(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予備混合物における、(a)成分の(a)成分と(b)成分との和に対する質量割合が、0.6〜0.9であり、前記(a)成分を溶融混練する工程が1回である、請求項3に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
(難燃性樹脂組成物)
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂60〜94質量%、(b)環状ホスファゼン化合物0.6〜36.0質量%、(c)縮合リン酸エステル系難燃剤0.6〜36.0質量%を含む。そして、この難燃性樹脂組成物では、(b)成分の(b)成分と(c)成分との和に対する質量割合が0.10〜0.90である。
【0022】
以下、本実施形態の難燃性樹脂組成物の構成成分について説明する。
−(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂−
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、(a)成分として、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」ともいう)を含有する。本実施形態の難燃性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有するため、優れた難燃性、耐熱性を有することができる。
【0023】
本発明において用いられるPPE系樹脂としては、下記式(3)で表される結合単位からなるPPE成分を含むものが挙げられる。
【化3】
[式中、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、1〜7個の炭素原子を有する第一級又は第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、ハロゲン原子と酸素原子との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される置換基であり;R
11、R
12、R
13、R
14は、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0024】
PPE系樹脂は、0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液を用いて30℃の条件下で測定した還元粘度が、加工時の流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、0.15dl/g以上であることが好ましく、0.20dl/g以上であることが更に好ましく、0.3dl/g以上であることが特に好ましく、また、2.0dl/g以下であることが好ましく、1.0dl/g以下であることが更に好ましく、0.7dl/g以下であることが特に好ましい。
【0025】
PPE系樹脂は、単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合体(コポリマー)であってもよい。
上記単独重合体としては、特に限定されることなく、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられる。
上記共重合体としては、特に限定されることなく、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−ブチルフェノール等)との共重合体等が挙げられる。
【0026】
PPE系樹脂としては、特に、組成物としたときの靭性と剛性とのバランス、入手のし易さの観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が特に好ましい。
【0027】
上記PPE系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
PPE系樹脂は、公知の方法により製造することができる。PPE系樹脂の製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、Hayによる米国特許第3306874号明細書に記載の第一銅塩とアミンとの混合物を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法や、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、及び特開昭63−152628号公報等に記載されるその他の方法等が挙げられる。
【0029】
本発明における(a)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)は、上記のPPE成分100質量%とすることもできるが、PPE系樹脂は、上記のPPE成分以外の成分を含んでもよい。かかる成分としては、ポリスチレン系成分、α,β−不飽和カルボン酸系成分等が挙げられる。
【0030】
PPE成分以外の成分として、ポリスチレン系成分を用いる場合、PPE成分のポリスチレン系成分に対する質量割合は、組成物の加工性と耐熱性とを改善する観点から、1質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、また、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
かかるポリスチレン系成分としては、特に限定されることなく、スチレン系化合物の単独重合体、2種以上のスチレン系化合物の共重合体、並びにこれらスチレン系化合物の単独重合体及び共重合体からなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散されてなるゴム変性スチレン系樹脂等が挙げられる。
ポリスチレン系成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
スチレン系化合物の単独重合体及び共重合体のうちでは、スチレン系化合物の単独重合体が好ましい。
【0033】
ここで、スチレン系化合物としては、特に限定されることなく、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
【0034】
スチレン系化合物の単独重合体としては、ポリスチレンが特に好ましい。
ポリスチレンとしては、汎用ポリスチレン(GPPS)が好ましい。
ポリスチレンの立体規則性としては、イソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれとしてもよい。
【0035】
ゴム変性スチレン系樹脂は、ゴム状重合体の存在下で、1種又は複数種のスチレン系化合物を、塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法により重合させることによって、得ることができる。
ここで、ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)等のジエン系ゴム;ジエン型ゴムに水素添加することによって得られる飽和ゴム;イソプレンゴム;クロロプレンゴム;ポリアクリル酸ブチル等のアクリルゴム;エチレン−プロピレン−ジエンモノマーからなる三元系共重合体であるEPDMゴム等を挙げられ、特に、ジエン系ゴムが好ましい。
ゴム変性スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)にゴム成分を加えてなる耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が好ましい。
【0036】
上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂においては、組成物の耐熱性、耐衝撃性及び剛性をバランスよく向上させる観点から、ゴム変性ポリスチレン系樹脂におけるゴム状重合体の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、7質量%以上であることが特に好ましく、また、15質量%以下であることが好ましく;ゴム変性ポリスチレン系樹脂におけるスチレン系化合物の含有量は、85質量%以上であることが好ましく、また、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることが更に好ましく、93質量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態の難燃性樹脂組成物における(a)成分の含有量は、組成物の加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性をバランスよく向上させる観点から、60質量%以上とすることができ、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、また、94質量%以下とすることができ、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
−(b)環状ホスファゼン化合物−
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、(b)成分として、環状ホスファゼン化合物を含有する。本実施形態の難燃性樹脂組成物は、環状ホスファゼン化合物を含有するため、優れた加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性を有することができる。
【0039】
本発明において用いられる環状ホスファゼン化合物としては、例えば、James E. Mark, Harry R. Allcock, Robert West、”Inorganic Polymers” Pretice−Hall International, Inc., 1992, p61−p140に記載される構造を有する化合物を含むものが挙げられ、特に、下記式(4)で表される化合物を含むものが好ましい。
【化4】
[式中、nは3〜25の整数であり;Rはアリールオキシ基(式中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基又はアルコキシ基、フェニル基、ヘテロ原子含有基からなる群から選択される置換基である)、ナフチルオキシ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基からなる群から選択される置換基であり;R上の水素原子の全部又は一部はフッ素原子で置換されていてもよい。]
【0040】
上記式(4)では、環状ホスファゼン化合物の入手し易さやコストの観点から、Rがフェノキシ基(式中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5は、水素原子である。)であるものが特に好ましい。
【0041】
環状ホスファゼン化合物としては、組成物の加工性の観点から、環状三量体(上記式(4)において、nが3)及び/又は環状四量体(上記式(4)において、nが4)の含有率が高いことが好ましい。具体的には、環状ホスファゼン化合物における環状三量体及び/又は環状四量体化合物の含有率が80質量%以上であることが好ましく、また、環状三量体の含有率が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0042】
上記環状ホスファゼン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明において用いられる環状ホスファゼン化合物としては、上記式(4)で表される環状ホスファゼン化合物を95質量%以上含有するものが好ましい。
【0044】
環状ホスファゼン化合物の形態は、本発明の効果を損なわない限り、いかなる形態としてもよく、置換基の種類や構造により変化し得るが、例えば、液状、ワックス状、固体状等の様々な形態としてよい。
【0045】
環状ホスファゼン化合物が固体状である場合、環状ホスファゼン化合物の嵩密度は、0.45g/cm
3以上としてよく、0.45g/cm
3以上であることが好ましく、また、0.75g/cm
3以下であることが好ましい。
【0046】
環状ホスファゼン化合物に含まれるナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、50ppm以下であることが好ましく、ここで、環状ホスファゼン化合物に含まれる各アルカリ金属は、200ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
【0047】
環状ホスファゼン化合物に含まれる水分量は、電気特性、耐加水分解性等の観点から、1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることが更に好ましく、650ppm以下であることが特に好ましく、500ppm以下であることが更に特に好ましく、300ppm以下であることが最も好ましい。
【0048】
環状ホスファゼン化合物のJIS K6751に基づいて測定された酸価は1.0以下であることが望ましく、0.5以下であることが更に望ましい。
【0049】
環状ホスファゼン化合物の水への溶解度は、耐加水分解性、耐吸湿性の観点から、100ppm以下であることが好ましく、50ppmであることが更に好ましく、25ppm以下であることが特に好ましい。
なお、水への溶解度とは、環状ホスファゼン化合物のサンプルを蒸留水に0.1g/mLの割合で混合し、室温で1時間攪拌した後に水中に溶け込んだサンプルの量(ppm)を指す。
【0050】
本実施形態の難燃性樹脂組成物における(b)成分の含有量は、加工性、耐衝撃性及び難燃性をバランスよく向上させる観点から、0.6質量%以上とすることができ、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、また、36.0質量%以下とすることができ、31.5質量%以下であることが好ましく、27.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
−(c)縮合リン酸エステル系難燃剤−
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、(c)成分として、縮合リン酸エステル系難燃剤を含有する。本実施形態の難燃性樹脂組成物は、縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するため、前述の(b)成分である環状ホスファゼン化合物の難燃性向上の効果と相まって、優れた難燃性を与えることができる。
【0052】
本発明において用いられる縮合リン酸エステル系難燃剤としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
[式中、mは1〜5の整数であり;R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アリール基、アルキル置換アリール基からなる群から選択される置換基であり;R
1、R
2、R
3、R
4は、互いに同一でも異なっていてもよく;Xはアリーレン基である]
【0053】
上記式(2)では、mは1〜3であることが好ましい。nに相当する値が異なる複数種のリン酸エステルの縮合物が用いられる場合、上記式(2)においてnはそれらの平均値を指す。
【0054】
上記式(2)では、組成物の難燃性、耐熱性の観点から、R
1、R
2、R
3、R
4のうち少なくとも一つがアリール基であることが好ましく、R
1、R
2、R
3、R
4の全てがアリール基であることが更に好ましい。ここで、アリール基としては、フェニル、キシレニル、クレジル又はこれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。
【0055】
上記式(2)では、組成物の難燃性、耐熱性の観点から、Xで表されるアリーレン基としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビフェノール又はこれらのハロゲン化誘導体において2個の水酸基を脱離させた場合の残基等が挙げられる。
【0056】
代表的な縮合リン酸エステル系難燃剤としては、特に限定されることなく、例えば、レゾルシノール・ビスフェニルホスフェート、ビスフェノールA−ポリフェニルホスフェート、ビスフェノールA−ポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)等の芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられ、特に、本発明の効果を高める観点から、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0057】
上記縮合リン酸エステル系難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施形態の難燃性樹脂組成物における(c)成分の含有量は、組成物の加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性をバランスよく向上させる観点から、0.6質量%以上とすることができ、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、また、36.0質量%以下とすることができ、31.5質量%以下であることが好ましく、27.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
そして、本実施形態の難燃性樹脂組成物では、(b)成分の(b)成分と(c)成分との和に対する質量割合は、加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性をバランスよく向上させる観点、特に、UL94 VB試験において難燃レベルV−1以上を達成する観点から、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、また、0.90以下であることが好ましく、0.85以下であることが更に好ましい。
【0060】
−(d)その他の成分−
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、前述の(a)成分〜(c)成分以外に、樹脂組成物の加工性、耐熱性、耐衝撃性又は難燃性を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、特に限定されることなく、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、(b)成分及び(c)成分以外の難燃剤(例えば、有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、シリコーン系難燃剤等)、可塑剤(例えば、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機又は有機の充填材、強化材(例えば、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0061】
(成形品)
本実施形態の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、前述の本実施形態の難燃性樹脂組成物を成形することによって得ることができる。
【0062】
本実施形態の難燃性樹脂組成物の成形品としては、特に限定されることなく、例えば、コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CD−ROM)、デジタルバーサタイルディスク・リードオンリーメモリ(DVD−ROM)、コンパクトディスク・レコーダブル(CD−R)、デジタルバーサタイルディスク・レコーダブル・−R規格(DVD−R)、デジタルバーサタイルディスク・レコーダブル・+R規格(DVD+R)、コンパクトディスク・リライタブル(CD−RW)、デジタルバーサタイルディスク・リライタブル・−R規格(DVD−RW)、デジタルバーサタイルディスク・リライタブル・+R規格(DVD+RW)、デジタルバーサタイルディスク・ランダムアクセスメモリ(DVD−RAM)等のシャーシーやキャビネット、光ピックアップスライドベース等の光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、レーザービームプリンター内部部品、インクジェットプリンター内部部品等のプリンター部品、コピー機部品、自動車ラジエータータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品、自動車ランプ部品等が挙げられる。
【0063】
樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されることなく、例えば、射出成形、金属インモールド成形、アウトサート成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱プレス成形、回転成形、積層成形等の成形方法が挙げられる。
【0064】
(難燃性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、前述の(a)成分〜(c)成分、任意選択的に(d)その他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0065】
本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法は、(a)成分〜(c)成分、任意選択的に(d)その他の成分を溶融混練することができる限り、特に限定されない。
【0066】
本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法の一例としては、(a)成分と(b)成分とを溶融混練し、次いで、(c)成分を添加して更に溶融混練する方法が挙げられる。この方法では、例えば、(a)成分と(b)成分とを別のフィーダーを用いて押出機に供給してもよい。
【0067】
ここで、本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法では、(a)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂の熱による劣化を防ぎ、(b)成分である環状ホスファゼン化合物を均一に混合する観点から、(a)成分と(b)成分とを予め混合して予備混合物を調製することが好ましい。
【0068】
上記を鑑みて、本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法の別の例としては、(a)成分〜(c)成分を予め混合して予備混合物を調製し、その後、該予備混合物を溶融混練する方法が挙げられる。この方法では、例えば、予備混合物を1基のフィーダーを用いて押出機に供給してもよい。
【0069】
またここで、本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法では、原材料の使用量を低減し、粉体とペレット体との分級を解消する観点から、前述の予備混合物の調製において、(a)成分の全部ではなく(a)成分の一部を予備混合物に供することが好ましい。
【0070】
上記を鑑みて、本実施形態の難燃性樹脂組成物の製造方法の更なる例としては、(a)成分の一部と(b)成分とを予め混合して予備混合物を調製し、次いで、該予備混合物と(a)成分の残りとを溶融混練し、その後、(c)成分を添加して更に溶融混練する方法が挙げられる。
【0071】
この方法によれば、難燃性樹脂組成物の単位時間当たりの生産量を高めることができ、また、未溶融物を大きく低減することができることから樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減することができるため、高品質の難燃性樹脂組成物を高い生産性で製造することができる。
【0072】
この方法では、(a)成分の一部と(b)成分とからなる予備混合物における、(a)成分の(a)成分と(b)成分との和に対する質量割合が、(b)成分を押出機に安定的に添加することによって、得られる難燃性樹脂組成物の組成割合の変動を抑制する観点、及び、(b)成分の添加量を増加することを可能とすることによって、押出時の吐出量を増加させる観点から、0.55以上であることが好ましく、0.60以上であることが更に好ましく、また、0.95以下であることが好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0073】
また、この方法では、(a)成分及び(b)成分のべたつきを改善することによって、押出機に安定的に連続添加することを可能とし、難燃性組成物の生産性を更に高める観点から、(a)成分及び(b)成分として粉体を用い、予備混合物をパウダーブレンドとすることが好ましい。
【0074】
この方法では、適宜分割して押出機に添加される(a)成分について、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減する観点から、溶融混練の回数を1〜3回とすることが好ましく、1回とすることが特に好ましい。
【0075】
前述の製造方法の各例において各成分を予め混合するために好適に用いられる装置としては、例えば、単軸押出機や二軸押出機等の多軸押出機等の押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0076】
各成分を予め混合する際、混合温度は、特に限定されることなく、通常200〜350℃としてよく、撹拌装置を用いる場合、撹拌速度は、特に限定されることなく、通常50〜800rpmとしてよい。
【0077】
前述の製造方法の各例において各成分の溶融混練を行うために好適に用いられる溶融混練機としては、例えば、単軸押出機や二軸押出機等の多軸押出機等の押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0078】
各成分を溶融混練する際、溶融混練温度は、特に限定されることなく、通常220〜280℃としてよく、スクリュー回転数は、特に限定されることなく、通常100〜1200rpmとしてよい。
【0079】
以下、単軸押出機や二軸押出機等の多軸押出機等の押出機を用いた場合の好適な実施形態について記載する。
押出機は、例えば、原料が流れる方向について上流側に第1原料供給口(トップフィード)、該第1原料供給口よりも下流に第1真空ベント、該第1真空ベントよりも下流に第2原料供給口(トップフィード又はサイドフィード、第2原料供給口以降の原料供給口について同様)、必要に応じて、該第2原料供給口よりも下流に第3原料供給口以降の原料供給口、これらの原料供給口よりも下流に第2真空ベントを備えるものとすることができる。また、押出機は、第1原料供給口と第1真空ベントとの間、第1真空ベントと第2原料供給口の間、第2原料供給口以降の原料供給口と第2真空ベントの間に、ニーディングセクションを更に備えることが好ましい。
【0080】
ここで、押出機のL/D(スクリューバレル有効長/スクリューバレル内径)は、20以上であることが好ましく、30以上であることが更に好ましく、また、60以下であることが好ましく、50以下であることが更に好ましい。
【0081】
第2原料供給口以降の原料供給口における原材料の供給方法としては、特に限定されることなく、各原料供給口の上部開放口から単に添加する方法としても、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法としてもよく、特に、安定供給の観点から、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法が好ましい。
粉体の原材料を添加する場合、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減する観点から、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法が好ましく、第2原料供給口以降の原料供給口全てにおいて、強制サイドフィーダーを用いて、粉体が含まれる原材料を分割して添加する方法が更に好ましい。
液状の原材料を添加する場合、上部開放口から、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて添加する方法が好ましい。
押出機の第2原料供給口以降の原料供給口の上部開放口は、原材料と共に同搬される空気を抜くために、開放とすることもできる。
【0082】
各原材料が押出機に投入されるまでの経路(具体的には、ストックタンク、配管、リフィルタンクを有する重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、押出機という経路)における各ラインの酸素濃度は、特に酸素存在下において樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減する観点から、1.0体積%未満とすることが好ましい。このような低酸素濃度を維持する観点から、各ラインは、気密性が高いものとし、ここに、不活性ガスを導入することが好ましい。
【0083】
前述の好適な実施形態では、例えば、押出機として二軸押出機を用い、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を粉体とした場合に、二軸押出機のスクリューに付着する原材料を劇的に低減する効果が得られる。また、前述の好適な実施形態に従って製造される難燃性樹脂組成物について、黒点異物や炭化物等の発生を低減する効果が得られる。
【0084】
なお、前述の好適な実施形態では、(b)環状ホスファゼン化合物を粉体とした場合に、取扱い場所の環境(例えば、温度や湿度等)によりべた付きが発生し、所望量の連続添加が困難となる可能性がある。ここで、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂を粉体とし、(b)成分を(a)成分の全部及び/又は一部と予め混合を行ったり、(b)成分を加温して液体とした上でポンプを用いて押出機に添加したりすることによって、所望量の連続添加が可能となる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
実施例及び比較例の難燃性樹脂組成物に用いた原材料を以下に示す。
−(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂−
(a1):2,6−キシレノールを酸化重合することによって得られた、還元粘度0.55dl/gのPPE系樹脂
(a2):汎用ポリスチレン(商品名:ポリスチレン685、PSジャパン社製)
(a3):耐衝撃性ポリスチレン(商品名:ポリスチレンH9405、PSジャパン社製)
−(b)環状ホスファゼン化合物−
(b1):環状フェノキシホスファゼン(n≧3、R=−OPh)(商品名:ラビトル(商標)FP−110、(株)伏見製薬所社製)
−(c)縮合リン酸エステル系難燃剤−
(c1):芳香族縮合リン酸エステル(1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート))(商品名:CR−741、大八化学工業(株)社製)
−(d)その他の成分−
(d1):芳香族リン酸エステル(商品名:TPP、大八化学工業(株)社製)
(d2):ホスフィン酸アルミニウム(商品名:Exolit(商標)OP1230、クラリアントジャパン(株)社製)
【0087】
実施例及び比較例における物性の測定方法(1)〜(5)を以下に示す。
(1)成形流動性
JIS−K7210に準拠して、温度250℃、荷重98Nの条件で、難燃性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(g/10分)を測定した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、成形流動性が良好であると判定した。
(2)荷重たわみ温度
難燃性樹脂組成物を、200〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(商品名:IS−80EPN、東芝機械株式会社製)に供給し、金型温度80℃の条件でJIS K7152−1及びK7313−2に準拠して、JIS K7139試験片を製造した。
JIS K7191−1に準拠して、該試験片の荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、耐熱性が優れていると判定した。
(3)シャルピー衝撃強さ
(2)における試験片と同様に、JIS K7139試験片を製造した。
JIS K7111−1に準拠して、該試験片のシャルピー衝撃強さを測定した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、耐衝撃性に優れていると判定した。
(4)難燃性
難燃性樹脂組成物を、(2)において用いた射出成形機を用いて、長さ:127mm、幅:2.7mm、厚み:1.6mm、0.8mmの試験片を製造した。
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の垂直燃焼試験方法に基づいて、該試験片(2種)の難燃性を測定した(1サンプル当たり5本ずつ)。特に、難燃レベルV−1以上の判定の場合に、本実施形態の難燃性樹脂組成物として望ましいと判定した。
(5)生産性
難燃性樹脂組成物200kgを製造した際に、押出機のスクリューに付着した原材料の質量を測定した。評価基準としては、測定値が低い値であるほど、難燃性樹脂組成物の生産性に優れていると判定した。
【0088】
以下、各実施例及び各比較例について詳述する。
[実施例1〜11、比較例1〜10]
溶融混練機として、スクリューTSFを装着した押出機用重量フィーダー(商品名:K2−ML−T35/DR、K−TRON(株)社製)を装着した二軸押出機(商品名:ZSK−40、WERNER&PFLEIDERER社製)を用いた。
原料の流れ方向について上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口よりも下流に第1真空ベント、該第1真空ベントよりも下流に第2原料供給口、該第2原料供給口よりも下流に第2真空ベントを設けた。
また、第2原料供給口における原材料の供給は、上部開放口からギアポンプを用いて行った。
そして、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(b)環状ホスファゼン化合物、(c)縮合リン酸エステル系難燃剤、(d)その他の成分を、上記の通り設定された押出機を用いて、下記表1に示す組成で溶融混練して、ペレット体の難燃性樹脂組成物を製造した。混練条件は、押出温度220〜280℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100〜200kg/時間とした。
各実施例及び各比較例について、前述の測定方法(1)〜(5)により物性試験を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0090】
表1に示す通り、実施例1〜11の難燃性樹脂組成物は、比較例1〜14の難燃性樹脂組成物と比較して、加工性及び耐熱性に優れ、更に、耐衝撃性及び難燃性にも優れていることが分かった。
また、表1に示す通り、実施例1〜8の難燃性樹脂組成物の製造方法は、実施例9、10の難燃性樹脂組成物の製造方法と比較して、難燃性樹脂組成物の生産性を飛躍的に向上させることができることも分かった。