特許第6231463号(P6231463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231463
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】カシメ構造体
(51)【国際特許分類】
   H01H 35/34 20060101AFI20171106BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20171106BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01H35/34 M
   F16B4/00 P
   F16J3/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-227036(P2014-227036)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-91888(P2016-91888A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 理
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−278563(JP,A)
【文献】 特開平02−135635(JP,A)
【文献】 特開2005−308397(JP,A)
【文献】 特開2002−279875(JP,A)
【文献】 特開2005−8091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 35/34
F16B 4/00
F16J 3/00 − 3/02
F25B 41/06
G01L 7/00 − 23/32
G01L 27/00 − 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲環境に対して気密性を要求される被カシメ部材および該被カシメ部材をカシメ加工により保持するように構成されるカシメ部材を少なくとも備えるカシメ構造体において、
前記カシメ部材は、前記被カシメ部材を取り囲み、カシメ加工後に前記被カシメ部材を保持する環状側壁を有し、
カシメ加工後に、前記被カシメ部材と前記環状側壁との間に挟み込まれる環状で内側に貫通孔を有する形状のスペーサをさらに備え
前記スペーサは、前記被カシメ部材の外周の平坦部のみと接触する形状を有することを特徴とするカシメ構造体。
【請求項2】
カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、前記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および前記圧力応動部材と前記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で前記マイクロスイッチを保持し、前記隔壁を挟んで他方の側で前記圧力応動部材をカシメ加工により保持するように形成され、
前記圧力応動部材を保持する前記ホルダ部材の前記隔壁の前記他方の側には、前記圧力応動部材を取り囲む環状側壁が形成され、カシメ加工後に、前記圧力応動部材と前記環状側壁との間に挟み込まれる環状で内側に貫通孔を有する形状のスペーサをさらに備え
前記スペーサは、前記圧力応動部材の外周の平坦部のみと接触する形状を有することを特徴とするカシメ構造体。
【請求項3】
前記スペーサは、前記圧力応動部材と接触する面積が、前記環状側壁と接触する面積より広いことを特徴とする請求項2に記載のカシメ構造体。
【請求項4】
前記スペーサは、断面が長方形状であることを特徴とする請求項2に記載のカシメ構造体。
【請求項5】
前記圧力応動部材は、底面が平坦なFLATキャップ構造であり、
前記スペーサは、断面が長方形状で、前記圧力応動部材の平坦な底面の全面を覆う形状であることを特徴とする請求項2に記載のカシメ構造体。
【請求項6】
前記スペーサは、断面がカシメ代にあわせたテーパ形状を有する形状であることを特徴とする請求項2または5に記載のカシメ構造体。
【請求項7】
前記スペーサは、前記圧力応動部材側の面にテーパ形状を有する形状であることを特徴とする請求項2または5に記載のカシメ構造体。
【請求項8】
前記スペーサは、前記圧力応動部材とカシメ代に合わせた段部を有する形状であることを特徴とする請求項2または5に記載のカシメ構造体。
【請求項9】
前記マイクロスイッチは、カシメ加工により前記ホルダ部材に保持されることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載のカシメ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カシメ構造体に関し、特に、高い耐圧性能を有する高圧用の圧力スイッチ等に適したカシメ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力が変動した場合に、一定値を境にON/OFF信号を発生する圧力スイッチが従来から知られている。このような圧力スイッチには、概略、スイッチケース、圧力応動部材およびホルダを備えて構成されるものがある。スイッチケースは、圧力応動部材の圧力検知に従い開閉する接点部を有する。圧力応動部材は、ダイヤフラムのような圧力感知部材と、圧力感知部材の動きをスイッチケースの接点部に伝達するロッドと、導圧パイプを介して圧力源に連通する感圧室とを備えている。ホルダは、スイッチケースおよび圧力応動部材をカシメ加工により一体に連結し、これらを保持する。このような圧力スイッチには、CO2機器用圧力スイッチや建機用圧力スイッチ等のように、高圧の流体を検出するための高圧用の圧力スイッチが知られている。これらの高圧用の圧力スイッチでは、高圧の流体にさらされる高圧用の圧力応動部材の保持において、非常に高い耐圧性能が要求される場合がある。高い耐圧性能を確保するために、圧力応動部材を保持するホルダの環状側壁の肉厚を増大させることが従来から行われている。
【0003】
このような圧力スイッチの一例として、特許文献1が開示されている。特許文献1に記載された圧力スイッチは、アウターケース27の端部27aをフランジ部24にカシメ加工を行い、隔壁26の端部26aに圧着させることにより、構造を強固にするとともにシール性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−135635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように厚肉カシメを行う場合、様々な技術的課題が生じている。厚肉カシメを行う場合には、厚肉の環状側壁をカシメ加工するために、カシメ荷重を大きくする必要があり、製造設備を大型化しなくてはならず、製造コストを押し上げることになる。また、厚肉の環状側壁を内側に曲げるため、カシメ部分にシワが発生し、外観を損ねるばかりでなく、寸法精度の低下やメッキ割れ、カシメ不足等の品質の低下を招く恐れもある。
【0006】
また、圧力スイッチの場合には、厚肉カシメには限定されないが、ダイヤフラムの枚数や厚みを変更する場合があり、ホルダ部材を同一にした場合にダイヤフラムの枚数を増加すると、カシメ代が少なくなることになる。カシメ代を少なくすると、圧力スイッチの圧力応動部材の耐圧性能が低下するという問題が生じる。
【0007】
従って、本発明は、高い耐圧性能を有する高圧用の圧力スイッチ等に適したカシメ構造体において、厚肉カシメを行うことによる、製造設備を大型化しなくてはならない、あるいは、カシメ部分にシワが発生するといった問題、及び、圧力スイッチの場合には、ダイヤフラムの枚数を変更した場合のカシメ代の調整が困難である等の従来からある課題を解決し、高い耐圧強度を有するカシメ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカシメ構造体は、周囲環境に対して気密性を要求される被カシメ部材および該被カシメ部材をカシメ加工により保持するように構成されるカシメ部材を少なくとも備えるカシメ構造体において、上記カシメ部材は、上記被カシメ部材を取り囲み、カシメ加工後に上記被カシメ部材を保持する環状側壁を有し、カシメ加工後に、上記被カシメ部材と上記環状側壁との間に挟み込まれる環状で内側に貫通孔を有する形状のスペーサをさらに備え、上記スペーサは、上記被カシメ部材の外周の平坦部のみと接触する形状を有する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のカシメ構造体は、カバー部材に収容される圧力感知手段としてのダイヤフラムを有するとともに圧力源に連通するように形成されている圧力応動部材、上記ダイヤフラムの圧力感知により切り換え動作をするスイッチを有するマイクロスイッチ、および上記圧力応動部材と上記マイクロスイッチとを保持するホルダ部材を備え、上記ホルダ部材は、隔壁を有し、該隔壁を挟んで一方の側で上記マイクロスイッチを保持し、上記隔壁を挟んで他方の側で上記圧力応動部材をカシメ加工により保持するように形成され、上記圧力応動部材を保持する上記ホルダ部材の上記隔壁の上記他方の側には、上記圧力応動部材を取り囲む環状側壁が形成され、カシメ加工後に、上記圧力応動部材と上記環状側壁との間に挟み込まれる環状で内側に貫通孔を有する形状のスペーサをさらに備え、上記スペーサは、前記圧力応動部材の外周の平坦部のみと接触する形状を有する。
【0010】
また、上記スペーサは、上記圧力応動部材と接触する面積が、上記環状側壁と接触する面積より広いものとしてもよい。
【0011】
また、上記スペーサは、断面が長方形状であるものとしてもよい。
【0012】
また、上記圧力応動部材は、底面が平坦なFLATキャップ構造であり、上記スペーサは、断面が長方形状で、上記圧力応動部材の平坦な底面の全面を覆う形状であるものとしてもよい。
【0013】
また、上記スペーサは、断面がカシメ代にあわせたテーパ形状を有する形状であるものとしてもよい。
【0014】
また、上記スペーサは、上記圧力応動部材側の面にテーパ形状を有する形状であるものとしてもよい。
【0015】
また、上記スペーサは、上記圧力応動部材とカシメ代に合わせた段部を有する形状であるものとしてもよい。
【0016】
また、上記マイクロスイッチは、カシメ加工により上記ホルダ部材に保持されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカシメ構造体によれば、厚肉カシメを行うことによる、製造設備を大型化しなくてはならない、あるいは、カシメ部分にシワが発生するといった問題、及び、圧力スイッチの場合には、ダイヤフラムの枚数を変更した場合のカシメ代の調整が困難である等の従来からある課題を解決し、高い耐圧強度を有する圧力スイッチ等に適したカシメ構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の圧力スイッチの基本的な構造を示す断面図である。
図2】ホルダ部材の環状側壁を厚肉にした従来の圧力スイッチの部分断面図である。
図3】本発明のカシメ構造体を適用した第1の実施形態の圧力スイッチの部分断面図である。
図4】スペーサによるカシメ構造体の応力低減効果を説明するための構成を示す図であり、図4(a)は、スペーサがない場合の構成を示す図であり、図4(b)は、スペーサがある場合の構成を示す図である。
図5】スペーサによるカシメ構造体の応力低減効果を説明するための図であり、図5(a)は、スペーサ幅による応力低減効果の変動を示すグラフであり、図5(b)は、スペーサ厚さによる応力低減効果の変動を示すグラフである。
図6】本発明のカシメ構造体を適用した第2の実施形態の圧力スイッチの部分断面図である。
図7】本発明のカシメ構造体を適用した第3の実施形態の圧力スイッチの部分断面図であり、図7(a)は、圧力スイッチの部分断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すVIIB部分の拡大図である。
図8】本発明のカシメ構造体を適用した第4の実施形態の圧力スイッチの部分断面図である。
図9】本発明のカシメ構造体を適用した第5の実施形態の圧力スイッチの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
まず、第1の実施形態について説明する。
【0021】
本発明のカシメ構造体の構造を説明するために、本発明のカシメ構造体を適用するのに適した圧力スイッチの基本的な構造を説明する。
【0022】
図1は、従来の圧力スイッチ100の基本的な構造を示す断面図である。図1において、圧力スイッチ100は、マイクロスイッチ110と、圧力応動部材120と、ホルダ部材130とを備えている。
【0023】
マイクロスイッチ110は、スイッチケース111と、ガイド板112と、スイッチ115と、第1の接続端子116と、第2の接続端子117と、支持アーム118とを備える。
【0024】
スイッチケース111及びガイド板112は、電気絶縁性の合成樹脂からなり、スイッチケース111は、図1において下方に向かって開放し、スイッチケース111とガイド板112とを合わせて、概略有底筒状の筐体として形成されている。
【0025】
スイッチ115は、可動接点113及び固定接点114を含み、マイクロスイッチ110の筐体内部に設けられている。可動接点113は、弾性を有する支持アーム118を介して、スイッチケース111に沿って設けられる第1の接続端子116に接続され、固定接点114は、第1の接続端子116に対向してスイッチケース111に沿って設けられている第2の接続端子117に直接接続されている。可動接点113と固定接点114は、ここでは、両接点113、114が可動接点113を支持する支持アーム118の弾性により常に接触した状態を維持するように、したがって、スイッチ115が常に閉じた状態を維持するように、上下方向に対向して配置されている。
【0026】
支持アーム118は、後述する圧力応動部材120を構成するシャフト121の上端に当接するように配置され、図1において、シャフト121の上方への移動によりスイッチ115を開くことができる。シャフト121は、図1において、ガイド部材としてのガイド板112に形成されている貫通孔112a内に上下移動可能に配置される。
【0027】
スイッチ115は、例えば、第1および第2の接続端子116および117を介して接続される制御回路などの電気回路に、スイッチ115の開閉に伴う電流のオン・オフ信号を伝達する。なお、スイッチ115は、ここで示すように、常閉型に限定されるものではなく、常開型であってもよいし、あるいは、1つの可動接点と2つの固定接点を備えて可動接点を一方の固定接点から他方の固定接点に切り換えるタイプであってもよい。
【0028】
圧力応動部材120は、圧力を感知して上記マイクロスイッチ110内に設けられたスイッチ115をオン・オフする部材であって、シャフト121、ダイヤフラム122、感圧室124を有するカバー部材123および導圧パイプ125を備えている。
【0029】
シャフト121は、圧力感知手段としてのダイヤフラム122の変形(反転)を支持アーム118に伝え、スイッチ115を開閉することができるように配置されている。シャフト121は、図1に示されるように、圧力応動部材120のダイヤフラム122から、カバー部材123を構成する上カバー126に設けられている貫通孔123a、隔壁131に設けられている貫通孔131a、ガイド板112を貫通する貫通孔112aを通って、マイクロスイッチ110内に延在している。シャフト121は、シャフト121が上方に移動したとき、該シャフト121の上端が、弾性を有する支持アーム118に当接するように、また、シャフト121の下端が、ダイヤフラム122の変形に連動するように、その長さが設定される。
【0030】
圧力感知手段としてのダイヤフラム122は、これに限定されるものではないが、金属薄板の積層体として形成されている。ダイヤフラム122は、該ダイヤフラム122の上面がシャフト121に当接し、下面が後述する感圧室124に面するように、カバー部材123内に収容され、保持される。ダイヤフラム122は、図1に示されるように、感圧室124に向って突出するように配置されることが好ましい。それにより、圧力を感知したときのダイヤフラム122の変形量が大きく取れ、スイッチ115の開閉が確実になる。
【0031】
カバー部材123は、ここでは、上カバー126および下カバー127を備え、上下のカバー126および127は、それらの間にダイヤフラム122を挟み、該ダイヤフラム122とともに溶接部128で溶接され、互いに固定される。カバー部材123を構成する下カバー127とダイヤフラム122との間に圧力源に連通する感圧室124が形成される。したがって、感圧室124は、ダイヤフラム122と下カバー127とで画定されるとともに、周囲環境に対して気密性を要求される。カバー部材123を構成する上カバー126には、上述したように、ダイヤフラム122の変形に連動するシャフト121が通り抜ける貫通孔123aが形成される。カバー部材123内に形成される感圧室124は、該カバー部材123を構成する下カバー127に予めろう付で接合されている導圧パイプ125を介して圧力源に連通する。
【0032】
なお、感圧室124は、高圧の圧力源に連通しているため、ダイヤフラム122は、上述したように、感圧室124が外部に対して気密性を確実に保つ必要がある。したがって、図1に示されるように、ダイヤフラム122を挟む上下のカバー126および127とともに溶接部128で溶接され、カバー部材123内に保持されることが多い。
【0033】
このように圧力応動部材120を構成することにより、ダイヤフラム122が感圧室124の流体の圧力を感知して変形(反転)すると、シャフト121が上方に移動し、シャフト121の上端が可動接点113に接続される弾性を有する支持アーム118に当接する。それにより、可動接点113は、固定接点114から離れ、したがって、スイッチ115が開かれる。
【0034】
ホルダ部材130は、金属製であり、耐圧構造を要求される圧力応動部材120を確実に保持するとともに、該圧力応動部材120とマイクロスイッチ110とを一体的に保持する部材である。ホルダ部材130は、2つの部材を保持し得るように、具体的には、その上方では、マイクロスイッチ110が大気シール側Oリング134を挟んで、また、その下方では、圧力応動部材120が受圧側Oリング135を挟んで、カシメ加工により保持するように、構成されている。
【0035】
ホルダ部材130は、ここでは、隔壁131、隔壁131の上方に設けられている上部環状側壁132および隔壁131の下方に設けられている下部環状側壁133を備えている。隔壁131には、ここでは、圧力応動部材120のシャフト121が通り抜けるための貫通孔131aと、その下面側には、受圧側Oリング135を配置するための環状溝131bが形成されている。また、隔壁131の一方の側である上側に設けられている上部環状側壁132は、その上部自由端に、第1の被カシメ部材としてのマイクロスイッチ110を保持する薄肉のマイクロスイッチカシメ部132aを備えている。さらに、隔壁131の他方の側である下側に設けられている下部環状側壁133は、その下部自由端に、第2の被カシメ部材としての圧力応動部材120を保持する厚肉の圧力応動部材カシメ部133aを備えている。
【0036】
圧力スイッチ100の組み立てに際し、第1の被カシメ部材であるマイクロスイッチ110は、ホルダ部材130の隔壁131の上に配置され、それにより、上部環状側壁132によりマイクロスイッチ110の下部外周が取り囲まれる。続いて、上部環状側壁132の自由端の薄肉のマイクロスイッチカシメ部132aがマイクロスイッチ110の下部外周に対してカシメ加工されることにより、第1の被カシメ部材であるマイクロスイッチ110がホルダ部材130に固定される。
【0037】
同様に、第2の被カシメ部材としての圧力応動部材120は、ホルダ部材130の隔壁131の下に配置され、下部環状側壁133により扁平なカバー部材123全体が取り囲まれる。したがって、下部環状側壁133の厚肉の圧力応動部材カシメ部133aがカバー部材123の下カバー127に対してカシメ加工されることにより、第2の被カシメ部材である圧力応動部材120は、ホルダ部材130にしっかりと固定される。このような説明から理解されるように、圧力スイッチ100において、ホルダ部材130は、第1または第2の被カシメ部材としてのマイクロスイッチ110または圧力応動部材120をカシメ加工により保持するカシメ部材であるといえる。したがって、このような圧力スイッチ100では、マイクロスイッチ110または圧力応動部材120とホルダ部材130とが、カシメ構造体を構成しているといえる。なお、本実施形態では、マイクロスイッチ110がホルダ部材130にカシメ加工されるものとしたが、これには限定されず、マイクロスイッチ110が圧入や接着材によりホルダ部材130に固定されるものとしてもよい。
【0038】
このような圧力スイッチ100においては、特に、圧力応動部材120の保持において、さらに高い耐圧性能が要求される場合がある。高い耐圧性能を確保するために、圧力応動部材120を保持するホルダ部材130の下部環状側壁133の肉厚を増大させることが従来から行われている。
【0039】
図2は、ホルダ部材の環状側壁を厚肉にした従来の圧力スイッチ200の部分拡大図である。図2において、圧力スイッチ200は、ホルダ部材230の下部環状側壁233が、圧力スイッチ100のホルダ部材130の下部環状側壁133より厚肉になっており、それ以外の構成は、図1の圧力スイッチ100の構成と同じである。
【0040】
ホルダ部材230の環状側壁233を厚肉にして厚肉カシメを行う場合には、高圧の圧力源に対する高い圧力性能を確保することはできるが、以下のような問題が発生する。まず、厚肉カシメを行う場合には、カシメ加工を行う際にカシメ荷重を大きくする必要があり、既存の設備では生産できないため、製造設備を大型化する必要がある。また、カシメ加工を行う際にカシメ部分にシワが発生することがある。
【0041】
また、圧力スイッチの場合には、ダイヤフラムの枚数を変更する場合があり、ホルダ部材を同一にした場合に、ダイヤフラムの枚数を増加すると、カシメ代が少なくなることになる。カシメ代を少なくすると、圧力スイッチのカバー部材の下カバーの耐圧性能が低下するという問題が生じる。この点については、図4及び図5を使用して後述する。
【0042】
図3は、本発明のカシメ構造体を適用した第1の実施形態の圧力スイッチ300の部分断面図である。図3において、圧力スイッチ300は、下カバー127と圧力応動部材カシメ部333aの間に、環状で内側に貫通孔を有し、断面が長方形状のスペーサ336が挟み込まれており、それ以外の構成は、図1に示す圧力スイッチ100の構成と同じである。なお、本実施形態では、スペーサ336が円環形状であるものとして説明を進めるが、これには限定されず、環状で内側に貫通孔を有する形状であればよく、例えば、ひし形や、クローバー形状などでもよい。なお、ホルダ部材330の環状側壁333の長さは、スペーサ336を挟み込むため、長くなっているが、これは主要な相違点ではない。以下、この点について説明する。
【0043】
図4は、スペーサによるカシメ構造体の応力低減効果を説明するための構成を示す図であり、図4(a)は、スペーサがない場合の構成を示す図であり、図4(b)は、スペーサがある場合の構成を示す図である。図5は、スペーサによるカシメ構造体の応力低減効果を説明するための図であり、図5(a)は、スペーサ幅による応力低減効果の変動を示すグラフであり、図5(b)は、スペーサ厚さによる応力低減効果の変動を示すグラフである。なお、図5(a)は、カシメ代0.5mmを基準とした場合のスペーサ幅に対する応力低減効果を示すものであり、図5(b)は、下カバーの厚さ0.8mmを基準とした場合のスペーサ厚さに対する応力低減効果を示すものである。
【0044】
図4及び図5に示す応力低減効果の検証は、導圧パイプから感圧室に圧力Pをかけた場合に、解析の結果位置が明確になった、図4及び図5に示す最大応力点(測定点)の応力を計測したものである。この応力低減効果の検証は、図4(a)に示すようにカシメ代が十分に取れない場合(本測定では、カシメ代0.5mmとする。)、図4(b)に示すように図4(a)と同様にカシメ代が0.5mmで、さらにスペーサを挟み込んだ状態と比較し、さらにスペーサ幅と厚さにより応力低減効果がどのように変化するのかシミュレーションにより解析し、図5(a)及び図5(b)にまとめたものである。なお、この検証では、ホルダ部材の直径は24φとし、ホルダ部材の貫通孔の直径は2.5φとし、ホルダ部材の下部環状側壁の板厚であるカシメ板厚は1.5mmとし、スペーサの外径はカバー部材と同じとした。
【0045】
解析の結果、スペーサを入れることにより、カシメ板のみの場合に比較して応力低減効果が得られることがわかった。また、スペーサの幅や厚さを増加すれば、応力低減効果はより高まることもわかった。但し、カシメ代同等のスペーサ幅では低減効果は見られない。また、下カバーと同じ厚さのスペーサを使用してもスペーサ幅をある程度確保すれば、10%程度の応力低減効果が得られることもわかった。
【0046】
従って、スペーサを使用することにより、カシメ板厚を必要以上に厚くする必要はなく、ある程度のカシメ代を確保できるようにカシメ部分の長さをとれば、圧力応動部材の保持においてさらに高い耐圧性能を確保できる。これにより、従来の厚肉カシメで問題となっていた、製造設備を大型化しなくてはならないという問題点と、カシメ加工を行う際にカシメ部分にシワが発生するという問題点が解消される。
【0047】
図3に戻り、圧力スイッチ300のホルダ部材330の環状側壁333の長さは、スペーサ336の厚さに合わせて、カシメ代がある一定以上確保できればよい。従って、スペーサ336を使用することにより、ダイヤフラム122の枚数を変更した場合でも、予め環状側壁333の長さにある程度の余裕をとっておけば、ホルダ部材330自体を変更する必要はなく、同一のホルダ部材330で対応することが可能となる。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、厚肉カシメを行うことによる、製造設備を大型化しなくてはならない、あるいは、カシメ部分にシワが発生するといった問題、及び、圧力スイッチの場合には、ダイヤフラムの枚数を変更した場合のカシメ代の調整が困難である等の従来からある課題を解決し、高い耐圧強度を有するカシメ構造体を有する圧力スイッチを提供することができる。
【0049】
次に、第2の実施形態について説明する。
【0050】
図6は、本発明のカシメ構造体を適用した第2の実施形態の圧力スイッチ600の部分断面図である。図6において、圧力スイッチ600は、下カバー127と圧力応動部材カシメ部633aの間に、環状で内側に貫通孔を有し、断面にカシメ代に合わせたテーパ形状を有するスペーサ636が挟み込まれており、それ以外の構成は、図3に示す第1の実施形態の圧力スイッチ300の構成と同じである。
【0051】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、スペーサ636の断面がカシメ代にあわせたテーパ形状を有する形状であるため、下部環状側壁633が曲げやすくなり、カシメ加工が容易になるという効果が得られる。
【0052】
次に、第3の実施形態について説明する。
【0053】
図7は、本発明のカシメ構造体を適用した第3の実施形態の圧力スイッチ700の部分断面図であり、図7(a)は、圧力スイッチ700の部分断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すVIIB部分の拡大図である。図7(a)及び図7(b)において、圧力スイッチ700は、下カバー127と圧力応動部材カシメ部733aの間に、環状で内側に貫通孔を有し、断面に下カバー127側の面にテーパ形状を有するスペーサ736が挟み込まれており、それ以外の構成は、図3に示す第1の実施形態の圧力スイッチ300の構成と同じである。
【0054】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、スペーサ736の断面が下カバー127側の面にテーパ形状を有する形状であるため、押さえ位置が安定し、さらに、カシメ加工によりスペーサ736が変形し、そのスプリングバック効果により、圧力応動部材120を保持する保持力が増加するという効果が得られる。
【0055】
次に、第4の実施形態について説明する。
【0056】
図8は、本発明のカシメ構造体を適用した第4の実施形態の圧力スイッチ800の部分断面図である。図8において、圧力スイッチ800は、下カバー127と圧力応動部材カシメ部833aの間に、環状で内側に貫通孔を有し、下カバー127及び圧力応動部材カシメ部833aの形状に合わせた段部を有するスペーサ836が挟み込まれており、それ以外の構成は、図3に示す第1の実施形態の圧力スイッチ300の構成と同じである。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、スペーサ836の断面が下カバー127及び圧力応動部材カシメ部833aの形状に合わせた段部を有するため、スペーサ836が下カバー127及び圧力応動部材カシメ部833aに接触する面積が増加し、耐圧性能を向上する効果が得られる。
【0058】
次に、第5の実施形態について説明する。
【0059】
図9は、本発明のカシメ構造体を適用した第5の実施形態の圧力スイッチ900の部分断面図である。図9において、圧力スイッチ900は、下カバー927がFLATキャップと呼ばれる底面が平坦の構造であることと、下カバー927と圧力応動部材カシメ部933aの間に、環状で内側に貫通孔を有し、断面が長方形状で、底面が平坦の下カバー927の全面を覆うスペーサ936が挟み込まれており、それ以外の構成は、図3に示す第1の実施形態の圧力スイッチ300の構成と同じである。なお、本実施形態では、FLATキャップ形状の下カバー927に対して、環状で内側にスペーサを有し、断面が長方形状で、底面が平坦の下カバー927の全面を覆う形状のスペーサ936を使用したが、これには限定されず、上述の第2乃至第4の実施形態に記載された形状のスペーサ636、736、836を使用してもよい。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、スペーサ936が平坦な底面を有する下カバー927の全面を覆うため、スペーサ936が下カバー927に接触する面積が増加し、耐圧性能を向上する効果が得られる。
【0061】
なお、本発明のカシメ構造体として、第1乃至第5の実施形態において圧力スイッチを使用して説明してきたが、本発明は、これには限定されず、被カシメ部材およびこの被カシメ部材をカシメ加工により保持するように構成されるカシメ部材を備えるカシメ構造体を有する構造であれば、適応可能である。
【0062】
以上説明したように、本発明のカシメ構造体によれば、厚肉カシメを行うことによる、製造設備を大型化しなくてはならない、あるいは、カシメ部分にシワが発生するといった問題、及び、圧力スイッチの場合には、ダイヤフラムの枚数を変更した場合のカシメ代の調整が困難である等の従来からある課題を解決し、高い耐圧強度を有する圧力スイッチ等に適したカシメ構造体を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
100、300、600、700、800、900 圧力スイッチ
110 マイクロスイッチ
111 スイッチケース
112 ガイド板
112a 貫通孔
113 可動接点
114 固定接点
115 スイッチ
116 第1の接続端子
117 第2の接続端子
118 支持アーム
120 圧力応動部材
121 シャフト
122 ダイヤフラム
123、923 カバー部材
123a 貫通孔
124 感圧室
125 導圧パイプ
126 上カバー
127、927 下カバー
128 溶接部
130、330、630、730、830、930 ホルダ部材
131 隔壁
131a 貫通孔
131b 環状溝
132 上部環状側壁
132a マイクロスイッチカシメ部
133、333、633、733、833、933 下部環状側壁
133a、333a、633a、733a、833a、933a 圧力応動部材カシメ部
134 大気シール側Oリング
135 受圧側Oリング
336、636、736、836、936 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9