単一のモノフィラメントから構成し、あるいは相互に絡み合う、例えば標準的な編み組みの若しくは撚ったパターンの、二つ若しくはより多くのフィラメントの配置から構成できる。
【0048】
支持構造22は、外側織物層12の全長にわたって螺旋状にチューブの周りに巻き付けられた、単一長さのフィラメントから構成できる。あるいはまた、一つ若しくはより多くの支持構造は、人工器官10の全長に沿って長手方向に延びることができる。さらにフィラメント構成要素は、外側織物層12に巻き付けられ若しくはそれ以外の方法で配置された複数のフィラメントから成る不連続なものとすることができる。一つ以上の部分を用いる場合、部分は連続して巻き付けられており、そうすると、各部分の端部が隣接する部分の端部に並置され、、外側織物層12に取り付けられ、そうすると各部分は長手方向寸法において、各部分の端部ができる限り近くなる。。そのような部分が螺旋状および/または長手方向の位置において、整合しない配置もまた、本発明の一実施形態として期待される。あるいは、一つ以上のフィラメント部分を用いるときには、二つ以上の部分を、その長さおよび/または直径が同一若しくは同一でなくても、人工器官10に沿った任意の平面において、外側織物層12に溶着させることができるように、それらの部分を長手方向に重なり合わせることができる。
【0049】
一実施形態において、支持構造22は、例えば軸線に対して約30度から90度未満の巻き付け角度で外側織物層12の周りに巻き付けることができる。
【0050】
1つより多い支持構造が外側織物層12の周りに巻き付けられている実施形態の一例においては、支持構造22が実質的に互いに平行に、すなわち重なり合わないように、各支持構造22の巻き付け角度を他のそれと等しくすることができる。
【0051】
他の実施形態においては、支持構造22は、人工器官10の外側織物層12に対し張力をかけて巻き付けることができるとともに、支持構造22の第2の構成要素24を溶融させるのに十分な温度に加熱できる。この加熱は、第2の構成要素24が、第1の構成要素23の周りに十分に配置された間、人工器官10の外側織物層12に流れ込んで
除去できるように固着するよう
に実行される。第2の構成要素24は第1の構成要素23上で冷却し、第1の構成要素23を物理的に保持すると共に第1の構成要素23を外側の織物層12から分離させる予め定められた、例えば10グラム〜300グラムのレベルの引張力に抵抗するように第1の構成要素23の周りに配置される。支持構造22の第2の構成要素24と人工器官10の外側織物層12との間の接合は、そのような予め定められた引張力に耐えて無傷のまま残るように十分に強く、したがって(第1の構成要素23の除去が、支持構造22の第2の構成要素24の一部をそれと共に除去するが)人工器官10から第1の構成要素23を除去しても人工器官10の外側織物層12の健全性を保持する。加熱の後、取り外し可能な支持構造22が生じる。このことは、医師が、支持される長さをカスタマイズして
医師のニーズに合わせることができるようにしつつ、縫合可能な領域をもたらす。
【0052】
他の実施形態においては、支持構造22は、外側織物層12に対し張力を掛けつつ巻き付けられるとともに、第1の構成要素23および第2の構成要素24の両方が溶融する温度まで加熱され、かつ人工器官10の第2の構成要素24に対し圧縮されて、取り外し不可能な人工器官10への付着が達成される。加熱の後、輪郭の小さい取り外し不可能な支持が生じる。
【0053】
他の実施形態においては、人工器官10の端部が、完全に支持されない場合若しくは取り外し可能なポリマー製の支持材料により支持される場合は、カスタマイズ可能な支持構造を有した人工器官が生じる。このカスタマイズ可能な端部は、医師が人工器官10を適切な長さに切断できるようにしつつ、必要な縫合をなすことを可能にする。
【0054】
支持構造22は、張力を掛けつつ外側織物層12の周りに巻き付けることができる。さもなければ、支持構造22は、焼成に先立つ操作の間に滑りおよび/または変位し得る。張力のレベルは、滑りを回避するために十分でありながら、支持構造22の損傷を回避するべく十分に低いものである。圧縮は、柔軟な管状の巻き付け若しくはシースによって、負荷。柔軟な管状の巻き付け若しくはシースは、収縮巻き付けシリコーン、若しくは構造の周りにタイトにフィットするように設計された織物の巻き付けとすることができる。
【0055】
一つの実施形態においては、支持構造22は、人工器官の管状の外側織物層12に対して溶着できる。これは、チューブおよびポリマー製の支持構成要素を互いに固着させるための追加の手段を必要とすることなしに、人工器官10に一体化された支持構造22を形成できるようにする。外側織物層12は、フィラメント若しくは糸の間に隙間を形成するために重なり若しくは相互接続されたフィラメントまたは糸を含む、例えば織られ若しくは編まれた織物から製造できる。支持構造22の第2の構成要素24は、それらの隙間の内側に延び、それによって、支持構造22の第1の構成要素23を外側織物層12に機械的に接続する。
【0056】
したがって、複合人工器官の健全性を保持するための接着剤、積層若しくはその他の物理的な手段は必要がなくなり、それによって、人工器官10の構造およびその製造方法を単純化する。
【0057】
他の実施形態において、支持構造22は人工器官10に対し固着し若しくは接合できる。支持構造22の第2の構成要素24の材料は、人工器官における外側織物層12との優れた結合を保証するべく特に適応させ若しくは選択でき、第1の構成要素23は人工器官の理想的な物理的支持特性を保証するように選択しても良い。
【0058】
他の実施形態においては、支持構造22は、人工器官10の長さに沿って実質的に連続的に若しくは非連続的に人工器官10の外側織物層12に溶着できる。
【0059】
実施形態の一例において、支持構造22は、ビードの形態とすることができるとともに、平坦、正方形、リボン
状、球状、楕円状または他の形状に構成できる。
【0060】
組立方法
本発明の人工器官10について説明してきたが、ここで本発明の人工器官10を製造する方法について説明する。
【0061】
全般的に、人工器官10は、内側層14と、少なくとも部分的に内側層14の周りに配置され接着剤20によって、それに接合される外側織物層12とから形成されている。支持構造22は、コア材料23および第2の構成要素24から構成されて、外側織物層12に適用される。第2の構成要素24は外側織物層12上に溶着し、それによって、支持構造22を人工器官10に固着させる。支持構造22は、例えば、第2の構成要素24を溶融させるには十分であるが支持構造22の第1の構成要素23(若しくはコア)を溶融させるには十分ではない温度での加熱によって、溶融させることができる。
【0062】
人工器官10の内側層14は、例えば管状の押し出し、若しくは押し出したシートを管状構造に成形するといった、従来の成形プロセスで成形できる。内側層14はステンレス鋼のマンドレルの上に配置され、かつチューブの端部が固定される。次いで人工器官には、1%〜15%のCorethane(登録商標)ウレタン、2.5W30をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に溶かした接着剤の溶液がスプレー塗布される。上記したように、他の接着剤溶液もまた用いることができる。被覆された内側層2は、室温で乾燥させることができる。あるいは、18℃〜150℃の範囲に加熱されたオーブン内に配置し、5分〜終夜にわたってオーブンで加熱して溶液を乾燥させる。必要に応じて、スプレー塗装および乾燥プロセスを複数回繰り返して、内側層14により多くの接着剤を追加できる。次いで、内側層14は外側織物層12で覆われて、複合人工器官10が形成される。次いで、1つ若しくは複数の弾力のあるシースの層が複合構造の上に配置され、複合構造物を一体に保つとともに、接着プロセスのための完全な接触および十分な圧力の維持が保証される。シースの中の複合人工器官の組立体は、オーブン内に配置され約5〜30分間にわたって180℃〜220℃の範囲で加熱されて層が互いに接合する。
【0063】
支持構造22を外側織物層12に取り付けるために用いる1つの技術が
図4に示されている。この実施例では、人工器官10は、織物およびePTFEを含む複数の層から構成される移植片であり、例えばその周りにらせん状に接合された2層の支持構造22を有している。支持構造22を人工器官10に接合するために、人工器官10は中実のマンドレル15上に配置される。従来の外部加熱、例えば対流式オーブン(矢印A)が、人工器官10の上に配置された支持構造に負荷される。これは支持構造22を外側層12に接合するのに十分ではあるが、このやり方の加熱は支持構造の第2の構成要素24のコントロールできない流れを生じさせて、人工器官10の外側織物層12と支持構造22との接続部分に隅肉13を生じさせ、それによって、外側織物層12と支持構造22との間にテント構造を形成する。矢印Aで示す従来の外部加熱を介したこの取付方法は、取り付けにおいて、望ましくない剥離強度の低下に帰着すると共に、溶融したポリマーで形成されたより大きくかつより厚い隅肉領域のために柔軟性が低下した領域を生じさせる。このやり方で形成された本発明の複合人工器官は、圧壊およびキンクに対する高い抵抗力に帰着するが、この複合構造物は移植可能な人工器官において、望ましい柔軟性を失い得る。また、注記したように、この支持構造は取付けの剥離強度を失う傾向がある。
【0064】
ここで
図5を参照すると、支持構造22を人工器官10に接合する他の技術が記載されている。例えばその周りに螺旋状に配置された支持構造22を備える人工器官10は、例えば316ステンレス鋼管から作られたマンドレル30上に配置される。このマンドレル30は人工器官10の内側で加熱され、人工器官10に対する支持構造22の溶着を達成する。熱は、矢印Bの方向にマンドレル30から人工器官10へと伝達される。マンドレルは、多種多様な方法で加熱できる。支持構造22の温度をその溶融温度より高めることによって、複合人工器官が溶融するように、マンドレルは、加熱された流体、例えば液体、または高温の粒状固形物を適用することによって、加熱できる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、例えば流体若しくは粒状固形物の加熱された
熱循環浴32は、少なくとも支持構造22の第2の構成要素24の融点を上回る、例えば約60〜105℃上回る温度に加熱される。ポンプ(図示せず)は、加熱された材料をマンドレル30に通して循環させる。材料からの熱は、マンドレル30を通過すると共に、マンドレル(矢印B)の壁を通過して、少なくとも支持構造22の第2の構成要素24を溶融させるのに十分に人工器官10の外側織物層12の表面16の内部へと伝達される。
【0066】
熱循環浴32のポンプ(図示せず)は、加熱された材料を循環させてマンドレル30に通し、
熱循環浴32に戻る。マンドレル30を通過した材料からの熱は、マンドレルの壁を通り、かつ人工器官を通って伝達される。人工器官の例えばePTFEから作られた外側織物層12と接触している支持構造22の例えばポリエチレンから作られた第2の構成要素24を溶融させるために、人工器官は十分な時間にわたってこの状態に保持される。
【0067】
支持構造22の取付けは、加熱有り若しくは加熱無しに圧力を負荷し、外側織物層12に対し支持構造22を圧縮して小さな輪郭の構造を生み出すことにより達成できる。圧力は、例えば柔軟な巻付けシースを用いて負荷できる。柔軟な巻付けシースは、例えば織物若しくはポリマーから形成できる。
【0068】
ここで考えられることは、低い温度サイクルを必要とする製品を冷却するために本技術を用いることである。あるいは、複合人工器官を加熱した後、マンドレルは、製品を急速に冷却するべく低温の流体をライン内に噴射するために用いることができる。温度制御または変化は、製品を焼もどし若しくは焼なまして様々な性能基準のための様々なポリマー微細構造を生じさせるために用いることができる。
【0069】
図5に記載した取付方法は、異なる支持構造、例えば単一材料若しくは複数材料から作られて異なる構造で巻き付けられた支持構造と共に用いることもできる。
【0070】
第2の構成要素24の融点より高い融点の第1の構成要素23を有する支持構造22の使用は、第2の構成要素24のみが溶融するような適切な量の熱の負荷を可能にする。すなわち、負荷される熱は、第2の構成要素24の融点より高いが第1の構成要素23の融点よりは低い。そのような溶融の結果は、
図6に示されている。図から判るように、人工器官10の内部から負荷される熱は、内側層材料23の底部を
後で冷却するようにして、外側層材料24の溶融を達成する。すなわち、支持構造22は、人工器官の外側織物層12に接触し、外側織物層12に部分的に属し若しくは浸透し、例えば外側織物層12の編まれた若しくは織られた構造の隙間の内部に延びて、第1の構成要素23を人工器官10に接続する役割を果たす。この接続は、患者の身体の内部で用いる間に支持構造を人工器官10に沿った所定の位置に保持するためには十分強いが、外側織物層12の例えば編まれた若しくは織られたパターンを実質的に損傷させること無しに、例えば人工器官10の端部に沿って支持構造22を外側織物層12から安全に引き離すことができるようにして、移植前の寸法決めを可能にする。この接続は、外側織物層12からの第1の構成要素23の除去が、第2の構成要素24の一部は取り除くが、第2の構成要素24の残りの部分は外側織物層12に接続されたままとなるように構成できる。
【0071】
人工器官10を製造する方法の他の実施形態によると、その最終製品が
図7に示されているが、溶融は第1の構成要素23および第2の構成要素24の融点を上回る温度で実行される。そのような実施形態においては、支持構造22の全体が少なくとも部分的に溶融すると共に外側織物層12に浸透してそれに結合し、取り外し不可能な輪郭の小さい支持構造を提供する。
【0072】
人工器官10を製造する方法の他の実施形態によると、ePTFEの内側層および織物の外側層を有した複合人工器官構造においては、人工器官はステンレス鋼のマンドレル上に配置されるとともに、硫酸バリウムを含有したポリプロピレン/ポリエチレン製の、張力下で巻き付けられた二つの構成要素のモノフィラメント支持構造を有する。硫酸バリウムは、放射線不透性物質であり、医師による蛍光透視法での視覚化を可能にする。
【0073】
この部分組立は、8分間にわたり140℃で研究室用対流式オーブン内に配置される。オーブンサイクルの後、人工器官が冷えると、それはマンドレルから取り外すことができる。その結果は、放射線不透過性であってカスタマイズのために取り外し可能な、従来のビード支持構造を有した人工器官である。
【0074】
人工器官10の製造方法の他の実施形態によると、人工器官10は、シリコーンチューブ、編まれた材料の層、シリコーンチューブの第2層、およびPTFEテープの巻き付けによって、覆われる。このシリコーン−編物−シリコーン−PTFEのカバーは、加熱サイクルの間に人工器官に圧力を負荷するために用いられる。研究室用対流式オーブンで8分間にわたり170℃で人工器官を加熱した後、シリコーン−編物−シリコーン−PTFEのカバーは、取り除かれて廃棄される。その結果は、輪郭の小さい、取り外し不能な、放射線不透過性の、人工器官の外側層に溶着する支持巻き付けである。
【0075】
本発明の他の実施形態によると、本発明の実施形態の一例による人工器官10を対象に移植する方法が提供される。この方法は、(a) 人工器官10の対象にとって適切な寸法を決定する段階であって、前記人工器官10は、全般的に管状の本体と、前記本体のキンクおよび圧壊に対する抵抗性をのうち少なくとも一つを高めるように構成された前記本体の外側表面16に取り付けられている支持構造22とを備えており、前記支持構造22は第1の構成要素23および第2の構成要素24を有しており、前記第2の構成要素24の溶融温度は前記第1の構成要素23および前記本体のそれより低く、前記第2の構成要素24は前記第1の構成要素23を前記本体に接続している段階と、(b)前記支持構造22を前記本体の残りの部分に沿って接続された間 適切なサイズに合わせた人工器官10の少なくとも一つの端部から第1の構成要素23を取り除く、段階と、および(c) 前記人工器官10を対象に移植する段階と、を備える。
【0076】
先に記載されかつ示された構造に対する様々な変更は当業者には明らかである。したがって、本発明の特別に開示された範囲は、以下の請求の範囲に述べられている。