特許第6231506号(P6231506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231506
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】アンカーボルト
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20171106BHJP
   F16B 13/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   E04B1/41 503F
   F16B13/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-7498(P2015-7498)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132901(P2016-132901A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昌明
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540157(JP,A)
【文献】 特開2009−257304(JP,A)
【文献】 特開2004−225890(JP,A)
【文献】 特開平04−128473(JP,A)
【文献】 特開平06−058311(JP,A)
【文献】 実開平05−087316(JP,U)
【文献】 米国特許第04984945(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
F16B 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に開設された取付け孔に挿入されるアンカーボルトであって、
軸線に沿って長尺状に延び、先端部に拡径部が、他端部にボルトが夫々形成され、前記拡径部は外周面が前記取付け孔への挿入方向に行くに従い外向きに広がるテーパ状に形成された軸体と、
該軸体の外周面に接して被さる中空体たるスリーブであって、外向きに曲げられると展開状態となる展開片が先端部に形成されたスリーブとを備え、
展開片が非展開状態となるように、スリーブが軸体に被さった状態を該軸体と該スリーブの第1状態としたとき、
該第1状態にある該軸体と該スリーブとが該取付け孔へ挿入されて該軸体の先端が該取付け孔の底部に当接した状態から、該スリーブが該取付け孔に対して前記挿入方向に更に押し込まれることにより、該展開片が該拡径部に沿って外向きに曲がって展開状態となり、
前記スリーブの外周面に第1凹溝が開設され、該第1凹溝内に該取付け孔の内周壁に接するリングが嵌められ、該スリーブには、該第1凹溝と該スリーブの中空部とを連通する貫通孔が形成され、
該軸体の周面には、該第1状態において該貫通孔と対応する位置に、第2凹溝が形成され、
該リングには、該第1状態において該貫通孔を通って該第2凹溝に達するように延びた嵌合片が形成され、
該第1状態にある該軸体と該スリーブとを連結する連結手段が、該嵌合片によって構成されるアンカーボルト。
【請求項2】
該リングは弾性材から形成され、
該第1状態にある該軸体と該スリーブとが該取付け孔へ挿入されて該軸体の先端が該取付け孔の底部に当接した状態から、該スリーブが該取付け孔に対して前記挿入方向に更に押し込まれることにより、該嵌合片が該第2凹溝から離れて外側に押し出され、そのことによって該リングが外向きに膨らむように弾性変形する、請求項1に記載のアンカーボルト。
【請求項3】
該リングの外周面には、円周方向に並ぶ複数の凹部が形成された、請求項1又は2に記載のアンカーボルト。
【請求項4】
該リングは、2つの円弧状のリング半体から構成される、請求項1乃至3の何れかに記載のアンカーボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁等に開設された取付け孔内に固定されるアンカーボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート壁等に対して他の部品や構造物等を取り付ける場合に、コンクリート壁面に開設された取付け孔内にアンカーボルトを固定し、該アンカーボルトに他の部品や構造物等を取り付ける手法が広く実施されている。取付け孔は壁面に開口を向けた細孔と、該細孔の奥部に形成された拡径孔部とを備えている。該アンカーボルトは長尺状に延び、先端部に拡径孔部に対応して外周面がテーパ状に形成された拡径部を、他端部にボルトを形成した軸体を備えている(特許文献1参照)。軸体の外側には、先端部が拡径部に沿って外向きに曲がるスリーブが摩擦を以てスライド可能に嵌まる。細孔の径はアンカーボルトの拡径部の径及びスリーブの外径と略同じ大きさである。
アンカーボルトを取付け孔内に固定する場合は、スリーブが拡径部から離れるように引き出した状態で拡径部を孔内に挿入する。拡径部が拡径孔部に達した状態でスリーブをコンクリート壁等に向けて打ち込む。スリーブの先端部が拡径部に沿って外向きに曲がりながら、拡径孔部に向けて進み、拡径部と拡径孔部との間の隙間を埋める。これにより、アンカーボルトは取付け孔内に固定される。アンカーボルトのボルトを通して他の部品や構造物等を嵌めて、該ボルトにナットを嵌めて該ナットを回転させれば、コンクリート壁等に対して他の部品や構造物等が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案公開公報平5-17214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンカーボルトの軸体に嵌まるスリーブの外周面と、取付け孔の内周面は接している。軸体とスリーブが摩擦を以て接し、スリーブが取付け孔の内周面に固定されることで、軸体のボルトに嵌めたナットを回転させる際に、軸体及びスリーブが回転せずに、スムーズにナットを螺合させることが出来る。
しかし、内周面の内径のバラ付き等により、スリーブの外周面と内周面との間の摩擦力には、バラ付きがある。従って、ボルトにナットを嵌めてナットを回転させる際に、軸体に接しているスリーブが回転する。即ち、軸体とスリーブが一緒になって取付け孔内を回転し、ナットがうまく締め付けられない場合がある。この場合は、ボルトの先端部にスパナを引っ掛けて軸体の回転を防ぎながら、ナットを回転させることが行われるが、片手でナットを回転させ、他方の手でスパナを押さえる必要があり、作業に手間がかかっていた。
本発明の目的は、ボルトにナットを嵌めてナットを回転させる際に、軸体とスリーブが一緒に回転することを防ぐアンカーボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
壁面に開設された取付け孔に挿入されるアンカーボルトであって、
軸線に沿って長尺状に延び、先端部に拡径部が、他端部にボルトが夫々形成され、前記拡径部は外周面が前記取付け孔への挿入方向に行くに従い外向きに広がるテーパ状に形成された軸体と、
該軸体の外周面に接して被さる中空体たるスリーブであって、外向きに曲げられると展開状態となる展開片が先端部に形成されたスリーブとを備え、
展開片が非展開状態となるように、スリーブが軸体に被さった状態を該軸体と該スリーブの第1状態としたとき、
該第1状態にある該軸体と該スリーブとが該取付け孔へ挿入されて該軸体の先端が該取付け孔の底部に当接した状態から、該スリーブが該取付け孔に対して前記挿入方向に更に押し込まれることにより、該展開片が該拡径部に沿って外向きに曲がって展開状態となり、
前記スリーブの外周面に第1凹溝が開設され、該第1凹溝内に該取付け孔の内周壁に接するリングが嵌められている。
【0006】
また、該スリーブには、該第1凹溝と該スリーブの中空部とを連通する貫通孔が形成され、
該軸体の周面には、該第1状態において該貫通孔と対応する位置に、第2凹溝が形成され、
該リングには、該第1状態において該貫通孔を通って該第2凹溝に達するように延びた嵌合片が形成され、
該第1状態にある該軸体と該スリーブとを連結する連結手段が、該嵌合片によって構成される。
【発明の効果】
【0007】
1.第1凹溝に嵌まったリングが取付け孔の内周壁に接するから、軸体にスリーブが挿入された状態で、スリーブを取付け孔に挿入すれば、リングと内周壁との摩擦力により、スリーブの回転が阻止される。軸体の先端が該取付け孔の底部に当接した状態で、スリーブが挿入方向に更に押し込まれても、軸体とスリーブとは摩擦を以て接し、軸体はスリーブに回転方向に固定される。
即ち、リングにより取付け孔に対するスリーブの回転が阻止され、軸体とスリーブとは摩擦によって互いに回転することが阻止される。これにより、軸体にナットを嵌めて回転させる際に、軸体とスリーブが一緒に回転することを防ぐことができる。
2.軸体にスリーブが被さった状態にて、弾性材からなるリングの嵌合片によって、スリーブと軸体とは連結される。この状態で、スリーブが更に挿入方向に押し込まれることによって、第1凹溝に嵌まったリングもスリーブと共に押し込まれる。嵌合片の一部は第2凹溝から外れて、軸体の周面に乗り上げる。該軸体の周面に乗り上げた嵌合片の一部はスリーブの外周面と取付け孔の内周壁との間に挟まれて変形する。リングは取付け孔の内周壁と軸体の周面との間で挟持され、突っ張った状態となる。これにより、取付け孔に対するスリーブの回転及び軸体の回転が阻止され、軸体にナットを嵌めて回転させる際に、軸体とスリーブとが一緒に回転することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】アンカーボルトを一部破断した断面図である。
図2】取付け孔の断面図である。
図3】リングと第1凹溝とを拡大して示す断面図である。
図4】アンカーボルトの取付け孔への取付け工程を示す図である。
図5】アンカーボルトの取付け孔への取付け工程を示す図である。
図6】別の実施形態に係るアンカーボルトの分解図である。
図7図6のスリーブをC-C線を含む面で破断し矢視した断面図及びリングを示す図である。
図8】組立状態のアンカーボルトを一部破断した断面図である。
図9図8のアンカーボルトをA-A線を含む面で破断し矢視した断面図である。
図10】(a)-(d)は、アンカーボルトを取付け孔に挿入する手順を示す断面図である。
図11】嵌合片の膨らみ部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るアンカーボルトについて、図を参照しながら説明する。なお、以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るアンカーボルト1を一部破断した断面図である。前記の如く、アンカーボルト1は、コンクリート壁面に穿設した取付け孔内に固定される。アンカーボルト1は、軸線Lに沿って長尺状に延び、先端部に拡径部20を、他端部にボルト21を夫々形成した軸体2と、該軸体2の外周面に接して被さるように該軸体2の他端部、即ちボルト21側から挿入され、先端部に拡径部20に沿って外向きに曲がる、即ち展開状態となる展開片31を設けた中空のスリーブ3とを備えている。
【0010】
軸体2とスリーブ3はともに金属製であり、スリーブ3の中空部37の内径は軸体2の径に略等しい。拡径部20は外周面が取付け孔への挿入方向に向かって外向きに広がるテーパ状に形成されている。拡径部20の最大径は、スリーブ3の外径と略等しい。
スリーブ3はスリーブ本体30の先端部に、周方向に沿って複数設けられた展開片31を薄肉連結部32を介して設けている。隣り合う展開片31は、軸線Lに沿って延びたスリット33によって互いに離間されている。
スリーブ3の外周面には凹み34が設けられ、軸体2にスリーブ3が挿入された状態で、該凹み34の底面を内側に殴打することによって、該底面が塑性変形して軸体2の周面に食い込む(図4参照)。これにより、スリーブ3と軸体2とは連結されて、軸線Lの周りに一体に回転する。即ち、凹み34の底面が本発明の「連結手段」を構成する。スリーブ3と軸体2とが連結された状態で、展開片31の先端は拡径部20の基端部に位置して、展開片31は未だ展開しない。この状態を第1状態とする。
スリーブ3の周面には、凹み34から離れて第1凹溝35が開設され、該第1凹溝35内に取付け孔の内周壁に接する金属製のリング4が嵌められている。
【0011】
図2は、コンクリート壁面85に穿設した取付け孔8の断面図である。取付け孔8は壁面85に開口を向けた細孔80と、該細孔80の奥部に形成された拡径孔部81とを備えている。細孔80の径Dは、拡径部20の最大径及びスリーブ3の外径よりも稍大きく形成されており、これにより、スリーブ3と軸体2とが連結された状態で、拡径部20とスリーブ3は細孔80に挿入され得る。
、リング4の径D1は細孔80の径Dよりも稍大きく形成されている。拡径孔部81は軸体2の拡径部20に対応した形状であり、その最大径D2は、拡径部20の最大径の両側に展開片31の厚みを加えた大きさに略等しい。取付け孔8の形状は従来と同じであり、該取付け孔8の形成方法も周知であるから、ここでは説明を省く。
図3は、リング4と第1凹溝35とを拡大して示す断面図である。リング4の内径と第1凹溝35の底面との間には隙間Sが形成され、リング4はこの隙間Sだけ内向きに弾性変形することができる。
【0012】
(アンカーボルトの取付け孔への取り付け)
アンカーボルト1を組み立てて、これを取付け孔8へ取り付けるには、以下の手順で行う。先ず、展開片31の先端が拡径部20の基端部に位置する(前記の第1状態)まで、軸体2にスリーブ3を挿入する。凹み34の底面を内側に殴打して、該底面を軸体2の周面に食い込ませ、スリーブ3と軸体2とを連結させる。これにより、図4に示すように、アンカーボルト1が完成する。
次に、このアンカーボルト1を図4に一点鎖線で示す取付け孔8内に挿入方向Fに沿って挿入する。リング4の径D1は細孔80の径Dよりも稍大きいから、リング4は最大で隙間Sだけ内向きに弾性変形する。アンカーボルト1をリング4と細孔80の周壁との摩擦に抗して挿入する。拡径部20の先端面が拡径孔部81の奥面に当接すると、軸体2はそれ以上挿入されることができず、軸体2は挿入完了状態となる。
【0013】
次に、図5に示すように、ハンマー(図示せず)等にて、壁面85の外側からスリーブ3の端面3aを殴打して、該スリーブ3だけを拡径孔部81に向けて挿入方向Fに押し込む。即ち、凹み34の底面と軸体2の周面との連結が外れるように、スリーブ3を拡径孔部81に向けて押し込む。しかし、凹み34の底面と軸体2の周面との連結が外れた後も、凹み34の底面と軸体2の周面とは摩擦を以て接するから、軸体2とスリーブ3とは、軸線Lを中心とした回転方向に固定されている。
展開片31は拡径部20の外周面に沿って薄肉連結部32を支点として外向きに広がり、展開される。この状態を第2状態とする。これにより、拡径孔部81と拡径部20の隙間は、展開片31によって埋められ、第2状態にて軸体2ひいてはアンカーボルト1は取付け孔8から抜け出ることが防止される。この状態で、軸体2のボルト21を通して他の部品や構造物等(図示せず)を嵌めて、該ボルト21に一点鎖線で示すナット9を嵌めてナット9を回転させれば、コンクリート壁面85に対して他の部品や構造物等が取り付けられる。
【0014】
リング4が取付け孔8の内周壁に接しているから、リング4と該内周壁との摩擦力により、スリーブ3の回転が阻止される。凹み34の底面との摩擦力によってスリーブ3に連結された軸体2も軸線Lを中心とした回転が阻止される。これにより、ナット9を回転させる際に、軸体2とスリーブ3とが一緒に回転することを防ぐことができる。従って、従来のように、ボルト21の先端部にスパナを引っ掛けて軸体2の回転を防ぐ必要はなく、ナット9を締め付ける際の作業性は向上する。
【0015】
(第2実施形態)
第1実施形態におけるアンカーボルト1は、ナット9を回転させる際に、軸体2とスリーブ3とが一緒に回転することを防ぐ点では従来に比して利点がある。しかし、リング4の外径のバラ付きにより、リング4と取付け孔8の内周壁との摩擦力が一定ではない。つまり、該摩擦力が大きな場合は、アンカーボルト1が取付け孔8に挿入しづらく、拡径部20の先端面が拡径孔部81の奥面に当接するまで、アンカーボルト1を取付け孔8に挿入することが出来ない場合がある。逆に該摩擦力が小さな場合はスリーブ3を拡径孔部81に向けて押し込む前に、アンカーボルト1が取付け孔8から脱落する虞がある。特に、コンクリート壁面85が天井壁面である場合はこの虞が大きくなる。
更に、凹み34の底面の塑性変形によってスリーブ3に軸体2を連結させているが、塑性変形量のバラ付きにより、スリーブ3と軸体2との連結力が一定にはならない。従って、該連結力が大きな場合は、スリーブ3を軸体2から離して拡径孔部81に向けて押し込む際に、押し込みにくい事態が生じる虞がある。そこで、本発明者は軸体2とスリーブ3とを合成樹脂製のリング4にて連結し、これらの不都合を解消することを着想した。
【0016】
図6は、本実施形態に係るアンカーボルト1の分解図である。図7は、図6のスリーブ3をC-C線を含む面で破断し矢視した断面図及びリング4を示す図である。アンカーボルト1が挿入される取付け孔8は、図2に示したのと同じである。
第1実施形態と同様に、アンカーボルト1は、先端部に拡径部20を、他端部にボルト21を夫々形成した軸体2と、該軸体2の他端部から挿入され、先端部に拡径部20に沿って外向きに曲がる展開片31を設けたスリーブ3とを備えている。図7に示すように、スリーブ3の周面に開設された第1凹溝35は、その一部がスリーブ3の中空部に達する貫通孔36に連続している。軸体2には前記の第1状態で貫通孔36に重なる第2凹溝22が形成されている。
【0017】
軸体2にスリーブ3が挿入され、貫通孔36と第2凹溝22とが重なった状態にて、第1凹溝35にはスリーブ3の外側からリング4が嵌められる。本実施形態においては、リング4は2つの円弧状のリング半体40から構成され、両リング半体40は合成樹脂から形成される。各リング半体40の両端部にはフック41が設けられ、両リング半体40は互いのフック41が組み合わされて、リング4を構成する。各リング半体40の外面には、複数の凹部42が互いに離れて形成されており、この理由は後記する。両リング半体40はスリーブ3を挟んで互いに反対側から第1凹溝35に嵌められて、対向するフック41どうしを組み合わせる。各リング半体40を別個に第1凹溝35に嵌めることが出来るから、スリーブ3上にてリング4を構成する際の作業性が良くなる。
【0018】
各リング半体40の円弧長さに沿う中央部からは、図7に示すように、嵌合片43が内向きに突出している。該嵌合片43はリング半体40が第1凹溝35に嵌められた状態で、貫通孔36を通り、先端部が軸体2の第2凹溝22に嵌まる。これにより、軸体2とスリーブ3とが係脱可能に連結される。即ち、リング半体40及びリング4は、本発明の「連結手段」を構成する。
【0019】
図8は、本実施形態に係る組立状態のアンカーボルト1を一部破断した断面図であり、図9は、図8のアンカーボルト1をA-A線を含む面で破断し矢視した断面図である。
アンカーボルト1を組み立てるには、以下の手順で行う。先ず、展開片31の先端が拡径部20の基端部に位置するまで、軸体2にスリーブ3を挿入する。前記の如く、貫通孔36と第2凹溝22とが重なる(図8参照)。この状態で、第1凹溝35に2つのリング半体40をスリーブ3に対して互いに反対側から嵌める。図9に示すように、嵌合片43はリング半体40が第1凹溝35に嵌められた状態で、貫通孔36を通り、先端部が軸体2の第2凹溝22に嵌まる。両リング半体40のフック41を係止させることにより、リング4が形成されて、軸体2とスリーブ3とが係脱可能に連結される。この状態で、リング4の外径は、細孔80の径Dよりも稍大きい。
【0020】
次に、このアンカーボルト1を取付け孔8に挿入する。図10(a)-(d)は、この手順を示す断面図である。図10(a)に示すように、リング4の外径は、細孔80の径Dよりも稍大きいから、アンカーボルト1はリング4と細孔80の内壁との摩擦に抗して挿入される。図10(b)に示すように、軸体2の拡径部20の先端面が拡径孔部81の奥面に当接すると、軸体2はそれ以上挿入されることができず、軸体2は挿入完了状態となる。
【0021】
第1実施形態と同様に、この状態で、図10(c)に示すように、ハンマー(図示せず)等にて、スリーブ3の端面3aを殴打して、該スリーブ3を拡径孔部81に向けて押し込む。第1凹溝35に嵌まったリング4もスリーブ3と共に押し込まれる。図11に拡大して示すように、嵌合片43は第2凹溝22から外れて軸体2の周面に乗り上げる。また、嵌合片43は軸体2の周面に乗り上げ、即ち外向きに膨らむように動くから、嵌合片43の一部は、スリーブ3の外周面と取付け孔8の内周壁との間に挟まれて変形し、膨らみ部44を構成する。この膨らみ部44の弾性力によって、スリーブ3は軸体2に向けて押圧される。つまり、スリーブ3に嵌まったまま変形した嵌合片43の一部である膨らみ部44が、スリーブ3の外周面と取付け孔8の内周壁との間を充填し、取付け孔8の内周壁に摩擦接触する。且つリング4は取付け孔8の内周壁と軸体2の周面との間で挟持され、突っ張った状態となる。これにより、取付け孔8に対するスリーブ3の回転及び軸体2の軸線Lを中心とする回転が阻止される。
【0022】
図10(d)に示すように、軸体2のボルト21を通して他の部品や構造物90を嵌めて、該ボルト21にナット9を嵌めてナット9を回転させれば、コンクリート壁面85に対して他の部品や構造物90が取り付けられる。
上記の如く、本実施形態に係るアンカーボルト1にあっては、軸体2にナット9を嵌めて回転させる際に、軸体2とスリーブ3とが一緒に回転することを防ぐことができる。従って、従来のように、ボルト21の先端部にスパナを引っ掛けて軸体2の回転を防ぐ必要はなく、ナット9を締め付ける際の作業性は向上する。出願人は、アンカーボルト1を天井壁に開設された取付け孔8に取り付けることを主に想定しており、この天井壁に取り付けられたアンカーボルト1のボルト21にナット9を嵌めて回転させる際の作業性が向上する。
【0023】
上記にてリング半体40の外面には、複数の凹部42が互いに離れて形成されている。これは、主にアンカーボルト1がコンクリート壁面85に取り付けられることを想定したためである。コンクリート壁面85の取付け孔8の内周面には、周知の如く、細かな凹凸がある。リング半体40の凹部42は、この取付け孔8の内周面の凹凸に嵌合し、これにより、図10(b)に示すように、軸体2の挿入完了状態にて、アンカーボルト1が取付け孔8から脱落する虞を更に防ぐことが出来る。特に、アンカーボルト1を天井壁に開設された取付け孔8に取り付ける際に、アンカーボルト1の落下を防止することができ、効果的である。
【0024】
本実施形態では、アンカーボルト1はコンクリート壁面85に取り付けることを想定している。しかし、コンクリート壁面85以外の壁面にも、本実施形態のアンカーボルト1は取り付け可能である。
また、第1状態は展開片31の先端が拡径部20の基端部に位置した状態とした。しかし、第1状態は展開片31が非展開状態であればよく、展開片31の先端が拡径部20の基端部から挿入方向とは稍逆向きに移動した位置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、コンクリート壁等に開設された取付け孔内に固定されるアンカーボルトに適用されると有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 アンカーボルト
2 軸体
3 スリーブ
4 リング
8 取付け孔
9 ナット
20 拡径部
22 第2凹溝
31 展開片
35 第1凹溝
43 嵌合片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11