(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の単位可変素子の各々において、前記下部電極及び前記上部電極間で電場を発生させるように構成され、前記複数の単位可変素子の全てから発生された前記電場の方向が同一である
ことを特徴とする請求項1に記載の多層可変素子。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置及び有機発光表示装置をはじめとする様々なディスプレイ装置を簡便に使用しようとするユーザ達の要求にしたがい、ディスプレイ装置をタッチして入力するタッチ方式の表示装置の使用が一般化されている。これにより、ユーザに直接的かつ様々なタッチフィードバック(feedback)を提供するために、可変素子(actuator)を活用する研究が続いている。また、近来に活発に開発されているフレキシブル(flexible)表示パネルに可変素子を付着して、フレキシブル表示パネルの様々な変位を実現しようとする研究も共に進められている。
【0003】
一般に、従来の表示装置は、可変素子として、偏心モータ(Eccentric Rotating Mass;ERM)、線形共振モータ(LRA)のような振動モータを使用した。前記振動モータは、表示装置の全体を鳴らすように考案されており、振動力を増加させるためには、質量体の大きさを増加させなければならないという問題があり、振動の程度を調節するための周波数変調が難しく、応答速度が非常に遅く、フレキシブル表示装置に使用するのに適切でないという短所があった。
【0004】
このような問題を改善するために、可変素子の材料として、形状記憶合金(Shape Memory Alloy;SMA)及び圧電性セラミックス(Electro−Active Ceramics;EAC)が開発されてきたが、形状記憶合金(SMA)は、反応速度が遅く、寿命が短く、不透明であり、圧電性セラミックスは、割れやすいため、表示装置、特に、フレキシブル表示装置に適用するのに困難があった。
【0005】
これにより、電気活性ポリマー(Electro−Active Polymer;EAP)を用いた可変素子(actuator)の技術が多くの人々の関心を引いている。電気活性ポリマー(Electro−Active Polymer;EAP)とは、電気的刺激によって変形され得るポリマーであって、電気的刺激によって繰り返し膨脹、収縮及び曲げ(bending)ることができるポリマーを意味する。このような電気活性ポリマーを電気活性層として含む可変素子を製造し、可変素子をフレキシブル表示パネルに付着して、ディスプレイの曲げを多彩に実現しようとする研究がなされている。
【0006】
しかし、1個の電気活性層のみを含む可変素子は、その厚さのため、曲げ性能に限界があり、駆動電圧が高いという問題があった。このような問題を解決するために、1個の電気活性層を含む単位可変素子を複数に積層した多層可変素子が紹介された。複数の電気活性層を含む多層可変素子は、1個の電気活性層のみを含む可変素子に比べて、同じ厚さでより大きい駆動変位を実現できることが立証された。
【0007】
従来の多層可変素子において、単位可変素子の電気活性層は、誘電性エラストマーで構成することが一般的であった。誘電性エラストマーは、自然状態で分極状態を維持しないため、従来の研究者らは、複数の電気活性層の分極状態に対して全く考慮しておらず、これにより、当然、複数の電気活性層の分極方向をいかなる形態で配列するかに対しても全く考慮していなかった。
【0008】
しかし、誘電性エラストマーよりさらに高い駆動変位を確保することができる強誘電性ポリマーの電気活性層への実現が可視化されており、本質的に強誘電性ポリマーは、特定の方向に自然分極状態を維持しているため、多層可変素子で強誘電性ポリマーからなる複数の電気活性層の分極方向をいかなる形態で配列するかに対しても考慮する必要性が提起された。これにより、電場の印加方向による電気活性層の膨脹及び収縮を考慮して、複数の電気活性層の各々に対する電場の印加方向を調節する方法が一部紹介されたが、今まで大きい実効を収めていない実情である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付される図面とともに詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明らかになるであろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形で実現されるはずであり、単に、本実施形態は、本発明の開示が完全なようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。
【0036】
素子または層が他の素子または層「上(on)」として表されるものは、他の素子のすぐ上にまたは中間に他の層または他の素子を介在した場合を全て含む。
【0037】
例え、第1、第2などが様々な構成要素を述べるために使用されるが、これらの構成要素は、これらの用語により制限されない。これらの用語は、単に1つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。したがって、以下において言及される第1の構成要素は、本発明の技術的思想内で第2の構成要素でありうる。
【0038】
明細書全体にわたって同一参照符号は、同一構成要素を示す。
【0039】
図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために図示されたものであり、本発明が、図示された構成の大きさ及び厚さに必ず限定されるものではない。
【0040】
本発明の種々の実施形態の各々の特徴が部分的にまたは全体的に互いに結合または組み合わせ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施形態が互いに対して独立的に実施可能でありうるし、相関関係により、共に実施することもできる。
【0041】
以下、添付された図面を参照して本発明の様々な実施形態を詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の構造を説明するための概略的な分解斜視図である。
【0043】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る表示装置10は、上部カバー100、下部カバー200、フレキシブル表示パネル300及び多層可変素子400を備える。
【0044】
上部カバー100は、フレキシブル表示パネル300及び多層可変素子400をカバーするようにフレキシブル表示パネル300及び多層可変素子400の上部に配置される。上部カバー100は、表示装置10の内部の構成要素を外部の衝撃及び異物質や水分の浸透から保護する。多層可変素子400が電場によって変位されるときに共に変位され得るように、上部カバー100は、高い軟性を有する物質、例えばプラスチックで構成されることができる。
【0045】
下部カバー200は、上部カバー100と対向するように配置され、フレキシブル表示パネル300及び多層可変素子400をカバーするようにフレキシブル表示パネル300及び多層可変素子400の下部に配置される。下部カバー200も表示装置10の内部の構成要素を外部の衝撃及び異物質や水分の浸透から保護する。多層可変素子400が変位されるときに共に変位され得るように、下部カバー200も高い軟性を有する物質、例えばプラスチックで構成されることができる。
【0046】
上部カバー100と下部カバー200との間にフレキシブル表示パネル300が配置される。フレキシブル表示パネル300は、紙のように曲がることができるようにフレキシビリティ(flexiability)を有するパネルであって、映像を表示するための表示素子が配置されたパネルを意味する。フレキシブル表示パネル300は、フレキシビリティを有するので、多層可変素子400が電場によって変位されるときに共に変位されることができる。フレキシブル表示パネル300は、フレキシビリティを確保するために、少なくともフレキシブル基板を含むことができる。フレキシブル表示パネル300は、例えば、有機発光表示パネルでありうる。有機発光表示パネルは、有機発光層に電流を流すことにより、有機発光層を発光させる表示パネルであり、有機発光層を使用して特定波長の光を発光する。有機発光表示パネルは、少なくともカソード、有機発光層、アノードを含む。
【0047】
上部カバー100と下部カバー200との間に多層可変素子400が配置される。多層可変素子400は、フレキシブル表示パネル300の下部に配置され、OCA(optical clear adhesive)またはOCR(optical clear resin)のような接着剤によりフレキシブル表示パネル300に付着される。多層可変素子400は、電気活性層が膨脹または収縮することにより変位されることができる。したがって、このような変位は、多層可変素子400の曲げ(bending)を含む。多層可変素子400が変位されつつ、上部カバー100、下部カバー200及びフレキシブル表示パネル300が変位され、これにより、表示装置10全体が変位され得る。
【0048】
図2は、本発明の一実施形態に係る表示装置の多層可変素子に対する概略的な断面図である。
【0049】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る多層可変素子400は、第1の単位可変素子410、第1の接着層420、第2の単位可変素子430、第2の接着層440、第3の単位可変素子450、第3の接着層460及び第4の単位可変素子470を備える。
【0050】
第1の単位可変素子410は、多層可変素子400を構成する1つの単位可変素子であって、電場により変位されるように構成される。
図2に示されたように、第1の単位可変素子410は、第1の下部電極412、第1の上部電極414及び第1の下部電極412と第1の上部電極414との間に配置された第1の電気活性層416を備える。
【0051】
図2に示されたように、第1の単位可変素子410、第2の単位可変素子430、第3の単位可変素子450及び第4の単位可変素子470は、複数の単位可変素子410、430、450、470に含まれたそれぞれの電気活性層416、436、456、476の延伸方向に対して垂直方向に順次積層される。
【0052】
第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、外部から電圧が印加されて、第1の電気活性層416に電場を形成する役割をする。第1の電気活性層416に電場を形成するためには、第1の下部電極412及び第1の上部電極414間に電位差が存在しなければならない。したがって、第1の下部電極412及び第1の上部電極414には、相違した大きさの電圧が印加される。例えば、第1の下部電極412に正の電圧が印加されながら第1の上部電極414に接地電圧が印加されることができ、第1の下部電極412に負の電圧が印加されながら第1の上部電極414に接地電圧が印加されることができる。
【0053】
第1の下部電極412及び第1の上部電極414の各々に印加される電圧の大きさによって第1の電気活性層416に形成される電場の方向は相違することができる。例えば、第1の下部電極412に印加される電圧より第1の上部電極414に印加される電圧が低い場合、第1の電気活性層416には上部方向の電場が形成されることができる。また、第1の下部電極412に印加される電圧より第1の上部電極414に印加される電圧が高い場合、第1の電気活性層416には下部方向の電場が形成されることができる。
【0054】
第1の下部電極412及び第1の上部電極414には交流電圧ACが印加されることができ、直流電圧DCが印加されることができる。第1の下部電極412及び第1の上部電極414に交流電圧ACが印加される場合、第1の単位可変素子410は周期的に変位されることができ、第1の下部電極412及び第1の上部電極414に直流電圧DCが印加される場合、第1の単位可変素子410は曲げられた状態で維持されることができる。
【0055】
第1の下部電極412及び第1の上部電極414は導電性物質で形成されることができ、これに制限されるものではないが、例えば、第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、金(Au)、銅(Cu)、チタニウム(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−銅合金(Al−Cu alloy)などのような金属物質で形成されるか、またはPEDOT[Poly(3,4−EthyleneDiOxyThiophene)]:PSS[Poly(4−StyreneSulfonic acid)]、ポリピロール(polypyrrole)、ポリアニリン(polyaniline)などのような導電性ポリマーで形成されることができる。第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、互いに同じ物質からなることができ、互いに相違した物質からなることもできる。
【0056】
電気活性層の下面及び上面に配置される電極の厚さが増加するほど、一定の厚さを有する多層可変素子に含まれる電気活性層の個数は減るようになる。電気活性層の個数が増加するほど、多層可変素子の駆動変位も増加するという点を考慮するとき、より多い数の電気活性層を一定の厚さの多層可変素子に配置するために、電気活性層の下面及び上面に配置される電極の厚さはなるべく薄いことが好ましい。例えば、第1の電気活性層416の下面及び上面にそれぞれ配置される第1の下部電極412及び第1の上部電極414の厚さは、50nm〜100nmであることが好ましい。
【0057】
同じ電圧が第1の下部電極412及び第1の上部電極414に印加されるとき、第1の下部電極412及び第1の上部電極414の面抵抗が低いほど、第1の電気活性層416に形成される電場は大きくなる。したがって、第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、なるべく低い面抵抗、例えば、200Ω/sq以下の面抵抗を有することが好ましい。
【0058】
第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、様々な方式で第1の電気活性層416の両面に配置されることができる。例えば、第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、スパッタリング(sputtering)、プリンティング(printing)、スリットコーティング(slit coating)などのような方式で第1の電気活性層416の両面に配置されることができる。特に、第1の下部電極412及び第1の上部電極414が同じ物質で配置される場合、第1の下部電極412及び第1の上部電極414は、同じ工程で同時に配置されることもできる。
【0059】
第1の電気活性層416は、第1の下部電極412と第1の上部電極414との間に配置されて、第1の下部電極412及び第1の上部電極414によって形成される電場により変位されることができる。
【0060】
第1の電気活性層416は、自然状態で分極(polarization)状態を維持している強誘電性ポリマーからなる。例えば、第1の電気活性層416は、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(homopolymer)またはポリフッ化ビニリデンコポリマー(co−polymer)のようなポリフッ化ビニリデン(poly vinylidenefluoride、PVDF)系ポリマーからなる。特定の方向、例えば、上部方向または下部方向に分極状態を維持している第1の電気活性層416に電場を印加して第1の電気活性層416の変位を誘発することができる。「上部方向」及び「下部方向」という用語は、それぞれの電気活性層の延伸方向と垂直な方向を意味する。すなわち、電気活性層の積層方向と平行な方向を意味する。
【0061】
第1の電気活性層416の分極方向は、第1の電気活性層416を構成する原子等の配列状態によって決定されることができる。
図3では、第1の電気活性層416がポリフッ化ビニリデン系ポリマーで構成されることと想定し、第1の電気活性層416の分極方向について説明する。
【0062】
図3は、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーで構成される第1の電気活性層の分極方向を示す図である。
【0063】
図3(a)に示すように、第1の電気活性層416の内部で電子を多く保有しているフルオロ(F)原子が下部に配置され、電子を少なく保有している水素(H)原子が上部に配置されるので、第1の電気活性層416の分極方向は上部方向になることが分かる。ポリフッ化ビニリデン系ポリマーにおいて分極方向は、フルオロ(F)原子で水素(H)原子の方向と規定されることができる。
【0064】
図3(b)に示すように、第1の電気活性層416の内部で電子を多く保有しているフルオロ(F)原子が上部に配置され、電子を少なく保有している水素(H)原子が下部に配置されるので、第1の電気活性層416の分極方向は、下部方向になることが分かる。
【0065】
第1の電気活性層416は、ソリューションキャスティング方式でなく、共押出法を利用して製造されたものであり得る。ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような誘電性エラストマーで電気活性層を製造する場合、溶液を基材上に塗布して乾燥させるソリューションキャスティング方式が一般的に利用される。なぜなら、誘電性エラストマーは簡単なソリューションキャスティング方式でも一定水準の誘電率を確保できるためである。しかし、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーのような強誘電性ポリマーは、ソリューションキャスティング方式では、高い誘電率を確保することができないため、共押出法により、さらには、延伸工程またはポーリング工程により高い誘電率を確保する。
【0066】
このような意味で、第1の電気活性層416は、延伸工程またはポーリング工程が加えられたフィルムであり得る。延伸工程は、加熱状態で重合体の鎖を引っ張って配向させる工程をいい、ポーリング工程は、ポリマーに高い直流電圧を印加して特定の電荷を有する原子を一方向に配列させる工程をいう。第1の電気活性層416に延伸工程またはポーリング工程が加えられることにより、第1の電気活性層416は、高い誘電率を確保して電気活性層として機能することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーであるPVDF(Poly VinyliDene Fluoride)は、延伸及びポーリングされて電気活性層として機能することができ、ポリフッ化ビニリデンコポリマーであるP(VDF−TrFE)(Poly(VinyliDene Fluoride)−TriFlurorEtyleneは、ポーリングされて電気活性層として機能することができる。
【0067】
第1の電気活性層416を共押出法、さらには、延伸工程またはポーリング工程を利用して製造する場合、
図2に示されたように、第1の単位可変素子410を第1の下部電極412、第1の上部電極414及び第1の電気活性層416で構成することが、第1の単位可変素子410を単純に1個の電極及び第1の電気活性層で構成することより駆動変位面で有利でありうる。なぜなら、2つの電極間の距離が近いほど、同じ駆動電圧でより強い電場を発生させることができ、前者の場合に2個の電極、すなわち、第1の下部電極412と第2の上部電極414との間に第1の電気活性層416のみが存在するようになるが、後者の場合に2個の電極間に第1の電気活性層だけでなく、2個の単位可変素子を互いに接着させるための接着層がさらに存在するようになり、電子の場合、後者の場合より2つの電極間の距離がより近くなるためである。
【0068】
第1の電気活性層416の厚さは、第1の単位可変素子410で動作するのに必要な消費電力及び駆動電圧と、第1の単位可変素子410として正常な動作ができるか否かを考慮して、当業者により自由に選択されることができる。好ましくは、第1の電気活性層416の厚さは、50μm〜400μmであり得る。より好ましくは、第1の電気活性層416の厚さは、100μm〜300μmであり得る。ここで、第1の電気活性層416の厚さが50μmより小さい場合、第1の単位可変素子410が正常に動作できるのに必要な十分な電圧が印加され得ない。これにより、第1の単位可変素子410が正常に動作できない。また、第1の電気活性層416の厚さが400μmより大きい場合、第1の単位可変素子410の正常な駆動に必要なマクスウェルストレスを発生させるために高い駆動電圧が要求され、これにより、消費電力が過度に増加され得る。
【0069】
第1の接着層420は、第1の単位可変素子410と第2の単位可変素子430との間に配置されて、第1の単位可変素子410と第2の単位可変素子430とを接着させる役割をする。第1の接着層420としては、OCA(optical clear adhesive)またはOCR(optical clear resin)が用いられることができ、好ましくは、誘電性エラストマーに強誘電性フィラーを添加した高誘電性の接着層が用いられることもできる。ここで、誘電性エラストマーは、アクリル系重合体、ウレタン系重合体及びシリコン系重合体からなる群より選ばれる1つ以上の物質であり得るし、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(polydimethyl siloxane;PDMS)であり得る。強誘電性フィラーは、圧電性セラミックス、炭素ナノ粒子、金属ナノ粒子及び導電性ポリマーからなる群より選ばれる1つ以上の物質でありうるし、好ましくは、チタン酸バリウム(barium titanate、BaTiO3)のような圧電性セラミックスであり得る。
【0070】
高誘電性の接着層は高い誘電率を有するので、接着層としての役割だけでなく、さらに他の電気活性層としての役割を果たすことができる。具体的に、高誘電性の接着層は、第1の単位可変素子410と第2の単位可変素子430とを接着させる接着層としての役割だけでなく、隣接した電極、すなわち、第1の単位可変素子410の第1の下部電極412及び第2の単位可変素子430の第2の上部電極434により印加される電場によって変形するさらに他の電気活性層としての役割を果たすことができる。したがって、第1の接着層420として誘電性エラストマーに強誘電性フィラーを添加した高誘電性接着層を採用する場合、同じ電場での多層可変素子400の駆動変位が向上し得るし、多層可変素子400の全体誘電率が増加され得る。
【0071】
第2の単位可変素子430、第3の単位可変素子450及び第4の単位可変素子470の各々は、多層可変素子400を構成する1個の単位可変素子であって、電場により変位されるように構成される。
【0072】
図2に示されたように、第2の単位可変素子430は、第2の下部電極432、第2の上部電極434及び第2の電気活性層436を備え、第3の単位可変素子450は、第3の下部電極452、第3の上部電極454及び第3の電気活性層456を備え、第4の単位可変素子470は、第4の下部電極472、第4の上部電極474及び第4の電気活性層476を備える。
【0073】
ここで、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476の各々は、自然状態で分極状態を維持する強誘電性ポリマーからなり、電場により変位されるように構成される。さらに、第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476の全ての分極方向は互いに同一である。例えば、
図2に示されたように、第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476の分極方向は、全て上部方向である。
【0074】
多層可変素子が2個の電気活性層のみを含む場合、多層可変素子の駆動変位は、複数の電気活性層の分極方向がいかなる形態で配列されたかよりは、複数の電気活性層の各々に印加される電場の方向に大きく影響を受ける。しかし、多層可変素子が3個以上の電気活性層を含む場合には、多層可変素子の駆動変位は、電気活性層に印加される電場の方向よりは、電気活性層の分極方向がいかなる形態で配列されたかに大きく影響を受ける。
【0075】
このような脈絡で、本発明の一実施形態に係る多層可変素子400では、第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476の全ての分極方向を同一にして、多層可変素子400の駆動変位を極大化する。多層可変素子400が3個以上の電気活性層416、436、456、476を含む場合には、複数の電気活性層416、436、456、476の全ての分極方向を同一にすることが複数の電気活性層416、436、456、476の分極方向を異なるようにすることより、一定の電圧でより高い駆動変位を表す。このような結果は、複数の電気活性層416、436、456、476の各々に印加される電場の方向をいかなる形態で調節するか否かに関係なく導き出される。
【0076】
もちろん、電気活性層416、436、456、476の全ての分極方向を同一に配列した場合にも、多層可変素子400の駆動変位は電場の方向に一部影響を受ける。具体的に、電気活性層416、436、456、476の全ての分極方向を同一に配列した場合にも、電気活性層416、436、456、476に印加される電場の方向を同一にすることが電気活性層416、436、456、476に印加される電場の方向を異なるようにすることより、一定の電圧でより高い駆動変位を表す。これに対しては、表1及び
図4を参照してさらに後述される。
【0077】
第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476は、互いに同じ物質、例えば、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーからなることができる。第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476を同じ物質で構成する場合、共押出工程、延伸工程及びポーリング工程が一度に進められるので、多層可変素子400の製造工程の単純化を図ることができる。また、第1の電気活性層416、第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476が一定の電圧で互いに同じ挙動をするようになるので、多層可変素子400の駆動変位を予測するのに有利である。
【0078】
第2の電気活性層436、第3の電気活性層456及び第4の電気活性層476の厚さ、形成方法などは、第1の電気活性層416と関連して前述した内容をそのまま採用できるので、重複する説明を省略する。また、第2の下部電極432、第3の下部電極452、第4の下部電極472は、第1の下部電極412と実質的に同様に構成することができ、第2の上部電極434、第3の上部電極454、第4の上部電極474は、第1の上部電極414と実質的に同様に構成することができるので、重複する説明を省略する。
【0079】
第2の接着層440は、第2の単位可変素子430と第3の単位可変素子450との間に配置され、第3の接着層460は、第3の単位可変素子450と第4の単位可変素子470との間に配置される。第2の接着層440及び第3の接着層460は、第1の接着層420と実質的に同様に構成することができるので、重複する説明を省略する。
【0080】
説明の便宜のために、
図2の多層可変素子400が4個の単位可変素子410、430、450、470と、4個の単位可変素子410、430、450、470間に配置された3個の接着層420、440、460とを有することと説明した。すなわち、それぞれの接着層は、2個の隣接した単位可変素子410、430、450、470間に配置される。
【0081】
本発明の効果について説明するために、
図2に示されたような、同じ分極方向に配列された4個の電気活性層を含む多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させた状態で、4個の電気活性層に印加される電場の方向を異にして多層可変素子の曲率半径及び振動加速度を測定した。そして、相違した分極方向に配列された4個の電気活性層を含む多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させた状態で4個の電気活性層に印加される電場の方向を異にして多層可変素子の曲率半径及び振動加速度を測定した。
【0082】
実施例1では、4個の電気活性層の分極方向が全て上部方向に配列された多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させ、第1の電気活性層及び第3の電気活性層には下部方向の電場が印加され、第2の電気活性層及び第4の電気活性層には上部方向の電場が印加されるように実験を進めた。このために、第1の上部電極、第2の下部電極、第3の上部電極及び第4の下部電極には正の電圧を印加し、第1の下部電極、第2の上部電極、第3の下部電極、第4の上部電極には負の電圧を印加した。
【0083】
実施例2では、4個の電気活性層の分極方向が全て上部方向に配列された多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させた状態で、第1の電気活性層、第2の電気活性層、第3の電気活性層及び第4の電気活性層の全てに下部方向の電場が印加されるように実験を進めた。このために、第1の上部電極、第2の上部電極、第3の上部電極及び第4の上部電極には正の電圧を印加し、第1の下部電極、第2の下部電極、第3の下部電極、第4の下部電極には負の電圧を印加した。
【0084】
比較例1では、4個の電気活性層の分極方向が交互に相違するように配列された多層可変素子を準備した。具体的に、第1の電気活性層及び第3の電気活性層の分極方向は上部方向に、第2の電気活性層及び第4の電気活性層の分極方向は下部方向に配列された多層可変素子を準備した。そして、このような多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させた状態で、第1の電気活性層及び第3の電気活性層には下部方向の電場が印加され、第2の電気活性層及び第4の電気活性層には上部方向の電場が印加されるように実験を進めた。
【0085】
比較例2では、比較例1のような多層可変素子をフレキシブル表示パネルに付着させた状態で、第1の電気活性層、第2の電気活性層、第3の電気活性層及び第4の電気活性層の全てに下部方向の電場が印加されるように実験を進めた。
【0086】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2では、4個の電気活性層の分極方向、そして、4個の電気活性層に対する電場の印加方向を除いては、全て同じ条件が適用された。具体的に、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の全てでは、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーに延伸工程及びポーリング工程を行った後、ポリフッ化ビニリデンホモポリマーをラミネーション(lamination)して4個の電気活性層を準備し、それぞれの電気活性層の両面に金属電極を蒸着することにより、4個の単位可変素子を製造した。分極方向測定装備(APC International社、90−2030)を利用して4個の電気活性層の分極方向を測定し、4.2kVppの条件下で最大曲率半径及び最小曲率半径を測定し、100kHz及び1.4kVppの条件下で振動加速度を測定した。
【0087】
下記の表1は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の最大曲率半径、最小曲率半径及び曲率変化値を表す表である。
【0089】
図4は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の多層可変素子の振動加速度を測定したグラフである。
【0090】
図4に示すように、実施例1は、約0.19Gの振動加速度を、実施例2は、約0.27Gの振動加速度を、比較例1は、約0.10Gの振動加速度を、比較例2は、約0.06Gの振動加速度を表すのが確認できる。
【0091】
表1及び
図4の結果から、実施例2のように配置及び駆動することが、すなわち、4個の電気活性層の変位方向を同一にした状態で、4個の電気活性層に印加される電場の方向を同一にすることが、一定の電圧で多層可変素子の駆動変位を極大化できることが確認できた。
【0092】
そして、表1及び
図4の結果から、実施例1のように配置及び駆動することが、すなわち、4個の電気活性層の変位方向を同一にした状態で、4個の電気活性層に印加される電場の方向を異なるようにすることが、比較例1のように配置及び駆動することより、すなわち、4個の電気活性層の変位方向を異なるようにした状態で、4個の電気活性層に印加される電場の方向を同一にすることより、一定の電圧で多層可変素子の駆動変位を増加させ得ることが確認できた。このような事実から、4個の電気活性層の各々に印加される電場の方向と関係なく、電気活性層の方向を同一にすることが多層可変素子の駆動変位を増加させることができる効果的な方案であることが確認できた。
【0093】
図5は、本発明の一実施形態に係る表示装置の様々な変形形態を説明するための例示的な状態図である。
図5では、説明の便宜のために、表示装置500がスマートフォンであることと想定して説明する。
【0094】
図5に示すように、表示装置500の一部が上部または下部に曲げ(bending)ることができる。具体的に、表示装置500において表示画面510の後面に多層可変素子が固定されており、多層可変素子の駆動により多層可変素子及び表示装置500の全体が変形する。すなわち、多層可変素子の一部が上部または下部に曲げることにより、表示装置500の一部も上部または下部に曲げることができる。ここで、多層可変素子の一部が一定の周期で上部または下部に曲げることにより、表示装置500の一部も上部または下部に曲げることができる。また、多層可変素子の一部が上部または下部に曲げられた状態で維持されることにより、表示装置500の一部も上部または下部に曲げられた状態で維持されることができる。
【0095】
例えば、表示装置500に入力されるユーザのタッチ入力に対応する出力として表示装置500の一部が上部または下部に曲げることができる。すなわち、表示装置500においてメッセージを受信したり、表示装置500に音声通話がかかってくる場合、これに対する出力として表示装置500の一部が上部または下部に曲げることができる。
【0096】
表示装置500で曲げられる部分、曲げられる方向、曲げられる時間及び曲げられる方向が変わる周期などは、表示装置500を介して様々に設定することができる。すなわち、多層可変素子による表示装置500の形状の変化は、ユーザにより様々に設定することができ、上記に提示された例示的な形状の変化に制限されない。
【0097】
本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む表示装置500では、様々な入力に対応して、入力によって相違するように多層可変素子が変形する。具体的に、変形する部分、変形する方向、変形が持続する時間及び変形する方向が変わる周期などは、表示装置500に印加される入力毎に相違するように設定することができる。これにより、多層可変素子により表示装置500が様々な形状に変形して、ユーザに様々な種類の出力が提供し得る。
【0098】
図6は、本発明の一実施形態に係る多層可変素子が有利に活用し得る実例を示す図である。
【0099】
図6(a)は、本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む電子新聞600の例示的な外観図である。
図6(a)に示すように、電子新聞600は、表示パネル610と、表示パネル610の後面に合着された多層可変素子とを備える。
【0100】
本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む電子新聞600において、多層可変素子により実際に紙新聞を見ることと類似した感じが提供される。電子新聞600の表示パネル610を介してページをめくる信号を入力すれば、信号が入力された部分の多層可変素子が変形される。これにより、多層可変素子が変形しながら電子新聞600の一部が一時的に曲げられて、紙新聞のようにページをめくる感じが提供される。
【0101】
また、本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む電子新聞600において、新しい記事がアップロードされて表示される場合、電子新聞600の一部が変形して記事がアップロードされたという事実が提供される。例えば、新しいヘッドラインを有する記事がアップロードされた場合、記事がアップロードされた部分の多層可変素子が変形して、記事のアップロード事実が直ちに表示される。
【0102】
図6(b)は、本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む時計700の例示的な図である。
図6(b)に示すように、時計700は、表示パネル710と、表示パネル710の下部に合着された多層可変素子とを備える。ここで、説明の便宜のために、時計700は、スマートウォッチ(smart watch)と想定して説明する。
【0103】
本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含む時計700において、多層可変素子により時計700の様々な機能が実現され得る。時計700の表示パネル710を介して一般的な時間情報が表示される。また、時計700の表示パネル710を介して天気、ニュースなどが表示され得る。また、時計700は、簡単な通話機能を含むことができ、時計700を付けているユーザの心拍数を判断することもできる。ここで、毎時定刻を知らせたり、指定されたアラーム時間を知らせたりするために、時計700の内部の多層可変素子が収縮され得る。これにより、ユーザの手首を引き締めて時間情報が提供され得る。また、新しい天気情報やニュースが表示される場合にも、時計700の内部の多層可変素子が収縮されるか、電話が受信される場合、時計700の表示パネル710の一部に突出部が形成されて情報が提供され得る。また、時計700の一部を介して測定されたユーザの心拍手が危険水準である場合、時計700の内部の多層可変素子が収縮されるか、形状が変わってユーザに警告知らせが提供され得る。
【0104】
図6(c)は、本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含むカーテン(curtain)の例示的な図である。
図6(c)に示すように、カーテン800は、表示パネル810と、表示パネル810のの下部に合着された多層可変素子とを備える。
【0105】
本発明の一実施形態に係る多層可変素子を含むカーテン800において、可変素子により外部環境に関する情報が様々な方式で表現され得る。具体的に、カーテン800の表示パネル810を介して外部の天気が決められた画面で表示され得るし、カーテン800の形態が変更されて具体的な天気の状態が表現され得る。例えば、曇った天気に風が吹く場合、カーテン800の表示パネル810を介して雲が表示され、風が吹く方向及び風の速度によって多層可変素子によりカーテン800の一部が曲げられ、曲げられる部分の面積も相違するようになることができる。すなわち、風の方向によって実際にカーテンが折れるか、揺れることができる方向がカーテン800の曲げ方向として表現されることができ、強い風であるほど、カーテン800が曲げられる部分の面積が増加し得る。また、ガラス窓を介して入射される照度量が一定照度量以下になると、カーテン800が自動に上部に巻き上がるか、左側または右側方向に折れることもできる。
【0106】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態をさらに詳細に説明したが、本発明は必ずこのような実施形態に局限されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で様々に変形実施することができる。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものでなく、説明するためのものであり、このような実施形態によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。したがって、以上で記述した実施形態は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的でないものと理解されなければならない。本発明の保護範囲は、下記の請求の範囲によって解析されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解析されなければならないであろう。