(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコン、シリコン炭化物(SiC)、シリコン窒化物(SiN)、ゲルマニウム、III−V族半導体、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウムりん(GaP)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択され、上面を有する基板を提供するステップと、
2〜50個のサブパルスをバーストエンベロープ内に有するレーザービームを伝えるレーザー源を提供するステップであって、前記バーストエンベロープの前記サブパルスが、400nmから3μmまでの範囲の波長を有するステップと、
前記レーザービームを分散レンズ集束装置に通して、主焦点ウエストと、複数の線形配置された副焦点ウエストとを作成するステップと、
前記レーザービームを前記基板に伝えてカー効果の自己集束を開始し、該自己集束を前記基板に入力される追加のエネルギーによって該基板に伝搬させて該基板の内部にフィラメントを作成するステップと
を含む基板をレーザー加工する方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここまでは、以下に示す本発明の詳細な説明をよりよく理解し、技術に対する本貢献をよりよく把握できるよう、本発明の重要な特徴を幾分広範に説明してきた。
もちろん、本発明には、以下に説明し、本発明の請求項を形成するその他の特徴もある。
【0023】
本開示のさまざまな実施形態および態様について、以下に詳細に説明する。
以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとは、理解されない。
本開示のさまざまな実施形態を詳しく理解できるよう、多数の具体的な詳細について、説明する。
ただし、場合によっては、本開示の実施形態を簡潔に説明するために、既知または従来の詳細事項については,説明しない。
【0024】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途において、以下の説明または図面に示される構造の詳細または構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな方法で実施および実行することができる。
また、本明細書で採用される表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と捉えられるべきものではないことを理解されたい。
【0025】
シリコンは、1.3μm以降の伝送帯域を有する。
そのような波長の短時間レーザーパルスが存在する場合、それらのパルスは、透明材料の内部で効率的に伝搬し、レンズの焦点位置で非線形吸収工程により体積の内部を局所的に改質する。
しかし、超高速レーザーパルス(ピーク出力が1MW超)のシリコン内での伝搬は、群速度分散(GVD)、線形回析、自己位相変調(SPM)、自己集束、価電子帯から伝導帯への電子の多光子イオン化/トンネルイオン化(MPI/TI)、プラズマ集束解除、自己急峻化等の線形または非線形の効果の組み合わせを通じたレーザーパルスの時空的プロファイルの強力な再形成により複雑化する。
これらすべての物理的効果は、波長1μmの超高速レーザーパルスをガラス等の光媒体で使用することにより観察される(SL Chin他、Canadian Journal of Physics、83、863−905(2005年))。
【0026】
シリコン(Si)基板の使用に加えて、SiC、ガラス、ホウケイ酸ガラス、化学強化ガラス、熱強化ガラス、サファイア、LiNbO
3、チタンサファイア、LiTaO
3、透明セラミック、結晶ロッド、GaN等の他の材料を、本明細書で開示された方法により、加工することができる。
これらの材料は、任意の幾何学的形状をとる可能性があり、開示された方法は、これらの材料の任意の幾何学的形状に適用することができる。
【0027】
シリコンの透過率スペクトルで動作することができる超高速バーストレーザーを使用することで、フィラメントが形成され、スクライブ線に沿って音響圧縮が内部的に行われて、きわめてきれいで滑らかなスクライビングが実現する。
【0028】
この方法では、波長1μmの超高速パルスのバースト(ポンプ)が、三次非線形性がきわめて高いLiNbO
3結晶を通過し、位相整合に基づいて、周波数の和がポンプ周波数と等価になるような2つの波長が作成される。
これら2つの波長は、シグナルおよびアイドラーと呼ばれる。
通常、シグナルは、効率がきわめて低く、アイドラーよりも速く発散する。
有利なことに、シグナルおよびアイドラーは、いずれもシリコンに対して透過的である。
【0029】
焦点は、シグナルおよびアイドラーがシリコンの内部でフィラメンテーションを発生させるように調節される。
シグナルおよびアイドラーは、きわめて明白なフィラメントを作成し、それによって、開裂を簡素化する。
OPAを使用することで、シグナルまたはアイドラーがポンプを使用して増幅される。
OPAの使用には、OPGよりも複雑なセットアップが伴うが、出力レベルは、フィラメンテーションを実行するのに十分である。
【0030】
超高速レーザーパルスが、ガラス、サファイア、水等の光学カー材料に伝搬すると、それらのレーザーパルスは、レーザーパルスの中心の光がパルスの縁部(側方)の光よりも遅く移動する非線形効果を受ける。
これにより、レーザーパルスの自己位相変調が起こり、結果として、パルス周波数が変化する。
【0031】
基本的に、非線形工程は、元のレーザービームの激しいスペクトル拡幅を引き起こし、円滑な連続スペクトルを生成する。
結果として、白色光またはスーパーコンティニウムと呼ばれる、多数の異なる波長からなる光が作成される。
白色光のスペクトルは、UV域から始まり、数μmまで延在する。
1.3μm未満の波長は、シリコンに吸収されるが、白色光のそれよりも長い波長は、シリコンの内部をそのまま通過する。
白色光は、複数の二次的波長を生成する。
【0032】
好ましくは、厚さ50μm〜500μmのサファイア(またはガラス)等のカー材料をシリコンウエハの上に置き、超高速レーザーパルスのバーストをサファイアに伝搬させた場合、UV域(波長200nm)からIR域(最大5μm)まで延在する白色光(スーパーコンティニウム)が生成される。
これをバースト超高速レーザーパルスのフィラメンテーションによりサファイアをスクライブまたは切断しながら行った場合、適切な集束がなされていれば、基になるシリコンウエハでもフィラメンテーションが発生する。
もちろん、サファイア層は、基になるシリコンと同じ幾何学的形状でスクライブする必要があるため、犠牲層となる。
【0033】
所望の距離だけアブレーション加工を実行できるレーザーフルエンスレベルでオリフィスを開始し、アブレーション加工の臨界レベルより低いが光音響加工を材料の所望の深さまで実行できる臨界レベルよりも高いレーザーフルエンスレベルで穴あけを完了する作業を、レーザー源と対象物との間の相対的な移動と組み合わせることで、あらゆる切断を行うことが可能となる。
【0034】
超高速白色光源を使用した光音響圧縮加工方法によるシリコンの切断は、以下のステップにより実行される。
1.シリコン対象物の少なくとも1つの面に、ガラスまたはサファイアの犠牲層を適用する。
2.レーザー源からのレーザーエネルギーパルスを、選択された分散レンズ集束装置に通す。
3.レーザー源に対する分散レンズ集束装置の相対的な距離および/または角度を、レーザーエネルギーパルスを分散焦点構成で集束して主焦点ウエストと少なくとも1つの副焦点ウエストとを作成するように調節する。
4.主焦点ウエストが犠牲層または加工される対象物の表面または内部に位置しないように、主焦点ウエストまたは対象物を調節する。
5.犠牲層および対象物の面のレーザーフルエンスのスポットが、主焦点ウエストの下方または上方に位置するように、焦点を調節する。
6.犠牲層および対象物の面のレーザーフルエンスのスポットを、犠牲層および対象物に形成されるフィラメントの直径よりも常に大きい直径を有するように調節する。
7.副焦点ウエストのフルエンスレベルが、犠牲層および対象物の所望の体積に光音響圧縮加工を確実に伝搬させるための十分な強度および数であることを確認する。
8.適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、レーザー源から選択された分散レンズ集束装置を通じて犠牲層に適用する。
ここで、レーザーパルスが犠牲層での加工の起点に接触するスポットで犠牲層に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、犠牲層およびシリコン対象物を通じてフィラメンテーションおよび光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
9.シリコン対象物とレーザー源とを相対的に移動させて、穴あけされたオリフィスを切断線へと成長させる。
10.所望の加工が完了したときに、レーザーパルスのバーストおよびフィラメンテーションを停止する。
【0035】
上述した工程は、犠牲層でアブレーション加工を実行し、光音響圧縮加工をシリコンのみで実行するように行うことも考えられる。
その場合、ステップ8は、以下のように変更される。
8.適切な波長、適切なバーストパルス繰り返し率、および適切なバーストパルスエネルギーを有するレーザーパルスの少なくとも1つのバーストを、レーザー源から選択された分散レンズ集束装置を通じて犠牲層に適用する。
ここで、レーザーパルスが犠牲層での加工の起点に接触するスポットで犠牲層に適用されるパルスエネルギーまたはフルエンスの総量は、アブレーション加工を所望の深さまで開始するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きく、その後、犠牲層にアブレーションで穴あけされたオリフィスの底部におけるフルエンスエネルギーは、残りの犠牲層およびシリコン対象物全体のフィラメンテーションおよび光音響圧縮加工を開始および伝搬するために必要な臨界エネルギーレベルよりも大きいが、アブレーション加工を開始するために必要なしきい値臨界エネルギーレベルよりも低い。
【0036】
シリコン自体は、強いカー非線形性を持たないが、ピーク出力が高いパルスを使用した場合、Siで白色光を生成することができる。
この場合、超高速白色光パルスのバーストの長い波長のスペクトルを使用して、Siをスクライブすることができる。
この場合、サファイアまたはガラスの犠牲層をSiの上に適用する必要はない。
【0037】
レーザー加工技術
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者に共通して理解されるものと同一の意味を持つものとして意図される。
コンテキスト等により別途指示しない限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を持つものとして意図される。
【0038】
本明細書で使用される「光音響圧縮による穴あけ」という用語は、アブレーションによる穴あけまたは切断の手法で使用されるパルスエネルギーよりも低いパルスエネルギーのレーザービームを対象物に照射することにより、対象物を加工する(通常は、固体の基板を切断または穴あけする)方法を意味する。
光吸収の工程とそれに続く熱弾性膨張により、放射された材料内に広帯域音響波が生成されて、ビーム伝搬軸(オリフィスの軸と共通)を中心に圧縮された材料の通路が材料内に形成される。
この方法には、オリフィスの壁が滑らかになり、噴出物が最小化または除去され、材料における極小亀裂の形成が最小化されるという特徴がある。
【0039】
本明細書で使用される「フィラメント改質領域」(filament modified zone)という用語は、基板内のフィラメント領域であって、光ビーム経路により画定される圧縮領域により特徴付けられる領域を示す。
【0040】
本明細書で使用される「バースト」、「バーストモード」、または「バーストパルス」という用語は、レーザーの繰り返し周期よりも実質的に小さい相対時間間隔を有するレーザーパルス群を示す。
バースト内のパルス間の時間間隔は一定または可変であること、および、バースト内のパルスの増幅は、たとえば、対象材料の内部に最適化または事前に決定されたフィラメント改質領域を作成することを目的に、可変であることを理解されたい。
一部の実施形態では、パルスのバーストは、そのバーストを形成するパルスの強度またはエネルギーを変えて形成される。
【0041】
本明細書で使用される「基板」という用語は、(波長に対して)透明な対象材料を意味し、シリコン、シリコンカーバイド、透明セラミック、ポリマー、透明導電体、バンドギャップの大きいガラス、結晶、結晶水晶、ダイヤモンド(天然または人工)、サファイア、希土類元素製剤、ディスプレイ用金属酸化物、およびコーティング有りまたはコーティング無しの研磨状態または非研磨状態のアモルファス酸化物からなる群より選択され、プレートやウエハを含むがこれらに限定されない任意の幾何学的形状を網羅するように意図されている。
また、基板は、バイオチップ、光センサ、平面光波回路、光ファイバ、シリコン、111−V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、電気工学レンズ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、および垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)からなる群より選択される。
対象物または対象材料は、通常は、基板より選択される。
【0042】
本明細書で使用される「レーザーフィラメンテーション」(laser filamentation)とは、レーザービームを使用して材料内にフィラメントを作成する行為であり、材料を「除去」するのではなく「移動」するだけの十分な強度を有するフィラメントの形成事象を利用した圧縮を通じて材料を改質することができる工程である。
【0043】
本明細書で使用される「主焦点ウエスト」(principal focal waist)という用語は、最終集束後(光が対象物に入射する前の最後の光学要素装置を通過した後)のレーザービームが最も密に集束され、最も焦点強度が大きい部分を示す。
この用語はまた、「主焦点」という用語と同じ意味で使用される。
「副焦点ウエスト」(secondary focal waist)という用語は、分散ビームの主焦点ウエストよりも強度が小さい他のすべての焦点を示す。
この用語は、「副焦点」という用語と同じ意味で使用され得る。
【0044】
本明細書で使用される「犠牲層」(sacrificial layer)という用語は、対象材料に除去可能に適用することができる材料を示す。
【0045】
本明細書で使用される「加工」または「改質」という用語は、対象物または基板の表面または内部のオリフィス穴あけ、切断、スクライビング、またはダイシングの工程を包含する。
【0046】
本明細書で使用される「焦点分散」(focal distribution)という用語は、全体として正レンズであるレンズ装置を通過する入射光線の時空的分散を示す。
一般に、有用な強度のスポットの後続する収束は、集束レンズの中心からの距離に応じる。
【0047】
本明細書で使用される「収差レンズ」(aberrative lens)という用語は、レンズを通過する入射光に対して分散した焦点パターンを作り出すために、x面のレンズ曲線がy面のレンズ曲線と等価ではない不完全なレンズである集束レンズを示す。
正収差レンズは、収束レンズであり、負収差レンズは、発散レンズである。
材料をスクライビングおよびダイシングするために必要な線形のオリフィスアレイを作成したり、アレイ状ではない独立したオリフィスを作成したりするには、集束レンズおよび発散レンズの少なくとも一方、場合によっては、両方が必要である。
【0048】
超短パルスレーザーは、多光子、トンネルイオン化、および電子雪崩の各工程を積極的に駆動することにより表面をきれいに微小加工、改質、および処理するための高い強度を提供する。
当面の問題は、対象の透明材料に、アブレーション穴あけで使用されるエネルギーよりも少なく、かつ光音響圧縮を開始および維持するための臨界エネルギーレベルよりも大きいエネルギーをどのように与えて、材料内の焦点における屈折率を修正し、(先行技術のアブレーション穴あけシステムで直面する)光学破壊に直面しないフィラメントを作成して、対象材料内でのレーザービームの継続的な再集束を長距離にわたって継続し、複数の積層した基板でも先細りを抑えてオリフィス壁を比較的滑らかにしつつ対象材料の上方、下方、または内部から同時に穴あけできるようにするかである。
作製ユニットの方向付け/ステアリングにより形成されたフィラメントは、オリフィスの穴あけ、対象物の表面もしくは内部の切断、スクライビング、またはダイシングに使用できる。
【0049】
図1を参照すると、本開示は、レーザービームによる光音響圧縮により透明材料にオリフィスを加工する装置、システム、および方法を提供する。
既知のレーザー材料加工方法と異なり、本発明の実施形態では、入射レーザービーム2を長手方向のビーム軸に沿って分散させる光学構成を利用する。
これにより、主焦点8と副焦点24とを直線的に並べて(オリフィスの直線軸に一致するが、主焦点8または焦点ウエストから垂直方向にずれている)、入射レーザービーム2が材料を通過するときに連続して再集束できるようにし、それによって材料内のビーム経路に沿った屈折率を修正し、かつ(初歩的または疑似的なフィラメンテーションを使用するものと使用しないものとを含む従来技術のアブレーション穴あけシステムに見られるような)光学破壊に直面しないフィラメントの作成を可能にし、対象材料におけるレーザービーム2の継続的な再集束を長距離にわたって続けられるようにする。
【0050】
引き続き
図1を参照すると、この分散集束方法では、分散レンズ集束装置26により副焦点ウエスト24を作成し、主焦点ウエスト8を材料(本事例の場合は、犠牲層の場合もあり)の表面または内部から外部に移動することにより、主焦点ウエスト8に存在する入射レーザービーム2の不要なエネルギー32を「ダンピング」または低減することができる。
このようにビームフルエンスのダンピングと主焦点ウエスト8および副焦点ウエスト24の線形配列とを組み合わせることで、これまで既知の方法を使用して可能だった距離を大幅に上回る(および1mmを大幅に上回り、最大10mmまでの)距離にわたりフィラメントを形成しつつ、フィラメント領域の全長にわたり実際の改質および圧縮を行うための十分なレーザー強度(フルエンスμJ/cm
2)を維持することができる。
この分散集束方法は、長さ1〜10ミリメートルのフィラメントの形成をサポートし、かつエネルギー密度を材料の光学破壊しきい値よりも低く維持する。
これにより、複数の積層基板でも異種の材料(対象材料10の層の間の空気またはポリマーの間隙など)にわたって同時に穴あけできるだけの十分な強度を保ち、穴あけ距離全体での先細りをごくわずかにし、比較的滑らかな壁のオリフィスを対象材料10の上方、下方、または内部から形成できるようにする。
図2を参照されたい。
【0051】
レーザーパルスの光学密度により、自己集束現象が起こり、フィラメントの内部/近傍/周囲の領域で非アブレーション初期光音響圧縮を行うのに十分な強度のフィラメントが生成される。
これにより、フィラメントに一致する実質的に一定の直径の線形対称空洞が作成され、また、レーザーパルスの連続的な自己集束および集束解除と分散ビームの副焦点ウエスト24により入力されるエネルギーとの組み合わせによって、対象材料10の指定された領域を横断または貫通するオリフィスの形成を方向付ける/案内するフィラメントが形成される。
このオリフィスは、対象物から材料を除去するのではなく、形成されるオリフィス22の周囲の対象材料10を光音響圧縮することによって形成することができる。
形成されるオリフィス22は、穴あけされるオリフィスの長さに沿って、または、連続的なオリフィス形成により作成されるスクライブ線に沿って、レーザー光を「案内」する役割も果たす。
【0052】
対象物10の表面でのフルエンスレベルは、入射レーザービーム2の強度と特定の分散レンズ集束装置26とに依存することがわかっており、特定の対象材料、対象物の厚さ、所望の加工速度、オリフィス全体の深さ、およびオリフィスの直径に応じて調節される。
また、穴あけされるオリフィスの深さは、レーザーエネルギーが吸収される深さに依存する。
したがって、単一のレーザーパルスによって改質される材料の量は、材料の光学特性と、レーザービームの波長およびパルス長とに依存する。
このため、本明細書では、使用するシステムおよび材料で最適な結果を得るために経験的な判断を必要とする幅広い加工パラメータを各基板および対応する用途と共に示す。
よって、表面でのフルエンスレベルが一時的かつ局所的なアブレーション(蒸発)加工を開始するのに十分な高さである場合、対象物10の入口点で最小限のアブレーション噴出土手20が形成されることがある。
ただし、このプラズマ作成およびアブレーションは、本発明を実施するうえで必然ではない。
状況によっては、過渡的かつ一時的なアブレーション穴あけを実行するのに十分な強度のフルエンスレベルを対象物10の表面で利用して幅広の傾斜した入口を作成しつつ、オリフィス22の残りの部分は、同一の直径とするのが望ましい場合がある。
このようなオリフィス22は、一時的なアブレーション手法とそれに続く継続的な光音響圧縮手法とを許容するエネルギーレベルを使用した分散焦点混合型穴あけ方法により作成される。
これは、本発明により、アブレーション加工に必要なフルエンスレベルが傾斜部(または他の形状構成)の所望の深さで消耗するように、材料におけるレーザービームの線形吸収と非線形吸収とをバランスさせたフルエンスレベルを対象物10の表面で選択することにより実現できる。
この分散焦点混合型穴あけ手法では、小さな噴出土手20ができるが、対象物10の表面に犠牲層30を適用することで除去できる。
一般的な犠牲層30は、ガラス、人工酸化物(engineered oxide)、バンドギャップの大きい材料、サファイア、樹脂、またはポリマーであり、通常必要な厚さはわずか1〜5000ミクロンである(ただし、透明材料の加工では10〜30ミクロンの範囲が利用される)。
犠牲層30は、技術分野でよく知られているように、溶融したデブリが表面に付着するのを防ぎ、代わりに除去可能な犠牲材料に付着させることにより、対象物10に噴出土手が形成されるのを防ぐ。
【0053】
本開示は、対象物10の内部で光音響圧縮を引き起こす超高速レーザーパルスのフィラメンテーションによって透明材料にオリフィス22を加工する装置、システム、および方法を、以下の非限定的な例により提供する。
【0054】
例1:
図10を参照すると、複数のデバイス79を含む半導体ウエハ77のデバイス側がUVテープ78で被覆されている。
図10に示すように、半導体ウエハ77の上面77Bの上にサファイア76が重ねられている。
サファイア76は、カー媒質である。
公知のレーザー材料加工方法と異なり、本発明の実施形態では、入射レーザービーム2を半導体ウエハ77の内部ではなく、半導体ウエハ77の上部または下部で集束する光学構成を利用する。
レーザーパルスのピーク出力が5MW(サファイアでの自己集束に十分)を超える高さのため、レーザーパルスは、カー媒質であるサファイア76で直ちに自己集束を開始する。
非線形効果は、レーザービーム2のレーザーパルスが回折限界を超えて集束し、サファイア76からなる犠牲層でフィラメントを作成するのを支援する。
この工程により、白色光が生成されると共に、透明な半導体ウエハ77の直下に円錐形放射75が生成される。
【0055】
白色光のスペクトルは、半導体ウエハ77の上面77Bで部分的に吸収されるが、スペクトルのうち半導体ウエハ77に対して等価的な部分は、半導体ウエハ内のフィラメンテーション形状に追従し、結果として光音響圧縮を生成してオリフィスを形成する。
バーストパルスエンベロープは、きわめて重要な役割を果たすサブパルスを含む。
これらのサブパルスは、バーストの次のサブパルスが到達したときに半導体ウエハが弛緩されないようにし、蓄熱によってフィラメンテーションを固める。
サブパルスを連続して適用することで、オリフィスがより明白に形成される。
単一のレーザーパルスを使用した場合でも、フィラメントは形成されるが、複数のサブパルスの蓄熱により、より好ましい結果が得られる。
【0056】
レーザービームまたは対象物を適切な方向に移動することで、オリフィスが相互に隣接して形成され、サファイア76および半導体ウエハにスクライブ線が作成される。
スクライブ線の幅は、約1μmである。
これは、ストリート幅(デバイス間の距離)を減らしてウエハに搭載するデバイスを増やすうえできわめて有益である。
ストリート幅は、現時点で約100μmであり、30μmに減らすことが望まれている。
バーストフィラメンテーションのスクライブでは、ストリート幅を10μmに設定できる。
【0057】
光音響圧縮加工を実現するには、以下のシステムが必要である。
・バーストパルスエンベロープ内に1〜50のサブパルスを含むプログラミング可能なパルス列を含むレーザービームを生成できるバーストパルスレーザーシステム。
さらに、このレーザーシステムは、利用する対象材料に応じて、5〜200ワットの平均出力を生成できる必要がある。
・パルス持続時間が、少なくとも15psであるが、15ps〜10fsの任意の値に設定可能なバーストパルスレーザー。
・対象材料での入射フルエンスが、カー効果の自己集束および伝搬を引き起こすのに十分である弱収束の多焦点空間ビームプロファイルを生成できる分散レンズ集束装置(正レンズおよび負レンズを含む可能性があるが、全体として正集束効果を有する)。
・対象物にレーザービームを伝えることができる光学伝送システム。
【0058】
商業運転では、光学系に対して材料(またはレーザービーム)を移動する(またはその逆で移動する)機能、またはシステム制御コンピュータにより駆動される協調/複合動作も必要である。
【0059】
このシステムを使用して光音響圧縮によりオリフィスまたはビアを穴あけするには、特定の対象物に対して、分散レンズ集束装置の特性、バーストパルスレーザービームの特性、および主焦点の位置の各条件を操作する必要がある。
【0060】
図1および
図10の分散レンズ集束装置26は、非球面プレート、テレセントリックレンズ、非テレセントリックレンズ、非球面レンズ、環状ファセットレンズ(annularly faceted lenses)、カスタム研磨収差(不完全)レンズ、正レンズと負レンズとの組み合わせまたは一連の補正プレート(位相シフトマスキング)、アキシコンレンズ、入射ビームに対して傾斜した任意の光学要素、ビームの伝搬を操作できる能動補正光学要素、著しく非理想的な非ガウスビーム強度プロファイルを生成する任意の数の光学要素など、技術分野で一般的に採用されている多様な既知の集束要素でよく、必ずしもコマ収差に関連している必要はない。
【0061】
上述した光学要素装置候補の主焦点ウエスト8は、通常は、主焦点ウエスト8において入射レーザービームのフルエンスが90%を超えず、また、20%を下回らない。
ただし、事例によっては、分散レンズ集束装置26の光学効率が99%に近づくことがある。
図3は、上述した工程で使用される非球面の収差レンズ34を示す。
分散レンズ集束装置26の実際の光学効率は、個別の用途ごとに微調節する必要がある。
利用者は、各透明材料、対象物10の物理構成および特性、ならびに特定のレーザーパラメータに応じた一群の経験的テーブルを作成する。
これらのテーブルは、コンピュータ化し、集中型または分散型の制御アーキテクチャを通じてシステムを駆動するために使用できる。
炭化ケイ素、ガリウムリン、サファイア、強化ガラス等はそれぞれ独自の値を持つ。
このテーブルは、材料内にフィラメントを作成し(レーザー出力、繰り返し率、焦点位置、および収差レンズ34の特性のパラメータを上述したように調節する)、亀裂面または光音響圧縮の軸を誘起してオリフィスを作成するのに十分なフルエンスが存在することを確認することにより実験的に決定される。
ホウケイ酸塩でできた厚さ2mmの単一の平面対象物に、周波数(繰り返し率)が1MHz域でパルスごとのエネルギーが10μJのバーストパルス(5パルス)を出力する波長1ミクロンの50ワットレーザーを使用して、直径5ミクロンの貫通オリフィス(
図4)を穴あけするためのサンプル光学効率は、レーザービームの主焦点ウエスト8が所望の起点から最大500μm離れたところに位置する状態で65%である。
【0062】
この光音響圧縮穴あけ工程で満たす必要がある一群の物理パラメータも存在することに注目されたい。
図4および
図5を参照すると、ビームスポット直径38>フィラメント直径40>オリフィス直径42の関係であることがわかる。
さらに、分散レーザービームの主焦点ウエスト8は、フィラメントが作成される対象材料10の内部または表面上に位置することはないが、対象材料10の積層内に、ウエストが層の間の空隙等の空間に位置するかたちで配置させることができる。
【0063】
主焦点ウエスト8の位置は、一般に所望の起点から最大で500μm離れた範囲内である。
これは、エネルギーダンプ距離32と呼ばれる。
図1を参照されたい。
また、各透明材料に応じた経験的テーブルの作成により、対象物10の物理構成および特徴と、レーザーのパラメータとが判断される。
これは、上述した方法により作成されたテーブルより推測される。
【0064】
レーザービームのエネルギー特性は、次のとおりである。
すなわち、繰り返し率1Hz〜2MHz(繰り返し率により、試料の移動速度と隣接フィラメント間の間隔とが画定される)で、レーザービームのパルスエネルギーは、5μJ〜100μJである。
フィラメントの直径および長さは、各バーストエンベロープ内に存在する時間的エネルギー分散を変更することにより調節できる。
図13および
図14は、バーストパルスレーザー信号の2つの異なる時間的エネルギー分散の例を示している。
【0065】
図6乃至
図9を参照すると、本発明の機構が最もよく示されている。
ここでは、バーストピコ秒パルス光を使用している。
これは、対象材料10に堆積するエネルギーの総量が低く、光音響圧縮が材料を亀裂させずに進行できるからである。
また、対象材料10で生成される熱が少ないため、効率的な小単位のエネルギーが対象材料10に堆積し、よって、フィラメントの周囲で対象材料10の完全性を損なうことなく対象材料10を基底状態から最大励起状態に漸進的に高めることができるからである。
【0066】
実際の物理工程は、本明細書で説明するように発生する。
パルスバーストレーザーの入射光ビームの主焦点ウエスト8が、分散レンズ集束装置を通じて、フィラメントが作成される対象材料10の上方または下方(内部となることはない。
ただし、積層間の空気、ポリマー、または液体である間隙に位置する場合を除く)の空間の点に提供される。
これにより、対象物10の表面にスポットが作成されるとともに、白色光が生成される。
対象物10の表面のスポットの直径は、フィラメントの直径および所望の形状(オリフィス、スロット等)の直径を上回る。
したがって、表面のスポットに入射するエネルギーの量は、電気光学効果(カー効果―材料の屈折率の変化は、適用される電場に比例する)を生成するための臨界エネルギーよりも大きいが、アブレーション工程を誘起するために必要な臨界エネルギーよりは低く、より明確には、対象材料10の光学破壊のしきい値を下回る。
自己集束条件とプラズマ集束解除条件との間のバランスを維持できるように、対象材料10で必要な出力を時間的尺度にわたり維持した結果として、光音響圧縮が進行する。
この光音響圧縮は、均一で高出力なフィラメント形成伝搬工程の結果である。
これにより、材料は、アブレーション工程を介した除去よりも有利に転位される。
したがって、きわめて長いフィラメントの形成が、分散レンズ集束装置によって作成される空間拡張された副焦点によって誘発され、光学破壊に到達することなく自己集束効果が維持される。
この分散レンズ集束装置では、多数の周辺光線および近軸光線が、主焦点に対して相対的に異なる空間位置で収束する。
副焦点のエネルギーを基板表面よりも低いレベルであるがフィラメント事象の能動的な底面であるレベルに集束させることにより、これらの副焦点は、無限の空間に延在するが、対象物の厚さに経験的に対応する限られた範囲のみで有用な強度を持つ。
これにより、レーザーエネルギーがプラズマによる吸収とデブリによる散乱とを回避しながら、材料の大半にアクセスすることが可能となる。
【0067】
分散レンズ集束装置は、不均等に分散しているように見える入射レーザービームの焦点を、主焦点ウエスト8と一連の直線的に配置された副焦点ウエスト(焦点)とを含む分散焦点ビーム経路に発展させるために、入射したレーザービームの経路に配置された単一の非理想焦点レンズでよい。
分散レンズ集束装置は、ビームウエストの内部または周囲で、非理想的な非ガウスビームスポット分散を作成する簡素なものでもよい。
通常は、単一の光学要素ではなく、レーザービームの伝搬軸に沿って配置された複数の光学要素である。
【0068】
これらの焦点の配列は、オリフィス42の直線軸と共線的である。
なお、主焦点ウエスト8は、対象物10の表面上または内部に位置することはない。
図6では、主焦点ウエスト8が対象材料10の上方にあり、
図7では、主焦点ウエスト8が対象材料10の下方にある。
これは、集束されたレーザービームの対称的かつ非線形の特性により、オリフィス42が、主焦点ウエスト8の上方または下方から開始されるからである。
したがって、ビームスポット52(約10μm離れている)が対象物10の表面に存在し、弱い副焦点ウエスト50が対象物10内に共線的に存在する。
これは、材料が最後の光学要素として機能して、レーザーの電場により対象物10の屈折率が変化する際にこれらの焦点を作成するからである。
この分散焦点により、フィラメントラインまたはフィラメント領域60を形成するようにレーザーエネルギーを材料に堆積させることができる。
複数の焦点を直線状に配置し、材料を最後のレンズとして機能させることにより、対象材料10は、超高速バーストパルスレーザービームを照射されたときに、多数の連続する局所的な加熱を被る。
これにより、直線状に配列された焦点の経路に沿って、材料の局所的な屈折率の変化が熱的に誘起される。
これにより、長くて先細りのないフィラメント60が対象物10に発展し、それに続いて音響圧縮波が材料の所望の領域を環状に圧縮して、フィラメンテーション経路の周辺に空洞および圧縮された材料のリングが作成される。
次に、レーザービームが再集束し、再集束したレーザービームと副焦点ウエスト50のエネルギーとの組み合わせによって臨界エネルギーレベルが維持され、この一連の事象が自動的に繰り返されて、縦横比(オリフィスの長さ/オリフィスの直径)が1500:1で、先細りがほとんどまたは全くなく、オリフィスの入口サイズと出口サイズとが事実上同じ直径であるオリフィスが穴あけされる。
これは、エネルギーを対象材料10の上面または内部に集束させ、結果としてフィラメンテーション距離が光学破壊に到達してフィラメンテーションが劣化または停止するまでの短いものとなる先行技術と異なる。
【0069】
図9は、空隙を挟んだ3枚の積層構成の平坦な対象物10のうちの下の2枚へのオリフィスの穴あけを示している。
ここで、主焦点ウエスト8は、最後の対象物10の下方に位置している。
穴あけは、複数層の構成の上方、下方、または中間から行うことができるが、同じレンズセットおよび曲率を使用した場合は、穴あけ事象は、常に、主焦点ウエスト8から同じ距離で発生する。
焦点ウエストは、常に、材料の外部にあり、基板の表面に達することはない。
【0070】
レーザー特性、主焦点ウエスト8の位置、ならびに最終的な集束レンズの配置および作成されるオリフィス22の特徴のさまざまなパラメータを次の表に示す。
これらは、対象材料の種類、対象材料の厚さ、ならびに所望のオリフィスのサイズおよび位置によって値が大きく異なるため、範囲で表されていることに注意されたい。
次の表は、多様な透明材料のいずれかに均一のオリフィスを穴あけするために使用される、さまざまなシステム変数の範囲を詳細に示している。
【0071】
<レーザー特性>
波長 5ミクロン以下
パルス幅 10ナノ秒以下
周波数(レーザーパルス繰り返し率) 1Hz〜2MHz
平均出力 200〜1ワット
バーストごとのサブパルス数 1〜50
サブパルス間隔 1ナノ秒〜10マイクロ秒
パルスエネルギー 5マイクロジュール(μJ)〜500マイクロ
ジュール(μJ)
(平均出力/繰り返し率)
ワット/1/秒
<オリフィス特性>
最小オリフィス直径 0.5ミクロン
最大オリフィス直径 50ミクロン
最大オリフィス深さ ホウケイ酸ガラスで10mm
典型的な縦横比 1500:1
最大縦横比 3000:1
収差レンズ比率 レンズのCx:Cy比率が−5〜4,000
オリフィス側壁の円滑性(材料非依存) 5ミクロン未満の平均粗さ(Si、SiC、S
iN、GaAs、GaN、InGaP等)
オリフィス側壁の先細り(材料非依存) 深さ10,000ミクロンで無視できる程度
<ビーム特性>
焦点分散 −5〜4,000
M
2 1.00〜5.00
【0072】
既に述べたように、上記パラメータは、対象物によって異なる。
利用可能な例として、透明基板に3ミクロンの穴を深さ2mmで穴あけするには、装置およびパラメータとして、65ワットの平均出力、80μJのパルスエネルギー、50MHzでバーストごとに8個のサブパルス、および100kHzの繰り返し率を使用する。
これを、2mmの空間(フィラメント活性領域が長さ2mm)にわたって焦点を分散させる収差レンズで、材料に応じて上面の5〜500ミクロン上方で集束させる。
【0073】
多軸回転移動制御を備え、バースト超高速レーザーパルスによるフィラメンテーションを利用して光音響圧縮加工を実現する
図11の装置は、基板を切断するために、さまざまな焦点位置、非垂直の入射角、および可変のレシピ制御位置でビームをワークに与えてフィラメントアレイの曲線領域を作成する目的で利用できる。
当業者は、これらすべての軸がすべての用途に必要なわけではないこと、および一部の用途では簡素なシステム構成のほうが恩恵があることを理解する。
【0074】
さらに、示された装置は、本開示の実施形態の例示的な実装の1つに過ぎないこと、およびそのような実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな基板、用途、および部品提供スキームのために変更、改良、または組み合わせられることが理解される。
【0075】
本発明は、以上の説明または図面に示された構成要素の配置に用途が限定されるわけではないことを理解されたい。
本発明は、他の実施形態に対応し、さまざまな異なる順序のステップで実現および実行できる。
たとえば、本発明は、1.3μm超の適切な波長で動作するレーザービームによるSiの切断に対応するが、波長が材料に対して透過的であれば、同じ工程を使用してGe、SiC、GaAs、GaN、GaP、InGaAlP、および他の類似する材料を加工することができる。
さらに、波長が3μm超であれば、同じ工程を使用して骨を切断することができる。
本明細書に記載されたレーザービームは、白色光レーザーである必要はなく、本明細書に記載された1064nm以外の波長で動作することができる。
【0076】
光音響圧縮は、プラスチップベースの材料の断裂または分離を引き起こさないため、ウエハのダイシングできわめて有利である。
通常、デバイスが基板上で形成され、保護および取扱いのためにUVテープで被覆される。
【0077】
先行技術を参照すると、新しいチップを作成するステップは、以下のとおりである。
1.シリコン等の厚いウエハに、リソグラフィ手法を使用してチップを装着する。
2.ウエハのデバイス側をUVテープで被覆する。
3.ウエハが適切な厚さになるまで、ウエハの裏側を薄くする。
4.研磨(ウエハの薄化)後、UVテープをクリーンルームで除去し、新しいUVテープを裏側に貼る。
5.ウエハをデバイス側からダイシングする。
この時点で、レーザーアブレーション、ステルスダイシング、またはダイヤモンドローラを使用する。
6.パッド領域のすべての配線を加工、切断する必要がある。
デバイスにデブリが飛び散る可能性がある。
【0078】
光音響圧縮スクライビングによる新たな方法を使用することで、上述した手順を、
図10に示すように少ないステップで実行することができる。
1.シリコン等の厚いウエハ77に、リソグラフィ手法を使用してデバイス79を装着する。
2.デバイス側77AをUVテープで被覆する。
3.ウエハ77が適切な厚さになるまで、ウエハの裏側(上面)77Bを薄くする。
4.ウエハ77を裏側77Bからスクライブする。超高速レーザーパルスを使用してスクライブすると同時に、配線で使用するパッド領域をアブレートする。
5.最初のUVテープ78は引き続き使用されており、クリーンルームで加工を行う必要はない。デバイス側77AはUVテープ78で被覆されているので、デバイス側77Aからデブリが生じることはない。
6.UVテープ78はそのままの状態であり、レーザースクライビング工程後も損傷していない。
7.レーザービームに対向して設置された共焦のIR顕微鏡または通常顕微鏡を通じて、ストリートに対するレーザーの調節を行うことができる。
【0079】
図11は、部品のシンギュレーションに適した例示的なレーザーシステムのレイアウトを示している。
レーザー2は、たとえば、パルスごとのエネルギーが約1μJ〜500μJであるサブパルスのバーストを、最大約2MHzの繰り返し率で提供できる。
【0080】
花崗岩ライザ128は、業界で一般に使用されているように、機械的な振動を緩衝する反応物質として設計されている。
これは、X−Yサーボ制御ステージ84の上方の光学系がX−Yサーボ制御ステージ84に対してXまたはYの1つの軸に沿って、X−Yサーボ制御ステージ84と協調して移動できるようにするブリッジ等である。
花崗岩ベース120は、システムの任意またはすべての構成要素を支持できる反応物質を提供する。
一部の実施形態では、操作装置122は、安定性の理由により、システムから振動的に分離されている。
【0081】
Z軸モニタ駆動装置124は、光学系(調節、集束、および必要に応じて走査を行う光学系)をX−Yサーボ制御ステージ84に対してZ軸方向で移動するために設けられている。
この動きは、X−Yサーボ制御ステージ84、オーバーヘッドの花崗岩ブリッジのX動作またはY動作、および加工する試料材料を保持する花崗岩ベース120上のX−Yサーボ制御ステージ84のXY動作と協調させることができる。
【0082】
X−Yサーボ制御ステージ84は、たとえば、傾斜軸ガンマ(「ヨー」)を備えたXYステージおよびシータステージを含む。
X−Yサーボ制御ステージ84の動きは、大きなマザーシートから所望の部品形状を作成するために、たとえば、制御コンピューティングシステムによって調節される。
測定デバイス108は、たとえば、切削後の縁部品質のマッピング、サイズ設定、および/または確認のために、工程後もしくは工程前(または両方)の測定を行う。
【0083】
例2:
シリコンインゴット90からウエハの薄い層を作成するのは容易ではない。
現在、シリコンインゴット90は、鋸を使用してスライスされており、大量の材料が無駄になっている。
ウエハの非常に薄い層を切断するために陽子ビームが使用されているが、陽子ビーム工程は、高価であり、製造環境で実行するのは困難である。
【0084】
最近、対象物の上面より下の内部でビームを密に集束することによる光学破壊を利用して、切断線に沿って欠陥領域を作成できることが提案されている。
しかし、最初に初期スクライブ位置が存在しないため、薄い層を分離するのは容易ではない。
【0085】
図12に示すように、シリコンインゴット90の縁部90Eに沿って深さ2mmのスクライブ線91を作成し、シリコンインゴット90から薄いシート90S(ウエハ)を分離しやすくすることができる。
これも、例1で説明したように、1.3μm超の波長で実行される超高速バーストレーザーを使用するか、OPGを使用するか、シリコンインゴットの壁にカー層を適用し通常の波長を使用して超高速バースト白色光を生成することにより実行することができる。
図12は、スクライブ線91を示している。
図12Aは、
図12の一部拡大図であり、一連のオリフィス91Hからなるスクライブ線91を示している。
これらのオリフィス91Hにより、薄いシート90Sを開裂することができる。
亀裂91Eは、オリフィス91Hの間に存在し、開裂を助長する。
オリフィスは、直径1μmにすることができ、オリフィスの間隔は、中心間で2〜10μmである。
【0086】
例3:
この例は、超高速レーザーパルスのバーストによりシリコンに穴/オリフィスをあけるものである。
例1で説明したように超高速レーザーの単一のバーストを使用した場合、ミクロンまたはミクロン未満のサイズのオリフィスが生成される。
レーザーパルスの多数のバーストを単一の位置に発射することで、パーカッションドリルを実行することができる。
光音響圧縮により、材料が溶解してオリフィスの壁に向かって押しやられ、結果としてはるかに幅広い穴が生成される。
繰り返し率50kHzで実行され、1つのバーストが50MHzで実行される8つのレーザーパルスを含むバーストからの500個のレーザーパルスを使用することで、直径20μmの穴/オリフィスを実現することができる。
犠牲層の使用は、波長シフトに有益であるが、シリコンでオリフィスが先細りするのを防ぐためにも役立つ。
シリコンに作成されたオリフィス/穴では先細りが生じず、犠牲層で先細りが生じる。
犠牲層からのデブリは、犠牲層に堆積し、シリコンの表面はクリーンに保たれる。
穴/オリフィスを約2〜20μm離して作成/パンチングすれば、本方法を使用してきわめて厚いウエハ試料を切断することができる。
【0087】
レーザー特性、主焦点ウエストの位置、ならびに最終的な集束レンズの配置および作成されるオリフィスの特徴のさまざまなパラメータを上記の表に示す。
これらは、対象材料の種類、対象材料の厚さ、ならびに所望のオリフィスのサイズおよび位置によって値が大きく異なるため、範囲で表されていることに注意されたい。
上記の表は、多様な透明材料のいずれかに均一のオリフィスを穴あけするために使用される、さまざまなシステム変数の範囲を詳細に示している。
【0088】
また、本明細書で採用されている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定とみなされるべきものではないことを理解されたい。
よって当業者は、本開示の基になっている概念が、本発明の複数の目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基盤として容易に利用できることを理解する。
したがって、特許請求の範囲については、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、そのような等価の構造物を含んでいるとみなすことが重要である。