【文献】
Gupta-Bansal, R., et al.,Inhibition of complement alternative pathway function with antiproperdin monoclonal antibodies,Molecular Immunology,2000年,37,191-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の処置に代わるまたは補うAMD、特に萎縮型AMDの有効な処置の開発がまだ必要とされている。特に、視力喪失の早期発見、予防または回復を提供できる処置への必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、ヒトまたはカニクイザルP因子に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、該抗体はTSR5ドメイン(配列番号406)と結合する。例えば、ここに記載する抗体または抗原結合フラグメントは配列番号407の配列を含むTSR5ドメインの領域に結合し、より具体的に該抗体はまたアミノ酸配列KSISC(配列番号408)を含むP因子TSR5ドメインの領域とも結合する。ある態様において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号407のアミノ酸配列を含むP因子エピトープと結合する。他の態様において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号408のアミノ酸配列を含むP因子エピトープに結合する。
【0008】
ここに記載する単離抗体または抗原結合フラグメントは、P因子に1.2nM以下のKDで結合する。例えば、ここに記載する単離抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトまたはカニクイザルP因子と、1.1nM以下、1nM、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、100pM以下、75pM以下、50pM以下、40pM以下、30pM以下、20pM以下または10pM以下のKDで結合し得る。
【0009】
ここに記載する単離抗体および抗原結合フラグメントの結合親和性は、溶液平衡滴定(SET)により決定できる。SETの方法は当分野で知られ、詳細は後記する。あるいは、ここに記載する単離抗体またはフラグメントの結合親和性をBiacoreアッセイにより決定できる。Biacore動態アッセイの方法は当分野で知られ、詳細は後記する。
【0010】
ここに記載する単離抗体および抗原結合フラグメントは代替補体経路阻害に使用できる。例えば、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、インビトロ溶血アッセイで測定して、25nM以下、20nM以下、16nM以下、15nM以下、14nM以下、13nM以下、12nM以下、11nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。より具体的に、ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、インビトロ溶血アッセイで測定して、16nM以下または9nM以下のIC
50でヒトにおける代替補体経路を阻害できる。
【0011】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、インビトロC3b沈着アッセイで測定して、10nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、15nM以下、1nM以下、0.5nM以下または0.1nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。より具体的に、ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、インビトロC3b沈着アッセイで測定して、3nM以下または2nM以下のIC
50でヒトにおける代替補体経路を阻害できる。
【0012】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、補体膜侵襲複合体の沈着により測定して25nM以下、20nM以下、15nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下または6nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。より具体的に、ここに記載する単離抗体またはそのフラグメントは、補体膜侵襲複合体の沈着で測定して、25nM以下または7.5nM以下のIC
50でヒトにおける代替補体経路を阻害できる。
【0013】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、C3aの産生で測定して、80nM以下、50nM以下、45nM以下または35nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。
【0014】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、iC3bの産生で測定して、80nM以下、50nM以下、45nM以下または35nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。
【0015】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまたC5aの産生で測定して、80nM以下、50nM以下、45nM以下または35nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。
【0016】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、C5bの産生で測定して、80nM以下、50nM以下、45nM以下または35nM以下のIC
50で代替補体経路を阻害できる。
【0017】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、C3a、C3b、iC3b、C5aおよび/またはC5bの産生減少で測定して、C3および/またはC5コンバターゼの不安定化および/または活性遮断により代替補体経路を阻害できる。
【0018】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、C5aの産生を80nM以下、50nM以下、45nM以下または35nM以下のIC
50で阻害できる。
【0019】
単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまたP因子のC3bへの結合を遮断および/またはP因子が細胞表面またはDNAもしくはオリゴヌクレオチドに結合するのを阻止し得る。
【0020】
本発明の他の面は、ヒト、カニクイザル、ラットおよび/またはウサギP因子と特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。さらなる面において、単離抗体または抗原結合フラグメントは、表1に記載する抗体または抗原結合フラグメントと結合について競合する。
【0021】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ヒトまたはヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、Fvフラグメント、F(ab’)2フラグメントまたはScFvフラグメントおよび/またはIgGアイソタイプであり得る。
【0022】
ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまたアミノ酸が抗体フレームワーク内で各ヒトVHまたはVL生殖系列配列から置換されているフレームワークも含む。
【0023】
本発明の他の面は、表1に記載する重鎖および軽鎖配列を有する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。例えば、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967、NVS962−G、NVS962−S、NVS962−T、NVS962−Q、NVS962−S31A、NVS965−Q、NVS965−S、NVS965−T、NVS804、NVS805、NVS806、NVS807またはNVS808の重鎖および軽鎖配列を有し得る。
【0024】
本発明の他の面は、表1に記載するFabの重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を有する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。例えば、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967、NVS962−G、NVS962−S、NVS962−T、NVS962−Q、NVS962−S31A、NVS965−Q、NVS965−S、NVS965−T、NVS804、NVS805、NVS806、NVS807またはNVS808の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を有し得る。
【0025】
本発明はまた、配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253および267から成る群から選択される重鎖CDR1;配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254および268から成る群から選択される重鎖CDR2;および配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255および269か
ら成る群から選択される重鎖CDR3を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、単離抗体またはその抗原結合フラグメントはヒトP因子に結合する。他の面において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントはさらに配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270から成る群から選択される軽鎖CDR1;配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271から成る群から選択される軽鎖CDR2;および配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272から成る群から選択される軽鎖CDR3を含む。
【0026】
本発明はまた、配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270から成る群から選択される軽鎖CDR1;配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271から成る群から選択される軽鎖CDR2;および配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272から成る群から選択される軽鎖CDR3を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントtに関し、ここで、単離抗体またはその抗原結合フラグメントはヒトP因子に結合する。
【0027】
本発明はまた、HCDR1、HCDR2、HCDR3およびLCDR1、LCDR2、LCDR3を有するP因子と結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号1、2、3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号4、5、6を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3およびLCDR1、LCDR2、LCDR3、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号15、16、17を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号18、19、20を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号29、30、31を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号32、33、34を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号43、44、45を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号46、47、48を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号57、58、59を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号60、61、62を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3、ここで、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号71、72、73を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号74、75、76を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号85、86、87を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号88、89、90を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号99、100、101を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号102、103、104を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号113、114、115を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号116、117、118を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号127、128、129を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号130、131、132を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号141、142、143を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号144、145、146を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号155、156、157を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号158、159、160を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号169、170、171を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号172、173、174を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号183、184、185を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号186、187、188を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号197、198、199を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号200、201、202を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号211、212、213を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号214、215、216を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号225、226、227を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号228、229、230を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号239、240、241を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号242、243、244を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号253、254、255を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号256、257、258を含むか;またはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、HCDR3は配列番号267、268、269を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3は配列番号270、271、272を含む。
【0028】
本発明の一つの態様において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む。他の態様において、単離抗体または抗原結合フラグメントはさらに軽鎖可変ドメイン配列を含み、ここで、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは一体となってP因子のための抗原結合を形成する。さらなる態様において単離抗体または抗原結合フラグメントはさらに配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含み、ここで、該単離抗体またはその抗原結合フラグメントはP因子と結合する。
【0029】
本発明はまた配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、該単離抗体またはその抗原結合フラグメントはヒトP因子と結合する。一つの態様において、単離抗体または抗原結合フラグメントはさらに重鎖可変ドメイン配列を含み、ここで、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは一体となってP因子のための抗原結合を形成する。
【0030】
本発明の他の態様において、P因子と結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号7および8;21および22;35および36;49および50;63および64;77および78;91および92;104および105;118および119;132および133;146および147;160および161;174および175;188および189;202および203;216および217;230および231;244および245;258および259;または272および273の配列を含む重鎖および軽鎖可変ドメインを含み得る。
【0031】
本発明は、さらに、配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する重鎖可変ドメインを含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、該抗体はP因子と結合する。一つの面において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択される配列と少なくとも95%配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0032】
他の態様において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含み、ここで、該抗体はP因子と結合する。
【0033】
他の態様において、P因子と結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275の配列を含む重鎖を有し得る。さらなる態様において、単離抗体は、また重鎖と一体となってヒトP因子への抗原結合部位を形成できる軽鎖も含む。さらなる態様において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276を含む配列を有する軽鎖を含む。
【0034】
本発明は、さらに、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261および275から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する重鎖を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、該抗体はP因子と結合する。一つの面において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントはまた配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262および276から成る群から選択される配列と少なくとも95%配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0035】
本発明は、さらに、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261および275から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する軽鎖を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関し、ここで、該抗体はP因子と結合する。
【0036】
本発明はまた、ここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物に関し、また薬学的に許容される担体と組み合わせた抗体組成物に関する。具体的に、本発明は、さらに、例えば抗体NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967、NVS962−G、NVS962−S、NVS962−T、NVS962−Q、NVS962−S31A、NVS965−Q、NVS965−S、NVS965−T、NVS804、NVS805、NVS806、NVS807またはNVS808のような表1の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物に関する。本発明はまた表1の単離抗体またはその抗原結合フラグメントの2個以上の組み合わせを含む医薬組成物にも関する。
【0037】
本発明はまた、配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する重鎖可変ドメインを含むポリペチドをコードする配列を含む単離核酸に関する。
【0038】
本発明はまた、配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択される配列と少なくとも90%配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含むポリペチドをコードする配列を含む単離核酸に関する。
【0039】
本発明はまた、ここに記載する核酸分子の1個以上を含むベクターにも関する。
【0040】
本発明はまた、上記抗体の重鎖をコードする組み換えDNA配列および上記抗体の軽鎖をコードする第二組み換えDNA配列を含む単離宿主細胞に関し、ここで、該DNA配列はプロモータと操作可能に結合し、宿主細胞中で発現できる。抗体がヒトモノクローナル抗体であり得ることが意図される。宿主細胞が非ヒト哺乳動物細胞であり得ることも意図される。
【0041】
本発明はまた補体介在細胞死の阻害方法に関し、ここで、該方法は、細胞をここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物の有効量と接触させる過程を含む。細胞がヒト細胞であることが意図される。さらに細胞が対象内にあることが意図される。さらに対象がヒトであることが意図される。
【0042】
本発明は、さらに、細胞における代替補体経路の阻害方法に関し、ここで、該方法は、細胞をここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物の有効量と接触させる過程を含む。一つの面において、細胞がヒト細胞であることが意図される。さらに細胞が対象内にあることが意図される。さらに対象がヒトであることが意図される。
【0043】
本発明はまた細胞における膜侵襲複合体の形成阻害方法に関し、ここで、該方法は、細胞をここに記載する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物の有効量と接触させる過程を含む。細胞がヒト細胞であることが意図される。さらに細胞が対象内にあることが意図される。さらに対象がヒトであることが意図される。
【0044】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントはモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり得る。
【0045】
一つの面において、本発明はP因子と結合する第一抗体またはその抗原結合フラグメントおよびC5と結合する第二抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、該組み合わせは代替補体経路を阻害する。一つの面において、第一および第二抗体は組成物として組み合わせてよい。
【0046】
このような組み合わせは、眼炎症阻止に使用できる。眼炎症は網膜における好中球集積および/またはマクロファージ動員の測定により決定できる。
【0047】
一つの面において、このような組み合わせを網膜における好中球集積または網膜におけるマクロファージ動員の阻害に使用できる。
【0048】
一つの面において、このような組み合わせにおけるP因子と結合する抗体は配列番号408を含むP因子の領域と結合する。あるいはまたは組み合わせにおいて、このような抗体は配列番号407を含むP因子の領域と結合する。
【0049】
さらなる面において、P因子およびC5と結合する抗体またはその結合フラグメントの組み合わせは、表1から選択される第一抗体または抗原結合フラグメントおよび表2から選択される第二抗体または抗原結合フラグメントを含む。一つの面において、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは表1に記載の抗体と同じエピトープに結合し、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは、表2に記載する抗体と同じエピトープに結合する。
【0050】
一つの面において、本発明は、a)それぞれ配列番号1、2および3に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号4、5および6に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;b)それぞれ配列番号15、16および17に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号18、19および20に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;c)それぞれ配列番号29、30および31に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号32、33および34に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;d)それぞれ配列番号43、44および45に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号46、47および48に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;e)それぞれ配列番号57、58および59に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号60、61および62に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;f)それぞれ配列番号71、72および73に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号74、75および76に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;g)それぞれ配列番号85、86および87に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号88、89および90に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;h)それぞれ配列番号99、100および101に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号102、103および104に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;i)それぞれ配列番号113、114および115に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号116、117および118に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;j)それぞれ配列番号127、128および129に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号130、131および132に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;k)それぞれ配列番号141、142および143に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号144、145および146に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;l)それぞれ配列番号155、156および157に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号158、159および160に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;m)それぞれ配列番号169、170および171に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号172、173および174に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;n)それぞれ配列番号183、184および185に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号186、187および188に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;o)それぞれ配列番号197、198および199に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号200、201および202に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;p)それぞれ配列番号211、212および213に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号214、215および216に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;q)それぞれ配列番号225、226および227に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号228、229および230に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;r)それぞれ配列番号239、240および241に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号242、243および244に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;s)それぞれ配列番号253、254および255に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号256、257および258に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;およびt)それぞれ配列番号267、268および269に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号270、271および272に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3から成る群から選択される重鎖CDR1、2、3および軽鎖CDR1、2、3を含む第一抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは、a)それぞれ配列番号410、411および412に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号413、414および415に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;b)それぞれ配列番号426、427および428に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号429、430および431に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;c)それぞれ配列番号442、443および444に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号445、446および447に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;d)それぞれ配列番号426、458および428に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号429、430および459に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3;およびe)それぞれ配列番号470、471および472に示す重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3およびそれぞれ配列番号473、474および475に示す軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3から成る群から選択される重鎖CDR1、2、3および軽鎖CDR1、2、3を含む。
【0051】
一つの面において、本発明は、第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)に関し、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号7および8;配列番号21および22;配列番号35および36;配列番号49および50;配列番号63および64;配列番号77および78;配列番号91および92;配列番号105および106;配列番号119および120;配列番号133および134;配列番号147および148;配列番号161および162;配列番号175および176;配列番号189および190;配列番号203および204;配列番号217および218;配列番号231および232;配列番号245および246;配列番号259および260;または配列番号273および274と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号416および417;配列番号432および433;配列番号448および449;配列番号460および461;または配列番号476および477と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含む。
【0052】
一つの面において、本発明は、第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)に関し、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号7および8;配列番号21および22;配列番号35および36;配列番号49および50;配列番号63および64;配列番号77および78;配列番号91および92;配列番号105および106;配列番号119および120;配列番号133および134;配列番号147および148;配列番号161および162;配列番号175および176;配列番号189および190;配列番号203および204;配列番号217および218;配列番号231および232;配列番号245および246;配列番号259および260;または配列番号273および274から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号416および417;配列番号432および433;配列番号448および449;配列番号460および461;または配列番号476および477から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖可変領域を含む。
【0053】
さらなる面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、(a)第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259または273を含む重鎖可変領域およびさらに軽鎖可変領域を含み、ここで、該重鎖可変領域および該軽鎖可変領域は一体となってP因子への抗原結合部位を形成し、(b)第二抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号416、432、448、460または476を含む重鎖可変領域およびさらに軽鎖可変領域を含み、ここで、該重鎖可変領域および該軽鎖可変領域は一体となってC5への抗原結合部位を形成する。さらなる面において、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260または274の軽鎖可変領域配列を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号417、433、449、461または477の軽鎖可変領域配列を含む。
【0054】
さらなる面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、(a)第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260または274を含む軽鎖可変ドメインおよびさらに重鎖可変ドメインを含み、ここで、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは一体となってP因子への抗原結合部位を形成し、(b)第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号417、433、449、461または477を含む軽鎖可変ドメインを含む軽鎖可変領域およびさらに重鎖可変ドメインを含み、ここで、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは一体となってC5への抗原結合部位を形成する。
【0055】
一つの面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、(a)第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275の重鎖およびさらに軽鎖を含み、ここで、重鎖および軽鎖は一体となってP因子への抗原結合部位を形成し、(b)第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号418、434、450、462または478の重鎖およびさらに軽鎖を含み、ここで、重鎖および軽鎖は一体となってC5への抗原結合部位を形成する。さらなる面において、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276の軽鎖を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号419、435、451、463または479の軽鎖を含む。
【0056】
一つの面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、(a)第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276の軽鎖およびさらに重鎖を含み、軽鎖および重鎖は一体となってP因子への抗原結合部位を形成し、(b)第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号419、435、451、463または479の軽鎖およびさらに重鎖を含み、軽鎖および重鎖は一体となってC5への抗原結合部位を形成する。
【0057】
一つの面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖およびさらに配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号418、434、450、462または478と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖およびさらに配列番号419、435、451、463または479と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0058】
さらなる面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖およびさらに配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、第二抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号418、434、450、462または478から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖およびさらに配列番号419、435、451、463または479から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0059】
さらなる面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号9および10、23および24、37および38、51および52、65および66、79および80、93および94、107および108、121および122、135および136、149および150、163および164、177および178、191および192、205および206、219および220、233および234、247および248、261および262または275および276と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含み;第二抗体またはその抗原結合フラグメントはそれぞれ配列番号418および419、434および435;450および451;462および463;または478および479と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む。
【0060】
さらなる面において、本発明は第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメント(これは組成物として組み合わさっていてよい)を含み、ここで、第一抗体またはその抗原結合フラグメントはそれぞれ配列番号9および10、23および24、37および38、51および52、65および66、79および80、93および94、107および108、121および122、135および136、149および150、163および164、177および178、191および192、205および206、219および220、233および234、247および248、261および262または275および276から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含み;第二抗体またはその抗原結合フラグメントはそれぞれ配列番号418および419、434および435;450および451;462および463;または478および479から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む。
【0061】
本発明は、さらに、上記第一および/または第二抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に関する。このような核酸配列をベクターに挿入でき、これを続いて、一つの面において、このような核酸配列を発現できる宿主細胞に包含させてよい。
【0062】
本発明は、さらに、対象における加齢性黄斑変性症の処置方法であって、該対象に、第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を単独でまたは組成物として組み合わせて投与することを含む、方法に関する。対象はヒトであり得る。
【0063】
本発明は、さらに、対象における代替補体経路の阻害方法であって、該対象に第一および第二抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を単独でまたは組成物として組み合わせて投与することを含む、方法に関する。対象はヒトであり得る。
【0064】
定義
特に断らない限り、ここで使用する全ての技術用語および科学用語は本発明が関与する分野の通常の技術者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0065】
ここで使用する用語“抗体”は、全抗体およびその任意の抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)または一本鎖を意味する。全抗体は、ジスルフィド結合により相互接続した少なくとも2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと略す)および重鎖定常領域から成る。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3ドメインから成る。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと略す)および軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域はCLである1ドメインから成る。VH領域およびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性の領域に分散した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分できる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に次のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で配置された3個のCDRおよび4個のFRから成る。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体活性化経路の第一補体(Clq)を含む宿主組織または因子への結合を介在し得る。
【0066】
ここで使用する抗体の“抗原結合部分”または“抗原結合フラグメント”なる用語は、ある抗原(例えば、P因子)と特異的に結合する能力を維持したインタクト抗体の1個以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、インタクト抗体のフラグメントにより実施できる。用語“抗体の抗原結合部分”または“抗原結合フラグメント”に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメイン;F(ab)
2フラグメントから成る一価フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2個のFabフラグメントを含む二価フラグメント;VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;抗体の一アームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;VHドメインまたはVLドメインから成る一ドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);および単離相補性決定領域(CDR)を含む。
【0067】
さらに、Fvフラグメントの2個のドメインであるVLおよびVHは別の遺伝子によりコードされているが、これらは、組み換え方法により、VLおよびVH領域が対となり一価分子を形成する、一タンパク質鎖として製造されることを可能とする人工ペプチドリンカーによりあわせることができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; and Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883参照)。このような一本鎖抗体は1個以上の抗体の抗原結合部分またはフラグメントを含む。これらの抗体フラグメントは当業者に知られる慣用法を使用して得て、フラグメントを、インタクト抗体と同様の方法で有用性についてスクリーニングする。
【0068】
抗原結合フラグメントはまた一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、細胞内抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、v−NARおよびビス−scFvにも含まれ得る(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136参照)。抗体の抗原結合部分はポリペチドに基づきスキャフォールド、例えばフィブロネクチンIII型(Fn3)に接木され得る(フィブロネクチンポリペチドモノボディを記載する米国特許番号6,703,199参照)。
【0069】
抗原結合フラグメントは、直列Fvセグメント(VH−CH1−VH−CH1)の対を含む一本鎖分子に包含され、相補的軽鎖ポリペチドと共に、抗原結合領域の対を形成し得る(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10):1057-1062;および米国特許番号5,641,870)。
【0070】
ここで使用する用語“親和性”は、一抗原性部位での抗体と抗原の相互作用の強度を意味する。各抗原性部位内で、抗体“アーム”の可変領域は、抗原と多くの部位で弱い非共有結合的力を介して相互作用し、相互作用が多いほど、親和性が強くなる。ここで使用するIgG抗体またはそのフラグメント(例えば、Fabフラグメント)に対する“高親和性”なる用語は、標的抗原に対して10
−8M以下、10
−9M以下または10
−10 Mまたは10
−11M以下または10
−12M以下または10
−13M以下のKDを有する抗体を意味する。しかしながら、高親和性結合は他の抗体アイソタイプで変わり得る。例えば、IgMアイソタイプに対する高親和性結合は、10
−7M以下または10
−8M以下のKDを有する抗体を意味する。
【0071】
用語“アミノ酸”は、天然に存在するおよび合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を意味する。天然に存在するアミノ酸は遺伝コードによりコードされるもの、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合したアルファ炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。このようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の方法で機能する化合物を意味する。
【0072】
ここで使用する用語“結合特異性”は、個々の抗体結合部位が唯一つの抗原性決定基と反応する能力を意味する。
【0073】
抗体(例えば、P因子結合抗体)に“特異的に(または選択的に)結合する”なる用語は、タンパク質および他の生物製剤の異種性集団における同族抗原(例えば、ヒトP因子またはカニクイザルP因子)の存在の決定因である結合反応を意味する。用語“抗原を認識する抗体”および“抗原に特異性の抗体”は、ここでは用語“抗原に特異的に結合する抗体”と同義に使用する。
【0074】
用語“黄斑変性症と関連する状態または障害”は、例えば、網膜黄斑の細胞の増殖減少、網膜黄斑の細胞の死または再編成増加(例えば、RPE細胞)、正常生物学的機能喪失またはこれらの事象の組み合わせの結果、網膜黄斑が変性するかまたは機能障害性となる、あらゆる数の状態を意味する。黄斑変性症は、正常網膜黄斑の細胞および/または細胞外マトリックスの組織構造の完全性喪失および/または網膜黄斑の細胞の機能喪失となる。黄斑変性症関連障害の例は、AMD、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底変性症、シュタルガルト病、パターンジストロフィー、ベスト病、優性ドルーゼンおよびMalattia Leventinese(放射状ドルーゼン)を含む。本用語はまた網膜黄斑機能不全および/または変性前または後に起こる黄斑外変化も包含する。それゆえに、用語“黄斑変性症関連障害”は、また網膜黄斑の完全性または機能を変化または障害させる状態(例えば、RPEまたはブルッフ膜への損傷)を広く含む。例えば、本用語は網膜剥離、脈絡網膜性変性症、網膜変性症、光受容体変性、RPE変性、ムコ多糖症、杆体錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィーおよび錐体変性を含む。
【0075】
用語“補体成分”、“補体タンパク質”または“補体成分タンパク質”は、補体系の活性化に関与する分子を意味する。古典的経路成分は、例えば、C1q、C1r、C1s、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9およびC5b−9複合体(膜侵襲複合体:MAC)を含む。代替経路成分は、例えば、因子B、因子D、因子H、因子Iおよびプロパージンを含む。
【0076】
用語“補体経路により制御される細胞活動”は、C5b−9攻撃複合体、血管透過性変化、平滑筋細胞収縮および遊走、T細胞増殖、免疫粘着性、樹状細胞、単球、顆粒球および血小板の凝集、好中球(PMN)およびマクロファージの食作用、遊走および活性化に由来する細胞損傷を含む。
【0077】
さらに、補体経路の活性は、補体経路の副産物が関与する炎症誘発性応答の増加をもたらす。補体経路の活性化と関連する障害は腎炎、喘息、再灌流傷害、血液透析、リウマチ性関節炎、全身性狼瘡、乾癬、多発性硬化症、移植、アルツハイマー病、aHUS、MPGN IIまたは何らかの他の補体介在疾患を含む。黄斑変性症と関連する障害は、AMD、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底変性症、シュタルガルト病、パターンジストロフィー、ベスト病、優性ドルーゼンおよびMalattia Leventinese(放射状ドルーゼン)、網膜黄斑の機能不全および/または変性の前または後に起こる黄斑外変化、網膜剥離、脈絡網膜性変性症、網膜変性症、光受容体変性、RPE変性、ムコ多糖症、杆体錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィーおよび錐体変性を含む。
【0078】
用語“キメラ抗体”は、(a)定常領域またはその部分が抗原結合部位(可変領域)が異なる別のクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域またはキメラ抗体に新規特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などと結合するように変更され、置き換えられまたは交換されている;または(b)可変領域またはその部分が異なるまたは変更された抗原特異性を有する可変領域に変更され、置き換えられまたは交換されている抗体分子を意味する。例えば、マウス抗体を、その定常領域をヒト免疫グロブリン由来定常領域で置き換えることにより修飾できる。ヒト定常領域での置換により、キメラ抗体は抗原認識におけるその特異性特異性を維持しながら、元のマウス抗体と比較してヒトにおける抗原性が減少している。
【0079】
用語“P因子タンパク質”または“P因子抗原”または“P因子”は同義に使用し、種々の種のP因子タンパク質を意味する。例えば、ヒトP因子は表1:配列番号401に示す配列を有する。ヒトP因子は、Complement Tech, Tyler, TXから得ることができる。カニクイザルP因子はカニクイザル血清から精製できる(Nakano et al., (1986) J Immunol Methods 90:77-83から適用させた方法)。他の種由来のP因子タンパク質の例を表1、配列番号402、403、404または405に示し、P因子タンパク質結合ドメインおよびフラグメント(例えば:配列番号406、407または408)も同様である。P因子は当分野で“プロパージン”としても知られる。
【0080】
用語“保存的修飾変異体”はアミノ酸および核酸配列のいずれにも使用する。特定の核酸配列に関して、保存的修飾変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸または核酸がアミノ酸配列をコードしないとき本質的に同一の配列を意味する。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸があるタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。それゆえに、アラニンがコードにより特定される全ての位置で、該コドンは、コードされるポリペチドを変えることなく、記載した対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸多様性は“サイレント多様性”であり、これは、保存的修飾多様性の1種である。ポリペチドをコードするここでの全ての核酸配列も、核酸の全ての可能なサイレント多様性を記載する。当業者は、核酸における各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGG以外)を修飾して、機能的に同一の分子が得られることを認識する。従って、ポリペチドをコードする核酸の各サイレント多様性は、記載した配列の各々に潜在する。
【0081】
ポリペチド配列に関して、“保存的修飾変異体”は、あるアミノ酸の化学的に類似のアミノ酸への置換を起こす、ポリペチド配列への個々の置換、欠失または付加を含む。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は当分野で周知である。このような保存的修飾変異体は本発明の多型変異体、種間相同体および対立遺伝子に加えられ、これらを除外しない。次の8群は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)参照)。ある態様において、用語“保存的配列修飾”は、該アミノ酸配列が包含される抗体の結合特徴に顕著に影響しないまたは変えないアミノ酸修飾をいうために使用する。
【0082】
用語“エピトープ”は、抗体と特異的に結合できるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面グルーピングから成り、通常特異的三次元構造的特徴、ならびに特異的電荷特徴を有し得る。立体構造的および非立体構造的エピトープは、前者への
結合が変性溶媒存在下で無くなるのに対し、後者は違う点で区別される。
【0083】
ここで使用する用語“ヒト抗体”は、フレームワークおよびCDR領域のいずれもヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体が定常領域を含むならば、定常領域はまたこのようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列またはヒト生殖系列配列突然変異型またはヒトフレームワーク配列分析由来のコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロで無作為または部位特異的変異によりまたはインビボで体細胞変異により導入された変異)。
【0084】
用語“ヒトモノクローナル抗体”は、フレームワークおよびCDR領域のいずれもヒト配列由来である可変領域を有する一結合特異性を示す抗体を意味する。一つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得たB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0085】
“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持するが、ヒトで免疫原性が低い抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を維持し、抗体の残りの部分をヒト対応物(すなわち、定常領域ならびに可変領域のフレームワーク部分)で置き換えることにより達成できる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991; and Padlan, Molec. Immun., 31:169-217, 1994参照。ヒト工学技術の他の例は、US5,766,886に開示するXoma技術を含むが、これらに限定されない。
【0086】
用語“同一パーセント”または“同一性パーセント”、2個以上の核酸またはポリペチド配列の状況で、同じである2個以上の配列または部分配列を意味する。2個の配列は、次の配列比較アルゴリズムの一つを使用してまたは手動整列および目視により測定して比較ウィンドウまたは指定領域で最大一致について比較し、整列したとき、2個の配列の特定のパーセンテージのアミノ酸残基またはヌクレオチドが同一であるならば、“実質的に同一”である(すなわち、特定の領域にわたりまたは特定していないとき、全配列にわたり60%同一性、所望により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一性)。所望により、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)長以上である領域、好ましくは100〜500または1000またはそれ以上のヌクレオチド(または20、50、200またはそれ以上のアミノ酸)である領域にわたり存在する。
【0087】
配列比較のために、典型的に1個の配列は参照配列として働き、それに対し試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であるならば、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用しても、別のパラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一パーセントを計算する。
【0088】
ここで使用する“比較ウィンドウ”は、配列を、2個の配列を最適に整列後同数の連続位置の参照配列と比較し得る、20〜600、通常約50〜約200、さらに一般的には約100〜約150から成る群から選択される連続位置の数のいずれか一つのセグメントも意味する。比較のための配列の整列方法は当分野で周知である。比較のための配列の最適整列は、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970の相同性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988の類似性方法の試験、これらのアルゴリズムのコンピュータでの実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手動整列および目視(例えば、 Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (Ringbou ed., 2003)参照)により実施できる。
【0089】
配列同一性パーセントおよび配列類似度決定に適切な二つのアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990にそれぞれ記載されている。BLAST解析実施用ソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初にクエリー配列中の短ワード長Wの同定により高スコア配列対(HSP)を同定し、これは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列したとき、ある正値閾値スコアTとマッチするかまたは充足する。Tは隣接ワードスコア閾値を意味する(Altschul et al., supra)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPの探索を開始するための種として作用する。ワードヒットは累積的整列スコアが増え続ける限り、各配列に沿って両方向に伸長する。累積的スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(整合残基対の報酬スコア;常に>0)およびN(不整合残基のペナルティスコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、スコア付けマトリクスを使用して、累積的スコアを計算する。各方向でのワードヒット伸長は、累積的整列スコアがその達成した最大価から数X落ちたとき、累積的スコアが1個以上の負のスコアの残基整列の集積により0以下になったときまたはいずれかの配列末端に達したとき停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、感受性および整列速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)はデフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3および期待値(E)10およびBLOSUM62スコア付けマトリクス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989参照)、整列(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。
【0090】
BLASTアルゴリズムはまた2配列間の類似度の統計学的分析も行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787, 1993参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似度の一つの指標は、2個のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間のマッチが偶然起こる確率の指標を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満および最も好ましくは約0.001未満であるならば、参照配列と類似であると見なす。
【0091】
2個のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用する、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, (1988) Comput. Appl. Biosci. 4:11-17のアルゴリズムを使用する。さらに、2個のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossom 62マトリクスまたはPAM250マトリクスおよびギャップ加重16、14、12、10、8、6または4および長さ加重1、2、3、4、5または6を使用する、GCGソフトウェアパッケージ(gcg.comのウェブサイトで入手可能)におけるGAPプログラムに組み込まれている、Needleman and Wunsch (J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970)アルゴリズムを使用して決定できる。
【0092】
上記配列同一性パーセンテージ以外に、2個の核酸配列またはポリペチドが実質的に同一との他の指標は、下記のとおり、第一核酸によりコードされるポリペチドが、第二核酸によりコードされるポリペチドに対して惹起した抗体と免疫学的に交差反応性であることである。それゆえに、ポリペチドは、例えば、2個のペプチドが保存的置換によってのみ異なるとき、第二ポリペチドと典型的に実質的に同一である。2個の核酸配列が実質的に同一である他の指標は、下記のとおり2個の分子またはそれらの補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2個の核酸配列が実質的に同一であるさらに他の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅できることである。
【0093】
用語“代替補体経路阻害”は、P因子抗体が代替補体経路活性化を妨害する能力を意味する。具体的に、“阻害”は、ここに記載する抗P因子抗体またはそのフラグメントと接触後、対照と比較して、細胞または対象におけるMAC形成、溶血アッセイまたはC3b沈着アッセイを含むここに記載する1個以上のアッセイで測定して、代替補体活性化における統計学的に有意な減少(すなわち、p<0.05)を意味する。ここで使用する“代替補体経路阻害”はまた、下記加齢性黄斑変性症と診断された患者における、ここに記載する抗P因子抗体での処置後の視覚機能または網膜解剖所見における臨床的に関連する改善も意味する。
【0094】
用語“単離抗体”は、異なる抗原性特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、P因子と特異的に結合する単離抗体は、P因子以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。P因子と特異的に結合する単離抗体は、しかしながら、他の抗原と交差反応し得る。さらに、単離抗体は他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0095】
用語“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4のようなIgG)を意味する。アイソタイプはまた、これらのクラスの修飾されたバージョンも言い、修飾はFc機能の変更、例えば、エフェクター機能またはFc受容体への結合を亢進または減少するために成されている。
【0096】
ここで使用する用語“K
assoc”または“K
a”は特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を意味し、一方、ここで使用する用語“K
dis”または“K
d”は特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味する。ここで使用する用語“K
D”は、K
d対K
a比(すなわちK
d/K
a)により得られる解離定数を言い、モル濃度(M)として表す。抗体のK
D値は、当分野で十分確立されている方法を使用して決定できる。抗体のK
Dを決定する方法は、Biacore
(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムの使用による表面プラズモン共鳴の測定または溶液平衡滴定(SET)による溶液中の親和性測定を含む。
【0097】
ここで使用する用語“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”は、一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する一結合特異性および親和性を示す。
【0098】
用語“核酸”は、ここでは用語“ポリヌクレオチド”と同義に使用し、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを意味する。本用語は、既知ヌクレオチドアナログまたは修飾された主鎖残基または結合を含み、合成され、天然に存在するおよび天然に存在せず、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の方法で代謝される核酸を意味する。このようなアナログの例は、ホスホロチオエート類、ホスホロアミデート類、メチルホスホネート類、キラル−メチルホスホネート類、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
特に断らない限り、特定の核酸配列はまたその保存的修飾変異体(例えば、コドン置換変性)および相補的配列、ならびに明示的に示す配列も潜在的に包含する。具体的に、下記のとおり、コドン置換変性は、1個以上の選択した(または全)コドンの3位が混合残基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列の産生により達成し得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985; and Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。
【0100】
用語“操作可能に結合”は、2個以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を意味する。典型的に、本用語は転写調節配列と転写配列との機能的関連を意味する。例えば、プロモータまたはエンハンサ配列は、適当な宿主細胞または他の発現系においてコーディング配列の転写を刺激または調節するならば、コーディング配列に操作可能に結合している。一般的に、転写配列に操作可能に結合しているプロモータ転写調節配列は、転写配列と物理的に連続しており、すなわち、それらはシス作用性である。しかしながら、ある転写調節配列、例えばエンハンサは、転写を促進するコーディング配列に物理的に連続しているか近接している必要はない。
【0101】
ここで使用する用語、“最適化”は、ヌクレオチド配列が、産生細胞または生物、一般的に真核細胞、例えば、ピキア属の細胞、トリコデルマ属の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように変えられていることを意味する。最適化ヌクレオチド配列は、“親”配列としても知られる出発ヌクレオチド配列により元々コードされていたアミノ酸配列を完全にまたは最大限残すように操作する。ここでの最適化配列は、哺乳動物細胞で好ましいコドンを有するように改変されている。しかしながら、他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適化発現もここでは想定される。最適化ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列も最適化と呼ぶ。
【0102】
用語“ポリペチド”および“タンパク質”は、ここでは同義にアミノ酸残基のポリマーをいうために使用する。本用語は、1個以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。特に断らない限り、特定のポリペチド配列はまたその保存的修飾変異体を潜在的に包含する。
【0103】
ここで使用する用語“組み換えヒト抗体”は、組み換え手段により製造、発現、調製または単離された全てのヒト抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)から単離された抗体またはそれらから調製されたハイブリドーマ、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、組み換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体およびヒト免疫グロブリン遺伝子の全てまたは一部のスプライシング、他のDNA配列に対する配列決定を含む他の手段により製造、発現、調製または単離された抗体を含む。このような組み換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を含む。ある態様において、しかしながら、このような組み換えヒト抗体はインビトロ突然変異誘発(またはヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物を使用するとき、インビボ体細胞突然変異誘発)に付し、それゆえに、組み換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V
HおよびV
L配列に由来し、関連はしているものの、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリーに天然に存在し得ない配列であり得る。
【0104】
用語“組み換え宿主細胞”(または単に“宿主細胞”)は、組み換え発現ベクターが導入されている細胞を意味する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も意味することを意図することは理解されるべきである。変異または環境的要因により後代である修飾が起こり得るため、このような子孫は、実際親細胞とは同一ではないかもしれないが、なおここで使用する用語“宿主細胞”の範囲には包含される。
【0105】
用語“対象”はヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は全ての脊椎動物(例えば:哺乳動物および非哺乳動物)、例えば、非ヒト霊長類(例えば:カニクイザル)、ヒツジ、イヌ、ウシ、トリ、両生類および爬虫類を含む。示していない限り、用語“患者”または“対象”はここでは同義に使用する。ここで使用する用語“cyno”または“カニクイザル”はカニクイザル(Macaca fascicularis)を意味する。
【0106】
ここで使用する何らかの疾患または障害(すなわち、AMD)を“処置する”または“処置”なる用語は、一つの態様において、疾患または障害の改善(すなわち、疾患またはその症状の少なくとも一つの進行の遅延または停止または減少)を意味する。他の態様において、“処置”または“処置する”は、患者により認識し得ないものを含む身体的パラメータの少なくとも1個の軽減または回復を意味する。さらに別の態様において、“処置”または“処置する”は、疾患または障害の、身体的(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメータの安定化)のいずれか、または両者の調節を意味する。さらに別の態様において、“処置”または“処置する”は、疾患または障害の予防または発症または進展または進行の遅延を意味する。“予防”は、AMDに関連する限り、悪化の危険性のある患者における、下記視覚機能、網膜解剖所見および/またはAMD疾患パラメータの悪化の予防または遅延をする何らかの作用を意味する。より具体的に、AMDの“処置”は、視覚機能および/または局所解剖所見の改善または保存をもたらす何らかの作用を意味する。疾患の処置および/または予防の評価方法は当分野で知られ、下に記載する。
【0107】
用語“ベクター”は、結合されている他のポリヌクレオチドの輸送ができるポリヌクレオチド分子をいうことを意図する。ベクターの一つのタイプは“プラスミド”であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントがライゲートし得る環状二本鎖DNAループを意味する。他のタイプのベクターはアデノ随伴ウイルスベクター(AAVまたはAAV2)のようなウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム内にライゲートし得る。ある種のベクターは、導入された宿主細胞内で自律増殖可能である(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞のゲノムに統合でき、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、操作可能に結合した遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターはここでは“組み換え発現ベクター”(または単に“発現ベクター”)と呼ぶ。一般に、組み換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。本明細書において、“プラスミド”および“ベクター”は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、同義に使用してよい。しかしながら、本発明は、同様の機能を有するウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のようなこのような他の形態の発現ベクターも含むことを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0109】
詳細な記載
本発明は、一部、ヒトおよびカニクイザルP因子の両方に特異的に結合する抗体分子の発見に基づく。本発明は、完全IgG形態抗体ならびにFabフラグメントのようなその抗原結合フラグメント(例えば、抗体NVS965−S、NVS962−S、NVS804およびNVS807参照)の両者に関する。
【0110】
したがって、本発明は、P因子(例えば、ヒトP因子、カニクイザルP因子、ラットP因子、ウサギP因子)と特異的に結合する抗体、医薬組成物、製造方法およびこのような抗体および組成物の使用方法を提供する。
【0111】
P因子抗体および抗原結合フラグメント
本発明は、P因子に特異的に結合する抗体を提供する。ある態様において、本発明は、ヒト、カニクイザル、ラットおよび/またはウサギP因子と特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、実施例に記載するとおりに単離されたヒトモノクローナル抗体およびFabsを含むが、これらに限定されない。
【0112】
本発明は、P因子タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と特異的に結合する抗体を提供し、ここで、抗体は配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259または273のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。本発明はまたP因子タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、ここで、抗体は下記表1に挙げるVH CDRのいずれか一つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、P因子タンパク質と特異的に結合する抗体(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)を提供し、ここで、抗体は、1個、2個、3個またはそれ以上の下記表1に挙げるVH CDRのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む(またはあるいは、これらから成る)。
【0113】
本発明は、P因子タンパク質と特異的に結合する抗体を提供し、該抗体は、配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260または274のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。本発明はまたP因子タンパク質と特異的に結合する抗体(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)を提供し、該抗体は、下記表1に挙げるVL CDRのいずれか一つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本発明はP因子タンパク質と特異的に結合する抗体(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)を提供し、該抗体は、1個、2個、3個またはそれ以上の下記表1に挙げるVL CDRのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む(またはあるいは、これらから成る)。
【0114】
他の本発明の抗体は、変異されているが、なおCDR領域において表1に記載する配列に示すCDR領域と少なくとも60、70、80、85、90または95%同一性を有するアミノ酸を含む。ある態様において、表1に記載する配列に示すCDR領域と比較したとき、CDR領域において1個、2個、3個、4個または5個までのアミノ酸が変異されている、変異体アミノ酸配列を含む。
【0115】
本発明はまた、P因子タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と特異的に結合する抗体のVH、VL、完全長重鎖および完全長軽鎖をコードする核酸配列も提供する。このような核酸配列は、哺乳動物細胞での発現について最適化できる(例えば、表1は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の最適化核酸配列を示す)。
【0151】
他の本発明の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が変異されているが、なお、表1に記載する配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90または95%同一性を有するものを含む。ある態様は、表1に記載する配列に示す可変領域と比較して可変領域において1個、2個、3個、4個または5個までのアミノ酸が変異しているが、実質的に同じ抗原結合活性を維持する変異体アミノ酸配列を含む。
【0152】
これらの抗体の各々がP因子と結合できるため、VH、VL、完全長軽鎖および完全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)は、本発明の他のP因子結合抗体を調製するために“混合および整合”させ得る。このような“混合および整合”したP因子結合抗体を、当分野で知られた結合アッセイ(例えば、ELISAおよび実施例セクションに記載する他のアッセイ)を使用して試験できる。これらの鎖を混合および整合するとき、特定のVH/VL対合からのVH配列を、構造的に類似するVH配列と置き換えなければならない。同様に特定の完全長重鎖/完全長軽鎖対合からの完全長重鎖配列を、構造的に類似する完全長重鎖配列と置き換えなければならない。同様に、特定のVH/VL対合からのVL配列を、構造的に類似するVL配列と置き換えなければならない。同様に特定の完全長重鎖/完全長軽鎖対合からの完全長軽鎖配列を、構造的に類似する完全長軽鎖配列と置き換えなければならない。従って、一つの面において、本発明は、配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択される重鎖可変ドメインおよび配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する単離抗体またはその抗原結合領域を提供し、ここで、抗体はP因子(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と特異的に結合する
【0153】
他の面において、本発明は、(i)配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261および275から成る群から選択される哺乳動物細胞での発現について最適化されているアミノ酸配列を含む完全長重鎖および配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262および276から成る群から選択される哺乳動物細胞での発現について最適化されているアミノ酸配列を含む完全長軽鎖を有する単離抗体;または(ii)その抗原結合部分を含む機能的タンパク質を提供する。
【0154】
ここで使用する用語“相補性決定領域”および“CDR”は、抗原特異性および結合親和性に関与する抗体可変領域内のアミノ酸配列を意味する。一般に、各重鎖可変領域に3個のCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)および各軽鎖可変領域に3個のCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。
【0155】
あるCDRの厳密なアミノ酸配列境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (“Kabat” numbering scheme), Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948 (“Chothia” numbering scheme)に記載のものを含む、多くの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定できる。
【0156】
例えば、Kabat下で、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基は31−35(HCDR1)、50−65(HCDR2)および95−102(HCDR3)と番号付けられ;軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基は24−34(LCDR1)、50−56(LCDR2)および89−97(LCDR3)と番号付けられる。Chothia下、VHのCDRアミノ酸は26−32(HCDR1)、52−56(HCDR2)および95−102(HCDR3)と番号付けられ;VLのアミノ酸残基は26−32(LCDR1)、50−52(LCDR2)および91−96(LCDR3)と番号付けられる。KabatおよびChothiaのCDR定義を組み合わせて、CDRは、ヒトVHにおいてアミノ酸残基26−35(HCDR1)、50−65(HCDR2)および95−102(HCDR3)およびヒトVLにおいてアミノ酸残基24−34(LCDR1)、50−56(LCDR2)および89−97(LCDR3)から成る。
【0157】
他の面において、本発明は、表1に記載する重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3またはこれらの組み合わせを含むP因子結合抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253または267に示す。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254または268に示す。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255または269に示す。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256または270に示す。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257または271に示す。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258または272に示す。これらのCDR領域はKabatシステムを使用して描かれる。
【0158】
あるいは、Chothiaシステム(Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948)を使用して規定して、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号281、287、293、299、305、311、317、323、329、335、341、347、353、359、365、371、377、383、389または395に示す。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号282、288、294、300、306、312、318、324、330、336、342、348、354、360、366、372、378、384、390または396に示す。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号283、289、295、301、307、313、319、325、331、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391または397に示す。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号284、290、296、302、308、314、320、326、332、338、344、350、356、362、368、374、380、386、392または398に示す。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号285、291、297、303、309、315、321、327、333、339、345、351、357、363、369、375、381、387、393または399に示す。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号286、292、298、304、310、316、322、328、334、340、346、352、358、364、370、376、382、388、394または400に示す。
【0159】
これらの抗体の各々がP因子と結合し、抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域により提供されることを考慮して、VH CDR1、2および3配列およびVL CDR1、2および3配列を“混合および整合”させ得る(すなわち、異なる抗体のCDRを混合および整合できるが、各抗体は、好ましくは本発明の他ののP因子結合分子を調製するVH CDR1、2および3およびVL CDR1、2および3を含む)。このような“混合および整合”したP因子結合抗体を、当分野で知られ、実施例に記載した結合アッセイ(例えば、ELISAs、SET、Biacore)を使用して試験できる。VH CDR配列を混合および整合するとき、特定のVH配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似するCDR配列と置き換えなければならない。同様にVL CDR配列を混合および整合するとき、特定のVL配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列置き換えなければならない。新規VHおよびVL配列を、本発明のモノクローナル抗体についてここに示すCDR配列からの構造的に類似する配列で1個以上のVHおよび/またはVL CDR領域配列を置換することにより調製できることは当業者には認識される。前記に加えて、一つの態様において、ここに記載する抗体の抗原結合フラグメントは、VH CDR1、2および3またはVL CDR 1、2および3を含むことができ、ここで、フラグメントは、一可変ドメインとしてP因子に結合する。
【0160】
本発明のある態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表1に記載するFabsの重鎖および軽鎖配列を有し得る。より具体的に、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967、NVS805、NVS806、NVS807、NVS808、NVS809、NVS962−S、NVS962−Q、NVS962−S31A、NVS962−G、NVS962−T、NVS965−S、NVS965−TまたはNVS965−Qの重および軽配列を有し得る。
【0161】
本発明の他の態様において、P因子と特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントは、Kabatにより規定され、表1に記載する重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2および軽鎖可変領域CDR3を含む。本発明のさらに別の態様において、P因子と特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントは、Chothiaにより規定され、表1に記載する重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2および軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0162】
具体的態様において、本発明は、配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号2の重鎖可変領域CDR2;配列番号3の重鎖可変領域CDR3;配列番号4の軽鎖可変領域CDR1;配列番号5の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号6の軽鎖可変領域CDR3を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号15の重鎖可変領域CDR1;配列番号16の重鎖可変領域CDR2;配列番号17の重鎖可変領域CDR3;配列番号18の軽鎖可変領域CDR1;配列番号19の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号20を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号29の重鎖可変領域CDR1;配列番号30の重鎖可変領域CDR2;配列番号31の重鎖可変領域CDR3;配列番号32の軽鎖可変領域CDR1;配列番号33の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号34を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号46の軽鎖可変領域CDR1;配列番号47の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号48を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号57の重鎖可変領域CDR1;配列番号58の重鎖可変領域CDR2;配列番号59の重鎖可変領域CDR3;配列番号60の軽鎖可変領域CDR1;配列番号61の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号62を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号71の重鎖可変領域CDR1;配列番号72の重鎖可変領域CDR2;配列番号73の重鎖可変領域CDR3;配列番号74の軽鎖可変領域CDR1;配列番号75の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号76を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号85の重鎖可変領域CDR1;配列番号86の重鎖可変領域CDR2;配列番号87の重鎖可変領域CDR3;配列番号88の軽鎖可変領域CDR1;配列番号89の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号90を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号99の重鎖可変領域CDR1;配列番号100の重鎖可変領域CDR2;配列番号101の重鎖可変領域CDR3;配列番号102の軽鎖可変領域CDR1;配列番号103の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号104を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号113の重鎖可変領域CDR1;配列番号114の重鎖可変領域CDR2;配列番号115の重鎖可変領域CDR3;配列番号116の軽鎖可変領域CDR1;配列番号117の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号118を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号127の重鎖可変領域CDR1;配列番号128の重鎖可変領域CDR2;配列番号129の重鎖可変領域CDR3;配列番号130の軽鎖可変領域CDR1;配列番号131の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号132を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号141の重鎖可変領域CDR1;配列番号142の重鎖可変領域CDR2;配列番号143の重鎖可変領域CDR3;配列番号144の軽鎖可変領域CDR1;配列番号145の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号146を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号155の重鎖可変領域CDR1;配列番号156の重鎖可変領域CDR2;配列番号157の重鎖可変領域CDR3;配列番号158の軽鎖可変領域CDR1;配列番号159の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号160を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号169の重鎖可変領域CDR1;配列番号170の重鎖可変領域CDR2;配列番号171の重鎖可変領域CDR3;配列番号172の軽鎖可変領域CDR1;配列番号173の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号174を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号183の重鎖可変領域CDR1;配列番号184の重鎖可変領域CDR2;配列番号185の重鎖可変領域CDR3;配列番号186の軽鎖可変領域CDR1;配列番号187の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号188を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号197の重鎖可変領域CDR1;配列番号198の重鎖可変領域CDR2;配列番号199の重鎖可変領域CDR3;配列番号200の軽鎖可変領域CDR1;配列番号201の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号202を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号211の重鎖可変領域CDR1;配列番号212の重鎖可変領域CDR2;配列番号213の重鎖可変領域CDR3;配列番号214の軽鎖可変領域CDR1;配列番号215の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号216を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号225の重鎖可変領域CDR1;配列番号226の重鎖可変領域CDR2;配列番号227の重鎖可変領域CDR3;配列番号228の軽鎖可変領域CDR1;配列番号229の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号230を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号239の重鎖可変領域CDR1;配列番号240の重鎖可変領域CDR2;配列番号241の重鎖可変領域CDR3;配列番号242の軽鎖可変領域CDR1;配列番号243の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号244を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号253の重鎖可変領域CDR1;配列番号254の重鎖可変領域CDR2;配列番号255の重鎖可変領域CDR3;配列番号256の軽鎖可変領域CDR1;配列番号257の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号258を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号267の重鎖可変領域CDR1;配列番号268の重鎖可変領域CDR2;配列番号269の重鎖可変領域CDR3;配列番号270の軽鎖可変領域CDR1;配列番号271の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号271を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。
【0163】
他の具体的態様において、本発明は、配列番号281の重鎖可変領域CDR1;配列番号282の重鎖可変領域CDR2;配列番号283の重鎖可変領域CDR3;配列番号284の軽鎖可変領域CDR1;配列番号285の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号286を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号287の重鎖可変領域CDR1;配列番号288の重鎖可変領域CDR2;配列番号289の重鎖可変領域CDR3;配列番号290の軽鎖可変領域CDR1;配列番号291の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号292を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号293の重鎖可変領域CDR1;配列番号294の重鎖可変領域CDR2;配列番号295の重鎖可変領域CDR3;配列番号296の軽鎖可変領域CDR1;配列番号297の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号298を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号299の重鎖可変領域CDR1;配列番号300の重鎖可変領域CDR2;配列番号301の重鎖可変領域CDR3;配列番号302の軽鎖可変領域CDR1;配列番号303の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号304を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号305の重鎖可変領域CDR1;配列番号306の重鎖可変領域CDR2;配列番号307の重鎖可変領域CDR3;配列番号308の軽鎖可変領域CDR1;配列番号309の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号310を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号311の重鎖可変領域CDR1;配列番号312の重鎖可変領域CDR2;配列番号313の重鎖可変領域CDR3;配列番号314の軽鎖可変領域CDR1;配列番号315の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号316を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号317の重鎖可変領域CDR1;配列番号318の重鎖可変領域CDR2;配列番号319の重鎖可変領域CDR3;配列番号320の軽鎖可変領域CDR1;配列番号321の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号322を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号323の重鎖可変領域CDR1;配列番号324の重鎖可変領域CDR2;配列番号325の重鎖可変領域CDR3;配列番号326の軽鎖可変領域CDR1;配列番号327の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号328を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号329の重鎖可変領域CDR1;配列番号330の重鎖可変領域CDR2;配列番号331の重鎖可変領域CDR3;配列番号332の軽鎖可変領域CDR1;配列番号333の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号334を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号335の重鎖可変領域CDR1;配列番号336の重鎖可変領域CDR2;配列番号337の重鎖可変領域CDR3;配列番号338の軽鎖可変領域CDR1;配列番号339の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号340を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号341の重鎖可変領域CDR1;配列番号342の重鎖可変領域CDR2;配列番号343の重鎖可変領域CDR3;配列番号344の軽鎖可変領域CDR1;配列番号345の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号346を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号347の重鎖可変領域CDR1;配列番号348の重鎖可変領域CDR2;配列番号349の重鎖可変領域CDR3;配列番号350の軽鎖可変領域CDR1;配列番号351の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号352を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号353の重鎖可変領域CDR1;配列番号354の重鎖可変領域CDR2;配列番号355の重鎖可変領域CDR3;配列番号356の軽鎖可変領域CDR1;配列番号357の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号358を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号359の重鎖可変領域CDR1;配列番号360の重鎖可変領域CDR2;配列番号361の重鎖可変領域CDR3;配列番号362の軽鎖可変領域CDR1;配列番号363の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号364を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号365の重鎖可変領域CDR1;配列番号366の重鎖可変領域CDR2;配列番号367の重鎖可変領域CDR3;配列番号368の軽鎖可変領域CDR1;配列番号369の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号370を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号371の重鎖可変領域CDR1;配列番号372の重鎖可変領域CDR2;配列番号373の重鎖可変領域CDR3;配列番号374の軽鎖可変領域CDR1;配列番号375の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号376を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号377の重鎖可変領域CDR1;配列番号378の重鎖可変領域CDR2;配列番号379の重鎖可変領域CDR3;配列番号380の軽鎖可変領域CDR1;配列番号381の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号382を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号383の重鎖可変領域CDR1;配列番号384の重鎖可変領域CDR2;配列番号385の重鎖可変領域CDR3;配列番号386の軽鎖可変領域CDR1;配列番号387の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号388を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号389の重鎖可変領域CDR1;配列番号390の重鎖可変領域CDR2;配列番号391の重鎖可変領域CDR3;配列番号392の軽鎖可変領域CDR1;配列番号393の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号394を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。他の具体的態様において、本発明は、配列番号395の重鎖可変領域CDR1;配列番号396の重鎖可変領域CDR2;配列番号397の重鎖可変領域CDR3;配列番号398の軽鎖可変領域CDR1;配列番号399の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号400を含むP因子と特異的に結合する抗体を含む。
【0164】
ある態様において、本発明は、表1に記載するP因子と特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む。好ましい態様において、P因子と結合する抗体または抗原結合フラグメントはFab NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967、NVS804、NVS805、NVS806、NVS807、NVS808、NVS809、NVS962−S、NVS962−Q、NVS962−G、NVS962−T、NVS962−S31A、NVS965−T、NVS965−QまたはNVS965−Sである。
【0165】
ここで使用するヒト抗体は、抗体の可変領域または完全長鎖がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるならば、特定の生殖系列配列の“産物である”またはこれに“由来する”重鎖または軽鎖可変領域または完全長重鎖または軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫化するかまたはファージ上に示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原についてスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の“産物である”またはこれに“由来する”ヒト抗体は、それ自体、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列と配列が最も近い(すなわち、最大%同一性)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより同定できる。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列の“産物である”またはこれに“由来する”ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異または部位特異的変異の意図的導入により、生殖系列配列と比較してアミノ酸差異を有し得る。しかしながら、VHまたはVLフレームワーク領域において、選択したヒト抗体は、典型的に、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、他種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較したとき、ヒト抗体をヒトと同定するアミノ酸残基を含む。ある場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列が少なくとも60%、70%、80%、90%または少なくとも95%またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。典型的に、組み換えヒト抗体は、VHまたはVLフレームワーク領域においてにおいて、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と10個を超えないアミノ酸差異を示す。ある場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と5個を超えないまたは4個、3個、2個または1個を超えないアミノ酸差異を示し得る。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子の例は、下記可変ドメイン生殖系列フラグメント、ならびにDP47およびDPK9を含む。
【0166】
相同抗体
さらに別の態様において、本発明は、表1に記載する配列と相同であるアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、抗体はP因子タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と結合し、所望の表1に記載する抗体の機能的特性を維持する。
【0167】
例えば、本発明は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離抗体またはその機能的抗原結合フラグメントを提供し、ここで、重鎖可変ドメインは配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み;そして、抗体はP因子(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と特異的に結合する。
【0168】
他の態様において、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に示す配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。他の態様において、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4または5アミノ酸位置のアミノ酸置換以外同一であり得る。表1に記載するVHおよびVL領域のものと高い(すなわち、80%以上)同一性を有するVHおよびVL領域を有する抗体は、それぞれ配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259または273および配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260または274をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR介在突然変異誘発)、その後のここに記載する機能的アッセイを使用するコードされた改変された抗体の残存機能についての試験により得ることができる。
【0169】
他の態様において、完全長重鎖および/または完全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に示す配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。配列番号:9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275のいずれかの完全長重鎖および配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276のいずれかの完全長軽鎖と高い(すなわち、80%以上)同一性を有する完全長重鎖および完全長軽鎖を有する抗体は、このようなポリペチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR介在突然変異誘発)、その後のここに記載する機能的アッセイを使用するコードされた改変された抗体の残存機能についての試験により得ることができる。
【0170】
他の態様において、完全長重鎖および/または完全長軽鎖ヌクレオチド配列は、表1に示す配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0171】
他の態様において、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列は、表1に示す配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0172】
ここで使用する、2配列間の同一性パーセントは、2配列の最適整列のために導入する必要がある、ギャップ数およびギャップ長を考慮に入れた、これらの配列により共有される同一位置の数の関数(すなわち、%同一性は同一位置数/位置の総数×100である)である。2配列間の配列比較および同一性パーセント決定は、下記非限定的例に記載する数学的アルゴリズムを使用して達成できる。
【0173】
これに加えてまたはこれ以外に、本発明のタンパク質配列は、さらに、例えば、関連配列を同定するための、公的データベースに対する検索を実施するための“クエリー配列”として使用できる。例えば、このような検索はAltschul, et al., 1990 J.Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(version 2.0)を使用して実施できる。
【0174】
保存的修飾を有する抗体
ある態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域およびCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列の1個以上がここに記載する抗体またはその保存的修飾に基づく特定のアミノ酸配列を有し、該抗体は、本発明のP因子結合抗体の所望の機能的特性を維持する。したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域およびCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列は配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253および267およびその保存的修飾体からなる群から選択され;重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列は配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254および268およびその保存的修飾体からなる群から選択され;重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列は配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255および269およびその保存的修飾体からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列は配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270およびその保存的修飾体からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列は配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271およびその保存的修飾体からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR3アミノ酸配列は配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272およびその保存的修飾体からなる群から選択され;そして抗体またはその抗原結合フラグメントはP因子に特異的に結合する。
【0175】
他の態様において、本発明の抗体は、哺乳動物細胞での発現について最適化され、完全長重鎖配列および完全長軽鎖配列を有し、ここで、これらの配列の1個以上はここに記載する抗体に基づく特定したアミノ酸配列またはその保存的修飾体を有し、該抗体は、本発明のP因子結合抗体の所望の機能的特性を維持する。したがって、本発明は、完全長重鎖および完全長軽鎖から成る哺乳動物細胞での発現について最適化された単離抗体を提供し、ここで、完全長重鎖は配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261および275およびその保存的修飾体から成る群から選択されるアミノ酸配列を有し;完全長軽鎖は配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262および276およびその保存的修飾体から成る群から選択されるアミノ酸配列を有し;そして、抗体はP因子(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子)と特異的に結合する。
【0176】
同じエピトープに結合する抗体
本発明は、表1に記載するP因子結合抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。それゆえに、さらなる抗体は、P因子結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合(例えば、統計学的に有意な方法での結合の競合的阻害)する能力に基づき同定できる(例えば実施例に記載のもの)。試験抗体が本発明の抗体のP因子タンパク質への結合を阻害する能力は、試験抗体がP因子への結合について抗体と競合できる能力を証明し、このような抗体は、理論に縛られないが、P因子タンパク質上の競合する抗体と同じまたは関連(例えば、構造的に類似または空間的に近位)エピトープに結合する。ある態様において、P因子上の本発明の抗体と同じエピトープに結合する抗体はヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体はここに記載するとおり製造および単離できる。ここで使用する抗体は、等モル濃度の競合抗体存在下で、競合抗体が、本発明の抗体または抗原結合フラグメントのP因子結合を50%を超えて阻害するとき、結合について“競合”する。
【0177】
他の態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、P因子のトロンボスポンジンタイプ5反復(TSR5)ドメイン(配列番号406)と結合する。他の態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号407を含むP因子TSR5ドメインの領域と結合する。さらに他の態様において、該領域は配列番号408を含む。
【0178】
本発明の他の態様において、単離抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号407を含むエピトープと結合し、他の態様において、エピトープは配列番号408を含む。本発明の他の態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号407のペプチドと結合し、さらに他の態様において、P因子エピトープは配列番号408を含む。
【0179】
操作および修飾抗体
本発明の抗体は、さらに、ここに示すVHおよび/またはVL配列の1個以上を有する抗体を出発物質として使用して、修飾抗体を設計し、その修飾抗体は出発抗体から変更された特性を有し得る。抗体は、可変領域の一方または両方(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば1個以上のCDR領域および/または1個以上のフレームワーク領域内の1個以上の残基の修飾により操作し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基の修飾により操作してよい。
【0180】
実施できる可変領域操作の一つのタイプはCDR移植である。抗体は、標的抗原と主に6個の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR以外の配列よりも抗体毎により多様性である。CDR配列がほとんどの抗体−抗原相互作用を担うため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植した特異的天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターの構築により、特異的な天然に存在する抗体の特性を模倣する組み換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327;Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522-525;Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad., U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許番号5,225,539およびQueen et al.の米国特許番号5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370参照)
【0181】
したがって、本発明の他の態様は、それぞれ配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253および267から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254および268から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255および269から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域;およびそれぞれ配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。それゆえに、このような抗体はモノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含むが、これらの抗体と異なるフレームワーク配列を含み得る
【0182】
あるいは、本発明の他の態様は、それぞれ配列番号281、287、293、299、305、311、317、323、329、335、341、347、353、359、365、371、377、383、389および395から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号282、288、294、300、306、312、318、324、330、336、342、348、354、360、366、372、378、384、390および396から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号283、289、295、301、307、313、319、325、331、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391および397から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;およびそれぞれから成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号285、291、297、303、309、315、321、327、333、339、345、351、357、363、369、375、381、387、393および399から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号286、292、298、304、310、316、322、328、334、340、346、352、358、364、370、376、382、388、394および400から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む単離抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。それゆえに、このような抗体はモノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含むが、これらの抗体と異なるフレームワーク配列を含み得る
【0183】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースまたは公表された刊行物から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は“VBase”ヒト生殖系列配列データベース(mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseのワールドワイドウェブから入手可能)、ならびにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798; and Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836に見ることができ;これらの内容は、本明細書に引用により明示的に包含させる。
【0184】
本発明の抗体で使用するためのフレームワーク配列の例は、選択した本発明の抗体により使用されるフレームワーク配列、例えば、本発明のモノクローナル抗体により使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列と構造的に類似するものである。VH CDR1、2および3配列およびVL CDR1、2および3配列をフレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見られるものと同一配列を有するフレームワーク領域に移植できまたはCDR配列を生殖系列配列と比較して1個以上の変異を含むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある場合には抗体の抗原結合能力の維持または亢進のためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有利であることが判明している(例えば、Queen et al.の米国特許番号5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370参照)。ここに記載する抗体および抗原結合フラグメントを建設するためのスキャフォールドとして利用できるフレームワークは、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2およびVk2を含むが、これらに限定されない。さらなるフレームワークは当分野で知られ、例えば、vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/index.php?&MMN_position=1:1のワールドワイドウェブ上のvBaseデータベースに見ることができる。
【0185】
したがって、本発明の態様は、配列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259および273から成る群から選択されるアミノ酸配列またはこのような配列のフレームワーク領域内に1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域およびさらに配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260および274から成る群から選択されるアミノ酸配列またはこのような配列のフレームワーク領域内に1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む単離P因子結合抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0186】
他のタイプの可変領域修飾は、“親和性成熟”として知られる、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それにより目的の抗体の1個以上の結合特性(例えば、親和性)を改善させることである。部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発を変異の導入のために行ってよく、目的の抗体結合または他の機能的特性に対する影響をここに記載するおよび実施例に提供するインビトロまたはインビボアッセイで評価できる。保存的修飾(上記のとおり)を導入できる。変異はアミノ酸置換、付加または欠失であり得る。さらに、典型的にCDR領域内の1個、2個、3個、4個または5個を超えない残基を変更する。
【0187】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253および267または配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253または267と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR1領域;配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254および268または配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254または268と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255および269または配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255または269と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270または配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256または270と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271または配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257または271と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272または配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258または272と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR3領域から成る単離P因子結合抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0188】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号281、287、293、299、305、311、317、323、329、335、341、347、353、359、365、371、377、383、389および395または配列番号281、287、293、299、305、311、317、323、329、335、341、347、353、359、365、371、377、383、389または395と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR1領域;配列番号282、288、294、300、306、312、318、324、330、336、342、348、354、360、366、372、378、384、390および396または配列番号282、288、294、300、306、312、318、324、330、336、342、348、354、360、366、372、378、384、390または396と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号283、289、295、301、307、313、319、325、331、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391および397または配列番号283、289、295、301、307、313、319、325、331、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391または397と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号284、290、296、302、308、314、320、326、332、338、344、350、356、362、368、374、380、386、392および398または配列番号284、290、296、302、308、314、320、326、332、338、344、350、356、362、368、374、380、386、392または398と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号285、291、297、303、309、315、321、327、333、339、345、351、357、363、369、375、381、387、393および399または配列番号285、291、297、303、309、315、321、327、333、339、345、351、357、363、369、375、381、387、393または399と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号286、292、298、304、310、316、322、328、334、340、346、352、358、364、370、376、382、388、394および400または配列番号286、292、298、304、310、316、322、328、334、340、346、352、358、364、370、376、382、388、394または400と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するVL CDR3領域から成る単離P因子結合抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0189】
抗体フラグメントの代替的フレームワークまたはスキャフォールドへの移植
得られたポリペチドがP因子と特異的に結合する少なくとも1個の結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドを用いることができる。このようなフレームワークまたはスキャフォールドはヒト免疫グロブリンの5個の主用なイディオタイプまたはそのフラグメントを含み、好ましくはヒト化側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。新規フレームワーク、スキャフォールドおよびフラグメントは当業者により発見および開発され続けている。
【0190】
一つの面において、本発明は、本発明のCDRが移植できる非免疫グロブリンスキャフォールドを使用する非免疫グロブリンに基づく抗体の製造方法に関する。現在または将来的に知られる非免疫グロブリンフレームワークおよびスキャフォールドを、標的P因子タンパク質に特異的な結合領域を含む限り、用い得る。既知の非免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドは、フィブロネクチン(Compound Therapeutics, Inc., Waltham, MA)、アンキリン(Molecular Partners AG, Zurich, Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis, Ltd., Cambridge, MAおよびAblynx nv, Zwijnaarde, Belgium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG, Freising, Germany)、小モジュラー免疫薬(Trubion Pharmaceuticals Inc., Seattle, WA)、マキシボディ(Avidia, Inc., Mountain View, CA)、プロテインA(Affibody AG, Sweden)およびアフィリン(ガンマ結晶またはユビキチン)(Scil Proteins GmbH, Halle, Germany)を含むが、これらに限定されない。
【0191】
フィブロネクチンスキャフォールドはフィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の第10モジュール(
10Fn3ドメイン))に基づく。フィブロネクチンIII型ドメインは、7個または8個のベータ鎖を有し、これは2個のベータシートに分散し、これ自体互いに包装されて、タンパク質のコアを形成し、さらにループ(CDRに類似)を含み、これはベータ鎖を互いに連結し、溶媒に晒される。ベータシートサンドイッチの各端に少なくとも3個のこのようなループがあり、ここで、該端はベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(US6,818,418参照)。これらのフィブロネクチンに基づくスキャフォールドは免疫グロブリンではないが、全体的折り畳みは、ラクダおよびラマIgGにおける全抗原認識単位を含む重鎖の可変領域である、最小機能的抗体フラグメントのものと密接に関連する。この構造のために、非免疫グロブリン抗体は、自然に近い抗原結合特性および抗体の親和性を模倣する。これらのスキャフォールドは、インビボの抗体親和性成熟の過程に類似するインビトロでのループ無作為化およびシャフリング方法に使用できる。これらのフィブロネクチンに基づく分子をスキャフォールドとして使用でき、そこで、分子のループ領域を標準的クローニング技術を使用して本発明のCDRに置き換えることができる。
【0192】
アンキリン方法は、アンキリン由来反復モジュールを有するタンパク質を、異なる標的への結合に使用できる可変領域を担持するスキャフォールドとして使用することに基づく。アンキリン反復モジュールは、2個の逆平行α螺旋およびβターンから成る33アミノ酸ポリペチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを使用してほとんど最適化される。
【0193】
アビマーは天然Aドメイン含有タンパク質、例えばHER3由来である。これらのドメインは、本来タンパク質−タンパク質相互作用に使用され、ヒトに置いて250を超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合する多くの異なる“Aドメイン”モノマー(2−10)から成る。アビマーは、例えば、米国特許出願公開20040175756;20050053973;20050048512;および20060008844に記載する方法を使用して、標的抗原に結合できるように調製できる。
【0194】
アフィボディ親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1個のスキャフォールドに基づく3螺旋束から成る小さく、単純なタンパク質である。プロテインAは黄色ブドウ球菌である細菌由来の表面タンパク質である。このスキャフォールドドメインは58アミノ酸から成り、そのうち13個は無作為化されて、多数のリガンド変異体と共にアフィボディライブラリーを産生する(例えば、US5,831,012参照)。アフィボディ分子は抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、6kDaの分子量を有する。サイズが小さいにも係らず、アフィボディ分子の結合部位は抗体のものに類似する。
【0195】
アンチカリンはPieris ProteoLab AG社により開発された製品である。リポカリンに由来し、通常化学的に感受性のまたは不溶性の化合物の生理学的輸送または貯蔵する、小さく、堅牢なタンパク質のどこにでもある群である。数種の天然リポカリンはヒト組織または体液に生じる。タンパク質構造は免疫グロブリンを案じし、強固なフレームワークの頂上に超可変ループがある。しかしながら、抗体またはそれらの組み換えフラグメントとは対照的に、リポカリンは、160〜180アミノ酸残基の一ポリペチド鎖からなり、一免疫グロブリンドメインよりほんのわずかだけ大きい。結合ポケットを形成する4個のループの組は明白な構造的可塑性を示し、多様な側鎖を許容する。結合部位は、それゆえに、高親和性および特異性で異なる形の処方標的分子を認識するために、独自の工程で再形成され得る。リポカリンファミリーの1タンパク質であるPieris Brassicaeのビリン結合タンパク質(BBP)は、4個のループの組の突然変異誘発によりアンチカリンを開発するために使用されている。アンチカリンを記載する特許の一例は、PCT公開番号WO199916873である。
【0196】
アフィリン分子は、タンパク質および小分子に対する特異的親和性のために設計された小非免疫グロブリンタンパク質である。新規アフィリン分子を2個のライブラリーから極めて迅速に選択でき、その各々は異なるヒト由来スキャフォールドタンパク質に基づく。アフィリン分子は免疫グロブリンタンパク質に対する構造的相同性を示さない。現在、2種のアフィリンスキャフォールドが用いられ、その一方はヒト構造的眼水晶体タンパク質であるガンマ結晶であり、他方は“ユビキチン”スーファーファミリータンパク質である。両ヒトスキャフォールドとも極めて小さく、高温安定性を示し、pH変化および変性剤にほとんど耐性である。この高安定性は主にタンパク質のベータシート構造の伸長による。ガンマ結晶由来タンパク質の例はWO200104144に記載させ、“ユビキチン様”タンパク質の例はWO2004106368に記載される。
【0197】
タンパク質エピトープ模倣物(PEM)は、タンパク質−タンパク質相互作用に関与する主二次構造であるタンパク質のベータハルピン二次構造を模倣する中程度のサイズの、環状、ペプチド様分子(MW 1〜2kDa)である。
【0198】
本発明は、P因子タンパク質と特異的に結合する完全なヒト抗体を提供する。キメラまたはヒト化抗体と比較して、本発明のヒトP因子結合抗体は、ヒト対象に投与したとき、抗原性がさらに低減されている。
【0199】
ラクダ科抗体
新世界メンバー、例えばラマ種(Lama paccos、Lama glamaおよびLama vicugna)を含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)ファミリーのメンバーから得た抗体タンパク質は、サイズ、構造的複雑性およびヒト対象への抗原性について特徴づけされている。哺乳動物のこのファミリー由来のある種のIgG抗体は生来軽鎖を欠き、それゆえに、他の動物由来の抗体の2個の重鎖および2個の軽鎖の典型的4鎖四次構造と構造的に区別されることが判明している。PCT/EP93/02214(1994年3月3日公開のWO94/04678)参照。
【0200】
VHHとして同定される小さな一可変ドメインであるラクダ科抗体の領域は、標的に対して高親和性を有する小タンパク質を産生するために遺伝子操作することにより得ることができ、“ラクダ科ナノボディ”として知られる低分子量抗体由来タンパク質をもたらす。1998年6月2日発行の米国特許番号5,759,808参照;またStijlemans, B. et al., 2004 J Biol Chem 279: 1256-1261; Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger, M. et al. 2003 Bioconjugate Chem 14: 440-448; Cortez-Retamozo, V. et al. 2002 Int J Cancer 89: 456-62; and Lauwereys, M. et al. 1998 EMBO J 17: 3512-3520も参照。ラクダ科抗体および抗体フラグメントの操作されたライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体と同様、ラクダ科抗体のアミノ酸配列を組み換えにより変更して、ヒト配列をより密接に模倣する配列を得ることができ、すなわち、ナノボディを“ヒト化”できる。こうして、ラクダ科抗体のヒトに対する天然の低抗原性をさらに減らすことができる。
【0201】
ラクダ科ナノボディは、ヒトIgG分子の1/10の分子量であり、タンパク質はわずか数ナノメートルの物理的直径を有する。サイズが小さいことによる一つの結果は、ラクダ科ナノボディが大型抗体タンパク質で機能的に探知されない抗原性部位に結合する能力であり、すなわち、ラクダ科ナノボディは古典的免疫学的技術を使用して他の場合には隠れている抗原を検出する試薬としておよび可能な治療剤として有用である。それゆえに、サイズが小さいことによる別の結果は、ラクダ科ナノボディが標的タンパク質の溝または狭い隙間における特異的部位への結合の結果阻害でき、それ故に古典的抗体よりも古典的低分子量剤の機能をより模倣した能力において役立ち得ることである。
【0202】
低分子量および小型サイズにより、さらに、ラクダ科ナノボディは極めて熱安定であり、厳しいpHおよびタンパク分解消化に安定であり、抗原性が低い。他の結果は、ラクダ科ナノボディが循環系から組織に容易に移動し、血液脳関門すら通過し、神経組織に影響する障害を処置できることである。ナノボディはさらに血液脳関門を通過する薬物輸送を促進できる。2004年8月19日公開の米国特許出願20040161738参照。これらの特性は、ヒトへの低抗原性と組み合わさって、大きな治療可能性を示す。さらに、これらの分子は原核細胞、例えば大腸菌で完全に発現でき、バクテリオファージと融合タンパク質で発現され、機能的である。
【0203】
従って、本発明の特性は、P因子に対する高親和性を有するラクダ科抗体またはナノボディである。ここでのある種の態様において、ラクダ科抗体またはナノボディはラクダ科動物で天然に産生され、すなわち、ラクダ科でここで他の抗体について記載した技術を使用したP因子またはそのペプチドフラグメントでの免疫化後に産生される。あるいは、P因子結合ラクダ科ナノボディは改変され、すなわち、例えば、ここでの実施例に記載するとおりP因子を標的として用いるパニング法を使用した、突然変異誘発したラクダ科ナノボディタンパク質を適当に示すファージのライブラリーからの選択により製造する。改変ナノボディは、さらにレシピエント対象における45分〜2週間の半減期を有するように遺伝子操作によりカスタマイズできる。具体的態様において、ラクダ科抗体またはナノボディは、本発明のヒト抗体の重鎖または軽鎖のCDR配列を、例えばPCT/EP93/02214に記載のとおり、ナノボディまたは一ドメイン抗体フレームワーク配列に移植することにより得る。
【0204】
二重特異性分子および多価抗体
他の面において、本発明は、本発明のP因子結合抗体またはそのフラグメントを含む二重特異性または多特異的分子に関する。本発明の抗体またはその抗原結合部位を誘導体化または他の機能的分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質(例えば、他の抗体または受容体に対するリガンド)と結合して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子と結合する二重特異性分子を産生できる。本発明の抗体は、実際、誘導体化または1個を超える他の機能的分子と結合して、2個を超える異なる結合部位および/または標的分子と結合する多特異的分子を産生できる;このような多特異的分子もここで使用する養母“二重特異性分子”に包含することを意図する。本発明の二重特異性分子を製造するために、本発明の抗体を、二重特異性分子が得られるように、1個以上の他の結合分子、例えば他の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物と機能的に結合(例えば、化学カップリング、遺伝的融合、非共有結合的結合またはその他)できる。
【0205】
したがって、本発明は、P因子に対する少なくとも1個の第一結合特異性および第二標的エピトープに対する第二結合特異性を含む、二重特異性分子を含む。例えば、第二標的エピトープは、第一標的エピトープと異なるP因子の他のエピトープである。
【0206】
加えて、二重特異性分子が多特異性である本発明について、分子は、第一および第二標的エピトープに加えてさらに第三の結合特異性を含み得る。
【0207】
一つの態様において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fvを含む、少なくとも1個の抗体または抗体そのフラグメントを含む。抗体はまた軽鎖または重鎖二量体またはFvのようなその最小フラグメントまたはLadner et al. 米国特許番号4,946,778に記載の一本鎖構築物であり得る。
【0208】
二重特異性抗体は、同じ鎖上の2ドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより接続したVHおよびVLドメインが一ポリペチド鎖上に発現される、二価の、二重特異性分子である。VHおよびVLドメインは他の鎖の相補性ドメインと結合し、それによ2個の抗原結合部位を生成する(例えば、Holliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak et al., 1994 Structure 2:1121-1123参照)。二重特異性抗体は、構造VHA−VLBおよびVHB−VLA(VH−VL配置)またはVLA−VHBおよびVLB−VHA(VL−VH配置)の2個のポリペチド鎖を同じ細胞上に発現させることにより製造できる。そのほとんどが細菌中で可溶性形態で発現できる。一本鎖二重特異性抗体(scDb)は、2個の二重特異性抗体形成ポリペチド鎖と、約15アミノ酸残基のリンカーの接続により製造する(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(34): 128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack, 1997 Immunotechnology, 3(2): 83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):617-21参照)。二重特異性抗体をFcと融合して、“二二重特異性抗体”を製造できる(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem., 279(4):2856-65参照)。
【0209】
本発明の二重特異性分子に用いることができる他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0210】
二重特異性分子は、当分野で知られた方法を使用して、成分結合特異性をコンジュゲートすることにより製造できる。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、二重特異性分子の各結合特異性を別々に製造し、次いで互いにコンジュゲートし、例えば、多様なカップリングまたは架橋剤を共有結合に使用できる。架橋剤の例はプロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)(例えば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648). 他の方法はPaulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83), and Glennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375に記載のものを含む。コンジュゲーション剤(Conjugating agent)はSATAおよびスルホ−SMCCであり、いずれもPierce Chemical Co.(Rockford, IL)から入手可能である。
【0211】
結合特異性が抗体であるとき、2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によりコンジュゲートできる。具体的態様において、ヒンジ領域を、コンジュゲーション前に奇数、例えば1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾する。
【0212】
あるいは、両結合特異性を同じベクターでコード化させ、発現させ、同じ宿主細胞で集合させ得る。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)
2またはリガンド×Fab融合タンパク質であるとき特に有用である。本発明の二重特異性分子は、1個の一本鎖抗体および結合決定基を含む一本鎖分子または2個の結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2個の一本鎖分子を含み得る。二重特異性分子の製造方法は、例えば米国特許番号5,260,203;米国特許番号5,455,030;米国特許番号4,881,175;米国特許番号5,132,405;米国特許番号5,091,513;米国特許番号5,476,786;米国特許番号5,013,653;米国特許番号5,258,498;および米国特許番号5,482,858に記載されている。
【0213】
二重特異性分子のその特異的標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫アッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)またはウェスタンブロットアッセイにより確認できる。これらのアッセイの各々は、一般的に特に興味深いタンパク質−抗体複合体の存在を、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を用いて検出する。
【0214】
他の面において、本発明は、本発明のP因子に結合する本発明の抗体の少なくとも2個の同一または異なる抗原結合部位を含む多価化合物を提供する。本発明の抗体の抗原結合部位は、タンパク質融合または共有結合または非共有結合的結合を介して互いに結合できる。あるいは、結合方法は二特異性分子について記載している。四価化合物は、例えば、本発明の抗体の抗体と本発明の抗体の定常領域と結合する抗体、例えばFcまたはヒンジ領域の架橋により得ることができる。
【0215】
三量体形成ドメインは、例えばBorean特許EP1012280B1に記載されている。五量体化モジュールは、例えばPCT/EP97/05897に記載されている。
【0216】
半減期が延長した抗体
本発明は、インビボでの半減期が延長したP因子タンパク質と特異的に結合する抗体を提供する。
【0217】
多くの因子がインビボでのタンパク質の半減期に影響し得る。例は、腎臓濾過、肝臓での代謝、タンパク分解酵素(プロテアーゼ類)での分解および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質中和およびマクロファージおよび樹状細胞による取り込み)である。多様な戦略が本発明の抗体の半減期を伸ばすために使用できる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体スキャフォールド、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合リガンドおよび炭水化物シールドへの化学結合;血清タンパク質に結合するタンパク質、例えばアルブミン、IgG、FcRnおよびトランスフェリンとの遺伝子融合;血清タンパク質に結合する他の結合部分、例えばナノボディ、Fabs、DARPins、アビマー、アフィボディおよびアンチカリンへのカップリング(遺伝的または化学的);rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合タンパク質およびFcへの遺伝子融合;またはナノ担体、徐放性製剤または医療デバイスへの取り込み。
【0218】
インビボでの抗体の血清循環を延長するために、不活性ポリマー分子、例えば高分子量PEGを、PEGの抗体のN末端またはC末端への部位特異的コンジュゲーションまたはリシン残基に存在するイプシロン−アミノ基を介して、多機能的リンカーと共にまたは伴わず、抗体またはそのフラグメントに結合できる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントは、典型的にポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1個以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントと結合する条件下で反応させる。ペグ化は反応性PEG分子(または類似の反応性水可溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実施できる。ここで使用する、用語“ポリエチレングリコール”は、他のタンパク質の誘導体化に使用されているあらゆる形態のPEG、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを包含することを意図する。ある態様において、ペグ化する抗体は非グリコシル化抗体である。生物学的活性の最小限の喪失となる直鎖または分枝鎖ポリマー誘導体化を有する。コンジュゲーション程度はSDS−PAGEおよびマススペクトロメトリーにより厳しくモニターし、抗体へのPEG分子の適切なコンジュゲーションを確実にする。未反応PEGを、分子ふるいまたはイオン交換クロマトグラフィーにより抗体−PEGコンジュゲートから分離できる。PEG誘導体化抗体を、当業者に周知の方法を使用して、例えば、ここに記載した免疫アッセイにより結合活性ならびにインビボ有効性について試験できる。タンパク質のペグ化方法は当分野で知られ、本発明の抗体に適用できる。例えば、Nishimura et al. のEP0154316およびIshikawa et al.のEP0401384参照。
【0219】
他の修飾ペグ化方法は、再構成化学的直交操作技術(ReCODE PEG)であり、これは、化学的に特定の側鎖を生合成タンパク質に、tRNAシンセターゼおよびtRNAを含む再構成系を介して取り込む。この方法は、30を超える新アミノ酸の大腸菌、酵母および哺乳動物細胞における生合成タンパク質への取り込みを可能にする。tRNAは非天然アミノ酸を、アンバーコドンが位置する任意の場所に取り込み、アンバーを停止コドンから化学的に特定のアミノ酸の取り込みのシグナルとなるものに変換する。
【0220】
組み換えペグ化方法(rPEG)も血清半減期延長に使用できる。この方法は、300〜600アミノ酸の不定形タンパク質尾部に既存の医薬タンパク質を遺伝的融合させることを含む。このような不定形タンパク質鎖の見かけの分子量がその実際の分子量の約15倍大きくなるため、タンパク質の血清半減期は、大きくのびる。化学コンジュゲーションおよび再精製を必要とする伝統的ペグ化と比較して、製造工程は極めて単純であり、産物は均質である。
【0221】
ポリシアル化は他の方法であり、これは、治療ペプチドおよびタンパク質の活性寿命を延長し、安定性を改善するのに天然ポリマーポリシアル酸(PSA)を使用する。PSAは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療ペプチド薬物送達に使用したとき、ポリシアル酸はコンジュゲーションに保護的微小環境を提供する。これが循環中の治療タンパク質の活性寿命を延ばし、免疫系により認識されるのを妨げる。PSAポリマーはヒト体内で天然に見られる。何百万年の壁をこれで覆うように進化したある種の細菌により導入された。これらの天然にポリシアル化された細菌は、次いで、分子模写により、体内の防御系から逃れることに成功した。PSAは、天然の最終的な隠蔽方法であり、このような細菌により大量に、予定された物理的特徴で産生できる。細菌PSAは、ヒト体内でのPSAと化学的同一である限り、タンパク質とカップリングしたときでさえ完全に非免疫原性である。
【0222】
他の方法は、抗体に結合したヒドロキシエチルデンプン(“HES”)誘導体である。HESは、蝋状トウモロコシ澱粉由来の修飾天然ポリマーであり、体内の酵素により代謝され得る。HES溶液を、通常血液量不足を補い、血液のレオロジー的特性を改善するために投与し。抗体のヘシル化(hesylation)は、分子の安定性の増加ならびに腎クリアランス減少により循環半減期の延長を可能にし、生物学的活性を高める。種々のパラメータ、例えばHESの分子量を変えることにより、広範なHES抗体コンジュゲートをカスタマイズできる。
【0223】
インビボで長い半減期を有する抗体はまたIgG定常ドメインまたはFcRn結合そのフラグメント(好ましくはFcまたはヒンジFcドメインフラグメント)への1個以上のアミノ酸修飾(すなわち、置換、挿入または欠失)の導入によっても産生できる。例えば、国際公開番号WO98/23289;国際公開番号WO97/34631;および米国特許番号6,277,375参照。
【0224】
さらに、抗体または抗体フラグメントをインビボでより安定にしまたはインビボで半減期を長くするために、抗体をアルブミンとコンジュゲートできる。本技術は当分野で周知であり、例えば、国際公開番号WO93/15199、WO93/15200およびWO01/77137;および欧州特許番号EP413,622を参照のこと。さらに上記二特異性抗体の状況で、抗体の特異性は、抗体の1結合ドメインがP因子に結合し、抗体の第二結合ドメインが血清アルブミン、好ましくはHSAに結合するように設計できる。
【0225】
半減期を延長する戦略は、特にナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤およびインビボ半減期延長が望まれる他の抗体またはタンパク質で有用である。
【0226】
抗体コンジュゲート
本発明は、融合タンパク質を産生するために異種タンパク質またはポリペチド(またはそのフラグメント、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペチド)と組み換え的融合または化学的結合(共有結合および非共有結合の両者を含む)したP因子タンパク質に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを提供する。特に、本発明は、ここに記載する抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)および異種タンパク質、ポリペチドまたはペプチドを含む融合タンパク質を提供する。タンパク質、ポリペチドまたはペプチドを抗体または抗体フラグメントと融合または結合する方法は当分野で知られている。例えば、米国特許5,336,603、5,622,929、5,359,046、5,349,053、5,447,851および5,112,946;欧州特許番号EP307,434およびEP367,166;国際公開番号WO96/04388およびWO91/06570;Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539; Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154:5590-5600; and Vil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337- 11341参照)。
【0227】
さらなる融合タンパク質を、遺伝子混合、モチーフ混合、エクソン混合および/またはコドン混合(ここでは纏めて“DNA混合”と呼ぶ)の技術を介して産生し得る。DNA混合は、本発明の抗体またはそのフラグメントの活性改変に使用し得る(例えば、高親和性および低解離速度の抗体またはそのフラグメント)。一般的に、米国特許5,605,793、5,811,238、5,830,721、5,834,252および5,837,458;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33; Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hansson, et al., 1999, J. Mol. Biol. 287:265-76; and Lorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24(2):308- 313参照(これら特許および刊行物の各々は、引用によりその全体を本明細書に包含させる)。抗体またはそのフラグメントまたはコードする抗体またはそのフラグメントは、組換え前にエラープローンPCR、無作為ヌクレオチド挿入または他の方法による無作為突然変異誘発に付すことにより変え得る。P因子タンパク質に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを1個以上の異種分子の1個以上の成分、モチーフ、セクション、パーツ、ドメイン、フラグメントなどと組み換えし得る。
【0228】
さらに、抗体またはそのフラグメントは、マーカー配列、例えば精製を容易にするためのペプチドと融合し得る。好ましい態様において、マーカーアミノ酸配列はヘキサ−ヒスチジンペプチド、例えば特にpQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)で提供されるタグであり、その多くが市販されている。Gentz et al., (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載のとおり、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製のために提供される。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素(“HA”)タグ(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)および“フラッグ”タグを含むが、これらに限定されない。
【0229】
他の態様において、本発明の抗体またはそのフラグメントは診断剤または検出可能剤とオン樹ゲートできる。このような抗体は、臨床的試験法の一部として疾患または障害の発症、進展、進行および/または重症度のモニタリングまたは予後診断、例えば特定の治療の有効性の決定に有用であり得る。このような診断および検出は、例えば、オースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含むが、これらに限定されない種々の酵素;例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンであるがこれらに限定されない接合団;例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリンであるが、これらに限定されない蛍光物質;例えば、ルミノールであるが、これに限定されない発光物質;例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンであるが、これらに限定されない生物発光物質;例えば、ヨウ素(
131I、
125I、
123Iおよび
121I)、炭素(
14C)、硫黄(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
115In、
113In、
112Inおよび
111In)、テクネチウム(
99Tc)、タリウム(
201Ti)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン(
99Mo)、キセノン(
133Xe)、フッ素(
18F)、
153Sm、
177Lu、
159Gd、
149Pm、
140La、
175Yb、
166Ho、
90Y、47Sc、
186Re、
188Re、
142Pr、
105Rh、
97Ru、
68Ge、
57Co、
65Zn、
85Sr、
32P、
153Gd、
169Yb、
51Cr、
54Mn、
75Se、
113Snおよび
117Tinであるが、これらに限定されない放射性物質;および種々の陽電子放出断層撮影および非放射性常磁性金属イオンを使用する陽電子放出金属を含むが、これらに限定されない検出可能物質に抗体をカップリングさせることにより達成できる。
【0230】
本発明は、さらに治療部分とコンジュゲートした抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。抗体またはそのフラグメントは治療部分、例えば細胞毒、例えば、細胞増殖阻止または殺細胞剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば、アルファ−エミッターとコンジュゲートし得る。細胞毒または細胞毒性剤は細胞に有害な薬剤を含む。
【0231】
さらに、抗体またはそのフラグメントを、ある生物学的応答を修飾する治療部分または薬物部分とコンジュゲートし得る。治療部分または薬物部分は古典的化学治療剤に限定されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質、ペプチドまたはポリペチドであり得る。このようなタンパク質は、例えば、毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素またはジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、抗血管形成剤;または生物学的応答修飾剤、例えば、例えば、リンホカインを含み得る。
【0232】
さらに、抗体を、213Biのようなアルファエミッタのような放射性物質または、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含むが、これらに限定されない放射性金属イオンのポリペチドへのコンジュゲートに有用な大環状キレート剤とコンジュゲートできる。ある態様において、大環状キレート剤は1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−四酢酸(DOTA)であり、これはリンカー分子を介して抗体に結合できる。このようなリンカー分子は通常当分野で知られ、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90; Peterson et al., 1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7; and Zimmerman et al., 1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載され、各々その全体を引用により本明細書に包含させる。
【0233】
治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は周知であり、例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), and Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照のこと。
【0234】
抗体は、標的抗原の免疫アッセイまたは精製に特に有用である固体支持体とも結合し得る。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルクロライドまたはポリプロピレンを含むが、これらに限定されない。
【0235】
本発明の抗体の製造方法
抗体をコードする核酸
本発明は、上記P因子結合抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペチドをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明の核酸のいくつかは、列番号7、21、35、49、63、77、91、105、119、133、147、161、175、189、203、217、231、245、259または273に示す重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および/または配列番号8、22、36、50、64、78、92、106、120、134、148、162、176、190、204、218、232、246、260または274に示す軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。具体的態様において、核酸分子は表1に同定したものである。ある別の本発明の核酸分子は、表1に同定したヌクレオチド配列と実質的に同一(例えば、少なくとも65、80%、95%または99%)なヌクレオチド配列である。適当な発現ベクターから発現されたとき、これらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペチドはP因子抗原結合能力を示すことができる。
【0236】
また本発明で提供されるのは、上記P因子結合抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1個のCDR領域および通常全3個のCDR領域をコードするポリヌクレオチドである。いくつかの他のポリヌクレオチドは、上記P因子結合抗体の重鎖および/または軽鎖の全てまたは実質的に全ての可変領域配列をコードする。コード縮重のため、多様な核酸配列が免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードする。
【0237】
本発明の核酸分子は抗体の可変領域および定常領域のいずれもコードし得る。本発明の核酸配列のいくつかは、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261または275に示すP因子結合抗体の成熟重鎖配列と実質的に同一(例えば、少なくとも80%、90%または99%)な成熟重鎖配列をコードするヌクレオチドである。ある他の核酸配列は配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262または276に示す成熟軽鎖配列と実質的に同一(例えば、少なくとも80%、90%または99%)である成熟軽鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。
【0238】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成またはP因子結合抗体またはその結合フラグメントをコードする既存配列(例えば、下記実施例に記載する配列)のPCR突然変異誘発により製造できる。核酸の直接化学合成は当分野で知られる方法、例えばNarang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90のホスホトリエステル方法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979のホスホジエステル方法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のジエチルホスホロアミデート方法;および米国特許番号4,458,066の固体支持方法により達成できる。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; and Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載のとおり達成できる。
【0239】
また本発明で提供されるのは、上記P因子結合抗体の製造のための発現ベクターおよび宿主細胞である。種々の発現ベクターを、P因子結合抗体鎖または結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現させるために使用できる。ウイルスベースおよび非ウイルス発現ベクターの両方とも、哺乳動物宿主細胞での抗体の産生に使用できる。非ウイルスベクターおよび系は、プラスミド、典型的にタンパク質またはRNAを発現するための発現カセットを伴うエピソームベクターおよびヒト人工的染色体を含む(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997参照)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞でのP因子結合ポリヌクレオチドおよびポリペチド発現に有用な非ウイルスベクターは、pThioHis A、BおよびC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、BおよびC(Invitrogen, San Diego, CA)、MPSVベクターおよび他のタンパク質を発現することが当分野で知られる多数の他のベクターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40を使用したベクター、乳頭腫ウイルス、HBPエプスタイン・バーウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林ウイルス(SFV)に基づくベクターを含む。Brent et al., supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995; and Rosenfeld et al., Cell 68:143, 1992参照。
【0240】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させることを意図する宿主細胞による。典型的に、発現ベクターは、P因子結合抗体鎖またはフラグメントをコードするポリヌクレオチドに操作可能に結合したプロモータおよび他の調節配列(例えば、エンハンサ)を含む。ある態様において、誘導性プロモータを使用して、誘導条件下以外での挿入配列の発現を阻止する。誘導性プロモータは、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモータまたはヒートショックプロモータを含む。形質転換生物培養物を、発現産物が宿主細胞に十分に耐容性であるコーディング配列に対する集団を阻害することなく、非誘導条件下で増幅できる。プロモータに加えて、他の調節要素がP因子結合抗体鎖またはフラグメントの効率的発現のために必要であるかまたは望ましいことがある。これらの要素は、典型的にATG開始コドンおよび隣接リボゾーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現効率は、使用する細胞系への適当なエンハンサの導入により高められ得る(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994; and Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987参照)。例えば、SV40エンハンサまたはCMVエンハンサを、哺乳動物宿主細胞における発現増加に使用し得る。
【0241】
発現ベクターはまた挿入されたP因子結合抗体配列によりコードされるポリペチドとの融合タンパク質を形成するために分泌シグナル配列位置を提供し得る。多くの場合、挿入されたP因子結合抗体配列は、ベクターへの挿入前にシグナル配列と結合させる。P因子結合抗体軽および重鎖可変ドメインをコードする配列を受け入れるために使用するベクターは、しばしば定常領域またはその一部もコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能にし、それにより、インタクト抗体またはそのフラグメントの産生に至る。典型的に、このような定常領域はヒト型である。
【0242】
P因子結合抗体鎖を担持し、発現させる宿主細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドのクローニングおよび発現に有用な原核宿主の一つである。使用に適する他の微生物宿主は、桿菌、例えばバチルス・スブチリスおよび他の腸内細菌科、例えばサルモネラ、セラチアおよび種々のシュードモナス種を含む。これらの原核宿主において、典型的に宿主細胞に適合する制御配列(例えば、複製開始点)を含む発現ベクターも製造できる。さらに、任意の数の多様な周知のプロモータ、例えばラクトースプロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、ベータ−ラクタマーゼプロモータ系またはファージラムダのプロモータ系が存在し得る。プロモータは、典型的に発現を、所望によりオペレータ配列と共に制御し、転写および翻訳の開始および完了のためのリボゾーム結合部位配列などを含む。他の微生物、例えば酵母も本発明のP因子結合ポリペチドの発現に使用できる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用できる。
【0243】
ある好ましい態様において、哺乳動物宿主細胞を、本発明のP因子結合ポリペチドの発現および産生に使用する。例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株(例えば、実施例に記載する1D6.C9骨髄腫ハイブリドーマクローン)または外因性発現ベクターを担持する哺乳動物細胞株(例えば、下に例示するSP2/0骨髄腫細胞)であり得る。これらは、任意の正常死または正常または異常不死動物またはヒト細胞を含む。例えば、インタクト免疫グロブリンを分泌できる多くの適切な宿主細胞株が開発されており、CHO細胞株、種々のCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞およびハイブリドーマなどがある。ポリペチド発現のための哺乳動物組織細胞培養の使用は、一般的に、例えば、Winnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987に記載されている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製開始点、プロモータおよびエンハンサ(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986参照)および必要な処理情報部位、例えばリボゾーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写ターミネータ配列を含み得る。これらの発現ベクター通常は、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルス由来のプロモータを含む。適切なプロモータは構成的、細胞型特異的、段階特異的および/または調節可能または制御可能であり得る。有用なプロモータは、メタロチオネインプロモータ、構成的アデノウイルス主要後期プロモータ、デキサメサゾン−誘導性MMTVプロモータ、SV40プロモータ、MRP polIIIプロモータ、構成的MPSVプロモータ、テトラサイクリン−誘導性CMVプロモータ(例えばヒト最初期CMVプロモータ)、構成的CMVプロモータおよび当分野で知られるプロモータ−エンハンサ組み合わせを含むが、これら限定されない。
【0244】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターの挿入方法は細胞性宿主のタイプによる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが原核細胞で通常利用され、一方リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションが他の細胞性宿主で使用されうる(一般的にSambrook, et al., supra参照)。他の方法は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソーム介在形質転換、注入および微量注入、弾道法、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工的ウイルス粒子、ヘルペスウイルス構造的タンパク質VP22への融合(Elliot and O'Hare, (1997) Cell 88:223)、薬物によるDNA取込増進およびエクスビボ形質導入を含む。組み換えタンパク質の長期、高収率産生のために、安定した発現がしばしば望まれる。例えば、HER3結合抗体鎖または結合フラグメントを安定して発現する細胞株を、ウイルス複製開始点または内因性発現要素および選択可能マーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを使用して製造できる。ベクター導入後、細胞を1〜2日間富化培地で増殖させ、選択培地に移す。選択可能マーカーの目的は選択への耐性の付与であり、その存在により、選択培地中の導入配列の完全発現を成功させた細胞の増殖を可能にする。耐性の、安定形質移入細胞を、細胞型に適当な組織培養技術を使用して増殖できる。
【0245】
本発明のモノクローナル抗体の産生
モノクローナル抗体(mAbs)を、モノクローナル抗体のための常套的方法、例えば、Kohler and Milstein, 1975 Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む多様な技術により製造できる。モノクローナル抗体製造のための多くの技術、例えば、ウイルスによるまたは発癌的手法によるBリンパ球の形質転換を使用し得る。
【0246】
ハイブリドーマ製造のための動物系はマウス、ラットおよびウサギ系を含む。マウスで産生されるハイブリドーマは確立された方法である。免疫化プロトコルおよび融合用免疫化脾細胞の単離技術は当分野で知られている。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合法も知られている。
【0247】
本発明のキメラまたはヒト化抗体を、上記のとおり製造したマウスモノクローナル抗体の配列に基づき製造できる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを目的のマウスハイブリドーマから得て、標準的分子生物学技術を使用して非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように改変できる。例えば、キメラ抗体を製造するために、マウス可変領域を、当分野で知られた方法を使用してヒト定常領域と結合できる(例えば、Cabilly et al.の米国特許番号4,816,567参照)。ヒト化抗体を産生するために、マウスCDR領域を、当分野で知られた方法を使用してヒトフレームワークに挿入できる。例えば、Winterの米国特許番号5225539およびQueen et alの米国特許5530101;5585089;5693762および6180370参照。
【0248】
ある態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。P因子に対するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックまたは染色体転移マウスを使用して産生できる。これらのトランスジェニックおよび染色体転移マウスは、ここではそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼び、ここでは纏めて“ヒトIgマウス”と呼ぶ。
【0249】
HuMAbマウス
(登録商標)(Medarex, Inc.)は、非再配列ヒト重(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子微小遺伝子座を、不活性化内因性μおよびκ鎖座である標的変異と共に含む(例えば、Lonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859参照)。従って、マウスはマウスIgMまたはκの発現が低く、免疫化に応答して、導入したヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラス転換および体細胞変異に付され、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを産生する(Lonberg, N. et al., 1994 supra; reviewed in Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D., 1995 Intern. Rev. Immunol.13: 65-93, and Harding, F. and Lonberg, N., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546参照)。HuMAbマウスの産生および使用およびこのようなマウスで行うゲノム修飾は、さらにTaylor, L. et al., 1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et at., 1993 International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724; Choi et al., 1993 Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al., 1993 EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al., 1994 J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al., 1994 International Immunology 579-591; and Fishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14: 845-851に記載され、その内容全体を引用によりその全体を特に本明細書に包含させる。さらに、米国特許5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;および5,770,429;全てLonbergおよびKay;Surani et al.の米国特許番号5,545,807;全てLonbergおよびKayのPCT公開番号WO92103918、WO93/12227、WO94/25585、WO97113852、WO98/24884およびWO99/45962;およびKorman et alのPCT公開番号WO01/14424も参照のこと。
【0250】
他の態様において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を担持するマウス、例えばヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を担持するマウスを使用して惹起できる。このようなマウスは“KMマウス”と呼び、Ishida et alのPCT公開WO02/43478に詳述されている。
【0251】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物系が当分野で利用可能であり、本発明のP因子結合抗体の惹起に使用できる。例えば、Xenomouse(Abgenix, Inc.)と呼ぶ代替トランスジェニック系を使用できる。このようなマウスは、例えば、Kucherlapati et alの米国特許5,939,598;6,075,181;6,114,598;6、150,584および6,162,963に記載されている。
【0252】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替染色体転移動物系が当分野で利用可能であり、本発明のP因子結合抗体の惹起に使用できる。例えば、“TCマウス”と呼ぶヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両者を担持するマウスを使用でき、このようなマウスはTomizuka et al., (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を担持するウシが文献に記載されており(Kuroiwa et al., (2002) Nature Biotechnology 20:889-894)、本発明のP因子結合抗体の惹起に使用できる。
【0253】
ヒト本発明のモノクローナル抗体はまたヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用しても製造できる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ方法は当分野で確立され、下記実施例に記載する。例えば:Ladner et al.の米国特許5,223,409;5,403,484;および5,571,698;Dower et al.の米国特許5,427,908および5,580,717;McCafferty et al.の米国特許5,969,108および6,172,197;およびGriffiths et al.の米国特許5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915および6,593,081参照。
【0254】
ヒト本発明のモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫細胞が、ヒト抗体応答が免疫化により産生されるように再構成されているSCIDマウスを使用しても製造できる。このようなマウスは、例えば、Wilson et al.の米国特許5,476,996および5,698,767に記載されている。
【0255】
フレームワークまたはFc操作
改変された本発明の抗体は、例えば抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾されているものを含む。典型的にこのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減らすために行う。例えば、一つの手法は、1個以上のフレームワーク残基の対応する生殖系列配列への“復帰突然変異”である。より具体的に、体細胞変異に付された抗体は、抗体が由来する生殖系列配列と異なるフレームワーク残基を有し得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列と抗体が由来する生殖系列配列の比較により同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系列配置に戻すために、体細胞変異を、例えば、部位特異的突然変異誘発により生殖系列配列に“復帰突然変異”させる。このような“復帰突然変異”抗体もまた本発明に包含されることを意図する。
【0256】
他のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的免疫原性を減らすために、フレームワーク領域または1個以上のCDR領域内でさえ1個以上の残基を突然変異させることを含む。この技法は“脱免疫原性化”と呼ばれ、Carr et al.の米国特許公開20030153043にさらに詳述される。
【0257】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加えてまたはそれとは別に、本発明の抗体は、典型的に抗体の1個以上の機能的特性、例えば血清半減期、補体固定化、Fc受容体結合および/または抗原依存性細胞毒性を変えるために、Fc領域内に修飾を含むように改変し得る。さらに、本発明の抗体は、同様に抗体の1個以上の機能的特性を変えるために化学的修飾(例えば、1個以上の化学部分を抗体に結合できる)できまたはそのグリコシル化を変えるように修飾し得る。これらの態様の各々を下に詳述する。Fc領域の残基の番号付けは、KabatのEU指数である。
【0258】
一つの態様において、CH1のヒンジ領域を、ヒンジ領域におけるシステイン残基数が変わるように、例えば、増えるまたは得るように修飾する。この技法はさらにBodmer et al.の米国特許番号5,677,425に記載される。CH1のヒンジ領域のシステイン残基数を、例えば、軽鎖および重鎖の集合を促進するまたは抗体の安定性を上昇または減少させるために変える。
【0259】
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域を、抗体の生物学的半減期を減らすように変異させる。より具体的に、1個以上のアミノ酸変異を、抗体が天然Fc−ヒンジドメインpA結合に対してブドウ球菌性プロテインA(SpA)結合が障害されるように、Fc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン界面領域に導入する。この技法はさらにWard et al.の米国特許番号6,165,745に詳述される。
【0260】
他の態様において、抗体は、その生物学的半減期を延長するように修飾する。種々の手法が可能である。例えば、Wardの米国特許番号6,277,375に記載のとおり次の変異の1個以上を導入できる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を延長するために、Presta et al.の米国特許5,869,046および6,121,022に記載のとおり、抗体をCH1またはCL領域内で修飾して、IgGのFc領域のCH2ドメインの2ループから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように変更できる。
【0261】
さらに別の態様において、Fc領域を、抗体のエフェクター機能を変えるために少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することにより変える。例えば、1個以上のアミノ酸を、抗体のエフェクターリガンドに対する親和性が変わるが、親抗体の抗原結合能力を維持するように異なるアミノ酸残基で置換する。親和性が変えられるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。この技法は、Winter et al.の米国特許5,624,821および5,648,260にさらに詳述される。
【0262】
他の態様において、アミノ酸残基から選択された1個以上のアミノ酸を、抗体のC1q結合が変えられおよび/または補体依存性細胞毒性(CDC)が減らされるかまたはなくなるように異なるアミノ酸残基で置換する。この技法は、Idusogie et al.の米国特許6,194,551にさらに詳述される。
【0263】
他の態様において、1個以上のアミノ酸残基を変え、それにより、抗体が補体を固定する能力を変える。この技法はBodmer et al.のPCT公開WO94/29351にさらに詳述される。
【0264】
さらに他の態様において、Fc領域を、1個以上のアミノ酸修飾により、抗体が抗体依存性細胞毒性(ADCC)を仲介する能力を高めるおよび/または抗体のFcγ受容体に対する親和性を高めるように修飾する。この技法はPrestaのPCT公開WO00/42072にさらに詳述される。さらに、ヒトIgG1のFcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位は位置づけられており、結合が改善された変異体が記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604参照)。
【0265】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)を製造できる。グリコシル化は、例えば、抗体の“抗原”への親和性を高めるために変え得る。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1箇所以上のグリコシル化部位を変えることにより達成できる。例えば、1個以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を除き、それによりその部位でのグリコシル化を無くすような1個以上のアミノ酸置換を行う。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高める。このような手法は、Co et al.の米国特許5,714,350および6,350,861にさらに詳述される。
【0266】
これに加えてまたはこれとは別に、抗体は、グリコシル化のタイプが変わるように修飾でき、例えばフコシル残基の量が少ない低フコシル化抗体または二分GlcNac構造が多い抗体である。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが証明されている。このような炭水化物修飾は、例えば、グリコシル化機構が変更された宿主細胞での抗体の発現により達成できる。グリコシル化機構が変えられた細胞は文献に記載され、組み換え本発明の抗体を発現し、それによりグリコシル化が変えられた抗体を産生する宿主細胞として使用できる。例えば、Hang et al.のEP1,176,195は、細胞株で発現された抗体が低フコシル化であるような、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株を記載する。PrestaのPCT公開WO03/035835は、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合させる能力が減少し、また宿主細胞で発現された抗体が低フコシル化である変異体CHO細胞株、Lecl3細胞を記載する(またShields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740参照)。Umana et al.のPCT公開WO99/54342は、改変細胞株で発現された抗体で二分GlcNac構造が増加されるように糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ類(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))が改変された細胞株を記載し、これは抗体のADCC活性を高める(また Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180参照)。
【0267】
改変抗体の製造方法
ここに示すVHおよびVL配列または完全長重鎖および軽鎖配列を有する本発明のP因子結合抗体を使用して、完全長重鎖および/または軽鎖配列、VHおよび/またはVL配列またはそれに結合する定常領域の修飾により新規P因子結合抗体を調製できる。それにより、本発明の他の面において、本発明のP因子結合抗体の構造的特性を使用して、ヒトP因子の結合およびまたP因子の1個以上の機能的特性の阻害のような本発明の抗体の少なくとも1個の機能的特性を保持する構造的に関連するP因子結合抗体を調製する(例えば、MAC沈着アッセイにおけるMAC沈着阻害、溶血アッセイにおける赤血球溶解阻害)。
【0268】
例えば、本発明の抗体の1個以上のCDR領域またはその変異体を既知フレームワーク領域および/または他のCDRと組み合え的に組み合わせて、さらなる組み換え操作された、上記本発明のP因子結合抗体を調製できる。他のタイプの修飾は先のセクションに記載したものを含む。製造方法のための出発物質は、ここに提供するVHおよび/またはVL配列の1個以上または1個以上のそのCDR領域である。改変抗体を製造するために、実際ここに提供するVHおよび/またはVL配列の1個以上または1個以上のそのCDR領域を有する抗体の製造(すなわち、タンパク質としての発現)が必要である。むしろ、配列に含まれる情報を出発物質として使用して、元の配列由来の“第二世代”配列を製造し、次いで“第二世代”配列を製造し、タンパク質として発現させる。
【0269】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号1、15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197、211、225、239、253および267から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号2、16、30、44、58、72、86、100、114、128、142、156、170、184、198、212、226、240、254および268から成る群から選択されるCDR2配列および/または配列番号3、17、31、45、59、73、87、101、115、129、143、157、171、185、199、213、227、241、255および269から成る群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列;および配列番号4、18、32、46、60、74、88、102、116、130、144、158、172、186、200、214、228、242、256および270から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号5、19、33、47、61、75、89、103、117、131、145、159、173、187、201、215、229、243、257および271から成る群から選択されるCDR2配列および/または配列番号6、20、34、48、62、76、90、104、118、132、146、160、174、188、202、216、230、244、258および272から成る群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列から成るP因子結合抗体の製造方法であって、重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を少なくとも1個の変更された抗体配列を作るように変更し、変更された抗体配列をタンパク質として発現させることを含む、方法を提供する。
【0270】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号281、287、293、299、305、311、317、323、329、335、341、347、353、359、365、371、377、383、389および395から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号282、288、294、300、306、312、318、324、330、336、342、348、354、360、366、372、378、384、390および396から成る群から選択されるCDR2配列および/または配列番号283、289、295、301、307、313、319、325、331、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391および397から成る群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列;および配列番号284、290、296、302、308、314、320、326、332、338、344、350、356、362、368、374、380、386、392および398から成る群から選択されるCDR1配列、配列番号285、291、297、303、309、315、321、327、333、339、345、351、357、363、369、375、381、387、393および399から成る群から選択されるCDR2配列および/または配列番号286、292、298、304、310、316、322、328、334、340、346、352、358、364、370、376、382、388、394および400から成る群から選択されるCDR3配列から成るP因子結合抗体の製造方法であって、重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を少なくとも1個の変更された抗体配列を得るように変更し、変更された抗体配列をタンパク質として発現させることを含む、方法を提供する。
【0271】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号9、23、37、51、65、79、93、107、121、135、149、163、177、191、205、219、233、247、261および275から成る群から選択される配列を有する完全長重鎖抗体配列;および配列番号10、24、38、52、66、80、94、108、122、136、150、164、178、192、206、220、234、248、262および276から成る群から選択される配列を有する完全長軽鎖抗体配列からなる哺乳動物細胞での発現のために最適化されたP因子結合抗体最適化の製造方法であって、完全長重鎖抗体配列および/または完全長軽鎖抗体配列の少なくとも1個のアミノ酸残基を少なくとも1個の変更された抗体配列を得るように変更し、変更された抗体配列をタンパク質として発現させることを含む、方法を提供する。一つの態様において、重鎖または軽鎖の変更は、重鎖または軽鎖のフレームワーク領域内である。
【0272】
変更された抗体配列はまたUS20050255552に記載のとおり固定されたCDR3配列または最小必須結合決定基およびCDR1およびCDR2配列の多様性を有する抗体ライブラリーのスクリーニングにより製造できる。スクリーニングは、抗体を抗体ライブラリーからスクリーニングするのに適当なスクリーニング方法、例えばファージディスプレイ方法により実施できる。
【0273】
標準的分子生物学技術を使用して、変更された抗体配列を製造および発現できる。変更された抗体配列によりコードされる抗体は、ここに記載するHER3結合抗体の機能的特性の1個、いくつかまたは全てを維持し、該機能的特性は、ヒトおよび/またはカニクイザルP因子への特異的結合を含むが、これらに限定されず、抗体は溶血アッセイにおいて赤血球溶解を阻害する。
【0274】
本発明の抗体の製造方法のある種の態様において、変異を無作為にまたは選択的にP因子結合抗体コーディング配列の全てまたは一部に導入でき、得られた修飾P因子結合抗体を、ここに記載するとおり結合活性および/または他の機能的特性についてスクリーニングできる。変異的方法は文献に記載されている。例えば、ShortのPCT公開WO02/092780は、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリまたはこれらの組み合わせを使用する抗体変異の調製およびスクリーニング方法を記載する。あるいは、Lazar et al.のPCT公開WO03/074679は、抗体の生理化学特性を最適化するためのコンピュータ利用スクリーニング方法を記載する。
【0275】
本発明のある態様において抗体は、脱アミドの部位を除去するように操作されている。脱アミドはペプチドまたはタンパク質の構造的および機能的変化をもたらすことが知られている。脱アミドは生理活性の減少、ならびにタンパク質医薬の薬物動態および抗原性を変えることができる(Anal Chem. 2005 Mar 1;77(5):1432-9)。
【0276】
改変抗体の機能的特性は、当分野で利用可能なおよび/またはここに記載する標準的アッセイ、例えば実施例に記載のもの(例えば、ELISAs)を使用して、評価できる。
【0277】
予防および治療的使用
ここに記載するP因子と結合する抗体は、処置を必要とする対象に本発明の抗体または抗原結合フラグメントの有効量を投与することにより、上昇した補体活性と関連する疾患または障害の処置のための治療的に有用な濃度で使用できる。具体的態様において、本発明は、処置を必要とする対
象に本発明の抗体の有効量を投与することを含む、加齢黄斑変性症(AMD)の処置方法を提供する。
【0278】
本発明の抗体は、特に、萎縮型AMDから滲出型AMDへの進行、地図状萎縮の進行の遅延および/または阻止、黄斑性浮腫の予防または処置、ルセンティス注射頻度減少および萎縮型および滲出型AMD進行による視力喪失の阻止に使用できる。滲出型AMD患者の処置のために抗VEGF治療と組み合わせて使用もできる。
【0279】
AMDのような眼疾患の処置および/または予防は、臨床的に関連する視覚機能の測定および/または網膜解剖所見を使用して眼科医または医療専門家により決定できる。AMDの処置は、視覚機能および/または局所解剖所見の改善または保存をもたらす何らかの作用(例えば、ここに記載する抗P因子抗体の投与)を意味する。さらに、予防は、AMDに関する限り、悪化の危険性のある患者における、下記視覚機能、網膜解剖所見および/またはAMD疾患パラメータの悪化の予防または遅延をする何らかの作用(例えば、ここに記載する抗P因子抗体の投与)を意味する。
【0280】
視覚機能は、例えば、視力、低照度での視力、視野、中心視野、末梢視覚、コントラスト感受性、暗順応、光ストレス回復、色の識別、読む速度、補助器具への依存度(例えば、大活字書体、拡大デバイス、望遠鏡)、顔認識、動力者操作時の熟達、日常生活の1つ以上の活動の実行能力および/または患者が報告する視覚機能に関する満足度であり得る。それゆえに、AMDの処置は、対象で予め特定した暗順応の程度が少なくとも10%減少したときまたは10%以上の時間を要するときに実施されるということができる。さらに、AMDの処置は、認定医療専門家(すなわち、眼科医)が決定して、視覚角として表して中心視野暗点が少なくとも10%減少したときまたは10%以上の総領域が欠けたときに実施されるということができる。
【0281】
視覚機能測定の例は、Snellen視力、ETDRS視力、低照度視力、アムスラーグリッド、Goldmann視野、Humphrey視野、微小視野検査、ペリ−ロブソン・チャート、SKILLカード、石原式色覚検査表、Farnsworth D15またはD100色試験および読む速度、顔認識、模擬運転についての確認された試験および患者の報告する満足度を含む。それゆえに、AMDの処置は、ETDRSスケールで視覚の2段階以上(または10文字)の獲得または喪失により達成されたということができる。さらに、AMDの処置は、対象の読む速度(文字/分)が少なくとも10%増加したまたは10%以上の減少を欠くときに実施されるということができる。さらに、AMDの処置は、対象が石原試験のまたはFarnsworth試験の配列ディスク上の正確に同定したプレートの割合が少なくとも20%増加するまたは20%減少を欠くときに実施されるということができる。
【0282】
処置または予防し得る網膜解剖所見の望ましくない面は、例えば、ドルーゼン、軟ドルーゼン、硬ドルーゼン、角質ドルーゼン、基底層状ドルーゼン、集密的ドルーゼン、大ドルーゼン(例えば、直径125ミクロン以上)、RPE萎縮、光受容体萎縮、地図状萎縮、脈絡膜新生血管、網膜下血管新生、網膜血管新生、古典的脈絡膜新生血管、潜在性脈絡膜新生血管、網膜血管腫増殖、脈絡網膜性吻合、脈絡膜解剖所見異常、網膜下出血、網膜内出血、硝子体出血、黄斑性瘢痕、網膜下線維症および網膜線維症を含む。それゆえに、例えば、地図状萎縮の処置は、対照または同じ対象の同じ眼の先に報告された増殖速度と比較した病変における増殖速度の20%以上の減少により決定できる。
【0283】
網膜解剖所見を評価する方法の例は眼底検査、眼底撮影法、蛍光眼底造影、インドシアニングリーン蛍光眼底撮影法、光干渉断層撮影(OCT)、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影、走査型レーザー検眼鏡、共焦点顕微鏡、補償光学、眼底自発蛍光、組織診、剖検および免疫組織化学を含む。それゆえに、AMDは、OCTで測定した黄斑性厚の10%減少および/または蛍光眼底造影で測定した過蛍光の減少により対象において処置されたということができる。
【0284】
網膜解剖所見の測定例は、ドルーゼン面積、ドルーゼン体積、地図状萎縮病変面積、地図状萎縮増殖速度および新血管膜面積を含む。
【0285】
ある態様において、本発明は、処置を必要とする対象に本発明の抗体の有効量を投与することによる、補体関連疾患または障害の処置方法を提供する。既知補体関連疾患または障害の例は、神経障害、多発性硬化症、卒中、ギランバレー症候群、外傷性脳傷害、パーキンソン病、不適切なまたは望ましくない補体活性化の障害、血液透析合併症、超急性同種移植片拒絶反応、異種移植拒絶反応、インターロイキン−2治療中のIL−2誘発毒性、炎症性障害、自己免疫性疾患の炎症、クローン病、成人呼吸窮迫症候群、熱傷または凍傷を含む熱的傷害、虚血後再灌流状態、心筋梗塞、バルーン血管形成術、心肺バイパスまたは腎臓バイパスにおけるポンプ後症候群、血液透析、腎臓虚血、皮膚腺再構築後の腸間膜動脈再灌流、感染性疾患または敗血症、免疫複合体障害および自己免疫性疾患、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、SLE腎炎、増殖性腎炎、溶血性貧血および重症筋無力症を含む。さらに、他の既知の補体関連疾患は、呼吸困難、喀血、ARDS、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、肺塞栓症および梗塞、肺炎、線維形成粉塵疾患、不活性粉塵および鉱物(例えば、シリコン、石炭塵、ベリリウムおよびアスベスト)、肺線維症、有機粉塵疾患、化学傷害(刺激性ガスおよび化学物、例えば、塩素、ホスゲン、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、アンモニアおよび塩酸)、煙傷害、熱的傷害(例えば、熱傷、凍傷)、喘息、アレルギー、気管支収縮、過敏性肺炎、寄生虫疾患、グッドパスチャー症候群、肺脈管炎および免疫複合体関連炎症のような肺疾患および障害である。
【0286】
具体的態様において、本発明は、処置を必要とする対象に本発明の抗体の有効量を投与することを含む補体関連疾患または障害の処置方法を提供し、ここで、該疾患または障害は喘息、関節炎(例えば、リウマチ性関節炎)、自己免疫性心臓疾患、多発性硬化症、炎症性腸疾患、虚血−再灌流傷害、バラケル−ジーモンス症候群、血液透析、全身性狼瘡、エリテマトーデス、乾癬、多発性硬化症、移植、アルツハイマー病および他の神経変性状態のような中枢神経系の疾患、aHUS、糸球体腎炎、類天疱瘡またはMPGN IIである。
【0287】
具体的態様において、本発明は、処置を必要とする対象に本発明の抗体を含む組成物の有効量を投与することによる、糸球体腎炎の処置方法を提供する。糸球体腎炎の症状は、タンパク尿;糸球体濾過速度(GFR)減少;高血圧および浮腫をもたらす水保持にいたる高窒素血症(尿毒症、過剰な血中尿窒素−BUN)および塩保持を含む血清電解質変化;赤血球円柱を含む血尿および異常尿沈渣;低アルブミン血症;高脂血症;および脂肪尿を含むが、これらに限定されない。具体的態様において、本発明は、処置を必要とする対象に本発明の抗体を含む組成物の有効量を投与することによる、発作性夜間ヘモグロビン尿(PNH)の処置方法を提供する。
【0288】
具体的態様において、本発明は、処置を必要とする対象に本発明の抗体を含む組成物の有効量を投与することによる、外循環と関連する免疫および止血系の機能不全を減少する方法を提供する。本発明の抗体は、患者血液を患者の血管から、導管を通って循環させ、患者の血管に戻すことを含むあらゆる過程に使用でき、導管は補体活性化、血小板活性化、白血球活性化または血小板−白血球接着の少なくとも一つを誘発できる物質を含む管腔表面を有する。このような工程は、全ての形態のECC、ならびに人工または外来臓器、組織または血管を患者の血液循環に導入することを含む方法を含むが、これらに限定されない。
【0289】
本発明の治療剤で処置する対象は、黄斑変性症と関連する状態を処置する方法が知られている他の治療剤、例えば、米国特許番号6,218,368に記載の抗生物質処置も問うよできる。他の処置において、シクロスポリンのような免疫抑制性剤は、免疫応答を抑制できる薬剤である。これらの薬剤は、細胞毒性剤、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、特異的Tリンパ球免疫抑制剤および抗体またはそのフラグメントを含む(Physicians’ Desk Reference, 53rd edition, Medical Economics Company Inc., Montvale, N.J. (1999)参照)。免疫抑制性処置は、典型的に1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月または1年の間隔で継続する。ある患者において、処置を患者が死ぬまで投与する。
【0290】
本発明の治療剤を他の薬剤と共に投与したとき、2剤を任意の順番で連続的または同時に投与できる。ある面において、本発明の抗体を、また第二財(例えば、ベルテポルフィン)での処置も受けている対象に投与する。他の面において、結合分子を外科的処置と関連して投与する。
【0291】
P因子結合抗体との組み合わせ処置のための適切な薬剤は、補体成分の活性を調節できることが知られている薬剤を含む(例えば、米国特許番号5,808,109参照)。他の薬剤は補体介在活性を減少と報告されている。このような薬剤は、アミノ酸(Takada, Y. et al. Immunology 1978, 34, 509);ホスホネートエステル類(Becker, L. Biochem. Biophy. Acta 1967, 147, 289);ポリアニオン性物質(Conrow, R. B. et al. J. Med. Chem. 1980, 23, 242);スルホニルフルオライド類(Hansch, C.;Yoshimoto, M. J. Med. Chem. 1974, 17, 1160およびそこに引用されている引用文献);ポリヌクレオチド(DeClercq, P. F. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1975, 67, 255);ピマール酸(Glovsky, M. M. et al. J. Immunol. 1969, 102, 1);ポルフィン類(Lapidus, M. and Tomasco, J. Immunopharmacol. 1981, 3, 137);いくつかの抗炎症剤(Burge, J. J. et al. J. Immunol. 1978, 120, 1625);フェノール類(Muller-Eberhard, H. J. 1978, in Molecular Basis of Biological Degradative Processes, Berlin, R. D. et al., eds. Academic Press, New York, p. 65);およびベンズアミジン類(Vogt, W. et al Immunology 1979, 36, 138)を含む。これらの薬剤のいくつかは、プロテアーゼおよびエステラーゼの一般的阻害により機能する。その他は補体経路における何らかの特定の中間工程に特異的ではなく、むしろ、補体活性化の1工程以上を阻害する。後者の化合物の例は、C1、C4およびC3b利用を阻害するベンズアミジン類を含む(例えば、Vogt et al. Immunol. 1979, 36, 138参照)。
【0292】
補体成分活性を阻害することが知られているさらなる薬剤は、スタキボトリス属の真菌代謝物であるK−76である(Corey et al., J. Amer. Chem. Soc. 104:5551, 1982)。K−76およびK−76 COOHのいずれも、補体を主にC3b工程で阻害することが示されており(Hong et al., J. Immunol. 122:2418, 1979;Miyazaki et al., Microbiol. Immunol. 24:1091, 1980)、正常ヒト補体で走化性因子の産生を阻害することが示されている(Bumpers et al., Lab. Clinc. Med. 102:421, 1983)。高濃度のK−76またはK−76 COOHで、C2、C3、C6、C7およびC9とそのそれぞれの前の中間体との反応の幾分環阻害が示される。K−76またはK−76 COOHはまた補体アクティベーター系におけるC3bを阻害するとも報告されている(Hong et al., J. Immunol. 127:104-108, 1981)。本発明の方法の実施に際し他の適切な薬剤は、グリセオフルビン(Weinberg, in Principles of Medicinal Chemistry, 2d Ed., Foye, W. O., ed., Lea & Febiger, Philadelphia, Pa., p. 813, 1981)、イソパンナリン(Djura et al., Aust. J. Chem.36:1057, 1983)およびSiphonodictyon coralliphagumの代謝物(Sullivan et al., Tetrahedron 37:979, 1981)を含む。
【0293】
組み合わせ治療レジメンは、相化的であってよく、症状的結果を生じることもある(例えば、2剤の組み合わせ使用により予測される以上の補体経路活性減少)。ある態様において、本発明は、本発明のP因子結合抗体および抗血管形成、例えば抗VEGF剤または他の抗補体抗体、例えば補体因子5(C5)と結合する抗体またはその抗原結合フラグメントによる、上記AMDまたは他の補体関連疾患の予防および/または処置のための組み合わせを提供する。
【0294】
抗補体抗体の組み合わせ
一つの面において、本発明は、任意の1個以上の抗P因子と補体経路の他の成分と結合し、活性を阻害する付加的抗体の組み合わせを提供する。特に、本発明は、補体成分5(C5)と結合する抗体または抗原結合フラグメントと組み合わせた任意の1個以上の抗ここに記載するP因子抗体または抗原結合フラグメントを含む。C5に結合し、補体活性化を阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントの例は、例えば米国特許8,241,628(引用により本明細書に包含させる)に見ることができる。より具体的に、C5と結合し、補体経路を阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントを表2に示し、記載する。一つの面において、本発明は、表1に示し、記載する抗P因子抗体またはその抗原結合フラグメントと表2からの抗C5抗体8109の組み合わせに関する。より具体的に、本発明の一つの面は、表1からの抗体NVS962(またはその抗原結合フラグメント)と表2からの抗体8109(またはその抗原結合フラグメント)の組み合わせに関する。
【0295】
一つの面において、ここに記載する抗P因子および抗C5抗体の組み合わせは補体経路、特に代替補体経路の相乗的阻害を証明する。このような阻害は、例えば、下記実施例に記載する溶血またはポリ−ICアッセイにより証明できる。ここに記載する抗P因子および抗C5抗体の組み合わせの使用により達成される代替補体経路阻害における相乗は、当分野で周知の方法を使用して決定できる。例えば、抗P因子抗体および抗C5抗体の相乗効果は、Chalice Analyzerのような特定のソフトウェアを使用して単なる相加に対して決定できる。
【0296】
要約すると、Chalice Analyzer(Lehar et al, Nature Biotechnology 2009, 7:659)ソフトウェアを使用して、補体阻害抗体(例えば、抗P因子および抗C5)が、補体活性化遮断に対して相乗的に作用するか否かを決定できる。組み合わせ効果は、単剤曲線に基づく組み合わせ参照モデルと、各データ点の比較により特徴付けることができる(Greco, Bravo, Parsons (1995). The search for synergy: a critical review from a response surface perspective.
Pharmacol Rev 47(2): 331-85)。Loewe加算性モデル(Loewe (1928). Die quantitativen Probleme der Pharmakologie.
Ergebn. Physiol. 27: 47-187)において、I
Loewe(C
X,C
Y)は、(C
X/IC
X)+(C
Y/IC
Y)=1を満たす阻害であり、IC
X,Yは、適合単剤曲線のI
Loeweでの有効濃度である。Loewe加算性は、XおよびYが同じ化合物であるときに産生された組み合わせ応答を表すため、相乗性の一般的に認められた参照である(Greco et al.)。
【0297】
効力変化を、通常、同じ効果に到達するのに必要な単剤と比較したときに、所望の効果レベルに到達するのに必要な薬剤がどの程度少ないかを示すアイソボログラム(Greco et al.)を使用して示す。アイソボログラム表示および組み合わせ指数計算のための効果レベルの選択は、手動でも、Chalice Analyzerで自動に選択させてもよい。自動等レベル選択アルゴリズムは、観察したI
データを最大I
データ−I
Loeweと共に発見し、少ない単剤I
maxを超えるI
データのデータ点を除外する。この除外は、アイソボログラムが両方の単剤によりカバーされるレベルで最良の相乗性を反映することを確実にするために適用する。アイソボログラムレベルI
cutの選択で、アイソボログラムは、選択した等レベルとの交差に対応する濃度の位置を同定することにより描かれる。アイソボログラムは、Loewe用量相加的“薬物それ自体”標準と比較した、相乗性の標準的アイソボログラム解析を示す。特定したアイソボログラムレベルについて、観察された等効果カウンター(例えば、
図3における曲線)を理論的用量相加カウンター(例えば、
図3における直線)と、組み合わせの両物質のIC
効果標準化直線濃度スケール上に示す。用量相加参照は、常に2個のIC
効果濃度を接続する線である。IC
効果交差点は、近似シグモイド用量応答曲線の内挿により見ることができる。
【0298】
効力変化を組み合わせ指数CIとしてスコア化する(Chou, Talalay (1984). Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors.
Adv Enzyme Regul 22: 27-55)。選択した等効果レベルI
cutについて、CII=(C
X/EC
X)
I+(C
Y/EC
Y)
I(式中、特定のデータ点の(C
X/EC
X)
Iは選択阻害レベルでのその有効濃度に対するX化合物の測定濃度の比である)である。CIは、どの程度の薬剤が選択した効果レベルを達成するために単剤に対して組み合わせで必要であるかを概算すると考えることができ、0.1の値は、単剤のわずか1/10当量が同じ効果レベルを達成するために必要であったことを意味する。0.5〜0.7の範囲のCI値が、現在の臨床組み合わせのインビトロ測定で典型的である(Greco et al.)。1.0のCI値は抗体の組み合わせの相加効果の指標であり、一方0.5未満のCI値は、抗体組み合わせから得られる強い相乗効果の指標である。Chalice Analyzerにおいて、最高CIが、各I
cut交差濃度について計算した多くの組み合わせ指数値から報告される。全測定CI値の中で、最大シグナル対ノイズレベルを最高組み合わせ指数として記載する。
【0299】
ここに記載する抗P因子および抗C5抗体の組み合わせは、個々にまたは一組成物として投与してよい。さらに、r抗P因子および抗C5抗体の相対量は1:1比であってよく、異なる比でもよい。抗C5抗体に対する抗P因子抗体の特定の量は、最終的に処置医または医療専門家が処置する病態の改善を達成するために選択してよい。例えば、ここに記載する組み合わせをAMD処置に使用するとき、医師または医療専門家は、ここに記載する測定および基準を使用して決定して、最適治療利益を達成するために、抗P因子および抗C5抗体の相対量を調整してよい。
【0300】
医薬組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と製剤されたP因子結合抗体(インタクトまたは結合フラグメント)を含む医薬組成物を提供する。組成物は、さらに、例えば、病的血管新生または腫瘍増殖の処置または予防に適切な、1種以上の他の治療剤を含み得る。薬学的に許容される担体は、組成物を亢進または安定化でき、または組成物の製造を容易にするために使用できる。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性である溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。
【0301】
本発明の医薬組成物は、当分野で知られる種々の方法により投与できる投与経路および/または方法は所望の結果により変わる。硝子体内、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下への投与または標的部位の近位への投与が好ましい。薬学的に許容される担体は、硝子体内、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または注入による)が好ましい。投与経路によって、活性化合物、すなわち、抗体、二重特異性および多選択性分子を、該化合物を不活性化し得る酸および他の条件の活性から化合物を守るために物質でコーティングしてよい。
【0302】
組成物は無菌および液体でなければならない。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散剤の場合必要な粒子径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持できる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトールまたはソルビトールのようなポリアルコール類および塩化ナトリウムを組成物に包含させることが好ましい。注射可能組成物の長期吸収は、組成物に吸収を遅延させる薬剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを包含させることにより達成できる。
【0303】
本発明の医薬組成物は、当分野で周知のおよび当分野で日常的に実施されている方法に従い製造できる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000; and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下に製造する。典型的に、治療的有効量または有効量のP因子結合抗体を本発明の医薬組成物に用いる。P因子結合抗体を、当業者に知られた慣用法により薬学的に許容される投与形態に製剤する。投与量レジメンを、最適な所望応答(例えば、治療応答)を提供するように調節する。例えば、単回ボーラスを投与してよく、数回の分割投与量を一定時間かけて投与してよくまたは投与量を治療状況の緊急度により示されるように徐々に減らしても増やしてもよい。非経腸組成物を投与の容易さおよび投与量の均一さのために投与量単位形態に製剤するのが特に有利である。ここで使用する投与量単位形態は、処置する対象への均一投与に適した物理的に分けられた単位を言い、各単位は、所望の治療を生じると計算された予め決定された量の活性化合物を必要な医薬担体と共に含む。
【0304】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために、変わり得る。選択した投与量は、用いる特定の本発明の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置期間、他の薬物、用いる特定の組成物と組み合わせて使用する化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的状態および薬歴などの医学分野で知られた因子を含む、多様な薬物動態因子による。
【0305】
医師または獣医師は、医薬組成物中で用いる本発明の抗体を、所望の治療効果が達成されるのに必要であるより低いレベルを用いて開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増やし得る。一般に、ここに記載するアレルギー性炎症性障害の処置のための本発明の組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の併用剤および処置が予防的であるか治療的であるかを含む多くの多様な因子により変わる。処置投与量は安全性および有効性を最適化するためにタイトレーションする必要がある。抗体の全身投与について、投与量は約0.0001〜100mg/kg、より一般にには0.01〜15mg/kg宿主体重の範囲であり得る。抗体の硝子体内投与について、投与量は0.1mg/眼〜5mg/眼の範囲であり得る。例えば、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、1.2mg/ml、1.3mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml、1.6mg/ml、1.7mg/ml、1.8mg/ml、1.9mg/ml、2.0mg/ml、2.1mg/ml、2.2mg/ml、2.3mg/ml、2.4mg/ml、2.5mg/ml、2.6mg/ml、2.7mg/ml、2.8mg/ml、2.9mg/ml、3.0mg/ml、3.1mg/ml、3.2mg/ml、3.3mg/ml、3.4mg/ml、3.5mg/ml、3.6mg/ml、3.7mg/ml、3.8mg/ml、3.9mg/ml、4.0mg/ml、4.1mg/ml、4.2mg/ml、4.3mg/ml、4.4mg/ml、4.5mg/ml、4.6mg/ml、4.7mg/ml、4.8mg/ml、4.9mg/mlまたは5.0mg/ml。処置レジメの例は、2週間毎または月1回または3〜6ヶ月毎の全身投与を必要とする。処置レジメの例は、2週間毎または月1回または3〜6ヶ月の全身投与を必要とする。
【0306】
抗体は、通常複数回投与する。各投与の間隔は週、月または年であり得る。患者のP因子結合抗体の毛中レベルの測定により示されるとおり間隔は不定期であってもよい。さらに、別の投与間隔が医師により決定されてよく、毎月または有効であるための必要に応じて投与される。有効性は病変増殖、ルセンティスレスキューの割合、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD−OCT)で決定した網膜厚および二次的視力に基づく。全身投与のいくつかの方法において、1〜1000μg/ml、ある方法では25〜500μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように投与量を調節する。あるいは、抗体を徐放性製剤として投与でき、この場合、少ない頻度の投与が必要である。投与量および頻度は、患者の抗体半減期により代わる。一般に、ヒト化抗体はキメラ抗体および非ヒト抗体より長い半減期を示す。投与量および投与頻度は処置が予防的であるかまたは治療的であるかにより変わる。予防適用において、相対的に低投与量を、相対的に低頻度で、長期間にわたり投与する。ある患者は、死ぬまで処置を受け続ける。治療的適用において、相対的に高投与量を、相対的に短い間隔が、疾患進行が減少するまたは停止するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的または完全な改善を示すまで必要であることがある。その後、患者に予防的レジメを投与してよい。
【実施例】
【0307】
次の実施例は本発明をさらに説明するために提供するが、その範囲に限定されない。本発明の他の変法が当業者には容易に明らかであり、添付する特許請求の範囲に包含される。
【0308】
実施例1:親和性成熟P因子抗体の産生
完全なヒトファージ表示ライブラリーを使用して、ここに記載するP因子結合抗体を産生した。
ビオチニル化および非ビオチニル化ヒトおよびカニクイザルP因子を溶液および固相パニングに使用した。標準的パニングをRapMAT手法と同様行った(Prassler et al., (2009) Immunotherapy 1(4):571-583)。親和性成熟後(Knappik et al., (2000) J.Mol.Biol., 296:57-86)、一連の10抗体をその後ジスルフィド架橋Fab形式への変換のために選択した。得られたジスルフィド架橋Fabsを表1に示す(NVS962、NVS963、NVS964、NVS965、NVS966、NVS967)。
【0309】
実施例2:さらなる抗体最適化
次の実施例は、ここに記載する抗体のさらなる最適化に使用し得る方法を記載する。
【0310】
脱アミド部位の除去
脱アミド部位を、還元状態で行ったペプチド位置づけおよび分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)により同定した。脱アミド物質はMAC沈着アッセイにおいて効果が減少し、BiacoreおよびSETで測定して、ヒトおよびカニクイザルFPに対する親和性が減少している。脱アミドの程度は経時的(3週間)、高温度(5日間、37C)および還元条件下に増加した。脱アミドをイオン交換カラムを使用して検出でき、複数ピークおよび付加的脱アミドピークの観察をもたらす。最も脱アミドされやすいアミノ酸配列はSNG、LNG、LNN、ELNである(Daugherty, A. and Mrsny, R. (2010) Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing. Springer. p103-129)。したがって、我々は、脱アミド部位を除去し、機能保持について修飾抗体を試験するため一連の試験をした。
2個のFabs、NVS962およびNVS965を、重鎖の脱アミド部位、特異的に30位にあるアスパラギンを置換するために再設計した。次の新規Fabsを産生して脱アミド部位を除去し、対応するアミノ酸置換を表2に示す。
【0311】
【表70】
産生したさらなるFabは、Fab NVS962におけるセリン31をアラニンで置換し、Fab NVS962−S31Aを産生した。修飾されたFabsの配列は表1に示す。
【0312】
開裂部位の除去
さらに最適化をNVS962−SおよびNVS965−Sで行って、重鎖CDR3における開裂部位を除去した。特異的に、重鎖をY102S103で開裂した。下記表は開裂部位破壊のために行ったアミノ酸置換を記載する。修飾されたFabsの配列は表1に示す。
【表71】
【0313】
実施例3:最適化抗体の特徴づけ
次の実施例は、抗体親和性の測定に使用し得る方法を記載する。これらおよび他の結合親和性測定法は当分野で知られている。
【0314】
親和性決定
P因子の抗体親和性を、Biacore T200(Biacore)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)および溶液平衡滴定(SET)により測定した。P因子結合についての各技術および対応する平均結果を下に記載する。モデリング仮定は、系中のP因子濃度、P因子生合成の動態および半減期、ならびに所望の投与スケジュールを考慮に入れて、P因子に対して500pMより大きい親和性のFabが遊離P因子レベル低下に十分であることを示唆する。
【0315】
Biacore決定
相互作用の動態、すなわち複合体形成(k
a)および解離(k
d)の速度をセンサーグラムの情報から決定できる。サンプルが調製したセンサー表面を通過するとき結合が起こるならば、センサーグラムの応答は増加する。平衡に達したならば、一定シグナルが見られる。サンプルを緩衝液で置き換えると、結合分子が解離し、応答が減少する。Biacore評価ソフトウェアは、相互作用モデルにデータを適合させることによりk
aおよびk
dの値を得る(表4)。
【0316】
Biacore動態実験を、CM5センサーチップ(GE Healthcare、BR-1005-30)を使用するBiacore T100(GE Healthcare)で25℃で行った。流動緩衝液はHBS−EP(+)(GE Healthcare、BR-1001-88)であった。要約すると、結合親和性決定のために次の工程を行った。
・
抗FP IgG固定化センサーチップ製造:マウス抗FPモノクローナル抗体(Quidel、A235)(アセテートpH5.0カップリング緩衝液(GE Healthcare、BR-1003-51)中30μg/ml)を、CM5チップ上の2個のフローセル(Fc1および2)に10μl/分の流速で600秒、製造者の指示に従うアミノカップリング法を使用してカップリングさせた(GE Healthcare、BR-1000-50)。最終固定化レベルは>7000RUであった。
・
第二フローセルへのFP捕捉:流動緩衝液中1μg/mlのFPを10μl/分で第二フローセル(Fc2)に注入し、Fabのための捕捉レベル〜20RUまたはIgG動態分析のための〜7RUに到達させた。
・
両フローセルへの種々の濃度の抗FP FabまたはIgG注入:両フローセル(Fc1および2)に抗FP溶液(流動緩衝液中0.3125nM〜10nM;1:2連続希釈)を60μl/分で240秒注入。
・
解離:HBS−EP(+)流動緩衝液を60μl/分で両フローセルに注入し、FPと抗FP Fab/IgGの解離をモニター。解離時間を5nMおよび2.5M Fab/IgG濃度では2400秒および別の5nM Fab/IgG濃度を含む他の全濃度で300秒に設定した。
・
再生:再生を、両フローセルで各サイクルの最後に10mM グリシン−HCl pH1.7(GE Healthcareにより提供)+0.05%P20 界面活性剤(GE Healthcare、BR-1000-54)で流速60μl/分で15秒、2回行った。
・
動態分析:動態速度定数を、1:1結合モデルをBIAevaluation 1.1ソフトウェアに適合させることにより得て、ここで、R
max値を局所的に適合させた。
【0317】
Biacore結合動態決定の結果を表4に示す。示されるとおり、ここに記載する抗体はヒトP因子に対し高親和性結合を示し、KD値は典型的に1nM以下、多くの場合200pM以下であった。これらの抗体はまたカニクイザルP因子に極めて高い親和性を示す(結合親和性500pM未満)。
【0318】
SET決定
SPRのようなセンサー表面を使用する動態アッセイとは対照的に、SETは、溶液での親和性を決定する方法である。動態データを送達しない平衡測定である。
SETにおいて、一定量の抗体を種々の濃度の抗原と、平衡に達するまでインキュベートする。平衡化溶液中の遊離抗体濃度を、溶液を抗原被覆MSDTMプレート(Meso Scale Discovery
TM)に適用し、続いてECL標識二次的抗体とインキュベートし、シグナル強度を測定することにより決定する。低抗原濃度で、強シグナルが達成され(プレート上の抗原と結合する高濃度の遊離抗体)、高抗原濃度については、抗体が完全に抗原捕捉され、低シグナルとなる。マッチング範囲での十分な数の抗原濃度が利用可能であるならば、適当な適合モデルを使用して、滴定曲線は親和性の合理的決定を可能にする。完全滴定のために、予測K
Dの少なくとも10倍高い抗原濃度を適用する。アッセイに適用する抗体の一定濃度はK
Dの範囲またはそれより下でなければならない(表4)。
【0319】
溶液平衡滴定(SET)でのK
D決定のために、抗体タンパク質の単量体フラクションを使用した(少なくとも90%単量体含量、分析的SECにより分析;FabについてはSuperdex75 (Amersham Pharmacia)またはIgGについてはTosoh G3000SWXL(Tosoh Bioscience))。
溶液での親和性決定を基本的に文献に記載のとおり行った(Friguet et al. 305-19)。SET方法の感受性および精度を改善するために、古典的ELISAからECLベースの技術に変えた(Haenel et al., 2005).
1mg/mlヤギ抗ヒト(Fab)
2フラグメント特異的抗体(Dianova)をMSDスルホTAG
TM NHS−エステル(Meso Scale Discovery, Gaithersburg, MD, USA)で製造者の指示に従いラベルした。
【0320】
ヒトP因子(Complement Technology cat#:A139)およびカニクイザル血清から精製したカニクイザルP因子(Nakano, et al., (1986) J Immunol Methods 90:77-83を応用したプロトコル)を、標準的結合MSDプレート(Meso Scale Discovery、384ウェル:MSD cat#:L21XA、96ウェル:MSD cat#:L15XA)に、25μl PBS中0.2〜0.3μg/mlで被覆し、一夜、4℃でインキュベートした。P因子阻害剤を固定濃度(1pMまたは10pM)にインキュベーション緩衝液(PBSと2%BSA(Sigma cat#:A4503)および1%Tween20および1%Triton−X(Sigma cat#:234729))で希釈し、インキュベーション緩衝液中のP因子(ヒトまたはカニクイザル)の一連の希釈物に天下した。サンプルを、RTで一夜インキュベートして平衡化させた。プレートを洗浄緩衝液(PBSと0.05%Tween20)で3回洗浄し、100μl インキュベーション緩衝液でRTで2時間遮断した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。P因子阻害剤およびP因子滴定含有サンプルをプレート(25μl)に天下し、RTで15分インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。25μl 検出抗体(抗ヒト(ヤギ)スルホTAG、インキュベーション緩衝液中1:1000、MSD cat#:R32AJ-1)を添加し、RTで60分インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、50μlの1×MSD Read緩衝液Tを添加した(界面活性剤と共に、MSD cat#:R92TC-1)。プレートをMSD Spector Imager 6000で読んだ。
【0321】
データをGraphPad Prismソフトウェアv4で、バックグラウンド(Fab非含有ウェルの平均)を各値から減算した。X軸値(溶液中のP因子濃度)をlog10xに変換した。KD値(KD)を次のモデルから適合させた:
Fab:
【数1】
Top=抗原濃度=0でのシグナル
x=溶液中のP因子濃度
Fab=一価検体(Fab)に適応した濃度
【0322】
【表72】
【表73】
【0323】
実施例4:P因子抗体は代替補体経路を阻害する
溶血アッセイ
溶血手法において、全ての補体成分が存在し、機能的でなければならない。それゆえに、溶血手法は機能的完全性および補体系の欠損の両方をスクリーニングできる(van et al., 1980;Minh et al., 1983;Tanaka et al., 1986)。古典的経路の機能的能力を測定するために、溶血素で被覆したヒツジ赤血球(ウサギIgGをヒツジ赤血球に)またはウサギ抗ニワトリ抗体で感作したニワトリ赤血球を標的細胞(感作細胞)として使用した。これらのAg−Ab複合体は、成分が機能的であり、適切な濃度で存在するとき、古典的経路を活性化し、標的細胞を溶解する。ヒトおよびカニクイザル血清における代替経路の機能的能力を決定するために、ウサギ赤血球を標的細胞として使用する(米国特許番号6,087,120参照)。
【0324】
溶血アッセイは、補体活性化について試験する基本的機能的アッセイであり、抗ヒトFP mAbsおよびFab分子が補体経路による赤血球(RBCs)溶解を遮断する能力を評価するために使用されている。ヒトC5を認識する一本鎖Fvフラグメントによる補体活性のインビトロおよびインビボ阻害を、溶血アッセイを使用して測定できる(Thomas et al., 1996;Rinder et al., 1995;Rinder et al., 1995)。C5aおよびC5b−9産生の遮断は、体外循環中の白血球および血小板活性化を遮断する。要約すると、古典的経路アッセイのために、感作赤血球(例えば、ニワトリRBCs)を血清に存在する補体タンパク質による溶解の標的として使用する。次のアッセイが、代替補体経路阻害についてのP因子抗体の特徴づけおよびスクリーニングに興味深い。
【0325】
この方法はRinder et al., 1995;Thomas et al., 1996の応用である。
試薬:
・ ウサギ赤血球(Rb RBCs) − Lampire, Cat# 7246408
・ ヒト血清 − Novartis Blood Research Program;またはカニクイザル血清 − Alpha Genesis
・ ゼラチンベロナール緩衝液(GVB) − Boston BioProducts, Cat# IBB-300
・ EGTA − Boston BioProducts, Cat# BM-151
・ MgCl
2
・ U底96ウェルプレート − Corning, Cat# 3795
・ Flat底96ウェルプレート − Corning, Cat# 3370
・ NP−40 − Sigma, Cat# 74385
【0326】
プロトコル:
ウサギ赤血球(RBCs)を洗浄し、GVB/EGTA/Mg
++中で8.33×10
7細胞/mlに調節した。GVBで希釈した50μl Fabを96ウェル丸底プレートのウェルに添加した。EGTAおよびMg
++含有GVBで希釈した50μl血清をついで添加した。コントロールウェルを次の方法で調製した:Fab非含有血清(ネガティブコントロール)および細胞+0.1%NP−40(100%溶解コントロール)およびNP−40ブランクウェル。Fab含有および非含有血清およびコントロールを室温で30分インキュベートした。この時点で、30μl Rb RBCsをサンプルおよコントロールウェルに添加し、30μlの緩衝液をブランクウェルに添加した。細胞を一般的に30分、37℃でインキュベートし、プレートを2000rpmで5分遠心分離した。上清を回収し、平底プレートに移した。上清の吸光度をOD415およびOD570で読んだ。溶血パーセントを次の式を使用して計算した。
【数2】
【0327】
表5は、P因子抗体および抗原結合フラグメントが10%ヒトまたは20%カニクイザル血清で溶血を阻害する能力を例示する。ここに記載するP因子抗体の各々は、溶血を50nM以下のIC
50で阻害する。
対照的に、古典的補体経路活性化を試験するためにアッセイを感作赤血球で行ったとき、ここに記載するP因子抗体は、古典的補体経路を阻害しないことが判明した(データは示していない)。
【0328】
C3b沈着アッセイ
代替経路における補体C3に対して活性な阻害剤を測定する一つの方法は、ザイモサン上に沈着する分解産物であるC3bの測定である。このELISAに基づくアッセイを、次の工程で行った:カーボネート緩衝液、pH9.6(Pierce Cat# 28382)中の25μlの1mg/ml ザイモサンA(Sigma Z4250)を、Maxisorp384ウェルELISAプレート(Nunc 464718)に一夜、4℃で被覆した。次の日、ザイモサン被覆プレートを吸引し、100μl/ウェルのELISA遮断緩衝液であるSynblock(AbD Serotec BUFO34C)で、2時間、室温で遮断した。別の反応において、ゼラチンベロナール緩衝液(Boston Bioproducts IBB320−10mM バルビタール、145mM NaCl、0.1%ゼラチン、0.5mM MgCl
2、10mM EGTA)で連続希釈した阻害剤を、1mM MgCl
2および10mM EGTAの最終総反応濃度となるようにMgCl
2およびEGTAを添加した10%血清に添加した。ポジティブコントロールは阻害剤を含まず、ネガティブコントロールは25mM EDTAを含んだ。混合物を室温で30分インキュベートすることにより再平衡化した。遮断緩衝液を除去するために、緩衝液を吸引し、プレートをTBS/0.05%Tween−20で1回洗浄した。25μl/ウェルの阻害剤含有10%血清またはコントロールをプレートに添加し、37℃で30分インキュベートした(ザイモサン上のC3b沈着の直線状範囲内にあることを予め時間経過により決定した)。30分のインキュベーション後、プレートをTBS/0.05%Tween−20で3回インキュベートした。ザイモサン上のC3b沈着を検出するために、製造者の指示に従いPBSと2%BSA Fraction V(Fisher Cat# ICN 16006980)で希釈した25μl/ウェルのニワトリ抗ヒトC3−HRPコンジュゲートポリクローナル抗体(Immunology Consultants Laboratory, Inc. Cat# CC3-80P-1)、0.1%Tween20(Sigma cat# P1379)および0.1%TritonX−100(Sigma cat# P234729)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをTBS/0.05%Tween−20で3回洗浄し、ついで25μlのUltra TMB基質溶液(Pierce Cat#34028)を添加した。ウェル中の溶液が青色に変わったら、15μlの2N 硫酸で反応を停止させた。プレートを、Spectromaxを使用して450nmで読み、プラスチックプレートについて570nm(OD
450−570nm読み取り)で補正した。ザイモサン上のC3b沈着を次の式により計算した:
【数3】
試験した抗体の各々は、少なくとも10nM以下のIC
50でC3b沈着を阻害した(表5)。
【0329】
MAC沈着アッセイ
P因子抗体が代替補体経路を阻害する能力の決定に使用できる他のアッセイは、抗体が、C3コンバターゼおよびP因子活性の下流である膜侵襲複合体(MAC)産生を阻害する能力である。要約すると、ザイモサンA(Sigma)を、プレートに、カーボネート緩衝液、pH9.5中1mg/mlで被覆し、代替経路を活性化した。Fabsを血清(20%血清、5mM MgCl
2、10mM EDTA)とプレインキュベートし、ついでプレートに添加し、一夜、室温でインキュベートした。プレートをTBSTで3回洗浄後、MACを抗C5b−9−ALP(Diatec)と1時間インキュベートし、TBSTで3回洗浄し、2mM MgCl
2添加4−メチルウンベリフェリルホスフェート(Fisher)と30分間インキュベートすることにより検出した。0.2M EDTAで反応を停止させ、プレートをex=355nm、em=460nmで読んだ。MAC沈着阻害を、各サンプルについてベースライン(EDTA処置ヒト血清)およびポジティブコントロール(ヒト血清)に対して計算し、PRISMでのIC
50曲線の作成に使用した。
表5は、P因子抗体がMACの沈着を阻害する能力を証明するデータを示し、それ故に、抗体が代替補体経路を阻害することを示唆する。具体的に、抗体は、MAC沈着を25nM以下のIC
50で阻害した。
【0330】
C3a沈着アッセイ
P因子抗体の代替補体経路を阻害する能力を評価するために使用する他の方法は、C3コンバターゼによるC3開裂後抗体がC3aの産生を阻害する能力の測定である。本アッセイを、10mg/mlおよび10%および20%ヒト血清でで被覆し、2
nシリーズで希釈した抗プロパージンFabとプレインキュベートしたザイモサン−被覆Maxisorpプレート被覆で行った。血清をプレートに30分間添加し、その時点で血清をC3a産生の評価のために回収した。
Maxisorpプレートを、抗C3a des-arg neo抗体(1μg/ml)で一夜被覆し、3回洗浄し、希釈剤で2時間、室温で遮断した。希釈剤吸引後、血清を1時間添加した。プレートを3回洗浄し、希釈剤で希釈した100μL/ウェル検出抗体マウス抗ヒトC3a−ビオチン1:1000を添加した。さらに1時間のインキュベーション後、希釈剤で1:5000希釈したストレプトアビジン−HRP二次抗体をウェルに1時間、室温で添加した。プレートを4回洗浄し、TMB検出基質を添加した。標準停止溶液を使用して反応を停止し、吸光度を450〜570nmで読んだ。
血清添加と平行して、標準曲線を血清で希釈した精製C3a des-argを使用して作成した。5μg/mlから出発して、C3a des-argを1:4で連続的に希釈して、7点曲線を作成した。標準曲線ウェルを上記のとおり処理し、洗浄し、読んだ。
【0331】
【表74】
【表75】
ND:測定せず
【0332】
実施例5:種交差反応性
ヒトおよびカニクイザルに加えて、ここに記載する抗P因子抗体が他の種由来のP因子と結合するか否かを決定するために、MAC沈着および溶血アッセイを上記のとおり行った。Biacore分析または溶血アッセイを上記のとおり行った。各種類として使用した血清濃度は次のとおりであった:10および20%ウサギ、10および20%カニクイザルおよび10および20%ヒト血清。ラットP因子結合をBiacoreで評価した。下記表6に示すとおり、P因子抗体は、ウサギ、ラットおよびカニクイザルを含む数種で交差反応可能であった。
【表76】
ND:測定せず
【0333】
実施例6:エピトープ位置づけ
P因子は、数個のトロンボスポンジン反復ドメイン(TSR0−6)から成る。TSR0ドメインはまたN末端ドメインとも呼ばれる。P因子Fabsのエピトープ位置づけを、各TSRについてマウスおよびヒトキメラを調製することにより行った。先の機能的アッセイはFabsがマウスP因子と結合しないことを示したが(溶血アッセイ)、キメラの各々はP因子枯渇血清で機能的であった。この方法を使用して、全てのFabsがTSR5(配列番号406)に結合することが決定された。
図1Cは、抗体がTSR5の領域Bに結合することを示す。市販の抗体であるA233はこの領域に結合しないことが示された。結合を、標準方法を使用してELISAまたはBiacoreで評価できる。1個のAb、NVS487について、データは、マウスP因子との交差反応性のために決定的ではなかった。マウスとヒトP因子TSR5ドメインの配列整列化は、エピトープが配列番号408のアミノ酸を含むことを示す。
【0334】
実施例7:代替補体経路のインビボ阻害
カニクイザルで本発明の抗体を用いて実験を行い、代替補体経路を阻害する能力を決定した。
試験アイテムであるNVS962を表7に示す投与レベルで投与した。投与経路は硝子体内(IVT)または静脈内(IV)のいずれかであった。
【表77】
【0335】
表7に示すとおり、試験アイテムおよび媒体溶液(媒体:10mM His/His−HCl;10%トレハロース;0.02%Tween 20;pH5.5)を硝子体内および静脈内に実験1日目、15日目および29日目に投与した。
毒性評価は死亡率、臨床所見、体重、薬力学(溶血分析)、眼科検査、眼内圧測定、網膜電図検査、血液所見、臨床試験、臓器重量および病理に基づいた。
実験中死亡例はなく、臨床所見、体重、眼科検査、眼内圧測定、網膜電図検査、血液所見、臨床試験、臓器重量および病理の評価で試験アイテムに関連した関連知見はなかった。
補体介在溶血活性を上記溶血アッセイを使用して測定した(実施例4参照)。溶血アッセイデータの分析は、NVS962のIV投与が、投与直後溶血補体活性の完全なまたはほぼ完全な、しかし短命の、阻害に至ることを示した。IVT経路で1mg/眼の投与量で投与したとき、試験アイテムは血清溶血補体活性にわずかしか効果がないかまったく効果がなかった。5mg/眼および10%カニクイザル血清で、溶血補体活性の完全なまたはほぼ完全な阻害が観察された。
【0336】
実施例8:抗体組み合わせによる代替補体経路の阻害
溶血アッセイ
表2からの抗C5抗体8109および表1からの抗P因子抗体NVS962のFabバージョンを使用する溶血アッセイを実施例4に記載のとおり行った。
図2は、抗C5抗体および抗原結合フラグメントと組み合わさったP因子抗体および抗原結合フラグメントが20%ヒト血清において溶血を阻害する能力を例示する。500nM抗P因子および500nM抗C5 Fabsは、個々では60分インキュベートしたとき、溶血阻害の効果がないことが証明されている。対照的に、抗P因子および抗C5抗体の同じ濃度および167nMほども低い濃度での組み合わせが、ほぼ完全な溶血阻害を証明した。さらに、ほぼ完全な溶血阻害は250分まで続いた。
【0337】
溶血アッセイからのデータをChalice AnalyzerソフトウェアChalice Analyzerソフトウェアを使用して、補体阻害抗体が、補体活性化遮断に対して相乗的に作用するか否かを決定。組み合わせ効果は、単剤曲線に基づく組み合わせ参照モデルと、各データ点の比較により特徴付けることができる(Greco, Bravo, Parsons (1995). The search for synergy: a critical review from a response surface perspective.
Pharmacol Rev 47(2): 331-85)。Loewe加算性モデル(Loewe (1928). Die quantitativen Probleme der Pharmakologie.
Ergebn. Physiol. 27: 47-187)において、I
Loewe(C
X,C
Y)は、(C
X/IC
X)+(C
Y/IC
Y)=1を満たす阻害であり、IC
X,Yは、適合単剤曲線のI
Loeweでの有効濃度である。加算性は、XおよびYが同じ化合物であるときに産生された組み合わせ応答を表すため、相乗性の一般的に認められた参照である(Greco et al.)。
【0338】
効力変化を、通常、同じ効果に到達するのに必要な単剤と比較したときに、所望の効果レベルに到達するのに必要な薬剤がどの程度少ないかを示すアイソボログラム(Greco et al.)を使用して示す。アイソボログラム表示および組み合わせ指数計算のための効果レベルの選択は、手動でも、Chalice Analyzerで自動に選択させてもよい。自動等レベル選択アルゴリズムは、観察したI
データを最大I
データ−I
Loeweと共に発見し、少ない単剤I
maxを超えるI
データのデータ点を除外する。この除外は、アイソボログラムが両方の単剤によりカバーされるレベルで最良の相乗性を反映することを確実にするために適用する。アイソボログラムレベルI
cutの選択で、アイソボログラムは、選択した等レベルとの交差に対応する濃度の位置を同定することにより描かれる。アイソボログラムは、Loewe用量相加的“薬物それ自体”標準と比較した、相乗性の標準的アイソボログラム解析を示す。特定したアイソボログラムレベルについて、観察された等効果カウンター(例えば、
図3における曲線)を理論的用量相加カウンター(例えば、
図3における直線)と、組み合わせの両物質のIC
効果標準化直線濃度スケール上に示す。用量相加参照は、常に2個のIC
効果濃度を接続する線である。IC
効果交差点は、近似シグモイド用量応答曲線の内挿により見ることができる。
【0339】
効力変化を組み合わせ指数CIとしてスコア化する(Chou, Talalay (1984). Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors.
Adv Enzyme Regul 22: 27-55)。選択した等効果レベルI
cutについて、CII=(C
X/EC
X)
I+(C
Y/EC
Y)
I(式中、特定のデータ点の(C
X/EC
X)
Iは選択阻害レベルでのその有効濃度に対するX化合物の測定濃度の比である)である。CIは、どの程度の薬剤が選択した効果レベルを達成するために単剤に対して組み合わせで必要であるかを概算すると考えることができ、0.1の価は、単剤のわずか1/10当量が同じ効果レベルを達成するために必要であったことを意味する。0.5〜0.7の範囲のCI値が、現在の臨床組み合わせのインビトロ測定で典型的である(Greco et al.)。1.0のCI値は抗体の組み合わせの相加効果の指標であり、一方0.5未満のCI値は、抗体組み合わせから得られる強い相乗効果の指標である。Chalice Analyzerにおいて、最高CIが、各I
cut交差濃度について計算した多くの組み合わせ指数価から報告される。全測定CI値の中で、最大シグナル対ノイズレベルを最高組み合わせ指数として記載する。
【0340】
溶血アッセイからのデータを阻害%で示し、8×8Excel表に載せ、ここで、抗体濃度をμM値として示した。ExcelテンプレートをChaliceソフトウェア(Lehar et al. 2009)にアップロードし、組み合わせ指数を、各抗体のIC
20を使用してアイソボログラム曲線を作成することにより産生した(CI=C
X/IC
X+C
Y/IC
Y、ここで、IC
XおよびIC
yはそれぞれ20阻害%効果をもたらす抗P因子抗体および抗C5抗体単独の濃度であり、C
XおよびC
yは20%阻害をもたらす混合物の各薬剤の濃度である)。20%阻害での組み合わせ指数は0.36であり、抗P因子抗体と抗C5抗体の相乗作用を示す(
図3)。
【0341】
マクロファージ浸潤
抗fPおよび抗C5 Fabsの効果を個々にまたは組み合わせてインビボで眼炎症のポリ−ICマウスモデルを使用して。マウスに合成dsRNAアナログであるポリI:Cを0.1ml PBS中、全身的にC57BL/6マウスにi.v.注射し、抗fP(表1からの抗体NVS962)および抗C5抗体(表2からの抗体8019)を個々にまたは組み合わせて併用した。示す時点でマウスを屠殺した。眼および網膜を回収し、タンパク質抽出物をサイトカインで調整し、Multiplexアッセイ(Pierce)を使用してケモカイン分析した。網膜白血球浸潤を決定するために、眼を4%パラホルムアルデヒドに固定し、マクロファージに対するAlexa Fluor-488コンジュゲートF4/80抗体で染色した。網膜を、網膜脈管構造がスライドガラスの上面に向くように平らにマウントし、1滴のVectashieldマウンティング媒体(Vector Laboratories Inc, Burtingame, CA)と共にカバースライドを載せた。各網膜の5(500μm)領域の蛍光像をAxio.ImageM1顕微鏡(Zeiss)上のAxiocam MR3カメラで撮った。好中球およびマクロファージの数をAxiovisionソフトウェア(Version 4.5 Zeiss)で定量した。光干渉断層撮影(OCT)を使用して、ポリI:Cで処置したマウスからの網膜像を得て、分析した。これらの結果(
図4)は、試験した最高濃度(20μg)で、45阻害%と同程度のマクロファージ阻害が観察された。対照的に、抗P因子とC5抗体の2μgほどの低濃度での組み合わせは79阻害%を証明し、濃度を挙げると100阻害%を達成した(抗C5および抗P因子抗体個々ではそれぞれ13%および32阻害%と対照的)。
【0342】
前段に記載するインビボポリ−ICモデル(マクロファージ浸潤)からのデータを阻害%として表し、4×4Excel表に載せ、ここで、抗体濃度をμM値として示した。ExcelテンプレートをChalice Analyzer(上記)にアップロードし、組み合わせ指数を、各抗体のIC
50を使用してアイソボログラム曲線を作成することにより産生した(CI=C
X/IC
X+C
Y/IC
Y、ここでIC
XおよびIC
yはそれぞれ50阻害%効果をもたらす抗P因子抗体および抗C5抗体単独の濃度であり、C
XおよびC
yは50阻害%をもたらす混合物の各薬剤の濃度である)。50阻害%での組み合わせ指数は0.42であり(
図5参照)、抗P因子抗体と抗C5抗体の相乗作用を示す。