特許第6231518号(P6231518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 津田工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧 ▶ 万能工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000002
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000003
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000004
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000005
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000006
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000007
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000008
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000009
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000010
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000011
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000012
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000013
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000014
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000015
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000016
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000017
  • 特許6231518-車両用シフト装置 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231518
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両用シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
   B60K20/02 E
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-102269(P2015-102269)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-215795(P2016-215795A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591050970
【氏名又は名称】津田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000243700
【氏名又は名称】万能工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 章里
(72)【発明者】
【氏名】清水 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 崇喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 三郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘規
(72)【発明者】
【氏名】増田 考剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英昭
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−091078(JP,A)
【文献】 実開平03−000162(JP,U)
【文献】 実開平06−049146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内において基端部が回動可能に支持された筒状軸部と、前記筒状軸部の先端にシフトノブが固定されたシフトレバーを備え、前記筒状軸部には、その周壁を貫通し且つ前記筒状軸部の軸方向に長い長穴が形成され、前記長穴には、ディテントピンがその両端部を前記長穴から突き出した状態で挿通され、前記シフトノブに設けられた操作釦の操作力を前記ディテントピンに伝達するディテントロッドが前記筒状軸部内に挿通され、前記ディテントピンから前記ディテントロッド側へ突設された嵌合突部が前記ディテントロッドの端部に形成された嵌合穴内に嵌合されている形式の車両用シフト装置であって、
前記ディテントロッドの端部には、前記ディテントピンに形成された係合凹部に係合する抜止め爪が設けられており、
前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置している場合には、前記抜止め爪は前記筒状軸部の径方向に移動可能であり、
前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置しない場合には、前記ディテントピンから突設された嵌合突部と前記筒状軸部との間で、前記抜止め爪の前記筒状軸部の径方向の移動が制限されて前記抜止め爪の外れが阻止されている
ことを特徴とする車両用シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シフト装置に関し、とりわけ、ディテントロッドのディテントピンからの外れを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジング内において基端部が回動可能に支持された筒状軸部と、前記筒状軸部の先端にシフトノブが固定されたシフトレバーを備え、前記筒状軸部には、その周壁を貫通し且つ前記筒状軸部長手に長い長穴が形成され、前記長穴には、ディテントピンがその両端部を前記長穴から突き出した状態で挿通され、前記シフトノブに設けられた操作釦の操作力を前記ディテントピンに伝達するディテントロッドが前記筒状軸部内に挿通された車両用シフト装置が知られている。たとえば特許文献1の車両用シフト装置がそれである。特許文献1の車両用シフト装置では、前記ディテントロッドから前記ディテントピン側へ突設された係合突部が、前記ディテントピンに設けられた係合穴に係合された状態で、ディテントピンがディテントロッド側へスプリングにより付勢されて、ディテントピンとディテントロッドが組立てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−56430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の車両用シフト装置では、ディテントピンをディテントロッド側へ付勢するスプリングの付勢力が低下すると、ディテントロッドとディテントピンとの係合が外れてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ディテントロッドのディテントピンからの外れが抑制された車両用シフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、ハウジング内において基端部が回動可能に支持された筒状軸部と、前記筒状軸部の先端にシフトノブが固定されたシフトレバーを備え、前記筒状軸部には、その周壁を貫通し且つ前記筒状軸部の軸方向に長い長穴が形成され、前記長穴には、ディテントピンがその両端部を前記長穴から突き出した状態で挿通され、前記シフトノブに設けられた操作釦の操作力を前記ディテントピンに伝達するディテントロッドが前記筒状軸部内に挿通され、前記ディテントピンから前記ディテントロッド側へ突設された嵌合突部が前記ディテントロッドの端部に形成された嵌合穴内に嵌合されている形式の車両用シフト装置であって、前記ディテントロッドの端部には、前記ディテントピンに形成された係合凹部に係合する抜止め爪が設けられており、前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置している場合には、前記抜止め爪は前記筒状軸部の径方向に移動可能であり、前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置しない場合には、前記ディテントピンから突設された嵌合突部と前記筒状軸部との間で、前記抜止め爪の前記筒状軸部の径方向の移動が制限されて前記抜止め爪の外れが阻止されていることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用シフト装置によれば、前記ディテントロッドの端部には、前記ディテントピンに形成された係合凹部に係合する抜止め爪が設けられており、前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置している場合には、前記抜止め爪は前記筒状軸部の径方向に移動可能であり、前記抜止め爪が、前記長穴の前記筒状軸部の径方向内側に位置しない場合には、前記ディテントピンから突設された嵌合突部と前記筒状軸部との間で、前記抜止め爪の前記筒状軸部の径方向の移動が制限されて前記抜止め爪の外れが阻止されている。このため、前記ディテントロッドの前記ディテントピンからの外れが抑制される。
【0008】
ここで、好適には、前記ディテントピンは、スプリングにより常時前記ディテントロッド側へ付勢されている。このため、ディテントピンとディテントロッドとの組立状態では、ディテントロッドの抜止め爪の径方向への移動が制限されるように、ディテントロッドが筒状軸部内に位置させられる。これにより、ディテントロッドのディテントピンからの外れが抑制される。
【0009】
また、好適には、前記ディテントロッドの端部に形成された抜止め爪は、弾性変形可能な首部と、前記首部の先端から前記嵌合突部に向かって突き出して前記ディテントピンに形成された係合凹部に掛け止められる内向掛止爪部とを備え、組立て状態では、前記ディテントピンから突設された嵌合突部と前記筒状軸部との間で、前記内向掛止爪部の前記筒状軸部側への移動が制限されて前記内向掛止爪部の外れが阻止されている。このため、抜止め爪の係合凹部からの外れが阻止される。これにより、前記ディテントロッドの前記ディテントピンからの外れが抑制される。
【0010】
また、好適には、前記ディテントロッドの端部に形成された抜止め爪は、弾性変形可能な首部と、前記首部の先端から前記筒状軸部に向かって突き出して前記筒状軸部に形成された長穴に掛け止められる外向掛止爪部とを備え、組立て状態では、前記ディテントピンから突設された嵌合突部と前記筒状軸部との間で、前記外向掛止爪部の前記嵌合突部側への移動が制限されて前記外向掛止爪部の外れが阻止されている。このため、抜止め爪の長穴への掛け止めの外れが阻止される。これにより、ディテントロッドのディテントピンからの外れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例である車両用シフト装置の斜視図である。
図2図1の車両用シフト装置のシフトレバーを一部切り欠いて示す断面図である。
図3図2のシフトレバーの組立体に設けられた長穴を拡大して示す斜視図である。
図4図1の車両用シフト装置のハウジングに設けられたディテントプレートを示す図である。
図5図2のシフトレバーを構成する、組立体、スプリング、ディテントピンおよびディテントロッドをそれぞれ別々に示す斜視図である。
図6図5の組立体にスプリングおよびディテントピンが配置された状態を示す斜視図である。
図7図5の組立体、スプリング、ディテントピン、ディテントロッドにより構成されるシフトレバーの組立状態を示す図である。
図8図5のディテントロッドの下端部を拡大して示す図である。
図9図5のディテントピンの嵌合突部周辺を拡大して示す図である。
図10図5のディテントピンとディテントロッドとの組立工程における、ディテントロッドの内向掛止爪部がディテントピンの嵌合突部の突端縁に到達する直前の状態を示す、レバーパイプの軸心を通る平面上の断面図である。
図11図5のディテントロッドの内向掛止爪部がディテントピン用長穴で径方向外側に移動した状態を示す、図10に相当する断面図である。
図12図5のディテントロッドの抜止め爪がディテントピンの嵌合突部の係合凹部に係合された、ディテントピンとディテントロッドとの組立状態を示す、図10に相当する断面図である。
図13図12の組立状態からディテントロッドがディテントピンと反対側へ移動させられた状態を示す断面図である。
図14】本発明の他の実施例における車両用シフト装置のシフトレバーに適用されたディテントロッドの下端部を拡大して示す図である。
図15図14のディテントロッドに嵌合されるディテントピンの嵌合突部を拡大して示す図である。
図16図14のディテントロッドと図15のディテントピンとの組立工程における、一対の内向掛止爪部の先端がディテントピン用長穴で径方向外側に移動した状態を示す、レバーパイプの軸心を通る平面上の断面図である。
図17】ディテントロッドの一対の内向掛止爪部が、ディテントピンの一対の係合凹部に係合し、嵌合突部が嵌合穴に嵌合した状態を示す、図16に相当する図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の車両用シフト装置の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施例における車両用シフト装置10の斜視図である。車両用シフト装置10は、基端部が球状基端部12(図2に示す。)を介して回動可能に支持され、筒状軸部として機能するレバーパイプ14とレバーパイプ14の先端に固定されたシフトノブ16とを備えたシフトレバー18と、球状基端部12を受けてそれと摺接可能な球状軸受面を有する図示しない軸受部材と、シフトレバー18に組み付けられ、シフトレバー18のシフト方向の操作を図示しないケーブルを介して自動変速機に伝達する図示しないコントロールレバーと、軸受部材、シフトレバー18およびコントロールレバーの下端部を収容し、車室のフロアなどに固定されるハウジング20と、を備えている。シフトレバー18は、軸受部材に摺接可能に支持された球状基端部12の中心まわりに、シフト方向あるいはセレクト方向に回動可能にハウジング20に立設されている。ハウジング20は、シフトレバー18のレバーパイプ14を貫通させて、シフトレバー18をパーキング位置(P位置)、リバース位置(R位置)、ニュートラル位置(N位置)、ドライブ位置(D位置)などの各シフト位置のいずれかに案内する案内穴22を有する板状部材であるシフトゲート24を上壁面として備えている。また、ハウジング20には、シフトレバー18を上記各シフト位置に位置させて、シフト操作、たとえばパーキング位置と非パーキング位置のリバース位置との間のシフト位置切換操作を規制するための壁形状を有するディテントプレート26が、図4に示すように設けられている。
【0014】
図2は、車両用シフト装置10のハウジング20に収容されるシフトレバー18の断面図である。シフトレバー18は、組立体28(レバーSUBASSY)と、ディテントピン30と、スプリング32と、ディテントロッド34と、シフトノブ16と、を備えている。組立体28は、樹脂から形成されており、円筒状のレバーパイプ14と、レバーパイプ14の基端部を嵌め入れてレバーパイプ14を内部に固定する円筒状穴、および円筒状穴の内周側に設けられてレバーパイプ14の内径よりも外径の小さいスプリング32の一端を支持する環状端面を有する円柱状穴を備えた支持部36と、支持部36の車両下側に形成された球状基端部12とから構成される。図3は、組立体28の一部を拡大して示す斜視図である。組立体28は、レバーパイプ14の軸方向と垂直な方向にレバーパイプ14の周壁を貫通して形成されたレバーパイプ側長穴37および支持部36のレバーパイプ側長穴37に対応する周壁を貫通して形成された支持部側長穴38とによりレバーパイプ14の軸方向に長く構成され、ディテントピン30をそれと直交する方向に挿通させるための一対のディテントピン用長穴39を有している。ディテントピン30は、その両端部がディテントピン用長穴39から突き出した状態でディテントピン用長穴39内に挿通されている。また、ディテントピン30は、図2の上方向にあたるディテントロッド34側へ突設された嵌合突部42を備えている。シフトノブ16は、レバーパイプ14の軸方向に直交する方向に移動可能に設けられ、図示しないスプリングにより突出方向に付勢させられた操作釦として機能するノブボタン44を有している。ディテントロッド34は、ノブボタン44のカム面46に当接する半球面48を上端部に、ディテントピン30の嵌合突部42が嵌合される嵌合穴50を下端部に備え、シフトノブ16に備えられるノブボタン44の操作力をディテントピン30に伝達可能に、レバーパイプ14内に挿通されてディテントピン30に嵌合される。ディテントピン30は、組立体28の支持部36に配置されたスプリング32により、ノブボタン44の操作力とは反対方向のディテントロッド34側に常時付勢されており、その両端部が後述するディテントプレート26に係合される。
【0015】
シフトノブ16のノブボタン45の押操作によりノブボタン45が実線で示される位置から破線で示される位置まで移動させられると、ディテントピン30は、ディテントロッド34を介して伝達されるノブボタン45の操作力により、図2の実線で示される位置からスプリング32のディテントロッド34側への付勢力に抗してディテントロッド34とは反対側へ破線で示される位置まで下方に移動させられる。図4は、ハウジング20に設けられているディテントプレート26を示す図であり、シフトレバー18のシフト操作方向が左右方向の矢印で、ディテントピン30の作動方向が上下方向の矢印でそれぞれ示されている。ディテントプレート26は、ディテントピン30が係合させられるパーキング位置(P位置)、リバース位置(R位置)、ニュートラル位置(N位置)およびドライブ位置(D位置)の各シフト位置に対応するディテント溝52と、図4の左右方向の矢印で示されるシフトレバー18のシフト操作を規制する規制壁54を備えている。ノブボタン45が操作されていないときには、ディテントピン30は、スプリング32の付勢力によりディテントプレート26の各シフト位置のいずれかに対応するディテント溝52に係合させられる。規制壁54は、ノブボタン45が操作されていないときに、ディテントピン30のパーキング位置とリバース位置との間の移動、ニュートラル位置からリバース位置への移動を規制して、シフトレバー18の対応するシフト操作を規制する。ノブボタン45が操作されると、ディテントロッド34を介してノブボタン45の操作力が伝達されたディテントピン30は、各シフト位置のディテント溝52に対応する図4での下方の正方形で示される位置に移動させられ、シフト操作方向への移動が可能となり、パーキング位置とリバース位置との間のシフト位置の切換操作およびニュートラル位置からリバース位置へのシフトレバー18のシフト位置の切換操作が可能となる。ノブボタン45の操作が終了されると、スプリング32の付勢力により、ディテントピン30がディテントロッド34側へ移動させられ、切換えられたいずれかのシフト位置に対応するディテント溝52に係合させられる。
【0016】
図5は、車両用シフト装置10のハウジング20に収容されるシフトレバー18を構成する、組付け前の組立体28、ディテントロッド34、ディテントピン30、スプリング32をそれぞれ別々に示す斜視図である。シフトレバー18は、以下の工程で組付けられる。先ず、組立体28のレバーパイプ14の上方開口からスプリング32を挿入し、支持部36の環状端面によりスプリング32の下端を支持させる。次に、ディテントピン30の両端部のうちの一方の端部から組立体28のディテントピン用長穴39にディテントピン30を挿入し、嵌合突部42がレバーパイプ14の中心線上に位置するようにディテントピン30を位置させる。図6は、組立体28にスプリング32とディテントピン30とが配置された状態のシフトレバー18を示す斜視図である。次に、ディテントロッド34をその嵌合穴50が形成された下端部からレバーパイプ14の開口へ挿入し、ディテントロッド34の嵌合穴50をディテントピン30の嵌合突部42に嵌合させる。図7は、シフトレバー18の組立体28内部のスプリング32とディテントピン30とディテントロッド34との組立状態を示す図であり、組立体28が鎖線で示されている。
【0017】
図8は、ディテントロッド34の下端部を拡大して示す図であり、図9は、ディテントピン30の嵌合突部42の周辺を拡大して示す図である。ディテントピン30は、嵌合突部42のディテントピンの長手方向の側壁面のうちの一方の側壁面に係合凹部56を備えている。ディテントロッド34は、その下端部に係合凹部56に係合する抜止め爪58を備えている。抜止め爪58は、嵌合穴50の周壁に軸方向に形成された矩形状の切欠の上端縁の一部から下方に薄板状に延出され、弾性変形可能な首部60と、首部60の先端から嵌合穴50の中心すなわちディテントピン30の嵌合突部42に向かって内向方向に突き出してディテントピン30の嵌合突部42に形成された係合凹部56に掛け止められる内向掛止爪部62と、から構成される。内向掛止爪部62は、嵌合突部42の突端縁に摺接して首部60を外側に広げることにより内向掛止爪部62を係合凹部56に案内する案内斜面64を有している。また、ディテントロッド34の下端部に設けられた嵌合穴50の周壁の外径は、ディテントロッド34をレバーパイプ14に挿通可能に、レバーパイプ14の内径に略等しくされている。
【0018】
次に、シフトレバー18の各部材の組付工程のうち、ディテントロッド34とディテントピン30との組立工程を、図10から図13を参照して説明する。図10から図13は、ディテントピン30の嵌合突部42とディテントロッド34の嵌合穴50の周辺を拡大して示す断面図であり、図10および図11では、レバーパイプ側長穴37の長手方向の長さが矢印aで示されている。先ず、レバーパイプ14の上方の開口から嵌合穴50を下側にしてレバーパイプ14内に挿入したディテントロッド34を、組立体28のディテントピン用長穴39に両端部が突き出した状態で挿通され、組立体28の支持部36に一端面が支持されたスプリング32の他端面に配置されたディテントピン30の嵌合部(図示しない)へ向かい下方に降ろす。このとき、ディテントピン30の嵌合突部42が組立体28のディテントピン用長穴39と軸方向の同位置に位置するように、ディテントピン30にはスプリング32の付勢力に抗する下方への力が加えられている。図10は、ディテントロッド34の降下に伴い、ディテントピン30の嵌合突部42の突端がディテントロッド34の嵌合穴50に嵌め入れられ、内向掛止爪部62の案内斜面64に当接する直前のディテントロッド34とディテントピン30との状態を示す図である。ディテントピン用長穴39内にあるディテントピン30の嵌合突部42に向かい更にディテントロッド34を下降させ、嵌合突部42の突端縁に案内斜面64を摺接させることにより首部60をディテントピン用長穴39内で広げる。図11は、首部60がディテントピン用長穴39内で広がることにより内向掛止爪部62の突端縁が嵌合突部42の係合凹部56よりもディテントロッド34側の側壁面に到達した、ディテントピン30とディテントロッド34との状態を示す図である。首部60が広がったまま、更にディテントロッド34を下降させると、広がっていた首部60が弾性復帰し内向掛止爪部62がディテントロッド34の嵌合突部42に形成された係合凹部56に掛け止められて抜止め爪58が係合凹部56に係合されるとともに、嵌合突部42が嵌合穴50に嵌合される。図12は、抜止め爪58と係合凹部56とが係合し、嵌合突部42の嵌合穴50への嵌合が完了した、ディテントピン30とディテントロッド34との組立状態を示す図である。このディテントピン30とディテントロッド34との組立状態では、ディテントピン30に付与されるディテントロッド34側へのスプリング32による付勢力により、ディテントピン30は上方に持ち上げられ、首部60はレバーパイプ14内に位置される。嵌合穴50の周壁の外径とレバーパイプ14の内径は略等しいことから、レバーパイプ14内に位置された首部60は径方向外側への弾性変形が制限される。これにより、ディテントピン30から突設された嵌合突部42とレバーパイプ14との間で、内向掛止爪部62の径方向外側であるレバーパイプ14側への移動が制限されて抜止め爪58の係合凹部56からの外れが阻止される。たとえば、ディテントロッド34のみが引っ張られるなどして持ち上げられたとしても、首部60はレバーパイプ14内に位置しているため、径方向外側へレバーパイプ14側に広がることができず、内向掛止爪部62のレバーパイプ14側への移動が制限されて抜止め爪58の係合凹部56からの外れが阻止される。図13は、ディテントピン30とディテントロッド34との組立完了後にディテントロッド34のみが持ち上げられた状態を示す図である。
【0019】
上述のように、本実施例の車両用シフト装置10によれば、ディテントロッド34の下端部に形成された嵌合穴50の周壁には、ディテントピン30にディテントロッド34側に突設された嵌合突部42に形成された係合凹部56に係合する抜止め爪58が設けられている。抜止め爪58は、弾性変形可能な首部60と、首部60の先端から嵌合突部42に向かって突き出してディテントピン30に形成された係合凹部56に掛け止められる内向掛止爪部62とを備えている。ディテントピン30とディテントロッド34との組立て状態では、スプリング32の付勢力によりレバーパイプ14内に位置された首部60の径方向外側への弾性変形が制限される。このため、ディテントピン30から突設された嵌合突部42とレバーパイプ14との間で、内向掛止爪部62の径方向外側にレバーパイプ14側への移動が制限されて内向掛止爪部62の係合凹部56からの外れが阻止される。これにより、ディテントロッド34のディテントピン30からの外れが抑制される。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前記実施例と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0021】
図14は、本実施例の車両用シフト装置66のディテントロッド68の下端部を拡大して示す図であり、図15は、本実施例の車両用シフト装置66のディテントピン70の嵌合突部72の周辺を拡大して示す図である。ディテントピン70は、ディテントロッド68側に突設された嵌合突部72のディテントピン70の長手方向の両側壁面が、互いに接近するように凹んだ一対の係合凹部56を備えている。ディテントロッド68は、その下端部に係合凹部56に係合する一対の抜止め爪74を備えている。抜止め爪74は、弾性変形可能な首部60と、首部60の先端に形成された係合凹部56に掛け止められる内向掛止爪部76と、から構成される。
【0022】
次に、ディテントロッド68とディテントピン70との組立工程を、図16および図17を参照して説明する。図16および図17は、ディテントピン70の嵌合突部72とディテントロッド68の嵌合穴50の周辺を拡大して示す断面図である。レバーパイプ14の上方の開口から嵌合穴50を下側にしてレバーパイプ14内に挿入したディテントロッド68を、スプリング32の他端面に配置されたディテントピン70の嵌合突部72へ向かい下方に降ろし、嵌合突部72の突端縁に案内斜面64を摺接させることにより一対の抜止め爪74の首部60をディテントピン用長穴39内で径方向外側へ互いに離隔する方向へ広げる。図16は、首部60がディテントピン用長穴39内で広がることにより内向掛止爪部76が嵌合突部72の一対の係合凹部56よりもディテントロッド68側の側壁面に到達した、ディテントピン70とディテントロッド68との状態を示す図である。このとき、首部60が径方向外側に広がることができる位置にディテントピン70が位置するように、ディテントピン70にはスプリング32の付勢力に抗する下方への力が加えられている。首部60が広がったまま、更にディテントロッド68を下降させると、広がっていた首部60のそれぞれが互いに接近する方向に径方向内側へ弾性復帰し、内向掛止爪部76がディテントロッド68の嵌合突部72に形成された係合凹部56のそれぞれに掛け止められて、一対の抜止め爪74が一対の係合凹部56に係合されるとともに、嵌合突部72が嵌合穴50に嵌合される。図17は、一対の抜止め爪74と一対の係合凹部56とが係合し、嵌合突部72の嵌合穴50への嵌合が完了し、ディテントロッド68のディテントピン70側への力が依然として加えられている状態である。この状態から上記力が加えられなくなると、ディテントピン70に付与されるディテントロッド68側へのスプリング32による付勢力により、ディテントピン70は上方に持ち上げられ、首部60がレバーパイプ14内に位置される、ディテントロッド68とディテントピン70との組立状態に移行する。組立状態では、レバーパイプ14内に位置された首部60は径方向外側への弾性変形が制限される。これにより、ディテントピン70から突設された嵌合突部72とレバーパイプ14との間で、内向掛止爪部76の径方向外側であるレバーパイプ14側への移動が制限されて抜止め爪74の係合凹部56からの外れが阻止される。本実施例の車両用シフト装置66によれば、前述の実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0023】
また、本実施例の車両用シフト装置66によれば、ディテントピン70の嵌合突部72のディテントピン70の軸方向における両側壁面に設けられた一対の係合凹部56に係合する一対の抜止め爪74が、ディテントロッド68の下端部に設けられている。このため、ディテントロッド68の抜止め爪74のそれぞれは一対の係合凹部56のどちらにも係合可能であることから、ディテントロッド68はディテントピン70に対して軸周りに180度回転させての組立てが可能である。
【0024】
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0025】
10、66:車両用シフト装置
14:レバーパイプ(筒状軸部)
16:シフトノブ
18:シフトレバー
20:ハウジング
30、70:ディテントピン
32:スプリング
34、68:ディテントロッド
39:ディテントピン用長穴
42、72:嵌合突部
44:ノブボタン(操作釦)
50:嵌合穴
56:係合凹部
58、74:抜止め爪
0:首部
62、76:内向掛止爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17