特許第6231538号(P6231538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231538
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】腸疾患を有する患者を治療するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20171106BHJP
【FI】
   A61F2/04
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-237636(P2015-237636)
(22)【出願日】2015年12月4日
(62)【分割の表示】特願2013-262476(P2013-262476)の分割
【原出願日】2008年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-28793(P2016-28793A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】60/960,715
(32)【優先日】2007年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/960,716
(32)【優先日】2007年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/960,764
(32)【優先日】2007年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510101826
【氏名又は名称】ミルックス・ホールディング・エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーセル,ピーター
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0122527(US,A1)
【文献】 特表2005−534400(JP,A)
【文献】 特開2005−104722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー蓄積用のアキュムレータと共に患者の体内に移植されるよう構成された人工腸セクションを備えるシステムであって、
前記人工腸セクションは、互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有し、少なくとも前記第1の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された開口部に連結できるように構成され、
前記アキュムレータは、無線でエネルギーを充電するように構成され、前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部に直接または間接的にエネルギーを供給するために設けられ、
前記少なくとも一つのエネルギー消費部は、直接または間接的に、前記第1および第2の開放端部との間の前記人工腸セクションに含まれる腸内容物と相互に作用する少なくとも1つの素子を備え、
前記人工腸セクションは、前記第1および前記第2の開放端部の間に、外壁と貯蔵部を備え、前記人工腸セクションの前記外壁は、前記貯蔵部の壁の少なくとも一部を形成し、前記貯蔵部は、前記第1の開放端部を通じて供給される腸内容物を受け取り、一時的に集めるために設けられ
前記システムは、前記少なくとも1つの素子の1つとして、第2の開放端部を通じて前記人工腸セクションの外側に腸内容物を前進させるためのポンプと、前記少なくとも1つの素子のもう1つとして、閉位置において、前記第2の開放端部を通って腸内容物が流れるのを防止する少なくとも1つの常閉出口弁を備える流量調整装置とを備える、
システム。
【請求項2】
前記第1および前記第2の開放端部は、中間腸セクションを形成するために、患者の腸に外科的に形成された切断面の開口部に接続するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の開放端部は、腸端部セクションを形成するために、人工ストーマに接続するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の開放端部は、腸端部セクションを形成するために、患者の直腸または肛門に、または、患者の肛門に隣接した組織に接続するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記流量調整装置は、開位置において、前記第1の開放端部を通って腸内容物を前記人工腸セクションに流す入口弁を備える、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記入弁は、常開弁である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記出口弁および前記入弁は、2つの弁のうちの1つが閉じるときに、もう一方の弁が、逆に開いているように構成される、請求項5または6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記出口弁および/または前記入口弁は、区画の体積を変えることによって弁を開閉するのに適している可変的な体積を有する区画を備える、請求項から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記出口弁および/または前記入口弁は、前記区画を作動油で充填および前記区画を空にするための少なくとも一つの通路を備える、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記区画は、開口を定めている少なくとも一つの柔軟壁を有し、前記区画の体積が増加した時に、前記開口は閉じるように構成される、請求項8または9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記出口弁および/または前記入口弁は、フラップ弁である、請求項から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記フラップ弁は、回動可能ディスクを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記貯蔵部は、蛇腹部材によって形成され、前記蛇腹部材は、その一端において前記蛇腹部材を閉じる末端壁を有し、前記末端壁は、前記ポンプの一部を形成し、前記末端壁が前進した時に前記蛇腹部材の体積が減少する、請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記ポンプは、前記貯蔵部内に延びる前端部を有する可動ピストンを備え、前記可動ピストンが前進した時に前記貯蔵部の体積が減少する、請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記貯蔵部は、柔軟壁を有し、前記ポンプは、前記可動ピストンを前進させる手段によって、前記貯蔵部をしぼることによって前記貯蔵部を空にするように構成されている請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の腸に関する疾患を有する患者を治療するシステムおよび方法に関する。このような疾患は、怪我、先天異常、癌、または便秘や失禁のような他の疾病によって生じることがある。
【背景技術】
【0002】
このような疾患を解消するために、多数の異なる解決手段が提案されている。これらの解決手段は、特に、腸の一部を除去する必要のある手術を含む。このような手術を行う理由としては、結腸直腸癌、穿孔性憩室炎、または潰瘍性大腸炎やクローン病のような他の種類の疾病が挙げられる。たとえば回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、および直腸ろう造設術の場合、小腸(空腸または回腸)あるいは大腸(結腸または直腸)を切開し、患者の腹壁に外科的に形成されたろう孔、あるいは可能なら患者の直腸または肛門、または肛門に隣接する組織に腸の正常な部分の開放端部を取り付け直す。
【0003】
その場合、腸内容物の流れの制御、特に糞便が制御されずに患者の体から排出されることの防止に関する問題が生じる。患者は通常、結腸バッグに排泄する必要がある。これは明らかに不便であり、さらに、このようなバッグ構成では、バッグを液密にするために患者の皮膚に接着される粘着プレートが必要であるため、皮膚の炎症が生じる可能性がある。
【0004】
米国特許第4222377号は、肛門または尿管の周りにカフを備える膨張可能な人工括約筋の使用を提案している。人工括約筋を膨張させたり収縮させたりする手動操作ポンプが患者の陰のうに移植される。
【0005】
同様に、米国特許第5593443号は、随意的に制御される人工油圧肛門括約筋を開示している。具体的には、患者は、機械または電気的ポンプを作動させてカフを膨張させたり収縮させたりする。カフは、腸の両側に位置し、膨張時に腸壁同士を押し付ける2つの部分から成る。
【0006】
米国特許第6752754B1号は、患者の直腸の一部に置き換わる人工直腸を開示している。この人工直腸の入口は、患者の大腸の遠位端に動作可能に連結されており、患者の肛門に連結された人工直腸の出口を通って糞便を排出する腸間膜ポンプに糞便を送る。
このポンプは、回転時に、糞便にせん断効果をもたらし、糞便をスクリュー・インペラのねじに沿って下に移動させ患者の肛門を通って排出させるヘリカル・スクリュー型インペラを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4222377号
【特許文献2】米国特許第5593443号
【特許文献3】米国特許第6752754B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、患者の腸に関する疾患を有する患者を治療する改良されたシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
無線充填アキュムレータを含む人工腸セクション
患者の腸に関する疾患を有する患者を治療する本発明によるシステムは、エネルギーを蓄積するアキュムレータと一緒に患者の体内に移植されるように構成された人工腸セクションを備える。本発明の腸セクションは、互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有し、少なくとも第1の開放端部と、場合によってはさらに第2の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された開口部に連結されるように構成される。さらに、アキュムレータは、無線によってエネルギーを充填され、前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部にエネルギーを直接または間接的に供給するように構成される。
【0010】
腸の側方連結
好ましくは、人工腸セクションの少なくとも第1の開放端部と、場合によってはさらに第2の開放端部は、患者の腸の壁に外科的に形成された側方開口部に連結されるように構成される。したがって、人工腸セクションは、患者の腸の断面端部に連結されるのではなく、患者の腸壁の側方開口部に連結され、このために、人工腸セクションのそれぞれの開放端部は特定の構成を有する。
【0011】
人工腸セクションを側方において腸に連結することによって、腸の蠕動運動によって生じ、かつ腸の人工腸セクションに作用する力がほとんど回避される。具体的には、人工腸セクションが腸の断面開口部に連結される場合、腸の蠕動波動が腸と人工腸セクションとの間の連結部から腸を引き離す傾向がある。これに対して、人工腸セクションが腸の側壁の開口部に取り付けられる場合、蠕動波動は、腸壁と人工腸セクションとの間の連結部にほとんど影響を与えずに人工腸セクションを通過する。
【0012】
側方取り付け構造
人工腸セクションを側方開口部にしっかりと取り付けるために、少なくとも第1の開放端部は、側方において患者の腸壁に連結できるように端部の周りに形成されたショルダ部を備えてよい。ショルダ部の少なくとも一部は、人工腸セクションから側方に3mm〜20mmだけ延びることが好ましい。さらに、ショルダ部は、側方において腸壁に取り付けられたときに腸壁に概ね一致するように湾曲した断面を有することが好ましい。有利なことに、このように構成された開放端部を腸壁の外側から腸壁に取り付けることができる。
【0013】
改良された実施形態によれば、ショルダ部は、腸壁組織を収容するための隙間を間に有する上部ショルダ部と下部ショルダ部とに分割することができる。その場合、下部ショルダ部は、適切に構成された場合、外科的に形成された側壁開口部を通って患者の腸内に配置することができ、一方、上部ショルダ部は腸壁の外側に配置される。
【0014】
下部ショルダ部が側壁開口部内を前進するときに側壁開口部が下部ショルダ部上で容易に伸びることができ、しかも腸壁とショルダ部との間に大きな接触面積が得られるように、上部ショルダ部を下部ショルダ部よりも大きくすることができる。したがって、腸壁に接触する上部ショルダ部の表面積も、腸壁に接触する下部ショルダ部の表面積よりも大きい。
【0015】
患者の腸壁に側方連結するための開放端部は、接着によって患者の腸壁に連結されるように構成することができる。たとえば、開放端部は、接着剤がよりうまく付着するように特定の粗な表面構造を有してよい。さらに、縫合によって患者の腸壁に連結されるように開放端部を構成することができる。たとえば、ショルダ部のある領域を穿孔し、形成された孔を通って縫合するか、あるいは針を貫通させるのが容易な材料から形成することができる。同様に、開放端部を特に、ステープリングによって患者の腸壁に連結されるように構成することができる。
【0016】
腸への前方連結
一般に、人工腸セクションの第1の開放端部と、場合によってはさらに第2の開放端部を側方において患者の腸壁の開口部に連結することが好ましいが、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に連結されるように開放端部を構成することもできる。
【0017】
前方取り付け構成(バルジ/スリーブ)
この場合、人工腸セクションの開放端部は好ましくは、
導管の外面から外側に、導管の円周の少なくとも一部の周りの導管の周方向に延びる少なくとも1つのバルジを含む外面を有する導管と、
導管の外面上に、腸組織を埋め込むための隙間が外面と閉塞リングとの間にできるように緩く取り付けられ、腸組織が隙間内に埋め込まれるときに閉塞リングが少なくとも1つのバルジ上で滑るのを防止するように少なくとも1つのバルジの断面外径よりも小さいかあるいは断面外径とほぼ同一である断面内径を有する閉塞リングとを備える。
【0018】
その場合、外側に形成されたバルジを有する人工腸セクションを、腸部がバルジの一方の側からバルジ上を延びるように腸部の断面開口部に挿入し、腸部が人工腸セクションの外面と閉塞リングとの中間に配置されるように閉塞リングを腸部上でバルジのそれぞれの他方の側からバルジの方へ前進させることによって、腸部の断面開口部に固定することができる。
【0019】
あるいは、開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、導管の前記外面の少なくとも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可とう性のスリーブとを有する導管を備えてよい。可とう性のスリーブは、折り畳まれるかあるいは丸められるか、あるいは折り畳み可能であるように前記外面上に取り付けることができる。いずれの場合も、次に、人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に挿入し、腸部がスリーブと人工腸セクションの外面との中間に配置されるように、腸部と人工腸セクションの開放端部の両方の上方を延びるように可とう性のスリーブを配置することによって、人工腸セクションの開口部端部を腸部の断面開口部に固定することができる。
【0020】
可とう性のスリーブが、折り畳み可能になるように人工腸部材の開放端部の外面上に取り付けられる場合、腸部と人工腸セクションの開放端部の両方の上方を延びるように可とう性のスリーブを配置するステップは、腸部が折り畳まれたスリーブの中間に配置されるように可とう性のスリーブを折り畳むことを含む。
【0021】
バルジとスリーブは、組み合わされて使用されるように1本の導管上に設けることもできる。
【0022】
スリーブまたはバルジを含む人工腸セクションの上述の導管は、たとえば、腸の蠕動運動によって生じる可能性があり、腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上させる。
【0023】
さらに、開放端部の導管は多層材料を含むことが好ましい。たとえば、開放端部が、生体組織を内部成長させる多孔内部成長層を備えることが有利である。内部成長層は、網状構造を有し、最も好ましくはDacron(登録商標)で作られる。
【0024】
流通構成
直線状連結部/バイパス連結部 人工腸セクションの第1および第2の開放端部の上述の構造によれば、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に第1の開放端部と第2の開放端部の両方を連結して中間腸セクションを形成するか、あるいは患者の腸の壁に外科的に形成された側方開口部に第1の開放端部と第2の開放端部の両方を連結してバイパス腸セクションを形成することが可能である。
【0025】
ろう孔/肛門連結部
あるいは、外科的に形成されたろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の肛門に隣接する組織に連結して腸端部セクションを形成するように第2の開放端部を構成することができる。
【0026】
残りの腸への下流側連結部
あるいは、第2の開口端部を、場合に応じて患者の小腸の一部または患者の大腸の一部に連結するように構成することができ、次に、患者の腸のこの部分を外科的に形成されたろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の肛門に隣接する組織まで延ばすことができる。
【0027】
材料
第1の開放端部は生体適合性材料で作られることが好ましい。開放端部の生体適合性材料は、以下の材料群、すなわち、チタン、ステンレススチール、セラミクス、生体適合性ポリマー材料のうちの少なくとも1つの材料を含んでよい。具体的には、生体適合性ポリマー材料は、以下のポリマー群、すなわち、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリウレタン、発砲ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のうちの少なくとも1つのポリマーを含んでよい。
【0028】
エネルギー消費部としての腸内容物相互作用デバイス
好ましい実施形態では、人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部は、人工腸セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接または間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つの部材を備える。
【0029】
エネルギー消費部としての流れ制御デバイス
より高度な実施形態では、少なくとも1つの部材は、人工腸セクションから第2の開放端部を通る腸内容物の流れを制御するように構成された流れ制御デバイスを備えてよい。
流れ制御デバイスは、人工腸セクションから第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止するように構成されることが好ましい。
【0030】
流れ制御デバイスとしての出口弁
流れ制御デバイスは、閉位置において第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止する出口弁を含む少なくとも1つの弁を備えることが好ましい。好ましくは、出口弁は、システムの非作動周期中に弁を閉じたままにしておくのにエネルギーが必要とされないように通常は閉じられている弁である。
【0031】
流れ制御デバイスの追加部としての入口弁
さらに、流れ制御デバイスは、開位置において腸内容物がリザーバの方へ流れるのを可能にする入口弁を備えてよい。このことは、特にリザーバが空であり、入口弁を閉じるべきであるときに有利である場合がある。したがって、入口弁は、通常は開いている弁であることが好ましい。したがって、出口弁と入口弁は、2つの弁のうちの一方が閉じられたときに、それぞれの他方の弁が開かれ、一方の弁が開かれたときに、それぞれの他方の弁が閉じられるように協働するように構成されることが好ましい。
【0032】
弁の種類
使用することのできる様々な弁の種類に関して、少なくとも1つの弁はたとえば、体積を変化させることによって弁を開閉するように構成された可変体積を有するコンパートメントを備えてよい。あるいは、少なくとも1つの弁は、コンパートメントに油圧流体を充填したりコンパートメントを空にしたりする少なくとも1つの通路を備える。コンパートメントは、導管を通過させる開口部を形成する少なくとも1つの可とう性の壁を有し、開口部がコンパートメントの体積の増大時に閉鎖されるように構成されることが好ましい。
【0033】
異なる実施形態によれば、少なくとも1つの弁はフラップ弁であってよい。フラップ弁は、たとえば回転可能な円板を備えてよい。
【0034】
人工腸部材から分離された特別弁
弁は好ましくは人工腸セクションの一体部分を形成するが、人工腸セクションは、人工腸セクションの上流側および/または下流側への、患者の腸の本来のセクション内の腸内容物の流れを制御するように構成された1つまたは複数の特別弁をさらに備えてよい。特別弁は、人工セクションにしっかりと連結することができるが、完全に分離された部分を形成してもよい。外部弁は、患者の体内の、患者の本来の腸のあるセクションの外側に移植されるように構成され、本来の腸セクションにその外側から作用して本来の腸セクションを通る腸内容物の流れを防止するように構成された少なくとも1つの部材を備える。この弁構成は、弁が移植されるときに本来の腸のそれぞれの部分に対する手術を必要としない。
【0035】
特別弁は、腸セクションの筋肉または神経組織を電気的に刺激し、本来の腸セクションを少なくとも部分的に収縮させるように構成された少なくとも1つの電気刺激デバイスを備えてよい。これは、腸を狭さくさせる非常に性別的な方法である。刺激デバイスは、本来の腸セクションに電気パルスを印加するように構成された少なくとも1つの電極を備えることが好ましい。
【0036】
腸セクションのそれぞれの異なる部分を経時的に刺激するように構成された刺激デバイスを利用すると特に有利である。したがって、腸セクションの様々な部分をそれぞれの異なる時間に所定の刺激パターンで刺激することによって狭さくさせることができ、それによって、現在刺激されていない腸部に回復のための時間が与えられ、それぞれの腸セクションにおける血液循環が向上する。
【0037】
さらに、特に、腸セクションのそれぞれの異なる部分を波動状に本来の腸内容物の流れと逆方向に経時的に刺激するように刺激デバイスを構成することができる。その結果、弁は、本来の腸内容物の流れを妨げ、それによって弁の閉機能を向上させる。
【0038】
少なくとも1つの弁は、刺激デバイスの代わりに、あるいは好ましくは刺激デバイスに加えて、患者の体内に移植され、本来の腸セクションの外側から本来の腸セクションを機械的に少なくとも部分的に狭さくさせる狭さくデバイスを備えてよい。刺激デバイスが狭さくデバイスと組み合わされる場合、刺激デバイスと狭さくデバイスは、同じ腸セクションに作用することが好ましい。その場合、狭さくデバイスがその通常の状態で本来の腸セクションを部分的にのみ狭さくさせ、時間の経過とともに腸を損傷することのないようにすると有利である。腸の完全な狭さく、したがって、完全な閉鎖は、上述のように本来の腸セクションを追加的に刺激することによって実現される。
【0039】
さらに、狭さくデバイスによる腸セクションの狭さくが解放されると、刺激デバイスは、本来の腸セクションのそれぞれの異なる部分を経時的に本来の腸内容物の流れの方向に波動状に刺激することによって、本来の腸セクションに沿って腸内容物を汲み出すのに使用されるように構成されている場合はそうすることができる。この状況では、弁は、人体からの糞便の排出を能動的に支援する追加的なポンプ機能を備えてよい。
【0040】
エネルギー消費部としてのポンプ
人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部は、腸内容物を第2の開放端部を通って人工腸セクションの外側に送るポンプを備えてよい。
【0041】
リザーバを含むポンプ
人工腸セクションは、ポンプだけでなく、第1の開放端部を通って供給された腸内容物を受け取って一時的に収集するリザーバを第1の開放端部と第2の開放端部との間に備えてよい。この場合、ポンプは、第2の開放端部を通ってリザーバを空にするように構成されることが好ましい。様々な異なる構造を実現することができる。
【0042】
たとえば、リザーバは蛇腹部材によって形成することができ、前記蛇腹部材は、その一方の端部を閉鎖する端壁を有する。その場合、端壁は、前記端壁が前進したときに蛇腹部材の体積が低減するようにポンプの一部を構成することができる。蛇腹部材は、通常拡張位置に強制的に配置されるように弾性の材料で作られることが好ましい。
【0043】
他の実施形態では、ポンプは、リザーバ内に延び、したがって、ピストンが前進したときにリザーバの体積を低減させる前端を有する可動ピストンを備えてよい。ピストンには、通常引き込み位置に強制的に配置されるようにばね負荷をかけることが好ましい。
【0044】
あるいは、常にリザーバの内側に配置されるようにポンプを構成することができる。
【0045】
他の代替実施形態では、リザーバは、可とう性の壁を有してよく、ポンプは、リザーバを圧搾することによってリザーバを空にするように構成される。この場合、ポンプはたとえば、リザーバのそれぞれの異なる部分を経時的に波動状に狭さくさせることによって、リザーバの各部を交互に狭さくさせたり解放したりして腸内容物をリザーバに沿って汲み出すように構成された狭さくデバイスを含んでよい。具体的には、リザーバはチューブ状形態を有してよく、チューブ状リザーバにその外側から作用するポンプとしてローラ・ポンプを使用することができる。
【0046】
エネルギー消費部としてのモータ
人工腸セクションの弁またはポンプ、または他のエネルギー消費部が手動駆動可能ではないかあるいは手動以外でも駆動可能である場合、人工腸セクションは、人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部を自動的に駆動するように構成された少なくとも1つのモータを備えてよい。モータは、電気エネルギーまたは電磁エネルギーによって駆動されるように構成されることが好ましい。
【0047】
本発明に関するモータは、機械エネルギー以外のエネルギーを機械エネルギーに変換するデバイスである。本発明に関するポンプは、液体またはペースト状の物質を前進させるデバイスであるが、エネルギーを機械エネルギーに変換するとピストン、蛇腹部材などの機械手段の介在無しに液体またはペースト状の物質が前進するようなある種の状況では、同時にモータであってもよい。
【0048】
たとえば、少なくとも1つの弁または複数の弁をそれぞれ、その閉位置と開位置との間で移動させるように少なくとも1つのモータを構成することができる。さらに、ポンプを駆動するように少なくとも1つのモータを構成することができる。
【0049】
少なくとも1つのモータを作動させる手動操作可能なスイッチであって、好ましくは、患者の体外から操作可能であるように皮下移植されるように構成されたスイッチを設けることができる。
【0050】
エネルギーの伝送
エネルギーが無線によって伝送されない場合、少なくともアキュムレータとエネルギー消費部、特にモータとの間にガルバニック結合部材を設けて、エネルギーをモータに接触的に伝送することができる。
【0051】
あるいは、エネルギーを無線によってアキュムレータからモータまで伝送することができる。したがって、エネルギー源は、エネルギーをアキュムレータからエネルギー消費部まで無線によって伝送するように構成された無線エネルギー送信器を備えてよい。
【0052】
好ましくは、部品の数を減らし、場合によってはシステムの効率を高めるために、アキュムレータから無線によって伝送されたエネルギーを運動エネルギーに直接変換するようにエネルギー消費部、特にモータを構成することができる。代替実施形態では、エネルギー消費部は、アキュムレータから無線によって伝送されたエネルギーを電気エネルギーに変換する変換デバイスを備える必要がある。
【0053】
同様に、システムは好ましくは、患者の体外から無線によって伝送されたエネルギーを、移植されたシステムのアキュムレータに蓄積されるエネルギーに変換する移植可能なエネルギー変換デバイスを備え、エネルギーを患者の体外から前記移植可能なエネルギー変換デバイスに無線によって伝送するように構成された無線エネルギー送信器をさらに備える。
【0054】
エネルギー消費部が電気エネルギーによって駆動され、前記エネルギー変換デバイスが無線エネルギーを電気エネルギーに変換するようにシステムを構成するとさらに好ましい。
【0055】
エネルギー送信器は、電磁界、磁界、または電界を生成するように構成することができる。無線エネルギーは、エネルギー変換デバイスにより少なくとも1つの無線信号によって伝送することができる。具体的には、赤外光信号、可視光信号、紫外光信号、レーザ信号、マイクロ波信号、X線放射信号、およびガンマ放射信号のうちの少なくとも1つを含む電磁波信号を含んでよい少なくとも1つの無線エネルギー信号によってエネルギーを伝送するようにエネルギー送信器を構成することができる。また、無線エネルギー信号は、音声信号または超音波信号を含んでよい。さらに、無線エネルギー信号は、デジタル信号またはアナログ信号、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0056】
エネルギーの伝送フィードバック
有利なことに、後述の制御デバイスの一部を構成することができるフィードバック・システムを設け、アキュムレータに蓄積されるエネルギーに関するフィードバック情報を無線によって人体の内部から外部に送信することができる。フィードバック情報は次に、エネルギー送信器によって伝送される無線エネルギーの量を調整するのに使用される。このようなフィードバック情報は、人体の内部で受け取られた無線エネルギーの量と少なくとも1つのエネルギー消費部によって消費されたエネルギーの量とのバランスとして定義されるエネルギー・バランスに関してよい。あるいは、フィードバック情報は、人体の内部で受け取られた無線エネルギーの率と少なくとも1つのエネルギー消費部によって消費されたエネルギーの率とのバランスとして定義されるエネルギー・バランスに関してよい。
【0057】
アキュムレータ
アキュムレータは、再充電可能な電池を備えることが好ましい。その代わりにあるいはそれに加えて、アキュムレータはコンデンサを備えてよい。アキュムレータを患者の体内に移植し、人工腸セクションに固定的に連結するかあるいは人工腸セクションから距離を置いて配置するように構成ことができる。
【0058】
一次エネルギー源
患者の体外からのエネルギーをアキュムレータに充填する一次エネルギー源を設けることができる。一次エネルギー源は、患者の体に取り付けられるように構成されることが好ましい。
【0059】
制御ユニット
特に、2つの弁の一方が閉じられたときに他方の弁が開き、一方の弁が開かれたときに他方の弁が閉じられるように、出口弁の開動作および/または入口弁の閉動作を制御することなどのように、システムの1つまたは複数の部材を直接または間接的に制御するように構成された制御ユニットを設けると有利である。
【0060】
制御ユニットは、たとえば特にリザーバを空にするように患者によって操作可能であることが好ましい。
【0061】
制御ユニットの少なくとも一部を患者の体内に移植可能であるように構成することができる。たとえば、制御ユニットを作動させる手動操作可能なスイッチであって、好ましくは患者の体外から操作できるように皮下移植されるように構成されたスイッチを設けることができる。また、制御ユニットは、患者の体内に移植されるように構成された第1の部分と、患者の体外から第1の部分と協働するように構成された第2の部分とを備えてよい。この場合、エネルギーが前記無線エネルギー送信器によって患者の体外から前記移植可能なエネルギー変換デバイスに伝送されるのと同様に、制御ユニットの外側の第2の部分から制御ユニットの移植された第1の部分にデータを送信するように、制御ユニットを構成することができる。
【0062】
すなわち、制御信号を無線によって制御ユニットの移植可能な第1の部分に送信し、患者の体外から少なくとも1つのエネルギー消費部を制御するように制御ユニットの第2の部分を構成することができる。また、制御ユニットの移植可能な第1の部分は、制御ユニットの第2の部分を介してプログラム可能であってよい。さらに、制御ユニットの第2の部分にフィードバック信号を送信するように制御ユニットの移植可能な第1の部分を構成することができる。
【0063】
センサ
さらに、患者の物理的パラメータを直接または間接的に検知するように構成された物理的パラメータ・センサを設けることができる。物理的パラメータ・センサは、患者の以下の物理的パラメータ、すなわち、人工腸セクション内の圧力、患者の本来の腸内の圧力、人工腸セクションの膨張、患者の本来の腸の腸壁の膨張、患者の腸壁の移動のうちの少なくとも1つを検知するように構成することができる。
【0064】
同様に、システムの機能パラメータを直接または間接的に検知するように構成された機能パラメータ・センサを設けることができ、その場合、システムの以下の機能パラメータ、すなわち、人工腸セクションなどのシステムの一部に対する圧力、人工腸セクションの壁などのシステムの一部の膨張、電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータ、システムの可動部の位置または移動のうちの少なくとも1つを検知するように機能パラメータ・センサを構成することができる。
【0065】
好ましくは、パラメータの値が所定のしきい値を超えたことをセンサが検知したときに信号を生成するように構成されたインジケータがセンサに結合される。センサ信号は、以下の種類の信号、すなわち、音声信号、視覚信号の少なくとも一方を含んでよい。
【0066】
治療(移植)方法
本発明は、上述のシステムに関するだけでなく、患者の腸に関する疾患を有する患者を治療する方法、特に、システムを移植する方法およびシステムを患者に設置された後に使用する方法にも関する。
【0067】
したがって、本発明によって患者を治療する手術方法は、
患者の皮膚および腹壁を切開するステップと、
患者の腸のある領域を切開するステップと、
切開された腸領域に少なくとも1つの開口部を外科的に形成して人工腸開口部を形成するステップと、
互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有する人工腸セクションを設け、第1の開放端部を人工腸開口部と流体連通するように人工腸開口部に固定するステップと、
無線によって患者の体外からのエネルギーを充填されるように構成されたアキュムレータを設け、アキュムレータから前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部に直接または間接的にエネルギーを供給できるように患者の体内にアキュムレータを配置するステップと、
腹壁および皮膚を縫合するステップとを含む。
【0068】
患者を治療する対応する腸腔鏡手術方法は、
患者の皮膚および腹壁に小さな開口部を設けるステップと、
腹腔に針を導入するステップと、
腹腔をガスで膨張させるステップと、
少なくとも1つのトロカールを腹腔に挿入するステップと、
トロカールを通ってカメラを挿入するステップと、
好ましくは第2のトロカールを通って少なくとも1つの切開器具を挿入するステップと、
腸のある領域を切開するステップと、
切開された腸領域の少なくとも1つの開口部を外科的に形成して人工腸開口部を形成するステップと、
互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有する人工腸セクションを設け、第1の開放端部を人工腸開口部と流体連通するように人工腸開口部に固定するステップと、
無線によって患者の体外からのエネルギーを充填されるように構成されたアキュムレータを設け、アキュムレータから前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部に直接または間接的にエネルギーを供給できるように患者の体内にアキュムレータを配置するステップと、
各器具、カメラ、およびトロカールを引き抜くステップと、
上記ステップに関連して、必要に応じて腹壁を縫合し、皮膚を永久的に閉じるステップとを含む。
【0069】
アキュムレータが人工腸セクションに固定的に連結されるように設けられる場合、アキュムレータを人工腸セクションと一緒に患者の体内に配置することができる。あるいは、アキュムレータが人工腸セクションから分離して設けられる場合、アキュムレータを患者の体内に人工腸セクションから距離を置いて移植することができる。
【0070】
エネルギーがアキュムレータから人工腸セクションのエネルギー消費部に無線によって伝送されない場合、アキュムレータを人工腸セクションにガルバニック結合し、エネルギーを人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部に接触的に伝送することができる。
【0071】
腸の分割
この移植方法は、腸を分割して腸の1つまたは2つの断面開口部を得ることを含んでよい。この移植方法は、
切開された腸領域の、形成すべき腸開口部の下流側の部分を切開し、したがって、切開された部分の両側で、腸間膜を通した切開された腸領域への血液の供給ができるだけ維持されるように、切開された部分に連結された腸間膜を開放するステップと、
患者の腸を切開された部分において分割して、人工腸開口部が下流側の断面開口部として形成された腸の上流側部分と、人工腸開口部が上流側の断面開口部として形成された腸の下流側部分とを形成し、腸間膜が上流側腸部と下流側腸部との間の組織連結を維持するステップとをさらに含んでよい。
【0072】
上流側端部における前方連結
人工腸セクションの少なくとも第1の開放端部を上流側腸部の断面下流側開口部と流体連通するように断面下流側開口部に固定することができる。
【0073】
下流側端部における前方連結
また、人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通するように断面上流側開口部に固定することができる。
【0074】
両方の端部における前方連結
人工腸部材を分割された腸の両方の断面開口部に連結する場合、この方法は、上述の2つのステップの組合せ、すなわち、人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の断面下流側開口部と流体連通するように断面下流側開口部に固定し、人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通するように断面上流側開口部に固定することを含んでよい。
【0075】
上流側での前方連結、下流側での側方連結
あるいは、人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の壁の側方開口部に連結することができ、その場合、この移植方法は、
上流側腸部の下流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
上流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を外科的に形成するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通するように断面上流側開口部に固定するステップとを含む。
【0076】
前方連結用のスリーブ/バルジ・コネクタ
人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に固定するステップは好ましくは、
人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に挿入するステップと、
腸部がスリーブと人工腸セクションの外側表面との中間に配置されるように腸部と人工腸セクションの開放端部との両方の上方を延びるように可とう性のスリーブを配置することとを含む。
【0077】
可とう性のスリーブは、折り畳み可能になるように人工腸セクションの開放端部の外面上に取り付けられ、腸部と人工腸セクションの開放端部との両方の上方を延びるように可とう性のスリーブを配置することは、腸部が折り畳まれたスリーブの中間に配置されるように可とう性のスリーブを折り畳むことを含む。
【0078】
上記の代わりにあるいは上記に加えて、人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に固定するステップは、
腸部がバルジの一方の側からバルジ上を延びるように、バルジが外側に形成された人工腸セクションを腸部の断面開口部に挿入することと、
腸部が人工腸セクションの外面と閉塞リングとの中間に配置されるように閉塞リングを腸部上でバルジのそれぞれの他方の側からバルジの方へ前進させることとを含む。
【0079】
スリーブまたはバルジを含む人工腸セクションの上述の開放端部は、たとえば、腸の蠕動運動によって生じる可能性があり、腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上させる。人工腸セクションの開放端部はスリーブとバルジを組み合わせることもできる。
【0080】
上流側の側方連結、下流側の前方連結
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の壁の側方開口部に連結し、一方、第1の開放端部を上流側腸部の断面開口部に連結することができることを上記で説明した。
この連結を逆にすることもでき、その場合、この移植方法は、
下流側腸部の上流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
下流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の断面下流側開口部と流体連通するように断面下流側開口部に固定するステップとを含む。
【0081】
両方の端部における側方連結
もちろん、人工腸部材の両方の開放端部を腸壁の側方開口部に連結することも可能であり、場合によっては好ましく、その場合、この移植方法は、
上流側腸部の下流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
上流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定するステップと、
下流側腸部の上流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
下流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定するステップとを含む。
【0082】
腸を分割しない両方の端部における側方連結
腸を分割せずに人工腸部材の両方の開放端部を腸壁の側方開口部に連結することも可能であり、その場合、切開された腸領域に第1の開口部を外科的に形成するステップは、腸の壁に第1の開口部を外科的に形成して第1の側方腸開口部を形成するステップと、第1の開口部の下流の位置で腸の壁に第2の開口部を外科的に形成して第2の側方腸開口部を形成するステップとを含み、この移植方法は、
第1の側方腸開口部と第2の側方腸開口部との間の位置で患者の腸を永久的に閉鎖して、前記永久閉鎖部の上流側に上流側腸部を形成し、前記永久閉鎖部の下流側に下流側腸部を形成するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を第1の側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を第2の側方腸開口部に固定するステップとを含む。
【0083】
側方取り付け構造
人工腸セクションの開放端部が側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定される場合、開放端部の周りに形成された上述のショルダ部を、側方腸開口部を囲むように患者の腸壁に連結するステップを含んでよい。特に、開放端部を腸に固定するステップは、ショルダ部を患者の外側腸壁に取り付けることを含んでよい。
【0084】
あるいは、ショルダ部が、間に隙間ができるように上部ショルダ部と下部ショルダ部とに分割される場合、人工腸セクションの開放端部を側方腸開口部に固定するステップは、腸壁組織が隙間に収容されるように、下部ショルダ部を患者の腸の内側に配置し、上部ショルダ部を患者の腸の外側に配置することを含む。
【0085】
人工腸セクションの開放端部を側方腸開口部に固定するステップは、患者の腸壁への開放端部の接着、縫合、および/またはステープリングを含んでよい。
【0086】
ろう孔からの出口
上述のように、外科的に形成されたろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の肛門に隣接する領域に下流側腸部を連結することができる。ろう孔に連結する場合、この方法は、
患者の皮膚および腹壁を切開して腸ろう孔の開口部を形成するステップと、
ろう孔開口部の領域を切開するステップと、
腸を人工腸セクションの下流側の位置で分割して、下流側端部に断面開口部を有する上流側の本来の腸セクションと、下流側の本来の腸セクションとを形成するステップと、
上流側の本来の腸セクションの腸間膜をその断面開口部の領域で切開して、腸ろう孔を形成する準備を整えるステップと、
上流側の本来の腸セクションの下流側端部を腹壁および皮膚を通って前進させるステップと、
腸粘膜を裏返した状態で上流側の本来の腸セクションの断面開口部を皮膚に縫合し、それによって腸ろう孔を形成するステップとを含む。
【0087】
肛門からの出口
患者の肛門または患者の肛門に隣接する組織に連結する場合、この方法は、
腸を人工腸セクションの下流側の位置で分割して、下流側端部に断面開口部を有する上流側の本来の腸セクションと、患者の肛門に至る下流側の本来の腸セクションとを形成するステップと、
患者の肛門の領域を切開し、下流側の本来の腸セクションを患者の肛門から外科的に分離し、一方、腸を分割するステップと患者の肛門に至る腸セクションを分離するステップとを逆の順序で交互にすることができるステップと、
上流側の本来の腸セクションの腸間膜をその下流側端部の所の断面開口部の領域で切開して、上流側の本来の腸セクションを患者の肛門または患者の肛門に隣接する組織に連結する準備を整えるステップと、
上流側の本来の腸セクションの下流側端部を患者の肛門を通って前進させるステップと、
上流側の本来の腸セクションの断面開口部を患者の肛門または患者の肛門に隣接する領域に縫合するステップとを含む。
【0088】
状況に応じて、腸を分割して上流側の本来の腸セクションを形成するステップを患者の小腸または患者の大腸に対して実行することができる。
【0089】
エネルギー消費部としての腸内容物相互作用デバイス(流れ制御デバイス/出口弁/入口弁/ポンプ/リザーバ) 上述のように、人工腸セクションまたはシステムは、人工腸セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接または間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つのエネルギー消費部を備えてよい。この部材は、人工腸セクションと一緒に移植される。上記と同様に、エネルギー消費部は、第2の開放端部を通した人工腸セクションからの腸内容物の流れを制御するように構成された流れ制御デバイスを備えてよい。
【0090】
この場合も、流れ制御デバイスは、閉位置において第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止する出口弁を備えてよく、さらに、開位置において腸内容物が第1の開放端部を通って人工腸セクションに流入するのを可能にする入口弁を備えてよい。
【0091】
上記の代わりにあるいは上記に加えて、上記と同様に、流れ制御デバイスは、腸内容物を第2の開放端部を通って人工腸セクションの外側まで前進させるポンプを備えてよい。
【0092】
第1の開放端部を通って供給される腸内容物を受け取って一時的に収集するリザーバが、第1の開放端部と第2の開放端部との間に設けられる場合、第2の開放端部を通ってリザーバを空にするようにポンプを構成することができる。
【0093】
さらに、ポンプが、ポンプを作動させる手動操作可能なスイッチを備える場合、移植方法は、スイッチを患者の体外から操作可能であるように皮下に移植するステップをさらに含んでよい。
【0094】
モータ
この場合も、少なくとも1つのモータを、人工腸セクションと一緒に移植することができ、かつ流れ制御デバイスの1つまたは複数のエネルギー消費部を自動的に駆動するように構成することができる。モータが、モータを作動させる手動操作可能なスイッチを備える場合、移植方法は、スイッチを患者の体外から操作できるように皮下に移植するステップをさらに備えてよい。
【0095】
エネルギーの伝送
エネルギーが、たとえば患者の体外から患者の体内のエネルギー消費部に無線によって伝送され、かつ/あるいは特にアキュムレータに蓄積されるか、あるいはアキュムレータからエネルギー消費部に伝送される場合、さらに、無線エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換デバイスを移植することが必要になる場合がある。その代わりにあるいはそれに加えて、たとえば、移植されたエネルギー源からエネルギー消費部に接触的にエネルギーを伝送するガルバニック結合部材を移植することができる。
【0096】
アキュムレータ
少なくとも1つの再充電可能な電池がアキュムレータとして設けられることが好ましい。その代わりにあるいはそれに加えて、少なくとも1つのコンデンサをアキュムレータとして設けることができる。
【0097】
制御ユニット
さらに、上述のように、やはり患者の体内に移植された部材のうちの1つまたは複数を直接または間接的に制御するように構成された制御ユニットの少なくとも一部を、患者の体内に移植することができる。制御ユニットが、制御ユニットを作動させる手動操作可能なスイッチを備える場合、移植方法は、前記スイッチを患者の体外から操作可能であるように皮下に移植するステップをさらに含んでよい。
【0098】
センサ
上述のように、患者の内部および患者の内部に移植されたシステムにおける物理的パラメータおよび/または機能パラメータを直接または間接的に検知するように1つまたは複数の物理的パラメータ・センサおよび/または機能パラメータ・センサを移植することができる。センサが圧力センサである場合、センサを人工腸セクションまたは患者の本来の腸に配置してそれぞれ、人工腸セクションまたは患者の本来の腸内の圧力を検知することができる。センサが張力センサである場合、センサを人工腸セクションまたは患者の本来の腸に接触するように配置して、それぞれ人工腸セクションまたは患者の本来の腸の膨張を検知することができる。センサが移動量センサである場合、センサを人工腸セクションまたは患者の本来の腸に接触するように配置して、それぞれ人工腸セクションまたは患者の本来の腸の移動量を検知することができる。機能センサは、以下の機能パラメータ、すなわち、システムに関する電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータまたは刺激パラメータのうちの少なくとも1つを測定するように構成することができる。
【0099】
使用
本発明によるシステムが適切に設置された後、人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部が、人工腸セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接または間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つの部材を備える場合、少なくとも1つの部材を腸内容物と相互作用するように作動させることができる。
【0100】
出口弁および入口弁
少なくとも1つの部材が、閉位置において人工腸セクションから第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止する出口弁を備える場合、この使用方法は、出口弁を開くステップと、次に人工腸セクションから腸内容物を除去するステップとをさらに含んでよい。さらに、開位置において腸内容物が第1の開放端部を通って人工腸セクションに流入するのを可能にする入口弁を少なくとも1つの部材がさらに備える場合、この方法は、人工腸セクションから腸内容物を除去する前に入口弁を閉じるステップをさらに含んでよい。
【0101】
ポンプ
人工腸部材内部の腸内容物と相互作用する少なくとも1つの部材がポンプを備える場合、この使用方法は、腸内容物をポンプによって人工腸セクションからその第2の開放端部を通って人工腸セクションの外側まで前進させるステップをさらに含んでよい。ポンプは、皮下に配置されたアクチュエータを患者の体外から手動で操作することによって作動させることができる。
【0102】
リザーバを含むポンプ
具体的には、人工腸セクションが、第1の開放端部を通って供給された腸内容物を受け取って一時的に収集するリザーバを第1の開放端部と第2の開放端部との間に備える場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、リザーバを空にするようにポンプを動作させることを含んでよい。
【0103】
リザーバが、一方の端部の所で蛇腹部材を閉鎖し、かつポンプの一部を構成する端壁を有する蛇腹部材で形成される場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、蛇腹部材の体積を低減させるように端壁を前進させることを含んでよい。
【0104】
ポンプが、前端がリザーバ内まで延びる可動ピストンを備える場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、リザーバの体積を低減させるようにピストンを前進させることを含んでよい。
【0105】
リザーバが可とう性の壁を有する場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、リザーバをポンプによって圧搾することを含んでよい。たとえば、ポンプは狭さくデバイスを含んでよく、その場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、リザーバのそれぞれの異なる部分を経時的に波動状に狭さくさせることによって、リザーバの各部を交互に狭さくさせたり解放したりして腸内容物をリザーバに沿って汲み出すことを含んでよい。具体的には、リザーバはチューブ状形態を有してよく、ポンプは、チューブ状リザーバにその外側から作用するローラ・ポンプであってよい。
【0106】
モータ
さらに、人工腸部材の内部の腸内容物と相互作用する少なくとも1つの部材がモータを備える場合、この使用方法は、少なくとも出口弁をモータによってその開位置と閉位置との間で移動させる、かつ/あるいは少なくともポンプをモータによって駆動するステップをさらに含んでよい。いずれの場合も、モータは、皮下に配置されたアクチュエータを患者の体外から手動で操作することによって作動させることが好ましい。
【0107】
エネルギー
この場合も、エネルギーは、患者の体外からアキュムレータに無線によって伝送される必要がある。したがって、アキュムレータにエネルギーを充填する際、この使用方法は、
患者の体外から無線によってエネルギーを伝送するステップと、
患者の体内に移植されたエネルギー変換デバイスによって、無線によって伝送されたエネルギーをアキュムレータに蓄積されるエネルギーに変換するステップと、
変換されたエネルギーの少なくとも一部をアキュムレータに充填するステップとを含む。
【0108】
この使用方法は、アキュムレータからシステムの移植された少なくとも1つのエネルギー消費部にエネルギーを供給するステップをさらに含んでよい。
【0109】
より好ましくは、無線によって伝送されたエネルギーの少なくとも一部は、電気エネルギーに変換され、無線によって伝送されたエネルギーの前記一部が電気エネルギーに変換されたときにシステムのエネルギー消費部に使用される。
【0110】
上述のように、有利なことに、電磁界、磁界、または電界によって無線エネルギーを伝送することができる。具体的には、赤外光信号、可視光信号、紫外光信号、レーザ信号、マイクロ波信号、X線放射信号、およびガンマ放射信号のうちの少なくとも1つを含む電磁波信号を含んでよい少なくとも1つの無線エネルギー信号によってエネルギーを伝送することができる。また、無線エネルギー信号は、音声信号または超音波信号を含んでよい。さらに、無線エネルギー信号は、デジタル信号またはアナログ信号、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0111】
制御
システムの少なくとも1つのエネルギー消費部を制御する制御ユニットの第1の部分が患者の体内に移植される場合、この使用方法は、制御ユニットの外部の第2の部分を使用して、制御ユニットの移植された第1の部分にデータを送信するステップをさらに含んでよい。データは、エネルギーが移植されたエネルギー消費部に伝送されるのと同様に制御ユニットの移植された第1の部分に送信されることが好ましい。特に、データは、制御ユニットの移植された第1の部分に無線によって送信されることが好ましい。この場合、無線制御信号を使用することができる。
【0112】
たとえば、制御ユニットの移植された第1の部分を制御ユニットの外部の第2の部分を介してプログラムすることができる。さらに、制御ユニットの移植された第1の部分から制御ユニットの外部の第2の部分にフィードバック信号を送信することができる。
【0113】
センサ
上述のセンサのうちの1つまたは複数が設けられる場合、この使用方法は、患者の以下の物理的パラメータ、すなわち、人工腸セクション内の圧力、患者の本来の腸内の圧力、人工腸セクションの膨張、患者の本来の腸の腸壁の膨張、患者の腸壁の移動、人工腸セクションなどのシステムの一部に対する圧力、人工腸セクションの壁などのシステムの一部の膨張、電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータ、システムの可動部の位置または移動のうちの1つまたは複数のような、患者の体における物理的パラメータおよび/または患者の体内の人工腸部材またはシステムの機能パラメータを検知するステップを含んでよい。
【0114】
検知された物理的パラメータの値が所定のしきい値を超えたときに、音声信号や視覚信号などの信号を生成すことができる。
【0115】
次に、本発明について、添付の図面に示される本発明のいくつかの好ましい実施形態に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本発明によるシステムを示す図である。
図2図1に図示のシステムに対応するあるシステムを示す。
図3図1に図示のシステムに対応するあるシステムを示す。
図4】人工腸セクションの第1および第2の両方の開放端部が、患者の小腸および/または大腸の壁に外科的にそれぞれ形成の側方開口部に取り付けられるシステムを示す図である。
図5】第2の開放端部が、患者の腸の断面開口部に連結され、さらに外科的に形成のろう孔に至ることを除いて同様なシステムを示す図である。
図6】人工腸セクションの実施形態を示す図である。
図7A図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。
図7B図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。
図8A図7Aおよび図7Bのシステムと同様のシステムを示す図である。
図8B図7Aおよび図7Bのシステムと同様のシステムを示す図である。
図9】人工腸セクションが患者の腸の一部を迂回する実施形態を概略的に示す図である。
図10A】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
図10B】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
図10C】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
図11A】ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、図10A図10Cの構造と同様の構造を示す図である。
図11B】ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、図10A図10Cの構造と同様の構造を示す図である。
図12A】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
図12B】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
図12C】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
図13A】狭さくデバイスと組み合わされた図12A図12Cの刺激デバイスを示す図である。
図13B】狭さくデバイスと組み合わされた図12A図12Cの刺激デバイスを示す図である。
図13C】狭さくデバイスと組み合わされた図12A図12Cの刺激デバイスを示す図である。
図14A】患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、図12または図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。
図14B】患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、図12または図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。
図15】人工腸セクションの開放端部の構造を示す図である。
図16】腸に対して側方に取り付けられる改良された構造を示す図である。
図17図5に図示のように、人工腸セクションと患者の下流側腸部を連結するためのリング・アンド・バルジ連結部の拡大図である。
図18A】スリーブと組み合わされた図17のリング・アンド・バルジ連結部を示す図である。
図18B】スリーブと組み合わされた図17のリング・アンド・バルジ連結部を示す図である。
図19A】バルジおよびリングが無いことを除いて、図18Aおよび図18Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部を示す図である。
図19B】バルジおよびリングが無いことを除いて、図18Aおよび図18Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部を示す図である。
図20A図19Aおよび図19Bの連結部の代替構成を示す図である。
図20B図19Aおよび図19Bの連結部の代替構成を示す図である。
図21A】他のスリーブ連結部を示す図である。
図21B】他のスリーブ連結部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明によるシステムを示す図1において、患者の体内に移植され、患者の腸に外科的に形成された開口部、具体的には患者の腸の壁の側方開口部に連結された第1の開放端部を有する人工腸セクションを含む。第2の開放端部が、ろう孔を形成する患者の腹壁から出ている。ここでは、人工腸セクションは、黒いボックスで示されており、1つまたは複数の弁、ポンプ、および/または任意の他の流れ制御デバイス、場合によってはリザーバと一緒に弁、ポンプ、流れ制御デバイスを駆動するモータなどの少なくとも1つのエネルギー消費部を含んでいる。アキュムレータは人工腸セクションとともに移植され、患者の身体の外側から無線で充電されている。エネルギーはここでは、アキュムレータから人工腸セクションにガルバニック電流によって伝送される。
【0118】
図2においては、図1に図示のシステムに対応するシステムであるが、エネルギーが無線によってアキュムレータから人工腸セクションに伝送される。
【0119】
図2においては、図1に図示のシステムに対応するシステムであるが、人工腸セクションの第2の開放端部が患者の肛門から出るものである。
【0120】
図4に示されるのは、人工腸セクションの第1および第2の両方の開放端部が、患者の小腸および/または大腸の壁に外科的にそれぞれ形成の側方開口部に取り付けられるシステムである。腸の下流側部分は、外科的に形成されたろう孔を形成する患者の腹壁から出ている。腸の下流側部分は、患者の肛門を通って出ることもできる。
【0121】
図5に示されるのは、第2の開放端部が、患者の腸の断面開口部に連結され、さらに外科的に形成のろう孔に至ることを除いて同様なシステムである。腸の下流側部分は、患者の肛門を通って出ることもできる。
【0122】
図6に示されるのは、人工腸セクションの実施形態である。当該人工腸セクションは、人工リザーバと、リザーバの上流側および下流側に配置された入口弁および出口弁とを含む。リザーバは、共通のハウジング内のポンプに取り付けられており、ポンプと入口弁および出口弁は、一部が患者の体内に移植される制御デバイスによって制御される。制御ユニットの外部と移植された部分との間でデータが無線によって伝送される。さらに、人工腸セクション、またはやはり患者の体内に移植され、かつここでは弁およびポンプにガルバニック接続されたアキュムレータに、エネルギーが無線によって伝送される。
【0123】
図7A〜7Bは、図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。ポンプは、前端がリザーバ内まで延びており、したがって、ピストンの前進時にリザーバの体積を低減させる可動ピストンを備えている。ピストンには、通常引き込み位置に設定しやすいようにばね負荷がかけられている。さらに、入口弁および出口弁は、ここではフラップ弁として実現されている。フラップ弁は、一方の弁が開かれ、同時に他方の弁が閉じられるように制御される。
【0124】
図8A〜8Bは、図7Aおよび図7Bのシステムと同様のシステムを示す図である。ただし、この場合、入口弁および出口弁は、外側から腸に作用し、圧縮によって腸を閉鎖する蛇腹部材を備えている。図8Aでは、出口弁の蛇腹部材が拡張されてリザーバの下流側で人工腸セクションを圧縮しており、一方、図8Bでは、入口弁の蛇腹部材によってリザーバの上流側で人工腸セクションが閉鎖されており、したがって、ポンプのピストンを前進させることによってリザーバを空にすることができる。
【0125】
図9は、人工腸セクションが患者の腸の一部を迂回する実施形態を概略的に示す図である。当該実施形態では、腸内容物を人工腸セクションの方へ送るように腸が縫合によって閉鎖されている。人工腸セクションの拡大領域は、リザーバ、1つまたは複数の弁、場合によってはモータを含むポンプまたは任意の他の流れ制御デバイスなどの、人工腸セクション内の腸内容物に作用する任意の種類の部材を表している。さらに、患者の体内に移植可能であり、かつ好ましくは再充電可能である電池が、人工腸セクションにエネルギーを供給する。人工腸セクションは無線によって制御され、電池は、再充電可能である場合には無線によって充電される。腸上または腸内に移植されたセンサは、腸内の物理的条件に関するデータを供給し、人工腸セクションを制御する。
【0126】
図10A〜10Cは、人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。ポンプが、患者の体内に、リザーバから分離されるがリザーバに近接して移植され、リザーバを空にするのに使用される。ポンプは、皮下移植された手動操作可能なスイッチによって作動される。
【0127】
図11A〜11Bは、ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、図10A図10Cの構造と同様の構造を示す図である。リザーバは、一方の端部の所で蛇腹部材を閉鎖する端壁を有する蛇腹部材によって形成されている。端壁は、端壁の前進時に蛇腹部材の体積を低減させることができるようにポンプの一部を構成している。蛇腹部材は、通常拡張位置に設定しやすいように弾性材料で作られている。
【0128】
図12A〜12Bは、患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。これらの弁は、患者の本来の腸に沿って人工腸部材の後方および/または前方に位置することができる。各弁は、腸セクションの筋肉または神経組織を電気刺激して腸セクションを少なくとも部分的に収縮させるように構成された電気刺激デバイスを備えている。このために、刺激デバイスは、腸セクションに電気パルスを印加するように構成された少なくとも1つの電極を備えている。腸を開放したり閉鎖したりするには、図示されている3つの刺激デバイスではなく単一の刺激デバイスで十分であるが、複数の刺激デバイスが、経時的に腸セクションのそれぞれの異なる部分を刺激するように構成されている。3つの刺激デバイスの機能を1つの一体ユニットとして組み合わせることもできる。
本来の腸内容物の流れの方向が矢印で示されている。図12A図12Cに示されているように、本来の腸内容物の流れとは逆方向に腸セクションのそれぞれの異なる部分を波動状に刺激して腸セクションを閉鎖することができる。本来の腸内容物の流れの方向に波動状の刺激を生じさせて、腸またはリザーバを空にするのを助けることもできる。
【0129】
図13A〜13Bは、狭さくデバイスと組み合わされた図12A図12Cの刺激デバイスを示す図である。狭さくデバイスは、図8Aおよび図8Bに関して説明した蛇腹弁のような、腸セクションを少なくとも部分的に機械的に狭さくさせるためのものである。完全な狭さくは、それぞれの腸セクションに追加的な電気刺激を施すことによって実現される。狭さくデバイスを解放して腸内容物を流通させることができる。
【0130】
図14A〜14Bは、患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、図12または図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。エネルギーおよび/またはデータが無線によって送られる。
【0131】
図15は、人工腸セクションの開放端部の構造を示す図である。開放端部の周りに形成されたショルダ部によって患者の腸の側方開口部に人工腸セクションが取り付けられる。
この端部は、腸に縫合され、それに加えてあるいはその代わりに腸にステープリングされかつ/あるいは接着される。
【0132】
図16は、腸に対して側方に取り付けられる改良された構造を示す図である。この構造においてショルダ部は、腸壁組織を収容する隙間を形成する上部ショルダ部および下部ショルダ部に分割される。上部ショルダ部の表面積は、下部ショルダ部の表面積よりも大きい。
【0133】
図17は、図5に図示のように、人工腸セクションと患者の下流側腸部を連結するためのリング・アンド・バルジ連結部の拡大図である。
【0134】
図18A〜18Bは、スリーブと組み合わされた図17のリング・アンド・バルジ連結部を示す図である。スリーブは、丸められ、腸の一部がスリーブと導管との中間に配置されるように元に戻すことができる。その後、リングはバルジに対してスリーブ上で押される。
【0135】
図19A〜19Bは、バルジおよびリングが無いことを除いて、図18Aおよび図18Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部を示す図である。
【0136】
図20A〜20Bは、図19Aおよび図19Bの連結部の代替構成を示す図である。スリーブは、巻かれて元に戻されるのではなく、単に腸に被せられる。
【0137】
図21A〜21Bは、他のスリーブ連結部を示す図である。この場合、スリーブは、折り畳み可能になるように開放端部の外面上に取り付けられている。可とう性のスリーブを折り畳むことによって、腸の一部が折り畳まれたスリーブ同士の中間に配置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B