(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
−実施形態1−
以下、この発明の試料固定装置の実施形態1を、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の試料固定装置の拡大斜視図であり、
図2(a)は、
図1に図示された微小試料台の斜視図であり、
図2(b)は、
図1に図示された台座の斜視図である。
試料固定装置100は、台座20と微小試料台30とを備えている。台座20と微小試料台30とは、銀ペーストのような導電性接着剤41により電気的に導通可能に固着されている。
【0009】
図2(b)に図示されるように、台座20は、モリブデン等の金属部材をエッチングすることにより形成された部材である。台座20は、概略、半径Rが1〜2mm程度またはそれ以下の円弧状の外周部を有し、上面に凹状の微小試料台固定部21を有する平板状構造を有する。微小試料台固定部21の左右には、微小試料台固定部21の上方に突出されたガード部22が設けられている。ガード部22は、微小試料台30に微小試料71(
図5等参照)を固定したり、固定された微小試料71を分析したりする作業において、微小試料71に分析装置等が衝突するのを防止するためのものである。また、試料固定装置100が落下した場合に微小試料71をガードする。
台座20は、中心線CLに対して、線対称な形状を有しており、左右のガード部22は、同一の形状に形成されている。
【0010】
微小試料台30は、シリコン基板等の半導体基板をエッチングすることにより形成された部材である。微小試料台30の厚さは、台座20の厚さよりも厚くされており、例えば、数百μm以下、特に、百μm程度以下の厚さを有する。微小試料台30は、段付き矩形形状の基部31と、基部31の長手方向に延在する一側面に、基部31と一体に形成された複数の試料固定部(試料搭載部)32a〜32eとを備えている。
試料固定部32a〜32eは、それぞれ、幅(左右方向の長さ)が異なる大きさに形成されている。このため、微小試料71のサイズに応じて固定する試料固定部32a〜32bを選択することが可能となっている。各試料固定部32a〜32eは、下部固定部f1上に、下部固定部f1より左右方向の幅が狭く、厚さが薄い上部固定部f2が形成された構造を有する。微小試料71を上部固定部f2上に固定し、微小試料71にFIB(Focused Ion Beam)を照射して、分析可能な薄片となるように加工することがある。このとき、FIBは試料に対して斜め上方から照射されるため、下部固定部f1が上部固定部f2よりも大きくても、FIBは下部固定部f1に照射されない。
【0011】
微小試料台30の試料固定部32a〜32eが形成された上面側とは反対側の面である底面31a(
図2、
図3(a)〜(c)参照)は平坦面とされ、この底面31aには導電性被膜51が形成されている。導電性被膜51は、例えば、アルミニウム、クロム―金等の金属を、スパッタまたは蒸着することにより形成される。
微小試料台30は、導電性被膜51を、台座20の微小試料台固定部21の上面(微小試料台搭載面)21aに接触させた状態で、微小試料台固定部21に載置される。この状態で、微小試料台30は、導電性接着剤41により、台座20に固着される。台座20に固着した後、導電性接着剤41は、乾燥して硬化される。
【0012】
シリコン基板等の半導体基板により形成された微小試料台(母材)30の表面には、自然酸化膜が形成される。自然酸化膜は、微小試料台30の加工工程後、20分〜1時間程度経過すると母材との電気的導通が損なわれる程度に成長する。このため、微小試料台30への導電性被膜51の形成は、この時間が経過する前に行うことが望ましい。
【0013】
図3(a)〜(c)は、それぞれ、
図1に図示された試料固定装置100の側面図である。
微小試料台30の厚さは、台座20より大きいので、微小試料台30の底面31aに形成された導電性被膜51は、台座20の厚さ方向の一方の側面20aより突き出す。
図3(a)は、微小試料台30が、厚さ方向において、台座20の一方の側面20a側に大きく突き出して配置された構造を例示する。この構造では、導電性接着剤41は、台座20の一方の側面20a、台座20の側面20aから突き出した導電性被膜51の部分および微小試料台30の厚さ方向の一方の側面31bに連続して設けられている。このため、微小試料台30の側面31bに自然酸化膜が形成されていても、微小試料台30は導電性被膜51を介して台座20と電気的に導通している。
【0014】
図3(b)は、微小試料台30が、厚さ方向において、台座20のほぼ中央となる位置に配置されている構造を例示する。この状態では、導電性被膜51は、台座20の一方および他方の両側面20a、20bから突き出している。導電性接着剤41は、それぞれ、台座20の側面20a、20bから突き出した導電性被膜51の部分、台座20の側面20a、20bおよび微小試料台30の側面31b、31cを覆って形成されている。
図3(b)に図示された構造は、両面に導電性接着剤41を塗布する工程が必要となるため、
図3(a)に図示された構造よりも工数は増加するが、電気的な導通に関しては、
図3(a)の構造よりも高信頼性を得ることができる。
【0015】
図3(c)は、微小試料台30が、台座20の微小試料台固定部21の上面21a上に載置された
図3(a)、(b)に図示された構造とは相違する構造を示す。
図3(c)の試料固定装置100は、微小試料台30を、台座20の一方の側面20a上に固定した構造を例示する。この例では、微小試料台30は、厚さ方向の他方の側面31cを台座20の一方の側面20aに密着した状態で台座20に固着される。換言すれば、微小試料台30は、台座20に積層された状態となっており、導電性被膜51の全面が台座20から表出している。導電性接着剤41は、台座20の側面20aおよび微小試料台30の側面31bと共に、導電性被膜51の全面を連続状に覆って設けられている。
図3(c)に図示された構造では、導電性被膜51が、直接、台座20に接触する面積は、底面31aに形成された導電性被膜51の厚さ分のみである。しかし、底面31aに形成された導電性接着剤41の全面が導電性被膜51に接触するので、微小試料台30と台座20との電気的な導通を良好にすることができる。また、
図3(c)の構造では、微小試料台30の厚さを、台座20の厚さより大きくする必要が無いので、微小試料台30および台座20の設計上の自由度を大きくすることが可能となる。
【0016】
図4(a)、
図4(b)は、それぞれ、
図1に図示された微小試料台30の変形例を示す側面図である。
上述した実施形態では、導電性被膜51は、微小試料台30の底面31aのみに設けられた構造として例示した。しかし、導電性被膜51は、
図4(a)に図示されるように、微小試料台30の底面31aおよび側面31cに設けてもよい。
図4(a)に図示された微小試料台30は台座20との固着構造として、
図3(a)および
図3(c)に図示された例を適用するのに適する。
【0017】
また、導電性被膜51は、
図4(b)に図示されるように、微小試料台30の底面31aおよび厚さ方向の両側面31b、31cに設けてもよい。
図4(b)に図示された微小試料台30は、台座20との固着構造として、
図3(b)および
図3(c)に図示されたた例を適用するのに適する。
図4(a)、4(b)に図示された微小試料台30は、いずれも、導電性被膜51が接触する導電性接着剤41の面積が
図3(a)〜(c)に図示される構造よりも大きいので、台座20と微小試料台30との接続の信頼性をより向上することができる。
【0018】
図5を参照して、本発明の試料固定装置100に微小試料71が固定されたことを検出して、微小試料71の分析を自動で行う方法を説明する。
試料固定装置100は、微小試料台30に微小試料71を固定する装置、例えば、イオンビーム照射装置内に収容される。
図5は、試料固定装置100がイオンビーム照射装置内に収容された状態を示している。
微小試料71は、マイクロプローブ72に固着された状態で、試料固定装置100を構成する微小試料台30の試料固定部32a〜32eのいずれかに固定される。図示の例では、微小試料71は試料固定部32aに固定される場合とされている。微小試料71を、マイクロプローブ72の先端部に固着するには、マイクロプローブ72の先端部を微小試料に押し当てた状態で、例えば、カーボン等の接合材料(図示せず)を放出し、イオンビームを照射することにより行う。後述するように、マイクロプローブ72は、微小試料71を分析する際に微小試料71から分離されるので、微小試料71は、試料固定部32aに固着する必要がある。微小試料71を試料固定部32aに固着する場合も、CVD法によりカーボン等の接合材料(図示せず)を成膜する方法によることができる。
【0019】
マイクロプローブ72と試料固定装置100の台座20とは、電流計73を介装して配線74により接続されている。上述した通り、試料固定装置100の微小試料台30と台座20とは電気的に導通している。従って、マイクロプローブ72と台座20間に電圧を印加しておくと、微小試料71が試料固定部32aに接触したとき、微小試料台30、台座20を介して電流が流れる。この電流を電流計73により検出することにより、微小試料71が試料固定部32aに接触したことが検出される。
【0020】
微小試料71が試料固定部32aに接触したことが検出されたならば、導電性接着剤41により微小試料71を試料固定部32aに固着し、硬化して固定する。そして、FIBを照射して、マイクロプローブ72を微小試料71から分離する。このようにして、試料固定装置100に、分析用の微小試料71が固定される。微小試料71を試料固定部32a〜32eに固定するに要する時間、およびFIBを照射してマイクロプローブ72を微小試料71から分離する時間は予め設定した所定の時間で行うことができる。この所定の時間後に、微小試料71が固定された試料固定装置100をイオンビーム照射装置内から取り出し、微小試料71が未固定の別の試料固定装置100をイオンビーム照射装置内に収容する。そして、この試料固定装置100に、次の微小試料71を固定する。このことを繰り返すことにより、試料固定装置100に微小試料71を固定する作業の自動化を図ることが可能となる。
【0021】
微小試料71が固定された試料固定装置100は、不図示の搬送装置により搬送され、電子顕微鏡、あるいは微小試料71にイオンビームを照射して、微小試料71から放出される粒子を検出する検出装置を備えた分析装置により分析が行われる。微小試料71の分析を自動化することにより、微小試料71の試料固定装置100への固定から微小試料71の分析までの一貫作業の自動化を図ることが可能となる。
【0022】
イオンビーム照射装置に分析装置が一体的に組み込まれた装置であれば、微小試料71が固定された試料固定装置100を分析装置に搬送することなく、その装置内で、微小試料71の試料固定装置100への固定から微小試料71の分析までを行うことができる。
また、マイクロプローブ72に固定された微小試料71が、微小試料台30に接触したことを検出した後、微小試料71にFIBを照射して微小試料71を分析に適するように薄片化する工程を自動的に行うようにすることも可能である。
【0023】
上記、本発明の実施形態1によれば、下記の効果を奏する。
(1)金属材料等の導電性材料で形成された台座20と、半導体材料である母材の表面が自然酸化膜により被覆された微小試料台30とを、母材の表面に導電性接着剤41を接触させて電気的に導通するように構成した。このため、微小試料台30に微小試料71が接触したことを電気的に検出して、試料固定装置100に微小試料71を固定する作業の自動化を図ることが可能となった。
【0024】
(2)台座20が微小試料台30の母材に導通する構成であるので、台座20と微小試料台30との間に自然酸化膜が介在される場合に比し、台座20と微小試料台30との電気的な導通の信頼性を向上することができる。
【0025】
(3)自然酸化膜が形成される前の微小試料台30に、すなわち、微小試料台母材にスパッタまたは蒸着等により導電性被膜51を形成し、この導電性被膜51を、導電性被膜51周辺の台座20および微小試料台30と共に導電性接着剤41により被覆して固定する構成とした。このため、台座20と微小試料台30との接合部を低抵抗にすることができ、微小試料71の微小試料台30への接触の検出感度を高めることができる。
【0026】
−実施形態2−
本発明の試料固定装置の実施形態2について説明する。
図6は、実施形態1とは異なる構造の微小試料台の斜視図であり、
図7(a)、
図7(b)は、それぞれ、
図6に図示された微小試料台において、母材の表面を表出した状態を示す斜視図である。なお、以下では、実施形態2において、実施形態1と同一の部材には、同一の参照符号を付し、適宜、その説明を省略する。
図6に図示された微小試料台30Aは、基部31の底面31aに導電性被膜51は形成されておらず、この底面31aには、自然酸化膜(図示せず)が形成されている。しかし、微小試料台30Aの厚さ方向の側面31bに、複数(実施形態では2つ)の突起部33が形成されている。
突起部33は、ほぼ半円筒形状を有し、微小試料台30Aの基部31の上下方向の高さ全体に亘り延在している。
【0027】
微小試料台30Aに設けられた突起部33は、指先や、細いピンの先端により容易に除去、換言すれば、欠落することが可能な欠落用部位として形成されている。
図7(a)は、突起部33を全体に亘り除去し、突起部33が欠落された欠落部位33aに母材が表出した状態を示す斜視図である。また、
図7(b)は、基部31に形成された突起部33の長さの半分程度を除去し、欠落部位33aに母材が表出した状態を示す斜視図である。
突起部33の欠落部位33aには、自然酸化膜は形成されていないので、直ちに導電性接着剤41で覆えば、自然酸化膜の形成を防止することができる。
【0028】
図8は、
図7(a)、(b)に図示された微小試料台を備える本発明の実施形態2としての試料固定装置の外観斜視図であり、
図9(a)〜(c)は、それぞれ、
図8に図示された試料固定装置の側面図である。
図8に図示されるように、突起部33が除去され欠落部位33aに母材が表出された微小試料台30Aは、その底面31aが台座20の上面21aに接触するように試料台固定部21に搭載されて、導電性接着剤41により台座20に固着される。導電性接着剤41は、突起部33の欠落部位33aおよびその周囲の微小試料台30Aの側面31bと、台座20の側面20aの一部を覆っている。
従って、母材が表出した部分である突起部33の欠落部位33aは、導電性接着剤41を介して台座20と電気的に導通する。欠落部位33aには自然酸化膜は形成されていないので、導通の信頼性を向上することができる。
【0029】
図9(a)では、微小試料台30Aは、厚さ方向において、その側面31bが台座20の一方の側面20a側に突き出して配置する構造とされている。導電性接着剤41は微小試料台30Aの欠落部位33aおよびその周辺部と、台座20の一方の側面20aの一部を覆って連続して設けられる。
【0030】
微小試料台30Aは、
図9(b)に図示されるように、厚さ方向において、台座20のほぼ中央となる位置に配置する構造とすることができる。つまり、微小試料台30Aの厚さ方向における両側面31b、31cが、それぞれ、台座20の側面20a、20bから突き出すように配置される。導電性接着剤41は、微小試料台30Aの欠落部位33aおよびその周辺部と、台座20の側面20a、20bの一部を覆って連続して設けられる。
図9(b)に図示される構造では、微小試料台30Aの欠落部位33aを厚さ方向の両側面31b、31cの両面に設けるようにして、各側面31b、31cにおいて、導電性接着剤41を介して台座20と電気的に導通するようにすることが好ましい。
【0031】
図9(c)に図示されるように、微小試料台30Aを、台座20の側面20a上に固着する構造とするようにしてもよい。微小試料台30の厚さ方向の他の側面31cを台座20の一側面に密着した状態で台座20に固着する。導電性接着剤41は、微小試料台30Aの欠落部位33aが形成された側面31bと、微小試料台30Aの底面31aおよび台座20の側面20aの一部を覆って設けられる。
【0032】
実施形態2においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
また、実施形態2では、微小試料台30Aを台座20に固定して試料固定装置100を作製する際に、突起部33を除去して、欠落部位33aに母材を表出させればよく、微小試料台30Aを作製した後、微小試料台30Aに固定するまでの時間的な制約はない。従って、微小試料台30を作製した後、自然酸化膜が形成される前に導電性被膜51を形成しなければならない実施形態1の微小試料台30に対し、生産工程の時間的な自由度を大きくすることができる。
【0033】
なお、実施形態2において、欠落用部位である突起部33の形状、位置、数は上記実施形態に特定されるものではなく、任意に設定することが可能である。例えば、突起部33の形状は、断面多角形形状としたり、母材から欠落しやすいように母材に連接する根元部を細くしたりすることができる。また、突起部33は、底面31aと平行に設けてもよく、その数を1または3以上としたりしてもよい。
【0034】
−実施形態3−
図10は、本発明の試料固定装置の実施形態3を示す外観斜視図であり、
図11は、
図10に図示された微小試料台の拡大斜視図である。なお、実施形態3において、実施形態1と同一の部材には、同一の照符号を付し、適宜、その説明を省略する。
実施形態3は、微小試料台30Bの母材の表出を、レーザーを照射することにより形成したことを特徴とする。
図11に図示されるように、微小試料台30を形成した後、微小試料台30の厚さ方向の側面31bにレーザー77を照射して、母材に表出部位33bが形成された微小試料台30Bを作製する。
図11に図示された例では、微小試料台30Bの側面31bの長手方向(左右方向)の両端の各端部に、表出部位33bが形成されているが、
図12に図示されるように、長手方向に延在された1つの表出部位33bを形成するようにしてもよい。また、表出部位33bを、高さ方向(長手方向と直交する上下方向)に延在される形状としたり、長手方向に延在される部分と高さ方向に延在される部分を有する構造にしたりしてもよく、その形状、位置、数は任意に設定することができる。
【0035】
図13(a)〜(d)は、それぞれ、
図11、12に図示された微小試料台の側面図である。
図13(a)は、微小試料台30Bの底面31aにスパッタにより表出部位33bが形成された構造を示す。
図13(b)は、微小試料台30Bの厚さ方向の一方の側面31bのみにスパッタによる表出部位33bが形成された構造を示す。
図13(c)は、微小試料台30Bの底面31aおよび厚さ方向の一方の側面31bにスパッタによる表出部位33bが形成された構造を示す。
図13(d)は、微小試料台30Bの底面31aおよび厚さ方向の両側面31b、31cにスパッタによる表出部位33bが形成された構造を示す。
図13(a)〜(d)に図示された微小試料台30Bは、いずれも、
図9(a)〜(c)に図示された構造の試料固定装置100とすることができる。
【0036】
実施形態3においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
また、実施形態3では、実施形態2と同様に、微小試料台30Bを台座20に固定して試料固定装置100を作製する際に、スパッタにより表出部位33bを形成して母材を表出させればよい。従って、微小試料台30を作製した後、自然酸化膜が形成される前に導電性被膜51を形成しなければならない実施形態1の微小試料台30に対し、生産工程の時間的な自由度を大きくすることができる。
【0037】
−実施形態4−
図14は、本発明の実施形態4としての試料固定装置の外観斜視図であり、
図15は、
図14に図示された試料固定装置の製造方法を説明するための斜視図である。
図14に図示される試料固定装置100では、微小試料台30Cの母材は、導電性接着剤41の外周部42の一部の内縁部42aに形成されている。
実施形態4の試料固定装置100の製造方法を説明する。
微小試料台30を台座20の微小試料台固定部21の上面21aに載置して、導電性接着剤41により、微小試料台30を台座20に固定する。微小試料台30には、全面に自然酸化膜が形成されていてもよい。導電性接着剤41を乾燥、硬化した後、レーザー78を、導電性接着剤41の表面から微小試料台30の側面31bに亘って連続して照射する。レーザー78の照射により、微小試料台30のレーザー78が照射された部分の自然酸化膜が除去され、母材が表出する。
【0038】
図16(a)は、微小試料台30の表面に自然酸化膜Mが形成され、自然酸化膜M上に、導電性接着剤41が形成された状態の断面図である。
図16(b)は、導電性接着剤41の表面から、微小試料台30における導電性接着剤41の外周部42の隣接部にレーザー78を照射した状態の断面図である。
図16(b)における点線は、レーザー78を照射する前の導電性接着剤41の外形を示す。
レーザー78が照射されると、導電性接着剤41の周縁部が飛散する。また、レーザー78が照射された部分の自然酸化膜Mは、除去され、この部分の母材が表出する。母材の表出部分は、導電性接着剤41の飛散した部分により被覆される。つまり、見掛け上、導電性接着剤41の外周部42が外方に張り出した状態となり、母材の表出部分が、導電性接着剤41により被覆される。このような作用により、微小試料台30と導電性接着剤41とが電気的に導通可能に接続される。
【0039】
母材の表出した部分は、導電性接着剤41により覆われるので、この後、導電性接着剤41の外側において、自然酸化膜Mが除去された部分の母材の表面に自然酸化膜Mが再度、形成されても、微小試料台30と導電性接着剤41との電気的な導通には影響はない。
【0040】
実施形態4においても、実施形態1〜3と同様な効果を奏する。
実施形態2、3では、自然酸化膜を除去して母材を露出した後、自然酸化膜が再形成される前に、微小試料台30A、30Bを台座20に固定しなければならないという制約があった。しかし、実施形態4では、自然酸化膜Mが形成された微小試料台30を台座20に固定した後、レーザー78を照射することにより、導電性接着剤41の外周部42の内縁部42aの自然酸化膜Mを除去し、かつ、導電性接着剤41により覆うことができる。このため、微小試料台30Cの作製と、この微小試料台30Cを用いて試料固定装置100を作製する工程との時間的な制約が一切なく、作業工程の管理の自由度を一層大きくすることができる。
【0041】
なお、上記各実施形態では、微小試料台30、30A〜30Cが、シリコン半導体材料により形成されている部材として例示したが、本発明は、微小試料台30、30A〜30Cが、SOI基板等、他の半導体材料で形成されている場合にも適用が可能である。
【0042】
上記実施形態では、半導体基板で形成された微小試料台30、30A〜30Cの表面に形成された自然酸化膜を除去して、母材を表出させる場合として例示した。しかし、本発明は、微小試料台30、30A〜30Cを形成する過程で、あるいは、微小試料台30、30A〜30Cを形成した後、微小試料台30、30A〜30Cの表面に絶縁膜を形成した微小試料台30、30A〜30Cに対しても適用することが可能である。
【0043】
上記実施形態では、微小試料台30、30A〜30Cは、複数の試料固定部32a〜32eを備えている構造として例示したが、1つの試料固定部32aを備えているものであってもよい。また、試料固定部32a〜32eが、下部固定部f1、上部固定部f2の2段で構成されている構造に限らず、1つまたは3段以上の固定部を備えた構造としてもよい。
【0044】
微小試料台30、30A〜30Cおよび台座20の形状は、上記実施形態に限られるものではなく、任意の形状とすることができる。その他、本発明は、種々、変形して適用することが可能であり、要は、導電性材料で作製された台座と、半導体材料である母材の表面が絶縁層で被覆され、試料搭載部を有する微小試料台と、台座と微小試料台とを固定する導電性接着剤とを備え、微小試料台の母材と台座とが導通しているものであればよい。