特許第6231449号(P6231449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231449
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20171106BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G03G9/08 311
   G03G9/08 321
   G03G9/08 325
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-155005(P2014-155005)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-31511(P2016-31511A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年5月20日
【審判番号】不服2016-17796(P2016-17796/J1)
【審判請求日】2016年11月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】玉垣 昌志
(72)【発明者】
【氏名】小川 智之
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 宮澤 浩
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−294467(JP,A)
【文献】 特開2014−48341(JP,A)
【文献】 特開2003−107779(JP,A)
【文献】 特開平11−295917(JP,A)
【文献】 特開2004−294468(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/133234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトナー粒子を含むトナーであって、
前記トナー粒子は、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを有し、
前記シェル層は、熱可塑性樹脂に由来する単位と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含み、
前記シェル層において、前記熱可塑性樹脂に由来する単位は前記熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位で架橋されており、
前記トナーの平均円形度は0.965以上0.975以下であり、
前記トナーに含まれる円形度0.85以下のトナー粒子の量は0.5個数%未満であり、
前記トナーに対する微小圧縮試験において、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、前記トナー粒子に負荷速度60nN/秒で荷重を加え、最大荷重60nNに到達後、前記最大荷重のまま1秒間放置した時の前記トナー粒子の変位量をZ1、前記トナー粒子の粒子径をZ2と表す場合、式「トナー変位率=100×Z1/Z2」で示されるトナー変位率は0.50%以上0.70%以下である、トナー。
【請求項2】
前記トナーに含まれる円形度0.85以下のトナー粒子の量は0.3個数%以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シェル層は、アクリル系樹脂に由来する単位と、尿素樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含み、
前記トナーの平均円形度は0.965以上0.970以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。特許文献1には、着色樹脂粒子の体積平均粒子径及び平均円形度と、トナーの平均破壊強度とをそれぞれ規定して、トナーの低温定着性及び保存性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−171272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、耐熱保存性と定着性とブレードクリーニング性とに優れるトナーを提供することは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性と定着性とブレードクリーニング性とに優れるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナーは、複数のトナー粒子を含む。前記トナー粒子は、コアと前記コアの表面に形成されたシェル層とを有する。前記シェル層は、熱可塑性樹脂に由来する単位と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含む。前記シェル層において、前記熱可塑性樹脂に由来する単位は前記熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位で架橋されている。前記トナーの平均円形度は0.965以上0.975以下である。前記トナーに含まれる円形度0.85以下のトナー粒子の量は0.5個数%未満である。前記トナーに対する微小圧縮試験において、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、前記トナー粒子に負荷速度60nN/秒で荷重を加え、最大荷重60nNに到達後、前記最大荷重のまま1秒間放置した時の前記トナー粒子の変位量をZ1、前記トナー粒子の粒子径をZ2と表す場合、式「トナー変位率=100×Z1/Z2」で示されるトナー変位率は0.50%以上0.70%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱保存性と定着性とブレードクリーニング性とに優れるトナーを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るトナーは、静電荷像の現像に用いることができる。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子と記載する)から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。
【0009】
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電荷像を現像する。これにより、感光体上に形成された静電潜像に、帯電したトナーが付着する。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
【0010】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。シェル層の表面に外添剤が付着していてもよい。また、コアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
【0011】
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(1)〜(4)を有する。
(1)シェル層が、熱可塑性樹脂に由来する単位と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含む。
(2)トナーの平均円形度が0.965以上0.975以下である。
(3)トナーに含まれる円形度0.85以下のトナー粒子の量が0.5個数%未満である。
(4)トナーに対する微小圧縮試験において、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、トナー粒子に負荷速度60nN/秒で荷重を加え、最大荷重60nNに到達後、最大荷重のまま1秒間放置した時のトナー粒子の変位量をZ1、トナー粒子の粒子径をZ2と表す場合、式「トナー変位率=100×Z1/Z2」で示されるトナー変位率が0.50%以上0.70%以下である。なお、トナー粒子の形状が真球でない場合、Z2は、トナー粒子の球換算径に相当する。また、測定時の環境条件に関しては、温度を22℃〜24℃の範囲で、湿度を40%RH〜60%RHの範囲で、それぞれ変動させても、測定されるトナー変位率への影響はほとんどないと考えられる。
【0012】
構成(1)は、トナーの耐熱保存性及び定着性の両立を図るために有益である。詳しくは、熱可塑性樹脂に由来する単位がトナーの定着性(特に、低温定着性)を改善し、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位がトナーの耐熱保存性を改善すると考えられる。
【0013】
構成(2)及び(3)は、トナーのブレードクリーニング性を向上させるために有益である。詳しくは、コアの表面にシェル層を形成する際に、コア同士又はトナー母粒子同士の結合体(異形粒子)が形成されることがある。トナーの平均円形度が十分高くてもトナーが多数の異形粒子を含む場合にはトナーのブレードクリーニング性が低下することを、発明者が見出した。また、トナーの平均円形度と、トナーに含まれる異形粒子(円形度0.85以下のトナー粒子)の量とを、上記のように規定することで、優れたブレードクリーニング性を有するトナーが得られることを、発明者が見出した(後述する表1及び表2を参照)。また、トナーの耐熱保存性を向上させるためには、トナーに含まれる円形度0.85以下のトナー粒子の量が0.3個数%以下であることが好ましく、0.2個数%以下であることがより好ましいと考えられる。
【0014】
構成(4)は、トナーの低温定着性及びブレードクリーニング性を向上させるために有益である。詳しくは、トナー変位率と、トナーの低温定着性及びブレードクリーニング性との間に関係があることを、発明者が見出した(後述する表1及び表2を参照)。また、シェル層が、アクリル系樹脂に由来する単位と、尿素樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含む場合において、トナーの耐熱保存性を向上させるためには、トナーの平均円形度が0.965以上0.970以下であることが好ましいと考えられる。
【0015】
本実施形態に係るトナーにおいて、コアがアニオン性を有し、シェル層の材料(以下、シェル材料と記載する)がカチオン性を有する場合には、シェル層の形成時にカチオン性のシェル材料をコアの表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水性媒体中で負に帯電するコアに、水性媒体中で正に帯電するシェル材料が電気的に引き寄せられ、例えばin−situ重合によりコアの表面にシェル層が形成されると考えられる。シェル材料がコアに引き寄せられることで、分散剤を用いずとも、コアの表面に均一なシェル層を形成し易くなると考えられる。
【0016】
以下、コア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。なお、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
【0017】
[コア]
トナー粒子のコアは、結着樹脂を含む。また、トナー粒子のコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含んでもよい。
【0018】
(コアの結着樹脂)
トナー粒子のコアにおいては、コア成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占めることが多い。このため、結着樹脂の性質がコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、コアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基、アミン、又はアミド基を有する場合には、コアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0019】
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、及びカルボキシル基からなる群より選択される1以上の基を有する樹脂が好ましく、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、コアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
【0020】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、シェル材料の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうしたTgを有する結着樹脂を用いる場合には、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくいと考えられる。
【0021】
結着樹脂のTgは、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて試料(結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のTgを求めることができる。
【0022】
結着樹脂の軟化点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくくなる。また、結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)である場合には、水性媒体中でコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にコアが部分的に軟化し易くなるため、コアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なるTmを有する複数の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
【0023】
結着樹脂のTmは、例えば高化式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(結着樹脂)をセットし、所定の条件で結着樹脂を溶融流出させる。そして、結着樹脂のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を測定する。得られたS字カーブから結着樹脂のTmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値(mm)をS1とし、低温側のベースラインのストローク値(mm)をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度(℃)が、測定試料(結着樹脂)のTmに相当する。
【0024】
結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。結着樹脂として用いることのできる熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂)、ビニル系樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンアクリル系樹脂、又はスチレンブタジエン系樹脂が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性に優れる。
【0025】
以下、結着樹脂として用いることのできるスチレンアクリル系樹脂について説明する。なお、スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。
【0026】
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
【0027】
アクリル系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0028】
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有するモノマー(例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整できる。
【0029】
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸(モノマー)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、(メタ)アクリル酸の使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
【0030】
結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂である場合、コアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
【0031】
以下、結着樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂について説明する。なお、ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを縮重合又は共縮重合することで得られる。
【0032】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる2価アルコールの例としては、ジオール類又はビスフェノール類が挙げられる。
【0033】
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0034】
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが挙げられる。
【0035】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0036】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、又はアルキルコハク酸もしくはアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
【0037】
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
【0038】
上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
【0039】
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
【0040】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、コアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
【0041】
(コアの着色剤)
トナー粒子のコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
トナー粒子のコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0043】
トナー粒子のコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
【0044】
イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリルアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
【0045】
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
【0046】
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0047】
(コアの離型剤)
トナー粒子のコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。コアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
離型剤の好適な例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。
【0049】
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー粒子のコアに添加してもよい。
【0050】
(コアの電荷制御剤)
トナー粒子のコアは、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、コアに負帯電性の電荷制御剤を含ませることで、コアのアニオン性を強めることができる。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
【0051】
(コアの磁性粉)
トナー粒子のコアは、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の例としては、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物(より具体的には、合金)、強磁性化処理(例えば、熱処理)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムが挙げられる。
【0052】
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でコアの表面にシェル層を形成する場合に、コアの表面に金属イオンが溶出すると、コア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、コア同士の固着を抑制することができる。
【0053】
[シェル層]
シェル層は、熱可塑性樹脂に由来する単位(以下、熱可塑性単位と記載する)と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位(以下、熱硬化性単位と記載する)とを含有する。シェル層においては、例えば熱可塑性単位が熱硬化性単位で架橋されている。こうしたシェル層は、熱可塑性樹脂に基づく適度な柔軟性と、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーが形成する三次元の架橋構造に基づく適度な機械的強度との両方を兼ね備えると考えられる。このため、こうしたシェル層を有するトナー粒子から構成されるトナーは、耐熱保存性及び低温定着性の両方に優れる。詳しくは、保管時又は輸送時にシェル層が破壊されにくい。一方、定着時には、温度及び圧力が付与されることで容易にシェル層が破壊され、コア(結着樹脂等)の軟化又は溶融が速やかに進行し易い。このため、低い温度でトナーを記録媒体に定着させることが可能になると考えられる。
【0054】
なお、熱可塑性単位には、熱可塑性樹脂の母体の構造又は性質を大幅に変えない程度の改変(官能基の導入、酸化、還元、又は原子の置き換えなど)がなされた単位が含まれる。また、熱硬化性単位には、熱硬化性樹脂のモノマー又はプレポリマーの母体の構造又は性質を大幅に変えない程度の改変(官能基の導入、酸化、還元、又は原子の置き換えなど)がなされた単位が含まれる。
【0055】
シェル層が熱可塑性単位と熱硬化性単位とを含有する場合、コアの表面に均一な厚さを有するシェル層が形成され易くなる。また、熱硬化性樹脂は強く正帯電し易いため、シェル層が熱硬化性樹脂のみからなる場合には、シェル層が過剰に強く正帯電してしまうことがある。熱硬化性単位に加えて熱可塑性単位をシェル層に含ませることで、トナーの帯電量を所望の範囲に調整し易くなる。なお、シェル層は、電荷制御剤(例えば、正帯電性の電荷制御剤)を含んでいてもよい。
【0056】
シェル層の形成時におけるコア(結着樹脂等)の溶解又は溶出を抑制するためには、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル材料は、水溶性を有していることが好ましい。
【0057】
熱可塑性単位と熱硬化性単位との割合は任意である。熱可塑性単位と熱硬化性単位との割合の例としては、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、又は5:1(それぞれ質量比で、熱可塑性単位:熱硬化性単位)が挙げられる。
【0058】
熱可塑性単位は、熱硬化性単位の官能基(例えば、メチロール基又はアミノ基)と反応し易い官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基)を有することが好ましい。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性単位中に含まれてもよい。
【0059】
熱可塑性単位に係る熱可塑性樹脂としては、水溶性を有する樹脂が好ましく、極性官能基を有する単位(例えば、グリコール、カルボン酸、又はマレイン酸)を含む水溶性の樹脂が特に好ましい。極性官能基を有する熱可塑性樹脂は、高い反応性を有する。水溶性を有する熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(又はその誘導体)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、又はポリエチレンオキサイドが挙げられる。
【0060】
熱可塑性単位はアクリル成分を含むことが好ましく、反応性アクリレートを含むことがより好ましい。アクリル成分を含む熱可塑性単位は、熱硬化性樹脂と反応し易いため、シェル層の膜質を向上させることができると考えられる。熱可塑性単位は、2HEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)を含むことが特に好ましい。
【0061】
熱可塑性単位に係る熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、シリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。熱可塑性単位に係る熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、又はシリコーン−(メタ)アクリル系グラフト共重合体が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。
【0062】
シェル層へ熱可塑性単位を導入するために用いることができるアクリル系モノマーの例としては、アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテルのような、(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテルが挙げられる。
【0063】
熱硬化性単位に係る熱硬化性樹脂の好適な例としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が挙げられる。ポリイミド樹脂は、窒素元素を分子骨格に有する。このため、ポリイミド樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位を含むシェル層は、強いカチオン性を有し易い。ポリイミド樹脂の例としては、マレイミド系重合体、又はビスマレイミド系重合体(より具体的には、アミノビスマレイミド重合体又はビスマレイミドトリアジン重合体)が挙げられる。
【0064】
熱硬化性単位に係る熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂(以下、アミノアルデヒド樹脂と記載する)が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、グリオキザールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。
【0065】
熱硬化性単位に窒素元素を含ませることで、熱硬化性単位の架橋硬化機能を向上させることができる。熱硬化性単位の反応性を高めるためには、メラミン樹脂系の熱硬化性単位では40質量%以上55質量%以下に、尿素樹脂系の熱硬化性単位では40質量%程度に、グリオキザール樹脂系の熱硬化性単位では15質量%程度に、窒素元素の含有量を調整することが好ましい。
【0066】
シェル層へ熱硬化性単位を導入するために用いることができる熱硬化性樹脂のモノマーの例としては、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、スピログアナミン、又はジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)が挙げられる。
【0067】
シェル層の厚さは、1nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上10nm以下であることがより好ましい。シェル層の厚さが20nm以下であると、シェル層が破壊され易くなり、低温でトナーを記録媒体に定着させることが可能になると考えられる。さらに、シェル層の厚さが20nm以下であると、シェル層の帯電性が過剰に強くなることが抑制され、画像が適正に形成され易くなると考えられる。一方、シェル層の厚さが1nm以上であると、シェル層が十分な強度を有すると考えられる。このため、トナーに衝撃(例えば、輸送時の衝撃)が加わった場合にシェル層が破壊されにくくなり、トナーの保存性が向上すると考えられる。なお、シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
【0068】
シェル層は、破壊箇所(機械的強度の弱い部位)を有していてもよい。破壊箇所は、シェル層に局所的に欠陥等を生じさせることにより形成することができる。シェル層に破壊箇所を設けることで、シェル層が容易に破壊されるようになる。その結果、低い温度でトナーを記録媒体に定着させることが可能になる。破壊箇所の数は任意である。
【0069】
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0070】
外添剤の好適な例としては、シリカ、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)が挙げられる。
【0071】
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。本実施形態に係るトナーの製造方法では、コアを準備する。続けて、液に、少なくとも、熱可塑性単位を形成するための材料と、熱硬化性単位を形成するための材料と、コアとを入れる。続けて、液中で、熱可塑性単位と熱硬化性単位とを含有するシェル層をコアの表面に形成する。
【0072】
より具体的には、上記液としてイオン交換水を準備する。続けて、例えば塩酸を用いて液のpHを調整する。続けて、液中に、シェル材料(熱可塑性単位を形成するための材料、及び熱硬化性単位を形成するための材料)を添加する。これにより、液中でシェル材料が溶けて、シェル材料の溶液が得られる。シェル材料の適切な添加量は、コアの比表面積に基づいて算出できる。
【0073】
続けて、得られたシェル材料の溶液にコアを添加して、溶液を攪拌しながら溶液の温度を上昇させる。例えば0.5℃/分〜2℃/分の速度で30分かけて70℃まで液温を上昇させる。これにより、コアの表面にシェル材料が付着し、付着した材料が重合反応して硬化する。その結果、トナー母粒子の分散液が得られる。
【0074】
シェル層硬化時におけるシェル材料の溶液の温度がコアのガラス転移点(Tg)以上になると、コアが変形し易い。例えば、コアの結着樹脂のTgが45℃であり、シェル層に含まれる熱硬化性単位がメラミン樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位である場合には、溶液の温度が50℃付近まで上昇すると、急速にシェル材料(特に、熱硬化性単位を形成するための材料)の硬化反応が促進され、コアが変形する傾向がある。高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。シェル層硬化時の液温を高くすると、コアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるようにシェル層硬化時の液温を調整することが望ましい。なお、シェル層硬化時の液温に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
【0075】
上記のようにしてシェル層を硬化させた後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、液を冷却する。続けて、液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)される。続けて、得られたトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥させる。その後、必要に応じて、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、トナー粒子を多数有するトナーが完成する。なお、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
【実施例】
【0076】
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーA−1〜C−6(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
以下、トナーA−1〜C−6の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、粉体(例えば、コア又はトナー)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の平均である。
【0079】
[トナーA−1の製造方法]
(コアの作製)
トナーA−1の製造方法では、以下の手順でコアを作製した。まず、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、低粘度ポリエステル樹脂(Tg:38℃、Tm:65℃)750gと、中粘度ポリエステル樹脂(Tg:53℃、Tm:84℃)100gと、高粘度ポリエステル樹脂(Tg:71℃、Tm:120℃)150gと、離型剤55gと、着色剤40gとを、回転速度2400rpmで混合した。結着樹脂(ポリエステル樹脂)における低粘度ポリエステル樹脂の比率を増やすことで、結着樹脂の溶融粘度を下げることができる。
【0080】
着色剤としては、DIC株式会社製の「KET Blue111」(フタロシアニンブルー)を用いた。離型剤としては、株式会社加藤洋行製の「カルナウバワックス1号」を用いた。
【0081】
続けて、得られた混合物を、材料投入量5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲80℃以上110℃以下の条件で、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。
【0082】
続けて、機械式粉砕機(株式会社東亜機械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて溶融混練物を粗粉砕した。さらに、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.0μmのコアが得られた。粒子径の測定には、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いた。
【0083】
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。そして、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に、イオン交換水500mLと、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製「ジュリマー(登録商標)AC−103」)50gとを添加した。その結果、フラスコ内にポリアクリル酸ナトリウム水溶液が得られた。
【0084】
続けて、得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液に、前述の手順で作製したコア(粉体)100gを添加した。続けて、フラスコ内容物を室温で十分攪拌した。その結果、フラスコ内にコアの分散液が得られた。
【0085】
続けて、得られたコアの分散液を、目開き3μmの濾紙を用いて濾過した。続けて、濾別されたコアを、イオン交換水に再分散させた。その後、濾過と再分散とを5回繰り返すことにより、コアを洗浄した。そして、500mLのイオン交換水に対して100gのコアが分散した懸濁液をフラスコ内で調製した。
【0086】
続けて、フラスコ内に、メチロール化尿素(昭和電工株式会社製「ミルベンレジンSU−100」、固形分濃度80質量%)1gと、アクリル酸エステル樹脂液(昭和電工株式会社製「コーガムHW−62」、固形分濃度14.5質量%)6.9gとを添加した。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の懸濁液のpHを4に調整した。
【0087】
続けて、pHが調整された懸濁液を、1Lのセパラブルフラスコに移した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら昇温速度0.5℃/分でフラスコ内の温度を65℃(重合温度)まで上げて、フラスコ内容物を回転速度150rpmで攪拌しながらフラスコ内の温度を65℃に30分間保った。フラスコ内の温度を高温(65℃)に保つことで、シェル材料が重合反応するとともに、コアとシェル材料とが相互に反応し、熱可塑性単位と熱硬化性単位とを含むシェル層がコアの表面に形成された。その結果、トナー母粒子を含む分散液が得られた。その後、トナー母粒子の分散液を常温まで冷却し、水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液のpHを7に調整(中和)した。
【0088】
(トナー母粒子の洗浄及び乾燥)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液をろ過(固液分離)して、トナー母粒子を得た。その後、得られたトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。続けて、トナー母粒子を乾燥した。
【0089】
(外添)
上記乾燥後、トナー母粒子に外添を行った。トナー母粒子100質量部と乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「REA90」)1.5質量部とを混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。これにより、多数のトナー粒子を含むトナーA−1が製造された。
【0090】
[トナーA−2の製造方法]
トナーA−2の製造方法は、シェル層を形成するための重合反応時の攪拌速度を150rpmから140rpmに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0091】
[トナーA−3の製造方法]
トナーA−3の製造方法は、シェル層を形成するための重合反応時の攪拌速度を150rpmから130rpmに変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0092】
[トナーB−1の製造方法]
トナーB−1の製造方法は、重合時間を30分から60分に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0093】
[トナーB−2の製造方法]
トナーB−2の製造方法は、重合時間を30分から90分に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0094】
[トナーB−3の製造方法]
トナーB−3の製造方法は、重合温度を65℃から60℃に変更し、重合時間を30分から15分に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0095】
[トナーB−4の製造方法]
トナーB−4の製造方法は、重合温度を65℃から60℃に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0096】
[トナーB−5の製造方法]
トナーB−5の製造方法は、重合温度を65℃から60℃に変更し、重合時間を30分から45分に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0097】
[トナーB−6の製造方法]
トナーB−6の製造方法は、重合温度を65℃から70℃に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0098】
[トナーB−7の製造方法]
トナーB−7の製造方法は、重合温度を65℃から70℃に変更し、重合時間を30分から60分に変更した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0099】
[トナーC−1の製造方法]
トナーC−1の製造方法は、昭和電工株式会社製の「コーガムHW−62」6.9gに代えて、アクリル酸エステル樹脂液(昭和電工株式会社製「コーガムHW−750」、固形分濃度14.5質量%)6.9gを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0100】
[トナーC−2の製造方法]
トナーC−2の製造方法は、シェル層を形成するための重合反応時の攪拌速度を150rpmから130rpmに変更した以外は、トナーC−1の製造方法と同じである。
【0101】
[トナーC−3の製造方法]
トナーC−3の製造方法は、昭和電工株式会社製の「ミルベンレジンSU−100」1gに代えて、水溶性メチロールメラミン(日本カーバイド工業株式会社製「ニカレヂン(登録商標)S−176」)1gを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0102】
[トナーC−4の製造方法]
トナーC−4の製造方法は、シェル層を形成するための重合反応時の攪拌速度を150rpmから130rpmに変更した以外は、トナーC−3の製造方法と同じである。
【0103】
[トナーC−5の製造方法]
トナーC−5の製造方法は、昭和電工株式会社製の「ミルベンレジンSU−100」1gに代えて、水溶性メチロールメラミン(日本カーバイド工業株式会社製「ニカレヂン(登録商標)S−260」)1gを使用した以外は、トナーA−1の製造方法と同じである。
【0104】
[トナーC−6の製造方法]
トナーC−6の製造方法は、シェル層を形成するための重合反応時の攪拌速度を150rpmから130rpmに変更した以外は、トナーC−5の製造方法と同じである。
【0105】
[評価方法]
各試料(トナーA−1〜C−6)の評価方法は、以下の通りである。
【0106】
(平均円形度)
フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、試料(トナー)の円形度を測定した。詳しくは、試料(トナー)に含まれる3000個のトナー粒子の各々の円形度を測定し、測定された3000個の円形度の平均値を評価値とした。
【0107】
(トナー結合率)
フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、試料(トナー)を撮影した。そして、撮影された画像に基づいて、試料(トナー)における円形度0.85以下のトナー粒子の割合(以下、トナー結合率と記載する)を求めた。詳しくは、試料(トナー)に含まれる3000個のトナー粒子についてそれぞれ、円形度が0.85以下であるか否かを判定することで、円形度0.85以下のトナー粒子(以下、結合粒子と記載する)の数を求めた。そして、次の式に従ってトナー結合率(個数%)を求めた。
トナー結合率(個数%)=100×結合粒子の数/3000
【0108】
(トナー変位率)
走査型プローブ顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製「S−image」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)を用いて、試料(トナー)に対して微小圧縮試験を行った。SPMの最大荷重を60nNに設定し、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、負荷速度60nN/秒で、試料(トナー)に含まれるトナー粒子(詳しくは、シェル層)に荷重を加えた。そして、最大荷重(60nN)に到達後1秒経過時のトナー粒子の変位量(以下、変位量Z1と記載する)を測定した。また、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いて、トナー粒子の粒子径(球換算径)を測定した。以下、測定されたトナー粒子の粒子径(球換算径)を、粒子径Z2と記載する。試料(トナー)に含まれる10個のトナー粒子の各々について、上記方法により測定された変位量Z1及び粒子径Z2に基づき、式「トナー変位率=100×変位量Z1/粒子径Z2」で示されるトナー変位率(%)を算出した。そして、10個の測定値の平均を、試料(トナー)の評価値とした。
【0109】
(耐熱保存性)
試料(トナー)3gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器を、55℃に設定された恒温槽(ヤマト科学株式会社製「DKN302」)内に3時間静置した。その後、恒温槽から取り出したトナーを室温まで冷却して、評価用トナーを得た。
【0110】
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の200メッシュの篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り4の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。篩別後、篩を通過したトナーの質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩を通過したトナーの質量とに基づいて、次の式に従ってトナー通過率(質量%)を求めた。
トナー通過率(質量%)=100×篩を通過したトナーの質量/篩別前のトナーの質量
【0111】
トナー通過率が80質量%以上であれば○(良い)と評価し、トナー通過率が80質量%未満であれば×(悪い)と評価した。
【0112】
(帯電量、定着性、画像濃度、ブレードクリーニング性)
現像剤用キャリア(FS−C5300DN用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。そして、得られた2成分現像剤を、温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間放置した。その後、QMメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて、同じ環境(温度20℃、湿度65%RH)下で、2成分現像剤中のトナーの帯電量を測定した。詳しくは、QMメーターの吸引部を用いて現像剤0.10g(±0.01g)中の試料(トナー)を吸引し、吸引された試料(トナー)の量とQMメーターの表示(電荷量)とに基づいて帯電量を算出した。トナーの帯電量が25μC/g以上35μC/g以下であれば○(良い)と評価し、トナーの帯電量が25μC/g未満又は35μC/g超であれば×(悪い)と評価した。
【0113】
また、上述のようにして調製した2成分現像剤を用いて画像を形成して、定着性と画像濃度とブレードクリーニング性とを評価した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5300DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のシアン用の現像器に投入し、試料(トナー)を評価機のシアン用のトナーコンテナに投入した。
【0114】
以下、試料(トナー)の定着性の評価方法について説明する。試料(トナー)の定着性を評価する場合には、上記評価機を用いて、90g/m2の紙(印刷用紙)に、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着器に通した。定着温度の設定範囲は145℃以上170℃以下であった。詳しくは、定着器の定着温度を145℃から5℃ずつ上昇させて、各温度で定着させた画像についてオフセットが発生した(定着ローラーにトナーが付着した)か否かを評価した。オフセットが発生しなかった場合には○(良い)と評価し、オフセットが発生した場合には×(悪い)と評価した。
【0115】
以下、試料(トナー)を用いて形成した画像の画像濃度の評価方法について説明する。画像濃度を評価する場合には、上記評価機を用いて、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、ソリッド部を含むサンプル画像を紙(印刷用紙)に印刷し、紙に形成されたサンプル画像中のソリッド部の画像濃度(ID)を測定した。画像濃度の測定には、マクベス反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「RD914」)を用いた。
【0116】
初期(5枚目)に印刷した画像(以下、第1画像と記載する)と連続して500枚の紙に印刷した後(500枚目)の画像(以下、第2画像と記載する)との各々について、上記方法で画像濃度を測定し、第1画像の画像濃度及び第2画像の画像濃度のうち測定値が低い方の画像濃度を、試料(トナー)の評価値とした。画像濃度が1.2以上であれば○(良い)と評価し、画像濃度が1.2未満であれば×(悪い)と評価した。
【0117】
以下、試料(トナー)のブレードクリーニング性の評価方法について説明する。試料(トナー)のブレードクリーニング性を評価する場合には、上記評価機を用いて、連続して1000枚の紙(印刷用紙)に印字率100%の評価用画像を印刷した後、最後に印刷された紙について、画像汚れ(すじ模様など)の有無を目視で判定した。画像汚れが確認されなかった場合には○(良い)と評価し、画像汚れが確認された場合には×(悪い)と評価した。なお、感光ドラムでのブレードクリーニングが不十分であると、形成された画像にすじ模様が現れることがある。
【0118】
[評価結果]
トナーA−1〜C−6の各々についての評価結果は以下のとおりである。表2に、帯電量、耐熱保存性、画像濃度、定着性、及びブレードクリーニング性の評価結果を示す。なお、平均円形度、トナー結合率、及びトナー変位率の評価結果は、表1に示されている。
【0119】
【表2】
【0120】
トナーA−1、A−2、B−4、B−5、B−6、C−1、C−3、及びC−5(実施例1〜8に係るトナー)はそれぞれ、前述の構成(1)〜(4)を有していた。詳しくは、実施例1〜8に係るトナーではそれぞれ、シェル層が、アクリル系樹脂に由来する単位と、尿素樹脂(又はメラミン樹脂)のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含んでいた。また、実施例1〜8に係るトナーの各々の平均円形度が0.965以上0.975以下であった。また、実施例1〜8に係るトナーの各々に含まれる結合粒子(円形度0.85以下のトナー粒子)の量(トナー結合率)は0.5個数%未満であった。実施例1〜8に係るトナーではそれぞれ、トナー変位率が0.50%以上0.70%以下であった。表2に示されるように、実施例1〜8に係るトナーは、耐熱保存性と定着性とブレードクリーニング性とに優れていた。また、実施例1〜8に係るトナーではそれぞれ、画像濃度が1.2以上であり、トナーの帯電量が25μC/g以上35μC/g以下であった。
【0121】
トナーA−1、B−4、及びB−5(実施例1、3、及び4に係るトナー)ではそれぞれ、シェル層が、アクリル系樹脂に由来する単位と、尿素樹脂のモノマー又はプレポリマーに由来する単位とを含み、トナーの平均円形度が0.965以上0.970以下であった。こうした構成を有するトナーの耐熱保存性は特に優れていた。
【0122】
なお、カプセル化(シェル層の形成)工程における昇温速度が遅いほど、コア同士又はトナー母粒子同士の結合体(異形粒子)が形成される確率が高くなる傾向があると考えられる。また、カプセル化工程における重合時間(重合温度に保つ時間)が長いほど、トナー粒子の平均円形度が高くなる傾向があると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。