特許第6231478号(P6231478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231478印刷ステンシルの製造方法および印刷ステンシル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231478
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】印刷ステンシルの製造方法および印刷ステンシル
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/055 20060101AFI20171106BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20171106BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20171106BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   B41C1/055 511
   B41C1/14 101
   B41N1/24
   H05K3/12 610P
   !H01L31/04 260
【請求項の数】28
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-527656(P2014-527656)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-531338(P2014-531338A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012066855
(87)【国際公開番号】WO2013030273
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】102011081837.5
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514051268
【氏名又は名称】クリスティアン コーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CHRISTIAN KOENEN GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】コーネン, クリスティアン
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−129640(JP,A)
【文献】 特開平10−229268(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0076231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/055
B41C 1/14
B41N 1/24
H05K 3/12
H01L 31/0224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に印刷パターンを取り付けるための印刷ステンシルの製造方法であって、
20μm〜800μmの厚さを有する前記印刷ステンシルの担体層(21)を準備するステップと、
前記担体層(21)の下にある前記印刷ステンシルのパターン層(22)を準備するステップと、
前記印刷パターン(101,102)の少なくとも一部に対応する、前記パターン層(22)における長手方向に延びた印刷像開口部(22a)をくり抜き加工するステップと、
くり抜かれる担体層開口部(21a)の幅に依存してデフォーカスされたレーザ光を用いて、印刷媒質が前記担体層開口部(21a)および前記印刷像開口部(22a)を通って前記基板(1)に塗布可能であるように、前記印刷像開口部(22a)の領域で、前記担体層(21)において複数の前記担体層開口部(21a)を少なくとも一列くり抜き加工するステップ、とを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記担体層開口部(21a)のくり抜き加工の際にレーザ装置(10)が利用され、当該レーザ装置はフォーカス装置(12)を備え、前記レーザ光をレーザ光パルスで出力し、前記フォーカス装置(12)を用いて、前記レーザ光を前記担体層(21)の表面の位置で、くり抜かれる前記担体層開口部(21a)の幅に依存してデフォーカスされることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記レーザ光は、前記担体層(21)の表面の位置でのレーザ光の断面の幅が、1つ以上のレーザ光パルスを用いてくり抜かれる担体層開口部(21a)の幅の50%〜95%を有するようにデフォーカスされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法において、
前記担体層開口部のくり抜き加工は、前記印刷像開口部の長手方向に延びた担体層開口部(21a)の列のくり抜き加工を含み、
前記レーザ光の位置は、担体層開口部(21a)のくり抜き加工の後で、2個の続いたレーザ光パルスの間で、前記担体層開口部(21)に対して相対的にかつ前記印刷像開口部(22a)の長手方向で、次にくり抜かれる担体層開口部の位置(P2;...;PN)まで移動されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記列のそれぞれの担体層開口部(21a)のくり抜き加工の際に、前記レーザ光の位置は、 前記それぞれの担体層開口部(21a)の位置(P1;P2;...PN)に位置決めされ、当該位置で1つ以上のレーザ光パルスを用いて前記それぞれの担体層開口部(21a)がくり抜かれることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
1個以上のレーザ光パルスを用いた前記それぞれの担体層開口部(21a)のくり抜き加工中のレーザ光の位置は、実質的に移動されないことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、
前記列のそれぞれの担体層開口部(21a)のくり抜き加工の際に、前記レーザ光の位置は、前記それぞれの担体層開口部(21a)の第1の位置(P1;P2;...PN)に位置決めされ、前記それぞれの担体層開口部(21a)は、1個のレーザ光パルスを用いてくり抜かれ、この際、前記1個のレーザ光パルスの間のレーザ光の位置が、前記それぞれの担体層開口部(21a)の前記第1の位置から第2の位置まで移動されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記1個のレーザ光パルスの間での前記レーザ光の位置は、それぞれの担体層開口部(21a)の前記第1の位置から前記第2の位置まで前記印刷像開口部(22a)の長手方向で移動されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の駆動方法において、
前記レーザ光の位置の前記担体層(21)に対する相対的な移動における、くり抜かれる前記担体層開口部(21a)の前記第1の位置から第2の位置への漸進速度、および/または前記レーザ光の前記レーザ光パルスのパルス幅は、くり抜かれる前記担体層開口部(21a)の長さに依存して設定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項乃至9のいずれか1項に記載の方法において、
前記担体層の表面の位置での前記デフォーカスされたレーザ光の断面の形状および/または大きさを、前記レーザ装置(10)のフォーカス装置(12)を用いて設定するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記担体層(21)の表面の位置での前記印刷像開口部(22a)の長手方向に対し横方向の前記デフォーカスされたレーザ光の断面の幅は、前記印刷像開口部(22a)の幅に依存して設定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、
前記レーザ光は、前記担体層(21)の表面の位置で、実質的に円形の断面を有するようにデフォーカスされることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10または11に記載の方法において、
前記レーザ光は、前記担体層(21)の表面の位置で、実質的に楕円形の断面を有するようにデフォーカスされることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記レーザ光の断面の前記楕円形の長軸は、前記印刷像開口部(22a)の長手方向に対し横方向、とりわけ直角な方向に向いていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法において、
パルス化されたレーザ光(レーザ光パルス)の周波数あるいは周期、当該レーザ光パルスのパルス幅、当該パルス化されたレーザ光のデューティ比、および当該パルス化されたレーザ光のオン/オフ比の1つ以上のパラメータを設定するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法において、
前記担体層(21)に対する相対的な前記レーザ光の位置が、2個の続いたレーザ光パルスの間で、担体層開口部の列の2つの隣接した担体層開口部(21a)の間に、前記担体層(21)におけるブリッジ(21b)が形成されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記担体層(21)に対する相対的な前記レーザ光の位置の移動の際の漸進速度は、くり抜かれた前記担体層開口部(21a)の位置から次にくり抜かれる担体層開口部(21a)まで、所定のブリッジ幅に依存して設定されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記担体層(21)に対する相対的な前記レーザ光の位置の移動の際の漸進速度は、くり抜かれた前記担体層開口部(21a)の位置からさらに次のくり抜かれる担体層開口部(21a)まで、前記印刷像開口部(22a)の長手方向における前記担体層開口部(21a)の幅に依存して設定されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
前記レーザ装置の前記フォーカス装置の前記担体層(21)に対して相対的な、くり抜かれた担体層開口部(21a)の位置からこれに続いてくり抜かれる担体層開口部(21a)の位置までの前記漸進速度は、
(BL+SB)/(T−τ)より小さいかまたは実質的に等しく設定され、ここでBLは前記印刷像開口部(22a)の長手方向における担体層開口部(21a)の幅であり、SBは所定のブリッジ幅であり、Tは前記パルス化されたレーザ光の周期であり、そしてτは前記レーザ光パルスのパルス幅であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項に記載の方法において、
前記担体層(21)に対して相対的なレーザ光の位置の移動の際に、前記レーザ装置(10)のフォーカス装置(12)および/または前記担体層(21)が移動されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項4に記載の方法において、
前記担体層開口部(21a)のくり抜き加工は、少なくともさらにもう1つの、前記印刷像開口部の長手方向で担体層開口部(21a)の第1の列に平行に延びた担体層開口部(21a)の第2の列のくり抜き加工を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記第1の列のそれぞれの担体層開口部には、少なくとも1つのさらなる第2の列の担体層開口部が重ねられ、製造される印刷ステンシルにおけるそれぞれの担体層開口部(21a)は、少なくとも2つの列の2つ以上の担体層開口部から形成され、前記印刷像開口部(22a)の長手方向で隣接した担体層開口部(21a)の間にブリッジ(21b)が形成されることを特徴とする方法。
【請求項23】
基板の上に印刷パターンを取り付けるための印刷ステンシルであって、
20μm〜800μmの厚さを有する前記印刷ステンシルの担体層(21)と、
少なくとも印刷パターン(101,102)の一部に対応した、引き延ばされた印刷像開口部(22a)を備えた、前記担体層(21)に下にある、前記印刷ステンシルのパターン層(22)と、を備え、
前記担体層(21)は、前記印刷像開口部(22)の領域で、前記印刷像開口部(22a)の長手方向に延びた、担体層開口部(21a)の1つ以上の列を備え、
それぞれのブリッジ(21b)は、隣接した担体層開口部(21a)の間に形成され、当該ブリッジは、部分的に前記パターン層側で融解したことにより、前記担体層(21)の厚さに比べて高さが低くなっている、
ことを特徴とする印刷ステンシル。
【請求項24】
請求項23に記載の印刷ステンシルにおいて、
1つの列の前記担体層開口部(21a)は、実質的に円形に形成されていることを特徴とする印刷ステンシル。
【請求項25】
請求項23に記載の印刷ステンシルにおいて、
1つの列の前記担体層開口部(21a)は、実質的に楕円形に形成されていることを特徴とする印刷ステンシル。
【請求項26】
請求項25に記載の印刷ステンシルにおいて、
前記1つの列の前記担体層開口部(21a)の楕円形の長軸は、前記印刷像開口部(22a)の長手方向に対し横方向、すなわち直角な方向に向いていることを特徴とする印刷ステンシル。
【請求項27】
請求項23に記載の印刷ステンシルにおいて、
1つの列の前記担体層開口部(21a)は、実質的に長穴形状に形成されていることを特徴とする印刷ステンシル。
【請求項28】
請求項23に記載の印刷ステンシルにおいて、
前記担体層(21)は少なくとも2つの列の担体層開口部(21a)を有し、
第1の列のそれぞれの担体層開口部(21a)には、前記少なくとも2つの列の少なくとも1つの、さらなる第2の列の担体層開口部(21a)が重ねられ、前記印刷ステンシルにおけるそれぞれの担体層開口部(21a)は、少なくとも2つの列の2つ以上の担体層開口部から形成され、前記印刷像開口部(22a)の長手方向で隣接した担体層開口部(21a)のそれぞれの間にブリッジ(21b)が形成されることを特徴とする印刷ステンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクニカル印刷(technischen Druck)用の印刷ステンシル(Druckschablone)の製造方法に関する。とりわけ太陽電池セルの印刷用の印刷ステンシルの製造方法に関し、基板、とりわけ太陽電池セルの基板への印刷パターン(Druckmuster)の取付けに関し、たとえば太陽電池セルの前面あるいは背面の接続部の印刷に関する。
【0002】
本発明の方法は、印刷ステンシルの担体層を準備するステップと、この担体層の下にある印刷ステンシルのパターン層(Strukturschicht)を準備するステップと、長く引き延ばされた、印刷パターンの少なくとも一部に対応した印刷像開口部をこのパターン層においてくり抜き加工する(herausarbeiten)ステップと、この担体層における担体層開口部を印刷像開口部の領域でレーザー切断するステップとを含み、印刷媒質がこの担体層開口部と印刷像開口部とを通って基板に塗布できるようにする。
【0003】
さらに本発明はテクニカル印刷用の印刷ステンシルに関し、とりわけ、太陽電池セルの印刷用の、基板への印刷パターンの取り付けのための印刷ステンシルに関し、この印刷ステンシルは、印刷ステンシルの担体層と、この担体層の下にある印刷ステンシルのパターン層とを含み、このパターン層は長く引き延ばされた、印刷パターンの少なくとも一部に対応する印刷像開口部をパターン層に備え、この担体層は印刷像開口部の領域に担体層開口部を含む。
【0004】
このような印刷用ステンシルは、たとえば太陽電池セルのように作製されてよく、すなわちたとえば接続部、とりわけ太陽電池セルの前面接続部を取り付けるために作製されてよい。太陽電池セル印刷用に作製された印刷ステンシルは、構造そうの長く引き延ばされた印刷像開口部、たとえば太陽電池の前面接続部のコンタクトフィンガーの印刷のために作製されてよい。本発明は、しかしながら太陽電池セルの印刷用の印刷ステンシルに限定されず、たとえばさらに特殊な、あるいは少なくとも1つの担体層と、少なくとも1つのパターン層とを有する、基板表面にメタライジング部を取り付けるためのハイブリッドステンシルに関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術では、太陽電池セルのテクニカル印刷が知られており、印刷スクリーン(Drucksieb)を用いて、太陽電池セルの基板に接続部を取り付けている。従来とりわけメタライジング部、接続部あるいは接続部の導電性タグを印刷スクリーンで印刷することが知られており、これでは大抵は銀を含む印刷ペーストが、ドクターブレードを用いて、印刷スクリーンの印刷像開口部を通って太陽電池の基板の上に取り付けられ、この際この印刷スクリーンの印刷像開口部は、実質的に印刷像あるいは少なくとも、印刷される太陽電池セルの接続部の印刷像の一部に対応している。
【0006】
このような印刷スクリーンは、フレームに張られた印刷スクリーン布を備え、これは、たとえば薄い写真乳剤層のような、パターン層に埋め込まれており(たとえば特許文献1の印刷スクリーン参照)、パターン層を有するかあるいはパターン層の担体層として機能する。このような写真乳剤層は、印刷する接続部の印刷像に対応した印刷像開口部を備え、ここでこの写真乳剤層を安定化するメッシュスクリーン(Siebgewebe)は、パターン層の印刷像開口部の領域にも延在している。このような印刷スクリーンの製造では、一般的にはワイヤメッシュスクリーン(Drahtsiebgewebe)が枠に張られ、さらに感光性材料(たとえば乳剤層またはフィルム)でコーティングされる。続いて印刷像のパターニングが、たとえば感光性材料の露光によって行われる。
【0007】
しかしながら、このような印刷スクリーンを使用する場合、太陽電池の接続部を太陽電池基板に取り付ける際には、とりわけ太陽電池の前面接続部のいわゆるコンタクトフィンガーの印刷に関して欠点がある。このコンタクトフィンガーは、できる限り狭い幅(たとえば約20μm〜100μmの範囲)で、基板の上にできる限り均等な高さで印刷されて、できる限り均等な導体路断面積(抵抗)が可能となるようにして、この太陽電池のエネルギー効率を高める必要がある。同時に、太陽電池のエネルギー効率に関して、このコンタクトフィンガーを通る、できる限り小さな抵抗を有する電流導体路が可能となるようにしなければならない。すなわち、コンタクトフィンガーの電気抵抗はこのコンタクトフィンガーの断面積に依存するので、これらのコンタクトフィンガーは、できる限り大きなアスペクト比で形成されなければならない。このコンタクトフィンガーで生じ得るネッキング(Einschnurungen)は、このフィンガーの電気伝導度を低減させ、これにより太陽電池の総合効率が低減される。コンタクトフィンガーのアスペクト比は、したがって、特にコンタクトフィンガーの全長に渡ってできる限り均等に形成されなければならない。
【0008】
印刷スクリーンを用いた場合、とりわけこの太陽電池の接続部を太陽電池基板に取り付ける際には、以下に述べるような欠点がある。メッシュスクリーンおよび特に写真乳剤層の印刷像開口部の領域におけるメッシュスクリーンの交点は、印刷の際に、太陽電池基板の上でのペースト塗布の均一性に悪影響を与える。これから、コンタクトフィンガーの好ましくないネッキングが形成され、好ましくない印刷像の波状エッジが形成される。特に印刷エッジ(印刷像開口部の縁部)にあるメッシュスクリーンの交点によってこれらが形成される。さらに、達成し得る最大のペースト強度、およびこれによって達成し得る、印刷されるコンタクトフィンガーの最大高(これはアスペクト比に直接比例している)は、印刷像開口部の領域におけるメッシュスクリーンパターンによって大幅に制限される。
【0009】
さらに、印刷の際には、押圧およびドクターブレードの動きによって、このメッシュスクリーンの弾性特性のために、メッシュが延びるので、印刷像の歪みが形成される。異なる印刷スクリーンを用いて基板に複数回印刷する場合、通常は、異なるスクリーンを用いた複数回のステップで印刷プロセスが実行され、それぞれのステップで接続部の一部が印刷される。従来の印刷スクリーンでは、全体像の移行領域で、異なる印刷スクリーンの印刷像が互いに接する部分は、上述の個々の部分像の歪みのために、全体像における不均一性が発生する。
【0010】
さらに、印刷スクリーンを用いた場合、スクリーンの印刷パターンの目的とする大きな開口面積のために、極めて細いメッシュが印刷スクリーンの安定化に必要であるが、これは非常に損傷しやすく、またこのため使用可能な耐用時間は僅かである。
【0011】
上述した、太陽電池セル基板、とりわけ太陽電池セルの基板の上に接続部を取り付けるための太陽電池セル基板の印刷の際の従来の公知の印刷スクリーンの欠点に鑑み、特許文献2には、基板、とりわけ太陽電池の基板の上に接続部を取り付けるための解決方法が提案されている。
【0012】
この特許文献2により提案されている印刷ステンシルは、担体層とこの担体層の下にある印刷ステンシルのパターン層とを備え、このパターン層は、長く引き延ばされた、印刷パターンの少なくとも一部に対応した、パターン層の印刷像開口部を備えている。このパターン層における長く引き延ばされた印刷像開口部は、ここではたとえば、太陽電池セルの前面側接続部のコンタクトフィンガーの印刷パターンに対応する。担体層は、印刷像開口部の領域において、印刷開口部の長手方向で、長く引き延ばされた、実質的に矩形のあるいは隅部が適宜丸められた担体層開口部を備え、これらの担体層開口部はそれぞれ、安定化用のブリッジ(Steg)を介して互いに分離されている。さらに、この印刷ステンシルは、たとえば接続部材料のような印刷媒質を、少なくとも1つの開口部を通って基板に塗布するのに適しており、ここで、この印刷ステンシルが、印刷像開口部および担体層開口部から形成された開口部を備え、これらを通って印刷媒質、たとえば接続部材料を基板に塗布することができるように、平面図で見て、担体層開口部がこの印刷像開口部を有する印刷ステンシルを覆っている。この印刷媒質は、担体層の下側で、均等な3次元形状で延在している。
【0013】
従来技術の1つの方法によれば、担体層における担体層開口部は、レーザ切断を用いてくり抜かれる。ここで、従来は、レーザ装置のレーザ光をフォーカス装置を用いてくり抜かれる担体層開口部の縁部(たとえば隅部)に位置決めしてフォーカスすることが知られている。ここで、このレーザ光は、担体層の上に直接フォーカスされ(すなわち実際には直接担体層の表面の焦点にフォーカスされ)、レーザ切断方法に応じて適宜担体層表面の上側あるいは下側にフォーカスされる。レーザ装置のシャッタ装置を開放後、担体層開口部の切り抜きのために、この切り抜かれる担体層開口部の縁部に沿ってレーザ光がガイドされるようにフォーカス装置が制御され、担体層からこの縁部に沿って担体層開口部が切り出される(たとえば図3A参照)。
【0014】
ここで、このレーザ光は、担体層開口部のくり抜きの際に、非常に高い精度でガイドされ、さらにフォーカスされたレーザ光はそれぞれの担体層開口部の全周を1回ガイドされなければならない。このため、このような製造方法は、非常に時間がかかる。太陽電池セルの前面接続部のコンタクトフィンガー用の印刷像開口部の周りのパターン層の印刷像開口部の場合には、多数のコンタクトフィンガーのそれぞれのために、多数の担体層開口部が個別に切り抜かれる必要があり、したがって個々の印刷ステンシルの製造では、担体層開口部のくり抜きに非常に長い時間がかかり、このために非常にコストのかかるレーザ切断装置が用いられなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ国特許公開公報102007052679A1号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許公開公報102011003287A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
担体層およびパターン層を備えた上述の印刷ステンシルの時間およびコストがかかる製造方法に鑑み、本発明の課題は、担体層およびパターン層を備えた印刷ステンシルの製造を容易にかつ安価および時間効率良く行うことができるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この本発明の課題を解決するために、印刷ステンシルの製造方法およびこのような方法で製造された印刷ステンシルが、独立請求項に記載されている。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関する。
【0018】
本発明は、従来のレーザ切断方法で知られているような、くり抜かれる担体層開口部の縁部に沿って広い範囲で、フォーカスされたレーザ光を用いて担体層の担体層開口部が担体層から切り抜かれるのではなく、デフォーカスされたレーザ光を用いてくり抜き加工する、すなわち打ち抜き照射("herausschiesen")するというアイデアに基づいたものであり、ここでレーザ光は(通常行われるようには)フォーカスされず、担体層開口部の幅に依存してデフォーカスされる。
【0019】
とりわけ本発明のアイデアは、担体層の表面のレーザ入射位置でのデフォーカスされたレーザ光の断面が、担体層開口部の幅に依存して選択された幅を有し、実質的に、従来の方法の場合のようにフォーカス点に集光されていない。
【0020】
この本発明による基本的なアイデアに基づいて、1個のレーザ光パルスまたは適宜複数のレーザ光パルスを担体層の位置に用いて、対応した幅の担体層開口部のくり抜き加工あるいは「打ち抜き照射」を行うことができ、これらのレーザ光パルスの断面は実質的にデフォーカスされたレーザ光の断面に対応している。このようにして印刷ステンシルの製造を容易かつ安価に時間効率良く行うことができる。これは担体層開口部が、くり抜かれるこの担体層開口部の周囲に沿ってフォーカスされたレーザ光によって切り抜かれなければならないという、時間のかかる方法によるのではなく、既に1つ以上のレーザ光パルスを用いて20μm〜100μmの範囲の幅で、担体層開口部がくり抜かれあるいは「打ち抜き照射」することができるためである。ここで、従来の方法に対して、大幅な時間節約が行われ、この時間節約は1桁の%の領域でなく10〜80%の領域で行われて、印刷ステンシルの製造を加速できることを意味している。
【0021】
好ましくは、担体層の表面のレーザ入射側の位置でのデフォーカスされたレーザ光の断面の幅は、くり抜かれる担体層開口部の所望の幅よりわずかに小さい(担体層の厚さおよび材料により約50%〜90%)ことが好適である。これはレーザ光によって持ち込まれる熱エネルギーによって、くり抜かれた担体層開口部が、使用されるデフォーカスされたレーザ光の断面より大きくなるためである。
【0022】
本発明の第1の態様によれば、基板の上に印刷パターンを取り付けるためのテクニカル印刷用の印刷ステンシルの製造方法が提案され、以下のステップ、印刷ステンシルの担体層を準備するステップと、この印刷ステンシルの担体層の下にある、とりわけ5μmより大きな層厚を有するパターン層を準備するステップと、印刷層において長く引き延ばされた、あるいは長手方向に延びた印刷パターンの少なくとも一部に対応した印刷開口部をレーザ光パルス加工するステップと、この担体層における担体層開口部を印刷像開口部の領域でくり抜き加工するステップとを備え、印刷媒質がこれらの担体層開口部および印刷像開口部を通って基板に塗布される。
【0023】
本発明による方法は、20μm〜800μmの厚さを有する印刷ステンシルの担体層における、担体層開口部のくり抜き加工の際に、くり抜かれる担体層開口部の幅に依存してデフォーカスされたレーザ光が用いられ、すなわち実質的に担体層の表面の位置にないレーザ光、すなわちこの担体層のわずかに上側あるいは下側にあるフォーカス点に、従来のように集光されたレーザ光を用いるのではなく、担体層の表面の位置で実質的にデフォーカスされており、とりわけ担体層の表面の位置で10μmより大きい幅の断面を有し、好ましくは20μmの幅の断面を有するレーザ光が用いられることを特徴とする。すでの上記に示したように、こうして印刷ステンシルの製造を容易にかつ安価および時間効率良く行うことができる。これは担体層開口部が、この担体開口部の周囲に沿ってフォーカスされたレーザ光によって切り出されなければならないという、時間のかかる方法によるのではなく、既に1個のあるいは複数個のレーザ光パルスを用いて幅広の担体層開口部がくり抜き加工あるいは「打ち抜き照射」されることができることによる。
【0024】
好ましくは、担体層開口部のくり抜き加工の際にレーザ装置が利用される。このレーザ装置はフォーカス装置を含み、レーザ光をレーザ光パルスで出力し、このフォーカス装置を用いて、このレーザ光を担体層の表面の位置で、くり抜かれる担体層開口部の幅に依存してデフォーカスされる。ここで、パルス化したレーザ光を出力するパルスレーザ装置が使用されてもよく、また連続したレーザ光を出力するレーザ源を含み、周期的に開口あるいは閉鎖されるシャッタ装置で制御され、とりわけ高周波数で開口あるいは閉鎖するシャッタ装置で制御されるレーザ装置が使用されてもよい。
【0025】
好ましくは、このレーザ装置は、担体層の表面の位置でのレーザ光の断面の幅が、1つ以上のレーザ光パルスを用いてくり抜かれる担体層開口部の幅の50%〜95%を有する。すなわち上述したように、好ましくは、担体層の表面のレーザ入射側の位置でのデフォーカスされたレーザ光の断面の幅は、くり抜かれる担体層開口部の所望の幅よりわずかに小さい(担体層の厚さおよび材料により約50%〜90%)ことが好適である。これはレーザ光によって持ち込まれる熱エネルギーによって、くり抜かれた担体層開口部が、使用されるデフォーカスされたレーザ光の断面より大きくなるためである。
【0026】
好ましくは、この担体層開口部のくり抜き加工は、印刷像開口部の長手方向に延在する担体層開口部の列のくり抜き加工を含み、ここで1つの担体層開口部のくり抜き加工の後で、担体層に対し2個の続いたレーザ光パルスの間で相対的に、かつ後続のくり抜かれる担体層開口部の位置に対して印刷像開口部の長手方向で、レーザ光の位置が移動される。これは、レーザの位置が1つの担体層開口部から次のくり抜かれる担体層開口部へ、2個のレーザ光パルスの間で担体層に対し相対的に移動されることによって、担体層開口部の間の安定化用のブリッジを時間効率良くかつ容易に形成することを可能にする。
【0027】
とりわけ適合した好ましい1つの実施形態によれば、この列のそれぞれの担体層開口部のくり抜き加工の際に、レーザ光の位置がそれぞれの担体層開口部に位置され、好ましくはこれらのそれぞれの担体層開口部は、これらの位置での1個以上のレーザ光パルスを用いてくり抜かれ、とりわけ好ましくは1〜10個のレーザ光パルスを用いてくり抜かれる。好ましくはこれらの特に適合した、好ましい実施形態例によれば、1個以上のレーザ光パルスを用いたそれぞれの担体層開口部のくり抜き加工中のレーザ光の位置は、実質的に移動されない。
【0028】
以上に述べた特に適合した、好ましい実施形態例において、本発明のアイデアは、個々の担体層開口部が、従来知られたレーザ切断方法のように、レーザ光がくり抜かれる担体層開口部の縁部に沿ってガイドされて、それぞれフォーカスされたレーザ光を用いて担体層から切り抜かれるのでなく、本発明によれば、むしろ個々の担体層開口部がそれぞれ、パターン層の印刷像開口部の領域でくり抜かれる担体層の上でのレーザ光の1回の位置決めによって、好ましくは1つ以上のレーザ光パルスを用いて実質的にその同じ位置でくり抜かれる。ここで担体層開口部の間隔は、レーザのパルス周波数および/または漸進によって制御される。
【0029】
担体層開口部のくり抜き加工の後に、上記で説明したとりわけ好適で好ましい実施形態においては、担体層の上のレーザ光の位置が、2つのレーザ光パルスの間で、次のくり抜かれる担体層開口部の位置にガイドされ、そこで次のくり抜かれる担体層開口部が、後続の1個以上のレーザ光パルスを用いてくり抜かれる。、印刷像開口部の領域において2つ以上の担体層開口部からなる列のすべての担体層開口部がくり抜かれるまで、これらのステップは繰り返される。この結果、これらの実施形態例の方法により、極めて容易かつ有利に最短の時間で、1つの列の担体層開口部全部が印刷像開口部の長手方向に沿ってくり抜かれる。このため、担体層開口部のくり抜き加工の前後のパターン層が準備されているかどうかは重要ではなく、とりわけ担体層開口部のくり抜き加工の前後のパターン層が担体層もしくは中間層に取り付けられているかは重要ではない。
【0030】
このように、パターン層開口部の引き延ばされた印刷像開口部の全領域において、従来知られたレーザ切断方法に比べ、非常に有利に顕著に時間効率良く、そしてコスト削減可能に、担体層開口部をくり抜くことができる。個々の担体層開口部のくり抜き加工では、用いられるレーザのタイプによって、約0.9〜3kHzでくり抜き加工され、非常に厚い担体層における、ある稀な場合にのみ、2個以上のレーザ光パルスが必要とされる。そして担体層を、レーザ光位置に対し相対的に常に2個のレーザ光パルスの間で移動させることにより、このように短い時間で印刷像開口部の領域での担体層開口部の列をくり抜くことができる。
【0031】
個々の担体層開口部は、移動の際に、上記に説明したとりわけ好適な実施形態によれば、主に担体層の位置におけるレーザ光の形状(とりわけレーザ光入射側の担体層の表面の位置でのレーザ光の断面形状)によって所定の形状とされる。これはそれぞれの担体層開口部は、担体層の1つの位置での個々のレーザ光パルスによってくり抜かれ、あるいは「打ち抜き照射」されるのであって、フォーカスしたレーザ光を担体層開口部の周囲に沿ってガイドすることによって切り抜かれるのではないからである。
【0032】
このようにすると、実質的に円形にデフォーカスされたレーザ光により、この担体層がフォーカス装置あるいはレーザ光に対して動かされない場合は、個々の担体層開口部は、たとえば実質的に円形にくり抜かれる。レーザ光パルスを当てる際に、この担体層が動くと、この動きに対応して、引き延ばされ、端部が丸められた、長穴の形状を有する担体層開口部が形成される。すなわち長穴形状の担体層開口部が形成される。この担体層開口部の幅は、実質的に担体層の表面上のレーザ光のデフォーカスされた断面の大きさにより決定され、この際もたらされる熱エネルギーのために、一般的にはより幅広の担体層開口部となり得る。こうして、たとえば20μm幅のレーザ光断面は、横方向への熱エネルギーの照射により、レーザ光の位置を変えることなしに、25μmに達する幅の担体層開口部をくり抜くことができる。
【0033】
レーザ光のエネルギー密度は、絶対値で見て、デフォーカスされたレーザ光の担体層上の断面が大きくなると減少するので、1個あるいは少数のレーザ光パルスで実現可能な担体層開口部の大きさには上限があるが、実際の使用範囲では、300μmまでの担体層開口部直径は実現することができ、とりわけ一般的な20μm〜800μmの担体層厚では、0.9〜3kHzの周波数で1個のレーザ光パルスで、20μmから約150μmまでの範囲の直径を有する担体層開口部をくり抜くことができる。これは、たとえば太陽電池の前面のコンタクトフィンガーを20〜100μmの範囲で印刷するための印刷像開口部の通常の幅に対応し、このような印刷像開口部に対して、印刷像開口部の領域において、既に個々のレーザ光パルスで、それぞれくり抜かれた担体層開口部の列の個々の担体層開口部を形成することができる。
【0034】
ステンシルの安定性を改善するために、ここでそれぞれ2つの担体層開口部の間に担体層におけるブリッジが残っていてよい。このブリッジの幅は、仕様に応じて、2個のレーザ光パルス間の時間により(すなわちたとえばパルス化されたレーザの任意のデューティ比(Tastverhaltnis)での周期Tとパルス幅τとの差によって、それぞれ50%のデューティ比では周期Tの半分によって、あるいは周波数の2倍の逆数により)、および2個のレーザ光パルス間でのレーザ光の位置に対する担体層の相対的な漸進速度により影響を受ける。
【0035】
ここで、上記に説明したとりわけ好適な実施形態においては、従来のレーザ切断方法と比較して、1つの引き延ばされた印刷像開口部に対しより多くのブリッジが形成される。これは、担体層開口部のくり抜き加工の際にこのレーザ光が移動しなければ、担体層開口部の長さは、ほぼ担体層開口部(たとえば実質的に円形あるいは楕円形に形成された担体層開口部)の幅に対応したプロセスによって決まるからであり、従来のレーザー切断方法における大きく引き延ばされたあるいは矩形に形成された担体層開口部とは対照的である。もしこれらのブリッジの幅が10μm〜20μmにまで顕著に削減されても、従来と同等の安定性あるいはむしろ従来より良い安定性がこのようにして達成される。従来のレーザ切断方法では、安定性の理由から、少なくとも30μm以上のブリッジ幅が必要であった。このブリッジの幅が実質的に担体層の厚さ程度であれば、良好な安定性を保証するのには充分である。
【0036】
さらに、担体層開口部の従来より小さな長手方向の長さおよび印刷像開口部の領域における従来より多くのブリッジによって、従来レーザ切断方法を用いて担体層開口部が形成されていた印刷スクリーンおよび印刷ステンシルに比べてドクターブレードの性能を顕著に改善することができる。これは印刷工程においては、近接して互いに並設されたブリッジに均等にドクターブレードが戴置され、担体層開口部のエッジが引っ掛からないからである。このようにして、多数回の使用におけるステンシルやこれに用いられるドクターブレードの摩耗を大幅に低減することができる。
【0037】
このように印刷像開口部の領域におけるブリッジの数を多くすることが、狭い網目を有する印刷スクリーンを用い場合に知られているような、一目で分かる印刷像の劣化をもたらさないということは驚くべきことである。むしろ、これは極めて有利なしかも極めて優れた印刷像を生成することができる。これは担体層におけるこれらのブリッジが、レーザ入射側すなわちパターン層側でのプロセスによって決まり、とりわけ10μm〜20μmのブリッジ幅で融解され、これにより高さの伸張が低減されるからである。
【0038】
こうして、投入された印刷ペーストは、融解したブリッジの下で極めて良好に合流し、印刷画像開口部の全長に渡りクリーンな印刷像を生成する。とりわけ驚くべきことに、多数のブリッジにも拘わらず、印刷像開口部の全領域で、印刷媒質の均等な高さを実現することができる。このことは太陽電池セルの前面のコンタクトフィンガーの印刷に有利であるが、これはコンタクトフィンガーの全領域に渡って十分なフィンガー高さが達成できるからであり、これにより極めて均等なアスペクト比のためにコンタクトフィンガーの電気抵抗が小さく維持することができる。これにより、従来のレーザ切断方法を用いて担体層開口部が形成されている印刷スクリーンおよび印刷ステンシルによる印刷像に比べ、太陽電池の前面のコンタクトフィンガーの印刷の際の印刷像は、顕著に改善される。
【0039】
しかしながら、パターン層の印刷像開口部の領域におけるブリッジの数を削減することを望む場合、担体層開口部の数を削減すると同時に担体層開口部の長手方向の長さが拡大されなければならないが、本発明による方法を用いて、最高度の時間節約を提供することができる。以下では、このための代替であるが同様に好適な実施形態例を説明する。
【0040】
この代替におけるとりわけ好適な実施形態は、上述の実施形態例と異なり、担体層に対する相対的なレーザ光の位置が、レーザ光のレーザ光パルス間でなく、レーザ光パルス中に移動されることである。
【0041】
ここで好ましくは、列になったそれぞれの担体層開口部のくり抜き加工において、それぞれのくり抜かれる担体層開口部の第1の位置にレーザ光の位置が位置決めされ、それぞれの担体層開口部は、レーザ光パルスを用いてくり抜かれ、ここで1個のレーザ光パルスの中でレーザ光の位置がそれぞれの担体層開口部の第1の位置から第2の位置へ移動させられる。好ましくは、1個のレーザ光パルスの中でのレーザ光の位置は、それぞれの担体層開口部の第1の位置から第2の位置へ印刷像開口部の長手方向で移動される。このようにして、担体層の表面におけるデフォーカスされたレーザ光の断面に対応した断面形状を有する担体層開口部が生成されず、その端部の形状がデフォーカスされたレーザ光の断面によって定められる長穴形状の担体層開口部が生成される(たとえばデフォーカスされたレーザ光の断面が円形の場合には半円形状の端部となり、またはデフォーカスされたレーザ光の断面が楕円形の場合には半楕円形状の端部となる。)。
【0042】
好ましくは、担体層に対するレーザ光の相対的な位置の移動における、くり抜かれる担体層開口部の第1の位置から第2の位置への漸進速度、および/またはレーザ光のレーザ光パルス幅は、くり抜かれる担体層開口部の長さに依存して選択される。
【0043】
具体的な実施形態とは関係なく、本発明の第1の態様によるこの方法は、好ましくはさらに担体層の表面の位置でのデフォーカスされたレーザ光の断面の形状/およびまたは大きさをこのレーザ装置のフォーカス装置を用いて設定する。好ましくは、ここで担体層の表面の位置での印刷像開口部の長手方向に対し横方向のレーザ光の断面の幅が印刷像開口部の幅に依存して設定される。既に上述したように、この方法は、くり抜かれた担体層開口部の大きさおよび/または形状を仕様に対応して変化させるという有利な点を可能とする。
【0044】
とりわけこの担体層開口部の幅は、レーザ装置のフォーカス装置の設定によって、パターン層の印刷像開口部の幅に合わせることができる。好ましくは、レーザ光は、フォーカス装置を用いて、担体層の表面の位置で実質的に円形の断面でデフォーカスされる。好ましい代替の実施形態例によれば、レーザ光は、このフォーカス装置を用いて、担体層の表面の位置で実質的に楕円形の断面でデフォーカスされる。好ましくは、ここで担体層開口部の楕円の長軸は、印刷像開口部に対し横方向に、とりわけ直交する方向に向いている。これは、担体層開口部の楕円形状のために、生成されるブリッジの形状が、印刷像開口部の横方向で均等になり、特に均等な幅で形成されるという有利さを可能とする。
【0045】
好ましくは、この方法はさらに、パルス化されたレーザ(レーザ光パルス)の周波数あるいは周期、レーザ光パルスのデューティ比、およびパルス化されたレーザ光のオン/オフ比等の1つ以上のパラメータを設定するステップを備える。これは、たとえば隣接したくり抜かれた担体層開口部の間のブリッジ幅を、レーザ装置のフォーカス装置に対し相対的に担体層を移動した際に設定される漸進速度に依存して変化あるいは設定することを可能とする。ここで上記のパラメータは、互いに依存しており、これら上記のパラメータの2つを設定することによって既に、通常他のパラメータもまた決定される。
【0046】
好ましくは、担体層に対する相対的なレーザ光の位置が、2個の続いたレーザ光パルスの間に、担体層開口部の列の2つの隣接した担体層開口部の間で移動される際に、担体層におけるブリッジが形成される。既に上述したように、このようにして有利な印刷ステンシルの高い安定性が実現でき、とりわけ、たとえば太陽電池の前面のコンタクトフィンガの印刷のために必要な、大きく引き延ばされた形成された印刷像開口部において高い安定性が実現できる。
【0047】
好ましくは、担体層に対する相対的なレーザ光の位置の移動の際の漸進速度は、くり抜かれた担体層開口部の位置から次にくり抜かれる担体層開口部まで、所定のブリッジ幅に依存して選択される。好ましくは、担体層に対する相対的なレーザ光の位置の移動の際の漸進速度は、くり抜かれた担体層開口部の位置からさらに次のくり抜かれる担体層開口部まで、印刷像開口部の長手方向における担体層開口部の幅に依存して、あるいは担体層の表面の位置でのデフォーカスされたレーザ光の断面の幅に依存して選択される。
【0048】
好ましくは、担体層に対する相対的なレーザ光の位置の移動の際の漸進速度は、くり抜かれた担体層開口部の位置から次にくり抜かれる担体層開口部まで、とりわけ、(BL+SB)/(T−τ)より小さいかまたは実質的にこれに等しく設定され、ここでBLは印刷像開口部の長手方向における担体層開口部の幅を表し(これは、担体層開口部のくり抜き加工におけるレーザ光の位置が移動されない場合の実施形態に有効であり、担体層開口部のくり抜き加工におけるレーザ光の位置が移動される場合の方法においても有効であり、BLはデフォーカスされたレーザの断面の幅に依存して選択される。ただしここでBLは多少大きく選択される。)、SBは所定のブリッジ幅を表し、τはレーザ光パルスのパルス幅を表している。このようにして、レーザ装置のフォーカス装置に対し相対的に、2つのレーザ光パルスの間の時間(たとえばT−τで与えられる)に、担体層は、少なくとも、印刷像開口部の長手方向における担体層開口部の幅と所定のブリッジ幅との和に対応した距離分が移動され、この担体層において所定の幅のブリッジが残される。
【0049】
好ましくは、担体層に対する相対的なレーザ光の位置の移動の際に、フォーカス装置が移動される。代替あるいは追加として、担体層に対する相対的なレーザ装置のフォーカス装置の移動の際に、担体層も移動されてよい。ここで、もしこれらの担体層開口部がそれぞれ1個のレーザ光パルスでくり抜かれる、あるいは「打ち抜き照射」される場合は、この担体層開口部の列のくり抜き加工の間の移動は、連続的に行われてよい。代替として、担体層開口部の列のくり抜き加工の間の移動は、ステップ的に行われてよく、ここで2個のパルスの間で、実質的に印刷像開口部の長手方向における担体層開口部の幅と所定のブリッジ幅との和に対応した距離部分が移動されてよく、次のくり抜かれる担体層開口部の位置で、所定の1つ以上のレーザ光パルスで担体層開口部がくり抜かれるまで停止され、再び2つの続いたパルスの間で、実質的に印刷像開口部の長手方向における担体層開口部の幅と所定のブリッジ幅との和に対応した、次にくり抜かれる担体層開口部の位置までの距離部分が移動される。
【0050】
好ましくは、担体層の材料はメタルを含み、とりわけ貴金属またはニッケル、および/またはプラスチックを含む。
【0051】
好ましくは、パターン層は、感光性の材料を含み。とりわけ感光乳剤またはフィルムを含む。ここで、印刷像開口部のくり抜き加工は、好ましくは、所定の波長または所定の波長範囲の電磁波、とりわけ赤外光、可視光および/または紫外光を用いた、印刷パターンの印刷像によるステップ露光を含み、パターン層の感光材料の現像を含む。
【0052】
好ましくは、このパターン層は、直接担体層に取り付けられるか、または担体層とパターン層に取り付けられる中間層との間に取り付けられる。
【0053】
好ましくは、担体層開口部のくり抜き加工は、さらに、印刷像開口部の長手方向で担体層開口部の第1の列に平行に延びた、少なくとも1つのさらなる担体層開口部の第2の列のくり抜き加工を含む。ここで、第2の列のそれぞれの担体層開口部のくり抜き加工の際に、好ましくはレーザ装置のフォーカス装置がそれぞれの担体層開口部の位置に位置決めされ、好ましくはそれぞれの担体層開口部は、1個以上のレーザ光パルスを用いてこの位置でくり抜かれる。好ましくは、担体層開口部のくり抜き加工の後で、このレーザ装置のフォーカス装置は、2個の続いたレーザ光パルスの間で、担体層に対して相対的に、くり抜かれた担体層開口部の位置から移動され、引き延ばされた印刷像開口部の長手方向で次にくり抜かれる担体層開口部まで移動される。
【0054】
好ましくは、第1の列のそれぞれの担体層開口部には、少なくとも1つのさらなる第2の列の担体層開口部が重ねられており、製造される印刷ステンシルにおけるそれぞれの担体層開口部は、少なくとも2つの列の2つ以上の担体層開口部から形成され、ここで好ましくは印刷像開口部の長手方向で隣接した担体層開口部の間にブリッジが形成されている。これは、担体層上のレーザの有効断面、すなわち充分なエネルギー密度を有する断面に対し、自動的に大きな幅を有する幅広の担体層開口部が、容易にかつ時間効率良く、本発明による方法によってくり抜かれるという有利さがあり、この方法で2つ以上の実質的に平行に配設された担体層開口部の列がくり抜かされる。ここで、印刷像開口部に対し横方向に隣接する、互いに平行に配設された別の列の担体層開口部は重なっており、これにより完成した印刷ステンシルにおいてはそれぞれ1つの幅広の担体層開口部が形成される。ここで印刷像開口部の長手方向に隣接した担体層開口部の間に、さらにまたそれぞれのブリッジが形成されてよい。
【0055】
本発明の第2の態様によれば、基板の上に印刷パターンを取り付けるテクニカル印刷のための印刷ステンシルが提案される。この印刷ステンシルは、上述の第1の態様の方法によって製造され、ここでこの印刷ステンシルは、20μm〜800μmの厚さを有する印刷ステンシルの担体層と、この担体層の下にある印刷ステンシルのパターン層とを備える。ここで、本発明による印刷ステンシルの利点は、本発明による方法およびその好ましい実施形態に関連して上記で説明した通りである。
【0056】
本発明によれば、パターン層は、引き延ばされた、少なくとも一部の印刷パターンに対応する印刷像開口部をこのパターン層に備え、担体層は、印刷像開口部の領域において、印刷像開口部の長手方向に延びた担体層開口部の1つ以上の列を備え、これらの担体層開口部は、従来のレーザ切断方法でくり抜かれた担体層開口部に対して、実質的に矩形に形成されておらず、むしろレーザの有効断面に対応した円形の輪郭を備える。場合によっては、印刷像開口部の長手方向に対して横方向の幅は、この印刷像開口部の長手方向の長さにほぼ対応しているか、または印刷像開口部の長手方向に対し横方向に重なった2つ以上の担体層開口部から形成されており、これらの担体層開口部は、それぞれレーザの有効断面に対応して円形の輪郭を備え、場合によっては、印刷像開口部の長手方向に対して横方向の幅は、ほぼ印刷像開口部の長手方向の長さに対応している。
【0057】
好ましくは、1つの列の担体層開口部は、実質的に円形に形成されている。代替として、1つの列の担体層開口部は、好ましくは実質的に楕円形に形成されている。ここで、1つの列の担体層開口部の楕円の長軸は、印刷像開口部に対し横方向に、とりわけ直交する方向に向いている。代替として、1つの列の担体層開口部は、実質的に長穴形状に形成されており、すなわち引き延ばされているが端部が丸められており、これらの端部は、実質的に半円形または半楕円形で形成されている。
【0058】
好ましくは、担体層の材料はメタルを含み、とりわけ貴金属またはニッケル、および/またはプラスチックを含む。好ましくは、パターン層は、感光性の材料を含み。とりわけ感光乳剤またはフィルムを含む。
【0059】
好ましくは、このパターン層は、直接担体層に取り付けられるか、または担体層とパターン層に取り付けられる中間層との間に取り付けられる。
【0060】
好ましくは、担体層は、印刷像開口部において、丁度印刷像開口部の長手方向に延びた、担体層開口部の列を備え、好ましくは、ここで隣接する担体層開口部の間には、それぞれのブリッジが形成されている。好ましくは、このそれぞれのブリッジは、パターン層に向いた側で融解されており、このようにして担体層の高さに比べ低くなっている。上述したように、これは本発明によって、パターン層に向いた担体層の側がレーザ入射側とし、すなわちレーザ光がこのパターン層に向いた担体層の側に入射して、素早く進行されて、熱的効果によって所望の高低差が生成される。
【0061】
さらにもう1つの好適な実施形態によれば、第1の列のそれぞれの担体層開口部は、少なくとも1つのさらなる第2の列の担体層開口部に覆われており、印刷ステンシルにおけるそれぞれの担体層開口部は、少なくとも2つの列の2つ以上の担体層開口部から形成され、ここで好ましくは印刷像開口部の長手方向に隣接した担体層開口部の間にそれぞれのブリッジが形成されている。
【0062】
以上をまとめると、本発明によれば、印刷ステンシルの製造方法が提供され、この方法では、印刷ステンシルの担体層のそれぞれの担体層開口部は、印刷像開口部の領域において、1つの位置におけるそれぞれ1個以上のレーザ光パルスによって、くり抜かれ、あるいは「打ち抜き照射」される。これは、従来これらの担体層開口部では強くフォーカスされたレーザ光を用いて、担体層開口部から周囲で切り抜かれていたのに比べ、容易かつ効率的であり、顕著に時間短縮を行うことができる。
【0063】
とりわけ、コストのかかるレーザ切断装置での担体層開口部のくり抜き加工を顕著に短縮することができるので、時間効率が改善され、印刷ステンシルの製造における費用効果を大幅に改善することができる。さらに、本発明によって製造された印刷ステンシルは、本方法により印刷スクリーンに対して構造的に改善され、印刷ステンシルとしても従来強くフォーカスされたレーザ光を用いて周囲から切り抜かれていたものに比べ改善されている。これは担体層の安定性が顕著に改善され、またドクターブレードの性能の改善が達成されているからである。とにかく、とりわけ太陽電池の前面のコンタクトフィンガの印刷において極めて優れた印刷像が実現されている。
【0064】
本発明による印刷像ステンシルの好ましい適用領域には、とりわけ以下のようのものがある。厚膜への使用、導電ペーストの印刷、抵抗ペーストの印刷、熱伝導ペーストあるいは熱伝導接着剤の印刷、接着剤、シリコン、アクリル、(濡れ層強度に対応した)高粘性ペーストおよび乳剤、非導電性ペーストおよび乳剤、等である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】従来技術で公知の太陽電池の平面図を示す。
図2A】従来技術で公知の印刷スクリーンの部分の平面図を示す図である。
図2B図2Aに示す従来技術で公知の印刷スクリーンの部分の断面を示す図である。
図3A】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここで担体層開口部は、従来の強くフォーカスされたレーザ光で担体層の周囲から切り抜かれている。
図3B図3Aの切断線A−Aに沿った概略断面図を示す図である。
図4A】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第1の実施形態例の方法による担体層開口部がくり抜かれている。
図4B図4Aの切断線A−Aに沿った概略断面図を示す図である。
図5A】本発明による一実施形態の方法のステップを示す図である。
図5B】本発明による一実施形態の方法のステップを示す図である。
図5C】本発明による一実施形態の方法のステップを示す図である。
図5D】本発明による一実施形態の方法のステップを示す図である。
図6】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第2の実施形態例の方法により、担体層開口部がくり抜かれている。
図7】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第3の実施形態例の方法により、担体層開口部がくり抜かれている。
図8】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第4の実施形態例の方法により、担体層開口部がくり抜かれている。
図9】印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第5の実施形態例の方法により、担体層開口部がくり抜かれている。
図10】本発明による1つの実施形態例の方法に使用されるパルス化されたレーザ光の時間的なパルス列を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に、図を参照して本発明の様々な実施形態例を詳細に説明する。これらの図における同一かあるいは類似の要素は、ここでは同じ参照番号で示されている。しかしながら本発明は、説明するこれらの実施形態の特徴に限定されるものでなく、むしろさらにここに説明する実施形態例の特徴の変形および様々な実施形態例の特徴の組み合わせをも独立請求項の権利範囲に含むものである。
【0067】
図1は、従来技術で公知の太陽電池100の平面図を示す。この太陽電池セル100は、光活性を有する実質的に矩形の半導体−光起電−基板の層(以下では基板1と略称)を備え、その前面には、電気エネルギーを出力するためおよびこの太陽電池セル100を他の太陽電池セルと接続して太陽電池モジュールとするための、2つの(場合によっては複数の)導電性の、互いに平行に延びるバスバー102を有する前面接続部を備えている。このバスバー102に直角に、複数の互いに同様に平行し、ただしこれらのバスバー102に対し横方向に延びるコンタクトフィンガー101が、前面接続部の構成要素として設けられている。これらは、光が基板1に入射した際に生成される電気エネルギーをバスバー102に導電する。導電路の低電気抵抗と、またこれと同時にできる限り小さな遮蔽部とによって、高いエネルギー効率の太陽電池セルを実現するため、これらのコンタクトフィンガー101は、できる限り大きな、またこのコンタクトフィンガー101の全長に渡って均等なアスペクト比を有するように、すなわち大きな高さと最小の幅を有するように設けられなければならない。
【0068】
図2Aは、従来技術で公知の印刷スクリーン200の部分の平面図を示し、図2Bは、図2Aに示す従来技術で公知の印刷スクリーン200の部分の断面を示す。この印刷スクリーンは、前面側接続部を印刷するための印刷像開口部を備えた写真乳剤層を備える。この写真乳剤層は、写真乳剤層201に取り付けられたメッシュスクリーン202によって安定化される。ここで特に、メッシュスクリーン202が印刷像開口部の開放された印刷領域をも塞いでしまい、これによって前面側接続部の印刷の際にペースト刷り込みが不均一となってしまうという欠点があり、とりわけメッシュスクリーン202のメッシュノードが印刷ラインの縁部(印刷像開口部203)に配置されている場合に、メッシュスクリーン202のメッシュノードの領域で不均一となってしまう。
【0069】
図3Aは、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す。ここで担体層開口部は、従来のフォーカスされたレーザ光で担体層の周囲から切り抜かれている。図3Bは、図3Aの切断線A−Aに沿った概略断面図を示す。
【0070】
図3Aは、パターン層22の側から見た印刷ステンシルの平面図を示し、ここではこの印刷ステンシルは、従来公知のレーザ切断方法を用いて製造されている。担体層開口部21aは、フォーカスされたレーザを用いて、くり抜かれる担体層開口部21aの縁部に沿って、担体層21から切り抜かれる。パターン層22において引き延ばされた印刷像開口部22aの領域には、担体層21における3つの実質的に矩形に変形された担体層開口部21aが形成されており、これらはそれぞれブリッジ21bによって互いに分離されている。
【0071】
ここで、担体層開口部21aの切断のために、レーザ光はまず1つの隅部、たとえば図3Aの位置P1に位置され、レーザ装置のシャッタ装置を開放してから、担体層開口部21aが完全に担体層21から切り抜かれるまで、担体層開口部21aの縁部に沿って位置P2,P3そしてP4と他のそれぞれの隅部にガイドされ、そして位置P1に戻る。レーザ装置のシャッタ装置が閉じられた後で、フォーカスされたレーザ光は、次にくり抜かれる担体層開口部21aにガイドされてよく、次のこのくり抜かれる担体層開口部21aが担体層21から切り抜かれる。
【0072】
図4Aは、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す図である。ここでは、本発明の第1の実施形態例の方法により、担体層開口部がくり抜かれている。図4Bは、図4Aの切断線A−Aに沿った概略断面図を示す。
【0073】
パターン層22においては、連続した引き延ばされた矩形の印刷像開口部22a(たとえば太陽電池セルの前面接続部のコンタクトフィンガー)がくり抜き形成される。パターン層22の上にある担体層21においては、印刷像開口部22aの領域で、円形の担体層開口部21aがくり抜かれ、これらの間にはそれぞれ担体層21aにおいてブリッジ21bが形成されている。この担体層開口部21aの直径は、印刷像開口部22aの横方向でのこの印刷像開口部22aの幅に合わせてあり、あるいは図4Aにおいては実質的に印刷像開口部22aの幅に対応している。
【0074】
太陽電池の前面接続部のコンタクトフィンガーの印刷では、実際のサイズがたとえば、印刷像開口部の幅22aあるいは担体層開口部21aの幅が、約20〜100μmの範囲にあり、ブリッジ21bのブリッジ幅(ほぼブリッジの細い中央部で測って)が10μm〜50μmの範囲あるいは好ましくはほぼ15μm〜30μmの範囲となるように形成されてよい。
【0075】
図4Bでブリッジ21bの所に示されているように、ほぼ30μmより小さいブリッジ幅から、とりわけほぼ20μmから、レーザ入射側での融解による急激な高さ低減の効果が認められる。このように、細いブリッジ幅は、図3Aに示すような従来のレーザ切断方法では、安定性の問題から実現することができなかった。レーザ入射側での融解によるこのブリッジ21bの高さ低減は、これらのブリッジ21bの下で、印刷される基板1に向いた側で印刷ペーストが良好に合流することができるという有利な効果をもたらし、印刷像開口部の全長に渡り、改善された均一な印刷像を可能とする。
【0076】
本発明によれば、担体層開口部は、位置P1,P2,...〜PNで、1個以上のデフォーカスされたレーザ光パルスを用いてくり抜かれる。このため、担体層21およびレーザ装置は、位置P1から位置PNまで、担体層開口部22aの領域の長手方向で互いに相対的に移動される(図4A中の矢印参照)。ここでこの方法は、担体層開口部21aが、それぞれ1個のレーザ光パルスによってくり抜かれる場合、または以下のように図5A〜5Dに示されるように、好ましくはステップ的に、担体層開口部21aがそれぞれ1個以上のレーザ光パルスでくり抜かれる場合に、連続して(とりわけ非常に短いレーザ光パルスで)行うことができる。これら両方の場合において、1つの位置(たとえばP1)から次の隣接した位置(たとえばP2)までの移動動作は、特に2個のレーザ光パルスの間で行われる。
【0077】
図5A〜5Dは、本発明による一実施形態の方法のステップを示す。図5Aによれば、レーザ源とフォーカス装置とを備えたレーザ装置10は、フォーカス光学系を備え、担体層21における、第1のくり抜かれる担体層開口部21aの位置P1に位置決めされる。レーザ光は、担体層21に向けられ、フォーカス装置12のフォーカス光学系を用いて、表面すなわち担体層21の位置でデフォーカスされ、このレーザ光が、くり抜かれる担体層開口部21aの所定の大きさQTに依存した(この所定の大きさQTの約50%〜90%)レーザ光断面QLを有するようにされる。このレーザ光は、レーザ断面QLの領域において、担体層の厚さに依存して1個以上(所定のn個)のレーザ光パルスを用いて担体層開口部をくり抜くのに十分なエネルギー密度を備えている。ここでこのレーザ断面QLは、所定の大きさQTより通常やや小さくなっている。これは熱エネルギーが担体層において横方向に照射され、担体層開口部の断面がデフォーカスされたレーザ光の断面QLより大きくなるようにくり抜かれるからである。
【0078】
レーザ装置10が位置P1に位置決めされた後も、このレーザ装置10は、所定の数のn個のレーザ光パルスが出力されるまでの所定の時間の間、すなわち周期Tのn倍、あるいはレーザ装置10のパルス化されたレーザの周波数の逆数のn倍(好ましくは丁度1個のレーザ光パルスの時間幅、すなわち好ましくはn=1)に対応した所定の時間の間は、この位置P1に留まっている。そこで担体層開口部21aは、図5Bに示すように、位置P1でくり抜かれ、あるいは「打ち抜き加工」される。n個目のレーザ光パルスの後に、レーザ装置10は、担体層21に対し相対的に、次にくり抜かれる担体層開口部21aの位置P2まで移動され、図5Cに概略的に示すように、この位置P2に位置決めされる。この移動動作は、n個目のレーザ光パルスとこれに続く(n+1)個目のレーザ光パルスの間で行われる。本発明においては、このレーザ装置10全体、フォーカス装置12および/または担体層21が実際に移動されるかどうかは重要ではない。
【0079】
レーザ装置10が位置P2に位置決めされた後も、このレーザ装置10は、所定の数m個のレーザ光パルスが出力されるまでの所定の時間の間(好ましくはm=n、とりわけ好ましくはm=1)、すなわち周期Tのm倍、あるいはレーザ装置10のパルス化されたレーザの周波数の逆数のm倍に対応した所定の時間の間は、この位置P2に留まっている。そこで担体層開口部21aは、図5Bに示すように、位置P2でくり抜かれ、あるいは「打ち抜き加工」される。ここで約30μmより小さいブリッジ幅、とりわけ約20μm以下のブリッジ幅では、上述したように、担体層21のレーザ入射側での融解によって、ブリッジ21bの高さが大幅に低減されるという有利な効果が生じる。m個目のレーザ光パルスの後に、レーザー装置10は、担体層21に対して相対的に、次にくり抜かれる担体層開口部21aの位置まで繰り返し移動されてよく、担体層開口部21aの列の最後の位置PNまで到達し、この列の最後の担体層開口部がくり抜かれる。
【0080】
図6は、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す。ここでは、本発明の第2の実施形態例の方法により、担体層開口部21aがくり抜かれている。ここで図4Aおよび4Bに示す実施形態例に対して異なる点は、担体層開口部21aが円形でなく、楕円形となっていることである。これは、フォーカス装置12を用いて、レーザ光の断面QTが担体層の上で楕円形にデフォーカスされることによって実現され、あるいはとりわけ漸進方向での切断(貫通)の際の速度によって自動的に生成される。
【0081】
パターン層22においては、連続した引き延ばされた矩形の印刷像開口部22a(たとえば太陽電池セルの前面接続部のコンタクトフィンガー)がくり抜き形成される。パターン層22の上にある担体層21においては、印刷像開口部22aの領域で、楕円形の担体層開口部21aがくり抜かれ、これらの間にはそれぞれ担体層21aにおいてブリッジ21bが形成されている。この楕円形の担体層開口部21aの長軸は、印刷像開口部22aの長手方向に対し横方向に向いており、この印刷像開口部22aの横方向での印刷像開口部22aの幅に合わせてあり、あるいは図6においては実質的に印刷像開口部22aの幅に対応している。
【0082】
太陽電池の前面接続部のコンタクトフィンガーの印刷では、実際のサイズがたとえば、印刷像開口部の幅22aあるいは楕円形の担体層開口部21aの長軸の長さが、約25〜800μmの範囲にあり、ブリッジ21bのブリッジ幅(ほぼブリッジの細い中央部で測って)が5μm〜20μmの範囲あるいは好ましくはほぼ10μm〜15μmの範囲となるように形成されてよい。上述した、担体層21のレーザ入射側での融解による、ブリッジ21bの高さが低減される有利な効果は、ほぼ30μmより小さいブリッジ幅から生じ、とりわけほぼ20μmで生じる。
【0083】
この実施形態例によれば、一方では幅広の担体層開口部をくり抜くことができ、ここでこの幅広の楕円形の長軸は印刷像開口部22aの長手方向に対し横方向に向いている。さらに、とりわけ有利には、この楕円形のために、この長軸が印刷像開口部22aの長手方向に対し横方向に向いた場合に、ブリッジ21bを、横方向に均等に延びた幅で形成することができる。
【0084】
図7は、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す。ここでは、本発明の第3の実施形態例の方法による担体層開口部21aがくり抜かれている。ここで図4Aおよび4Bに示す実施形態例に対して異なる点は、担体層開口部21aが円形でなく、それぞれが複数の円形の担体層開口部から形成されている点であり、これらの複数の担体層開口部は、印刷像開口部の長手方向に延びる列に対し横方向に配設され、1個の担体層開口部21aを形成するように重なり合っている。これは図4Aおよび4Bと同様に、まず図5A〜5Dに示す方法によって、印刷像開口部22aの長手方向に延びる円形(または他の実施形態例では楕円形でもよい)の担体層開口部の列が、デフォーカスされたレーザのレーザ断面QTの形に対応しかつその大きさに依存してくり抜かれ、ここでフォーカス装置は、担体層に対し相対的に位置P11から位置P1Nまで移動され、この後同様に、印刷像開口部22aの長手方向に平行に延びる担体層開口部の列がくり抜かれる。すなわち、たとえば位置P21から位置P2Nまでの第2の列、位置P31から位置P3Nまでの第3の列、そして位置P41から位置P4Nまでの第4の列がくり抜かれる。
【0085】
この実施形態例によれば、自動的に幅広の担体層開口部21aをくり抜くことができ、この幅広の担体層開口部は、図7に示すように、レーザ光の断面QTの幅よりも顕著に大きい幅を備えている。ここでも、上述した、担体層21のレーザ入射側での融解による、ブリッジ21bの高さが低減される有利な効果が、ほぼ30μmより小さいブリッジ幅から生じ、とりわけほぼ20μmで生じることが認められる。開口部が非常に大きい場合は、強度のために、P21とP31との間に平行して延びるブリッジをP2NあるいはP3Nまで設けてよい。
【0086】
図8は、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す。ここでは、本発明の第4の実施形態例の方法による担体層開口部21aがくり抜かれている。ここで担体層21aはそれぞれ、たとえばデフォーカスされたレーザ光の断面が円形に設定されたレーザ光パルスを用いてくり抜かれる。図4A〜5Dに示す本発明の実施形態例による方法と異なる点は、デフォーカスされたレーザ光が、このレーザ光パルスの間に、すなわち担体層開口部のくり抜き加工の間に、担体層21に対して相対的に、パターン層22の印刷像開口部22aの長手方向で移動され、円形の担体層開口部の代わりに長穴形状の担体層開口部がくり抜かれる点である。長穴は、引き延ばされた穴であり、その断面は長手方向に引き延ばされた矩形で、長手方向の端部がそれぞれ半円形で終端された形状(たとえば図8にしめすように半円形であり、あるいはデフォーカスされたレーザ光が楕円形の断面に設定されている場合は半楕円形である。)で構成されている。
【0087】
特にこのレーザ装置10は、まず第2の担体層開口部の位置P1に移動される。パルス化されたレーザの1個のレーザ光パルスの間に、デフォーカスされたレーザ光(たとえばこの実施形態例では、円形のデフォーカスされた断面が設定されている)が、担体層開口部の第1の位置P1から第2の位置P2まで移動されるが、この際漸進速度はここでは実質的にパルス化されたレーザ光のパルス幅の割合および位置P1とP2との間隔に対応するように設定される。しかしながら、これによりくり抜かれた担体層開口部21aの長さは、デフォーカスされたレーザ光の断面のために、位置P1とP2との間隔より大きい(図8参照)。上述の実施形態例と同様に、2個のレーザ光パルス間で、レーザ光の位置は、担体層開口部の第2の位置P2から、続いてくり抜かれる担体層開口部21aの位置P3まで移動される。このステップが印刷像開口部の最後の位置PNまで繰り返される。この実施形態例においても、円形のレーザ光断面の代わりに楕円形のレーザ光断面を設定してもよく、また、担体層開口部の第1の列に重なる、さらなる担体層開口部の列をくり抜いて、もっと幅広の担体層開口部とすることも可能である。
【0088】
図9は、印刷ステンシルの部分のパターン層側の概略平面図を示す。ここでは、本発明の第5の実施形態例の方法による担体層開口部がくり抜かれている。ここで担体層開口部21aは卵型すなわち楕円形に形成されており、担体層開口部21aの長手方向は印刷像開口部22の長手方向に延びている。これはたとえば、レーザ光パルスがまだ遮断されていない時に既にステンシルが動かされることによって、すなわち担体層開口部21aのくり抜き加工の際の「ぼかし」によって実現することができる。
【0089】
図10は、本発明による1つの実施形態例の方法に使用されるパルス化されたレーザ光の時間的なパルス列を例示する。ここでは、パルス化されたレーザ光が用いられているか、あるいは連続したレーザ光を機械的シャッタ装置を周期的に開放あるいは閉鎖することによる「シャッタパルス化」されたものが用いられているかは重要ではない。レーザのパルス周波数により、図10に示すような、周期Tでそれぞれパルス幅τのレーザ光パルスが周期的に発生する。以下のような関係が得られる。周期は周波数の逆数に対応し、デューティ比はτ/T、オン/オフ比はτ/(T−τ)で与えられる。
【0090】
以上をまとめると、本発明によれば、印刷ステンシルの製造方法が提供され、この方法では、印刷ステンシルの担体層のそれぞれの担体層開口部は、印刷像開口部の領域において、1つの位置におけるそれぞれ1個以上のレーザ光パルスによってくり抜かれ、あるいは「打ち抜き照射」される。これは、従来これらの担体層開口部では強くフォーカスされたレーザ光を用いて、担体層開口部から周囲で切り抜かれていたのに比べ、容易かつ効率的であり、顕著に時間短縮を行うことができる。とりわけ、コストのかかるレーザ切断装置での担体層開口部のくり抜き加工を顕著に短縮することができるので、時間効率が改善され、印刷ステンシルの製造における費用効果を大幅に改善することができる。さらに、本発明によって製造された印刷ステンシルは、本方法により印刷スクリーンに対して構造的に改善され、印刷ステンシルとしても従来強くフォーカスされたレーザ光を用いて周囲で切り抜かれていたものに比べ改善されている。これは担体層の安定性が顕著に改善され、またドクターブレードの性能の改善が達成されているからである。とにかく、とりわけ太陽電池の前面のコンタクトフィンガの印刷において極めて優れた印刷像が実現されている。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10