(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のサイドピークのそれぞれは、最大値MX並びに第1及び第2の最小値m1及びm2によって規定され、前記第2の絞り装置は、第1のサイドピークのそれぞれにおける前記最大値MXと前記第2の最小値m2との間の前記第2の強度プロファイルを切り取るように構成される、請求項10から14の何れか1項に記載のレーザアニーリングシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レーザ光線の狭い中央部分のみを使用することは、残念ながら、光線のそれ以外の90%は破棄することを意味する。これは、高強度のレーザ光線を非常に非効率に使用する方法である。他方では、光線の中央からの距離が大きくなるに伴ってガウス光線の強度が実質的に低下するため、ガウス光線のより大部分を通過させようとすると、線画像がその長さに沿って必然的に不均一になるということが、一般的に知られている。
【0009】
さらに、欠陥アニールとスパイクアニールとを同時に実行することに利点があるという点には実用性がある。この点で、CO
2レーザ光線は、一般的にはダイオードレーザからのより幅広いレーザ光線と組み合わされる。より幅広いレーザ光線は、周辺領域の温度を、CO
2光線よりも長期間にわたって中間温度にまで上昇させる。CO
2光線は、ミリ秒以下の時間で、表面を約1300℃に「急上昇(スパイク)させる」のに使用される。一般的には、より幅広いレーザ光線は、数ミリ秒の時間で(例えば、2ミリ秒から20ミリ秒の範囲内で)、領域を700℃から1200℃の間の中間温度に加熱するであろう。この温度及びこの期間で基板を加熱するためにダイオードレーザに必要とされる全出力は大きく、例えば、一般的には数キロワット(kW)である。これら2つのレーザ光線を合わせることは、一般的に難易度が高い。従来のシステムでは、CO
2レーザ光線及びダイオードレーザ光線は、半導体ウエハにレーザ光線を送るのに必要とされる光学が大きく異なっているため、同一線上にない。
【0010】
これに加え、レーザアニーリングツールの設計では、半導体ウエハの側壁に入射するレーザ光線を回避するという大きな制約がある。レーザ光線は、ブルースター角(偏光角)で半導体ウエハの表面に入射する。ブルースター角は、シリコンについて約70度である。この入射角では、半導体ウエハの側面での出力密度は、半導体ウエハの表面における出力密度の3倍よりも大きく、半導体ウエハに損傷を与えたり、半導体ウエハを破壊させたりもする。米国特許第8,071,908号公報には、鋸歯状の裾(skirt)が、入射CO
2レーザ光線で半導体ウエハの側壁を保護できることが開示されている。しかし、追加の(ダイオード)レーザも、半導体ウエハの側壁を避ける必要がある。これは、ダイオードレーザは、一般に、例えば3kWの大きな出力量を供給するためである。一方向から入射するCO
2レーザ、及びCO
2レーザから公称90度の角度で入射するダイオードレーザからウエハを保護するために裾(skirt)を設計するには、幾何学上非常に制約のある問題が伴うことがわかる。そのため、費用及び/又は時間を要する工程を経ることなく、これほどの高出力のダイオードレーザを使用して半導体ウエハの損傷又は破壊を避けるのは、実現不可能となる。
【0011】
上記の手法のさらなる欠点は、「パターン効果」から生じる。パターン効果は、半導体ウエハ上のパターンに起因して起こる温度不均一性である。パターンは、装置の特性、及び形成される相互接続である。パターン効果は、レイリー散乱によって引き起こされるため、入射レーザがより短い波長を有するとき(すなわち、可視光の波長に近いとき)、さらに顕著となる。レイリー散乱は、波長λで割られて、第4の出力、例えば(δ/λ)
4にまで高められた特性又はパターンサイズδの比率として見積もられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の局面は、CO
2レーザで欠陥アニーリングを実行するシステム及び方法である。一方、他の局面は、可視波長ダイオードレーザ(「可視ダイオードレーザ」)を使用してレーザスパイクアニーリングを実行することをさらに含む。レーザスパイクアニーリングと同時に実行される欠陥アニーリングに関して、CO
2レーザは、半導体ウエハの表面の主要な温度上昇(例えば、少なくとも欠陥アニール温度までの温度上昇)をもたらすために使用され、可視ダイオードレーザは、さらなる加熱を行って、局所温度をアニール(すなわち、ドーパント活性化)温度まで上昇させるために使用される。一例では、ダイオードレーザによってもたらされる温度上昇量は、できるだけ小さい。これは、好都合である。なぜなら、CO
2レーザの波長は、可視ダイオードレーザの波長よりもおよそ10倍から20倍長いからである。したがって、CO
2レーザによる有害なパターン効果は、可視ダイオードレーザと比較して、大幅に小さい。本方法は、欠陥アニーリングに関する初期の比較的長期間にわたる温度上昇のためにCO
2レーザを使用し、その後、比較的短いスパイクアニーリング、すなわち、ドーパント活性化に可視ダイオードレーザを使用することを含む。このためには、半導体ウエハに供給されるCO
2レーザの出力が、実質的に、例えば、2000Wから3000W(すなわち、2kWから3kW)の範囲内にありつつ、使用可能な光線長(例えば、5mmから100mmの範囲内)及び光線幅(例えば、25μmから1mmの範囲内)に対して、例えば、±5%以内の許容強度均一性も有する必要がある。未処理のCO
2レーザ光線は、必要とされる出力を供給することができるであろうが、使用可能な光線長に対して必要な強度均一性を提供することのできないガウス強度プロファイルを有するであろう。
【0013】
有害なパターン効果を緩和することに加え、本明細書中に開示されたシステム及び方法の他の利点は、可視波長光線から半導体ウエハの側壁に入射する出力密度も減少する(例えば、kWを下回る値にまで減少する)ことにある。これにより、半導体ウエハの端部又は側壁への照射に起因した半導体ウエハの損傷又は破壊のリスクを減少させることができる。
【0014】
本開示の一局面は、パターンを含む表面を有する半導体ウエハの欠陥アニール温度T
Dにおける欠陥アニーリングを実行する方法である。この方法は、CO
2レーザから、公称10.6ミクロンの波長及び少なくとも第1の方向においてガウス分布を有する第1の強度プロファイルを有する光線を形成することと、前記第1の方向に前記光線の少なくとも50%を通過させて第1の透過光を形成することと、中間焦点面に前記第1の透過光の焦点を合わせ、中央ピーク及び前記中央ピークと直接隣接する第1のサイドピークを有する第2の強度プロファイルを規定することと、前記第1のサイドピークのそれぞれの範囲内で前記第2の強度プロファイル(の端部)を切り取って、2000Wから3000Wの間の光学出力、及び5mmから100mmの範囲の第1の線長さに対して±5%以内の強度均一性を有する第1の線画像を前記半導体ウエハの表面に形成する第2の透過光を規定することと、前記第1の線画像を前記半導体ウエハの表面上で走査し、前記半導体ウエハの表面温度を、前記欠陥アニール温度T
Dまで局所的に上昇させることとを備える。
【0015】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記欠陥アニール温度T
Dは、650℃≦T
D≦1100℃の範囲内にある。
【0016】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、スパイクアニール温度T
Aでスパイクアニーリングを実行することをさらに備える。スパイクアニーリングは、可視波長を有する第2の光線を使用して前記半導体ウエハの表面に、前記第1の線画像と少なくとも部分的に重なる第2の線画像を形成することと、前記第2の線画像を走査して、前記半導体ウエハの表面の温度を、前記欠陥アニール温度T
Dからスパイクアニール温度T
Aに局所的に上昇させることによって実行される。
【0017】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記スパイクアニール温度T
Aは、1150℃≦T
A≦1350℃の範囲内にある。
【0018】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記第1の線画像は、第1の幅を有し、前記第2の線画像は、前記第1の幅の5%から25%の第2の幅を有する。
【0019】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記第1の幅は、25ミクロンから1mmの範囲内にある。
【0020】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、レーザダイオード光源と、前記レーザダイオード光源に対して動作可能に配置された線形成光学とを使用して前記第2の光線を形成することをさらに備える。
【0021】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記可視波長は500nmから1000nmである。
【0022】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記第2の線画像は、5mmから100mmの範囲にある第2の線長さ、及び、±5%以内の強度均一性を有する。
【0023】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記半導体ウエハの表面の温度は、パターン効果に起因した前記スパイクアニール温度T
Aの変動を有し、前記変動は、60℃未満(60℃以下)である。
【0024】
本開示の他の局面は、パターンを伴う表面を有する半導体ウエハの欠陥アニーリングを実行するためのシステムである。本システムは、CO
2レーザ源と、光線調整光学システムと、第1の絞り装置と、中継光学システムと、チャックと、可動ウエハ台とを備える。前記CO
2レーザ源は、公称10.6ミクロンの波長を有する初期光線を発する。前記光線調整光学システムは、前記初期光線を受光し、前記初期光線から、少なくとも第1の方向においてガウス分布を有する第1の強度プロファイルを有する調整光線を形成する。前記第1の絞り装置は、対物面に動作可能に配置され、第1の透過光を規定するために、前記第1の方向における前記第1の強度プロファイル(の端部)を切り取る第1のスリット開口部を規定する。前記第1の透過光は、前記調整光線の少なくとも50%を構成する。前記中継光学システムは、前記対物面を規定するとともに、中間焦点面も規定する。前記中間焦点面には、第2の絞り装置が動作可能に配置される。前記中継光学システムは、前記中間焦点面において、中央ピーク及び前記中央ピークに直接隣接する第1のサイドピークを有する第2の強度プロファイルを規定する。前記第2の絞り装置は、前記第1の方向において前記第1のサイドピークのそれぞれの範囲内で前記第2の強度プロファイルを切り取って、第2の透過光を規定するように構成される。前記中継光学システムは、前記半導体ウエハの表面において、前記第2の透過光から第1の線画像を形成する。前記第1の線画像は、2000Wから3000Wの光学出力を含み、5mmから100mmの範囲の第1の線長さを有し、かつ、±5%以内の強度均一性を有する。前記チャックは、前記半導体ウエハに動作可能に支持される。前記可動ウエハ台は、前記チャックを動作可能に支持し、前記チャック及び前記チャックの上に支持される前記半導体ウエハを動かすように構成される。これにより、前記第1の線画像は、前記半導体ウエハの表面を走査し、前記半導体ウエハの表面温度を欠陥アニール温度T
Dにまで局所的に上昇させる。
【0025】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記欠陥アニール温度T
Dは、650℃から1100℃の範囲内にある。
【0026】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記チャックは加熱され、前記半導体ウエハを予熱できるようにする。
【0027】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、可視光線を発生させるダイオード系線形成光学システムをさらに備える。前記可視光線は、前記半導体ウエハの表面において第2の線画像を形成する。前記第2の線画像は、前記第1の線画像と少なくとも部分的に重なって前記第1の線画像とともに走査し、前記半導体ウエハの表面温度を、前記欠陥アニール温度T
Dからスパイクアニール温度T
Aに局所的に上昇させ、前記第2の線画像は、±5%以内の強度変動を有する。
【0028】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記スパイクアニール温度T
Aは、1150℃から1350℃の範囲内にある。
【0029】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記第1及び第2の線画像は、第1の幅及び第2の幅をそれぞれ有し、前記第2の幅は、前記第1の幅の5%から25%の範囲内にある。
【0030】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記第1のサイドピークのそれぞれは、最大値MX並びに第1及び第2の最小値m1及びm2によって規定される。前記第2の絞り装置は、第1のサイドピークのそれぞれにおける前記最大値MXと前記第2の最小値m2との間の前記第2の強度プロファイルを切り取るように構成される。
【0031】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記中継光学システムは、前記第1の方向において実質的に1倍(1×)倍率を有する。
【0032】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記中継光学システムは、前記第1の方向においてのみ光学出力を有する円筒形状の光学システムである。
【0033】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記中継光学システムは、反射光学部品のみで構成される。
【0034】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記第1の絞り装置は、前記対物面に動作可能に配置された一対のブレードを含む。
【0035】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記第2の絞り装置は、前記中間焦点面に動作可能に配置された一対のブレードを含む。
【0036】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記ダイオード系線形成光学システムは、レーザダイオード光源と、前記レーザダイオード光源に対して配置された線形成光学とを含む。
【0037】
さらなる特徴点及び利点は、以下の詳細な説明に明記される。また、それらの一部は詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面に記載された実施形態を実施することによって認識されるであろう。上記の概要及び下記の詳細な説明に関する記載は、単なる例示であって、特許請求の範囲に記載されている本発明の本質及び特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以降、本開示の様々な実施形態、および、添付の図面に示される複数の例について詳述する。可能な限り、同一または類似の部分の図では、同一または類似の参照番号および参照符号が用いられる。図面には決まった縮尺がなく、当業者であれば、図面は本発明の主要な部分を説明するために簡略化されていることに気づくであろう。
【0040】
下記の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に組み込まれると共にその一部を構成する。
【0041】
いくつかの図面において、参考のためにデカルト座標が描かれているが、これは方向および配置位置を限定するものではない。さらに、第2の絞り装置60におけるデカルト座標は、x’及びy’で表され、第1の絞り装置40及び画像面IPにおける(x,y)座標とは区別される。
【0042】
以下の記述では、「レーザ光線」及び「光」との用語は、互換可能に使用される。また、「ミクロン」及び符号「μm」との用語は、互換可能に使用される。
【0043】
「上流」及び「下流」との用語は、従来の光学システム設計技術で用いられるように、光の進行方向に対する部品の位置を言及するために用いられる。ここで、部品Bが部品Aの下流にあるというとき、部品Aから部品Bの方向へ光は進む。逆もまた同様である。
<線形成光学システム>
【0044】
図1は、本開示による線形成光学システム(「システム」)10の一例の模式図である。システム10は、光軸A1、対物面OP、及び画像面IPを含む。後述するように、線画像80は画像面IPに形成される。
【0045】
システム10は、光軸A1に沿って、対物面OPの上流にレーザ光源20を含む。レーザ光源20は、光軸A1に沿って対物面OPへ向かって初期レーザ線(光線)22を放射する。一例では、レーザ光源20は、CO
2レーザを含む。CO
2レーザは、公称波長10.6μmで動作する。初期レーザ光線22は、一例では、少なくともx方向に沿って、さらなる例では、x方向及びy方向の両方向に沿って、ガウス強度分布(プロファイル)を有する。一例では、初期レーザ光線22は、円対称である必要はない。例えば、x方向及びy方向におけるガウス強度分布は、異なる寸法を有してもよい。一例では、レーザ光源20は、初期レーザ光線22において約3500Wの光学出力を有する。
【0046】
また、システム10は、光線調整光学システム30を含む。光線調整光学システム30は、レーザ光源20と対物面OPとの間において光軸A1に沿って配置されている。光線調整光学システム30は、初期レーザ光線22を受光して、初期レーザ光線22から調整レーザ線(光線)24を形成するように構成されている。一例では、光線調整光学システム30は、光線拡張を実行するように構成される。そのため、調整レーザ光線24は、初期レーザ光線22を拡張したものとなる。一例では、光線調整光学システム30は、x方向及びy方向での選択寸法(プロファイル)を伴う調整レーザ光線24を供給するように構成される。一例では、光線調整光学システム30は、初期レーザ光線22の寸法を、x方向及びy方向に同じ量だけ拡張する。
【0047】
光線調整光学システム30は、ミラー、レンズ、絞り(開口)、及び同等の光学部品のうちの少なくとも一つを含み得る。一例の光線調整光学システム30は、2つ以上の軸外ミラー(軸外し)を利用する。各軸外ミラーは、当該技術分野で公知であり、米国特許第2,970,518号及び第3,674,334号に記載の2つの例のような光学出力を有する。種々の例では、光線調整光学システム30は、アナモルフィック、円筒状、あるいは円対称であり得る。
【0048】
一実施形態では、レーザ光源20及び光線調整光学システム30は、レーザ光源システム35を規定する。レーザ光源システム35は、調整レーザ光線24が線画像80を形成するための所望の強度プロファイルI(x,y)を生成する。レーザ光源20が、調整される必要のない適切な初期レーザ光線22を放射する例では、光線調整光学システム30は必要ではなく、調整レーザ光線24の代わりに初期レーザ光線22を使用することができる。そのため、以下の記述において、調整レーザ光線24は、未処理の初期レーザ光線22で規定される例であると理解される。
【0049】
また、システム10は、光軸A1に沿って、対物面OPに第1の絞り装置40を含む。一例では、第1の絞り装置40は、端部43をそれぞれ有する一対のブレード42であるか、該一対のブレード42を含む。ブレード42は、対物面OPにおいて光軸A1のそれぞれの側に配置される。これにより、それぞれの端部43は、離間して対向し、スリット開口部44を形成する。スリット開口部44は、拡大差し込み
図IN1で最も良く図示されるように、Y方向に長さ(長手)寸法を有する。拡大差し込み
図IN1は、+z方向に光軸A1を見下ろすようにして第1の絞り装置40を示す。スリット開口部44は、x方向に幅d1を有する。幅d1は、後述するように、システム10によって画像面IPに形成された線画像80の長さLを規定する。一例では、ブレード42は、移動可能であり、幅d1を調整することができるだけでなく、それに伴って線画像80の長さLを調整することができる。
【0050】
また、システム10は、光軸A1に沿って、第1の絞り装置40の下流に中継光学システム50を含む。
図1に示す中継光学システム50は、説明を容易にするために伝送(透過)光学システムとして図示される。反射中継光学システム50の一例は、
図5と関連させて後述される。中継光学システム50は、第1の光学部品52A及び第2の光学部品52Bを含む。一例では、各光学部品52A及び52Bは、レンズ、ミラーなどの一つ以上の光学素子で構成される。中継光学システム50は、第1の絞り装置40において対物面OPを規定するとともに、線画像80が形成される画像面IPも規定する。
【0051】
中継光学システム50は、第2の絞り装置60をさらに含む。第2の絞り装置60は、光学部品52Aによって規定される中間焦点面IFPにおいて、第1の光学部品52Aと第2の光学部品52Bとの間に配置される。第2の拡大差し込み
図IN2を参照すると、第2の絞り装置60は、端部63をそれぞれ有する一対のブレード62を含む。ブレード62は、中間焦点面IFPにおいて、光軸A1のそれぞれの側に配置される。これにより、各端部63は、離間して対向し、スリット開口部64を形成する。スリット開口部64は、y’方向、すなわち、第1の絞り装置40のスリット開口部44と同じ方向に、長さ(長手)寸法を有する。スリット開口部64は、x’方向に幅d2を有する。一例では、ブレード62は移動可能であり、幅d2を調整することができる。
【0052】
一実施形態では、中継光学システム50は、x−z面に実質的に単位倍率(すなわち、実質的に1倍(1×)システムである)を有する。また一例では、中継光学システム50は、円筒状又はアナモルフィックの何れかでありうる。第1の絞り装置40のスリット開口部44の幅d1は、x方向における調整レーザ光線24の寸法を規定する。x−z面における1倍倍率では、d1=Lとなる(拡大差し込み
図IN3参照)。
【0053】
システム10の一般的な操作では、調整レーザ光線24が形成され、第1の絞り装置40は、この調整レーザ光線24の比較的大部分の光量がスリット開口部44を通過するように構成される。
図2Aは、第1の絞り装置40の(+z方向に見た)正面図であり、調整レーザ光線24の近似ゼロ強度曲線(I(x、y)≒0)を示す。一例では、調整レーザ光線24は、x方向により長い(すなわち、強度プロファイルI(x,y)がx方向に延びている)プロファイルで、x方向及びy方向にガウスプロファイルを有する。上述のように、y方向のガウスプロファイルの幅w1は、線画像80の幅w(短手寸法)を規定する。一例では、幅w1は、y−z面に光学出力を有しない中継光学システム50(すなわち、中継光学システム50は、x−z面のみに光学出力を有する円筒形である)とともに、光線調整光学システム30によって規定される。これは、光線調整光学システム30を使用することの利点の一つである。なぜなら、アナモルフィック素子を使用して第1の光学部品52A及び第2の光学部品52Bを形成する必要性がなくなるためである。
【0054】
図2Bは、調整レーザ光線24のx(mm)に対する強度I(x)のプロット図である。また
図2Bは、調整レーザ光線24に対する第1の絞り装置40のブレード42の配置例を示す。
図2Aにおいて調整レーザ光線24のハッシュされた部分24Bは、各ブレード42によって遮断される調整レーザ光線24の部分を示す。一方、スリット開口部44を通過する部分は24Pで示され、以下では、「第1の透過光」と呼ぶ。第1の透過光は、
図2Bにおいても図示される。
図2Bでは、強度プロファイルI(x)の破線部分が、各ブレード42によって遮断される調整レーザ光線24の部分を示す。
図2A及び
図2Bに示す例では、調整レーザ光線24の約90%の光が第1の透過光24Pとしてスリット開口部44を通過する一方、強度プロファイルの両翼にある調整レーザ光線24の約10%の光が、ブレード42によって遮断される。一例では、第1の絞り装置40は、調整レーザ光線24の少なくとも50%を通過させるように構成される。
【0055】
第1の絞り装置40は、調整レーザ光線24の実質的な部分を通過させるように構成されているため、スリット開口部44内の強度プロファイルI(x)の変動は比較的大きい。一例では、この変動は50%よりも大きく、また他の例では、この変動は65%よりも大きく、さらに他の例では、この変動は70%よりも大きい。このことは、
図2Bにおいて最も明確に示される。
図2Bでは、(標準化された)ピーク強度は、スリット開口部44の中心において(すなわち、x=0において)1である。また、ブレード42の端部43によって規定されるスリット開口部44の端部43では、強度は、約0.28、すなわち、I(x)の最大値の約28%にまで低下する。この強度分布が従来の中継手段を用いて画像面IPへ中継されると、線画像80は、長手方向において強度均一性の対応する変動(約72%)を有するであろう。この値は、線画像80の長さLについて、+/−5%(±5%)以内、あるいは、ある場合には±2%以内というより好ましい強度均一性を大幅に超えている。
【0056】
再び
図1を参照すると、スリット開口部44を通過する第1の透過光(伝達光)24Pは、第2の絞り装置60上で、中継光学システム50の第1の光学部品52Aによって中間焦点面IFPに焦点合わせされる。中間焦点面IFPは、第1の絞り装置40における(x,y)座標とは別の座標x’及びy’を有する。このような焦点合わせにより、第2の強度分布I’(x’,y’)が得られる。第2の強度分布I’(x’,y’)は、対物面OPでの強度分布I(x,y)の(x’方向の)1次元フーリエ変換によって規定される。したがって、中間焦点面IFPはフーリエ面であり、以下の説明では、フーリエ変換工程はF{・}で表され、逆フーリエ変換工程はF
−1{・}で表される。
【0057】
対物面OPでの強度分布I(x)は、((d1)/2=aとともに)
I(x)=G(x)・rect(x/a)
で規定される。ここで、rect(x/a)は、0(|x|>aの場合)、1/2(x=aの場合)、及び、1(|x|<aの場合)であり、G(x)=exp(−x
2)である。したがって、I’(x)は、
【数1】
で求められる。
【0058】
図3Aは、第2の絞り装置60における第1の透過光24Pのx’(mm)に対する強度分布I’(x’)のプロット図である。
図3Bは、
図1の第2の絞り装置60を−z方向に見た場合の正面図である。
図3Bを参照すると、ブレード62は、第2の絞り装置60に入射する第1の透過光24Pの一部がスリット開口部64を通過し、第1の透過光24Pのハッシュされた部分24B’のそれぞれがブレード62によって遮断されるように、配置される。スリット開口部64を通過する部分は、24P’で表され、以下では「第2の透過光」とも呼ばれる。第2の透過光24P’は、中継光学システム50の下流部分で、線画像80を形成するために使用される。
【0059】
図3Aは、ブレード62が、第2の透過光24P’の選択量を透過させるために、選択幅d2に設定され得ることを詳細に示す。強度プロファイルI’(x)は、多くのより小さなピークによって囲まれた強い中央ピークP0を示す。より小さなピークは、プロファイルの中心からの大きさが小さくなる。中央ピークP0のそれぞれの側にある第1ピークは、P1で示され、第1の最小値m1及び第2の最小値m2によって囲まれた最大値MXによって規定される。一例では、スリット開口部64は、幅d2を有するように規定される。ここで、ブレード62の各端部63は、対応する第1ピークP1内に存在し、これにより、スリット開口部64は、第1ピークP1に関連した第1の透過光24Pの少なくとも一部24P’を透過させる。
【0060】
他の例では、第2の絞り装置60は、ブレード62の端部63が、最大値MXと第2の最小値m2との間の対応する第1ピークP1内に存在するように構成されている。例えば、x軸の正側のx値が、最大値MXについてのx
MX及び第2の最小値m2についてのx
m2で規定され、端部63のx位置が、x
63で規定されると、正側ブレード62の端部63の位置条件は、x
MX≦x
63≦x
m2で表すことができる。負側ブレードの端部63の対応する条件は、−x
m2≦−x
63≦−x
MXで表すことができる。この空間フィルタリング条件は、例えば、長さL上で長手方向に測定された場合に±5%以内という強度非均一性の許容レベルとともに、線画像80の形成について最良の結果をもたらすことが確認された。
【0061】
一例では、中間焦点面IFPにおいて第2の絞り装置60によって遮断される第1の透過光24Pの量は、約5から8%である。これにより、第1の透過光24Pの約95から92%が透過して、第2の透過光24P’が形成される。これにより、中継光学システム50は、入力値、又は、対物面OPに供給される強度に対して最大約75%の効率で画像面IPに線画像80を形成することができる。これに対して、従来技術の効率は、約15%である。
【0062】
さらに、長手方向(すなわち、x方向)の線画像80の強度均一性は、一例では、長手方向の長さLにわたって±5%の公差を満たすことができ、また他の例では、±2%の公差を満たし得る。
【0063】
線画像80は、第2の透過光24P’を用いて画像面IPに形成される。このx方向における第2の透過光24P’は、I’(x’)の切り取りタイプとして規定され、以下のように示される。
【数2】
そして、線画像80の強度分布IL(x)は、I(x’)の1D逆フーリエ変換である。すなわち、IL(x)=F
−1{I’(x’)}となる。
【0064】
図3Aから、第2の絞り装置60が、上記のI’(x’)の表現において1D“rect(矩形)”関数を規定し、x’軸に沿ったより高い空間周波数成分の選択量を除去するように機能することがわかる。これらのより高い空間周波数成分は、高解像度の線画像を形成するために必要とされる。高解像度の線画像は、第1の絞り装置40における入力(調整)レーザ光線24の強度変動を含む。そのため、第2の絞り装置60によるフィルタリングは、線画像80の長手方向における強度変動を取り除くように作用する。他方では、これらのより高い空間周波数成分の強度は比較的低いため、第1の透過光24Pの大部分は、スリット開口部64を通り、第2の透過光24P’を形成する。
【0065】
図4Aは、画像面IPにおける線画像80の長手方向でのx(mm)に対する強度プロファイルIL(x)のプロット図である。
図4Aは、例として、システム10によって形成されたL=10mm(実線)及びL=7.5mm(破線)という2つの異なる寸法を有する線を示す。一例では、線画像80の長さLは、5mm≦L≦100mmの範囲内であり得る。
【0066】
図4Bは、y(μm)に対する強度プロファイルIL(y)のプロット図である。
図4Bは、線画像80の短手方向(すなわち、y方向)の強度プロファイルIL(y)が、約75μmの幅wの一例を規定するガウス形状を有することを示す。一実施形態では、幅wは、25μm≦w≦1000μm、又は25μm≦w≦500μmm、あるいは25μm≦w≦250μmの範囲内であり得る。上述の通り、一例では、幅wは、光線調整光学システム30によって規定され、これにより、中継光学システム50はY−Z面で光学出力を持たない円筒形となり得る。
【0067】
線画像が短手方向、すなわち、y方向に走査される場合、線画像80の短手寸法における強度プロファイルIL(y)は、長手寸法における強度分布IL(x)と同じ均一性の公差を満たす必要はない。この場合、y方向の強度変動は、走査中に平均化される。
図4BのIL(y)のプロット図では、線画像80は、y方向に約±10%の強度変動を有する。
<反射中継光学システム>
【0068】
図5は、システム10の一例の模式図である。このシステム10は、反射中継光学システム50及び折り返しミラー光学システム90を含む。折り返しミラー光学システム90は、画像面IPに配置されたウエハWの表面WSへ線画像80を方向付けるために用いられる。反射中継光学システム50は、軸外構造に配置された凹面ミラーの形態の第1の光学部品52A及び第2の光学部品52Bを含む。また、中継光学システム50は、折り返しミラーF1,F2、及びF3を含む。折り返しミラーF1,F2、及びF3は、第1の透過光24Pの光路を折り返すように機能する。第1の透過光24Pの光路は、対物面OPで第1の絞り装置40を通過する。折り返しミラーF2は、第2の絞り装置60の背面に配置される。この結果、第1の透過光24Pは、第2の絞り装置60に入射する。中央部分24P’のみが、折り返しミラーF2によって反射され、中継光学システム50の残りの部分を通過する。このように、一例の中継光学システム50は、反射光学部品で構成され、屈折光学部品を有さない。このような構成は、レーザ光源20が、例えば、公称10.6μmのCO
2レーザ波長などの赤外波長で動作する場合に望ましい。
【0069】
この第2の透過光24P’は、折り返しミラーF3によって反射され、第2の光学部品52Bへ方向付けられる。第2の光学部品52Bは、第2の透過光24P’を折り返しミラー光学システム90へ方向付ける。折り返しミラー光学システム90は、少なくとも一つの折り返しミラーF4を含む。一例では、折り返しミラー光学システム90は、平行でない対物面OP及び画像面IPを補償するように構成され、これにより、線画像80はウエハWの表面WSに適切に画像化される。
<レーザアニーリングシステム>
【0070】
図6は、レーザアニーリングシステム100の一例の模式図である。このレーザアニーリングシステム100は、本明細書中に開示される線形成光学システム10を含む。線形成光学システム10の使用に適したレーザアニーリングシステムの例は、例えば、米国特許第7,612,372号、第7,514,305号、第7,494,942号、第7,399,945号、第7,154,066号、第6,747,245号、及び第6,366,308号に記載される。
【0071】
図6のレーザアニーリングシステム100は、光軸A1に沿って、上述の線形成光学システム10を含む。このレーザアニーリングシステム100において、レーザ光源20によって放射される初期レーザ光線22(
図1も参照)は、選択条件において吸収され、ウエハWを加熱することのできる波長(例えば、CO
2レーザからの公称10.6ミクロン)を有する。このような条件には、例えば、ウエハWを加熱することや、あるいは、ウエハWの半導体バンドギャップエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する第2の放射線ビーム(図示せず)でウエハWを照射することが含まれる。これにより、ウエハWは、ウエハWをアニーリング温度にまで加熱することができる程度に、初期光線22を吸収できる。第2のレーザ光源によってウエハWを照射してウエハWに初期光線22を吸収させる一例は、米国特許第7,098,155号、第7,148,159号、第7,482,254号に記載される。
【0072】
ウエハWは、上面112を有するチャック110によって支持される。一例では、チャック110は、ウエハWを加熱するように構成される。続いてチャック110は、ステージ120に支持され、さらにステージ120は、プラテンに支持される(図示せず)。一実施形態では、チャック110はステージ120に組み込まれる。他の実施形態では、ステージ120は移動可能であり、例えば、平行移動可能及び回転可能である。一例では、チャック110は、例えば、数百度程度にウエハWを予熱するために使用される。
【0073】
ウエハWは、ソース領域150S及びドレイン領域150Dの形態でデバイス特徴部DFを有する例によって示される。ソース領域150S及びドレイン領域150Dは、ウエハWに形成される回路(例えば、トランジスタ)156の一部として、ウエハWの表面WS上、あるいは、表面WSの近傍に形成される。説明の便宜上、回路156におけるソース領域150S及びドレイン領域150Dの相対的な寸法は、ウエハWと比較して大幅に拡大されている。実際には、ソース領域150S及びドレイン領域150Dは非常に浅く、基板に対して約1ミクロン以下の深さを有する。一例では、ウエハWの表面WSは、装置構造によって規定されるパターンを含む。装置構造は、装置製造プロセスの一部としてウエハWに形成される。パターンは、上述した不都合なパターン効果を生じさせる。ウエハWの表面WSを照射する光の波長λがパターンのサイズδの約50倍よりも小さいとき、不都合なパターン効果は、温度不均一性を招くおそれがある。
【0074】
一実施形態では、レーザアニーリングシステム100は、制御部170をさらに含む。制御部170は、システム10及びステージ制御部122に電気的に接続されている。ステージ制御部122は、ステージ120に電気的に接続され、制御部170からの指令を介してステージ120の動きを制御するように構成される。制御部170は、一般的にはレーザアニーリングシステム100の動作を、より具体的にはレーザ光源20及びステージ制御部122の動作を制御するように構成され、接続されている。
【0075】
一実施形態では、制御部170は、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータであってもよいし、そのようなコンピュータを含んでもよい。コンピュータは、例えば、テキサス州オースチンにあるデルコンピュータ株式会社などの多くの周知のコンピュータ企業のうちの何れかから入手することができる。制御部170は、多くの市販のマイクロプロセッサの何れか、プロセッサをハードディスクドライブなどのメモリ装置に接続する適切なバスアーキテクチャ、及び適切な入出力装置(例えば、それぞれキーボード及びディスプレイ)を含むことが好ましい。
【0076】
引き続き
図6を参照すると、上述のようにして生成された第2の透過光24P’は、ウエハWの表面WS上に導かれ、表面WS上に線画像80を形成する。本明細書中では、「画像」との用語は、一般的に画像面IP及びそこに存在するウエハWの表面WSにおいて、第2の透過光線24P’によって形成される光の分布を示すために用いられる。
【0077】
一実施形態では、線画像80は、矢印180で示すように、ウエハWの表面WS上を走査される。これにより、ウエハWの表面WS(約100ミクロン以下の深さまで)が、ソース領域150S及びドレイン領域150Dでドーパントを活性化するのに十分なアニーリング温度(例えば、非溶融プロセスでは1000℃から1,300℃の間、溶融プロセスでは約1,400℃のシリコン溶融温度超)にまで局所的に高速加熱される。また、ウエハWの表面WSを高速冷却することもでき、その結果、ドーパントは実質的に拡散せず、これにより、ソース領域150S及びドレイン領域150Dの浅さを維持することができる。ウエハWの表面WSの包括的なドーパント活性化は、レーザアニーリングシステム100を用いて実行することもできる。ウエハWの表面WS上における線画像80の一般的な走査速度は、25mm/秒から1000mm/秒の範囲である。一例では、第2の透過光24P’及びウエハWの一方又は双方は、走査中に移動可能である。
【0078】
システム10は、比較的大きな出力密度を有する比較的長い線画像80を形成することができるため、ウエハWは、従前の線画像形成光学システムよりも大幅に高速で(例えば、3倍速く、あるいは、3倍のスループット改善用に3倍の長さの処理ラインを有するように)走査されることができる。これにより、レーザアニーリングシステム100によって処理することのできる時間当たりのウエハ数を増加させることができる。
<欠陥及びスパイクアニーリングシステム及び方法>
【0079】
本開示の局面は、欠陥アニーリングを実行するためのシステム及び方法、又は、本明細書中に開示されるシステム10を使用した欠陥アニーリング及びスパイクアニーリングを含む。
図7は、
図6と同様の図であり、レーザアニーリングシステム100の他の実施形態を開示する。レーザアニーリングシステム100の他の実施形態は、本明細書中に開示される欠陥アニーリングを実行するためのCO
2レーザ系線形成光学システムを含み、スパイクアニーリングを実行するために使用されるダイオード系線形成光学システム200も含む。ダイオード系線形成光学システム200は、制御部170に動作可能に接続され、波長λ
2の光線222を発するレーザダイオード光源220を含む。ダイオード系線形成光学システム200は、線形成光学223も含む。線形成光学223は、光線222を受光し、光線224を形成するように配置される。光線224は、他の光軸A2に沿って進む。他の光軸A2は、ウエハWの表面WSに線画像280を形成する。一例では、波長λ
2は、例えば、380nm≦λ
2≦1000nmの可視及び近赤外の範囲にある。また他の例では、波長λ
2は、例えば、500nm≦λ
2≦900nmの可視範囲のみにある。線形成光学223は、一つ以上の光学要素を含み得る。光学要素は、屈折性、反射性、回折性などを有し得る。一例では、線形成光学223は、アナモルフィックであり、さらなる例では、円筒形の光学システムであるか、あるいは、円筒形の光学システムを含む。一例では、線画像280は、その長さに対して±5%以内の強度均一性を有する。
【0080】
一例では、線画像280は、
図7に例示され、
図8Aの拡大図に示されるように、線画像80と重なる。他の例では、
図8Bに示すように、線画像280は、線画像80内に内在する。他の例では、
図8Cに示すように、線画像280の大部分が、CO
2レーザ系線形成光学システム10によって形成される線画像80内に内在し、また、線画像280のいくらかが、線画像80の外側に位置する。一例では、線画像280は、線画像80よりも実質的に狭く、さらなる例では、25ミクロンから250ミクロンの範囲内、または、50ミクロンから150ミクロンの範囲内の幅を有する。一例では、線画像280の幅は、線画像80の幅の5%から25%の間である。一例では、線画像80及び線画像280は、概ね同じ長さを有する。一例では、その長さは、5mmから100mmの範囲内である。一例では、線画像80の幅は約1mmであり、線画像280の幅は50ミクロンから150ミクロンの範囲内である。一例では、線画像80及び280は、少なくとも部分的に重なる。
【0081】
一例では、第2の透過光(伝達光)24P’は、2000Wから3000Wの光学出力で、線画像80を中継してウエハWの表面WSへ伝達される。上述したように、線画像80は、最大約1mmまでの幅を有し得る。
図7の例では、第2の透過光(伝達光)24P’及び線画像80を使用して、ウエハWの表面WS上で線画像80を走査することによって欠陥アニーリングを実行する。これにより、ウエハWの表面WSの温度は、欠陥アニール温度T
Dに局所的に上昇する。一例では、欠陥アニーリング温度T
Dは1050℃である。実際には、欠陥アニーリング温度T
Dは、アニールの継続時間、すなわち、線画像80の滞留時間に関連する。一般的に、より長い欠陥アニーリング時間には、より低い温度が要求される。一例では、欠陥アニーリング時間t
Dは、対応する欠陥アニール温度T
Dで2ミリ秒から15ミリ秒の範囲の時間を取り得る。一例では、t
D=2ミリ秒に対して、約1000℃から1150℃の範囲の欠陥アニール温度となり、他の例では、t
D=15ミリ秒に対して、700℃から1000℃の範囲の欠陥アニール温度となる。一例では、アニール温度T
Dは、650℃≦T
D≦1100℃の範囲内となる。
【0082】
ダイオード系線形成光学システム200からの光線224及び線画像280は、ウエハWのスパイクアニーリングを実行するために使用される。一例では、レーザダイオード光源220は、例えば、300Wから500Wの比較的小さな光学出力を生成する。なぜこのようなわずかなレーザ出力しか要求されないのかという点について、主に2つの理由が存在する。第1の理由は、欠陥アニール温度T
Dからスパイクアニール(又はドーパント活性化)温度T
Aへの温度上昇が、例えば、セ氏数百度と小さいためである。第2の理由は、ダイオードレーザ可視波長λ
2の吸収長が、CO
2レーザ赤外波長λ
1の吸収長と比較して、一般的に100倍短いためである。そのため、レーザスパイクアニーリングを実行するためにCO
2レーザを用いる従来の方式と比較して、実質的により小さな光学出力を有するレーザを、レーザスパイクアニーリングに使用できる。従来の方式と比べて大幅に小さいダイオードレーザ出力が使用されているため、ウエハWの端部に損傷を与えるリスクが大きく低減する。従来の方式では、光線224及び線画像280によって、2kWから3kWのダイオードレーザ出力が伝達される必要がある。本明細書中で開示されるシステム及び方法では、温度を欠陥アニール温度T
Dからスパイクアニール(又はドーパント活性化)温度T
Aへ上昇させるために必要とされる熱量、並びに、線画像280の寸法及び走査速度に応じて、およそ200ワットから500ワットのダイオードレーザ出力が採用され得る。
【0083】
一例では、線画像280は、走査方向において、50ミクロンから150ミクロンまでの幅を有する。一例では、ダイオード系線形成光学システム200は、例えば、上述の米国特許出願番号第14/497,006号に基づく光ファイバーである。
【0084】
ダイオード系線形成光学システム200は、後述するように、線画像280が線画像80と少なくとも部分的に重なるように配置される。光線224及び線画像280によって供給される光学出力は、ウエハWの表面WSの温度を、欠陥アニール温度T
D(例えば、約1050℃の温度)からスパイクアニール(又はドーパント活性化)温度T
Aへ局所的に上昇させるために使用される。スパイクアニール(又はドーパント活性化)温度T
Aは、例えば、約1150℃から約1350℃である。
【0085】
数百度程度のこのような温度上昇は、波長λ
2の光線224を使用して実行されるため、パターン効果によるパターン温度不均一性は、約20%以下(例えば、約60℃以下)である。この程度の量の不均一性は、従来技術に対して実質的な改善をもたらす。従来技術では、パターン効果による不均一性は、160℃程度に大きくなり得る。したがって、レーザアニーリングシステム100、及びこのレーザアニーリングシステム100を用いたアニーリング方法は、スパイクアニーリング中の温度不均一性を改善することができる。一例では、約25%以上、例えば、約25%から約40%程度改善することができる。線画像280を用いたスパイクアニーリングでの一般的な滞留時間は、200マイクロ秒から800マイクロ秒の範囲となり得る。線画像280の幅は、走査速度(例えば、ステージの速度)を決定する。
【0086】
上述のように、スパイクアニーリングの実施に可視波長λ
2を用いることのさらなる利点は、一例において、走査中にウエハWの端部(側面)を照射する光線224が比較的低出力であるということである。これにより、ウエハWに損傷を与えるおそれを大幅に減少させることができ、特に、ウエハ破壊のおそれを減少させることができる。
【0087】
当業者には明白であるが、添付される特許請求の範囲で規定された本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された本開示の好ましい実施形態に対して様々な変更を加えることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲内で行われる本開示の修正及び変更を包含する。