【実施例】
【0054】
例1
有機分を含まないベータ(SAR=10.3)の合成、および、それに続く、Fe−ベータ(4.0wt%Fe、SAR=10.3)を製造するためのFe交換
水、NaOH(50%)およびアルミン酸ナトリウム(23.5%Al
2O
3、19.6%Na
2O)を共に混合した。シリカゲル(PQ Corporation)を、溶液に添加し、1時間激しく混合した。最後に、スラリーのシリカ含有量に対して、5wt.%の量の市販のゼオライトベータ(Zeolyst International)を、混合物に添加して、30分間撹拌した。ゲルは、以下のモル組成を有していた。
【0055】
15.0 SiO
2:1.0 Al
2O
3:3.8 Na
2O:259 H
2O
【0056】
ゲルを、45mL Parrボンベ(bomb)に入れ、静的条件下で、120時間、125℃に加熱した。冷却した後、生成物を、濾過および洗浄により回収した。生成物のX線回折パターンは、純粋相のゼオライトベータを示した。
【0057】
残留ナトリウムを除去するために、固体を、3.6M NH
4NO
3溶液中にスラリーにし、90℃で、2時間撹拌した。このNH
4NO
3交換プロセスを、2回繰り返した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、最終生成物は、シリカ対アルミナ比(SAR)が10.3であった。生成物のBET表面積は、665m
2/gであり、微細孔容積は、0.23cc/gであった。
【0058】
次いで、試料を、FeSO
4溶液を用いて、70℃で、2時間イオン交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、Fe−ベータ生成物は、4.0wt.%Feを含有していた。
【0059】
10%蒸気/空気において、700℃で、16時間蒸気処理した後、材料のBET表面積は、461m
2/gであり、微細孔容積は、0.15cc/gであった。
【0060】
例2(比較例)
水性イオン交換によるFe−ベータ(1.0wt.%Fe、SAR=25)
Zeolyst製の市販のベータゼオライト(CP814E、SAR=25)を、FeCl
2溶液を用いて、80℃で、2時間イオン交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、Fe−ベータ生成物は、1.0wt.%Fe、693m
2/gのBET表面積、および0.19cc/gの微細孔容積を有していた。
【0061】
10%蒸気/空気において、700℃で、16時間蒸気処理した後、材料の表面積は、590m
2/gであり、微細孔容積は、0.16cc/gであった。
【0062】
例3
有機分を含まないベータの合成
水、NaOH(50%)およびアルミン酸ナトリウム(23.5%Al
2O
3)を共に混合した。シリカゲル(PQ Corporation)を、溶液に添加し、1時間激しく混合した。最後に、スラリーのシリカ含有量に対して、10wt.%の量の市販のゼオライトベータ(Zeolyst International)を、混合物に添加して、24時間撹拌した。ゲルは、以下のモル組成を有していた。
【0063】
32. 8SiO
2:1.0 Al
2O
3:9.2 Na
2O:794 H
2O
【0064】
ゲルを、2リットルのParrオートクレーブに入れ、静的条件下で、125℃で、47時間加熱した。冷却した後、生成物を、濾過および洗浄により回収した。生成物のX線回折パターンは、純粋相のベータゼオライトを示した。
【0065】
残留ナトリウムを除去するために、固体を、3.6M NH
4NO
3溶液中にスラリーにし、90℃で、2時間撹拌した。このNH
4NO
3交換プロセスを、2回繰り返した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後の材料の特性を、表1に列挙する。
【0066】
次いで、試料を、FeSO
4溶液を用いて、70℃で、2時間イオン交換し、その後、濾過し、洗浄し、乾燥させた。Fe含有量、表面積、および微細孔容積を、表2に列挙する。
【0067】
例4
有機分を含まないベータの合成
水、NaOH(50%)およびアルミン酸ナトリウム(23.5%Al
2O
3)を共に混合した。シリカゲル(PQ Corporation)を、溶液に添加し、1時間激しく混合した。最後に、スラリーのシリカ含有量に対して、10wt.%の量の市販のゼオライトベータ(Zeolyst International)を、混合物に添加して、24時間撹拌した。ゲルは、以下のモル組成を有していた。
【0068】
22.0 SiO
2:1.0 Al
2O
3:6.2 Na
2O:33 7H
2O
【0069】
ゲルを、2リットルのParrオートクレーブに入れ、100rpmで撹拌しながら、125℃で、52時間加熱した。冷却した後、生成物を、濾過および洗浄により回収した。生成物のX線回折パターンは、純粋相のベータゼオライトを示した。
【0070】
残留ナトリウムを除去するために、固体を、3.6M NH
4NO
3溶液中にスラリーにし、90℃で、2時間撹拌した。このNH
4NO
3交換プロセスを、2回繰り返した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後の材料の特性を、表1に列挙する。
【0071】
次いで、試料を、FeSO
4溶液を用いて、70℃で、2時間イオン交換し、その後、濾過し、洗浄し、乾燥させた。Fe含有量、表面積、および微細孔容積を、表2に列挙する。
【0072】
また、この例からのNH
4交換ベータを、FeSO
4溶液を使用して、20℃で、2時間イオン交換し、異なるFe担持量(Fe−loadings)を得て、その後、濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0073】
また、この例からのNH
4交換ベータを、硝酸銅を用いてイオン交換し、4.8%Cuを含有する試料を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
例5(比較例)
水性イオン交換によるFe−モルデナイト(1.5wt.%Fe、SAR=14)
Zeolyst製の商業用のモルデナイトゼオライト(SAR=14)を、FeSO
4溶液を用いて、70℃で、2時間イオン交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、Fe−モルデナイト生成物は、1.5wt.%Fe、522m
2/gのBET表面積、および0.19cc/gの微細孔容積を有していた。
【0077】
10%蒸気/空気において、700℃で、16時間蒸気処理した後、材料のBET表面積は、460m
2/gであり、微細孔容積は、0.15cc/gであった。
【0078】
例6(比較例)
水性イオン交換によるFe−Y(1.5wt.%Fe、SAR=5.5)
Zeolyst製の商業用のYゼオライト(CBV500、SAR=5.5)を、Fe交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、Fe−Y生成物は、1.5wt.%Fe、759m
2/gのBET表面積、および0.27cc/gの微細孔容積を有していた。
【0079】
フェリアルミノケイ酸塩(ferrialuminosilicate)ゼオライトを用いた、NOのNH
3−SCR
NH
3を還元剤として使用するNO変換に対する、Fe−ベータの活性を、流通型反応器において評価した。粉末のゼオライト試料を加圧し、35/70メッシュにふるい分けて、石英管反応器に入れた。ガス流は、500ppm NO、500ppm NH
3、5%O
2、およびバランスN
2を含有した。すべての反応についての毎時の空間速度は、60,000h
-1であった。反応器の温度に勾配をつけ、NO変換を、各温度間隔で、赤外線分析計により決定した。
図1は、10%H
2O/空気において、700℃で、16時間蒸気処理されたFe−ベータ試料上での、NH
3によるNOのSCRを比較するものである。
【0080】
Fe含有ゼオライトのFT−UV分光測定
その場で400℃で脱水された後の、蒸気処理されたFe試料に関して、周囲温度で、200から400nmまで、UVスペクトルを収集して、それらを、
図12および13に示す。そのスペクトルを、デコンボリューションして、R
2>0.99のフィット精度を有する、192、209、228、266および308nmに中心がある5つのガウスピーク(各ピークについて、±10nmの変動)を得た。ピーク面積ならびにピーク面積の割合を、表3に示す。300nm未満に中心があるピークは、孤立したFe種と関連するのに対して、300nmを上回るピークは、オリゴマーのFe種と関連する。例4において製造されたベータに基づく異なるFe担持量のFe交換材料は、80%より多いFeを、孤立したFe部位として有するのに対して、比較例である例2は、73%の孤立部位を有する。
【0081】
【表3】
【0082】
NH
3−SCR活性は、209nmおよび228nmに中心があるUVピークのピーク面積とかなり相関する。すなわち、それらのピーク面積が広いほど、材料は、より活性である。例えば、1.0%Feを有する例4におけるベータは、209nmおよび228nmに、それぞれ、40および47面積単位(KM単位×nm)のピーク面積、ならびに、200℃で、38%NOx変換を有する。1.7%Feを有する例4におけるベータは、209nmおよび228nmに、それぞれ、55および73KM単位×nmのピーク面積、ならびに、55%のNOx変換を有する。2.0%Feを有する例4におけるゼオライトベータは、209nmおよび228nmに、それぞれ、87および101KM単位×nmのピーク面積、ならびに、84%のNOx変換を有する。NOx変換の増大は、209nmおよび228nmでのピーク面積の増加と同時に起き、それは、これらの帯域が、これらの材料における、NH
3−SCRの活性点と関連することを示唆する。
【0083】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用する、成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されたい。したがって、特に反対の指示がない限り、以下の明細書、および添付の特許請求の範囲に記述する、数のパラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0084】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察、および本明細書に開示する発明の実施から、当業者に明らかとなるであろう。本明細書および実施例は、例示的なものに過ぎないとみなし、発明の真の範囲および精神を、以下の特許請求の範囲により示すことを意図する。
本発明は、以下の態様を含むものである。
[1]シリカ対アルミナモル比(SAR)が5から20の範囲である、有機分を含まない金属含有ゼオライトベータであって、前記金属が、少なくとも1.0wt.%の量の鉄および/または銅を含むことを特徴とする、金属含有ゼオライトベータ。
[2]前記ゼオライトベータが任意の有機の構造指向剤(SDA)を細孔構造内に含有する場合であることを条件として、それが合成の間の種材料に由来することを特徴とする、[1]に記載の、有機分を含まない金属含有ゼオライトベータ。
[3]前記SARが、5から11の範囲であることを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[4]前記鉄または銅が、液相または固体イオン交換、含浸によって導入されているか、または直接合成によって組み込まれていることを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[5]前記金属が、1.0から10wt.%の範囲の量の鉄を含むことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[6]前記金属が、2.0から10wt.%の範囲の量の鉄を含むことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[7]前記金属が、3.0から8.0wt.%の範囲の量の鉄を含むことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[8]少なくとも60%の鉄が、交換位置に孤立カチオンとして存在することを特徴とする、[4]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[9]前記金属が、1.0から10wt.%の範囲の量の銅を含むことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[10]前記金属が、2.0から10wt.%の範囲の量の銅を含むことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[11]10体積%以下の水蒸気の存在下で700℃に16時間曝露後、アンモニア発生化合物による選択的接触還元について、200℃で少なくとも40%のNO
x変換を示すことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[12]10体積%以下の水蒸気の存在下で700℃に16時間曝露後、アンモニア発生化合物による選択的接触還元について、200℃で少なくとも60%のNO
x変換を示すことを特徴とする、[1]に記載の金属含有ゼオライトベータ。
[13]排気ガス中の窒素酸化物の選択的接触還元の方法であって、前記方法が、
前記排気ガスを、有機分を含まない金属含有ゼオライトベータを含む物品と少なくとも部分的に接触させるステップを含み、前記金属が、少なくとも0.5wt.%の量の鉄および/または銅を含むことを特徴とする方法。
[14]前記有機分を含まない金属含有ゼオライトベータが、5から20の範囲の、シリカ対アルミナモル比(SAR)を有することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[15]前記ゼオライトベータが、5から11の範囲のSARを有することを特徴とする、[14]に記載の方法。
[16]前記ゼオライトベータが任意の有機の構造指向剤(SDA)を細孔構造内に含有する場合を条件として、それが合成の間の種材料に由来することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[17]前記接触ステップが、アンモニア、尿素、またはアンモニア発生化合物の存在下で行われることを特徴とする、[13]に記載の方法。
[18]前記接触ステップが、炭化水素化合物の存在下で行われることを特徴とする、[13]に記載の方法。
[19]前記銅または鉄が、液相または固体イオン交換、含浸によって導入されるか、または直接合成によって組み込まれることを特徴とする、[13]に記載の方法。
[20]前記鉄が前記材料の総重量の少なくとも1.0重量パーセントを構成し、少なくとも60%の鉄が交換位置に孤立カチオンとして存在することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[21]前記鉄が前記材料の総重量の1.0から10.0重量パーセントの範囲の量を構成することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[22]前記鉄が前記材料の総重量の2.0から10.0wt.%の範囲の量を構成することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[23]前記鉄が前記材料の総重量の3.0から8.0wt.%の範囲の量を構成することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[24]前記銅が前記材料の総重量の1.0から10.0wt.%の範囲の量を構成することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[25]前記銅が前記材料の総重量の2.0から10.0wt.%の範囲の量を構成することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[26]前記ゼオライトベータが、0.1ミクロンより大きい結晶径を有することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[27]前記ゼオライトベータが、0.2から5ミクロンの範囲の結晶径を有することを特徴とする、[13]に記載の方法。
[28]前記物品が、チャネル形状もしくはハニカム形状の物体、充填層、ミクロスフェア、または構造片の形態であることを特徴とする、[13]に記載の方法。
[29]前記充填層が、球状物、小石状の物、ペレット、タブレット、押出成形物、他の粒子、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、[28]に記載の方法。
[30]前記構造片が、プレートまたはチューブの形態であることを特徴とする、[28]に記載の方法。
[31]チャネル形状もしくはハニカム形状の物体、または構造片が、ベータゼオライトを含む混合物を押出成形することにより形成されることを特徴とする、[28]に記載の方法。
[32]任意のシーディング材料を除き、有機の構造指向剤(SDA)を用いずに、シリカ対アルミナモル比(SAR)が5から20の範囲であるゼオライトベータを合成する方法であって、前記ゼオライトベータが、30パーセントより大きい、合成混合物からのシリカ利用率を有することを特徴とする方法。
[33]前記ゼオライトベータが、50パーセントより大きい、合成混合物からのシリカ利用率を有することを特徴とする、[32]に記載の方法。