(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
複数のフェルールを有する光コネクタを清掃する清掃工具であって、前記フェルールに清掃体を押し当てる押圧面において、前記清掃体の掛け渡された複数のヘッドと、前記ヘッドの間に挟まれて配置され、それぞれのヘッドを後退可能に案内する案内部材と、前記清掃体を露出させつつ、前記複数のヘッド及び前記案内部材を収容する筒状のカバーとを備えたことを特徴とする清掃工具が明らかとなる。
このような清掃工具によれば、高密度に配置された複数のフェルールを簡易な構成の清掃工具で清掃できる。
【0014】
前記カバーの内壁面と前記案内部材との間に、それぞれの前記ヘッドが挟まれて配置されていることが望ましい。これにより、ヘッドの移動方向を制限できる。
【0015】
前記ヘッドにはフランジ部が形成されており、前記案内部材にはレール部が形成されており、前記フランジ部が前記レール部に入り込むことによって、前記ヘッドが案内されていることが望ましい。前記カバーの内壁面と前記案内部材との間に前記ヘッドが挟まれて配置されている状況下であれば、前記フランジ部が前記レール部から外れにくくなる。
【0016】
前記光コネクタは、前記フェルールを収容するハウジングを有しており、前記カバーの前記光コネクタ側の開口の周縁は、前記ハウジングに突き当たる突き当て部を構成していることが望ましい。これにより、所定の押圧力で清掃体をフェルールに押し当てることができる。
【0017】
前記ハウジングは、フェルールを収容する内部ハウジングと、前記内部ハウジングを収容する外部ハウジングとを有しており、前記カバーは、前記内部ハウジングに突き当たる突き当て部を構成する壁部を有し、前記壁部は、前記外部ハウジングの内壁面によって案内されることが望ましい。これにより、光コネクタ(フェルール)に対する清掃体の位置を合わせることができる。
【0018】
前記光コネクタは、プラグインユニットの奥に位置するコネクタ取付壁に取り付けられたバックプレーンコネクタであり、前記清掃工具は、前記プラグインユニットに形成されたプリントボード用の案内溝にスライド可能なボードに取り付けられていることが望ましい。これにより、プラグインユニットの奥に位置する光コネクタの清掃作業が容易になる。
【0019】
===第1実施形態===
<清掃工具1の概要>
図1A〜
図1Eは、第1実施形態の清掃工具1の正投影図である。
図2Aは、第1実施形態の清掃工具1の斜視図である。
図2Bは、延出部9のヘッド用カバー30と、工具本体3の本体用カバー3A及び本体用ハウジング3Bを外した分解斜視図である。
【0020】
以下の説明では、
図2Aに示すように、各方向を定義する。すなわち、工具本体3から延出部9が延び出る方向(工具本体3に対して延出部9が伸縮する方向)を「前後方向」とし、工具本体3から見て延出部9の側を「前」とし、逆側を「後」とする。また、清掃工具1の複数のヘッド10(ここでは2つのヘッド10:
図3A及び
図3B参照)の並ぶ方向を「上下方向」とし、ヘッド10における清掃体2の送り方向の上流側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、前後方向及び上下方向と垂直な方向を「左右方向」とし、後側から前側に向かって見たときの右側を「右」、逆側を「左」とする。
【0021】
清掃工具1は、光コネクタ50(後述:
図5参照)の清掃に用いられる。清掃対象となる光コネクタ50の形状については後述する。清掃工具1は、工具本体3と、工具本体3の開口から延び出た延出部9とを備えている。延出部9は、工具本体3に対して前後方向に移動可能(伸縮可能)である。
【0022】
延出部9は、ヘッド部9Aを有している。ヘッド部9Aは、光コネクタ50の接続端面(フェルール51の端面)に清掃体2を押し付けるための部位である。ヘッド部9Aは延出部9の前端部に位置しており、光コネクタ50に清掃体2を押し付け可能なように清掃体2が露出している。
【0023】
清掃工具1を用いて光コネクタ50を清掃するとき、作業者は、本体用カバー3A越しに工具本体3を持ち、光コネクタ50にヘッド部9Aの清掃体2を押しつけ、その状態で工具本体3を前側(光コネクタ50の側)に向かって移動させる(プッシュ動作)。このとき、延出部9の後側の部位が工具本体3の内側に入り込む。次に、作業者は、工具本体3を後側に移動させて、光コネクタ50からヘッド部9Aを離す(プル動作)。このとき、延出部9の筒体に内蔵されたコイルバネ(不図示)によって、工具本体3の内側に入り込んだ延出部9が元の位置に戻る。
【0024】
作業者の行うプッシュ動作とプル動作によって、工具本体3と延出部9とが前後方向に相対移動(直線移動)する。清掃工具1は、この相対移動を利用して、供給リール4Aからの未使用の清掃体2の供給と、使用済みの清掃体2の巻取リール4Bへの巻き取り(回収)とを行っている。
【0025】
なお、清掃工具1は、清掃体2を巻き取る巻取機構として、ラックアンドピニオン機構5A,5Bと、ラチェット機構6A,6Bと、摩擦伝動機構7A,7Bとを備えている。ラックアンドピニオン機構5A,5Bは、工具本体3と延出部9との間の直線運動を回転運動に変換する変換機構であり、延出部9側に設けられた直線歯車であるラック5Aと、工具本体3側の伝動車8に設けられた円形歯車であるピニオン5Bとを有する。ラチェット機構6A,6Bは、巻取リール4Bの回転方向を一方向(清掃体2の巻取方向)に制限する機構であり、工具本体3のハウジングに取り付けられラチェット爪6Aと、巻取リール4Bに設けられたラチェット歯車6Bとを有する。摩擦伝動機構7A,7Bは、伝動車8の回転力を摩擦力によって巻取リール4Bに伝達する機構であり、伝動車8に設けられた摩擦板7Aと、巻取リール4Bに設けられた摩擦面7Bとを有する。
【0026】
清掃時のプッシュ動作では、延出部9のラック5Aがピニオン5Bに対して後側に移動し、
図2Bの伝動車8(ピニオン5B)が時計回りに回転する。このとき、巻取リール4Bはラチェット機構6A,6Bによって時計回りの回転が制限されており、摩擦伝動機構7A,7Bの摩擦板7Aと摩擦面7Bとの間に滑りが生じ、伝動車8が空回りして巻取リール4Bは回転しない。
清掃時のプル動作では、延出部9のラック5Aがピニオン5Bに対して前側に移動し、
図2Bの伝動車8(ピニオン5B)が反時計回りに回転する。ラチェット機構6A,6Bは巻取リール4Bの反時計回りの回転を許容しているため、伝動車8(ピニオン5B)の回転力が巻取リール4Bに伝達されて、巻取リール4Bが反時計回り(巻取方向)に回転する。これにより、清掃体2が巻取リール4Bに巻き取られる。なお、巻取リール4Bの巻き取り量に相当する清掃体2が供給リール4Aから供給されることになる。
【0027】
<清掃工具1のヘッド部9A>
図3A及び
図3Bは、清掃工具1のヘッド部9Aの斜視図である。
図3Aでは、清掃体2を外した状態でヘッド部9Aを図示している。
図3Bでは、更にヘッド用カバー30を外した状態でヘッド部9Aを図示している。
図4は、ヘッド部9Aの分解図である。
【0028】
ヘッド部9Aは、複数(ここでは2つ)のヘッド10と、複数(ここでは2つ)の押圧バネ17と、案内部材20と、ヘッド用カバー30とを有する。
【0029】
ヘッド10は、清掃体2を光コネクタ50の接続端面(フェルール51の端面)に押し当てるための部材である。ヘッド10は、押圧部11と、傾動バネ12と、案内部13と、バネ固定部14と、突出部15と、を有する。
【0030】
押圧部11は、光コネクタ50に清掃体2を押し当てるための押圧面11Aを有する部位であり、ヘッド10の前側端部に配置されている。押圧面11Aには清掃体2が巻き掛けられており、未使用の清掃体2が押圧面11Aの上側から供給され、使用済みの清掃体2が押圧面11Aの下側へ送り出されることになる。押圧部11の後側には傾動バネ12が配置されている。
【0031】
傾動バネ12は、弾性変形することによって、光コネクタ50の接続端面(フェルール51の端面)の傾きに応じて押圧部11(押圧面11A)を傾動させる。
案内部13は、断面H型の部位であり、清掃体2を前後方向に案内しつつ、案内部材20に対してヘッド10を前後方向に案内する部位である。案内部13は、案内面13Aと、フランジ部13Bとを有する。上下の案内面13Aのうち、外側を向いた案内面13A(ヘッド用カバー30の上下の壁部31の内壁面と対向する案内面13A)は、清掃体2を前後方向に案内する面となる。つまり、案内面13Aとヘッド用カバー30の上下の壁部31の内壁面との間の隙間を清掃体2が通過することになる。上下の案内面13Aのうち、内側を向いた案内面13A(案内部材20と対向する案内面13A)は、案内部材20に案内される面となる。フランジ部13Bは、左右両側から上下方向に出っ張った部位(縁部)である。フランジ部13Bは、案内部材20のレール部21Aとヘッド用カバー30の上下の壁部31の内壁面との間で上下方向から挟まれている。また、左右のフランジ部13Bの外側の面はヘッド用カバー30の左右の壁部32の内壁面に対向しており、案内部13は、ヘッド用カバー30の左右の壁部32の内壁面の間で左右方向から挟まれている。このように、フランジ部13Bがヘッド用カバー30の内壁面によって上下方向及び左右方向に拘束されることによって、ヘッド10の前後方向の移動は許容されつつ、他方向の移動は制限される。
【0032】
バネ固定部14は、押圧バネ17の前端を固定する部位である。押圧バネ17は圧縮変形しており、ヘッド10は、押圧バネ17から常に前側に押されている。
【0033】
突出部15は、ヘッド10の後側で左右対称に外側に向かって突出した部位である。案内部材20にはガイド窓23が形成されており、このガイド窓23の中にヘッド10の突出部15が配置される。ヘッド10は押圧バネ17から前側に押されているため、通常時(清掃時以外)には、突出部15がガイド窓23の前縁に接触している。
【0034】
本実施形態では、複数(ここでは2つ)のヘッド10がヘッド部9Aに設けられている。2つのヘッド10は、案内部材20を挟むように上下に配置されている。この2つのヘッド10によって、光コネクタ50の2つの接続端面(2つのフェルール51のそれぞれの端面)を同時に清掃可能である。それぞれのヘッド10は独立して前後方向に移動可能である。これにより、各ヘッド10により清掃体2を所定の押圧力でそれぞれのフェルール51の端面に押し付けることができる。
【0035】
また、本実施形態では、複数(ここでは2つ)のヘッド10の押圧面11Aを共通の清掃体2が掛け渡されている。そして、2つのヘッド10への未使用の清掃体2の供給や、2つのヘッド10からの使用済みの清掃体2の巻き取りは、同じ機構(例えばラックアンドピニオン機構5A,5B、ラチェット機構6A,6B、摩擦伝動機構7A,7Bなど)によって行われる。このため、清掃体2を供給して巻き取るための機構が共通化されるため、清掃工具1を構成する部品数を抑制できる。
【0036】
押圧バネ17は、ヘッド10と案内部材20との間に配置され、案内部材20に対してヘッド10を前側に押圧するバネである。押圧バネ17の前端は、ヘッド10のバネ固定部14に固定されており、押圧バネ17の後端は、案内部材20に固定されている。押圧バネ17は、圧縮変形した状態でヘッド10と案内部材20との間に配置されている。ヘッド10は押圧バネ17から前側に押されているが、清掃時に光コネクタ50からの押圧力によってヘッド10が後側に力を受けると、押圧バネ17が更に圧縮変形し、ヘッド10が案内部材20に対して後側に移動する。これにより、ヘッド10は、所定の押圧力で清掃体2をフェルール51の端面に押し付けることができる。
【0037】
案内部材20は、複数(ここでは2つ)のヘッド10を前後方向に移動可能に案内する部材である。案内部材20は、ヘッド案内部21と、バネ収容部22と、ガイド窓23とを有する。
ヘッド案内部21は、複数(ここでは2つ)のヘッド10を前後方向に移動可能に案内する部位である。ヘッド案内部21は、案内部材20の前側に配置されており、ヘッド案内部21の上下両側にヘッド10がそれぞれ配置されている。ヘッド案内部21の上下両面は、ヘッド10の案内面13Aと対向しており、ヘッド10を案内する。ヘッド案内部21の上下には、それぞれレール部21A(凹部)が形成されており、このレール部21Aにヘッド10のフランジ部13Bが入り込み、ヘッド10が前後方向に案内される。
【0038】
バネ収容部22は、ヘッド10を前側に押圧する押圧バネ17の後端部を収容する部位である。押圧バネ17は、伸縮可能にバネ収容部22に収容されており、押圧バネ17の後端は、バネ収容部22の中で案内部材20の壁面に接触して固定されている。
ガイド窓23は、案内部材20の左右の壁面に前後方向に沿って形成された窓(開口)である。ガイド窓23の中にヘッド10の突出部15が配置される。ガイド窓23の前縁は、押圧バネ17によって前側に押されているヘッド10が前側に抜け落ちないように、ヘッド10の突出部15を係止する。
【0039】
本実施形態では、ヘッド10の間に挟まれるように案内部材20が配置されており、2つのヘッド10が、共通の案内部材20(ヘッド案内部21)によって後退可能に案内されている。これにより、各ヘッド10にそれぞれ案内部材20を用意する場合と比較して、部品数を削減できる。また、各ヘッド10にそれぞれ案内部材20を用意する場合と比較して、ヘッド10の上下方向の間隔をより狭めることが可能になり、高密度に配置された複数(ここでは2つ)のフェルール51(上下方向の間隔を短くして配置した2つのフェルール51)の清掃が可能になる。
なお、本実施形態では、案内部材20を挟む複数(ここでは2つ)のヘッド10に共通の清掃体2が掛け渡されているため、それぞれのヘッド10が清掃体2から案内部材20に向かって力を受けている。このため、案内部材20のヘッド案内部21の上下両側でヘッド10をそれぞれ案内しやすくなっている。
【0040】
ヘッド用カバー30は、延出部9の前側でヘッド10、押圧バネ17及び案内部材20を収容する角筒状の部材である。ヘッド用カバー30の前側及び後側は開口している。ヘッド用カバー30の前側の開口では、ヘッド10上の清掃体2が露出している(
図2A参照)。ヘッド用カバー30の後側の開口では、未使用の清掃体2が上流の供給リール4Aから供給されるとともに、使用済みの清掃体2が下流の巻取リール4Bへ排出される。
【0041】
角筒状のヘッド用カバー30は、上下の壁部31と、左右の壁部32とを有する。これらの壁部31,32の内壁面は、ヘッド10の動きを前後方向のみに制限している。ヘッド用カバー30の上下の壁部31の内壁面は、案内部材20との間でヘッド10の案内部13を上下から挟み込んでいる。なお、ヘッド10のフランジ部13Bが案内部材20のレール部21Aに入り込んだ状態で、ヘッド用カバー30の上下の壁部31の内壁面と案内部材20との間にヘッド10が挟まれて配置されているため、フランジ部13Bがレール部21Aから外れにくくなっている。また、ヘッド用カバー30の左右の壁部32の内壁面は、左右のフランジ部13Bの外側の面を左右から挟み込んでいる。これにより、ヘッド10の前後方向の移動は許容されつつ、他方向の移動は制限される。
【0042】
ヘッド用カバー30の前縁(前側の開口の周縁)は、清掃時に光コネクタ50のハウジング(外部ハウジング53又は内部ハウジング52)に突き当たる突き当て部になる(後述:
図6B参照)。ヘッド用カバー30の左右の壁部32の前縁は、内部ハウジング52の前縁に突き当たることになる。また、ヘッド用カバー30の上下の壁部31の前縁は、光コネクタ50の外部ハウジング53の前縁に突き当たることになる。なお、上下の壁部31と左右の壁部32の両方が光コネクタ50のハウジング(外部ハウジング53又は内部ハウジング52)に突き当たるのではなく、どちらか一方の壁部だけが光コネクタ50のハウジングに突き当たるようにしても良い。この場合、他方の壁部は、別の光コネクタ(相手方の光コネクタ)のハウジングに突き当たるように構成されることが好ましい。
【0043】
ヘッド用カバー30の左右の壁部32は、上下の壁部31よりも前側に突出している。このため、清掃時に光コネクタ50に清掃工具1の延出部9のヘッド部9Aを挿入すると、前側に突出した左右の壁部32が光コネクタ50に挿入されることになる。このとき、後述するように、ヘッド用カバー30の左右の壁部32の外面が、光コネクタ50の内壁面(外部ハウジング53の左右の内壁面)に案内されて、光コネクタ50に対するヘッド部9Aの左右方向の位置合わせが行われる。また、左右の壁部32の前側に突出した部位の上縁及び下縁が、光コネクタ50の内壁面(外部ハウジング53の上下の内壁面)に案内されて、光コネクタ50に対するヘッド部9Aの上下方向の位置合わせが行われる。
【0044】
本実施形態では、複数(ここでは2つ)のヘッド10及び案内部材20が、共通のヘッド用カバー30の内部に収容されている。これにより、各ヘッド10をそれぞれ別々のヘッド用カバー30に収容する場合と比較して、部品数を削減できる。また、各ヘッド10をそれぞれ別々のヘッド用カバー30に収容する場合と比較して、ヘッド10の上下方向の間隔をより狭めることが可能になり、高密度に配置された複数(ここでは2つ)のフェルール51(上下方向の間隔を短くして配置した2つのフェルール51)の清掃が可能になる。
【0045】
<光コネクタ50の清掃>
図5は、清掃対象となる光コネクタ50の斜視図である。光コネクタ50の説明では、フェルール51の端面の側を「前」と表現し、逆側を「後」と表現することがある。
【0046】
光コネクタ50は、複数(ここでは2つ)のフェルール51と、内部ハウジング52と、外部ハウジング53とを有する。
【0047】
フェルール51は、複数の光ファイバを保持する部材であり、ここではMT形光コネクタ(JIS C5981に制定されるF12形光コネクタ。MT:Mechanically Transferable)である。フェルール51の端面からガイドピンが突出している。このガイドピンは、相手側の光コネクタのフェルールのガイドピン穴に挿入されることになる。フェルール51の端面は、ここでは上下方向に平行であるが、斜めに傾斜していることもある。
【0048】
内部ハウジング52は、フェルール51を後退可能に収容する収容部材(ハウジング)である。内部ハウジング52のフェルール収容部には突出部(不図示)が形成されており、この突出部とフェルール51の鍔部とが係合した状態で、フローティング機構(不図示)のコイルスプリング(不図示)の反発力によってフェルール51が前側に押圧されている。相手方の光コネクタが接続されると、フェルール51の端面同士が突き当たることによって、光ファイバの端面同士が物理的に突き当たり、光ファイバ同士が光接続することになる。所定の力で光ファイバの端面同士を突き当てるために、フェルール51が内部ハウジング52内でフローティング機構によって前側に押圧されつつ後退可能に収容されている。図中のフェルール51は初期位置(突出部とフェルール51の鍔部とが係合する位置)にあるが、光コネクタの接続時にフェルール51の端面同士が突き当たると、フェルール51は、初期位置よりも若干後退する。清掃時にヘッド10によって清掃体2がフェルール51の端面に押しつけられたときにも、フェルール51は、初期位置よりも若干後退する。
【0049】
内部ハウジング52は、複数(ここでは2つ)のフェルール51を上下に配置して収容している。2つのフェルール51の端面は、内部ハウジング52の前縁よりも前側に同程度に突出している。2つのフェルール51の間には、フェルール51の端面よりも前側に突出する部材は無い。つまり、複数(ここでは2つ)のフェルール51の間には隔壁のような部材は無いため、複数のフェルール51を上下方向に接近させて配置でき、高密度に複数のフェルール51が配置されている。
【0050】
外部ハウジング53は、内部ハウジング52を収容する収容部材(ハウジング)である。図中の光コネクタ50はプラグインユニットのコネクタ取付壁(ミドルプレーンあるいはバックプレーン)に取り付けられるバックプレーン光コネクタであり、外部ハウジング53は、コネクタ取付壁に取り付けられることになる。外部ハウジング53は当接突片53Aを有しており、クリップ(不図示)を用いて当接突片53Aによってコネクタ取付壁に取り付けられる。
【0051】
なお、
図3A及び
図4に示すヘッド用カバー30の左右の壁部32の内壁面の間隔は、
図5に示す光コネクタ50の内部ハウジング52の左右の間隔とほぼ同じである。このため、ヘッド用カバー30の左右の壁部32の前縁は、清掃時に内部ハウジング52の前縁に突き当たる(後述:
図6B参照)。
【0052】
また、
図3Aに示すヘッド用カバー30の左右の壁部32の内壁面の幅W1(左右の壁部32の左右方向の内寸)は、
図5に示す光コネクタ50のフェルール51の左右の幅W0より広い。このため、清掃時に内部ハウジング52の前縁にヘッド用カバー30を突き当てたとき、フェルール51がヘッド用カバー30の左右の壁部32の内側に入り込むことが可能になり、ヘッド用カバー30の左右の壁部32の間に配置されたヘッド10の清掃体2をフェルール51の端面に押し付けることが可能になる。
【0053】
また、
図3Aに示すヘッド用カバー30の左右の壁部32の外壁面の幅W2(左右の壁部32の外寸)は、
図5に示す光コネクタ50の外部ハウジング53の左右の内壁面の幅W11(左右方向の内寸)よりも若干狭い。このため、清掃時に光コネクタ50の外部ハウジング53の内側に清掃工具1の延出部9のヘッド部9A(ヘッド用カバー30)を挿入するとき(
図6B参照)、外部ハウジング53の左右の内壁面にヘッド用カバー30の左右の壁部32の外面を案内させることができ、清掃工具1の清掃体2とフェルール51の端面との左右方向の位置合わせが行われる。
【0054】
また、
図3Aに示すヘッド用カバー30の左右の壁部32の上下方向の寸法H2(前側に突出した部位の上下方向の寸法)は、
図5に示す光コネクタ50の外部ハウジング53の上下の内壁面の間隔H11(上下方向の寸法)よりも若干狭い。このため、清掃時に光コネクタ50の外部ハウジング53の内側に清掃工具1の延出部9のヘッド部9A(ヘッド用カバー30)を挿入するとき(
図6B参照)、外部ハウジング53の上下の内壁面にヘッド用カバー30の左右の壁部32の上縁及び下縁を案内させることができ、清掃工具1の清掃体2とフェルール51の端面との上下方向の位置合わせが行われる。
【0055】
また、
図3A及び
図4に示すヘッド用カバー30の上下の壁部31の間隔は、
図5に示す光コネクタ50の外部ハウジング53の上下の間隔とほぼ同じである。このため、ヘッド用カバー30の上下の壁部31の前縁は、清掃時に光コネクタ50の外部ハウジング53の前縁に突き当たることになる(
図6B参照)。
【0056】
図5に示す光コネクタ50に着脱することになる相手方の光コネクタ(不図示)は、プラグインユニットに挿脱可能なプリントボード(プリント回路基板)に取り付けられる。相手方の光コネクタも、複数(ここでは2つ)のフェルール51と、内部ハウジング52と、外部ハウジング53とから構成されている。
【0057】
図6A及び
図6Bは、光コネクタ50の清掃時の説明図である。
図6Aは、清掃前のヘッド部9Aの様子の説明図である。
図6Bは、清掃時のヘッド部9Aの様子の説明図である。
【0058】
作業者は、光コネクタ50を清掃するとき、本体用カバー3A越しに工具本体3を持ち、清掃工具1の延出部9のヘッド部9Aを光コネクタ50の外部ハウジング53の内側に挿入する。このとき、作業者は、外部ハウジング53の内壁面にヘッド用カバー30の壁部32を案内させながら、清掃工具1のヘッド部9Aを挿入する。これにより、清掃工具1の清掃体2とフェルール51の端面との位置合わせ(上下方向及び左右方向の位置合わせ)が行われる。
【0059】
清掃工具1のヘッド部9Aを光コネクタ50に挿入している間に、清掃工具1のヘッド10の押圧面11Aが、清掃体2越しにフェルール51の端面に突き当たる。この状態から、更に作業者は、ヘッド用カバー30の前縁が光コネクタ50のハウジング(外部ハウジング53又は内部ハウジング52)に突き当たるまで、ヘッド部9Aを挿入する。このとき、フェルール51の端面からの押圧力によってヘッド10が後側に力を受け、押圧バネ17が圧縮変形し、ヘッド10が案内部材20に対して後側に移動する(後退する)。フェルール51の端面が傾斜している場合には、フェルール51の端面の傾きに応じてヘッド10の押圧部11が傾動バネ12によって傾動する。
図6Bは、このときの状態を示している。
【0060】
図6Bに示すように、ヘッド用カバー30の前縁が光コネクタ50のハウジングに突き当たった状態から、作業者は、手に持っている工具本体3を前側(光コネクタ50の側)に向かって移動させる(プッシュ動作)。このとき、ヘッド用カバー30の前縁が光コネクタ50のハウジングに突き当たった状態なので、光コネクタ50に対して延出部9は移動せず、延出部9の後側の部位が工具本体3の内側に入り込む。次に、作業者は、プル動作によって、工具本体3の内側に入り込んだ延出部9を元の位置に戻す。1回のプッシュ動作及びプル動作によって、使用済みの清掃体2が下側のヘッド10の押圧面11Aよりも下流側に搬送されるとともに、上側のヘッド10よりも上流側の未使用の清掃体2が下側のヘッド10の押圧面11Aまで供給される。
【0061】
本実施形態では、清掃体2の掛け渡された複数(ここでは2つ)のヘッド10に共通の案内部材20(ヘッド案内部21)が挟まれて配置されており、それぞれのヘッド10が独立して案内部材20に案内されている。これにより、清掃時(プッシュ動作及びプル動作の間)に、2つのヘッド10は、それぞれの対応するフェルール51の端面に所定の押圧力で清掃体2を押し付けることができる。また、本実施形態では、清掃体2の掛け渡された複数(ここでは2つ)のヘッド10に挟まれるように案内部材20が配置されており、2つのヘッド10が、共通の案内部材20(ヘッド案内部21)によって後退可能に案内されているため、ヘッド10の上下方向の間隔をより狭めることが可能になり、高密度に配置された複数(ここでは2つ)のフェルール51(上下方向の間隔を短くして配置した2つのフェルール51)の清掃が可能になる。
【0062】
===第2実施形態===
図7は、第2実施形態の清掃工具1の斜視図である。
図8は、第2実施形態の清掃対象の光コネクタ50の説明図である。
図9は、第2実施形態の清掃時の説明図である。
【0063】
図7に示すように、第2実施形態の清掃工具1は、工具本体3と、工具本体3の開口から延び出た複数(ここでは4つ)の延出部9とを備えている。それぞれの延出部9は、ヘッド部9Aを有している。4つのヘッド部9Aは、左右方向(清掃体2の幅方向)に並んで配置されている。
【0064】
それぞれのヘッド部9Aの構成は、第1実施形態とほぼ同様である。すなわち、それぞれのヘッド部9Aは、清掃体2の掛け渡された複数(ここでは2つ)のヘッド10と、2つのヘッド10に挟まれて配置された案内部材20と、ヘッド用カバー30とを有する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、各ヘッド10にそれぞれ別々の案内部材20を用意する場合や、各ヘッド10をそれぞれ別々のヘッド用カバー30に収容する場合と比較して、部品数を削減できるとともに、2つのヘッド10の上下方向の間隔をより狭めることが可能になり、高密度に配置された複数(ここでは2つ)のフェルール51(上下方向の間隔を短くして配置した2つのフェルール51)の清掃が可能になる。
【0065】
なお、工具本体3には、各ヘッド部9Aに対応させて、4つの供給リール4A(不図示)及び4つの巻取リール4B(不図示)が設けられている。清掃時に工具本体3と延出部9とが前後方向に相対移動し、この相対移動を利用して供給リール4Aからの未使用の清掃体2の供給と、使用済みの清掃体2の巻取リール4Bへの巻き取りとが行われる。
【0066】
第2実施形態の清掃工具1は、一対の嵌合部33を有する。一対の嵌合部33は、左右方向から複数(ここでは4つ)のヘッド部9Aを挟むように、左右に並んで配置されている。
【0067】
図8に示すように、第2実施形態の光コネクタ50は、外部ハウジング53と、外部ハウジング53に収容された4つの内部ハウジング52とを有する。それぞれの内部ハウジング52は、複数(ここでは2つ)のフェルール51を有する。
また、第2実施形態の光コネクタ50は、一対のガイドピン54を有する。一対のガイドピン54は、左右方向から外部ハウジング53を挟むように、左右に並んで配置されている。清掃時に光コネクタ50のガイドピン54が、清掃工具1の嵌合部33に嵌合することによって、清掃工具1の清掃体2とフェルール51の端面との上下方向及び左右方向の位置合わせが行われることになる。
【0068】
図9に示すように、第2実施形態の光コネクタ50は、プラグインユニット70の奥に位置するコネクタ取付壁(ミドルプレーンあるいはバックプレーンボード)に取り付けられているバックプレーンコネクタである。第2実施形態の清掃工具1は、プラグインユニット用のプリントボードとほぼ同じサイズのボード73に取り付けられている。
【0069】
作業者は、清掃工具1を取り付けたボード73をプリントボード用の案内溝70Aにスライドさせて、清掃工具1の嵌合部33に光コネクタ50のガイドピン54を挿入させ、清掃工具1のヘッド10の押圧面11Aを清掃体2越しにフェルール51の端面に突き当てる。この状態から、更に作業者が、ボード73を奥にスライドさせると、延出部9の後側の部位が工具本体3の内側に入り込む(プッシュ動作)。次に、作業者は、プル動作によって、工具本体3の内側に入り込んだ延出部9を元の位置に戻す。1回のプッシュ動作及びプル動作によって、使用済みの清掃体2が下側のヘッド10の押圧面11Aよりも下流側に搬送されるとともに、上側のヘッド10よりも上流側の未使用の清掃体2が下側のヘッド10の押圧面11Aまで供給される。
【0070】
第2実施形態では、清掃工具1が4つの延出部9を備えており、合計8つのフェルール51の端面を同時に清掃することができる。また、第2実施形態では、1回の清掃動作によって、各延出部9のそれぞれのヘッド部9Aに対して清掃体2の供給できる(つまり、8つのヘッド10に清掃体2を供給できる)。
【0071】
また、第2実施形態では、清掃工具1を取り付けたボード73を案内溝70Aにスライドさせて光コネクタ50を清掃するため、プラグインユニット70の奥に位置する光コネクタ50の清掃作業が容易になる。
【0072】
===第3実施形態===
図10は、第3実施形態の清掃時の説明図である。第3実施形態では、プラグインユニット用のプリントボードとほぼ同じサイズのボード73に第1実施形態の清掃工具1を2つ取り付けている。そして、作業者は、第2実施形態と同様に、清掃工具1を取り付けたボード73を案内溝70Aにスライドさせて、プラグインユニット70の奥に位置する光コネクタ50(不図示)を清掃する。第3実施形態においても、それぞれの清掃工具1は、高密度に配置された複数(ここでは2つ)のフェルール51の端面を同時に清掃可能である。
【0073】
また、第3実施形態においても、清掃工具1を取り付けたボード73を案内溝70Aにスライドさせて光コネクタ50を清掃するため、プラグインユニット70の奥に位置する光コネクタ50の清掃作業が容易になる。
【0074】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0075】
<ヘッド10の数について>
前述の実施形態では、清掃工具1のヘッド部9Aに2つのヘッド10が設けられていた。但し、ヘッド部9Aのヘッド10の数は、2つに限られるものではなく、3以上の複数であっても良い。ヘッド10の数が3以上の場合においても、ヘッド10とヘッド10との間(或る2つのヘッドの間)に案内部材20が挟まれて配置されていれば、各ヘッド10にそれぞれ案内部材20を用意する場合と比較して、部品数を削減できるだけでなく、ヘッド10の上下方向の間隔をより狭めることが可能になり、高密度に配置されたフェルール51(上下方向の間隔を短くして配置したフェルール51)の清掃が可能になる。
【0076】
<工具本体3と延出部9について>
前述の実施形態では、工具本体3と延出部9とが相対移動可能に構成されており、清掃工具1は工具本体3と延出部9との相対移動を利用して清掃体2をヘッド10に供給していた。但し、清掃工具1の構造や、ヘッド10への清掃体2の供給方法は、これに限られるものではない。例えば、清掃工具1にダイヤルを設け、作業者がダイヤルを回すと供給リールから清掃体2がヘッド10に供給されるとともに、使用済みの清掃体2が巻取リールに巻き取られるように、清掃工具1を構成しても良い。この場合、清掃時に作業者は清掃体2越しにヘッド10をフェルール51に押し付けながら、清掃工具1のダイヤルを回すことになる。この構成であれば、工具本体3と延出部9との相対移動は不要であり、前述のプッシュ動作やプル動作が不要になる。