特許第6231439号(P6231439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231439
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】エアカーテン装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/12 20060101AFI20171106BHJP
   B05B 15/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B05B15/12
   B05B15/04 103
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-121557(P2014-121557)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-388(P2016-388A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】三輪 朋孝
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−168371(JP,A)
【文献】 特開昭61−200871(JP,A)
【文献】 特開昭58−119369(JP,A)
【文献】 特開2007−307543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00−15/12
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子が飛散する粒子飛散域と、その粒子飛散域からの粒子の侵入を防止すべき侵入防止域との間にエアカーテンを形成するエアカーテン装置であって、
高速で前記粒子飛散域の側を進行させる高速エアカーテン気流と、低速で前記侵入防止域の側を進行させる低速エアカーテン気流とを隣接状態で並進させる構成にするのに、
エアカーテン形成用の気流吹出口に、上流縁が下流縁に対して相対的に前記侵入防止域の側に位置する傾斜姿勢の気流案内板を設け、
前記気流吹出口からの吹き出し気流を、前記気流案内板により前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流とに分流する構成にしてあるエアカーテン装置。
【請求項2】
前記気流案内板の傾斜角度を調整して、前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流との風速比を調整する風速比調整部を設けてある請求項1記載のエアカーテン装置。
【請求項3】
被塗物の吹付塗装を行う塗装域を前記粒子飛散域にするとともに、その塗装域の側壁内面が面する領域を前記侵入防止域にした状態で、その側壁内面に沿わせる状態で前記低速エアカーテン気流と前記高速エアカーテン気流とを並進させる構成にしてある請求項1又は2記載のエアカーテン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアカーテン装置に関し、詳しくは、微粒子が飛散する粒子飛散域と、その粒子飛散域からの粒子の侵入を防止すべき侵入防止域との間にエアカーテンを形成するエアカーテン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアカーテン装置では、例えば特許文献1に見られるように、エアカーテン厚み方向において風速が均等なエアカーテン気流(換言すれば、実質的に単一のエアカーテン気流)を粒子飛散域と侵入防止域との間に形成するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−186040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のエアカーテン装置では、粒子飛散域から侵入防止域への粒子の侵入を十分に防止しようとすると、エアカーテン気流の風速(気流速度)を大きくするとともにエアカーテン気流の厚みを大きくする必要があり、この為、エアカーテン形成用の気流吹出口から吹き出す気流の吹き出し風量が大きくなって、運転コストが嵩むとともに設備コストも嵩む問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な気流形態を採ることで、運転コスト及び設備コストが安価でありながら、粒子飛散域から侵入防止域への粒子侵入を効果的に防止することができるエアカーテン装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成はエアカーテン装置に係り、その特徴は、
微粒子が飛散する粒子飛散域と、その粒子飛散域からの粒子の侵入を防止すべき侵入防止域との間にエアカーテンを形成するエアカーテン装置であって、
高速で前記粒子飛散域の側を進行させる高速エアカーテン気流と、低速で前記侵入防止域の側を進行させる低速エアカーテン気流とを隣接状態で並進させる構成にするのに、
エアカーテン形成用の気流吹出口に、上流縁が下流縁に対して相対的に前記侵入防止域の側に位置する傾斜姿勢の気流案内板を設け、
前記気流吹出口からの吹き出し気流を、前記気流案内板により前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流とに分流する構成にしてある点にある。
【0007】
この構成によれば、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流との並進において、それらの風速差により、低速エアカーテン気流の側から高速エアカーテン気流の側に向う速度成分を有する誘引流(即ち、侵入防止域の側から粒子飛散域の側に向う速度成分を有する誘引流)を生じさせることができる。
【0008】
また、この誘引流は、粒子飛散域や侵入防止域の域内気体が直接に高速エアカーテン気流に誘引されて生じる誘引流と異なり、高速エアカーテン気流と同様にエアカーテン形成 用の気流吹出口からの吹き出し風速成分を基本に有するものであることから、誘引に伴う高速エアカーテン気流の減衰も小さなもので済む。
【0009】
これらことから、上記構成によれば、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流との合計風量と等しい吹き出し風量で、エアカーテン厚み方向において風速が均等な単一のエアカーテン気流(即ち、従来のエアカーテン気流)を形成するのに比べ、粒子飛散域から侵入防止域への粒子侵入を一層効果的に防止することができ、また、その分、合計吹き出し風量を少量化して運転コスト及び設備コストも安価にすることができる。
【0010】
また、上記の第1特徴構成では、
前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流とを隣接状態で並進させる構成にするのに、
エアカーテン形成用の気流吹出口に、上流縁が下流縁に対して相対的に前記侵入防止域の側に位置する傾斜姿勢の気流案内板を設け、
前記気流吹出口からの吹き出し気流を、前記気流案内板により前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流とに分流する構成にするから、次の作用効果も奏する。
【0011】
この構成によれば、エアカーテン形成用の気流吹出口に気流案内板を設けるだけで、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流とを形成することができて、それらエアカーテン気流を並進させることができ、これにより、それらエアカーテン気流を各別に形成する2種のエアカーテン形成用の気流吹出口を設けるのに比べ、設備コストを一層安価にすることができる。
【0012】
本発明の第特徴構成は、第特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記気流案内板の傾斜角度を調整して、前記高速エアカーテン気流と前記低速エアカーテン気流との風速比を調整する風速比調整部を設けてある点にある。
【0013】
この構成によれば、風速比調整部により気流案内板の傾斜角度を調整して、共通のエアカーテン形成用気流吹出口から吹き出す気流の分流比(即ち、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流とへの分流比)を調整することで、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流との風速比を調整する。
【0014】
そして、この風速比調整により、粒子飛散域から侵入防止域への粒子侵入を最も効果的に防止できる状況を容易に得ることができる。
【0015】
なお、本発明に対する比較構成としては、前記高速エアカーテン気流を吹き出す高速側の気流吹出口と前記低速エアカーテン気流を吹き出す低速側の気流吹出口とを隣接状態で設けることも考えられる。
【0016】
そして、この比較構成では、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流とを、それらの吹き出し時における相互干渉の無い状態で円滑かつ良好に吹き出すことができ、これにより、それら高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流とによる所期の効果を一層効果的かつ確実に得ることができる。
【0017】
また、この比較構成において、前記高速側の気流吹出口から吹き出す前記高速エアカーテン気流と前記低速側の気流吹出口から吹き出す低速エアカーテン気流との風速比を調整する風速比調整部を設けることも考えられる。
【0018】
そして、その場合には、風速比調整部による風速比調整により、粒子飛散域から侵入防止域への粒子侵入を最も効果的に防止できる状況を容易に得ることができる。
【0019】
本発明の第特徴構成は、前記した第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
被塗物の吹付塗装を行う塗装域を前記粒子飛散域にするとともに、その塗装域の側壁内面が面する領域を前記侵入防止域にした状態で、その側壁内面に沿わせる状態で前記低速エアカーテン気流と前記高速エアカーテン気流とを並進させる構成にしてある点にある。
【0020】
この構成によれば、塗装域において飛散する塗料ミストがその塗装域の側壁内面に付着することを、高速エアカーテン気流と低速エアカーテン気流とにより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】塗装ブースの正面図
図2図1におけるII−II線矢視図
図3図1におけるIII−III線矢視図
図4】保持具の拡大断面図
図5】アーム先端部と保持具との連結構造を示す拡大断面図
図6】エアカーテンの気流状態を示す模式図
図7】別実施形態を示す塗装ブースの正面図
図8図7におけるVIII−VIII線矢視図
図9図7におけるIX−IX線矢視図
図10】他の別実施形態を示す塗装ブースの正面図
図11図10におけるXI−XI線矢視図
図12図10におけるXII−XII線矢視図
図13】他の別実施形態を示す塗装ブースの正面図
図14】他の別実施形態を示す保持具の概略図
図15】他の別実施形態を示す噴霧手段支持構造の正面図
図16本発明に対する比較構成を示すエアカーテン形成形態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図3は、被塗物W(本例では自動車のバンパ)を塗装する塗装ブース1を示し、この塗装ブース1では、例えば4つの塗装域2(=2a〜2d)を一列に並べて配置し、これら塗装域2において被塗物Wを順次に塗装する。
【0023】
例えば、第1塗装域2aでは被塗物Wにプライマ塗装を施し、第2塗装域2bでは、プライマ塗装後の被塗物WにNo.1ベース塗装を施し、さらに第3塗装域2cでは、No.1ベース塗装後の被塗物WにNo.2ベース塗装を施す。
【0024】
そして、第4塗装域2dでは、No.2ベース塗装後の被塗物Wにクリア塗装を施し、これら塗装が終了した被塗物Wは乾燥炉3に送って焼付乾燥処理する。
【0025】
各塗装域2の上部には、被塗物Wに所定の塗料を噴霧する噴霧手段4をほぼ鉛直な下向き姿勢で配置してある。
【0026】
これら塗装域2の横一側には、各塗装域2に対して各別に隣接させたロボット設置域5を塗装域並び方向に並べて配置し、これらロボット設置域5には夫々、対応する塗装域2において塗装作業させる塗装ロボット6を設置してある。
【0027】
互いに隣り合う2つの塗装域2は夫々、被塗物Wの進行方向において上手側に位置する先行塗装域2′と被塗物Wの進行方向において下手側に位置する後行塗装域2″との関係にある。
【0028】
具体的には、第1塗装域2aが先行塗装域2′であるのに対し第2塗装域2bは後行塗装域2″であり、第2塗装域2bが先行塗装域2′であるのに対し第3塗装域2cは後行塗装域2″であり、第3塗装域2cが先行塗装域2′であるのに対し第4塗装域2dは後行塗装域2″である。
【0029】
この先行・後行の関係は、噴霧手段4、ロボット設置域5、塗装ロボット6の夫々についても同様である。
【0030】
各塗装域2において、被塗物Wは各塗装ロボット6におけるアーム7の先端部7aに枝状の保持具8を介して連結することで保持する。
【0031】
この保持具8には、図4に示すように、その保持具8を被塗物Wに連結する保持具・被塗物連結手段として、被塗物Wに吸着させる複数の吸盤9を設けてある。
【0032】
これら吸盤9は、被塗物Wにおける複数の連結対象箇所(本例ではバンパ前部における両端部位夫々の裏面箇所、及び、バンパ両側部夫々における裏面箇所の計4か所)に対応させた配置で保持具8に設けてある。
【0033】
保持具8はパイプ材で形成してあり、このパイプ材の内部孔(パイプ穴)は、吸盤9の内部空気を吸引手段(図示省略)により吸引する吸引路10にしてあり、この吸引路10を通じて吸盤9の内部空気を吸引手段により吸引することで、吸盤9を被塗物Wに吸着させ、これにより、保持具8を被塗物Wに連結する。
【0034】
吸引路10は、吸引手段を接続する吸引口10aに連なる主吸引路10bと、その主吸引路10bから分岐して各吸盤9の内部に開口する分岐吸引路10cとからなる。
【0035】
主吸引路10bには、各吸盤9の内部から吸引口10aに向かう空気流(即ち、吸引口10aに接続した吸引手段による空気吸引)を許容し、逆向きの空気流(即ち、吸引口10aから各吸盤9の内部に向かう空気流)を遮断するボール式等の逆止弁11を設けてある。
【0036】
つまり、吸引手段による空気吸引により各吸盤9を被塗物Wに吸着させた後は、吸引手段を吸引口10aから離脱させた状態においても、この逆止弁11により空気の逆流(換言すれば、各吸盤9の大気開放)を阻止することで、各吸盤9の被塗物Wに対する吸着状態を保って、保持具8と被塗物Wとの連結状態を保つ。
【0037】
また、保持具8には各吸盤9に対するカバー12を設けてあり、このカバー12は、吸盤9が非吸着状態で伸長した状態にあるときには、吸盤9の先端吸着部がカバー12の囲い領域から突出し、吸盤9が吸着状態で収縮した状態にあるときには、吸盤9の先端吸着部がカバー12の囲い領域内方側に引退する構成にしてある。
【0038】
つまり、このカバー12を設けることで、被塗物Wに対する吸盤9の吸着を許しながらも吸盤9に対する余剰噴霧塗料の付着を効果的に防止する。
【0039】
一方、各塗装ロボット6のアーム先端部7aを保持具8に連結するアーム・保持具連結手段としては、図5に示すように、各塗装ロボット6のアーム先端部7aに連結用孔13を設け、そして、この連結用孔13に対して差し込み嵌合させる連結用凸部14を保持具8に形成してある。
【0040】
各アーム先端部7aの連結用孔13には、円筒状の内周面を有する直孔部13aと、孔入口側ほど拡径する円錐状のテーパ状内周面を有するテーパ状入口部13bとを同芯配置で形成してある。
【0041】
これに対し、保持具8の連結用凸部14には、連結用孔13の直孔部13aに嵌合する柱状先端部14aと、連結用孔13のテーパ状入口部13bに嵌合するテーパ状段部14bとを同芯配置で形成してある。
【0042】
つまり、各アーム先端部7aの連結用孔13に対して保持具8の連結用凸部14を差し込み嵌合させる際には、連結用凸部14の柱状先端部14aを連結用孔13のテーパ状入口部13bにおけるテーパ状内周面に摺接させることで連結用凸部14を円滑に連結用孔13の中心に案内する。
【0043】
そして、この差し込み嵌合を完了した状態においては、連結用孔13の直孔部13aにおける円筒状内周面に対して連結用凸部14の柱状先端部14aにおける円柱状外周面を面接触的に接触させるとともに、連結用孔13のテーパ状入口部13bにおけるテーパ状内周面に対して連結用凸部14のテーパ状段部14bにおけるテーパ状外周面を面接触的に接触させ、これにより、各塗装ロボット6のアーム先端部7aを保持具8に対して高い連結精度で確実に連結する。
【0044】
なお、保持具8における吸引路10の吸引口10aは、アーム先端部7aと保持具8との連結接合面(具体的には連結用凸部14の先端面部)に開口させてある。
【0045】
各アーム先端部7aの連結用孔13には、その連結用孔13に差し込み嵌合させた保持具8の連結用凸部14に対して吸着作用させる永久磁石15を設けるとともに、その連結用孔13とそれに差し込み嵌合させた連結用凸部14との間に対して空気吸引力を及ぼすアーム側吸引路16を開口させてある。
【0046】
つまり、これら永久磁石15による磁気力、及び、アーム側吸引路16を通じて付与される空気吸引力により、連結用孔13と連結用凸部14との差し込み嵌合状態を保持し、これにより、各塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との連結状態を保持する。
【0047】
各塗装ロボット6のアーム先端部7aには、保持具連結用のアーム側吸引路16とは別に、それらアーム先端部7aと保持具8との連結接合面である連結用孔13の内面に開口して、アーム先端部7aと保持具8との連結(即ち、連結用孔13に対する連結用凸部14の差し込み嵌合)により閉塞状態となる検出用空気路17を形成してある。
【0048】
また、各塗装ロボット6には、アーム先端部7aと保持具8との連結で閉塞状態となった検出用空気路17に対し圧縮空気の供給により所定の正圧を印加する圧力印加手段(図示省略)、及び、この検出用空気路17における空気圧力を検出する圧力検出手段18を装備してある。
【0049】
つまり、被塗物Wや保持具8が他物と衝突するなどして、各塗装ロボット6の各アーム先端部7aと保持具8との連結状態に異常が生じたり、保持具8に異常外力が作用したときには、それに伴う検出用空気路17の開放で検出用空気路17の印加正圧が低下するようにし、この印加正圧の低下を圧力検出手段18により検知することで、上記の連結異常や異常外力を検出する。
【0050】
そして、この圧力検出手段18により異常が検出されたときには、制御手段19が各塗装ロボット6の動作を緊急停止したり、警報を発するなどの所定の保安処理を実行する。
【0051】
なお、連結用孔13の内面において検出用空気路17の開口部には、その開口部を囲うリング状のシール材(図示省略)を取り付けてあり、このシール材により、アーム側吸引路16を通じて空気吸引力が付与される領域と、検出用空気路17を通じて正圧が印加される領域とを仕切ってある。
【0052】
上記制御手段19は、各塗装ロボット6を予め設定された動作プログラムに従って自動動作させるものであり、各塗装域2では、上記の如く各塗装ロボット6のアーム先端部7aに保持具8を介して被塗物Wを連結した状態で、それら塗装ロボット6の自動動作により被塗物Wを噴霧手段4に対し変位させながら、それら噴霧手段4からの下向き塗料噴霧により被塗物Wを塗装する。
【0053】
また、この塗装において、制御手段19は、被塗物Wにおける各時点の塗装対象面を噴霧手段4からの塗料噴霧方向に対してほぼ垂直な姿勢を保つ状態に被塗物Wを姿勢変化させながら、被塗物Wを噴霧手段4に対して変位させる構成にしてある。
【0054】
隣り合うロボット設置域5の境界部で各塗装ロボット6の間には、隣り合う塗装ロボット6どうしが被塗物Wの受け渡しを行う受渡部20を設けてあり、先行する塗装域2′での塗装が終了した被塗物Wは、この受渡部20を経て後行塗装域2″に送られる。
【0055】
具体的には、制御手段19は、先行塗装域2′での先行塗装の終了後、被塗物Wを保持具8とともに先行塗装ロボット6′の動作により先行塗装ロボット6′と後行塗装ロボット6″との間の受渡部20に保持させて、被塗物Wと保持具8との連結は保ったままの状態で、先行塗装ロボット6′のアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する。
【0056】
そして、先行塗装ロボット6′のアーム先端部7aを受渡部20から退避移動させた後、後行塗装ロボット6″の動作により後行塗装ロボット6″のアーム先端部7aを、被塗物Wとの連結が保たれたままの状態で受渡部20に保持されている保持具8に連結させ、これに続き後行塗装域2″での後行塗装に移行する。
【0057】
なお、各塗装ロボット6のアーム先端部7aには、保持具連結用のアーム側吸引路16を通じた空気吸引を停止した状態で、永久磁石15の磁気力に抗し連結用孔13から連結用凸部14を離脱させてアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する連結解除手段(図示省略)を装備してある。
【0058】
即ち、制御手段19は、アーム側吸引路16を通じた空気吸引を停止するとともに、この連結解除手段を自動操作することで、受渡部20において先行塗装ロボット6′のアーム先端部7aと保持具8との連結を解除する。
【0059】
第1塗装域2aに搬入する被塗物Wは、作業者や他のロボットにより、予め保持具8を連結した状態で第1塗装域2a近傍の搬入部21に保持させ、これに対し、第1塗装域2a用の塗装ロボット6の動作により、その塗装ロボット6のアーム先端部7aを、被塗物Wとの連結が保たれた状態で搬入部21に保持されている保持具8に連結し、これに続き、第1塗装域2aでの塗装に移行する。
【0060】
また、最終の第4塗装域2dでの塗装を終了した被塗物Wは保持具8とともに第4塗装域2d用の塗装ロボット6の動作により、第4塗装域2dの近傍で搬送台車22に載置して、塗装ロボット6のアーム先端部7aと保持具8との連結を解除し、その後、保持具8及び搬送台車22とともに乾燥炉3に送る。
【0061】
そして、この際、乾燥炉3での熱環境により被塗物Wが軟化するのに対し、保持具8における各吸盤9の内部負圧を大気開放することで被塗物Wにおける吸盤吸着部位の変形を防止する。(なお、場合によっては、この大気開放により乾燥炉3での吸盤9の異常収縮を防止することもできる)。
【0062】
各塗装域2とそれに対応して隣接する各ロボット設置域5との間には仕切り壁24を設け、この仕切り壁24には、ロボット設置域5に設置した塗装ロボット6のアーム7を対応塗装域2へ延出させる作業用開口24aを形成してある。
【0063】
また、各ロボット設置域5の天井懐部には、空調機(図示省略)からロボット設置域用の給気路25aを通じて供給される換気用空気saを受け入れるロボット設置域用の給気チャンバ26を設けてある。
【0064】
そして、この給気チャンバ26の下壁を兼ねる各ロボット設置域5の天井部には、ロボット設置域用の給気チャンバ26に受け入れた換気用空気saを各ロボット設置域5に吹き出す給気口27を設けてある。
【0065】
一方、各ロボット設置域5における天井懐部の塗装域側部分には、同空調機から塗装域用の給気路25bを通じて供給される換気用空気sbを受け入れる塗装域用の給気チャンバ28を設けてある。
【0066】
なお、塗装域用の給気チャンバ28とロボット設置域用の給気チャンバ26とのいずれか一方に新鮮な換気用空気を供給し、他方には塗装域2からの排出空気を浄化したリサイクル空気を換気用空気として供給するようにしてもよい。
【0067】
また、塗装域2とロボット設置域5とに同一の換気用空気(sa=sb)を供給する場合には、塗装域用の給気路25bとロボット設置域用の給気路25aとを1本の兼用給気路にするとともに、塗装域用の給気チャンバ28とロボット設置域用の給気チャンバ26とを一つの兼用給気チャンバにするようにしてもよい。
【0068】
そして、塗装域用の給気チャンバ28から各塗装域2の一側壁2w(ロボット設置域5とは反対側に位置する塗装域側壁)まで伸びる2本のソックフィルタ29(円筒状フィルタ)を設け、これらソックフィルタ29は、平面視において両ソックフィルタ29どうしの間の中央部に噴霧手段4が位置する状態に配置してある。
【0069】
つまり、各塗装域2については、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbを、これら2本のソックフィルタ29から各塗装域2の上部に供給する。
【0070】
各塗装域2の上部において2本のソックフィルタ29の上側には、平面視において各塗装域2のほぼ全域にわたるダクト幅で、塗装域用の給気チャンバ28から各塗装域2の一側壁2wまで伸びる渡りダクト30を設けてある。
【0071】
この渡りダクト30の先端部における下面には、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成するエアカーテン形成用の気流吹出口31を形成してある。
【0072】
つまり、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbの一部は渡りダクト30を通じエアカーテン形成用の気流吹出口31から下向きに吐出させることで、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成する。
【0073】
エアカーテン形成用の気流吹出口31と噴霧手段4とは、平面視において塗装域2とロボット設置域5との並び方向に同芯状に並べて配置し、また、エアカーテン形成用の気流吹出口31の幅寸法d(換言すれば、エアカーテンfaの幅寸法)は、塗装域一側壁2wの幅寸法より小さくて、2本のソックフィルタ29どうしの離間寸法よりも小さい寸法にしてある。
【0074】
各塗装域2の下方には、塗装域2への空気供給及び対応するロボット設置域5への空気供給に伴い塗装域2から下向きに排出される空気eaを受け入れる排気域32を形成してあり、この排気域32に受け入れた空気eaは排気路33を通じて排気ファン(図示省略)により排出される。
【0075】
なお、塗装域2からの排出空気eaに含まれる余剰噴霧塗料を乾式捕集する場合には、排気域32において排出空気eaに粉状の捕集補助材を混合し、排気路33の下流側において、余剰噴霧塗料を捕集補助材とともにフィルタで捕集するようにしてもよく、また、塗装域2からの排出空気eaに含まれる余剰噴霧塗料を湿式捕集する場合には、余剰噴霧塗料に対する湿式の捕集装置を排気域32に配置するようにしてもよい。
【0076】
上記排気路33を通じた空気排出により、各ロボット設置域5は隣接する塗装域2よりも高圧に保たれて、これらロボット設置域5からは対応塗装域2との間の仕切り壁24に形成された作業用開口24aを通じて対応塗装域2に流入する横向きないし斜め下向きの空気流raが形成され、この空気流raにより各塗装域2においてロボット設置域5の側への余剰噴霧塗料の飛散を抑止する。
【0077】
つまり、噴霧手段4による下向き塗料噴霧により塗料飛散が抑制されることとも相俟って、上記空気流raによりロボット設置域5の側への余剰噴霧塗料の飛散を抑止することで、塗装ロボット6の本体部に対する余剰噴霧塗料の付着はもとより塗装ロボット6のアーム7に対する余剰噴霧塗料の付着も効果的に防止する。
【0078】
また、各塗装域2の一側壁2wに沿って下向きに流れるエアカーテンfaを形成することで、塗装域2の一側壁2wに向かう余剰噴霧塗料はエアカーテンfaにより捕捉し、これにより、各塗装域2の一側壁2wに対する余剰噴霧塗料の付着も防止する。
【0079】
即ち、上記の如く噴霧手段4による下向き塗料噴霧により塗料飛散が抑制されることで、塗装域2の一側壁2wに向かう余剰噴霧塗料の拡がり幅も小さく抑制され、このことから、エアカーテンfaが幅寸法dの小さいものであっても、各塗装域2の一側壁2wに対する塗料付着は効果的に防止することができる。
【0080】
塗装域2と塗装域一側壁2wの内面が面する領域との間(即ち、塗料粒子が飛散する粒子飛散域とその粒子飛散域からの粒子侵入を防止すべき侵入防止域との間)に上記エアカーテンfaを形成するにあたっては、図6に示すように、エアカーテン形成用の気流吹出口31に、エアカーテンfaの厚み方向中間部に位置して、上流縁が下流縁に対して相対的に塗装域一側壁2wの側に寄った傾斜姿勢の気流案内板40を設けてある。
【0081】
即ち、気流吹出口31からの吹き出し空気流を、気流案内板40により、粒子飛散域である塗装域2の域内側を高速で下向きに進行する高速エアカーテン気流fa1と、侵入防止域である塗装域一側壁2wの側を低速で下向きに進行する低速エアカーテン気流fa2とに分流し、これら高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とを塗装域一側壁2の内面に沿わせて隣接状態で並進させるようにしてある。
【0082】
つまり、これら高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2との並進において、それらの風速差により低速エアカーテン気流fa2の側から高速エアカーテン気流fa1の側に向う速度成分を有するとともに、気流吹出口31からの吹き出し風速成分も有する誘引流fa3を生じさせ、これにより、塗装域2から塗装域一側壁2aの側への余剰噴霧塗料の侵入を効果的に阻止して、塗装域一側壁2wの内面に対する塗料付着を防止する。
【0083】
なお、隣り合う塗装域2どうしは隔壁34又は垂れ壁又はエアカーテンにより仕切ってあり、これにより、隣り合う塗装域2どうしの間(即ち、先行塗装域2′と後行塗装域2″との間)での余剰噴霧塗料の相互移動を防止する。
【0084】
また、隣り合うロボット設置域5どうしはそれらの並び方向において互いに開放させ、あるいは、仕切るにしてもエアカーテンにより仕切るに止め、これにより隣り合う塗装ロボット6どうしの間(即ち、先行塗装ロボット6′と後行塗装ロボット6″との間)での受渡部20を介した被塗物Wの受渡しを容易にする。
【0085】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
【0086】
保持具8と連結状態にある被塗物Wを保持する受渡部20は、被塗物W及び保持具8を載せ置く形態で保持するものに限らず、被塗物W及び保持具8を吊り下げ形態で保持するものなどであってもよい。
【0087】
また、塗装ロボット6どうしによる被塗物Wの受け渡しには、先行塗装ロボット6′が先行塗装後の被塗物Wを受渡部20に保持させ、その後、後行塗装ロボット6″が受渡部20に保持された被塗物Wを後行塗装に先立ち受け取る形態に限らず、先行塗装ロボット6′が後行塗装ロボット6″に対して先行塗装後の被塗物Wを直接に手渡す形態を採用してもよい。
【0088】
塗装域2の上部に配置する噴霧手段4は、塗料を鉛直下向きに噴霧するものに限らず、塗料を斜め下向きに噴霧するものであってもよく、また、塗料の噴霧向きを下向き範囲内において変更し得るものにしてもよい。
【0089】
噴霧手段4として、被塗物Wの種類や噴霧塗料の種類などに応じて選択的に使用する複数の噴霧手段を塗装域2の上部に配備してもよい。
【0090】
各塗装域2に対する給気構造については図7図9に示す構成にしてもよい。
【0091】
つまり、エアカーテン形成用の気流吹出口31を下面に形成したエアカーテン形成用の吹出ボックス35を、各塗装域2における一側壁2wの上部に配設する。
【0092】
そして、塗装域用の給気チャンバ28から延出する2本のソックフィルタ29をエアカーテン形成用吹出ボックス35の側面まで至らせて、それらソックフィルタ29の先端部を絞り開口や風量調整ダンパなどの絞り機構35aを通じてエアカーテン形成用吹出ボックス35の内部に開口させる。
【0093】
即ち、この給気構造では、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbの一部を両ソックフィルタ29から各塗装域2の上部に供給するのに併行して、塗装域用の給気チャンバ28に受け入れた換気用空気sbの他部を両ソックフィルタ29を通じてエアカーテン形成用吹出ボックス35に供給し、これにより、気流案内板40を備えるエアカーテン形成用の気流吹出口31から高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とを並進状態で吐出させて、塗装域2の一側壁2wに沿うエアカーテンfaを形成する。
【0094】
また、各塗装域2に対する給気構造については図10図12に示す構成にしてもよい。
【0095】
つまり、各塗装域2における一側壁2wの両端隅部に塗装域2の全高に及ぶ塗料タンク設置室36を形成し、これら塗料タンク設置室36の平面視横断面形状は塗装域2における一側壁2wの両端隅部に納まる略三角形状にする。
【0096】
そして、エアカーテン形成用気流吹出口31の平面形状(即ち、エアカーテンfaの平面視横断面形状)は、塗料タンク設置室36の三角横断面形状における底辺部と塗装域2の一側壁2wとにより囲まれる台形形状にする。
【0097】
即ち、この給気構造であれば、エアカーテンfaにより、塗装域2の一側壁2wに対する余剰噴霧塗料の付着を防止するとともに、両塗料タンク設置室36の室壁に対する余剰噴霧塗料の付着も併せて防止することができる。
【0098】
なお、この場合も、エアカーテンfaは、粒子飛散域である塗装域2の域内側を高速で進行する高速エアカーテン気流fa1と、侵入防止域である塗装域一側壁2wの側を低速で進行する低速エアカーテン気流fa2とにより形成するのが望ましい。
【0099】
さらに各塗装域2に対する給気構造については図13に示す構成にしてもよい。
【0100】
つまり、各塗装域2の上部に設ける渡りダクト30の下壁30aをパンチング板やフィルタなどにより形成する多孔構造30aにし、これにより、ソックフィルタ29を省略して、渡りダクト30の下壁多孔構造30aから塗装域2の上部に換気用空気sbを吹出供給する。
【0101】
そして、渡りダクト30を通じてエアカーテン形成用の気流吹出口31から吐出させる気流を気流案内板40により高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とに分流することで、塗装域2の一側壁2wに沿うエアカーテンfaを形成する。
【0102】
ロボット設置域5に設置する塗装ロボット6は、床置き型のものに限らず、壁掛け型や天井吊り型など、どのような設置形式のものであってもよい。
【0103】
塗装ロボット6のアーム先端部7aと被塗物Wとの連結に用いる保持具8の具体的な形状・構造は種々の構成変更が可能である。
【0104】
また、塗装ロボット6のアーム先端部7aを保持具8に連結するアーム・保持具連結手段の具体的な構造、及び、保持具8を被塗物Wに連結する保持具・被塗物連結手段の具体的な構造も、前述の実施形態で示したものに限らず、種々の構成変更が可能である。
【0105】
前述の実施形態では、吸盤9の内部に向かう空気流を逆止弁11により阻止することで吸盤9の被塗物Wに対する吸着状態を保持する例を示したが、この逆止弁11に代えて図14に示すように、開閉弁23を保持具8の主吸引路10bなどに介装するようにしてもよい。
【0106】
即ち、吸盤9を被塗物Wに対する吸着状態に保持するときには、この開閉弁23を制御手段19からの無線信号による指令などにより閉じ操作し、一方、吸盤9の内部空気を吸引手段により吸引して吸盤9を被塗物Wに対し吸着させるときや、吸盤9の内部を大気開放して吸盤9の被塗物Wに対する吸着状態を解除するときには、この開閉弁23を制御手段19からの無線信号による指令などにより開き操作するようにしてもよい。
【0107】
また、前述の実施形態では、吸盤9の内部空気を吸引して吸盤9を被塗物Wに対し吸着させるときだけ吸引手段(図示省略)を吸引路10の吸引口10aに接続する構成にしたが、これに代え、アーム先端部7aと保持具8との連結状態を保持するアーム側吸引路16を通じて付与される空気吸引力を利用して吸盤9の内部空気を吸引することで、吸盤9を被塗物Wに吸着させる構成にしてもよい。
【0108】
噴霧手段4は昇降操作が自在な状態で塗装域2に配置し、これにより、噴霧手段4に対するメンテナンスを容易に行えるようにしてもよい。
【0109】
そして、この場合、例えば図15に示すように、上下揺動が自在な平行リンク機構37の揺動端に下向き姿勢の噴霧手段4を取り付け、そして、この平行リンク機構37を上昇揺動側に付勢するウエイトなどの付勢手段38を設けるとともに、平行リンク機構37の揺動範囲を規定する緩衝用エアシリンダなどの限界規定手段39を設けるようにしてもよい。
【0110】
つまり、この構造であれば、通常時は平行リンク機構37を限界規定手段39により規定される上昇限界位置まで上昇揺動させた状態にすることで、噴霧手段4を下向き姿勢で塗装域2の上部位置に保持することができ、この状態で、噴霧手段4を被塗物Wに対して塗料噴霧させることができる。
【0111】
一方、噴霧手段4に対するメンテナンス作業時などには、付勢手段38の付勢力に抗し平行リンク機構37を鉛直下向き姿勢となる下降限界位置まで下降揺動させて、付勢手段38の付勢方向を反転させることで、噴霧手段4を下向き姿勢で塗装域2の下部位置に保持することができ、この状態で、噴霧手段4に対するメンテナンス作業などを行うことができる。
【0112】
前述の各実施形態では、隣接状態で並進する高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とを形成するのに、エアカーテン形成用の気流吹出口31から吐出させる気流を気流案内板40により高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とに分流する形成形態を示したが、本発明以外では、隣接状態で並進する高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とを形成する気流吹出構造について種々の構成変更が考えられる。
【0113】
例えば、本発明に対する比較構成として、図16に示すように、高速エアカーテン気流fa1を吹き出す高速側の気流吹出口31aと、低速エアカーテン気流fa2を吹き出す低速側の気流吹出口31bとを隣接状態で各別に設けて、両カーテン気流fa1,fa2を形成することも考えられる。
【0114】
気流案内板40により高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2を形成する場合、その気流案内板40の傾斜姿勢を調整することで、高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2との風速比を調整する風速比調整部を設けてもよい。
【0115】
また、高速側の気流吹出口31aと低速側の気流吹出口31bとを隣接状態で設けて高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2を形成する上記比較構成の場合、同図16に示すように、高速側の気流吹出口31aからの吹き出し風量を調整する風量調整ダンパVa、及び、低速側の気流吹出口31bからの吹き出し風量を調整する風量調整ダンパVbを設け、これら風量調整ダンパVa,Vbを風量比調整部として、各風量調整ダンパVa,Vbの開度を調整することで、高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2との風速比を調整することも考えられる。
【0116】
隣接状態で並進する高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2とにより粒子飛散域から侵入防止域への粒子侵入を防止する本発明の実施において、粒子飛散域と侵入防止域とは、塗装域2の域内と塗装域一側壁2wの内面が面する領域とに限られるものではなく、例えば、クリーンルームを侵入防止域とし、そのクリーンルームに対する前室を粒子飛散域とするなどの形態で本発明を実施してもよい。
【0117】
また、高速エアカーテン気流fa1と低速エアカーテン気流fa2との並進方向は、下向きに限られるものではなく、横向きや上向きなどであってもよい。
【0118】
侵入防止対象の微粒子は、塗料粒子や粉塵に限らず化学物質や菌類など、どのようなものであってもよい。
【0119】
また、高速エアカーテン気流fa1及び低速エアカーテン気流fa2夫々の具体的な風速や厚みも、侵入防止対象である粒子の種別などに応じて決定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のエアカーテン装置は、粒子飛散域から侵入防止域への粒子の侵入を防止する必要がある各種分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0121】
2 粒子飛散域,塗装域
fa エアカーテン
fa1 高速エアカーテン気流
fa2 低速エアカーテン気流
31 気流吹出口
40 気流案内板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図16