(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の走行制御装置は、車間距離が限界距離以上になるか、又は、けん引角度が限界角度以上になると、軌跡追従制御を解除する。車間距離が大きくなる状況やカーブ等けん引角度が大きくなる状況は頻繁に発生することから、特許文献1の走行制御装置において、軌跡追従制御を解除されにくくするには限界距離及び限界角度を大きくする必要がある。しかし、車間距離が大きい状況やカーブを走行する状況で軌跡追従制御を行うことには次の問題がある。
【0006】
車間距離が大きい場合、車載カメラと先行車両との距離は遠い。このため、車間距離が小さい場合と比較して、車載カメラで撮像された画像に基づく先行車両の検知精度は低い。また、カーブの曲がり度合いが大きい場合、具体的には曲率半径が小さい場合、車載カメラで先行車両の背面を撮像しづらくなる。このため、直線道路を走行する場合と比較して、車載カメラで撮像された画像に基づく先行車両の検知精度は低い。このため、先行車両が車線の中央を安定して走行していても、自車両側では先行車両が横方向に移動しているように誤認識されることがある。誤認識は操舵制御の誤差となり、自車両の走行が不安定になる。誤差が大きい場合は、軌跡追従制御自体が困難になることもある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、車載カメラで撮像された画像に基づく先行車両の検知精度が低くても、自車両を安定して走行させることができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自車両の周辺の画像を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像される画像から先行車両を認識する先行車両認識部と、前記撮像部により撮像される画像に基づいて前記自車両の横方向に移動範囲の制限位置を設定する横方向移動制限部と、を備えた走行制御装置において、前記横方向移動制限部は、前記先行車両認識部による前記先行車両の認識信頼度が基準以上である場合に前記制限位置として所定位置を設定し、前記認識信頼度が前記基準よりも低い場合に前記制限位置として前記所定位置よりも前記自車両に近い位置を設定することを特徴とする。なお、前記横方向移動制限部は、前記認識信頼度が低くなるほど前記制限位置を前記自車両に近づけるようにしてもよい。
【0009】
本発明では、先行車両の検知精度を、指標すなわち認識信頼度を用いて判定する。本発明によれば、先行車両の検知精度すなわち認識信頼度が低下するに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【0010】
本発明において、前記自車両と前記先行車両との車間距離を検知する車間距離検知部を更に備え、前記横方向移動制限部は、前記車間距離検知部により検知される前記車間距離が基準距離以下である場合に前記制限位置として前記所定位置を設定し、前記車間距離が基準距離よりも大きい場合に前記制限位置として前記所定位置よりも前記自車両に近い位置を設定するようにしてもよい。
【0011】
自車両と先行車両との車間距離が大きくなると、先行車両の検知精度は低くなる。本発明によれば、認識信頼度としての車間距離が大きくなるに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、車間距離が大きくなることによる検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【0012】
本発明において、前記自車両又は前記先行車両が走行する道路の曲がり度合いを検知する曲がり度合い検知部を更に備え、前記横方向移動制限部は、前記曲がり度合い検知部により検知される前記曲がり度合いが基準曲がり度合い以下である場合に前記制限位置として前記所定位置を設定し、前記曲がり度合いが前記基準曲がり度合いよりも大きい場合に前記制限位置として前記所定位置よりも前記自車両に近い位置を設定するようにしてもよい。
【0013】
自車両及び/又は先行車両が走行する道路の曲り度合いが大きくなると、先行車両の検知精度は低くなる。本発明によれば、認識信頼度としての道路の曲り度合いが大きくなるに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、道路の曲り度合いが大きくなることによる検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【0014】
本発明において、前記自車両又は前記先行車両が走行する道路の勾配を検知する勾配検知部を更に備え、前記横方向移動制限部は、前記勾配検知部により検知される前記勾配が基準勾配以下である場合に前記制限位置として前記所定位置を設定し、前記勾配が前記基準勾配よりも大きい場合に前記制限位置として前記所定位置よりも前記自車両に近い位置を設定するようにしてもよい。
【0015】
自車両及び/又は先行車両が走行する道路の勾配が大きくなると、先行車両の検知精度は低くなる。本発明によれば、認識信頼度としての道路の勾配が大きくなるに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、道路の勾配が大きくなることによる検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【0016】
本発明において、前記先行車両認識部により認識される前記先行車両の走行軌跡に自車両が追従するように前記自車両の操舵を制御する軌跡追従制御部を更に備え、前記軌跡追従制御部は、前記制限位置で画定される前記移動範囲内で前記自車両の操舵を制御することも可能である。
【0017】
本発明によれば、自車両が先行車両の走行軌跡を追従する際に、先行車両の検知精度すなわち認識信頼度が低下するに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、先行車両の検知精度すなわち認識信頼度が低下するに応じて制限位置を自車両に近づけることにより、自車両が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、検知精度の低下に起因する自車両の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両を安定して走行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る走行制御装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は軌跡追従制御を行う車両に本発明を適用した走行制御装置10を想定する。
【0021】
[1.走行制御装置10の構成]
図1を用いて本実施形態に係る走行制御装置10の構成を説明する。走行制御装置10は、先行車両92(
図2A等参照)の認識結果に応じて自車両90(
図2A等参照)を制御する制御装置30と、制御装置30で使用される各種情報を検知する各種装置12、14、16、18、20、22、24と、軌跡追従指示スイッチ26と、制御装置30から出力される制御指令に基づいて動作する操舵機構32、駆動機構34、制動機構36と、を備える。
【0022】
カメラ12は、CCDカメラを備える。CCDカメラはルームミラー周辺に設けられる。CCDカメラは自車両90の前方のレーンマーク94や先行車両92等を撮影して画像情報を取得する。レーダ14は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザレーダ等を備える。レーダ14は自車両90のフロント部分、例えばフロントグリル内に設けられる。レーダ14は自車両90の前方に電波を放射し、先行車両92で反射した反射波を検知する。なお、レーダ14の代わりに赤外線センサやカメラ等が用いられてもよい。
【0023】
傾斜センサ16は、水平面に対する自車両90の前後方向の傾斜角度(ピッチ角)を検知する。傾斜センサ16としてはGセンサ等の公知のものが使用される。舵角センサ18はステアリングホイール(ステアリングシャフト)の回転角度を検知する。舵角センサ18は、自車両90が走行する道路の曲がり度合いを検知するものであるが、代わりにヨーセンサや横Gセンサを使用することも可能である。車速センサ20は、自車両90の車速を検知する。例えば、各車輪の回転数から車速を演算する。
【0024】
方向指示装置22は、自車両90の前後両側に設けられるターンランプと、車室内に設けられるレバーと、レバー操作に応じてターンランプを点灯制御する制御部とを備える。
【0025】
ナビゲーション装置24は、GPSアンテナ、GPSレシーバ、加速度センサ、ジャイロ、方位センサ、ナビゲーション用コンピュータ、地図情報等を備え、また、車速センサ20から出力される車速信号を入力する。更に、道路案内情報を表示するディスプレイと、道路案内情報を音声出力するスピーカを備える。ナビゲーション装置24は、自車両90の位置を計測してその位置の道路情報(曲率半径や勾配等)を取得する。ナビゲーション装置24の代わりに道路交通情報通信システム(VICS)(登録商標)のような情報提供システムにより提供される道路情報を取得する端末装置(ビーコンユニット)を使用することも可能である。
【0026】
軌跡追従指示スイッチ26は、自車両90の乗員により操作されるスイッチであり、自車両90の室内に設けられる。軌跡追従指示スイッチ26は、自車両90の乗員により操作されるに応じて軌跡追従制御の開始信号を出力する。
【0027】
制御装置30はECUにより構成される。ECUはマイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU、ROM、RAM等の他に、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置等を有する。ECUはCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部、具体的には周辺情報認識部40、車間距離検知部44、曲率半径検知部46、勾配検知部48、車両制御部50として機能する。また、制御装置30は、自車両90の横方向に制限位置96を設定する際に使用する各種マップ(
図5A〜
図5C)を記憶するマップ記憶部52を備える。ECUは複数に分割してもよく、又は、他のECUと統合してもよい。なお、制御装置30をアナログ回路で構成することも可能である。
【0028】
周辺情報認識部40は、先行車両認識部54と、レーンマーク認識部56と、仮想レーンマーク設定部58からなる。先行車両認識部54は、カメラ12で取得される画像情報に基づいて画像処理を行い、画像から先行車両92を認識するように構成される。認識には公知の処理、例えばテンプレートマッチング等を利用することができる。なお、先行車両92を検知できる他の画像処理を利用してもよい。
【0029】
レーンマーク認識部56は、カメラ12で取得される画像情報に基づいて画像処理を行い、画像からレーンマーク94を認識するように構成される。例えば、レーンマーク94が実線又は破線の場合は、カメラ12で取得される画像情報(原画像)に基づいて微分処理を行い、レーンマーク94のエッジを抽出する。次いでハフ変換を行い、実線又は破線を検知する。レーンマーク94がボッツドッツ等の構造物の場合は、モルフォロジー演算を行う。なお、画像処理によりレーンマーク94を検知する技術は、例えば特開2010−170396号公報に示されるように公知である。なお、レーンマーク94を検知できる他の画像処理を利用してもよい。
【0030】
仮想レーンマーク設定部58は、レーンマーク認識部56によりレーンマーク94が認識されない場合に、仮想レーンマーク94´を設定するように構成される。例えば、所定時間内又は所定走行距離内における先行車両92の横方向の平均位置を求め、その平均位置から左右方向に一定距離だけ離れた位置に仮想レーンマーク94´を設定することができる。先行車両92の平均位置を求める際には、先行車両92の特定部分、例えば背面中心や両側面(エッジ)等を検知するとよい。
【0031】
車間距離検知部44は、レーダ14の検知結果に基づいて自車両90と先行車両92の車間距離Dを検知するように構成される。
【0032】
曲率半径検知部46は、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の曲がり度合いとしての曲率半径Rを検知するように構成される。道路の曲率半径Rは、レーンマーク認識部56で認識されたレーンマーク94により検知することが可能である他、舵角センサ18から出力される情報、又は、ナビゲーション装置24から出力される道路情報から検知することも可能である。なお、曲率半径Rの代わりに曲率1/Rを検知してもよい。更に、ヨーレートや横Gから道路の曲がり度合いを検知するようにしてもよい。
【0033】
勾配検知部48は、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の勾配θを検知するように構成される。道路の勾配θは、傾斜センサ16から出力される情報、又は、ナビゲーション装置24から出力される道路情報から検知することが可能である。
【0034】
自車両90と先行車両92の車間距離Dと、道路の曲率半径Rと、道路の勾配θは、先行車両認識部54における先行車両92の検知精度(認識信頼度)を計る指標となる。これらの指標をまとめて認識信頼度と称する。そして、車間距離検知部44と曲率半径検知部46と勾配検知部48をまとめて認識信頼度検知部42と称する。認識信頼度の詳細については下記[2.認識信頼度]で説明する。
【0035】
車両制御部50は、軌跡設定部60と、横方向移動制限部62と、自車位置判定部64と、横方向制御量演算部66と、縦方向制御量演算部68からなる。本実施形態は軌跡追従制御を行うことから、車両制御部50は軌跡追従制御部とも称する。車両制御部50は、軌跡追従指示スイッチ26から出力される軌跡追従制御の開始信号に応じて動作するように構成される。
【0036】
軌跡設定部60は、先行車両92の走行軌跡を自車両90の走行経路として設定するように構成される。先行車両92の走行軌跡は、先行車両認識部54により認識された先行車両92の特定部分、例えば背面中心や両側面(エッジ)等の位置を順次記憶し、時間順に並べることで設定される。
【0037】
横方向移動制限部62は、カメラ12により撮像される画像に基づいて自車両90の横方向に移動範囲の制限位置96を設定するように構成される。横方向移動制限部62は、レーンマーク認識部56で認識されるレーンマーク94、又は、仮想レーンマーク設定部58で設定される仮想レーンマーク94´を、制限位置96として設定できる最も外側の位置とする。そして、先行車両認識部54による先行車両92の認識信頼度が基準以上である場合に制限位置96としてレーンマーク94(仮想レーンマーク94´を含む)を設定する。一方、認識信頼度が基準よりも低い場合に制限位置96としてレーンマーク94よりも自車両90に近い位置を設定する。近づける距離は制限可変量Aと称し、マップ記憶部52に記憶されるマップ(
図5A〜
図5C)を用いて演算される。
【0038】
自車位置判定部64は、カメラ12で撮像される画像におけるレーンマーク94又は仮想レーンマーク94´の位置と自車両90の形状情報から、自車両90の各位置を判定するように構成される。更に、自車両90の車輪位置又は側面位置と横方向移動制限部62により設定される制限位置96との距離が閾値以下になった場合に、室内に警告を出力するように構成される。警告は、乗員の視覚、聴覚、触覚に訴えるもの、例えばディスプレイ、スピーカ、ステアリング、シートベルト等を使用可能である。
【0039】
横方向制御量演算部66は、自車両90の横方向(幅方向)の移動量、すなわち操舵制御量を演算するように構成される。横方向制御量演算部66は、自車両90の特定部分、例えば車両横方向中心を先行車両92の走行軌跡に合わせるための操舵量を演算し、操舵指令を出力する。また、横方向制御量演算部66は、自車両90が制限位置96を超えたことが自車位置判定部64により判定された場合に、軌跡追従制御を解除する。このとき、自車両90を移動範囲内に戻すための操舵量を演算することも可能である。
【0040】
縦方向制御量演算部68は、自車両90の縦方向(全長方向)の移動量、すなわち加減速制御量を演算するように構成される。縦方向制御量演算部68は、車速に応じた目標車間距離Dtrを演算し、車間距離検知部44で検知した車間距離Dを目標車間距離Dtrにすべく加速制御量又は減速制御量を演算し、加速指令及び減速指令を出力する。また、縦方向制御量演算部68は、自車両90が制限位置96を超えたことが自車位置判定部64により判定された場合に、軌跡追従制御を解除する。
【0041】
マップ記憶部52は、横方向移動制限部62により使用されるマップを記憶する。各マップを
図5A〜
図5Cで示す。各マップについては下記[2.認識信頼度]で説明する。
【0042】
操舵機構32は、電動パワーステアリング等のステアリングを制御する装置を含む。例えば、制御装置30から出力される操舵指令に応じて電動モータを制御する電気回路を含む。
【0043】
駆動機構34はエンジン及び/又は電動モータ等の自車両90の駆動源及び駆動源を制御する周辺装置を含む。例えば、制御装置30から出力される加速指令に応じてスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータや、制御装置30から出力される加速指令に応じて電動モータを制御する電気回路を含む。
【0044】
制動機構36は各車輪に設けられるブレーキ及び各ブレーキを制御する周辺装置を含む。例えば、制御装置30から出力される減速指令に応じてブレーキフルードの液圧を制御するブレーキアクチュエータを含む。
【0045】
[2.認識信頼度]
先ず、
図2A、
図2Bを用いて認識信頼度のひとつである車間距離Dについて説明する。
図2Aで示すように、自車両90と先行車両92の車間距離Dが小さくなるほど認識信頼度は高く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅と同等の幅W1で認識する。一方、
図2Bで示すように、自車両90と先行車両92の車間距離Dが大きくなるほど認識信頼度は低く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅より大きい幅W2で認識する。本実施形態では、認識信頼度としての車間距離Dの基準を基準距離Dsとする。そして、
図2Aで示すように、車間距離Dが基準距離Ds以下である場合に認識信頼度が高いとする。また、
図2Bで示すように、車間距離Dが基準距離Dsより大きい場合に認識信頼度が低いとする。
【0046】
図5Aで示すマップは、制限位置96を求めるための制限可変量Aを車間距離Dに応じて特定するためのものである。
図5Aで示すマップでは、車間距離Dが基準距離Ds以下である場合(認識信頼度が高い場合)に制限可変量Aを0mとし、制限位置96としてレーンマーク94の位置を設定するようにしている。制限位置96をレーンマーク94とすることで、自車両90はレーンマーク94ぎりぎりまで接近することができる。また、
図5Aで示すマップでは、車間距離Dが基準距離Dsより大きい場合(認識信頼度が低い場合)に制限可変量Aを徐々に増加させて、制限位置96をレーンマーク94から自車両90に徐々に近づけるようにしている。すると、自車両90の移動範囲が狭められるため、自車両90の横方向への移動が制限される。車間距離DがD1以上になると、制限可変量Aは最大値A1となる。
【0047】
次に、
図3A、
図3Bを用いて認識信頼度のひとつである道路の曲がり度合い、ここでは曲率半径Rについて説明する。
図3Aで示すように、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の曲率半径Rが大きくなるほど認識信頼度は高く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅と同等の幅W1で認識する。一方、
図3Bで示すように、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の曲率半径Rが小さくなるほど認識信頼度は低く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅より大きい幅W2で認識する。本実施形態では、認識信頼度としての曲率半径Rの基準を基準曲率半径Rsとする。そして、
図3Aで示すように、曲率半径Rが基準曲率半径Rs以上である場合に認識信頼度が高いとし、基準曲率半径Rsより小さい場合に認識信頼度が低いとする。
【0048】
図5Bで示すマップは、制限可変量Aを補正するためのゲインGを曲率半径Rに応じて特定するためのものである。なお、
図5Bにおいて、横軸で示す曲率半径Rは、図面の左側の数値よりも右側の数値の方が小さいものとする。
図5Bで示すマップでは、曲率半径Rが基準曲率半径Rs以上である場合(認識信頼度が高い場合)にゲインGを1倍としている。また、
図5Bで示すマップでは、曲率半径Rが基準曲率半径Rsより小さい場合(認識信頼度が低い場合)にゲインGを徐々に増加させている。曲率半径RがR1以下になると、ゲインGは最大値2倍となる。
【0049】
次に、
図4A〜
図4Dを用いて認識信頼度のひとつである道路の勾配θについて説明する。
図4A、
図4Bで示すように、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の勾配θが小さくなるほど認識信頼度は高く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅と同等の幅W1で認識する。一方、
図4C、
図4Dで示すように、自車両90及び/又は先行車両92が走行する道路の勾配θが大きくなるほど認識信頼度は低く、先行車両認識部54は、先行車両92を車幅より大きい幅W2で認識する。本実施形態では、認識信頼度としての勾配θの基準を基準勾配θsとする。そして、
図4A、
図4Bで示すように、勾配θが基準勾配θs以下である場合に認識信頼度が高いとする。また、
図4C、
図4Dで示すように、勾配θが基準勾配θsより大きい場合に認識信頼度が低いとする。
【0050】
図5Cで示すマップは、制限可変量Aを補正するためのゲインGを勾配θに応じて特定するためのものである。
図5Cで示すマップでは、勾配θが基準勾配θs以下である場合(認識信頼度が高い場合)にゲインGを1倍としている。また、
図5Cで示すマップでは、勾配θが基準勾配θsより大きい場合(認識信頼度が低い場合)にゲインGを徐々に増加させている。勾配θがθ1以上になると、ゲインGは最大値2倍となる。
【0051】
なお、
図5Aで示すマップでは車間距離Dと制限可変量Aとの関係が設定されているが、車間距離DとゲインGとの関係が設定されていてもよい。
図5Bで示すマップでは曲率半径RとゲインGとの関係が設定されているが、曲率半径Rと制限可変量Aとの関係が設定されていてもよい。
図5Cで示すマップでは勾配θとゲインGとの関係が設定されているが、勾配θと制限可変量Aとの関係が設定されていてもよい。
【0052】
認識信頼度として、車間距離Dと曲率半径Rと勾配θの全てではなく、いずれか1つ又は2つが用いられてもよい。また、先行車両認識部54における先行車両92の検知精度を計る他の指標があれば、その指標を用いてもよい。
【0053】
[3.走行制御装置10の処理]
図6を用いて車両走行中に走行制御装置10で実行される処理について説明する。軌跡追従指示スイッチ26が乗員により操作されると、走行制御装置10は軌跡追従制御を開始する。
【0054】
ステップS1にて、車間距離検知部44はレーダ14から出力される検知信号に基づいて自車両90と先行車両92との車間距離Dを検知する。ステップS2にて、カメラ12は自車両90の周辺画像を撮像する。
【0055】
ステップS3にて、先行車両認識部54及びレーンマーク認識部56は画像処理を行う。先行車両認識部54は、先行車両92を認識して先行車両92の横位置を検知する。レーンマーク認識部56は、レーンマーク94を認識してレーンマーク94の位置を検知する。
【0056】
ステップS4にて、レーンマーク94の位置を検知できたか否かが判定される。レーンマーク認識部56がレーンマーク94の位置を検知できた場合はステップS6に移行する。一方、道路にレーンマーク94が存在しない場合又はレーンマーク94が消失している場合に、レーンマーク認識部56はレーンマーク94の位置を検知できない。レーンマーク認識部56がレーンマーク94の位置を検知できなかった場合はステップS5に移行する。
【0057】
ステップS5にて、仮想レーンマーク設定部58は、先行車両認識部54の認識結果に応じて仮想レーンマーク94´を設定する。
【0058】
ステップS6にて、曲率半径検知部46は、レーンマーク認識部56の認識結果、舵角センサ18の検知結果、ナビゲーション装置24の道路情報のうちの少なくとも1つに基づいて道路の曲率半径Rを検知する。勾配検知部48は、傾斜センサ16の検知結果、ナビゲーション装置24の道路情報のうちの少なくとも1つに基づいて道路の勾配θを検知する。
【0059】
ステップS7にて、横方向移動制限部62は、車間距離Dに応じて制限可変量Aを算出する。ここで、横方向移動制限部62は、マップ記憶部52で記憶される車間距離Dと制限可変量Aとのマップ(
図5A参照)を利用して、車間距離Dに対応する制限可変量Aを求める。
【0060】
ステップS8にて、横方向移動制限部62は、道路の曲率半径R及び勾配θに応じて制限可変量Aの補正量(ゲインG)を算出する。ここで、横方向移動制限部62は、マップ記憶部52で記憶される曲率半径RとゲインGとのマップ(
図5B参照)を利用して、ステップS6で検知された曲率半径Rに対応するゲインGを求める。また、横方向移動制限部62は、マップ記憶部52で記憶される勾配θとゲインGとのマップ(
図5C参照)を利用して、ステップS6で検知された勾配θに対応するゲインGを求める。
【0061】
ステップS9にて、横方向移動制限部62は、レーンマーク94(仮想レーンマーク94´含む)及び制限可変量Aに基づいて自車両90の横方向に制限位置96を設定する。ここで、横方向移動制限部62は、ステップS7で求めた制限可変量AにステップS8で求めた2つのゲインGを掛けて、補正後の制限可変量A´を求める。そして、レーンマーク94の位置から制限可変量A´だけ車線内側(自車両90側)に離れた位置に制限位置96を設定する。制限位置96は自車両90の両側に設定される。
【0062】
ステップS10にて、車両制御部50は、制限位置96で画定される移動範囲内で軌跡追従制御を行う。軌跡設定部60は、先行車両92の特定部分の位置を順次記憶し、先行車両92の走行軌跡を設定する。自車位置判定部64は、自車両90の車輪位置又は側面位置を判定する。横方向制御量演算部66は、自車両90の特定部分を先行車両92の走行軌跡に合わせるための操舵量を演算し、操舵指令を出力する。縦方向制御量演算部68は、車間距離Dを車速に応じた目標車間距離Dtrにすべく加速制御量又は減速制御量を演算し、加速指令及び減速指令を出力する。操舵機構32、駆動機構34、制動機構36は各指令に応じて動作する。
【0063】
図7で示すように、自車両90が先行車両92の走行軌跡98を追従する際に、自車両90が制限位置96を超えそうになる場合を想定する。このような場合、自車位置判定部64は運転者に警告を行う。警告後、自車両90が更に制限位置96を超えそうになると、車両制御部50は軌跡追従制御を解除する。このとき、横方向制御量演算部66は自車両90を制限位置96よりも内側に戻すように操舵量を演算し、操舵指令を出力する。操舵機構32は操舵指令に応じて動作して、制限位置96で画定される移動範囲内に自車両90を維持する。
【0064】
但し、方向指示装置22のレバーが操作されて、自車両90の両側に設定される制限位置96のうち自車両90が接近する制限位置96の方向と同一方向のターンランプが点滅している場合は、軌跡追従制御がそのまま継続される。
【0065】
[4.本実施形態のまとめ]
本実施形態の走行制御装置10は、自車両90の周辺の画像を撮像するカメラ12(撮像部)と、カメラ12により撮像される画像から先行車両92を認識する先行車両認識部54と、カメラ12により撮像される画像に基づいて自車両90の横方向に移動範囲の制限位置96を設定する横方向移動制限部62と、を備える。横方向移動制限部62は、先行車両認識部54による先行車両92の認識信頼度が基準以上である場合に制限位置96としてレーンマーク94(所定位置)を設定する。一方、認識信頼度が基準よりも低い場合に制限位置96としてレーンマーク94よりも自車両90に近い位置を設定する。
図2Aで示すように、横方向移動制限部62は、認識信頼度が低くなるほど制限位置96を自車両90に近づける。
【0066】
走行制御装置10は、自車両90と先行車両92との車間距離Dを検知する車間距離検知部44を備える。そして、横方向移動制限部62は、車間距離検知部44により検知される車間距離Dが基準距離Ds以下である場合に制限位置96としてレーンマーク94を設定する。一方、車間距離Dが基準距離Dsよりも大きい場合に制限位置96としてレーンマーク94よりも自車両90に近い位置を設定する。
【0067】
走行制御装置10は、自車両90又は先行車両92が走行する道路の曲率半径R(曲がり度合い)を検知する曲率半径検知部46(曲がり度合い検知部)を備える。そして、横方向移動制限部62は、曲率半径検知部46により検知される曲率半径Rが基準曲率半径Rs以上である場合(曲率が基準曲率以下の場合)に制限位置96としてレーンマーク94を設定する。一方、曲率半径Rが基準曲率半径Rsよりも小さい場合(曲率が基準曲率より大きい場合)に制限位置96としてレーンマーク94よりも自車両90に近い位置を設定する。
【0068】
走行制御装置10は、自車両90又は先行車両92が走行する道路の勾配θを検知する勾配検知部48を備える。そして、横方向移動制限部62は、勾配検知部48により検知される勾配θが基準勾配θs以下である場合に制限位置96としてレーンマーク94を設定する。一方、勾配θが基準勾配θsよりも大きい場合に制限位置96としてレーンマーク94よりも自車両90に近い位置を設定する。
【0069】
走行制御装置10は、先行車両認識部54により認識される先行車両92の走行軌跡98に自車両90が追従するように自車両90の操舵を制御する車両制御部50(軌跡追従制御部)を備える。軌跡追従制御部50は、制限位置96で画定される移動範囲内で自車両90の操舵を制御する。
【0070】
走行制御装置10では、先行車両92の検知精度を、指標すなわち認識信頼度、具体的には、車間距離D、道路の曲率半径R、道路の勾配θ、を用いて判定する。走行制御装置10によれば、先行車両92の検知精度すなわち認識信頼度が低下するに応じて制限位置96を自車両90に近づけることにより、自車両90が移動できる許容範囲を狭めることができる。すると、検知精度の低下に起因する自車両90の横方向への誤った移動を早めに停止させることができる。このため、自車両90を安定して走行させることができる。
【0071】
[5.他の実施形態]
上記実施形態は、軌跡追従制御を行う車両に本発明を適用した走行制御装置10である。これに限らず、例えば、路外逸脱抑制機能を備えた車両に本発明を適用することも可能である。特に、先行車両92を認識結果に応じて仮想レーンマーク94´を設定し、この仮想レーンマーク94´を利用して路外逸脱抑制制御を行う車両に適用できる。
【0072】
仮想レーンマーク94´を利用して路外逸脱抑制制御を行う車両は、仮想レーンマーク94´を自車両90の移動範囲の制限位置96とし、自車両90が仮想レーンマーク94´を超えることが予測される場合に予め警告を発する。それでもなお、自車両90が仮想レーンマーク94´を超えそうになった場合に、操舵機構32を制御して、自車両90の車線逸脱を抑制する。
【0073】
本発明を、仮想レーンマーク94´を利用して路外逸脱抑制制御を行う車両に適用した場合、認識信頼度に応じて制限位置96を仮想レーンマーク94´から自車両90に近づけるようにすることができる。