【文献】
Measurement of the ratio between the reduced and oxidized forms of coenzyme Q10 in human plasma as a possible marker of oxidative stress,Journal of Lipid Research,1996年,37,67-75
【文献】
Pharmacokinetic study of deuterium-labelled coenzyme Q10 in man,International Journal of Clinical Pharmacology, Therapy and Toxicology,1986年,24, 10,536-541
【文献】
Analysis of coenzyme Q10 in bee pollen using online cleanup by accelerated solvent extraction and high performance liquid chromatography,Food Chemistry,2012年,133,573-578
【文献】
DUBERLY, KE,Rapid Commun Mass Spectrom.,2013年 5月15日,27(9),924-930
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の抽出緩衝液及び試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加して第1の抽出緩衝液層及び第2の抽出緩衝液層を形成するステップと、第2の抽出層を分析してコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するステップとを含む、生物試料中のCoQ10量を決定するための方法であって、CoQ10量がLC/MS/MSを使用して検出され、そしてLC/MS/MSを使用したCoQ10量の検出が、内部標準としてCoQ10-d6、CoQ10H2-d6又はその双方の使用を含む、上記方法。
第2の抽出緩衝液が、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジイソブチルエーテル、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロメタン、及びジクロロメタンからなる群から選択される溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
第1の抽出緩衝液が、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、トリクロロ酢酸(TCA)、及び水からなる群から選択される溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
胆汁酸が、タウロコール(taurochloric)酸、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、及びリトコール酸からなる群から選択される酸を含む、請求項24に記載の方法。
試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に50〜100℃まで加熱される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
研究は、全CoQ
10(T-CoQ10)中の低いパーセンテージのCoQ
10H
2が、ミトコンドリア細胞症、糖尿病、心臓疾患、パーキンソン病及びがんに関連することを示唆している。最近の研究によれば、CoQ
10レベルの低減は、スタチンを摂取する患者の前立腺がんに対するリスクの増加、及びメラノーマ患者の転移のリスクの増加に関連することも示唆されている。これは、CoQ
10及びCoQ
10H
2を確実に、正確に、感度よく、且つ特異的に測定するための方法の開発の重要性を浮き彫りにしている。本発明は、ハイスループットスクリーニング法に容易に適用できる、試料中のコエンザイムQ10を迅速に定量的に抽出及び検出するための方法を提供する。本発明は、本発明の方法を実施するための試薬及びキットをさらに提供する。
【0005】
一態様では、本発明は、第1の抽出緩衝液及び試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加し、第2の抽出層を分光学的に分析してコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定することにより、試料中のコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するための方法を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を試料に添加し、試料を混合し、第2の抽出層を分析してCoQ10の量を決定することによる、試料中のCoQ10量を決定するための方法であって、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液による単回抽出によってメタノールのみの抽出を使用するより少なくとも2倍多い量のCoQ10の検出をもたらす方法をさらに提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、第1の抽出緩衝液を試料に添加し、試料を加熱し混合し、試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加し、試料を加熱し混合し、周囲温度まで試料を冷却し、第2の抽出緩衝液層を分析して試料中のCoQ10量を決定することにより、試料中のCoQ10量を決定するための方法をさらに提供する。
【0008】
さらなる別の態様では、本発明は、第1の抽出緩衝液を試料に添加し、試料を加熱し混合し、試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加し、試料を加熱し混合し、試料を周囲温度まで冷却し、第2の抽出緩衝液層の分光分析を実施して試料中のCoQ10量を決定することにより、試料中のCoQ10量を決定するための方法であって、抽出緩衝液による単回抽出によって、メタノールのみの抽出とその後の液体クロマトグラフィー/質量分析法/質量分析法(LC/MS/MS)とを使用するより少なくとも2倍多い量のCoQ10の抽出をもたらす方法を提供する。
【0009】
本発明のある種の実施形態では、試料中で検出されるCoQ10量が、分光分析によって分光学的に決定される。本発明のある種の実施形態では、CoQ10量が、LC/MS/MSを使用して検出される。本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出されたCoQ10量が分光学的に決定され、メタノールのみの抽出を使用して検出されるCoQ10量がLC/MS/MSを使用して決定される。
【0010】
本発明のある種の実施形態では、この方法は、ハイスループットスクリーニング分析法の一部である。本発明のある種の実施形態では、方法全体が、自動化によって実施される。本発明のある種の実施形態では、方法全体が、短時間で実施される。例えば、この方法は、分光分析を使用して実施され、試料中のCoQ10量は、LC/MS/MSを使用して分析を実施するのに必要な時間の約半分若しくはそれ以下、約1/4若しくはそれ以下、又は約1/10若しくはそれ以下で検出される。ある種の実施形態では、分光検出法を使用して一群の試料について分析を実施するための時間は、LC/MS/MSを使用して一群の試料について分析を実施するための時間と比較される。ある種の実施形態では、分光検出法を使用して一群の試料について分析を実施するための時間は、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、30分未満、15分未満、10分未満、5分未満、4分未満、3分未満、2分未満、1分未満又は30秒未満である。
【0011】
本発明のある種の実施形態では、試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して反復試料中で検出される全CoQ10量より少なくとも2倍多い。例えば、分光学的に決定される全CoQ10量は、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用するより少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍又は少なくとも25倍多い。
【0012】
本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が非極性溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が有機溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジイソブチルエーテル、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロメタン、及びジクロロメタン、又はその任意の組合せからなる群から選択される溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が、アルカンを含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が、ヘキサンを含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が、アセトニトリルを含む。本発明のある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液が、イソプロパノールを含む。
【0013】
本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、極性プロトン性溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、有機溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、トリクロロ酢酸(TCA)、及び水、又はその任意の組合せからなる群から選択される溶媒を含む。本発明のある種の実施形態では、溶媒が、アルコールを含む。本発明のある種の実施形態では、アルコールが、メタノールである。
【0014】
本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、界面活性剤を含む。
【0015】
本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、洗剤を含む。本発明のある種の実施形態では、洗剤が、温和な洗剤である。本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、水溶液である。本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液が、ステロイド酸を含む。本発明のある種の実施形態では、ステロイド酸が、胆汁酸である。本発明のある種の実施形態では、胆汁酸が、タウロ塩素酸、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、及びリトコール酸、又はその任意の組合せからなる群から選択される酸を含む。本発明のある種の実施形態では、胆汁酸が、デオキシコール酸を含む。本発明のある種の実施形態では、デオキシコール酸が、塩である。本発明のある種の実施形態では、デオキシコール酸塩が、I族金属である無機イオンを含む。本発明のある種の実施形態では、デオキシコール酸塩の無機イオンが、Li
+、Na
+、及びK
+からなる群から選択される塩である無機イオンを含む。本発明のある種の実施形態では、デオキシコール酸塩の無機イオンが、Na
+である無機イオンを含む。
【0016】
本発明のある種の実施形態では、試料が、生物試料を含む。本発明のある種の実施形態では、生物試料が、細胞ベースの試料である。本発明のある種の実施形態では、試料が、哺乳類試料又は両生類試料を含む。本発明のある種の実施形態では、試料が、ヒト試料、非ヒト霊長類試料、及び齧歯動物試料からなる群から選択される試料を含む。本発明のある種の実施形態では、試料が、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、及びヒトから選択される対象からの試料である。
【0017】
本発明のある種の実施形態では、分光分析が、吸光分光法、蛍光X線分光法、炎光分光法、可視分光法、紫外分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、コヒーレント反ストークスラマン分光法(CARS)、核磁気共鳴分光法、光子放出分光法、及びメスバウアー分光法から選択される分光学的技法を使用することによって実施される。本発明のある種の実施形態では、分光技法が、紫外分光法である。本発明のある種の実施形態では、紫外分光法が、270nm〜280nmの1つ以上の波長で実施される。本発明のある種の実施形態では、紫外分光法が、273nm〜277nmの1つ以上の波長で実施される。本発明のある種の実施形態では、紫外分光法が、波長275nmで実施される。本発明のある種の実施形態では、紫外分光法は、270nmと280nmの間の波長、例えば、270nm、271nm、272nm、273nm、274nm、275nm、276nm、277nm、278nm、279nm又は280nmで実施される。
【0018】
本発明のある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液の体積と第2の抽出緩衝液の体積の比が、5:1〜1:1(v/v)(例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1;又はこれらの値のみで囲われた任意の範囲、例えば、4:1〜1:1又は4:1〜2:1)である。
【0019】
本発明のある種の実施形態では、界面活性剤又は洗剤と第1の抽出緩衝液の体積の比が、50:1〜1:1(v/v)(例えば、約45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、2:1、1:1;又はこれらの値のみで囲われた任意の範囲、例えば、40:1〜10:1、40:1〜5:1、40:1〜2:1、40:1〜1:1、35:1〜10:1、35:1〜5:1、35:1〜5:1、35:1〜1:1、25:1〜10:1、25:1〜5:1、20:1〜5:1、15:1〜5:1、10:1〜5:1、10:1〜2:1、又は10:1〜1:1)である。
【0020】
本発明のある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に50〜100℃、例えば、約50〜100℃、約55〜90℃、約60〜85℃、約60〜80℃、約55〜75℃、約60〜70℃、約62〜68℃、約63〜67℃、約64〜66℃、又は約65℃まで加熱される。ある種の実施形態では、試料は、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約69℃、又は約70℃まで加熱される。ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に同じ温度まで加熱される。ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に異なる温度まで加熱される。ある種の実施形態では、試料が、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも15秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも75秒、少なくとも90秒、少なくとも105秒、又は少なくとも120秒間加熱され、それらの時間は範囲の上限値に対して1秒未満、0秒超である。
【0021】
ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に同じ時間加熱される。ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に異なる時間加熱される。
【0022】
ある種の実施形態では、試料の加熱が、加熱されなかった対照試料に比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも50%、CoQ10の抽出を増加させる。
【0023】
本発明のある種の実施形態では、試料が、機械撹拌によって混合される。本発明のある種の実施形態では、試料が、超音波処理によって混合される。本発明のある種の実施形態では、試料が、磁気撹拌によって混合される。ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液の添加後に混合される。ある種の実施形態では、試料が、第2の抽出緩衝液の添加後に混合される。ある種の実施形態では、試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に混合される。
【0024】
本発明のある種の実施形態では、無機塩が、第2の抽出緩衝液の添加後に試料に添加される。ある種の実施形態では、無機塩が、NaClを含む。ある種の実施形態では、飽和ブライン溶液(saturated brined solution)が、第2の抽出緩衝液の添加後に試料に添加される。ある種の実施形態では、塩が、約1mM〜約50mMの最終濃度まで、即ち、約1mM〜約10mM、約1mM〜約20mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約40mM、約5mM〜約50mM、約10mM〜約40mM、約20mM〜約50mM、約10mM〜約25mM、約15mM〜約35mM;又はこれらの値のみで囲われた任意の数値範囲、例えば、約10mM〜20mMの濃度まで添加される。
【0025】
本発明のある種の実施形態では、試料が、第2の抽出緩衝液の分光分析の前にろ過される。
【0026】
本発明のある種の実施形態では、方法全体が、10分以内、5分以内、1分以内、又は30秒以内で完了する。
【0027】
本発明は、先行請求項のいずれかに記載の方法を実施するためのキットを提供する。ある種の実施形態では、キットは、以下のもの:第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液のうちの少なくとも2つを含む。別の態様では、キットはまた、CoQ10を含む。さらなる態様では、キットは、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液及び使用説明書を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、CoQ10に対して酸化重水素化内部標準及び還元重水素化内部標準を使用する新規な方法を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、CoQ10量及びCoQ10H
2量を決定するためのLC-MS/MS法を提供する。
【0029】
一部の実施形態では、本発明は、
a)既知量の重水素化コエンザイムQ10(CoQ10-d6)を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10及びCoQ10-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するための方法を提供する。
【0030】
一部の実施形態では、本発明はまた、
a)既知量の還元重水素化コエンザイムQ10(CoQ10H
2-d6)を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10H
2及びCoQ10H
2-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10H
2の量を、既知量の検出されたCoQ10H
2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10の還元形態(CoQ10H
2)量を決定するための方法を提供する。
【0031】
他の実施形態では、本発明はまた、
a)既知量のCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10、CoQ10H
2、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10H
2-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
d)検出されたCoQ10H
2の量を、既知量の検出されたCoQ10H
2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10及びCoQ10H
2量を同時に決定するための方法を提供する。
【0032】
さらなる他の実施形態では、本発明は、
a)既知量のCoQ10H
2-d6及び/又はCoQ10-d6を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によって試料中のCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の相対量を測定するステップと、
c)CoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の理論的相対量をステップbで測定されたCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の相対量と比較するステップと
を含む、試料中のCoQ10H
2酸化度を決定するための方法を提供する。
【0033】
他の態様では、本発明は、
a)既知量のCoQ10H
2-d6及び/又はCoQ10-d6を試料に添加するステップと、
b)第1回及び第2回の質量分析法によって試料中のCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の相対量を測定する方法と、
c)第1回に同じものに存在するCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の理論的相対量を第1回に同じものに存在するCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の相対量と比較するステップと
を含み、第1回及び第2回のCoQ10H
2-d6及びCoQ10-d6の相対量の変化が、試料に持続した酸化度を示す、試料中のCoQ10H
2酸化度を決定するための方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態では、CoQ10H
2-d6が、CoQ10-d6を1つ以上の還元剤と反応させることによって得られる。具体的な実施形態では、還元剤が、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0035】
一部の実施形態では、CoQ10-d6及び/又はCoQ10H
2-d6が、試料の収集直後に試料に添加される。
【0036】
一実施形態では、本発明は、
a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10及びCoQ10-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10量を決定するための方法を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、
a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10H
2-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10H
2及びCoQ10H
2-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10H
2の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10H
2量を決定するための方法を提供する。
【0038】
さらなる別の実施形態では、本発明は、
a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10、CoQ10-d6、CoQ10H
2及びCoQ10H
2-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
g)検出されたCoQ10H
2の量を、既知量の検出されたCoQ10H
2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10量及びCoQ10H
2量を決定するための方法を提供する。
【0039】
一部の実施形態では、ステップcが、抽出緩衝液、例えば、第1の抽出緩衝液を試料に添加するステップを含む。具体的な実施形態では、抽出緩衝液、例えば、第1の抽出緩衝液が、1-プロパノールを含む。他の実施形態では、抽出緩衝液が、イソプロパノール、メタノール、エタノール、アセトニトリル又はアセトンを含む。一実施形態では、抽出緩衝液、例えば、1-プロパノールを用いた抽出の後に、抽出に使用した溶媒の質量分光分析が続く。
【0040】
さらなる実施形態では、ステップcは、試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を添加するステップをさらに含む。一実施形態では、ステップcは、
i.第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
ii.試料を混合するステップと、
iii.次のステップのために第2の抽出層を使用するステップとを含む。
【0041】
一実施形態では、ステップcは、
i.第1の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
ii.試料を加熱し、混合するステップと、
iii.試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
iv.試料を加熱し、混合するステップと、
v.周囲温度まで試料を冷却するステップと、
vi.次のステップのために第2の抽出緩衝液層を使用するステップとを含む。
【0042】
一部の実施形態では、ステップb〜dは、低減した光の下で実施される。一部の実施形態では、ステップb〜dは、予冷した溶媒を使用して実施される。一部の実施形態では、ステップb〜dは、予冷したクライオブロックを使用して実施される。一部の実施形態では、クライオブロックは、約1時間〜約48時間、例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約24時間、約28時間、約32時間、約36時間、約40時間、約44時間、又は約48時間予冷される。
【0043】
ある種の実施形態では、試料は、生物試料である。具体的な実施形態では、生物試料は、血漿である。別の具体的な実施形態では、生物試料は、血清である。別の具体的な実施形態では、生物試料は、組織である。さらなる別の実施形態では、生物試料は、体液、例えば、血液、尿、唾液又は鼻粘液である。一実施形態では、生物試料は、ヒト試料である。
【0044】
一部の実施形態では、本発明はまた、本発明の質量分析法を実施するためのキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、抽出緩衝液、例えば、1-プロパノールを含む。一部の実施形態では、キットは、CoQ10-d6を含む。別の実施形態では、キットは、CoQ10-d6及び1つ以上の還元剤を含む。具体的な実施形態では、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。さらなる実施形態では、キットは、抽出緩衝液、例えば、1-プロパノール、CoQ10-d6及び還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを含む。
【0045】
他の実施形態は、以下で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、生物試料、好ましくは、細胞ベースの試料から速やかに且つ効率的にCoQ10を抽出して試料中のCoQ10を(好ましくは定量的に)検出するための方法に関する。この方法は、ハイスループット及び/又は自動化スクリーニング法での使用に容易に適用することができる。
【0048】
読み易さを最適化し、本明細書に記載の本発明の理解を促進するために、本明細書で使用される用語及び句の以下の定義を考慮することが有益でありうる。
【0049】
I.定義
本明細書で提供される検出法は、コエンザイムQ10(CoQ10)及びその構造異形体を検出するために使用することができる。例えば、CoQ10は、完全酸化形態(ユビキノン)、部分酸化形態(ユビセミキノン)、及び完全還元形態(ユビキノール)で存在することができる。さらに、上に示したCoQ10は、10個のイソプレノイド単位を有するが、環構造が本明細書で好ましい分光光度法を使用して検出されるので、本明細書で提供される方法は、約8〜12個(例えば、8、9、10、11、12)のイソプレノイド単位を有するCoQ10に構造が類似した化合物の検出に使用することができる。
【0050】
本明細書での「全CoQ10」は、試料中に存在する酸化及び還元CoQ10の全量を指す。
【0051】
本明細書での「溶媒」は、固体又は液体を溶解して溶液をもたらす液体として通常理解される。溶質は、特定の温度で一定量の体積の溶媒に可溶である。本明細書では、非溶解成分が、試料中のCoQ10の抽出及び検出を妨害しない限り、溶媒は、試料全部を完全に溶解させる必要がない。例えば、全細胞ベースの試料が使用される場合、タンパク質及び/又は核酸を含む沈殿が形成される場合がある。
【0052】
溶媒は、化学的な特性、溶媒和/反応機構、全体の電荷、電荷分布などに基づいて様々な群に細分することができる。例えば、溶媒は、非極性溶媒及び極性溶媒にグループ化することができ、極性溶媒は、極性非プロトン性溶媒及び極性プロトン性溶媒にさらに細分することができる。
【0053】
以下に記載した溶媒は、誘電定数によって定義される極性が増加順に並べられている。水のものよりも大きい溶媒特性は、ボールド体になっている。
【表1】
【0054】
「非極性溶媒」は、結合中に極性が(ほとんど)ない溶媒、又は結合が対照的に配置され、すべての方向に電荷がバランスして引き合っている溶媒である。例えば、クロロホルムは、比較的強い極性結合を有しているが、等しい双極子モーメントを有する3個の極性結合が三方晶系の平面配置をしているので、分子が非極性になる。或いは、アルカンでは、結合は弱い双極子モーメントを有し、結合中にほとんど極性がなく、そのために結合は、非極性である。非極性溶媒として、限定されないが、アルカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジイソブチルエーテルが挙げられる。
【0055】
アルカン(パラフィン又は飽和炭化水素とも呼ばれる)は、元素炭素(C)及び元素水素(H)(即ち、炭化水素)のみからなり、これらの原子が単結合のみによって一緒に結合している化合物である(即ち、これは、飽和化合物である)。アルカンは、構成員が、相対的に一定の分子質量14だけ異なる有機化合物の同族シリーズに属する。炭素原子はそれぞれ、4個の結合(C-H結合又はC-C結合のいずれか)を所有しなければならず、水素原子はそれぞれ、炭素原子に結合しなければならない(H-C結合)。結果として、アルカンは、通常非常に安定であり、生物活性はほとんどない。一連の結合炭素原子は、炭素骨格又は炭素主鎖と呼ばれる。一般に、炭素原子の数は、アルカンの大きさを画定するのにしばしば使用される(例えば、C
2-アルカン)。
【0056】
最も簡単で可能なアルカンは、メタン、CH
4である。一緒に結合できる炭素原子の数には、理論的に制限はなく、唯一の制限は、分子が飽和であり、且つ炭化水素であることである。飽和の油及びワックスは、炭素主鎖中の炭素数が10を超える傾向のあるより大きなアルカンの例である。本明細書では、より小さいアルカンは、1〜6個の炭素原子を有する。より大きいアルカンは、少なくとも7個の炭素原子、好ましくは、7〜12個の炭素原子を有する。本明細書では、中間のアルカンは、4〜8個、ある種の実施形態では、5、6、又は7個の炭素原子を有する。
【0057】
直鎖アルカンは、接頭辞n-(通常という意味で)によって表示される場合があり、その場合非直線状の異性体が存在する。このnは厳密には必要でないが、直鎖と分枝異性体、例えば、n-ヘキサン又は2-若しくは3-メチルペンタンの間の特性に重要な差異が存在する場合にこの使用法が依然として一般的である。シリーズの構成員(炭素原子の数の点で)は、以下のように命名される:メタン、CH
4-1個の炭素と4個の水素;エタン、C
2H
6-2個の炭素と6個の水素;プロパン、C
3H
8-3個の炭素と8個の水素;ブタン、C
4H
10-4個の炭素と10個の水素;ペンタン、C
5H
12-5個の炭素と12個の水素;ヘキサン、C
6H
14-6個の炭素と14個の水素。本明細書では、n-接頭辞が使用されない限り、アルカンは、指定された数の炭素を有する1つ以上の炭素化合物を指すと理解されており、特定されたアルカンの混合群を含むことができる(例えば、ヘキサンは、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、及びシクロヘキサンのうちの任意のもの、並びに様々なヘキサン類を任意の比で含むその任意の組合せを含むと理解される)。
【0058】
本明細書での「プロトン性溶媒」は、水素結合を介してアニオンを強力に溶媒和する。プロトン性溶媒は、酸性水素を有し、非常に弱い酸の場合もある。より一般的に、解離できるH
+を含む任意の分子溶媒は、極性プロトン性溶媒と呼ばれる。かかる溶媒の分子は、H
+(プロトン)を与えることができる。プロトン性溶媒は、カチオンの場合不対電子対を安定化させることによって、アニオンの場合水素結合することによってイオンを安定化させる。
【0059】
「極性プロトン性溶媒」は、溶媒がヒドロキシル基の場合のように酸素に結合した水素原子、又はアミン基の場合のように窒素を有するので、SN1反応機構に適している。本明細書での極性プロトン性溶媒は、高い誘電定数及び高い分極性を有する傾向がある。極性プロトン性溶媒としてアルコールが挙げられる。
【0060】
「アルコール」は、ヒドロキシル官能基(-OH)が、炭素原子と結合し、その炭素原子が、通常、他の炭素原子又は水素原子と結合している任意の有機化合物である。アルコール分子中のヒドロキシル(OH)官能基は、-OH基中に解離できるプロトンを含むので、アルコールは極性プロトン性溶媒になる。
【0061】
アルコールとして、例えば、一般式がC
nH
2n+1OHであり、n≧1である非環式アルコールが挙げられる。接尾辞オール(-ol)は、ヒドロキシル基が最高の優先権を有する官能基であるすべての物質のIUPAC化学名中に現れ;より高い優先権の基が存在する物質では、接頭辞ヒドロキシ-が、IUPAC名中に現れる。非体系名中の接尾辞オール(-ol)(パラセタモールやコレステロールなどの)はまた、通常、その物質がヒドロキシル官能基を含むことを示し、したがって、アルコールと命名することができるが、多数の物質(クエン酸、乳酸、又はスクロース)にも、1つ以上のヒドロキシル官能基が含まれる。本明細書では、アルコールは、存在する炭素数によって特徴づけることができ、低級アルコールは、1〜6個の炭素(即ち、非環式アルコールに対する上の式中のn=1〜6)を有し、中級アルコールは、4〜8個の炭素を有し、高級アルコールは、少なくとも7個の炭素、好ましくは、7〜12個の炭素を有する。一部のアルコールとして、限定されないが、メタノール(CH
3OH)、エタノール(C
2H
5OH)、プロパノール(C
3H
7OH)、及びペンタノール(C
5H
11OH)が挙げられる。本明細書では、n-接頭辞が使用されない限り、アルコールは、指定数の炭素を有する1つ以上の炭素の化合物を指すと理解され、識別されたアルコールの混合群を含むことができる。
【0062】
「極性非プロトン性溶媒」は、プロトン性溶媒とイオン溶解力を共有するが、酸性水素を含まない溶媒である。したがって、極性非プロトン性溶媒は、アニオンを溶媒和しない。このために、続く化学反応が抑制される可能性がある。こうした溶媒は、一般に、中間の誘電定数及び極性を有する。通常、非プロトン性溶媒は、水素結合を示さず、酸性水素を保有しないが、イオンを安定化することができる。求核試薬は、プロトン性溶媒中より、非プロトン性溶媒中でより反応性である。
【0063】
「有機溶媒」は、少なくとも1つの炭素原子を含む溶媒である。
【0064】
本明細書での「洗剤」は、水中でミセルを形成する傾向のある両親媒性小分子である。洗剤は、通常、その親水性/疎水性及びイオン性基に従って分類される。洗剤は、凝集を制限し、脂質及び他の疎水性分子を溶解することによって、膜の透過化/可溶化、器官又は組織の脱細胞化、精製タンパク質の安定性の維持のために有用である。洗剤の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている2010 McCutcheon's Emulsifiers & Detergents北米版(McCutcheon's Emulsifiers and Detergents)で知ることができる。「温和な洗剤」は、通常、溶液中のタンパク質の構造を破壊しない洗剤とみなされる。これによってタンパク質の機能の決定が可能になる。「温和な洗剤」は、通常、いずれか一方に偏した極性/非極性側鎖の比を有する(例えば、大きなヘッド基、短い脂肪族鎖)。一般に、非イオン性及び両性イオン洗剤は、イオン性洗剤より温和である。イオン性洗剤のうち、胆汁酸及び胆汁塩は、温和な洗剤と考えられる。アニオン性洗剤は、温和な洗剤でない。
【0065】
イオン性洗剤は、帯電親水性ヘッド基によって特徴づけられる。イオン性洗剤は、アニオン性であっても、カチオン性であってもよい。イオン性洗剤は、分子間と分子内両方のタンパク質-タンパク質相互作用を破壊する傾向がある。カチオン性洗剤として、限定されないが、厳選された第四級アミンを含むカチオン性界面活性剤溶液が挙げられる。厳選された第四級アミンは、第四級アミン水酸化物と、リン酸、硫酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸及びクエン酸の反応によって生成するが、例えば、アルキル基が12、14、16又は18個の炭素を含むアルキルトリメチルアンモニウム又はアルキルベンジルジメチルアンモニウムである。イオン性洗剤として、デオキシコール酸、ナトリウムドデシルスルフェート(SDS)、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)が挙げられる。
【0066】
非イオン性(又は両性イオン)洗剤は、その(正味)非帯電親水性ヘッド基を特徴とする。これは、ポリオキシエチレングリコール(即ち、TWEEN(登録商標)、TRITON(登録商標)、及びBRIJ(登録商標)シリーズ)、CHAPS(登録商標)、グリコシド(即ち、オクチル-チオ-グリコシド、マルトシド)、デオキシコール酸(DOC)などの胆汁酸、Lipids(HEGAs(登録商標))、又はホスフィンオキシド(例えば、ホスホリルトリクロリド(CL
3P=O)などの無機リン化合物、又はR=アルキル若しくはアリールである式OPR
3を有する有機リン化合物)に基づいている。他の非イオン性洗剤として、エトキシル化脂肪アルコールエーテル及びラウリルエーテル、エトキシル化アルキルフェノール、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、修飾オキシエチル化及び/又はオキシプロピル化直鎖アルコール、ポリエチレングリコールモノオレエート化合物、ポリソルベート化合物、及びフェノール性脂肪アルコールエーテルが挙げられる。
【0067】
本明細書での「界面活性剤」は、液体の表面張力を低減し、広がりを容易にし、2つの液体間又は液体と固体の間の界面張力を低減する化合物と理解される。さらに、界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤のうちの1つ以上として作用することができる。
【0068】
界面活性剤という用語は、界面活性物質のブレンドである。界面活性剤は、通常、両親媒性である有機化合物であり、これは、界面活性剤が疎水性基(そのテール)と親水性基(そのヘッド)の両方を含むことを意味する。したがって、界面活性剤分子は、水不溶性の成分(又は油溶性成分)と水溶性の成分の両方を含む。界面活性剤分子は、水の表面まで移動し、そこで、不溶性の疎水性基は、バルクの水相から伸びて、空気中、又は水が油と混合していれば油相中に入ることができ、水溶性のヘッド基は、水相内に留まる。表面における界面活性剤分子のこの配列及び凝集は、水/空気又は水/油界面で水の表面特性を変えるように作用する。
【0069】
胆汁酸は、ミセルを形成することによって脂肪に溶媒和するステロイド酸である。胆汁酸は、洗剤と界面活性剤の両方として有用である。胆汁酸は、プロトン化(-COOH)形態を指す。胆汁酸塩は、脱プロトン化又はイオン化(-COO
-)形態を指し、通常、グリシン又はタウリンと共役している。共役胆汁酸は、中性pHで脂肪を乳化する際により有効である。その理由は、共役胆汁酸は、非共役胆汁酸より多くイオン化されているからである。胆汁酸塩は、しばしば、タンパク質の精製及び組織化学的方法において脂質を溶媒和するための洗剤として使用される。胆汁酸塩はまた、界面活性剤としても使用することができる。文脈から明確でない限り、本明細書では、胆汁酸は、胆汁酸塩を含むと理解される。胆汁酸として、限定されないが、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリコール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、及びリトコール酸が挙げられる。研究では、デオキシコール酸は、膜会合タンパク質の単離用の洗剤として使用される。デオキシコール酸のナトリウム塩であるナトリウムデオキシコレートは、しばしば、細胞を溶解し、細胞及び膜成分を可溶化するための生物洗剤として使用される。
【0070】
「臨界ミセル濃度」又は「CMC」は、界面活性剤や洗剤などのミセル形成可能な両親媒性分子と、ミセルの自発的及び動的形成において機能するのに必要な胆汁酸の量における溶液中の両親媒性分子の両方の固有の特性を指す。界面活性剤(又はミセル形成可能な任意の両親媒性分子)を系内に導入すると、最初、界面内に分配され、a)界面エネルギー(面積×表面張力として計算される)を低下させることによって、b)界面活性剤の疎水性部分を水と接触させないようにすることによって、系の自由エネルギーを低減する。続いて、界面活性剤による表面の被覆が増加し、表面の自由エネルギー(表面張力)が減少する時に、界面活性剤が凝集してミセルになり、その結果、界面活性剤の疎水部分が水と接触する面積を減少させることによって系の自由エネルギーが減少する。CMCに到達すると、以後の追加の界面活性剤によってミセルの数が増加する。本明細書で提供された方法では、界面活性剤は、通常、試料中で臨界ミセル濃度に到達するような濃度で使用される。
【0071】
本明細書では、「塩」は、イオンの割合が電荷を相殺するようになっており、その結果バルク化合物が電気的に中性であるイオン性化合物である。「無機塩」として、例えば、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、及びハロゲン化物の塩が挙げられる。ハロゲン化物として、フッ化物(F
-)、塩化物(Cl
-)、臭化物(Br
-)、ヨウ化物(I
-)及びアスタチン化物(At
-)が挙げられる。無機ハロゲン化物塩として、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、ヨウ化カリウム(KI)、塩化リチウム(LiCl)、塩化銅(II)(CuCl
2)、塩化銀(AgCl)、及びフッ化塩素(ClF)が挙げられる。本明細書では、「ブライン溶液」は、無機塩溶液である。
【0072】
本明細書では、「飽和溶液」は、ある物質の溶液がその物質をそれ以上溶解不能であり、その物質の追加の量は沈殿として現れるという物理化学における典型的な定義によって理解される。この最大濃度の点、即ち、飽和点は、液体の温度、及び関連の物質の化学的性質によって決まる。本明細書では、飽和は、周囲温度で決定される。
【0073】
本明細書では、「第1の抽出緩衝液」は、極性プロトン性溶媒及び/又は有機溶媒を含む。第1の抽出緩衝液に使用するための極性プロトン性溶媒として、限定されないが、ブタノール、プロパノール(即ち、イソプロパノール及び/又はn-プロパノール)、エタノール、メタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの非環式アルコールを含めてのアルコール;ギ酸、酢酸、水が挙げられる。本明細書では、第1の溶媒は、タンパク質の構造の破壊、例えば細胞膜に孔を創出することによる細胞構造の破壊、少なくともタンパク質の限定抽出の促進、及びタンパク質の沈殿の促進のうちの少なくとも1つを促進する。本明細書では、第1の溶媒は、タンパク質の構造の破壊、例えば細胞膜に孔を創出することによる細胞構造の破壊、少なくともタンパク質の限定抽出の促進、及びタンパク質の沈殿の促進のうちの少なくとも2つを促進する。本明細書では、第1の溶媒は、タンパク質の構造の破壊、例えば細胞膜に孔を創出することによる細胞構造の破壊、少なくともタンパク質の限定抽出の促進、及びタンパク質の沈殿の促進のうちの少なくとも3つを促進する。本明細書では、第1の溶媒は、タンパク質の構造の破壊、例えば細胞膜に孔を創出することによる細胞構造の破壊、少なくともタンパク質の限定抽出の促進、及びタンパク質の沈殿の促進のすべてを促進する。第1の抽出緩衝液は、第2の抽出緩衝液とは異なる。ある種の実施形態では、第1の抽出緩衝液はメタノールでない。
【0074】
本明細書では、「第2の抽出緩衝液」は、非極性溶媒、例えば、有機溶媒を含む。第2の抽出緩衝液として、限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ヘキサン類、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジイソブチルエーテルを挙げることができる。また第2の抽出緩衝液として、ヘキサンなどのアルカンを挙げることもできる。ある種の実施形態では、第2の抽出緩衝液は、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒である。本明細書では、第2の溶媒は、第1の抽出緩衝液からCoQ10を分離することを促進する。第2の抽出緩衝液は、第1の抽出緩衝液とは異なる。
【0075】
本明細書での「試料」という用語は、その最も広い意味で使用される。本明細書での「生物試料」として、限定されないが、任意選択で界面活性剤又は洗剤を含む第1の抽出緩衝液中で可溶化することができる生体又はかつての生体由来の任意量の物質が挙げられる。かかる生体として、限定されないが、哺乳類、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ、及び他の動物;植物;酵母や細菌などの単細胞生物が挙げられる。かかる物質として、限定されないが、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節、及び脾臓、例えば、切除組織又は生検試料由来のもの;及び例えば遠心分離によって任意の体液から収集された細胞;及び初代細胞及び不死化細胞及び細胞株が挙げられる。試料として、新鮮な細胞及び過去に使われた細胞が挙げられる。本明細書では、「細胞ベースの試料」は、検出用の試料中に存在するCoQ10の実質的にすべて(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%)が試料の細胞の内部(即ち、血清、細胞外液、細胞培養培地中でない)に存在する試料として理解される。ある種の実施形態では、本明細書で提供される方法は、細胞ベースの試料中のCoQ10を検出するためのものである。
【0076】
本明細書での及び化学で理解されている「分光光度法」又は「分光分析」は、波長の関数としての材料の反射又は透過特性の定量的測定である。本明細書では、分光光度法は、可視光、近紫外、及び近赤外の透過及び検出に関連している。好ましくは、分光光度法は、検出すべき成分を例えば大きさによる分離又は沈殿によって混合物の他の成分から分離することなく、特定の波長で光を吸収する混合物の一成分の濃度を決定するのに使用される。好ましくは、本明細書で提供される分光光度法は、試料中のCoQ10の検出を可能にするための大きさによる除外又は分離法(例えば、クロマトグラフィー又は質量分析法)を使用する細胞溶解液からのCoQ10の単離を含まない又は必要としない。
【0077】
分光分析は、吸光分光法、蛍光X線分光法、炎光分光法、可視光分光法、紫外分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、コヒーレント反ストークスラマン分光法(CARS)、核磁気共鳴分光法、光子放出分光法、及びメスバウアー分光法から選択される。CoQ10は、好ましくは、紫外分光法を使用して275nm又はその近傍(例えば、270〜280nm;272〜278nm;274〜276nm)の波長で検出される。一部の実施形態では、CoQ10は、270nmと280nmの間の任意の波長、例えば、270nm、271nm、272nm、273nm、274nm、275nm、276nm、277nm、278nm、279nm又は280nmで検出される。
【0078】
本明細書では、本明細書でのCoQ10の「単離」とは、CoQ10と共に天然に存在する物質(例えば、細胞の成分、生物試料の成分)の少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%をCoQ10が溶媒中で含まないことを意味する。
【0079】
本明細書で「量を決定すること」は、試料中の分析物、例えば、CoQ10の存在又は不存在を検出するためのステップを実施することである。ある種の実施形態では、試料中の存在が決定される分析物の量は、ゼロであっても本方法の検出限界未満であってもよい。ある種の実施形態では、CoQ10量は、本方法の直線検出範囲を超える場合もある。そのような場合、試料は、分光光度分析の前に適切な緩衝液で希釈することができる。
【0080】
本明細書での「対照試料」という用語は、例えば、がん若しくは他の疾患を患っていない健康な対象からの試料、評価対象より重篤でない若しくはより進行の遅いがん又は他の疾患を有する対象からの試料、ある種の他の種類のがん若しくは疾患を有する対象からの試料、治療前の対象からの試料、非疾患組織(例えば、非腫瘍組織)の試料、腫瘍部位に近い同じ起源からの試料などを含めての任意の臨床的に適切な比較試料を指す。対照試料は、1つ以上の対象に由来する試料を含んでよい。対照試料はまた、評価されるべき対象からより早期に作成された試料であってよい。例えば、対照試料は、がん又は他の疾患の開始前に、疾患の早期段階で、又は治療薬又は一部の治療薬の投与前に、評価されるべき対象から採取された試料であってよい。対照試料は、キットと一緒に提供された精製試料、化合物(例えば、CoQ10)、タンパク質及び/又は核酸であってよい。かかる対照試料は、試験試料中の分析物の定量的な測定を可能にするために、例えば、希釈系列に希釈することができる。対照試料はまた、動物モデルからの、又は疾患の動物モデル由来の組織又は細胞株からの試料であってよい。CoQ10のレベルは、組織間で変動するので、対照は、組織特異的対照であってよい。一群の測定値からなる対照試料中のCoQ10のレベルは、例えば平均値、中央値又は最頻値を含む代表値などの任意の適切な統計値に例えば基づいて、決定することができる。
【0081】
「対照レベル」という用語は、カットオフ値又は標準曲線を作成するのに使用される一連の値のいずれかの一般的な又は予め決定されたCoQ10レベルを指し、試料、例えば、対象由来の試料中のCoQ10レベルを決定するのに使用される分光光度測定値と比較するのに使用される。例えば、一実施形態では、CoQ10の対照レベルは、特定の疾患を有する又は有する疑いのある対象(単数又は複数)からの試料(単数又は複数)中のCoQ10レベルに基づく。別の実施形態では、CoQ10の対照レベルは、疾患の進行が特定の速度である対象(単数又は複数)からの試料中のレベルに基づく。別の実施形態では、CoQ10の対照レベルは、罹患していない、即ち、非疾患対象(単数又は複数)、即ち、診断を受けていない、又は特定の疾患を有すると予想されない対象からの試料(単数又は複数)中のCoQ10レベルに基づく。さらなる別の実施形態では、CoQ10の対照レベルは、治療薬の投与前の対象(単数又は複数)からの試料中のCoQ10レベルに基づく。別の実施形態では、CoQ10の対照レベルは、試験化合物と接触していない疾患又は症状を有する対象(単数又は複数)からの試料(単数又は複数)中のCoQ10レベルに基づく。一実施形態では、対照は、例えば、特定の疾患又は症状を有さない、又は特定の疾患又は症状であると診断された対象の集団からの、又は異常な組織に隣接した組織(例えば、腫瘍組織に隣接した正常な組織)中のCoQ10レベルの平均を使用して事前に決定される対照などの標準化対照である。対照レベルはまた、ある範囲、例えば、正常又は対照組織中に通常検出されるレベルであってよいし、或いは、対照値は、正常範囲の末端の値、例えば、正常の最大レベル又は正常の最低レベルに対して検出された量を含んでもよい。
【0082】
「ベースライン」は、患者の調査への参加開始時の、又は治療の開始時のCoQ10レベルを指し、患者が治療中又は治療後に有する場合があるCoQ10レベルと区別するのに使用される。ベースラインレベルは、対照レベルとして使用することができる。
【0083】
本明細書では、「対照」試料又は対象「に比較して変化した」とは、正常、未処置又は対照試料からの試料と統計的に異なるレベルで検出されるCoQ10レベルを有すると理解される。対照試料として、例えば、培養細胞、特に未処置又はビヒクル処置した細胞、1以上の実験室試験動物、又は1以上のヒト対象が挙げられる。選択する方法及び試験用対照試料は、当業者の能力の範囲内である。分析物は、その細胞又は生物によって特徴的に発現又は産生される天然の物質(例えば、CoQ10、抗体、タンパク質)であっても、レポーター構築によって産生される物質(例えば、β-ガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼ)であってもよい。検出のために使用される方法に応じて変化の量及び測定値は、変動する場合がある。対照参照試料に比較した変化はまた、疾患(例えば、がん)に関連した又はその診断に用いられる1つ以上の兆候又は症状における変化を含みうる。統計的有意性の決定、例えば、陽性結果を構成する平均からの標準偏差の数値の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0084】
本明細書での「混合」などは、成分、例えば、2つ以上の液体を合わせること又はブレンドすることとして理解される。混合は、連続であっても、間欠的であってもよい。混合は、例えば、成分を含んでいる容器の撹拌(即ち、機械撹拌)によって、磁気撹拌機によって、超音波処理によって、ボルテックスによって、又は成分の効果的な混合をもたらす任意の他の方法によって実施することができる。好ましい実施形態では、特に界面活性剤又は洗剤の存在下で後の検出方法を妨害する可能性のある泡を生成しない混合方法が好ましい。ある種の実施形態では、消泡剤がCoQ10の検出を妨害しない限り、発泡を低減又は抑制するために、消泡剤を含ませることができる。
【0085】
本明細書では、「周囲温度」は、実験室中の周囲温度、例えば、通常、約15℃〜約30℃、好ましくは、約18℃〜約25℃であると理解される。本明細書では、「周囲温度」への冷却は、本発明の処理試料の水性層及び有機層の相分離を可能にする温度への冷却である。冷却は、水浴、温度ブロック、ブローワ又は他の器具を使用して、又は単に、試料が周囲温度に到達するのを可能にすることによって実施することができる。
【0086】
本明細書では、試料を「加熱すること」は、約50℃〜約100℃、約55℃〜約90℃、60℃〜約80℃、約60℃〜約70℃、約62℃〜約68℃、約63℃〜約67℃、又は約65℃;又は提供された任意の値によって囲われた範囲の温度まで試料を上昇させることと理解される。加熱は、水浴、温度ブロック、ブローワ、インキュベーター、又は他の器具を使用して実施することができる。
【0087】
抽出効率は、メタノールのみを使用して抽出されたCoQ10量と比較した、本発明の方法を使用して抽出されたCoQ10量として決定される。このメタノールのみの方法は、CoQ10に対する質量分光分析法を使用する検出の前にCoQ10抽出のために常法に従って使用される。ある種の実施形態では、抽出後、CoQ10は、分光光度法を使用して検出される。ある種の実施形態では、抽出後、CoQ10は、LC/MS/MSを使用して検出される。ある種の実施形態では、抽出後、CoQ10は、1つの試料について分光光度法、他の試料についてLC/MS/MSを使用して検出される。抽出効率は、メタノールのみを使用する抽出方法についての効率の増加倍数、例えば、効率の約2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、75、又は100倍以上の効率増加として表される。
【0088】
本明細書では、「自動化」は、機械によって実施されるプロセスとして理解され、手動による試料又は試薬の取り扱いを要しない。試料を機械によって処理することを可能にするために、いくつかの試料及び装置の準備、例えば、分析用の試料の適切な量の決定、処理を可能にするために適切な容器中に試料を入れること、機械内に試薬を装入すること、機械をプログラミングすること、及びデータ解析が必要であると理解されている。本明細書では、特許請求されたステップのすべてが、自動化されていれば、そのプロセスは、自動化されている。
【0089】
本明細書では、コエンザイムQ10の酸化形態(CoQ10-d6)の同位体標識類似体は、以下の構造式を有する化合物である。
【化2】
【0090】
本明細書では、コエンザイムQ10の還元形態(CoQ10H
2-d6)の同位体標識類似体は、以下の構造式を有する化合物である。
【化3】
【0091】
一部の実施形態では、CoQ10H
2-d6は、CoQ10-d6を1つ以上の還元剤と反応させることによって合成される。一部の実施形態では、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)である。
【0092】
本明細書では、「内部標準」は、分析物を含む試料それぞれに直接に既知量で添加される化学物質として理解される。次いで、存在する分析物の量が、較正剤としての内部標準と比較して決定される。
【0093】
一部の実施形態では、内部標準は、同位体で標識された内部標準であり、分析物分子の同位体標識バージョンである。分析物によって生成する質量分析シグナルは、同位体標識標準によって生成する質量分析シグナルと異なり、その差は、分析物の同位体標識バージョン内に組み込まれた同位体原子の種類及び数によって決まる。一部の実施形態では、CoQ10-d6は、内部標準として機能するCoQ10の同位体標識バージョンである。一部の実施形態では、CoQ10H
2-d6は、内部標準として機能するCoQ10H
2の同位体標識バージョンである。
【0094】
本明細書では、「質量分析法」又は「MS」という用語は、その質量によって化合物を同定する分析技法を指す。MSは、その質量と電荷の比、又は「m/z」に基づいてイオンをふるいわけ、検出及び測定する方法を指す。MS技術は、一般に、(1)化合物をイオン化して帯電化合物を形成するステップと、(2)帯電化合物の分子量を検出し、質量と電荷の比を計算するステップとを含む。化合物は、任意の適切な手段によってイオン化し、検出することができる。「質量分析計」は、一般に、イオン化器及びイオン検出器を含む。一般に、1つ以上の目的の分子がイオン化され、続いて、イオンは、質量分析装置内に導入され、そこで、磁界と電界の組合せにより、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に応じた空間中の経路に従う。例えば、発明の名称「Mass Spectrometry From Surfaces」である米国特許第6,204,500号;発明の名称「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」である同第6,107,623号;発明の名称「DNA Diagnostics Based on Mass Spectrometry」である同6,268,144号;発明の名称「Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release for Desorption And Detection Of Analytes」である同6,124,137号;WrightらのProstate Cancer and Prostatic Diseases 1999, 2: 264-76;及びMerchant及びWeinbergerのElectrophoresis 2000,21:1164-67を参照されたい。
【0095】
本明細書では、「陰イオンモードで操作すること」という用語は、陰イオンが発生し、検出される質量分析法を指す。「陽イオンモードで操作すること」という用語は、陽イオンが発生し、検出される質量分析法を指す。
【0096】
本明細書では、「イオン化」又は「イオン化すること」という用語は、1つ以上の電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物イオンを発生させるプロセスを指す。陰イオンは、1つ以上の電子単位の正味の陰電荷を有するイオンであり、陽イオンは、1つ以上の電子単位の正味の陽電荷を有するイオンである。
【0097】
本明細書では、「電子イオン化」又は「EI」という用語は、ガス又は蒸気相中の目的の分析物が、電子流と相互作用する方法を指す。分析物に対する電子の衝撃によって、分析物イオンが生成し、次いで、このイオンを質量分析技法にかけることができる。
【0098】
本明細書では、「化学的イオン化」又は「CI」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が、電子衝撃を受け、分析物イオンが、試薬ガスイオンと分析物分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0099】
本明細書では、「高速原子衝撃」又は「FAB」という用語は、高エネルギー原子(しばしば、XE又はAr)のビームが、非揮発性試料に衝撃を与え、試料中に含まれた分子を脱離し、イオン化する方法を指す。試験試料は、グリセリン、チオグリセリン、m-ニトロベンジルアルコール、18-クラウン-6クラウンエーテル、2-ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどの粘性液体マトリックス中に溶解される。化合物又は試料用の適切なマトリックスの選定は、経験的プロセスである。
【0100】
本明細書では、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」又は「MALDI」という用語は、非揮発性試料が、レーザー照射に曝露され、それによって、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含めた様々なイオン化経路によって分析物を脱離し、イオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、エネルギー吸収マトリックスと混合され、これによって分析物分子の脱離が促進される。
【0101】
本明細書では、「表面増強レーザー脱離イオン化」又は「SELDI」という用語は、非揮発性試料が、レーザー照射に曝露され、それによって、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含めた様々なイオン化経路によって分析物を脱離し、イオン化する別の方法を指す。SELDIでは、試料は、通常、1つ以上の対象分析物を好ましくは保持する表面に結合している。MALDIの場合と同様にこのプロセスはまた、エネルギー吸収材料を用いてイオン化を促進することができる。
【0102】
本明細書では、「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は、溶液を短い長さの毛細管に沿って通し、毛細管の末端に陽又は陰の高電位を印加する方法を指す。管の末端に到達する溶液は、蒸発し(噴霧され)、溶媒蒸気中で溶液の非常に小さい液滴のジェット流又はスプレー流になる。この液滴のミストは、凝縮を防止し、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱されている蒸発チャンバ内を流れる。液滴が小さくなるにつれて、同種電荷間の自然的斥力によってイオン及び中性分子が放出される時間まで、表面電荷密度が増加する。
【0103】
本明細書では、「大気圧化学イオン化」又は「APCI」という用語は、ESIに類似の質量分析法を指す;しかし、APCIは、大気圧下プラズマ内で起こるイオン-分子反応によってイオンを生成する。プラズマは、スプレー毛細管と対電極間の放電によって維持される。次いで、イオンは、通常、一組の差動ポンプ式スキマーステージの使用によって質量分析器内に抽出される。乾燥した予熱N
2ガスの向流を使用して溶媒の除去を改善することができる。より極性の小さい種を分析する場合、APCIにおけるガス相イオン化は、ESIより効果的である。
【0104】
本明細書での「大気圧光イオン化」又は「APPI」という用語は、分子Mの光イオン化に対する機構が分子イオンM
+を形成するための光吸収及び電子放出である質量分析法の形態を指す。フォトンエネルギーは、通常、イオン化ポテンシャルより少し上であるので、分子イオンは、解離されにくい。多くの場合、クロマトグラフィーを必要とせずに試料を分析することが可能である場合があり、そのために時間及び費用が顕著に節約される。水蒸気又はプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを抽出してMH
+を形成することができる。これは、Mが大きなプロトン親和性を有する場合に起こる傾向がある。M
+とMH
+の和は一定であるので、定量正確度に影響しない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常、MH
+として観測されるが、ナフタレンやテストステロンなどの非極性化合物は、通常、M
+を形成する。例えば、RobbらのAnal.Chem.2000,72(15):3653-3659を参照されたい。
【0105】
本明細書では、「誘導結合プラズマ」又は「ICP」という用語は、試料が、大部分の元素が原子化され、イオン化されるような十分な高温で部分的にイオン化したガスと相互作用する方法を指す。
【0106】
本明細書では、「電界脱離」という用語は、非揮発性試験試料が、イオン化面上に置かれ、強力な電界を使用して分析物イオンを発生させる方法を指す。本明細書では、「脱離」という用語は、ガス相内への表面からの分析物除去及び/又はガス相内への分析物の導入を指す。レーザーダイオード熱脱離(LDTD)は、分析物を含む試料が、レーザーパルスによってガス相内へ熱脱離される技法である。レーザーは、金属ベースを備えた特製の96ウエルプレートの背面に衝突する。レーザーパルスは、ベースを加熱し、その熱によって試料がガス相内に移される。次いで、ガス相試料を、イオン化源内に引っ張り込むことができ、ガス相試料は、質量分析計中で分析するための準備としてイオン化される。LDTDを使用する場合、ガス相試料のイオン化は、コロナ放電によるイオン化(例えば、APCIによる)など、当技術分野で公知の任意の適切な技法によって実施することができる。
【0107】
本明細書では、「選択的イオンモニタリング」という用語は、比較的狭い質量範囲、通常、一質量単位以内のイオンのみが検出される質量分析装置用の検出モードである。
【0108】
本明細書では、「選択反応モニタリング」又は「複数反応モニタリング」と呼ばれる場合もある「複数反応モード」は、前駆体イオン及び1つ以上のフラグメントイオンが選択的に検出される質量分析装置用の検出モードである。
【0109】
本明細書では、「定量下限」、「定量下限」又は「LLOQ」という用語は、測定値が定量的に意義を持つ点を指す。このLOQにおける分析物応答は、同定可能で、離散的で、再現性があり、相対標準偏差(RSD%)が20%未満であり、正確度が80%〜120%である。
【0110】
本明細書では、「検出限界」又は「LOD」という用語は、測定値がそれに伴う不確かさより大きい点である。LODは、値がその測定に伴う不確かさを超えている点であり、濃度ゼロにおける平均のRSDの3倍として定義される。
【0111】
本明細書では、「褐色バイアル」は、褐色ガラスから作製されたバイアルである。一部の実施形態では、褐色バイアルは、その中に入れた試料を光から保護するのに使用される。
【0112】
本明細書では、「クライオブロック」は、試験管を長期間低温に保持できる試験管ホルダーである。
【0113】
本明細書では、「キット」は、適切な包装中に本発明の方法を実施するための2つ以上の試薬を含む。例えば、キットは、液体又は凍結乾燥いずれかの形態で、溶解緩衝液、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、及び洗剤又は界面活性剤のうちの任意の1つ以上を含むことができる。ある種の実施形態では、キットは、例えば、標準曲線の生成を可能にするために、界面活性剤及び/又は対照として使用するためのCoQ10を含むことができる。キットはまた、本発明の方法を実施するための取扱説明書を含むことができる。
【0114】
本明細書では、「得ること」は、製造すること、購入すること、又は他の方法で所有物とすることとして本明細書で理解される。
【0115】
別段の定義がない限り、本開示との関連で使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。用語の意味及び範囲は、明確であるべきである;しかし、潜在的な曖昧性が生じた場合、本明細書で提供された定義が、如何なる辞書又は外部の定義より優先する。
【0116】
さらに、文脈より特段の要請がない限り、単数の用語は、複数を含み、複数の用語は、単数を含むものとする。「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別段の記載がない限り、又は文脈から明白でない限り、複数と単数の両方を含むと理解すべきである。本明細書では、「又は」は、別段の記載がない限り、又は文脈から明白でない限り、包括的として理解すべきである。
【0117】
また、「要素」又は「成分」は、別段の記載がない限り、一単位を含む要素及び成分と1つを超えるサブ単位を含む要素及び成分の両方を包含する。
【0118】
「含む(including)」及び「含む(comprising)」などの用語は、限定的でなく、他の成分又はステップを含むことが可能であると理解すべきである。「などの」という用語は、本明細書で、「限定されないが、〜などの」という句を意味するのに使用され、「限定されないが、〜などの」と互換的に使用される。
【0119】
本明細書では、「本質的に〜からなる」などは、化合物、方法、又はキットを指定された材料又はステップ、及び本発明の「基本的で新規な特徴(単数又は複数)に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定すると理解される。例えば、抽出法は、本質的に、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、洗剤、及び任意選択で塩を用いた抽出からなることができ、さらなる抽出又は精製ステップを含まない。しかし、試料を移動又は混合するなどの他のステップは、含むことができる。
【0120】
文脈から明確でない限り、本明細書のすべての値は、「約」という用語によって修飾されると理解することができる。許される変動の量は、特定の値によって決まるが、通常、平均の標準偏差の2倍以内であると考えられている。「約」は、最大10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%、又は0.01%までの変動であると理解することができる。本明細書で提供される範囲は、範囲内、又は範囲内の範囲若しくは値任意のサブセット内のすべての値を含むと理解される。例えば、1〜10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10、これらの値の任意の範囲若しくはサブセット、及び適切であれば分数の値を含むと理解される。同様に、一定の値「まで」として提供された範囲は、ゼロから範囲の最高端までの値を含むと理解され、「未満」は、その数からゼロまでの値を含むと理解され、例えば、5未満は、5、4、3、2、1、若しくは0、又は5〜0の範囲内の値の分数部分を含むと理解される。「1以上」は、1及び1を超えるすべての値、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8など、又は1から始まる任意の具体的な値を含むと理解される。
【0121】
「少なくとも一部」は、その部分が得られる時間、体積、又は他の量のいくらかの部分(例えば、少なくとも約1%)から本質的にすべて(例えば、約100%)又はすべてまでとして理解される。例えば、インキュベーション期間中に混合又は加熱される試料は、全インキュベーション期間にわたり混合又は加熱される必要はない。同様に、通常第2の抽出緩衝液の全量未満の量が、試料から抽出されたCoQ10の濃度を決定するために分析される。
【0122】
液体又は%溶液/液体の懸濁液の比が提示される場合、別段の記載のない限り、比は体積対体積である。固体の%溶液が提供される場合、別段の記載のない限り、比は重量対体積である。
【0123】
本明細書の変数の任意の定義における化学的な群(単数又は複数)の列挙についての記載は、任意の単一群又は列挙した群の任意の組合せとしての変数の定義を含む。本明細書での変数又は態様に対する実施形態についての記載は、任意の単一実施形態としての又は任意の他の実施形態又はその一部分との組合せにおける実施形態を含む。立体化学についての説明がない場合、すべての立体異性体、ラセミ体混合物、又は単一立体異性体が、その用語内に含まれる。構造と構造の名称の両方が提供される場合、矛盾があれば、構造が名称に優先する。
【0124】
本明細書で提供される任意の実施形態、方法、又はキットは、任意の他の本明細書で提供される任意の他の実施形態、方法、又はキットと組み合わせることができる。
【0125】
II.方法及び使用
抽出方法
生物試料中のCoQ10量を決定するための方法及びキットが、本明細書で提供される。本明細書で提供される抽出法はまた、CoQ10が、検出の前に大きさに基づいて試料中の他の成分から分離される方法を含めた非分光光度検出法と共に使用することもできる。
【0126】
本発明は、試料中のCoQ10を検出するための迅速で効率的な方法を提供する。本明細書で提供される方法は、例えば、臨床実験室で使用するために、自動化ハイスループットスクリーニング法に適用することができる。これは、本明細書で提供される方法を使用して得られるCoQ10の高レベルの抽出と、分子量に基づくCoQ10の単離又はCoQ10の検出を必要としない分光法を使用するCoQ10の検出の両方によって可能になり、そのために、本方法は、ハイスループットスクリーニング法に適用されることが可能になる。本明細書で提供される抽出法はまた、検出の前に、大きさによるCoQ10の分離、例えば、液体クロマトグラフィーを含むCoQ10の検出法と一緒に使用することができる。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーの次に、試料中に存在するCoQ10を質量分光分析を行う。しかし、本発明の好ましい方法は、試料中に存在する他の成分から大きさに基づいてCoQ10を分離するためのステップを含まない。
【0127】
ある種の実施形態では、提供される方法は、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を試料、例えば、組織試料又は細胞試料に添加するステップを含む。次いで、相を分離することが可能になり、CoQ10は、第2の抽出緩衝液層中に保持される。次いで、第2の抽出層を分光学的に分析して試料中に存在するCoQ10量を決定する。
【0128】
ある種の実施形態では、第1及び第2の抽出緩衝液は、同時に試料に添加される(例えば、乳化液として;添加の間の所定のインキュベーション時間なしで時系列的に、例えば、互いに30秒以内に、互いに20秒以内に、互いに10秒以内に;決まったステップ、例えば、中間の混合及び/又は加熱なしで)。ある種の実施形態では、第1及び第2の抽出緩衝液は、例えば、機械的に混合、超音波処理することによって、又は磁気撹拌機を使用することによって成分を一緒に強く混合する前に試料に添加される。ある種の実施形態では、試料は、第2の抽出緩衝液を添加する前に第1の抽出緩衝液と一緒にインキュベートされる。ある種の実施形態では、界面活性剤又は洗剤が、試料に添加される。ある種の実施形態では、界面活性剤又は洗剤は、第1の抽出緩衝液を試料に添加する前に、第1の抽出緩衝液と混合される。ある種の実施形態では、界面活性剤又は洗剤は、第1の抽出緩衝液と同時に、及び任意選択で第2の抽出緩衝液と同時に、試料に添加される。ある種の実施形態では、無機塩が、第2の抽出緩衝液を添加した後に試料に添加される。ある種の実施形態では、無機塩は、塩化ナトリウムなどの塩化物塩である。ある種の実施形態では、塩は、飽和塩溶液、好ましくは、水溶液で添加される。ある種の実施形態では、塩は、約1mM〜約50mM(例えば、約5mM〜約45mM、約10mM〜約35mM、約1mM〜約10mM、約1mM〜約25mM、約10mM〜約50mM、約25mM〜約50mM、約20mM〜約30mM、約15mM〜約35mM;又は提供された値によって囲われた任意の範囲)の最終濃度で存在する。
【0129】
ある種の実施形態では、試料は、インキュベーション期間の少なくとも一部の間第1の抽出緩衝液と一緒に、及び任意選択でインキュベーション期間の少なくとも一部の間界面活性剤又は洗剤と一緒に加熱される。ある種の実施形態では、試料は、インキュベーション期間の少なくとも一部の間混合される。ある種の実施形態では、試料は、第2の抽出緩衝液を添加した後に混合及び/又は加熱される。ある種の実施形態では、試料は、第1と第2の両方の抽出緩衝液、任意選択で界面活性剤又は洗剤を添加した後にインキュベートされる。ある種の実施形態では、試料は、第1の抽出緩衝液の存在下で加熱される。ある種の実施形態では、試料は、第2の抽出緩衝液の存在下で加熱される。ある種の実施形態では、試料は、第1と第2の両方の抽出緩衝液の存在下で加熱される。ある種の実施形態では、試料は、第1の緩衝液、又は第2の緩衝液、又は第1と第2の両方の緩衝液中で少なくとも5秒間、少なくとも10秒間、少なくとも15秒間、少なくとも20秒間、少なくとも30秒間、少なくとも40秒間、少なくとも50秒間、少なくとも60秒間、少なくとも75秒間、少なくとも90秒間、少なくとも105秒間、又は少なくとも120秒間加熱される。ある種の実施形態では、加熱ステップは、抽出中に加熱されない試料に比較して、抽出されるCoQ10量を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも50%以上増加させる。
【0130】
第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の物理特性の相違は、第1及び第2の抽出緩衝液の自発的な相分離をもたらす。ある種の実施形態では、分離は、加熱試料を能動的に又は受動的に周囲温度(即ち、標準実験室温度、自動化ハイスループットアッセイ装置内の温度)まで冷却することによって促進することができる。層の分離の際、CoQ10は、第2の抽出相、即ち、非極性溶媒中に存在する。
【0131】
ある種の実施形態では、分離後、少なくとも一部の第2の抽出相は、分光分析を容易にするために試料から除去される。ある種の実施形態では、第2の抽出相は、CoQ10の存在を定量的に検出する目的で波長275nmで読み取るために石英容器(例えば、キュベット、適切な形状の管)に移される。本発明は、例えば、クロマトグラフィー法又は質量分析法を使用して、大きさに基づいてその検出を可能にするために試料の実質的にすべての他の成分からCoQ10を単離する必要があり、例えばカラム又はエレクトロスプレーによる分離により、混合物中の分子種を分離しその後に混合物中の分子種の様々な成分を検出及び同定する必要がある、CoQ10を検出するための他の定量法を超える利点を提供する。本明細書で提供される抽出法によって、分子量に基づいてCoQ10を検出することなく試料中のCoQ10を定量的に検出することが可能になる。結果として、本方法は、ハイスループット法に容易に適用可能であり、速やかに(例えば、約10分以下で、約5分以下で、約2分以下で、約1分以下で、約30秒以下で)実施することができる。
【0132】
本明細書で提供される抽出法は、試料材料、例えば、培地で増殖させたか又は対象試料由来のいずれかの細胞などの典型的には生物的な材料からCoQ10を抽出するのに極めて効率的である。抽出効率は、メタノールのみを使用して抽出されるCoQ10量と比較した、本発明の方法を使用して抽出されるCoQ10量として決定される。なお、メタノールのみの方法は、液体クロマトグラフの後に質量分光光度法を使用して検出する前にCoQ10抽出のために常法に従って使用される。抽出効率は、メタノールのみを使用する抽出法、好ましくは、メタノールとその後の液体クロマトグラフィー分離、及び質量分析検出法とを使用する抽出法に対する効率増加の倍数として表される。本発明の方法を使用して、抽出は、少なくとも2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、75、又は100倍以上効率的である。ある種の実施形態では、抽出は、少なくとも又は約5、11、14、28、82、545、又は1863倍以上効率的である。
【0133】
使用される試料量及び抽出体積は、限定されないが、利用可能試料量、抽出バイアル及び分光光度分析用のキュベットの容積を含めた多数の因子によって決まる。例えば、試料を手動で処理する場合、より大きい体積が通常使用されるが、自動化法が使用される場合、より小さい試料体積を使用することができる。
【0134】
第1の抽出緩衝液と第2の抽出緩衝液の比は、好ましくは、約5:1〜約1:1(v/v)(例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1又は任意の値によって囲われた範囲内の少数値、例えば、4.5:1、3.3:1、2.1:1)である。存在する場合、界面活性剤又は洗剤と第1の抽出緩衝液の比は、好ましくは、約(1:50〜約1:1(v/v)(1:50、1:45、1:40、1:35、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:5、1:1)である。界面活性剤又は洗剤の濃度は、好ましくは、約0.01mM〜約10mM(例えば、約0.01mM〜約1mM、約1mM〜約10mM、約0.1mM〜約5mM、約0.01mM〜約2mM、約0.1mM〜約7.5mM、約1mM〜約10mM、又は提供された任意の値で囲われた任意の範囲)である。一部の界面活性剤又は洗剤は、概略の分子量を有する混合ポリマーであり、したがって概略のモル濃度のみを提供することができる。
【0135】
内部標準としてのCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6の使用
質量分析法、例えば、LC-MS/MSを使用して試料中のCoQ10の酸化及び還元形態を検出及び定量する方法も本明細書で提供されている。試料中のCoQ10の酸化及び還元形態は、別々に検出及び定量してもよく、両方を単一分析工程で一緒に検出及び定量してもよい。具体的な実施形態では、本発明の方法は、試料中に存在する還元CoQ10(CoQ10H
2)量を定量するのに使用することもできる。こうした方法によって、CoQ10H
2の正確で信頼できる定量が可能になり、このことは、CoQ10H
2がCoQ10の生物学的に活性な形態であるため重要である。
【0136】
一部の実施形態では、CoQ10の酸化及び還元形態を検出及び定量する方法は、本明細書に記載の試料抽出方法と組み合わせてもよく、他の抽出方法と組み合わせてもよい。例えば、一部の実施形態では、試料中のCoQ10の還元及び酸化形態、例えば、生物試料は、1つの抽出緩衝液、例えば、1-プロパノールを使用して試料を抽出することによって検出及び定量することができる。他の実施形態では、試料中のCoQ10の還元及び酸化形態、例えば、生物試料は、本明細書に記載の方法に従って第1及び第2の抽出緩衝液を使用して試料を抽出することによって検出及び定量することができる。
【0137】
CoQ10の酸化及び還元形態の定量は、内部標準としてそれぞれの同位体標識バージョン、例えば、酸化及び還元重水素化CoQ10を使用して実施することができる。一部の実施形態では、CoQ10-d6は、試料中のCoQ10量を決定するための内部標準として使用することができる。一部の実施形態では、CoQ10H
2-d6は、試料中のCoQ10H
2量を決定するための内部標準として使用される。一部の実施形態では、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6は両方が、試料中に含まれたCoQ10及びCoQ10H
2量を同時に決定するために使用される試料に添加される。試料中のCoQ10量は、試料に添加されたCoQ10-d6の既知量及びCoQ10及びCoQ10-d6によって生成する相対的な質量分析シグナルに基づいて計算することができる。同様に、試料中のCoQ10H
2量は、試料に添加されたCoQ10H
2-d6の既知量及びCoQ10H
2及びCoQ10H
2-d6によって生成する相対的な質量分析シグナルに基づいて計算することができる。
【0138】
試料中のCoQ10を定量するための内部標準としてのCoQ10-d6の使用、及び試料中のCoQ10H
2を定量するための内部標準としてのCoQ10H
2-d6の使用は、CoQ10とCoQ10H
2の両方を定量するための内部標準としてCoQ10-d6又はCOQ9やCOQ11などの類似体を用いる既知の方法に対する利点を提供する。具体的には、本明細書に記載の定量によって、CoQ10H
2の定量の正確度が大きくなる。それは、内部標準として本方法で使用されるCoQ10H
2-d6は、特性、例えば、CoQ10H
2に非常に類似している抽出回収率、イオン化応答及びクロマトグラフィー保持時間を有するが、異なる質量分析シグナルを生成するためである。対照的に、CoQ10H
2を定量するために内部標準としてCoQ10-d6、COQ9又はCOQ11を使用すると、定量にバイアスがかかり、正確度が低くなる。
【0139】
内部標準、例えば、CoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6は、試料の作成手順の任意の点で試料に添加することができる。一部の実施形態では、内部標準は、試料処理の最初、例えば、抽出でそれぞれの試料に添加される。一部の実施形態では、試料は、血液を含み、内部標準は、血漿の抽出の前に試料に添加される。
【0140】
それぞれの試料に添加される内部標準、例えば、CoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6の量は、分析物、CoQ10又はCoQ10H
2によって生成する質量分析シグナルと干渉すべきでない。一部の実施形態では、それぞれの試料に添加されるCoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6の量は、用量応答曲線の直線範囲内であるCoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6の濃度をもたらすべきである。好ましい実施形態では、それぞれの試料に添加されるCoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6の量は、20〜2500ng/mL(例えば、50〜2000ng/mL、又は100〜1500ng/mL、又は100〜1000ng/mL)の濃度を生成すべきである。
【0141】
一部の実施形態では、本発明は、試料の処理、例えば、試料抽出の間、及びその結果として生ずるCoQ10H
2分解の程度を決定するための方法を提供する。CoQ10H
2分解の一例は、部分酸化形態(ユビセミキノン、CoQ10H)又は完全酸化形態(ユビキノン、CoQ10)を生成するCoQ10H
2の酸化である。CoQ10H
2の分解は、試料の処理中、及び試料がCoQ10及び/又はCoQ10H
2を検出するために質量分析計内に導入される前に生ずる光及び高温への曝露によって増幅される場合がある。一部の実施形態では、CoQ10H
2の酸化程度は、試料処理の前に試料に添加されたCoQ10H
2-d6の既知量及び残留CoQ10H
2-d6及び酸化に由来するCoQ10H-d6及びCoQ10-d6の測定相対的シグナルに基づいて計算することができる。好ましい実施形態では、試料中のCoQ10及びCoQ10H
2の測定量は、酸化されるCoQ10H
2-d6の量、及び試料処理中に生成するCoQ10-d6量によって調整される。
【0142】
質量分析法及び内部標準を使用するCoQ10及びCoQ10H2の検出法
ある種の実施形態では、本発明は、CoQ10及びCoQ10H
2の量を決定するためのLC-MS/MS法を提供する。この方法は、両方の形態に対する臨床適切範囲20〜2500ng/mLにわたり直線的であり、r
2>0.99である。両方の形態に対するCV%及びアッセイ法間及びアッセイ法内の精度/正確度の値は、10%未満である。
【0143】
一部の実施形態では、本発明は、
a)試料を用意するステップと、
b)任意選択で既知量のCoQ10-d6及び/又はCoQ10H
2-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を処理するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10及び/又はCoQ10H
2、及び適用可能であればCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6を検出するステップと、
f)試料中の検出されたCoQ10及び/又はCoQ10H
2の量を、既知量の検出されたCoQ10H
2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10及び/又はCoQ10H
2量を決定する方法を提供する。
【0144】
一部の実施形態では、方法全体は、CoQ10H
2の分解を最小化するために光を低減して、及び褐色バイアルを使用して実施される。一部の実施形態では、試料の収集は、CoQ10H
2の温度誘導分解を最小化するための予冷収集管を使用して実施される。さらなる実施形態では、収集管は、0℃〜-20℃の温度まで予冷することができる。好ましい実施形態では、収集管は、-20℃まで予冷することができる。別の実施形態では、収集管は、約-20℃〜約-80℃、例えば、約-20℃、約-25℃、約-30℃、約-35℃、約-40℃、約-45℃、約-50℃、約-55℃、約-60℃、約-65℃、約-70℃、約-75℃、又は約-80℃の温度まで予冷することができる。
【0145】
一部の実施形態では、試料は、血液、例えば、ヒト血液であり、このヒト血液は、凝固防止剤としてリチウムヘパリンを含む予冷したBD Vacutainer(登録商標)中に収集され、血液から血漿を抽出するのに使用できる当技術分野で公知の標準手順を使用して直ちに処理される。さらなる実施形態では、血漿は、血液試料収集から30分、好ましくは、15分以内に分離される。代替の実施形態では、試料は、血液、例えば、ヒト血液であり、このヒト血液は、予冷したヘパリン添加バイアルで収集され、低温で保持される。
【0146】
血液試料が、血漿を抽出するために収集から30分以内に処理されない一部の実施形態では、ステップcは、当技術分野で公知の任意の血漿抽出法を使用して血漿を抽出するステップを含むことができる。
【0147】
一部の実施形態では、ステップcは、試料から大部分のタンパク質を除去し、上清中にCoQ10、CoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体を残すためにタンパク質沈殿ステップを含むことができる。試料は、遠心分離して沈殿タンパク質から液体上清を分離することができるし、或いは、試料は、ろ過して沈殿タンパク質を除去することもできる。次いで、生成した上清又はろ液は、質量分析分析、或いは液体クロマトグラフィー及び続いての質量分光分析に直接かけることができる。
【0148】
他の実施形態では、ステップcは、単一溶媒による抽出を使用するタンパク質沈殿ステップを含むことができる。一部の実施形態では、抽出用溶媒は、溶媒中に置かれた場合、分析物分子、例えば、CoQ10及びCoQ10H
2が、安定、例えば、一定期間相当な程度までの分解を受けないように選択される。一部の実施形態では、その期間は、最大6時間まで、例えば、5分、10分、30分、60分、2時間、4時間又は6時間であってよい。一部の実施形態では、溶媒は、ヘキサン、メタノール、又は1-プロパノールであってよい。一部の実施形態では、ステップcは、CoQ10H
2の温度誘導分解を最小化するために予冷試験管、予冷クライオブロック及び予冷溶媒を使用して実施される。さらなる実施形態では、試験管、クライオブロック及び溶媒は、約0℃〜約-20℃の温度、例えば、約-2℃、約-5℃、約-10℃、約-12℃、約-15℃、又は約-20℃まで予冷することができる。好ましい実施形態では、試験管、クライオブロック及び溶媒は、約-20℃の温度まで予冷することができる。別の実施形態では、試験管、クライオブロック及び溶媒は、約-20℃〜約-80℃の温度、例えば、約-20℃、約-25℃、約-30℃、約-35℃、約-40℃、約-45℃、約-50℃、約-55℃、約-60℃、約-65℃、約-70℃、約-75℃、又は約-80℃まで予冷することができる。
【0149】
一部の実施形態では、ステップcは、本出願の他の場所で記載したように、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用する試料抽出ステップを含むことができる。
【0150】
一部の実施形態では、抽出試料は、ステップdにおいて液体クロマトグラフィーにさらにかけてCoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体を分離することができる。従来のクロマトグラフィー分析は、カラムを通した試料の層流が試料から目的の分析物を分離するための基礎となるカラム充填に依存する。当業者なら、CoQ10及びCoQ10H
2について使用するのに適したHPLC、装置及びカラムを含めたLCを選択することができる。クロマトグラフィーカラムは、通常、化学部分の分離(即ち、分別)を促進するための媒体(即ち、充填材料)を含む。媒体は、微細粒子を含んでもよく、多孔質チャネルを有する一体材料を含んでもよい。媒体の表面は、通常、化学部分の分離を促進するために、様々な化学部分と相互作用する結合表面を含む。1つの適切な結合表面は、アルキル結合表面、シアノ結合表面、又は超高純度シリカ表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C-4、C-8、C-12、又はC-18結合アルキル基を含むことができる。好ましい実施形態では、カラムは、C18マイクロ粒子充填カラム(AgiLent C18 Zorbaxカラムなどの)である。クロマトグラフィーカラムは、試料を受け入れる注入部と、分別された試料を含む流出物を排出するための流出部とを備える。
【0151】
CoQ10及びCoQ10H
2の有効な分離をもたらす任意のクロマトグラフィー法を使用することができる。一部の実施形態では、逆相カラムからのCoQ10及びCoQ10H
2の溶離は、定組成溶離モード、即ち、移動相の組成が一定に保持されるモードを使用して実施される。一部の実施形態では、移動相の組成は、30:70〜90:10のA:Bであり、Aは、5mMギ酸アンモニウムであり、Bは1-プロパノールである。移動相の組成は、5mMギ酸アンモニウム及び1-プロパノールを、限定されないが、エタノール、2-プロパノール、アセトン又はアセトニトリルを含めた類似の極性を有する任意の他の溶媒と置換することによって変更することができる。好ましい実施形態では、移動相の組成は、80:20のA:Bであり、Aは、5mMギ酸アンモニウムであり、Bは1-プロパノールであり、クロマトグラフィー分離は、5分間実施される。
【0152】
一部の実施形態では、CoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体は、クロマトグラフィーの際に検出することができる。一部の実施形態では、検出は、分光検出を含むことができる。CoQ10は、好ましくは、紫外分光法を使用して、275nm近傍又は275nm(例えば、270〜280nm、272〜278nm、274〜276nm)で検出される。
【0153】
好ましい実施形態では、溶離したCoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体は、クロマトグラフィー分離後に質量分析計内に直接供給される。代替の実施形態では、溶離したCoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体を含むクロマトグラフィー画分は、最初に収集し、次いで別のステップで質量分析計内に導入することもできる。
【0154】
ステップeでは、CoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体は、質量分析法を使用して検出される。質量分析法中に、CoQ10及びCoQ10H
2は、当業者に公知の任意の方法によってイオン化することができる。質量分析法は、分別した試料をイオン化し、さらなる分析用の帯電分子を創出するためのイオン源を備える質量分析計を使用して実施される。例えば、試料のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、レーザーダイオード熱脱離(LDTD)、高速原子衝突(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)及び粒子ビームイオン化によって実施することができる。当業者には、イオン化法の選定は、測定すべき分析物、試料の種類、検出器の種類、陽 対 陰性モードの選定などに基づいて決定できることが理解されよう。
【0155】
CoQ10及びCoQ10H
2及びその同位体標識類似体は、陽又は陰性モードでイオン化することができる。好ましい実施形態では、CoQ10及びCoQ10H
2及びその同位体標識類似体は、陽イオンモードでESIを使用してイオン化される。
【0156】
一般に質量分析技法では、試料をイオン化した後、それによって創出された陽又は陰に帯電したイオンを分析して質量と電荷の比を決定することができる。質量と電荷の比を決定するための適切な分析計として、四重極解析器、イオントラップ分析器、及び飛行時間分析器が挙げられる。例示的なイオントラップ法は、BartoluccらのRapid Commun.Mass Spectrom.2000,14:967-73に記載されている。
【0157】
イオンは、数種の検出モードで検出することができる。例えば、選択されたイオンは検出することができる、即ち、選択イオンモニタリングモード(SIM)を使用して検出することができ、或いは、衝突誘導解離又は中性損失に由来する質量トランジションは、例えば、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)でモニターしてもよい。一部の実施形態では、質量と電荷の比は、四重極解析器を使用して決定される。例えば、「四重極」又は「四重極イオントラップ」装置では、振動ラジオ波界中のイオンは、電極間に印加したDC電位、RFシグナルの振幅、及び質量/電荷比に比例した力を受ける。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンのみが四重極の長さを移動し、すべての他のイオンは偏向するように選択することができる。したがって、四重極装置は、装置内に注入されたイオンに対して「質量フィルタ」と「質量検出器」の両方として機能することができる。
【0158】
「タンデム質量分析法」又は「MS/MS」を用いることによってMS技法の分解能を増進することができる。この技法では、目的の分子から生成した前駆体イオン(親イオンとも呼ばれる)は、MS装置でろ過することができ、次いでその前駆体イオンは、砕かれて1つ以上のフラグメントイオン(娘イオン又はプロダクトイオンとも呼ばれる)になり、それが次いで第2のMS手順で分析される。前駆体イオンを注意深く選択することによって、一定の分析物から生成したイオンのみが、開裂チャンバまで通過し、そこで不活性ガスの原子との衝突によってフラグメントイオンが生成する。
【0159】
タンデム質量分析装置を操作する代替のモードとして、プロダクトイオン走査及び前駆体イオン走査が挙げられる。こうしたモードの操作についての説明は、例えば、E.Michael ThurmanらのChromatographic-Mass Spectrometric Food Analysis for Trace Determination of Pesticide Residues, Chapter 8(Amadeo R.Fernandez-Alba,ed.,Elsevier 2005)(387)を参照されたい。
【0160】
分析物アッセイの結果は、当技術分野で公知の膨大な方法によって元の試料中の分析物の量と関連付けることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが注意深く制御されているとすると、所与のイオンの相対的な存在度は、その相対的な存在度を元の分子の絶対量に変換する表と比較することができる。或いは、外部標準は、試料、及びこうした標準から生成するイオンに基づいて構築された標準曲線と一緒に作業することができる。かかる標準曲線を使用して、所与のイオンの相対的存在度は、元の分子の絶対量に変換することができる。ある種の好ましい実施形態では、内部標準は、ビタミンD代謝物の量を計算する目的で標準曲線を生成するのに使用される。かかる標準曲線を生成し、使用する方法は、当技術分野で周知であり、当業者なら、適切な内部標準を選択することができる。例えば、好ましい実施形態では、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6は、内部標準として使用することができる。イオンの量を元の分子の量と関係づけるための膨大な他の方法が、当業者に周知である。
【0161】
本方法の1つ以上のステップは、自動機械を使用して実施することができる。ある種の実施形態では、1つ以上の精製ステップは、オンラインで実施され、より好ましくは、精製及び質量分析ステップのすべては、オンライン様式で実施することができる。
【0162】
前駆体イオンが、さらなる開裂のために単離されるMS/MSなどの一部の実施形態では、衝突活性化解離(CAD)は、しばしば、さらなる検出のためにフラグメントイオンを生成するのに使用される。CADでは、前駆体イオンは、不活性ガスとの衝突によってエネルギーを取得し、次いで、「単分子分解反応」と呼ばれるプロセスによって開裂する。イオン内の一定の結合が振動エネルギーの増加のために破壊できるように、十分なエネルギーが、前駆体イオン中に堆積しなければならない。
【0163】
一部の実施形態では、試料中のCoQ10及びCoQ10H
2は、以下のように多重反応モニタリング(MRM)を使用して質量分析法によって検出される。試料、例えば、ステップdのクロマトグラフィー画分と溶媒とを含む試料は、MS/MS分析器のネブライザー界面に入り、界面の加熱帯電管中で蒸気に変換される。試料中に含まれた分析物(単数又は複数)(CoQ10及びCoQ10H
2及び適用可能であればその同位体標識類似体)は、溶媒/分析物混合物に大電圧を印加することによってイオン化される。分析物が、界面の帯電管を出ると、溶媒/分析物混合物は、霧状になり、溶媒が蒸発し、分析物イオンが残る。イオン、例えば、前駆体イオンは、装置のオリフィス内を通過し、第1の四重極に入る。四重極1及び3(Q1及びQ3)は、質量フィルタであり、その質量と電荷の比(m/z)に基づいてイオンの選択(即ち、Q1及びQ3において「前駆体」と「フラグメント」それぞれの選択)が可能になる。四重極2(Q2)は、衝突セルであり、ここでイオンが開裂される。質量分析計の第1の四重極(Q1)は、目的の誘導体化ビタミンD代謝物の質量と電荷の比を有する分子を選択する。正しい質量/電荷比を有する前駆体イオンは、衝突チャンバ(Q2)内を通過することが可能であるが、任意の他の質量/電荷比を有する望ましくないイオンは、四重極の側面に衝突し、排除される。一部の実施形態では、CoQ10に対する前駆体プロダクトイオンは、m/z863.4のイオンであってよく、CoQ10H
2に対する前駆体プロダクトイオンは、m/z865.4のイオンであってよい。当技術分野で周知の標準法を使用して、当業者なら、四重極2(Q2)におけるさらなる開裂のために使用できるCoQ10、CoQ10H
2、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6の特定の前駆体イオンの1つ以上のフラグメントイオンを同定することができる。
【0164】
Q2に入る前駆体イオンは、中性アルゴンガス分子と衝突し、開裂される。生成するフラグメントイオン(即ち、プロダクトイオン)は、四重極3(Q3)を通過し、そこで分析物のフラグメントイオンが選択され、他のイオンが排除される。一部の実施形態では、m/z197のプロダクトイオンが、CoQ10とCoQ10H
2の両方に対して検出される。
【0165】
本方法は、陽又は陰イオンモードのいずれか、好ましくは、陽イオンモードで実施されるMS/MSを必要とする場合がある。当技術分野で周知の標準法を使用して、当業者なら、四重極3(Q3)における選択のために使用できるCoQ10、CoQ10H
2、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6の特定の前駆体イオンの1つ以上のフラグメントイオンを同定することができる。
【0166】
イオンが検出器と衝突すると、イオンは、電子のパルスを生成し、それがデジタルシグナルに変換される。得られたデータは、コンピュータに送られ、コンピュータは、収集されたイオンのカウント対時間をプロットする。特定のイオンに対応するピーク下の面積、又はかかるピークの振幅は、測定して目的の分析物の量と関係づけることができる。ある種の実施形態では、フラグメントイオン(単数又は複数)及び/又は前駆体イオンに対する曲線下面積、又はピークの振幅が測定されてCoQ10又はCoQ10H
2の量が決定される。上に記載したように、所与のイオンの相対的な存在量は、内部標準、例えば、CoQ10-d6又はCoQ10H
2-d6の1つ以上のイオンのピークに基づく較正用標準曲線を使用して元の分析物の絶対量に換算することができる。
【0167】
以下の実施例は、本発明の方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと理解すべきでない。
【実施例】
【0168】
[実施例1]
材料及び方法
細胞培地
CoQ10を定量するためのアッセイを使用して、様々な時間にわたりCoQ10を処理した後で様々な細胞株中のCoQ10レベルを決定した。調査で使用した細胞は、正常なヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)、肝臓がん細胞株HepG2、及びヒト膵臓がん細胞株PaCa2であった。すべての細胞株は、市販されており、細胞株の製造者/供給者からの取扱説明書に従って維持した。
【0169】
CoQ10標準溶液の調製
15mL円錐管中に4.32mgのCoQ10を量り取り、ヘキサン10mLを添加し、CoQ10が溶解するまで65℃の水浴中で管を温め、管を穏やかに振とうして溶液を混合することによって500μMのCoQ10ストック溶液を調製した。ヘキサンでストック溶液を希釈することによって100μM及び50μMCoQ10ストック溶液を調製した。
【0170】
試薬組成
緩衝液A(第1の抽出緩衝液):100%メタノール
緩衝液B(界面活性剤/洗剤):1mMのデオキシコール酸Na
緩衝液C(第2の抽出緩衝液):100%ヘキサン
一般方法:標準溶液の抽出/分析
ステップ1: CoQ10の500μMストック溶液を上で記載したようにヘキサンで調製し、それを使用して、細胞処理又は検出アッセイ法での直接使用のために適切な緩衝液中でCoQ10の100μM及び50μM溶液を調製した。
【0171】
ステップ2: 様々な濃度のCoQ10を含む緩衝液A(Buffer A)又は緩衝液A単独200μLをガラスバイアル中に取り、緩衝液B(Buffer B) 10μLをそれぞれのバイアルに添加した。様々な濃度のCoQ10で処理した細胞を所定の時間点で収集し、洗浄した。細胞ペレット試料(例えば、約10
5〜10
7個の細胞)を緩衝液A 200μL及び緩衝液B 10μLと合わせ、細胞ペレットを緩衝液混合物に再懸濁した。緩衝液A及びBを細胞と混合すると試料混合物は、不透明になった。この混合物をガラスバイアルに移した。
【0172】
ステップ3: ステップ2からのガラスバイアルを1分間65℃まで温めた。加熱すると試料は透明になり、室温まで冷却すると再度不透明になった。
【0173】
ステップ4: 緩衝液C(Buffer C)の200μLアリコートをそれぞれのバイアルに添加した。バイアルを再度65℃まで温めた。バイアル中の溶液は、自然に2相に分割され、その第2の抽出緩衝液層(上層)が、実質的にすべてのCoQ10材料を含んだ。
【0174】
ステップ5: 上側抽出相の試料50μLを取り出し、275nmにおいてUV分光計で分析した。それぞれの試料中のCoQ10量を標準曲線と比較して決定した。
【0175】
[実施例2]
様々な溶媒中のCoQ10濃度に対する標準曲線の生成
抽出プロセスを最適化するために、様々な溶媒系を試験した。CoQ10のUV分光検出を使用する分析における溶媒系の最適分光特性を決定するために、分光法によって標準曲線を生成した。既知濃度のCoQ10を使用して、3つの異なる溶媒(2-プロパノール、アセトニトリル、及びヘキサン)を試験した。
【0176】
標準曲線を作成するために、適切な溶媒で50μMのCoQ10ストックを調製し、ストックの一連の希釈液を作製した。一連の希釈液からのそれぞれの試料のOD
275をUV分光光度計で275nmで測定し、グラフ上にプロットした。標準曲線の作成結果を表2及び
図1に示す。
【表2】
【0177】
データの線形回帰分析を実施して標準曲線を生成した。それらの結果から、2-プロパノール及びアセトニトリル溶液のスペクトルが同一であり、ヘキサン溶液は、グラフの上方部分でわずかに逸れていることが明らかになった。3つの溶媒はすべて、かなりの濃度範囲にわたり直線式に適合させることができるという結果を提供した。3つの標準曲線のいずれも、OD
275に基づいて適切な溶媒中でCoQ10の濃度を決定するのに使用することができた。
【0178】
[実施例3]
様々な濃度のCoQ10に曝露された組織培養細胞中のCoQ10の定量
細胞試料からのCoQ10の抽出
試行実験では、約1×10
6個のHASMC、HepG2、又はPaCa2細胞を6ウエルプレートのそれぞれのウエル内にプレーティングした。プレーティング時に、3、6、又は24時間イソプロパノール又は独占所有権のあるCoQ10送達製剤中で、所定の濃度のCoQ10で細胞を処理した(3重試験)。所定のインキュベーション時間後、細胞を冷TPBS(100mM Trisを含むPBS、pH7.4)で洗浄し、トリプシン処理によって採取し、TPBS 1mLで洗浄し(2回)、1,500RPMでの遠心分離によってペレット化した。トリプシン処理直後に、細胞を計数し試料中の生存細胞の全数を決定した。
【0179】
細胞ペレットを緩衝液A(第1の抽出緩衝液)200μL及び緩衝液B(界面活性剤/洗剤)10μL中に再懸濁させた。緩衝液Bを添加すると、試料は不透明になり、沈殿が形成された。再懸濁細胞をホウケイ酸バイアルに移した。細胞を含まない対照試料では、CoQ10含有溶液をガラスバイアルに添加し、ヘキサンを添加して体積を200μLとし、次いで緩衝液B 10μLを添加した。
【0180】
インキュベーションの約半分の期間まで穏やかに混合しながら、バイアルを水浴中で2分間65℃でインキュベートした。試料はインキュベート中に濁った状態から透明に変化した。試料を水浴から取り出し、緩衝液C(第2の抽出緩衝液)200μLをバイアルに添加した。試料は2相、即ち、極性及び非極性に分かれた。上部の非極性相は透明であったが、バイアルの底部では白色沈殿が形成された。試料をインキュベーションの約半分の期間まで穏やかに混合しながら、1分間65℃で再度加熱した。溶液を室温まで冷却し、上層のアリコート75μLを石英キュベット中に入れ、波長275nmでUV分光光度法によって分析した。吸収を記録した。
【0181】
標準曲線の生成
生物試料中のCoQ10を定量的にアッセイするために、本質的に上で記載した(実施例2)ようにして標準曲線を生成した。CoQ10のそれぞれ独立した決定に対して、ヘキサン中の50μMのCoQ10ストック溶液を作製し、ストック材料を連続的に希釈することによって標準曲線を生成した。一連の希釈からのそれぞれの試料を波長275nmでUV分光計で測定し、グラフ上にプロットした。代表的な標準曲線を
図2に示す。
【0182】
べき級数を使用して、標準から得た標準曲線に適合させ、式を決定した。曲線は、典型的な線形回帰形態に適合しなかった。このように直線性がないことは、それぞれの実験に対して標準曲線を生成することの利点及び、好ましくは、曲線の直線部分内に入るOD
275の測定値から未知試料のCoQ10濃度を好ましくは計算することの重要性を実証している。抽出試料からのOD
275値を使用して、CoQ10量を生成標準曲線に対して決定した。
【0183】
データ解析
この調査のために、すべての細胞試料を三重に反復した。細胞のCoQ10処理又は採取に関係しない個人によって、CoQ10の抽出及びOD
275の測定を実施した。使用した本方法の最初の基準としてデータの再現性を解析した。
【0184】
CoQ10で処理されず、プレーティング後に指定の時間で単に採取されたHep2G細胞は、すべての反復試料に対して高い再現性のある結果を提供した(
図3Aを参照されたい)。これは、抽出及び検出方法の再現性を実証している。
【0185】
再現性に関して、より大きな変動が、三重ウエル内で3、6、及び24時間様々な濃度のCoQ10で処理した後に収集された細胞で見られた。
図3B〜Eで見られるように、Hep2G細胞中のCoQ10量の変動は、24時間の時点で最も大きく観察された。
【0186】
送達ビヒクルに依存した細胞中へのCoQ10取り込みの効率についてもその結果を解析した。こうした結果を以下の表3にまとめる。データから明白であるように、CoQ10をCoQ10の独占所有権のある送達製剤で送達する場合に、プロパノール中よりはるかに多量のCoQ10が、24時間後の細胞中に存在した。CoQ10量は、細胞当たりのCoQ10のpMに基づいて計算される;したがって、細胞内CoQ10の観察された相違は、2つの担体に応答した細胞の生存性、又は培地で増殖する時間の相違の結果ではない。名目上の統計的変動にもかかわらず、本明細書で提供された方法を使用することによって得られたデータは、統計的に信頼性があることが示され、本方法には再現性がある。
【表3】
【0187】
[実施例4]
生物試料中のCoQ10の定量のためのin vitro分光光度法 対 LC/MS/MS(MRM)法の比較
生物試料中のCoQ10の定量的評価のための分光光度法の有用性をさらに立証するために、HASMC、HepG2、及びPaCa2細胞株を使用して上に記載の実験を反復した。さらに、分析用に3つの細胞型のそれぞれを使用して細胞試料の第2のセットを調製し、当技術分野で慣用的に使用されるLC/MS/MS法を使用してCoQ10レベルを決定した。簡潔に言えば、細胞をプレーティングし、上に記載したようにイソプロパノール又はCoQ10の独占所有権のある送達製剤中のCoQ10で処理し、プレーティング後3、6、又は24時間で採集した。細胞ペレットを上に記載の方法を使用して抽出し、緩衝液A及びB中に細胞を再懸濁させ、緩衝液CでCoQ10を抽出するか、又は細胞ペレットをメタノールのみでの抽出とその後のLC/MS/MS検出とを使用してCoQ10を定量的に評価するために診断試験室(Irisys Research & Development Inc)に送った。
【0188】
2つの分析からのデータを以下の表4にまとめる。メタノールのみとその後のLC/MS/MS検出とを使用した生物試料からのCoQ10の検出が、本明細書に記載の抽出法及びその後の分光光度法による検出と比較した場合に、試験したすべての試料ですべての処理条件下でCoQ10レベルの過小評価をもたらしたことは明白である。こうした結果は、現在使用されている技法に比較した、本明細書で提供される生物試料中のCoQ10の抽出及び定量法の有効性を実証している。こうした結果はまた、イソプロパノールと比較した、独占所有権のあるCoQ10送達製剤を使用するCoQ10の細胞へのより効率的な送達を実証している。
【表4】
【0189】
細胞中で検出されたCoQ10量の比較を容易にするために、本明細書で提供された抽出及び分光光度法を使用して検出された細胞当たりのCoQ10濃度の差の倍数をメタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MS検出方法とを使用して細胞当たり検出されたCoQ10量と比較した。その結果を以下の表5に提供する。
【表5】
【0190】
本明細書で提供された抽出及び検出法は、当技術分野で慣用的に使用されるLC/MS/MS法よりも生物試料中のかなり多くのCoQ10を検出することは、容易に観察することができる。
【0191】
[実施例5]
CoQ10及びCoQ10H
2を検出するための質量分析パラメーターの決定
酸化CoQ10の分析
方法
5mg/mLの生成CoQ10濃度のために、5.04mgのCoQ10をアセトン1mLに溶解した。約0.5mg/mLの生成CoQ10濃度のために、この溶液の100μLアリコートをイソプロピルアルコール900μLと混合した。この溶液の200μLアリコートをギ酸10μLと混合し、質量分析計内に直接注入した。質量分光分析のために、陽性ESIモードでQ1スキャンを実施した。
【0192】
結果
酸化形態に対する分子イオンピークをm/z863.4で観察した。コエンザイムQ
10の還元形態(CoQ10H
2)の可能性のあるピークをm/z885.4で観察した。ゴーストピークを199.2Daで観察したが、これは、質量分析計内への過去の注入又は内部表面に沿った分子の蓄積によって引き起こされた可能性がある。
【0193】
m/z863.4に対する150〜800Daの範囲のプロダクトイオン走査を実施し、m/z197.0の単一の主要プロダクトイオンピークを明らかにした。
【0194】
m/z865.4におけるピークは、CoQ10の還元形態(CoQ10H
2)に対応する可能性がある。このピークをQ1走査で観察したが、863.4Daピークほど強くはなかった。このピークで実施したプロダクトイオン走査は、主要プロダクトピークとしてm/z197.0の存在を明らかにした。これは、コエンザイムQ
10の基本環構造に対応する。
【0195】
m/z197に対する前駆体イオン走査を実施して、主要な前駆体ピークとして863.9Daを得た。850〜900Daのm/z範囲をズームした場合に863.9に対する大きなピーク、864.7Daに対する低強度ピーク及び865.8に対する非常に低強度のピークを観察した。こうしたピークは、コエンザイムQ
10の完全に酸化した形態(CoQ10)、部分的に還元した形態(CoQ10H)及び完全に還元した形態(CoQ10H
2)に対応する。
【0196】
還元CoQ10の分析
方法
5.032mgのCoQ10をヘキサン1mLに溶解して5mg/mLストック溶液のストック溶液を得た。アリコート100μLをヘキサン900μLに添加して濃度500μg/mLの第2のストック溶液を得た。第2のストック溶液100μLをヘキサン1.9mLで希釈し、次いでメタノール50μL及び水素化ホウ素ナトリウム20mgと混合した。還元反応物を3分間撹拌し、暗所に5分間室温で静置した。次いで、100mM EDTAを含む水1mLを反応に添加した。CoQ10H
2の最終濃度は、25μg/mLであった。質量分光分析では、陽性ESIモードでQ1走査を実施した。
【0197】
結果
CoQ
10の還元形態に対するQ1走査は、分子の構造に一致し関連付けることができる如何なる分子イオンピークも明らかにしなかった。予測されたピークのいずれも観察されなかった。これに対する可能な理由は、還元プロセスの最後のステップにおけるEDTAの添加であり得る。EDTAは、分子イオンに結合し、不整合な付加物を形成し、再現不能な結果をもたらす場合がある。
【0198】
EDTAによって引き起こされた不整合な結果を改善するために、上の還元手順を繰り返したが、但し、最後のステップでEDTAを含まない水1mLを添加した。次いで、メタノール中の5mMのギ酸アンモニウムを反応物と混合し、質量分析計内に注入した。
【0199】
2セットのピークがこの注入で観測された。一セットは863.8、864.8及び865.8m/zであり、もう一セットは880.4、881.3及び882.4m/zであった。これらのピークは、コエンザイムQ
10の完全に酸化した形態(CoQ10)、部分的に還元した形態(CoQ10H)及び完全に還元した形態(CoQ10H
2)に対応した。
【0200】
また、863.8、864.8及び865.8m/zの分子ピークのアンモニア化付加物に対応する880.4、881.4及び882.4m/zに観測されるピークのセットも存在した。すべての上のピークに対するプロダクトイオン走査によって主要な/唯一のプロダクトイオンとしての197.0が明らかになった。
【0201】
197.0に対する前駆体イオン走査によって、上のm/zのセットの両方に対するピークが示された。アンモニア化付加物のせいで形成されたピークのセットは、より大きい強度を示し、それを前駆体イオンとして使用して質量分析計パラメーターを確定した。
【0202】
[実施例6]
CoQ10及びCoQ10H
2を検出するためのクロマトグラフィーパラメーターの決定
方法
1mgのCoQ10をヘキサン1mLに溶解し、この溶液100μLをヘキサン900μLに添加し、100μg/mLストック溶液を得た。
【0203】
還元反応のために、ストック溶液100μLをヘキサン1.9mLで希釈し、メタノール50μL及び水素化ホウ素ナトリウム20mgと混合した。反応物を3分間撹拌し、暗所において5分間室温で貯蔵した。反応の色が黄色から無色に変化することによって酸化形態から還元形態への完全な変換が肉眼で確認された。次いで、水1mLを添加し、混合した。反応物を2分間13,000rpmで遠心分離して層を分離した。濃度5μg/mLでCoQ10H
2を含む上部のヘキサン層を収集した(CoQ10H
2ストック)。
【0204】
上の反応を水素化ホウ素ナトリウムの添加なしで別の管で反復した。濃度5μg/mLでCoQ10を含む上部のヘキサン層を収集した(CoQ10ストック)。
【0205】
移動相Aとしてのメタノール中10mMギ酸アンモニウム、移動相Bとしての1-プロパノール、及びC18 Zorbaxカラムを使用して液体クロマトグラフィーを実施した。CoQ10及びCoQ10H
2を含むストックを比1:1で混合し、クロマトグラフ内に注入した。A及びBを20:80、50:50m、80:20の比で混合した移動相を使用して3つの定組成5分間ランを実施した。80:20の比が、CoQ10及びCoQ10H
2ピークを最も良く分離した。
【0206】
[実施例7]
標準曲線
【表6】
【0207】
A:B 80:20の移動相を用いて実施例6に記載の方法を使用して液体クロマトグラフィーによって試料を分離した。CoQ10及びCoQ10H
2に対して得られた標準曲線を
図4に示す。
【0208】
標準曲線用の試料を、同じLC-MS/MS条件でヘキサンの代わりに希釈剤としてHPLC等級の水を使用して調製し、ランのために使用した場合、CoQ
10の還元及び酸化形態に対して如何なる濃度でも検出可能なカウント面積は見られなかった。
【0209】
水からCoQ
10を抽出するための試行で様々な抽出溶媒を使用して上の実験を反復した。試験した抽出溶媒は、100%イソプロピルアルコール、100%ヘキサン、及び20:80のエタノール:ヘキサンであった。標準曲線用の試料の3つのセットをそれぞれの抽出溶媒を使用して抽出した。同じ抽出溶媒で抽出したすべての試料内の回収面積は類似するが、それぞれの抽出溶媒群では回収面積は異なることが観察された。いずれの抽出溶媒においても、面積カウントと加えた濃度間には直線関係が存在しなかった。HPLC等級の水は、おそらく水の高い極性のためにヘキサン中の標準と均一にホモジナイズしないことが確認された。
【0210】
ヘキサンと水の不混和性の課題に対応するために、ヘキサン中のCoQ10及びCoQ10H
2ストックをゆるやかな窒素流下で蒸発させ、メタノール中に再構成した。次いで、これらの再構成された標準を使用し希釈剤としてのHPLC水を用いて標準曲線用の試料を調製し、上のLC-MS/MS手順を使用して標準を分析した。濃度に対してプロットすると、これらの試料は、
図6に示すように、応答面積に対して線形曲線を与えた。
【0211】
上に記載されたのと同じ手順を使用して、CoQ10-d6内部標準も還元した。内部標準の一連の希釈を作製し、ヘキサンを蒸発させ、メタノール中で再構成した場合に、類似の直線関係が観察された。
【0212】
ヘキサン中のCoQ10及びCoQ10H
2ストックを蒸発させ、メタノール中で再構成した。ヘキサン中のCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6ストックも蒸発させ、メタノール中で再構成した。次いで、これらの再構成した標準を使用して、希釈剤としてのHPLC水を用いて標準曲線用の試料を調製した。それぞれの試料100μLを新しい管に分割して入れて、上に記載された3つの異なる抽出溶媒を使用して抽出した。同じ抽出溶媒群内のすべての濃度に対する応答面積は、類似であることが見出され、応答面積と強化濃度の間の直線関係はなかった。
【0213】
ヘキサン中のCoQ10、CoQ10H
2、CoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6ストックを蒸発させ、メタノール中で再構成した。次いで、再構成した標準を使用して、希釈剤としての血漿を用いて標準曲線用の試料を調製し、CoQ10及びCoQ10H
2の19〜2500ng/mLでの直線濃度範囲とした。25μg/mLのCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6の20μLをそれぞれの管に添加した。次いで、エタノール:ヘキサン 20:80の1mLを使用してそれぞれの試料を抽出した。それぞれの試料を4〜5分間激しくボルテックスさせ、遠心分離し、上層の150μLを取り出し、分析するためにそれをLC-MS/MSバイアル内に入れた。-20℃まで冷却したクライオブロックを使用して可能な限り速やかに上のステップすべてを実施し、それぞれの管から10μLをLC-MS/MS分析のために注入した。
【0214】
面積比と加えた濃度の間に直線関係が観察された。酸化及び還元形態の濃度が高いために、ピーク間のオーバラップが存在し、そのためにベースラインの分離が観察されなかった。
【0215】
次の実験では、出発点として50μLの標準を使用し、抽出溶媒1.5mLを使用した。様々な注入体積を試みた。3μLの標準を注入すると、直線応答と≧0.99のr
2値を示すベースラインの分離したクロマトグラムが得られた。
【0216】
[実施例8]
血漿試料中の全CoQ10の定量
この実験では、様々な血漿試料中の全CoQ10量を測定した。それぞれの血漿試料の単一イソプロパノール抽出を使用してCoQ10を抽出し、次いでLC-MS/MSを使用してこれを定量した。0、3、5、10、50、100、300、500、800及び1000μg/mLのCoQ10を含む試料を使用し、
図6のグラフに示す標準曲線を構築し、二重に分析した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確度%は、5〜800μg/mLの範囲のCoQ10濃度を有する試料について91.3%〜113%の範囲であった。それぞれが未知量のCoQ10を含む血漿試料の分析の結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0217】
[実施例9]
細胞上清中の全CoQ10の定量
培養細胞をCoQ10含有製剤に曝露した後に、培養細胞によるCoQ10の取り込みを評価するようにこの実験を設計した。公知のプロトコルに従ってCaco-2細胞を培養し、0、1、2、3、4及び6時間にわたりCoQ10含有製剤に曝露した。洗浄及び溶解後、細胞溶解液をイソプロパノールで抽出し、抽出物中のCoQ10量をLC/MSによって測定した。0、0.01、0.05、0.1、0.5、1、3、5、7及び10μg/mLのCoQ10を含む試料を使用して
図7のグラフに示す標準曲線を構築した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確性%は、0.5〜10μg/mLの範囲のCoQ10濃度を有する試料に対して87.6%〜107%の範囲であった。加えた細胞培養培地(未知試料A〜H)及び細胞上清(未知試料I〜L)の分析結果を以下の表に示す。
【表8】
【0218】
[実施例10]
鼻洗浄液中の全CoQ10の定量
CoQ10の独占所有権のある鼻用製剤を投与した後の鼻腔中の粘膜によるCoQ10の取り込み量を評価するようにこの実験を設計した。ラットに対して独占所有権のある製剤を鼻内投与した後、ラットの鼻腔からの粘液及び液体を30分及び1時間後に収集し、イソプロパノールで抽出し、抽出物中のCoQ10量をLC-MS/MSによって測定した。0、1、5、10、50、100、300、800及び1000μg/mLのCoQ10を含む試料を使用し、
図8のグラフに示す標準曲線を構築した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確度%は、すべての標準試料に対して90.5%〜114%の範囲であった。細胞抽出物の分析結果を以下の表に示し、表中のM1、M2、M3、M4及びM5は、異なる個体のラットを指す。
【表9】
【0219】
[実施例11]
組織中の全CoQ10の定量
独占所有権のあるCoQ10製剤を投与されたマウスの種々の組織中に存在するCoQ10量を決定するようにこの実験を設計した。投与後、0.5、1、3、8、24又は48時間後にマウスを犠牲にした。肺、肝臓及び腎臓をホモジナイズし、ホモジネートをイソプロパノールで抽出した。抽出物中のCoQ10量をLC-MS/MSによって測定した。1、5、10、50、100、300、及び600μg/mLのCoQ10を含む試料を使用して
図9のグラフに示す標準曲線を構築した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確度%は、すべての標準試料に対して90.2%〜121%の範囲であった。組織抽出物の分析の結果を以下の表に示し、表中のP1及びP2は、2個体のマウスを指す。
【表10】
【0220】
[実施例12]
血清中のCoQ10の酸化及び還元形態の定量
この実験では、血清試料中のCoQ10の酸化及び還元形態の量を測定した。試料にCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6内部標準を加え、1-プロパノールによる単回抽出を使用してそれぞれの血清試料からCoQ10及びCoQ10H
2を抽出し、CoQ10とCoQ10H
2の両方をLC-MS/MSを使用して定量した。移動相として5mMギ酸アンモニウムを用い、カラムAgilent C18ポロシェル(粒径2.1μ)及びメタノール:1-プロパノール 80:20を使用してクロマトグラフィー分離を実施した。質量分析法は、単一ランにおいてCoQ10の酸化及び還元形態の同時定量を伴い、CoQ10の酸化形態についてm/z880からm/z197への遷移、及びCoQ10の還元形態についてm/z882からm/z197への遷移をモニタリングすることによって実施された。CoQ10H
2の酸化を最小化するために、冷却クライオブロックを使用してすべての試料を取り扱った。0、20、40、158、313、625、1250及び2500ng/mLのCoQ10を含む試料(試料L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7及びL8)を使用して標準曲線を構築した。National Institute of Standards and Technologyからの標準(NIST1、NIST2及びNIST3)も分析した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確度%は、すべての標準試料に対して86.5%〜118%の範囲であった。酸化CoQ10及び還元CoQ10(CoQ10H
2)に対する標準曲線並びに代表的なクロマトグラムを
図10及び11にそれぞれ示し、生の質量分析データを以下の表11に示す。「ox」と表記された試料に対応するすべてのデータは、CoQ10の酸化形態に対するものであり、「red」と表記された試料に対応するデータは、CoQ10の還元形態に対応する。QC1、QC2及びQC3と表記された試料は、標準曲線用の試料を調製するのに使用されたものと異なるロットからのCoQ10を加えた血清を含む精度管理試料に対応する。
【表11】
【0221】
[実施例13]
血漿中のCoQ10の酸化及び還元形態の定量
この実験では、血漿試料中のCoQ10の酸化及び還元形態の量を測定した。試料にCoQ10-d6及びCoQ10H
2-d6内部標準を加え、ヘキサン及び1-プロパノールによる抽出を使用してそれぞれの血漿試料からCoQ10及びCoQ10H
2を抽出し、CoQ10とCoQ10H
2の両方をLC-MS/MSを使用して定量した。移動相として5mMギ酸アンモニウムを用い、カラムAgilent C18ポロシェル(粒径2.1μ)及びメタノール:1-プロパノール 80:20を使用してクロマトグラフィー分離を実施した。質量分析法は、単一ランにおいてCoQ10の還元及び酸化形態の同時定量を伴い、CoQ10の酸化形態に対してm/z880からm/z197への遷移、及びCoQ10の還元形態に対してm/z882からm/z197への遷移をモニタリングすることによって実施された。CoQ10H
2の酸化を最小化するために、冷却クライオブロックを使用してすべての試料を取り扱った。0、20、158、625、1250及び2500ng/mLのCoQ10を含む試料(試料L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7及びL8)を使用して標準曲線を構築した。標準曲線用に使用された試料中のCoQ10濃度の測定に対する計算上の正確度%は、すべての標準試料に対して84.8%〜119%の範囲であった。酸化CoQ10及び還元CoQ10(CoQ10H
2)に対する標準曲線及び代表的なクロマトグラムをそれぞれ
図12及び13に示し、生の質量分析データを以下の表12に示す。「ox」と表記された試料に対応するすべてのデータは、CoQ10の酸化形態に対するものであり、「red」と表記された試料に対応するデータは、CoQ10の還元形態に対応する。QC1、QC2、QC3及びQC4と表記された試料は、標準曲線用の試料を調製するのに使用されたものと異なるロットからのCoQ10を加えた血漿を含む精度管理試料に対応する。
【表12】
【0222】
IV.等価物:
当業者なら、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多数の等価物を、受け入れるであろうし、又は日常的な実験のみを使用して確かめることができよう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0223】
V.関連する参照物:
本出願で引用された刊行物及び特許文書はすべて、あたかも個別の刊行物又は特許書類のそれぞれが個別に表示されたものとしてあらゆる点から考えて該当すると思料される部分に参照により組み込まれている。本文書において様々な参照物を引用することによって、本出願人らは、如何なる特定の参照物も出願人らの開示に対する「従来技術」であると認めるものでない。本開示は、その詳細な説明と関連して説明されたが、前記説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本開示の範囲を例示するものであり、限定するものでないことが意図されていると理解されよう。他の態様、利点、及び改変形態は、以下の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある。
【0224】
すべての数字は、例示のために提供され、限定のために提供されるものでない。具体的な実施例が提供されているが、その記載は例示的であり、限定的でない。これまで記載された実施形態の特徴の任意の1つ以上は、本開示中の任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と任意の様式で組み合わせることができる。さらに、本開示の多数の変形形態が、本開示の概観によって当業者には明白であろう。
本発明の実施形態として、例えば以下を挙げることができる。
(1) 第1の抽出緩衝液及び試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、第2の抽出層を分光学的に分析してコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するステップとを含む、試料中のコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するための方法。
(2) 第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
試料を混合するステップと、
第2の抽出層を分析してCoQ10量を決定するステップと
を含み、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液による単回抽出によってメタノールのみの抽出を使用するより少なくとも2倍多い量のCoQ10の検出をもたらす、試料中のCoQ10量を決定するための方法。
(3) 第1の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
試料を加熱し、混合するステップと、
試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
試料を加熱し、混合するステップと、
周囲温度まで試料を冷却するステップと、
第2の抽出緩衝液層を分析して試料中のCoQ10量を決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10量を決定するための方法。
(4) 第1の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
試料を加熱し、混合するステップと、
試料の相分離をもたらす第2の抽出緩衝液を試料に添加するステップと、
試料を加熱し、混合するステップと、
試料を周囲温度まで冷却するステップと、
第2の抽出緩衝液層を分光分析によって分光学的に分析して試料中のCoQ10量を決定するステップと
を含み、前記抽出緩衝液による単回抽出によって、メタノールのみの抽出とその後の液体クロマトグラフィー/質量分析法/質量分析法(LC/MS/MS)とを使用するより少なくとも2倍多い量のCoQ10の抽出をもたらす、試料中のCoQ10量を決定するための方法。
(5) 試料中で検出されるCoQ10量が、分光分析によって分光学的に決定される、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(6) CoQ10量が、LC/MS/MSを使用して検出される、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(7) 第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出されるCoQ10量が分光学的に決定され、メタノールのみの抽出を使用して検出されるCoQ10量がLC/MS/MSを使用して決定される、(2)又は(4)のいずれかに記載の方法。
(8) ハイスループットスクリーニング分析法の一部である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 方法全体が、自動化によって実施される、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 方法全体が、短時間で実施される、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して検出される全CoQ10量より少なくとも2倍多い、(1)、(3)〜(4)、及び(7)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して検出されるCoQ10量より少なくとも5倍多い、(11)に記載の方法。
(13) 試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して検出されるCoQ10量より少なくとも10倍多い、(11)に記載の方法。
(14) 試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して検出されるCoQ10量より少なくとも15倍多い、(11)に記載の方法。
(15) 試料が第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液を使用して抽出され、CoQ10量が分光学的に決定される場合の、試料中で検出される全CoQ10量が、メタノールのみの抽出とその後のLC/MS/MSによるCoQ10検出とを使用して検出されるCoQ10量より少なくとも25倍多い、(11)に記載の方法。
(16) 第2の抽出緩衝液が非極性溶媒を含む、(1)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17) 第2の抽出緩衝液が有機溶媒を含む、(1)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18) 第2の抽出緩衝液が、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジイソブチルエーテル、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロメタン、及びジクロロメタンからなる群から選択される溶媒を含む、(1)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) 第2の抽出緩衝液が、アルカンを含む、(1)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20) 第2の抽出緩衝液が、ヘキサンを含む、(1)〜(19)のいずれかに記載の方法。
(21) 第2の抽出緩衝液が、アセトニトリルを含む、(1)〜(15)又は(17)のいずれかに記載の方法。
(22) 第2の抽出緩衝液が、イソプロパノールを含む、(1)〜(15)又は(17)のいずれかに記載の方法。
(23) 第1の抽出緩衝液が、極性プロトン性溶媒を含む、(1)〜(22)のいずれかに記載の方法。
(24) 第1の抽出緩衝液が、有機溶媒を含む、(1)〜(23)のいずれかに記載の方法。
(25) 第1の抽出緩衝液が、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、トリクロロ酢酸(TCA)、及び水からなる群から選択される溶媒を含む、(1)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26) 溶媒が、アルコールを含む、(25)に記載の方法。
(27) アルコールが、メタノールである、(26)に記載の方法。
(28) 第1の抽出緩衝液が、界面活性剤を含む、(1)〜(27)のいずれかに記載の方法。
(29) 第1の抽出緩衝液が、洗剤を含む、(1)〜(28)のいずれかに記載の方法。
(30) 洗剤が、温和な洗剤である、(29)に記載の方法。
(31) 第1の抽出緩衝液が、水溶液である、(1)〜(30)のいずれかに記載の方法。
(32) 第1の抽出緩衝液が、ステロイド酸を含む、(1)〜(31)のいずれかに記載の方法。
(33) ステロイド酸が、胆汁酸である、(32)に記載の方法。
(34) 胆汁酸が、タウロ塩素酸、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、及びリトコール酸からなる群から選択される酸を含む、(33)に記載の方法。
(35) 胆汁酸が、デオキシコール酸を含む、(33)に記載の方法。
(36) デオキシコール酸が、塩である、(35)に記載の方法。
(37) デオキシコール酸塩が、I族金属である無機イオンを含む、(36)に記載の方法。
(38) デオキシコール酸塩の無機イオンが、Li+、Na+、及びK+からなる群から選択される塩である無機イオンを含む、(37)に記載の方法。
(39) デオキシコール酸塩の無機イオンが、Na+である無機イオンを含む、(34)に記載の方法。
(40) 試料が、生物試料を含む、(1)〜(39)のいずれかに記載の方法。
(41) 生物試料が、細胞ベースの試料である、(40)に記載の方法。
(42) 試料が、哺乳類試料又は両生類試料を含む、(1)〜(41)のいずれかに記載の方法。
(43) 試料が、ヒト試料、非ヒト霊長類試料、及び齧歯動物試料からなる群から選択される試料を含む、(1)〜(42)のいずれかに記載の方法。
(44) 試料が、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、及びヒトから選択される対象からの試料である、(1)〜(43)のいずれかに記載の方法。
(45) 分光分析が、吸光分光法、蛍光X線分光法、炎光分光法、可視分光法、紫外分光法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、コヒーレント反ストークスラマン分光法(CARS)、核磁気共鳴分光法、光子放出分光法、及びメスバウアー分光法から選択される分光学的技法を使用することによって実施される、(1)〜(44)のいずれかに記載の方法。
(46) 分光技法が、紫外分光法である、(45)に記載の方法。
(47) 紫外分光法が、270nm〜280nmの1つ以上の波長で実施される、(45)又は(46)に記載の方法。
(48) 紫外分光法が、273nm〜277nmの1つ以上の波長で実施される、(45)又は(46)に記載の方法。
(49) 紫外分光法が、波長275nmで実施される、(45)又は(46)に記載の方法。
(50) 第1の抽出緩衝液の体積と第2の抽出緩衝液の体積の比が、5:1〜1:1である、(1)〜(49)のいずれかに記載の方法。
(51) 界面活性剤又は洗剤と第1の抽出緩衝液の体積の比が、50:1〜1:1である、(28)〜(50)のいずれかに記載の方法。
(52) 試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に50〜100℃まで加熱される、(1)〜(51)のいずれかに記載の方法。
(53) 試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に55〜75℃まで加熱される、(1)〜(52)のいずれかに記載の方法。
(54) 試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に60〜70℃まで加熱される、(1)〜(53)のいずれかに記載の方法。
(55) 試料が、第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、又は第1と第2の両方の抽出緩衝液の添加後に65℃まで加熱される、(1)〜(54)のいずれかに記載の方法。
(56) 試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に同じ温度まで加熱される、(52)〜(55)のいずれかに記載の方法。
(57) 試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に異なる温度まで加熱される、(52)〜(55)のいずれかに記載の方法。
(58) 加熱が、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも15秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも75秒、少なくとも90秒、少なくとも105秒、又は少なくとも120秒の間である、(52)〜(57)のいずれかに記載の方法。
(59) 試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に同じ時間加熱される、(52)〜(58)のいずれかに記載の方法。
(60) 試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に異なる時間加熱される、(52)〜(58)のいずれかに記載の方法。
(61) 試料を加熱することが、加熱されなかった対照試料に比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも50%、CoQ10の抽出を増加させる、(52)〜(60)のいずれかに記載の方法。
(62) 試料が、機械撹拌によって混合される、(2)〜(61)のいずれかに記載の方法。
(63) 試料が、超音波処理によって混合される、(2)〜(61)のいずれかに記載の方法。
(64) 試料が、磁気撹拌によって混合される、(2)〜(61)のいずれかに記載の方法。
(65) 試料が、第1の抽出緩衝液の添加後に混合される、(62)〜(64)のいずれかに記載の方法。
(66) 試料が、第2の抽出緩衝液の添加後に混合される、(62)〜(64)のいずれかに記載の方法。
(67) 試料が、第1の抽出緩衝液及び第2の抽出緩衝液の添加後に混合される、(62)〜(64)のいずれかに記載の方法。
(68) 無機塩が、第2の抽出緩衝液の添加後に試料に添加される、(1)〜(67)のいずれかに記載の方法。
(69) 無機塩が、NaClを含む、(68)に記載の方法。
(70) 飽和ブライン溶液が、第2の抽出緩衝液の添加後に試料に添加される、(1)〜(69)のいずれかに記載の方法。
(71) 塩が、約1mM〜約50mMの最終濃度まで添加される、(68)〜(70)のいずれかに記載の方法。
(72) 試料が、第2の抽出緩衝液の分光分析の前にろ過される、(1)〜(71)のいずれかに記載の方法。
(73) 方法全体が、10分以内に完了する、(1)〜(72)のいずれかに記載の方法。
(74) 方法全体が、5分以内に完了する、(1)〜(73)のいずれかに記載の方法。
(75) 方法全体が、1分以内に完了する、(1)〜(74)のいずれかに記載の方法。
(76) 方法全体が、30秒以内に完了する、(1)〜(75)のいずれかに記載の方法。
(77) (1)〜(76)のいずれかに記載の方法を実施するためのキット。
(78) 以下のもの:第1の抽出緩衝液、第2の抽出緩衝液、及びCoQ10のうちの少なくとも2つを含む、(77)に記載のキット。
(79) a)既知量の重水素化コエンザイムQ10(CoQ10-d6)を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10及びCoQ10-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
を含む、試料中のコエンザイムQ10(CoQ10)量を決定するための方法。
(80) a)既知量の還元重水素化コエンザイムQ10(CoQ10H2-d6)を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10H2及びCoQ10H2-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10H2の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
を含む、試料中のCoQ10の還元形態(CoQ10H2)の量を決定するための方法。
(81) a)既知量のCoQ10-d6及びCoQ10H2-d6を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によってCoQ10、CoQ10H2、CoQ10-d6及びCoQ10H2-d6を検出するステップと、
c)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
d)検出されたCoQ10H2の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
を含む、試料中のCoQ10及びCoQ10H2量を同時に決定するための方法。
(82) a)既知量のCoQ10H2-d6及び/又はCoQ10-d6を試料に添加するステップと、
b)質量分析法によって試料中のCoQ10H2-d6及びCoQ10-d6の相対量を測定するステップと、
c)CoQ10H2-d6及びCoQ10-d6の理論的相対量をステップbで測定されたCoQ10H2-d6及びCoQ10-d6の相対量と比較するステップと、
を含む、試料中のCoQ10H2酸化度を決定するための方法。
(83) CoQ10H2-d6が、CoQ10-d6を1つ以上の還元剤と反応させることによって得られる、(80)〜(82)に記載の方法。
(84) 前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウムである、(83)に記載の方法。
(85) CoQ10-d6及び/又はCoQ10H2-d6が、試料の収集直後に試料に添加される、(81)〜(84)に記載の方法。
(86) 試料が、生物試料である、(81)〜(85)に記載の方法。
(87) 生物試料が、血漿又は血清である、(86)に記載の方法。
(88) 生物試料が、ヒト試料である、(86)又は(87)に記載の方法。
(89) a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10及びCoQ10-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
を含む、試料中のCoQ10量を決定するための方法。
(90) a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10H2-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10H2及びCoQ10H2-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10H2の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
を含む、試料中のCoQ10H2量を決定するための方法。
(91) a)試料を用意するステップと、
b)既知量のCoQ10-d6及びCoQ10H2-d6を試料に添加するステップと、
c)試料を抽出するステップと、
d)任意選択で試料を液体クロマトグラフィーにかけるステップと、
e)質量分析法によってCoQ10、CoQ10-d6、CoQ10H2及びCoQ10H2-d6を検出するステップと、
f)検出されたCoQ10の量を、既知量の検出されたCoQ10-d6とそれを比較することによって決定するステップと、
g)検出されたCoQ10H2の量を、既知量の検出されたCoQ10H2-d6とそれを比較することによって決定するステップと
を含む、試料中のCoQ10量及びCoQ10H2量を決定するための方法。
(92) ステップcが、抽出緩衝液を添加するステップを含む、(89)〜(91)に記載の方法。
(93) 抽出緩衝液が、1-プロパノールを含む、(92)に記載の方法。
(94) 抽出緩衝液が、イソプロパノールを含む、(92)に記載の方法。
(95) ステップb〜dが、予冷クライオブロックを使用して実施される、(89)〜(94)に記載の方法。