特許第6231486号(P6231486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231486
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】シクロスポリン2型の持続作用型製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/13 20060101AFI20171106BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20171106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A61K38/13
   A61K9/10
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/58
   A61P27/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542397(P2014-542397)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公表番号】特表2014-533301(P2014-533301A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012064988
(87)【国際公開番号】WO2013074610
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/559,838
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/563,199
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100170944
【弁理士】
【氏名又は名称】岩澤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディ・エム・ブランダ
(72)【発明者】
【氏名】メイッサ・アッター
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−211598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/13
A61K 9/06 − 9/133
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロスポリンA2型とヒドロゲルとを含む製剤であって、
前記シクロスポリンA2型は、(2θ):7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6および17.5の主ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、前記製剤。
【請求項2】
シクロスポリンA2型とヒドロゲルとを含む製剤であって、
前記シクロスポリンA2型は、以下:
空間群:P2111(No.19)
格子パラメータ:a=12.6390Å、b=19.7582Å、c=29.568Å
セルの含量:Z=4
を満たす、前記製剤。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびカルボキシメチルセルロースから選択される、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記シクロスポリンA2型が、約0.01〜約10%の濃度で存在する、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
ドライアイ、眼瞼炎、マイボーム腺疾患、角膜知覚障害、アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル、および翼状片から選択される状態を治療するための、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤を結膜下腔に投与する、請求項に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤を、22ゲージ以下の針を介して投与する、請求項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年11月15日出願の米国仮特許出願第61/559,838号および2011年11月23日出願の米国特許仮特許出願第61/563,199号の優先権を主張し、両出願の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
シクロスポリンAは、ドライアイの治療のため米国で承認された局所的な眼製剤であるRestasis(登録商標)の活性成分である。また、局所的なシクロスポリンは、屈折矯正手術後の角膜知覚修復、結膜炎および角膜の炎症、角結膜炎、移植片対宿主病、移植後の緑内障、角膜移植、真菌性角膜炎、マイボーム腺機能不全、タイゲソン点状表層角膜炎、ブドウ膜炎、ならびにセオドア性(Theodore)上輪部角結膜炎などの他の眼の状態の管理に使用される。
【0003】
患者のコンプライアンスは非常に重要であるが、多くの患者は、眼の薬物療法に従わない。さらに、ドライアイ以外の状態の治療の一部は、Restasisに対して承認された1日2回の投薬より頻繁な投与、及び複数回の投薬後にRestasisが組織に送達できる濃度よりも高いシクロスポリンAの濃度は、移植片対宿主病などの重篤な状態を伴う患者に有益になるであろう。
【0004】
眼疾患の一部は、長期間の治療を必要とし得る。たとえば、国立眼病研究所(NEI)は、ブドウ膜炎を治療するために、1mgおよび2mgの生分解性植込物のシクロスポリンを評価する試験を完了した。また、NEIは、移植片対宿主病の治療に対する非分解性シクロスポリン植込物の使用を試験している。しかしながら、投薬後の非分解性植込物を除去することは、2回目の外科手術を必要とすることがないという点に留意すべきである。また、他の関連試験がNEIにより行われ、試験に参加する患者を募集している段階である。これらのNEIの試験の結果は公開されていない。
【0005】
長期間(数週間または数ヶ月)にわたって、一定して高レベルのシクロスポリンを送達する単一の埋め込みまたは注入が望ましい。数ヶ月の生分解性または生体内崩壊性送達システムの使用は、Restasisと等量以上の濃度で標的とする眼組織の前部にシクロスポリンを送達することが明らかに望ましい。また、注入可能な製剤により、外科手術を回避することも望ましい。22ゲージ(またはこれより細い)注射針を通ることができると共に、外套針、より太い針、または外科的埋め込みで起こり得る眼組織損傷を回避することができる製剤が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
長期間の治療に対するシクロスポリン製剤を結膜内に注入するこれまで報告されている成功は、非常に限定されたものであり、短期間の効果は、一部のマイクロスフィアおよび他の製剤で示されているが、前面の組織に対するシクロスポリンの送達の際に、少なくとも3ヶ月の期間投与したRestasis以上の効果を示す製剤はまだ存在しない。
【0007】
22ゲージの注射針を介して送達することのできる生分解性植込物は、必要性を満たす十分な期間にわたり、薬剤を十分に送達しない。生体分解性ゲル形成懸濁液は、良好な効果を有するが、必要性を満たすには不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の製剤は、22より細いゲージの注射針を介して眼の結膜下腔に送達される際に、長期間にわたり、眼組織の前部にシクロスポリンAを送達することを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(本明細書に2型として示される)新規の結晶形、(本明細書に1型として示される)正方晶形、および斜方晶形(本明細書に3型として示される)3型のCsA特徴的な粉末X線回折(XRPD)パターンを表す。
図2】CsA結晶2型のXRPD回折を表す。
図3】CsA2型の水吸収/脱離プロファイルを表す。
図4】1%のPS80を有する0.04%製剤から収集したCsA2型のMDSC解析を表す。
図5】眼の前部ならびに角膜縁および角膜に対する結膜の異なる四分円を示す。
図6】眼の結膜下腔のこめかみ上の四分円内へのステロイド化合物の注入を示す。この患者は、片手の親指で上瞼をやさしく持ち上げながら下を見る。ステロイド含有組成物を含むシリンジが、眼球に接して配置され、眼球結膜を介して挿入され、結膜下腔内に針を導入する。
図7】眼の断面と、眼の他の解剖領域に対して、上瞼、下瞼および眼球内の3つの結膜領域(黒い太線)の位置を示す。
図8】シクロスポリンAの形態のシミュレーションされたXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
シクロスポリンA
シクロスポリンA(CsA)は、以下の化学構造
【化1】
を有する環状ペプチドである。
【0011】
当該物質の化学名は、シクロ[[(E)−(2S,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチル−2−(メチルアミノ)−6−オクテノイル]−L−2−アミノブチリル−N−メチルグリシル−N−メチル−Lロイシル−L−バリル−N−メチル−L−ロイシル−L−アラニル−D−アラニル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−ロイシル−Nメチル−L−バリル]である。また、シクロスポリン、シクロスポリンA、シクロスポリン(ciclosporin)、およびシクロスポリン(ciclosporin)Aとしても知られている。これは、Restasis(登録商標)(アラガン、カリフォルニア州アーバイン)の活性成分であり、Restasisは、0.05%(w/v)のシクロスポリンを含むエマルジョンである。Restasis(登録商標)は、乾性角結膜炎に関連する眼の炎症により涙の産生が抑制されていると考えられる患者の涙の産生を増加させるため、米国で承認されている。
【0012】
シクロスポリンA2型
シクロスポリンAは、非晶質形、液晶形、正方晶形(1型)および斜方晶形(3型)で存在することが知られている。新規の結晶形である、シクロスポリン2型は近年発見された。
【0013】
CsA2型のXRPDパターンは、正方晶形および斜方晶形と顕著に異なる(図1)。λ=1.54Å、30kV/15mA:7.5、8.8、10.2、11.3、12.7、13.8、14.5、15.6および17.5(図2において、それぞれ約11.8、10.0、8.7、7.8、7.0、6.4、6.1、5.6および5.1Åでの結晶格子中の面間隔d)のCuKα照射としてのX線源を備えたX線解析計によりスキャンする際、(2θ)でCsA2型の主要な結晶ピークが現れる。これらの主要なピークは、天然に存在するものの5倍以上の強度を有するピークであると共に、斜方晶形または正方晶形に対して2型が特有であることを示すものである。
【0014】
一実施形態において、CsAの新規の結晶形(2型)は、シクロスポリンAの非化学量論的水和物である。別の実施形態において、この結晶2型は、式
【化2】
式により表され、式中、
Xは、水分子の数であり、0〜3の値をとる。一実施形態において、上記の式中のXは2である。
【0015】
2型は、水性懸濁液中で、CsAの速度論的に安定な形として存在する。2型を含む懸濁液は、保存する際に他の知られている多形体または仮晶体に変換しない。1型、すなわち非晶形は、水が存在する際に2型へと変換することが見いだされる。
【0016】
CsA2型の水和物形の単結晶構造が決定され、この結晶構造パラメータを表2に挙げる。これらの結果から、2型は他の知られているシクロスポリンAの結晶形と比較して独特であることが示される。
【表1】
【0017】
CsA2型の非対称単位は、1つのシクロスポリンA分子と2つの水分子とを含む。水に結合した水素が、空間充填剤の役割を果たすことにより、斜方晶二水和物から歪められた単斜晶系二水和物へ作用する潜在的な構造範囲を得ることができる可能性がある。この単結晶構造から計算されたXRPDパターンを図8に示し、このパターンは図2に示される実験のパターンと一致した。これらの一致したパターンは、2型がシクロスポリンAの独特かつ純粋な結晶形であることをさらに裏付ける。
【0018】
理論に拘束されるものではないが、KF滴定および蒸気収脱着解析(VSA)と組み合わせた熱重量解析は、CsA2型が、CsAの不定比水和物であることを示唆している。シクロスポリン2型の蒸気収着解析は、図3に示されるように、新規の結晶形内の水含量が、それぞれ相対湿度により変動することが示される。正方晶と同様に、新規のCsA形は、モジュレイテッド示差走査熱量測定(MDSC)解析により示される融点より前の124.4℃で、液晶または非晶形へと変換する段階を経験する(図4)。
【0019】
シクロスポリンA2型は、0.05%のシクロスポリン(w/v)を含む1%のポリソルベート80を懸濁し、65℃までこの溶液を加熱し、24時間、同一の温度で保存し、真空濾過により沈殿を回収することにより得られてもよい。その後、さらなる量を作製するために、種晶としてシクロスポリンA2型を使用して、シクロスポリンA2型を得ることができる。この方法では、約30gのシクロスポリンAを1%(w/v)のポリソルベート80を含む900mlの水に懸濁し、この溶液を65℃まで加熱し、52℃の温度で、0.2gのシクロスポリンA2型の種を得ることができる。その後、この溶液を、61℃〜65℃で約22時間撹拌し、その結果として得られる沈殿を回収する。
【0020】
CsA2型に関するさらなる詳細は、米国特許出願第13/480,710号に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0021】
シクロスポリンA2型の持続作用型製剤
本発明の組成物は、眼科的に許容可能なシクロスポリンA2型の製剤である。「眼科的に許容可能な」ことにより、本発明は、ヒトなどのほ乳類の眼に投与される際に、非刺激性となるように、懸濁液を製剤化することを意味する。
【0022】
本発明の製剤は、シクロスポリンA2型と、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびカルボキシメチルセルロースなどのヒドロゲルとを含む。
【0023】
一実施形態において、本製剤は、約0.001%〜約10%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型を含む。一実施形態において、この懸濁液は、約0.001%〜約0.01%(w/v)、約0.001〜約0.04%(w/v)、約0.001%〜約0.03%(w/v)、約0.001〜約0.02%(w/v)、または約0.001%〜約0.01%(w/v)の濃度でシクロスポリン2型を含む。別の実施形態において、この懸濁液は、約0.01%〜約0.05%(w/v)、約0.01%〜約0.04%(w/v)、約0.01%〜約0.03%(w/v)、約0.01%〜約0.02%(w/v)、または約0.01%〜約0.01%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型を含む。別の実施形態において、この懸濁液は、約0.01%〜約0.1%(w/v)、約0.1%〜約0.5%(w/v)、約0.01%〜約1%(w/v)、または約1%〜約10%(w/v)の濃度のシクロスポリンA2型の濃度のシクロスポリンA2型を含む。
【0024】
たとえば、本製剤は、約0.001%(w/v)、約0.002%(w/v)、約0.003%(w/v)、約0.004%(w/v)、約0.005%(w/v)、約0.006%(w/v)、約0.007%(w/v)、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.015%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.025%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.035%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.045%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.055%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.065%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.075%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.085%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.095%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.15%(w/v)、約0.2(w/v)、約0.25%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.35%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.45%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.55%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.65%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.75%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.85%(w/v)、約0.9%(w/v)、約0.95%(w/v)、または約1.0%(w/v)のシクロスポリンA2型を含んでもよい。
【0025】
治療方法
本発明の製剤を、(Restasis(登録商標)などの)シクロスポリンAでの局所治療に受け入れられることが知られているいずれかの眼の状態を治療するために本明細書に記載される濃度で使用してもよい。たとえば、本発明の組成物を使用して、ドライアイを患う患者を治療し、眼瞼炎およびマイボーム腺疾患を治療し、眼の屈折矯正手術のために損傷した角膜知覚を回復させ、アレルギー性結膜炎ならびにアトピー性角結膜炎および春季カタルを治療し、翼状片(ptyregia)、結膜および角膜の炎症、角結膜炎、移植片対宿主病、移植後の緑内障、角膜移植、真菌性角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、ブドウ膜炎、およびセオドア性(Theodore)上輪部角結膜炎や、その他の状態を治療してもよい。
【0026】
国際ドライアイ研究会(DEWS)は、ドライアイを「涙液膜の浸透圧の増加および眼の表面の炎症により引き起こされる不快感、視覚障害、および眼の表面に対する潜在的な損傷を伴う涙液膜の不安定性の症状を起こす涙および眼の表面の多因子性疾患」と定義した。この定義は、涙の不足または過度の涙の蒸発により引き起こされる乾性角結膜炎
などの状態を含む。
【0027】
眼瞼炎は、皮膚および皮膚に関連する構造(髪および脂腺)、粘膜皮膚移行部、ならびにマイボーム腺に関与する前部および後部の瞼の境界の炎症を産生する慢性障害である。また、進行期では、結膜、涙液膜、および角膜表面にも影響を与えることができ、ドライアイに関連してもよい。眼瞼炎は、一般的、前部眼瞼炎と後部眼瞼炎とに分類され、前部眼瞼炎は、瞼の睫毛固定領域に影響を与え、後部眼瞼炎は瞼板の腺開口部に影響を与える。
【0028】
マイボーム腺疾患は、原発性マイボーム腺炎、二次マイボーム腺炎、およびマイボーム脂漏症といった3つの形の内の1つとして最もよく起こり得る。マイボーム脂漏症は、炎症の存在しない状態での過度のマイボーム腺の分泌(分泌過剰なマイボーム腺疾患)により特徴付けられる。対照的に、原発性マイボーム腺炎は、停滞し濃縮したマイボーム腺分泌(妨害型分泌過剰マイボーム腺疾患)により区別される。二次性マイボーム腺炎は、マイボーム腺が、前部の眼瞼縁の眼瞼炎から斑状の形で二次的に炎症が起こる。
【0029】
角膜知覚の機能不全は、多くはレーザー屈折矯正角膜切除術、レーザー照射による角膜上皮下の切除(LASEK)、EPI−LASEK、注文に応じた上皮の非接触式切除、または角膜の神経が重篤となる他の手順などの屈折矯正手術後に起こる。また、角膜知覚の機能不全は、HSV−1、HSV−2、およびVZVウイルスなどのウイルス感染後に起こり得る。角膜知覚の機能不全を伴う患者は、涙の産生および蒸発は正常であるにも関わらず、角膜の神経が、外科手術またはウイルス感染の炎症により重篤となる際に起こる角膜の神経障害の急性的な形態であるような「乾き」を示唆する眼の乾燥感を感じる。
【0030】
アレルギー性結膜炎は、1つ以上のアレルゲンに対する過敏症から生じる結膜の炎症であり、急性、断続性、または慢性であってもよい。季節性、すなわち、1年のうちの一定期間起こるか、または常時、すなわち通年で慢性的に起こる。季節性および通年制のアレルギー性結膜炎の症状は、結膜炎の炎症に加えて、流涙、涙(tearing)、結膜の血管拡張、痒み、乳頭増殖、結膜浮腫、眼瞼浮腫、および眼からの眼脂を含む。この眼脂は、就寝後、眼の上方にかさぶたを形成してもよい。
【0031】
アトピー性角結膜炎は、しばしば視力障害を引き起こす、慢性的、重篤な形体のアレルギー性結膜炎である。症状は、痒み、炎症(burning)、疼痛、発赤、異物感、光知覚、およびかすみ目を含む。眼脂、特に、夜の睡眠から目覚めるほどの眼脂が症状として現れることが多い。この眼脂は、粘質であり、粘着性かつ粘液性であってもよい。下部の結膜は、しばしば上部の結膜よりも顕著に影響を受ける。この結膜は、乳頭増殖、上皮下線維症、結膜円蓋短縮化(formix foreshortening)、睫毛乱生、眼瞼内反および睫毛欠損を含む、進行性疾患の特徴を有する、蒼白であり、浮腫状の範囲であってもよい。一部の患者では、この疾患は、点状上皮性角膜症(punctate epithelial erosions)、角膜血管新生、および視覚を損ない得る他の特性の角膜症へと進行する。典型的には、結膜の杯状細胞増殖、上皮偽管状形成、及び上皮中の脱顆粒する好酸球及びマスト細胞の増大がある。CD25+Tリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞(HLA−DR.sup.+, HLA−CD1+)は、角膜固有質で優位に増加する。
【0032】
アトピー性角結膜炎のように、春季カタルは、重篤な形のアレルギー性結膜炎であるが、下部結膜よりも上部結膜により顕著に影響を与える傾向がある。春季カタルは2つの形態で起こる。眼瞼の形態では、四角状であり、固く、平坦状に固まった乳頭が存在し、眼球(角膜縁)の形態では、角膜周囲の結膜が、肥大し、灰白色となる。両方の形が、粘液分泌によりしばしば得られる。角膜上皮の損失は、疼痛および羞明により発症または併発してもよく、同様に、中心の角膜プラーク形成およびトランタス点が発症または併発されてもよい。
【0033】
投与
本発明の製剤を、結膜下腔に投与する。本明細書に使用されるように、「結膜下腔」は、以下の、(1)眼球結膜およびテノン鞘の間ならびに角膜縁から円蓋まで延びる潜在的な空間、(2)眼瞼結膜および瞼板の間ならびに眼瞼の境界(眼瞼の皮膚粘膜結合部)から円蓋まで延びる潜在的な空間、ならびに(3)結合部(junctional bay)または円蓋での円蓋部結膜下方の潜在的な空間のうちのいずれかを意味する。この結膜下腔は、ちょうど目の縁から結膜の下方、円蓋周辺、眼瞼の境界までの潜在的な空間である。
【0034】
図5を参照すると、眼周辺の結膜下腔を、上位、鼻側、下位、耳側の四分円に分割することができる。これらの四分円は、こめかみの上、鼻の上、鼻の下、および頭の下(inferior temporal)などのさらなる四分円に分割してもよい。したがって、本発明の製剤は、たとえば、眼球の結膜下腔のこめかみの上の四分円に、または眼球、眼瞼、もしくは円蓋の結膜下腔の上位、鼻側、下位、もしくは耳側の四分円のいずれか1つ以上に、またはこめかみの上、鼻の上、頭の下、もしくは鼻の下の眼球、眼瞼、もしくは円蓋の結膜下腔に投与してもよい(図6および7)。したがって、さらに限定されない限り、眼の「結膜下腔」内への投与は、眼の4つの四分円(上位、鼻側、下位、耳側)のうちのいずれか1つ、または眼球、眼瞼、もしくは円蓋の結膜下腔のこめかみの上、鼻の上、頭の下、もしくは鼻の下の領域を含む目の潜在的なさらなる四分円のうちのいずれか1つの眼球、眼瞼、および/もしくは円蓋の結膜下腔内への投与を意味する。
【0035】
一実施形態において、結膜下腔は、角膜の上、下、または内部と直接つながる領域または空間を含まないため、本発明の製剤の投与は、眼の表面または特に角膜への(点眼薬などの)局所送達を除外する。別の実施形態において、結膜下腔への投与は、テノン鞘または強膜を貫通または穿孔し、強膜から硝子体へと貫通または延び、または強膜の下方へと送達される送達方法をさらに除外する。本明細書で使用される「結膜下腔」は、「テノン下腔(sub−tenon space)」と同じではない。テノン鞘は薄く、線維性である、何等かの弾性を有する膜であり、角膜の縁(角膜縁)から視神経までの眼球を覆う、結膜の下方の膜である。この膜は強膜にゆるく付着する。したがって、テノン下腔は、テノン鞘および強膜の間にある。眼への組成物のテノン下投与は、概してピンセットを使用し、強膜およびテノン鞘の間に本組成物を導入することにより、結膜およびテノン鞘を高めることを含む。針およびシリンジを使用して、テノン鞘を突き抜け、テノン下腔内に本組成物を注入してもよい。
【0036】
一実施形態において、眼の結膜下腔に本発明の製剤を投与する装置は、針またはカニューレを備え付けたシリンジである。眼の結膜下腔内に眼用の組成物を注入するために使用される針またはカニューレは、20ゲージ以上の針またはカニューレとすることができる。この針またはカニューレは、鈍角または斜角の端部を有していてもよい。好ましい実施形態において、本方法で使用される針またはカニューレのゲージは、25ゲージ以上の針もしくはカニューレ、または特に、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34ゲージの針もしくはカニューレである。
【0037】
治療を必要とする対象の眼の表面付属器の眼の表面炎症を治療する本方法の一実施形態において、本発明の製剤を、以下の手順に従って眼の結膜下腔に注入(すなわち、投与する)。対象が術者と対面し、術者は、親指(またはピンセットなどの装置)を使用して、結膜下腔内への注入を、四分円の上位(たとえばこめかみの上)、または下位のいずれで行うかどうかに応じて、眼瞼の上部または下部を縮める。例として、図2を参照されたい。他方では、術者は、眼球に向かって針の角が眼球に正接した(組成物を含むシリンジと付着した)針を配置する。特定の例では、角を上に向ける(すなわち、眼球から離す)ように方向付けることが好ましくてもよい。針を眼球に正接したまま、そっと針を刺すことにより、術者は、針を後側の結膜の下方に向け、結膜下腔内に導入する。その後、望ましい量の組成物を結膜下腔に注入する。注入される量によっては、組成物が、結膜中の持ち上がりまたは膨らみとして確認できることがある。針はその後引き抜かれる。ガーゼパッドを使用して眼に圧力をかけ、本組成物を分配または拡散することを助け、出血する可能性を止めてもよい。
【0038】
特定の実施形態において、本発明の製剤を注入する前に、同じの手順を使用して、眼の結膜下腔内へ麻酔剤を導入してもよい。この麻酔溶液は、結膜中で上昇または膨隆してもよい。この手順が伴う場合、麻酔剤が効果を発揮した後、本組成物を、結膜の上昇した部分に注入するが、麻酔を注入するために使用される領域以外の部位には注入しない。一部の実施形態において、本発明の製剤のさらなる用量を、上述に概要が記述されたものと同一の手順を使用して、鼻側および/または下位(たとえば、頭の下側)の結膜下腔内に注入してもよい。
【0039】
あるいは、眼の結膜下腔内に、本組成物を注入する前に、片眼または両眼に、眼の麻酔薬を局所的に適用してもよい。また、本組成物の結膜下腔への投与後に鎮痛剤を投与してもよい。鎮痛剤は、3倍抗生剤軟膏(triple antibiotic ointment)、あるいはアトロピン点眼剤または軟膏を含む。
実施例
【0040】
本発明は、以下の実施例によりさらに詳細に示される。
【0041】
本発明者らの実施により、22ゲージの針を介して送達する際、シクロスポリンAを含む生分解性植込物が、局所的なシクロスポリンAが、治療する際に効果的であることがと記述されているか知られている対象の、眼の状態を効果的に治療するために十分な期間にわたり、治療に十分な薬剤を送達しないことが示唆される。
【0042】
本発明者らは、以下の製剤を調製し、ウサギの眼に注入した。
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8