特許第6231445号(P6231445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231445
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】転流式直流遮断器及びその監視方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   H01H33/59 C
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-136445(P2014-136445)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15236(P2016-15236A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 敬大
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明彦
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−077110(JP,A)
【文献】 特開昭62−082622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷を接続する主回路に直列に挿入された主開閉器と、該主開閉器に直列に接続された副開閉器と、転流スイッチと転流用コンデンサ及び前記転流用コンデンサを介して前記転流スイッチの反対側に設けられた転流回路形成スイッチが直列に接続されて構成され、前記主開閉器に並列に接続された転流回路と、前記転流用コンデンサに電荷を蓄積するコンデンサ充電装置と、前記転流回路に接続され前記転流用コンデンサの電圧を測定する計測用変圧器と、該計測用変圧器で測定した前記転流用コンデンサの電圧変動を検出する検出ユニットとを備え、
前記検出ユニットにより検出された前記転流用コンデンサの電圧変動に基づいて、前記転流用コンデンサに充電された電荷を放電する前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの閉路を監視することを特徴とする転流式直流遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の転流式直流遮断器において、
前記検出ユニットにより、前記転流用コンデンサの電圧が変動しないことが検出されたら前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの開路と判断することを特徴とする転流式直流遮断器。
【請求項3】
請求項2に記載の転流式直流遮断器において、
前記検出ユニットにより、前記転流用コンデンサの電圧が変動しないで前記転流回路に転流電流が通電されていないことが検出されたら前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの開路と判断することを特徴とする転流式直流遮断器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の転流式直流遮断器において、
前記検出ユニットで検出された信号を基に、前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチが開路状態であることを表示し、警報を出す監視装置を備えていることを特徴とする転流式直流遮断器。
【請求項5】
直流電源と負荷を接続する主回路に直列に挿入された主開閉器と、該主開閉器に直列に接続された副開閉器と、転流スイッチと転流用コンデンサ及び前記転流用コンデンサを介して前記転流スイッチの反対側に設けられた転流回路形成スイッチが直列に接続されて構成され、前記主開閉器に並列に接続された転流回路と、前記転流用コンデンサに電荷を蓄積するコンデンサ充電装置と、前記転流回路に接続され前記転流用コンデンサの電圧を測定する計測用変圧器と、該計測用変圧器で測定した前記転流用コンデンサの電圧変動を検出する検出ユニットとを備えた転流式直流遮断器を監視するに当たり、
前記検出ユニットにより検出された前記転流用コンデンサの電圧変動に基づいて、前記転流用コンデンサの充電した電荷を放電する前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの閉路を監視することを特徴とする転流式直流遮断器の監視方法。
【請求項6】
請求項5に記載の転流式直流遮断器の監視方法において、
前記検出ユニットにより前記転流用コンデンサの電圧が変動しないことが検出されたら、前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの開路と判断することを特徴とする転流式直流遮断器の監視方法。
【請求項7】
請求項6に記載の転流式直流遮断器の監視方法において、
前記検出ユニットにより前記転流用コンデンサの電圧が変動しないで前記転流回路に転流電流が通電されていないことが検出されたら、前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの開路と判断することを特徴とする転流式直流遮断器の監視方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の転流式直流遮断器の監視方法において、
前記検出ユニットで検出された信号を基に、前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチが開路状態であることを監視装置で表示し、警報を出すことを特徴とする転流式直流遮断器の監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の転流式直流遮断器の監視方法において、
前記転流用コンデンサの充電電圧の低下を前記検出ユニットで検出することにより、前記転流式直流遮断器による事故電流の遮断失敗を前記監視装置へ表示すると共に、前記転流式直流遮断器の故障時に開放する上位側の遮断器及びき電側遮断器の開放指令を行うことを特徴とする転流式直流遮断器の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転流式直流遮断器及びその監視方法に係り、特に、転流用コンデンサに蓄積した電荷を、主回路電流とは逆方向に流して電流零点を作成して主開閉器を遮断するものに好適な転流式直流遮断器及びその監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転流式直流遮断器として、特許文献1及び2に記載されたものがある。この特許文献1及び2には、転流式直流遮断器は、主開閉器と、この主開閉器に直列接続された副開閉器と、転流用コンデンサと転流スイッチの直列回路から構成され、前記主開閉器に並列に接続される転流回路と、前記転流用コンデンサを充電するコンデンサ充電装置とに加えて、前記転流用コンデンサを介して前記転流スイッチの反対側に設けられた転流回路形成スイッチを備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−192305号公報
【特許文献2】特開2010−287460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の転流式直流遮断器は、直流回路に過大な電流が流れた場合に、転流電流を通電することで零点を発生させていることから、転流スイッチ及び転流回路形成スイッチを介して電気的に主回路と転流回路を接続しているが、事故等の不具合により各スイッチの閉ができない場合には、事故電流の遮断の失敗を瞬時に知ることができず、他機器に影響を及ぼすことが懸念される。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、事故等の不具合が発生しても、事故電流を瞬時に遮断して事故波及を防止することのできる転流式直流遮断器及びその監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転流式直流遮断器は、上記目的を達成するために、直流電源と負荷を接続する主回路に直列に挿入された主開閉器と、該主開閉器に直列に接続された副開閉器と、転流スイッチと転流用コンデンサ及び前記転流用コンデンサを介して前記転流スイッチの反対側に設けられた転流回路形成スイッチが直列に接続されて構成され、前記主開閉器に並列に接続された転流回路と、前記転流用コンデンサに電荷を蓄積するコンデンサ充電装置と、前記転流回路に接続され前記転流用コンデンサの電圧を測定する計測用変圧器と、該計測用変圧器で測定した前記転流用コンデンサの電圧変動を検出する検出ユニットとを備え、前記検出ユニットにより検出された前記転流用コンデンサの電圧変動に基づいて、前記転流用コンデンサに充電された電荷を放電する前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの閉路を監視することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の転流式直流遮断器の監視方法は、上記目的を達成するために、直流電源と負荷を接続する主回路に直列に挿入された主開閉器と、該主開閉器に直列に接続された副開閉器と、転流スイッチと転流用コンデンサ及び前記転流用コンデンサを介して前記転流スイッチの反対側に設けられた転流回路形成スイッチが直列に接続されて構成され、前記主開閉器に並列に接続された転流回路と、前記転流用コンデンサに電荷を蓄積するコンデンサ充電装置と、前記転流回路に接続され前記転流用コンデンサの電圧を測定する計測用変圧器と、該計測用変圧器で測定した前記転流用コンデンサの電圧変動を検出する検出ユニットとを備えた転流式直流遮断器を監視するに当たり、前記検出ユニットにより検出された前記転流用コンデンサの電圧変動に基づいて、前記転流用コンデンサの充電した電荷を放電する前記転流スイッチ及び前記転流回路形成スイッチの閉路を監視することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、事故等の不具合が発生しても、その不具合による事故電流を瞬時に検出し、逸早く事故電流を直流電源より切離すことが可能となり、事故の波及を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の転流式直流遮断器の実施例1を示す直流回路の回路構成図である。
図2】本発明の転流式直流遮断器の監視方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の転流式直流遮断器及びその監視方法を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に、本発明の転流式直流遮断器の実施例1における直流回路の回路構成を示す。
【0012】
該図に示すように、本実施例の転流式直流遮断器14は、直流電源9と負荷10を接続する主回路1に直列に挿入された主開閉器3と、この主開閉器3に直列に接続された副開閉器4と、主開閉器3と副開閉器4との間に接続された可飽和リアクトル8と、主開閉器3と可飽和リアクトル8との直列回路に対して並列接続されたエネルギ吸収非直線抵抗体7と、主回路1の過電流を検出する電流検出器12と、図1に点線矢印で示すように、主開閉器3、副開閉器4、転流スイッチ5、転流回路形成スイッチ5aのそれぞれに開閉指令を出す駆動指令装置13と、転流スイッチ5と転流用コンデンサ6及び転流用コンデンサ6を介して転流スイッチ5の反対側に設けられた転流回路形成スイッチ5aが直列に接続されて構成され、主開閉器3に並列に接続された転流回路2と、転流用コンデンサ6に電荷を蓄積するコンデンサ充電装置11(転流用コンデンサ6は、コンデンサ充電装置11により予め主回路1と逆の極性に充電されている)と、転流回路2に接続され転流用コンデンサ6の電圧を測定する計測用変圧器15と、この計測用変圧器15で測定した転流用コンデンサ6の電圧変動を検出する検出ユニット16と、この検出ユニット16で検出された信号を基に、転流スイッチ5及び転流回路形成スイッチ5aが開路(点弧失敗)であることを表示し、警報を出す監視装置17とから概略構成されている。
【0013】
次に、図1及び図2を用いて主回路1に事故が発生し、過電流を電流検出器12が検出した場合の通常の遮断原理及び本発明の実施例1に係る遮断失敗時の転流式直流遮断器の監視方法について説明する。
【0014】
図2のステップ(A)で直流回路に過大な電流が流れる(主回路事故)と、ステップ(B)で電流検出器12により過電流が検出される。この過電流の検出による駆動指令装置13からの指令に基づき、主回路1の電流を遮断する場合は、主開閉器3を開極直後に、通常はステップ(D)で転流スイッチ5及び転流回路形成スイッチ5aが点弧され、転流用コンデンサ6、転流スイッチ5、主開閉器3、可飽和リアクトル8の転流回路2が形成されて、ステップ(E)で転流用コンデンサ6が放電してコンデンサ電圧が低下し、主回路電流1aと逆方向に転流用コンデンサ6の放電に伴う転流電流2aが流れる。この転流電流2aが主回路電流1aに重畳され、主開閉器3の電流が零点に達すると、ステップ(F)で主開閉器3が消弧して転流式直流遮断器14が開放することで、ステップ(L)で事故電流が遮断される。
【0015】
また、転流スイッチ5及び転流回路形成スイッチ5aが駆動指令装置13の指令により点弧されない場合、従来は事故電流が遮断できず転流式直流遮断器14が損傷し、本来開放しない遮断器を連動により順に開放して事故電流を遮断していたため、事故電流の遮断に時間が掛かってしまい、不具合のある転流式直流遮断器14を持つ変電所全体の焼失にまで事故が波及する恐れがあった。
【0016】
そこで、本実施例では、ステップ(C)で転流式直流遮断器14の開放指令より、ステップ(D)の駆動指令装置13からの指令による転流スイッチ5及び転流回路形成スイッチ5aの点弧の失敗か否か(開閉)を監視するようにしている。
【0017】
その監視方法としては、ステップ(G)で測定部である計測用変圧器15により転流用コンデンサ6の電圧を測定し、この測定した転流用コンデンサ6の電圧が変化(電圧変動)しないこと、即ち、転流回路2に転流電流2aが通電されていないことを検出ユニット16で検出することで、転流スイッチ5及び転流回路形成スイッチ5aの点弧失敗と判断し、ステップ(H)で補助リレーに通電することで異常を検出すると、ステップ(I)で、常時変電所の異常や状態を確認して機器の操作をする監視装置17に、補助リレー接点の動作に伴い信号を送信して警報(ブザー等)を出し表示する。その後、ステップ(J)で関連遮断器に開放指令が与えられ、ステップ(K)で関連遮断器が開放されて事故電流が遮断される(図2のステップ(L))。
【0018】
上述した監視装置17の警報・表示により、監視装置17の管理者は異常を知ることができると共に、監視装置17から転流式直流遮断器14の不具合時に事故電流遮断に必要な、より高電圧な当該変電所の上位遮断器および当該変電所の他回線のき電用遮断器に開放指令を出すことで瞬時に事故電流を遮断することができる。
【0019】
このような本実施例とすることにより、事故等の不具合が発生しても、その不具合による事故電流を瞬時に検出し、逸早く事故電流を直流電源より切離すことが可能となり、事故の波及を防止することができるため、変電所全体に被害を拡大させることなく、被害を最小限に事故を防止することが可能となる。
【0020】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…主回路、1a…主回路電流、2…転流回路、2a…転流電流、3…主開閉器、4…副開閉器、5…転流スイッチ、5a…転流回路形成スイッチ、6…転流用コンデンサ、7…エネルギ吸収非直線抵抗体、8…可飽和リアクトル、9…直流電源、10…負荷、11…コンデンサ充電装置、12…電流検出器、13…駆動指令装置、14…転流式直流遮断器、15…計測用変圧器、16…検出ユニット、17…監視装置。
図1
図2