特許第6231458号(P6231458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231458
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】アンテナ基板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20171106BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   H01Q1/38
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-218221(P2014-218221)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2015-164285(P2015-164285A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-16204(P2014-16204)
(32)【優先日】2014年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤 義信
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−267833(JP,A)
【文献】 特開2004−215245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0090369(US,A1)
【文献】 特表平05−504034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電体層と、該第1の誘電体層の上面に、終端部を有するように配置されており、該終端部に向けて第1の方向に延在する帯状のストリップ導体と、前記第1の誘電体層の下面側のみに配置されたシールド用の接地導体層と、前記第1の誘電体層および前記ストリップ導体の上面側に積層された第2の誘電体層と、該第2の誘電体層の上面に前記終端部の位置にかぶさるように配置された第1のパッチ導体と、前記第2の誘電体層を貫通して前記終端部と前記第1のパッチ導体とを接続する貫通導体と、前記第2の誘電体層および第1のパッチ導体上に積層された第3の誘電体層と、該第3の誘電体層の上面に、前記第1のパッチ導体が形成された位置に少なくとも一部がかぶさるように配置されており、直流的に独立した第2のパッチ導体と、前記第3の誘電体層および第2のパッチ導体上に積層された第4の誘電体層と、該第4の誘電体層の上面に、前記第2のパッチ導体が形成された位置に少なくとも一部がかぶさるように配置されており、直流的に独立した第3のパッチ導体とを備えて成るアンテナ基板であって、前記貫通導体は、前記第1のパッチ導体に対して前記ストリップ導体が延在してきた側に偏倚した位置に該ストリップ導体の延在方向に互いに隣接して並んだ2つの貫通導体から成ることを特徴とするアンテナ基板。
【請求項2】
前記第2のパッチ導体が前記第1のパッチ導体に対して前記第1の方向に偏心して配置されており、前記第3のパッチ導体が前記第2のパッチ導体に対して前記第1の方向に偏心して配置されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ基板。
【請求項3】
前記第の誘電体層の上面に、前記第3のパッチ導体における前記第1の方向と直交する方向の両側に前記第1および第2のパッチ導体が形成された位置にかぶさらないように配置されており、直流的に独立した補助パッチ導体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ基板。
【請求項4】
前記補助パッチ導体が前記第3のパッチ導体に対して前記第1の方向に偏倚して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層と導体層とを多層に積層することにより形成したアンテナ基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ基板は、例えば図14(a)、(b)に断面図および上面図で、図15に分解斜視図で示すように、多数の誘電体層11a〜11eが積層された誘電体基板11と、シールド用の接地導体層12と、高周波信号を入出力するためのストリップ導体13と、電磁波を送受信するためのパッチ導体14とを備えている。
【0003】
誘電体基板11は、例えば5層の誘電体層11a〜11eを上下に積層して成る。誘電体層11a〜11eは、例えば、ガラスクロス入りの樹脂層やガラスクロスを含まない樹脂により形成されている。
【0004】
接地導体12は、最下層の誘電体層11aの下面の全面に被着されている。接地導体12は、例えば銅から成る。
【0005】
ストリップ導体13は、誘電体層11aを挟んで接地導体12と対向しており、誘電体層11aと11bとの間に配設されている。ストリップ導体13は、誘電体基板11の内部を外周縁から中央部にかけて一つの方向に延びる細い帯状の導体であり、誘電体基板11の中央部に終端部を有している。ストリップ導体13は、例えば銅から成る。
【0006】
パッチ導体14は、第1のパッチ導体14aと第2のパッチ導体14bと第3のパッチ導体14cとから構成されている。これらのパッチ導体14a〜14cは、四角形をしている。パッチ導体14a〜14cは、例えば銅から成る。
【0007】
第1のパッチ導体14aは、ストップ導体13の終端部の位置にかぶさるようにして誘電体層11cと11dとの間に配設されている。第1のパッチ導体14aは、誘電体層11cを貫通する貫通導体15および誘電体層11bを貫通する貫通導体16を介してストリップ導体13の端部13aに接続されている。
【0008】
第2のパッチ導体14bは、第1のパッチ導体14aの位置にかぶさるようにして誘電体層11dと11eとの間に配置されている。第2のパッチ導体14bは、直流的には電気的に独立している。
【0009】
第3のパッチ導体14cは、第2のパッチ導体14bの位置にかぶさるようにして誘電体層11eの上面に配設されている。第3のパッチ導体14cは、直流的には電気的に独立している。
【0010】
このアンテナ基板においては、ストリップ導体13に高周波信号を給電すると、その信号が貫通導体15および16を介して第1のパッチ導体14aに伝わり、それが第1のパッチ導体14aならびに第2のパッチ導体14bおよび第3のパッチ導体14cを介して電磁波として外部に放射される。ところで、このようなアンテナ基板において、第1のパッチ導体14aの他に、直流的には電気的に独立した第2のパッチ導体14bおよび第3のパッチ導体14cを備えているのは、このような構成によりアンテナの周波数帯域を広帯域化することができるためである。
【0011】
しかしながら、例えば、ワイヤレスパーソナルエリアネットワークでは、使用される周波数帯域が各国で異なり、一つのアンテナ基板を全世界で使用可能とするためには広い周波数帯域をカバーする必要がある。そのためには、従来のアンテナ基板よりも更に広い周波数帯域を持つアンテナ基板を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−145327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のアンテナ基板は、第1の誘電体層と、該第1の誘電体層の上面に、終端部を有するように配置されており、該終端部に向けて第1の方向に延在する帯状のストリップ導体と、前記第1の誘電体層の下面側のみに配置されたシールド用の接地導体層と、前記第1の誘電体層および前記ストリップ導体の上面側に積層された第2の誘電体層と、該第2の誘電体層の上面に前記終端部の位置にかぶさるように配置された第1のパッチ導体と、前記第2の誘電体層を貫通して前記終端部と前記第1のパッチ導体とを接続する貫通導体と、前記第2の誘電体層および第1のパッチ導体上に積層された第3の誘電体層と、該第3の誘電体層の上面に、前記第1のパッチ導体が形成された位置に少なくとも一部がかぶさるように配置されており、直流的に独立した第2のパッチ導体と、前記第3の誘電体層および第2のパッチ導体上に積層された第4の誘電体層と、該第4の誘電体層の上面に、前記第2のパッチ導体が形成された位置に少なくとも一部がかぶさるように配置されており、直流的に独立した第3のパッチ導体とを備えて成るアンテナ基板であって、前記貫通導体は、前記第1のパッチ導体に対して前記ストリップ導体が延在してきた側に偏倚した位置に該ストリップ導体の延在方向に互いに隣接して並んだ2つの貫通導体から成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアンテナ基板によれば、第2の誘電体層を挟んで配置されたストリップ導体の終端部と第1のパッチ導体とを接続する貫通導体は、第1のパッチ導体に対して前記ストリップ導体が延在してきた側に偏倚した位置に該ストリップ導体の延在方向に互いに隣接して並んだ2つの貫通導体から成ることから、このように配置された2つの貫通導体により第1〜第3のパッチ導体で複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)、(b)は、本発明のアンテナ基板の第1例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図2図2は、図1に示すアンテナ基板の分解斜視図である。
図3図3は、図1に示す本発明のアンテナ基板の第1例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図4図4(a)、(b)は、本発明のアンテナ基板の第2例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図5図5は、図4に示す本発明のアンテナ基板の第2例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図6図6(a),(b)は、本発明のアンテナ基板の第3例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図7図7は、図6に示す本発明のアンテナ基板の第3例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図8図8(a),(b)は、本発明のアンテナ基板の第4例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図9図9は、図8に示す本発明のアンテナ基板の第4例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図10図10(a),(b)は、本発明のアンテナ基板の第5例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図11図11は、図10に示す本発明のアンテナ基板の第5例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図12図12(a),(b)は、本発明のアンテナ基板の第5例目の実施形態を示す断面図および上面図である。
図13図13は、図12に示す本発明のアンテナ基板の第5例目の実施形態による解析モデルおよび従来のアンテナ基板による解析モデルを用いて信号の反射損をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図14図14は、従来のアンテナ基板を示す断面図および上面図である。
図15図15は、図14に示すアンテナ基板の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明のアンテナ基板の第1例目の実施形態を添付の図面を基に説明する。本例のアンテナ基板は、図1(a),(b)に断面図および上面図で、図2に分解斜視図で示すように、多数の誘電体層1a〜1eが積層された誘電体基板1と、シールド用の接地導体層2と、高周波信号を入出力するためのストリップ導体3と、電磁波を送受信するためのパッチ導体4とを備えている。
【0018】
誘電体層1a〜1eは、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂、アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂系の誘電体材料から成る。誘電体層1a〜1eの厚みは、それぞれ30〜100μm程度である。誘電体層1c〜1eの比誘電率は、3〜5程度である。
【0019】
接地導体2は、最下層の誘電体層1aの下面の全面に被着されている。接地導体2は、シールドとして機能する。接地導体2の厚みは、5〜20μm程度である。接地導体2は、例えば銅から成る。
【0020】
ストリップ導体3は、誘電体層1aを挟んで接地導体2と対向しており、誘電体層1aと1bとの間に配設されている。ストリップ導体3は、誘電体基板1の中央部に終端部を有する細い帯状の導体であり、誘電体基板1の内部を終端部に向けて一方向(以後、第1の方向と称する)に延びている。ストリップ導体3は、本例のアンテナ基板において、高周波信号を入出力するための伝送路として機能し、このストリップ導体3に高周波信号が伝送される。ストリップ導体3の幅は、50〜350μm程度である。ストリップ導体3の厚みは、5〜20μm程度である。ストリップ導体3は、例えば銅から成る。
【0021】
パッチ導体4は、第1のパッチ導体4aと第2のパッチ導体4bと第3のパッチ導体4cとから構成されている。これらのパッチ導体4a〜4cは、直流的には電気的に互いに独立している。パッチ導体4a〜4cは、ストリップ導体3が延在する第1の方向に平行な辺(以後、縦辺と称する)と、第1の方向に対して直角な方向に平行な辺(以後、横辺と称する)とを有する四角形をしている。パッチ導体4a〜4cの各辺の長さは、0.5〜5mm程度である。パッチ導体4a〜4cの厚みは、それぞれ5〜20μm程度である。パッチ導体4a〜4cは、例えばそれぞれ銅から成る。
【0022】
第1のパッチ導体4aは、ストリップ導体3の終端部の位置にかぶさるようにして誘電体層1cと1dとの間に配設されている。そのため、第1のパッチ導体4aとストリップ導体3との間には、2層の誘電体層1b,1cが介在している。第1のパッチ導体4aは、誘電体層1cを貫通する貫通導体5a,5bおよび誘電体層1bを貫通する貫通導体6を介してストリップ導体3の端部3aに接続されている。なお、貫通導体5a,5bは、ストリップ導体3の延在方向に互いに隣接して並んでおり、それぞれ直径が30〜200μm程度で、厚みが5〜20μm程度の円筒状である。また、貫通導体5a,5b同士の中心間距離は、50〜300μmである。貫通導体6は、直径が30〜100μm程度の円柱状または円錐台状である。貫通導体5a,5bおよび貫通導体6は、例えばそれぞれ銅から成る。そして、第1のパッチ導体4aは、ストリップ導体3からの高周波信号の供給を受けて電磁波を外部に放射する。あるいは、外部からの電磁波を受けてストリップ導体3に高周波信号を発生させる。
【0023】
第2のパッチ導体4bは、第1のパッチ導体4aの位置にかぶさるようにして誘電体層1dと1eとの間に配置されている。これにより第2のパッチ導体4bは、誘電体層1dを挟んで第1のパッチ導体4aと静電容量結合している。そして、第2のパッチ導体4bは、第1のパッチ導体4aからの電磁波を受けて、それに対応する電磁波を外部に放射する。あるいは外部からの電磁波を受けて、それに対応する電磁波を第1のパッチ導体4aに供給する。なお、第2のパッチ導体4bは、その各辺が第1のパッチ導体4aの各辺よりも0〜0.5mm程度ずつ大きいことが好ましい。
【0024】
第3のパッチ導体4cは、第2のパッチ導体4bの位置にかぶさるようにして最上層の誘電体層1eの上面に配設されている。これにより第3のパッチ導体4cは、誘電体層1eを挟んで第2のパッチ導体4bと静電容量結合している。そして、第3のパッチ導体4cは、第2のパッチ導体4bからの電磁波を受けて、それに対応する電磁波を外部に放射する。あるいは外部からの電磁波を受けて、それに対応する電磁波を第2のパッチ導体4bに供給する。なお、第3のパッチ導体4cは、その各辺が第2のパッチ導体4bの各辺よりも0〜0.5mm程度ずつ大きいことが好ましい。
【0025】
ところで、本発明のアンテナ基板においては、後述する第2〜第6番目の実施形態の場合も含め、ストリップ導体3と第1のパッチ導体4aとを接続する2つの貫通導体5a,5bが、ストリップ導体3の延在方向に互いに隣接して並んで設けられていることが重要である。このように、ストリップ導体3と第1のパッチ導体4aとが、ストリップ導体3の延在方向に互いに隣接して並んだ2つの貫通導体5a,5bで接続されていることから、このように配置された2つの貫通導体5a,5bにより第1〜第3のパッチ導体で複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0026】
ここで、図1に示した本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図3に示す。図3において、実線で示したグラフが本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図3において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図3から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約10.7GHzと広いことが分かる。
【0027】
本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルにおいては、図1における誘電体層1a〜1eの比誘電率を3.35とした。誘電体層1a,1bおよび1d,1eの厚みをそれぞれ50μm、誘電体層1cの厚みを100μmとした。ストリップ導体3、接地導体層2、パッチ導体4a〜4cおよび7は、銅により形成したものとし、その厚みをそれぞれ18μmとした。ストリップ導体3は、幅を85μm、長さを3mmとし、誘電体層1aと1bとの間を誘電体基板1の外周縁から中央部に向けて一方向に延在し、終端部が誘電体基板1の中央部に位置するように配置した。ストリップ導体3の終端部に直径が180μmの円形の2つのランドパターンを200μmの中心間距離で設けた。
【0028】
第1のパッチ導体4aは、ストリップ導体3の延在方向に平行な縦辺を1mm、これに直角な横辺を1.4mmとした。第1のパッチ導体4aとストリップ導体3の終端部に設けたランドパターンとを直径が90μmの円柱状の貫通導体5a,5bおよび直径が90μmの貫通導体6により接続した。貫通導体5a,5bの接続位置は、第1のパッチ導体4aにおける2つの縦辺の間の中央で、ストリップ導体3が延在してきた側の横辺から50μmの位置および200μmの位置に貫通導体5a,5bの中心がくる位置とした。貫通導体5a,5bおよび貫通孔6は、銅により形成したものとした。
【0029】
第2のパッチ導体4bは、ストリップ導体3の延在方向に平行な縦辺を1mm、これに直角な横辺を1.5mmとした。第2のパッチ導体4bは、その中心の位置が第1のパッチ導体4aの中心の位置に重なるように配設した。
【0030】
第3のパッチ導体4cは、ストリップ導体3の延在方向に平行な縦辺を1.2mm、これに直角な横辺を1.6mmとした。第3のパッチ導体4cは、その中心の位置が第2のパッチ導体4bの中心の位置に重なるように配設した。
【0031】
従来のアンテナ基板による解析モデルは、上述の本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、貫通孔5aに接続されるランドパターンより先のストリップ線路3およびこれに接続される貫通孔6、貫通孔5bを設けない以外は、全て同じとしたモデルを用いた。
【0032】
次に、本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板について図4(a),(b)を基に説明する。なお、この第2例目のアンテナ基板において、第1例目のアンテナ基板と共通する部分については、第1例目のアンテナ基板と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
この第2例目のアンテナ基板においては、第1例目のアンテナ基板と比較して、第2のパッチ導体4bと第3のパッチ導体4cとが、第1のパッチ導体4aに対してストリップ導体3の延在方向に偏心して配置されている点が異なっている。第2のパッチ導体4bの偏心は、第1のパッチ導体4aが形成された位置の80%以上の面積にかぶさる程度とする。第3のパッチ導体4cの偏心は、第2のパッチ導体が形成された位置の80%以上の面積にかぶさる程度とする。その他の点は、第1例目のアンテナ基板と同じである。
【0034】
この第2例目のアンテナ基板によれば、第2のパッチ導体4bと第3のパッチ導体4cとは、第1のパッチ導体4aに対してストリップ導体3の延在方向に偏心して配置されていることから、このように配置された第1〜3のパッチ導体4a〜4cでさらに複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0035】
ここで、図4に示した本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図5に示す。図5において、実線で示したグラフが本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図5において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図5から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約14.2GHzと広いことが分かる。
【0036】
本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルは、上述の本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、第2のパッチ導体4bの位置および第3のパッチ導体4cの位置が異なる以外は全て同じとしたモデルを用いた。第2のパッチ導体4bは、第1のパッチ導体4aが形成された位置の90%の面積にかぶさるように、その中心位置が第1のパッチ導体4aの中心位置からストリップ線路3の延在方向に偏心するように配置した。第3のパッチ導体4cは、第2のパッチ導体4bが形成された位置の90%の面積にかぶさるように、その中心位置が第2のパッチ導体4bの中心位置からストリップ線路3の延在方向に偏心するように配置した。
【0037】
次に、本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板について図6(a),(b)を基に説明する。なお、この第3例目のアンテナ基板において、第1例目のアンテナ基板と共通する部分については、第1例目のアンテナ基板と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
この第3例目のアンテナ基板においては、第1例目のアンテナ基板と比較して、最上層の誘電体層1eの上面に補助パッチ導体7が配設されている点で異なっている。補助パッチ導体7は、第3のパッチ導体4cにおけるストリップ導体3が延在する方向と直交する方向の両側に、第3のパッチ導体4cから0.1〜1mm程度の間隔を空けてそれぞれ1個ずつが配設されている。補助パッチ導体7は、第3のパッチ導体4cの縦辺に平行な縦辺および第3のパッチ導体4cの横辺に平行な横辺を有する1辺の長さが0.1〜5mm程度の四角形であり、第1および第2のパッチ導体4a,4bが形成された位置にかぶさらないように配置されている。その他の点は、第1例目のアンテナ基板と同じである。
【0039】
この第3例目のアンテナ基板によれば、第3のパッチ導体4cにおけるストリップ導体3の延在方向に直交する方向の両側に、第1のパッチ導体4aおよび第2のパッチ導体4bが形成された位置にかぶさらないように配置された補助パッチ導体7を備えることから、このように配置された第1〜第3のパッチ導体4a〜4cおよび補助パッチ導体7でさらに複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0040】
ここで、図6に示した本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図7に示す。図7において、実線で示したグラフが本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図7において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図7から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約10.8GHzと広いことが分かる。
【0041】
なお、本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルは、上述の本発明の第1例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、補助パッド7を設けた以外は全て同じとしたモデルを用いた。補助パッチ導体7は、ストリップ導体3の延在方向に平行な縦辺を1.1mm、これに直角な横辺を0.5mmとした。補助パッチ導体7は、その縦辺が第3のパッチ導体4cの縦辺の真横に並ぶようにして、第3のパッチ導体4cにおける長辺方向の両側に1個ずつ設けた。第3のパッチ導体4cと補助パッチ導体7との間隔は、0.35mmとした。
【0042】
次に、本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板について図8(a),(b)を基に説明する。なお、この第4例目のアンテナ基板において、第2例目のアンテナ基板と共通する部分については、第2例目のアンテナ基板と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
この第4例目のアンテナ基板においては、第2例目のアンテナ基板と比較して、最上層の誘電体層1eの上面に補助パッチ導体7が配設されている点で異なっている。補助パッチ導体7は、第3のパッチ導体4cにおけるストリップ導体3が延在する方向と直交する方向の両側に、第3のパッチ導体4cから0.1〜1mm程度の間隔を空けてそれぞれ1個ずつが配設されている。補助パッチ導体7は、第3のパッチ導体4cの縦辺に平行な縦辺および第3のパッチ導体4cの横辺に平行な横辺を有する1辺の長さが0.1〜5mm程度の四角形であり、第1および第2のパッチ導体4a,4bが形成された位置にかぶさらないように配置されている。その他の点は、第2例目のアンテナ基板と同じである。
【0044】
この第4例目のアンテナ基板によれば、第2のパッチ導体4bと第3のパッチ導体4cとは、第1のパッチ導体4aに対してストリップ導体3の延在方向に偏心して配置されているとともに、第3のパッチ導体4cにおけるストリップ導体3の延在方向に直交する方向の両側に、第1のパッチ導体4aおよび第2のパッチ導体4bが形成された位置にかぶさらないように配置された補助パッチ導体7を備えることから、このように配置された第1〜第3のパッチ導体4a〜4cおよび補助パッチ導体7でさらに複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0045】
ここで、図8に示した本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図9に示す。図9において、実線で示したグラフが本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図9において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図9から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約13.7GHzと広いことが分かる。
【0046】
本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルは、上述の本発明の第2例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、補助パッド7を設けた以外は全て同じとしたモデルを用いた。補助パッチ導体7は、ストリップ導体3の延在方向に平行な縦辺を1.1mm、これに直角な横辺を0.5mmとした。補助パッチ導体7は、その縦辺が第3のパッチ導体4cの縦辺の真横に並ぶようにして、第3のパッチ導体4cにおける長辺方向の両側に1個ずつ設けた。第3のパッチ導体4cと補助パッチ導体7との間隔は、0.3mmとした。
【0047】
次に、本発明の第5例目の実施形態のアンテナ基板について図10(a),(b)を基に説明する。なお、この第5例目のアンテナ基板において、第3例目のアンテナ基板と共通する部分については、第3例目のアンテナ基板と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
この第5例目のアンテナ基板においては、第3例目のアンテナ基板と比較して、補助パッチ導体7が第3のパッチ導体4cに対して第1方向に偏倚している点で異なっている。補助パッチ導体7は、その縦辺の約半分が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に飛び出す程度に偏倚されている。その他の点は、第3例目のアンテナ基板と同じである。
【0049】
この第5例目のアンテナ基板によれば、補助パッチ導体7が第3のパッチ導体4cに対して第1方向に偏倚していることから、このように配置された第1〜第3のパッチ導体4a〜4cおよび補助パッチ導体7でさらに複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0050】
ここで、図10に示した本発明の第5例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図11に示す。図11において、実線で示したグラフが本発明の第5例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図11において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図10から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約16.8GHzと広いことが分かる。
【0051】
本発明の第5例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルは、本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、補助パッド7が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に0.5mm飛び出すように偏倚している以外は全て同じとしたモデルを用いた。
【0052】
次に、本発明の第6例目の実施形態のアンテナ基板について図12(a),(b)を基に説明する。なお、この第6例目のアンテナ基板において、第4例目のアンテナ基板と共通する部分については、第4例目のアンテナ基板と同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
この第6例目のアンテナ基板においては、第4例目のアンテナ基板と比較して、補助パッチ導体7が第3のパッチ導体4cに対して第1方向に偏倚している点で異なっている。補助パッチ導体7は、その縦辺の約半分が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に飛び出す程度に配置されている。その他の点は、第3例目のアンテナ基板と同じである。
【0054】
この第6例目のアンテナ基板によれば、補助パッチ導体7が第3のパッチ導体4cに対して第1方向に偏倚していることから、このように配置された第1〜第3のパッチ導体4a〜4cおよび補助パッチ導体7でさらに複合的な共振が良好に起こり、そのため広い周波数帯域において良好な信号の送受信を行なうことが可能な広帯域のアンテナ基板を提供することができる。
【0055】
ここで、図12に示した本発明の第6例目の実施形態のアンテナ基板および図14に示した従来のアンテナ基板をモデル化した解析モデルにおいて、電磁界シミュレータによりストリップ導体に高周波信号を入力した場合の反射損をシミュレーションした結果を図13に示す。図13において、実線で示したグラフが本発明の第6例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルの反射損であり、破線で示したグラフが従来のアンテナ基板による解析モデルの反射損である。図13において、太い目盛線で示した反射損−10dB以下の周波数帯域の幅ができるだけ広いことが要求される。図13から明らかなように、従来のアンテナ基板による解析モデルでは、アンテナ基板に要求される反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約6.9GHzと狭いのに対し、本発明の第4例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルでは、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅が約17.1GHzと広いことが分かる。
【0056】
本発明の第6例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルは、本発明の第3例目の実施形態のアンテナ基板による解析モデルと比較して、補助パッド7が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に0.5mm飛び出すように偏倚して配置された以外は全て同じとしたモデルを用いた。
【0057】
なお、本発明の第5例目および第6例目のアンテナ基板において、補助パッド7の全体が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に飛び出すように偏倚して配置された場合、反射損−10dB以下の周波数帯域の幅を第5例目や第6例目のアンテナ基板よりも広くすることが困難となる。したがって、第5例目および第6例目のアンテナ基板において、補助パッド7の全体が第3のパッチ導体4cよりも第1の方向に飛び出さない程度に偏倚させることが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
1a〜1e 誘電体層
2 接地導体
3 ストリップ導体
4 パッチ導体
4a 第1のパッチ導体
4b 第2のパッチ導体
4c 第3のパッチ導体
5a 第1の貫通導体
5b 第2の貫通導体
7 補助パッチ導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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