特許第6231551号(P6231551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231551
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20171106BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20171106BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 5/30 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 3/02 20060101ALI20171106BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   B60C 15/06 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08K3/04
   C08L9/00
   C08K5/3415
   C08K5/25
   C08K5/36
   C08K5/30
   C08K3/02
   B60C1/00 Z
   !B60C15/06 B
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-506782(P2015-506782)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2014057218
(87)【国際公開番号】WO2014148453
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-60064(P2013-60064)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇浩
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−143203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00
B60C 1/00
C08K 3/02
C08K 3/04
C08K 5/25
C08K 5/30
C08K 5/3415
C08K 5/36
C08L 9/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又は合成ゴムからなり、ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックが、ΔD80、ΔD10について、0.01μm≦粒度分布ΔD80≦0.06μm、かつ0.2μm≦粒度分布ΔD10≦0.6μmを満たし、(B)下記式(I)で表される化合物よりなるビスマレイミド、(C)下記式(II)又は(III)で表される化合物よりなるアルキリデンヒドラジド、(D)下記式(IV)で表される化合物よりなるジスルファン、(E)下記式(V)で表される化合物よりなるカルボン酸ヒドラジドからなるカーボンブラックカップリング剤より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むゴム組成物。
〔ここで、ΔD80、ΔD10とはそれぞれJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の80%、10%のときの分布の幅を示す。
【化1】
式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜24の2価のアルキル芳香族炭化水素基、x、yはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
【化2】
式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、炭素数0〜18の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素から任意の位置の水素2つを除いてなる2価の炭化水素基、カルボニル基より選んだ1種であり、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Rの置換基Xはヒドロキシル基、アミノ基より選ばれる1種、又はRがピリジンジイル基、Xが水素原子であり、R−Xとしてピリジル基をなす。R〜Rは水素及び炭素数1〜18の、直鎖、分岐、環状アルキル基、又は芳香族基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【化3】
式中、Rはチオカルバモイル基、またはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。チオカルバモイル基は炭素数6〜10の直鎖、分岐、脂環式アルキル基や芳香族置換されたアリールアルキル基のいずれかを有する。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。
【化4】
式中、Rはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。
【請求項2】
ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックのΔD10中心値が、0.1μm以上/0.2μm以下である請求項1に記載のゴム組成物。
〔ここでΔD10中心値とはJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の10%での分布の中心値である。〕
【請求項3】
ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックのΔD80中心値が、0.03μm以上/0.15μm以下である請求項1または2に記載のゴム組成物。
〔ここでΔD80中心値とはJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の80%での分布の中心値である。〕
【請求項4】
前記(A)カーボンブラックが製造炉での焼成により一工程で得られたもの、又は2成分以上の混合により、若しくは、幅広い分布をもつものから一部粒度領域を除いて、調製して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(A)カーボンブラックが2成分以上の混合により、調製して得られたものであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
(A)カーボンブラックが0.25μm≦粒度分布ΔD10≦0.45μmかつ0.03μm≦粒度分布ΔD80≦0.05μmを満たす、請求項1〜5の何れか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
(B)〜(E)から選ばれる少なくとも一つのカーボンブラックカップリング剤の合計配合量がゴム成分100重量部に対して0.05〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム組成物を、ビードよりも上方(トレッド側)部分の少なくとも一部に配設されたものである重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異な粒度分布からなるカーボンブラック及び、カーボンブラック凝集防止の薬品を配合したタイヤ用ゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重車両用のビード部の発熱性を低減化するよう改良すべく、過去、カーボンブラックの配合量、カーボンブラック種の変更、及び/又は分散改良剤の適用など、様々なアプローチが試みられてきた。それら従来技術では、発熱性は改善できるものの、一方で耐久性、特に耐亀裂性の低下が見られ、概して過酷な条件下で使用される重荷重車両用途には満足のいくものではなかった。
【0003】
特にカーボンブラック種を変更しようとすると、市販品を始め、製造炉の調整でもって、様々なカーボンブラック種を利用することができるとはいえ、自由自在に性状を選択可能とは言い難く、目的にあった、カーボンブラック種を試行錯誤の末に、選択するのは容易ではない。
【0004】
そのようななか、2種以上のカーボンブラック種に由来する性状のカーボンブラックを用いることができれば、選択の幅が広くなり、配合比の調整などにおいて、目的とする性能も予想がし易いなどの利点が考えられる。
【0005】
特許文献1では窒素吸着比表面積が60m/g以上のハードカーボンブラックと称するものと、窒素吸着比表面積が50m/g以下のソフトカーボンブラックと称するものを混合して用いることが開示されている。窒素吸着比表面積において、2つの区分からの選択を示したものであり、それぞれの区分の間の関係を示したものではない。
特許文献2ではヨウ素吸収No.が115未満の大粒子径と、115をこえる小粒子径の2種のカーボンブラックを、混合して用いることが開示されてはいるが、この文献においては、粒子径の基準としてヨウ素吸収No.において115を境界とする、2つの区分からの選択が示されているものであって、それぞれの区分の間の関係を示したものではない。同様に、DBPNo.とヨウ素吸収No.で規定した区分も開示されているが、この場合もヨウ素吸収No.において110を境界とする、2つの区分からの選択が示されているものであって、それぞれの区分の間の関係を示したものではない。
特許文献3には、窒素吸着比表面積並びにジブチルフタレート吸油量で規定された、2種のカーボンブラックを混合して用いることが開示されているが、これらカーボンブラックの粒度に関連する物性値の間に、どのような関係性があれば良いのかは、示されておらず、特定の2種のカーボンブラックが用いられているのみであり、ある閾値より、大きいか小さいかの、区分からそれぞれのカーボンブラックが選択されている。また、混合した効果よりも、他の特定成分による効果の方が支配的であり、2種のカーボンブラックの配合比の違いにより、もたらされた効果は明確ではない。
特許文献4にはセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積と、ジブチルフタレート吸油量との間の関係が規定されたカーボンブラックの2種を混合して用いることが開示されているが、2種のカーボンブラック間での物性値の関係性が、明らかにされているわけではない。
また、上記、特許文献1〜4の場合のいずれにおいても、カーボンブラックの粒径もしくは粒度のような、より基本的な物性値に基づいた、混合の方法を開示したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−128845号公報
【特許文献2】特開平7−041602号公報
【特許文献3】特許第3778662号公報
【特許文献4】特開平6−212024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、単一種のカーボンブラックでは改善し難かった、低発熱性と耐亀裂性能を両立させて改善し、重荷重用タイヤとしての使用に耐えうる、ゴム組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の粒度分布挙動を示す、カーボンブラックが、ゴム中で良好に分散し、さらに分散改良剤と併用することにより、従来にはない耐亀裂性とのバランスを保持しつつ、超低発熱性である、重荷重用タイヤの軟スティフナー部用ゴム組成物に適することを見出し、本願発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) 天然ゴム及び/又は合成ゴムからなり、ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックが、ΔD80、ΔD10について、0.01μm≦粒度分布ΔD80≦0.06μm、かつ0.2μm≦粒度分布ΔD10≦0.6μmを満たし、(B)下記式(I)で表される化合物よりなるビスマレイミド、(C)下記式(II)又は(III)で表される化合物よりなるアルキリデンヒドラジド、(D)下記式(IV)で表される化合物よりなるジスルファン、(E)下記式(V)で表される化合物よりなるカルボン酸ヒドラジドからなるカーボンブラックカップリング剤より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むゴム組成物。
〔ここで、ΔD80、ΔD10とはそれぞれJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の80%、10%のときの分布の幅を示す。
【化1】
式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜24の2価のアルキル芳香族炭化水素基、x、yはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
【化2】
式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、炭素数0〜18の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素から任意の位置の水素2つを除いてなる2価の炭化水素基、カルボニル基より選んだ1種であり、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Rの置換基Xはヒドロキシル基、アミノ基より選ばれる1種、又はRがピリジンジイル基、Xが水素原子であり、R−Xとしてピリジル基をなす。R〜Rは水素及び炭素数1〜18の、直鎖、分岐、環状アルキル基、又は芳香族基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【化3】
式中、Rはチオカルバモイル基、またはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。チオカルバモイル基は炭素数6〜10の直鎖、分岐、脂環式アルキル基や芳香族置換されたアリールアルキル基のいずれかを有する。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。
【化4】
式中、Rはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。〕
(2) ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックのΔD10中心値が、0.1μm以上/0.2μm以下である(1)に記載のゴム組成物。
〔ここでΔD10中心値とはJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の10%での分布の中心値である。〕
(3) ゴム中に含まれる(A)カーボンブラックのΔD80中心値が、0.03μm以上/0.15μm以下である(1)または(2)に記載のゴム組成物。
〔ここでΔD80中心値とはJIS K6217−6に準ずるディスク遠心沈降式粒度分布測定により得られた凝集体質量分布曲線における、頻度の高さが最大点の80%での分布の中心値である。〕
(4) 前記(A)カーボンブラックが製造炉での焼成により一工程で得られたもの、又は2成分以上の混合により、若しくは、幅広い分布をもつものから一部粒度領域を除いて、調製して得られたものであることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1つに記載のゴム組成物。
(5) 前記(A)カーボンブラックが2成分以上の混合により、調製して得られたものであることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか1つに記載のゴム組成物。
(6) (A)カーボンブラックが0.25μm≦粒度分布ΔD10≦0.45μmかつ0.03μm≦粒度分布ΔD80≦0.05μmを満たす、(1)〜(5)の何れか1つに記載のゴム組成物。
(7) (B)〜(E)から選ばれる少なくとも一つのカーボンブラックカップリング剤の合計配合量がゴム成分100重量部に対して0.05〜20重量部であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載のゴム組成物。
(8) (1)〜(7)のいずれか1つに記載のゴム組成物を、ビードよりも上方(トレッド側)部分の少なくとも一部に配設されたものである重荷重用タイヤ。
【発明の効果】
【0010】
(1)〜(3)によれば、本発明に規定されている、粒度分布を備えたカーボンブラックは、ゴム成分中に良好に分散させることができ、その結果、良好にバランスした低発熱性と耐亀裂性を備えた、ゴム組成物が得られる。(4)または(5)により、(1)〜(3)のような凝集体質量分布を有するように調製されたカーボンブラックを用いたゴム組成物が得られ、(6)によって、さらに好ましい粒度分布の条件が示され、低発熱性と耐亀裂性が両立して優れた、軟スティフナー用ゴム組成物が得られる。
(7)〜(11)によれば、式(I)〜(V)に示すカーボンブラックカップリング剤のいずれかを、好適な配合量で、ゴム中に配合することで、カーボンブラックとポリマーを固着し、好ましい分散状態を維持することができる。さらに低発熱性と耐亀裂性が両立したゴム用組成物が得られる。ここで、カーボンブラックとポリマーを固着する薬品を配合しない場合、カーボンブラックはそれぞれの粒径同士で凝集してしまい、良好な分散状態を保つことが出来ず良好な結果が得られない。
(12)によれば、上記(1)〜(11)で得られた、低発熱性、耐亀裂性に優れたゴム組成物を軟スティフナー部に用いた重荷重用タイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、模式的に表した凝集体質量分布曲線と、カーボンブラックの粒度のパラメータを示したものである。
図2図2は、一般的な大型車両用タイヤの半部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、ゴム組成物に配合される、(A)カーボンブラックが、ディスク遠心沈降式粒度分布測定における、図1で模式的に示された、凝集体質量分布曲線においてそれぞれ示されている粒度分布の幅である、ΔD80、ΔD10について、0.01μm≦粒度分布ΔD80≦0.06μm、かつ0.2μm≦粒度分布ΔD10≦0.6μmを満たすことを特徴とする。
【0013】
上記、粒度分布ΔD80、ΔD10が、0.01μm≦粒度分布ΔD80≦0.06μm、かつ0.2μm≦粒度分布ΔD10≦0.6μmを満たすようにするには、ブレンドの場合、大粒度側についてはASTMのコードにおいて、N600〜N800のカーボンブラックと、小粒度側についてN300〜N400のカーボンブラックを、練り中に同時に投入する、事前にカーボンのみをブレンド(プリブレンド)したものを練り中に投入する、大粒度のカーボンを含むゴム組成物と小粒度のカーボンを含むゴム組成物を混練りすることで、配合するが、条件を満たす分布については、大粒度、小粒度の分布が判明している2種のカーボンブラックの、各々の配合比におけるシミュレーションした結果などに従って配合することで得ることができる。
【0014】
粒度分布ΔD10が0.2μm以下の粒度分布の場合、耐亀裂性には優れるが発熱性には劣り、一方ΔD10が0.6μm以上の場合発熱性には優れるが、耐亀裂性に劣る。またΔD80が0.06μm以上の場合も、発熱性に優れるが、耐亀裂性に劣る。そしてΔD80が0.01μm以下の物を生産するにはコスト面で多大なデメリットがあり、且つ発熱性にも効果が期待できない。
【0015】
さらに、カーボンブラックが粒度分布ΔD10について0.2μm≦粒度分布ΔD10≦0.5μmを満たすことが好ましく、0.25μm≦粒度分布ΔD10≦0.45μmを満たすことが、特に好ましい。一方、粒度分布ΔD80は0.03μm≦粒度分布ΔD80≦0.05μmを満たすことが好ましい。粒度分布ΔD10、ΔD80の両方については、0.25μm≦粒度分布ΔD10≦0.45μmかつ0.03μm≦粒度分布ΔD80≦0.05μmが好ましい。一般的には大粒径カーボンを単独で用いた際には発熱性が向上し耐久性が低下、小粒径のカーボンを単独で用いた際には発熱性が向上し耐久性が低下する傾向にあるものを、上記粒度分布挙動を満たすことで発熱性及び補強性を高度に両立可能なカーボンブラックとなる。
【0016】
上記、粒度分布挙動を示すカーボンブラックは、図1で表されているように、その凝集体質量分布曲線においては、最頻値を与える、粒度のピークについてはシャープな分布を示すが、裾において、広がりが見られ、いわゆる裾引き(テーリング)した分布挙動を示す。そのため、上記のような極端に異なる、ΔD10とΔD80の数値範囲となる。一見して、必ずしも2峰性、或いはそれ以上の多峰性を示している様に見えるとは限らないが、単一成分ではないことが明らかな分布挙動を示す。
【0017】
また、図1において示されているΔD10中心値が、0.1μm以上/0.2μm以下であることが、発熱性能と耐亀裂性能のバランスの観点から好ましい。特に耐亀裂性の改善が見られる傾向がある。このΔD10中心値を満たすようにするには、大粒径と小粒径のカーボンブラックが、適宜共存することで、条件を満たすことができる。同様にΔD80中心値が0.03μm以上/0.15μm以下である場合も、発熱性能と耐亀裂性能のバランスが好ましい。
【0018】
通常、上記のような本発明に適した粒度分布挙動を示す(A)カーボンブラックは、ブレンドによって得るのが容易であると考えられるが、場合によっては製造炉での燃焼条件の調整により、単一の工程で得られたものであっても、粒度分布の条件を満たすものであれば、使用することができる。また、幅広い分布を持ったカーボンブラックから、特定の粒度領域を不完全に除くことでも得ることができ、粒度分布の条件を満たせば、本発明に使用することができる。
【0019】
上記、条件を満たすように混合或いは分別された、もしくは、一工程から製造された本発明に使用するカーボンブラックを、ゴム成分100重量部に対し、20〜110重量部添加することで本発明に使用するゴム組成物が得られる。この場合、粒度分布において、ΔD10、ΔD80の条件を満たすカーボンブラックが、2種のカーボンブラックを混合して成るものである場合、使用においてあらかじめ混合しておくことは必須でなく、上記条件を満たす、混合比配分があらかじめ判明している場合に、2種のカーボンブラックのそれぞれの必要重量部を、ゴム成分100重量部に対し、合計で20〜110重量部となるように、ゴム成分への添加時に、2種のカーボンブラックを個々に同時、或いは、時間差を伴って添加してもよい。又、各々のカーボンブラックをゴム成分に添加し混練したものを、さらに合わせて混練してもよい。
【0020】
上記とは逆に、分散性を考慮して、あらかじめ2種のカーボンブラックを混合したプリブレンドを、調製して用いる場合には、混合・撹拌等において、乾式、湿式をはじめ種々の方法を用いることができるが、その工程において、特に大粒度成分のストラクチャが破壊され、粒度変化をきたさない程度に、また粒度変化をきたし難い方法を用いて、行うことが好ましい。
【0021】
上記、粒度分布において、ΔD10、ΔD80の条件を満たす(A)カーボンブラックの添加量は、ゴム成分100重量部に対して、20〜110重量部が好ましく、30〜60重量部がより好ましい。
【0022】
次に本発明におけるゴム組成物は、カーボンブラックカップリング剤として、(B)ビスマレイミド化合物、(C)アルキリデンヒドラジド化合物、(D)ジスルファン化合物、(E)カルボン酸ヒドラジドよりなる群より、選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明において、ゴム組成物に配合できる、(B)ビスマレイミド化合物は下記一般式(I)で表される化合物である。
【化5】

〔式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜24の2価のアルキル芳香族炭化水素基、x、yはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。〕
【0024】
本発明に、用いることができる(B)ビスマレイミド化合物としては、N,N′−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N′−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン等を例示でき、ゴム組成物中に、これらを1種以上含むことができる。特にN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドが好適に使用できる。
【0025】
本発明において、ゴム組成物に配合できる、(C)アルキリデンヒドラジド化合物は下記一般式(II)〜(III)で表される化合物である。
【化6】

〔式中、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族基、炭素数0〜18の飽和又は不飽和直鎖状炭化水素から、任意の位置の水素2つを除いてなる2価の炭化水素基、カルボニル基より選んだ1種であり、Rは炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Rの置換基Xはヒドロキシル基、アミノ基より選ばれる1種であり、Yはピリジル基である。R〜Rは水素及び炭素数1〜18の、直鎖、分岐、環状アルキル基、又は芳香族基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。〕
【0026】
本発明に、用いることができる(C)アルキリデンヒドラジド化合物としては、一般式(II)で表されるものとして、N,N′−ジ(1−メチルエチリデン)−イソフタル酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1−メチルエチリデン)−アジピン酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1−メチルプロピリデン)イソフタル酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1−メチルプロピリデン)−アジピン酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1,3−ジメチルプロピリデン)−イソフタル酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1,3−ジメチルプロピリデン)−アジピン酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1−フェニルエチリデン)−イソフタル酸ジヒドラジド、N,N′−ジ(1−フェニルエチリデン)−アジピン酸ジヒドラジドや、テレフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イコサノイックジカルボン酸ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジドのアルキリデン誘導体、等が挙げられる。また、一般式(III)で表されるものとしては、3−ヒドロキシ−N−(1−メチルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N−(1−メチルプロピリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N−(1,3−ジメチルプロピリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−N−(1−フェニルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド等の3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジドのアルキリデン誘導体の他に、サリチル酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、アントラニル酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジドのアルキリデン誘導体などが挙げられる。また、一般式(III)において、R−Xとしてピリジル基をなす場合として表されるものとしては、N−(1−メチルエチリデン)−イソニコチン酸ヒドラジド、N−(1−メチルプロピリデン)−イソニコチン酸ヒドラジド、N−(1,3−ジメチルプロピリデン)−イソニコチン酸ヒドラジド、N−(1−フェニルエチリデン)−イソニコチン酸ヒドラジド等のイソニコチン酸ヒドラジドのアルキリデン誘導体、等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いることができる(D)ジスルファン化合物とは、2つのつながった硫黄原子を構造に含むものであり、命名法によってはジスルフィドと命名されてもよい化合物である。下記に示す一般式(IV)で表される。
【化7】

〔式中、Rはチオカルバモイル基、またはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。チオカルバモイル基は炭素数6〜10の直鎖、分岐、脂環式アルキル基や芳香族置換されたアリールアルキル基のいずれかを有する。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。〕
【0028】
一般式(IV)で表されるものとして、Rが置換されたチオカルバモイル基である、テトラ(アルキル)チウラムジスルフィド、テトラ(アリールアルキル)チウラムジスルフィド等が挙げられる。また、Rがベンズイミダゾール基や、炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基で置換されたグアニジン基に連なった、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖部分を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基である、N,N’−ジ−(1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−ω,ω’−ジスルファンジイルジアルカンアミン、N,N’−ジ−(ベンズイミダゾール−2−イル)−ω,ω’−ジスルファンジイルジアルカンアミド、ビス[ω−(ベンゾイミダゾール−1−イル)−ω−オキソアルキル]ジスルファン、ビス[ω−(2,3−ジフェニルグアニジノ)アルキル]ジスルファンや、前記化合物のベンズイミダゾール上の炭素原子又は窒素原子上の水素原子が炭素数1〜4の直鎖、または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。
【0029】
本発明に用いることができるカルボン酸ヒドラジド化合物(E)とは下記、一般式(V)で表されるものである。
【化8】
〔式中、Rはベンズイミダゾール基やグアニジン基に連なる、炭素数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル鎖を有するアルキル基、アシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基のいずれかである。ベンズイミダゾール骨格の炭素原子や窒素原子上の水素は、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基のいずれかで置換されていてもよい。グアニジン基は炭素数1〜8の直鎖、分岐、脂環式アルキル基やアリール基のいずれかで置換されていてもよい。〕
【0030】
一般式(V)で表される、(E)カルボン酸ヒドラジドは、前記で述べた(C)アルキリデンヒドラジドとは区別しているが、C=N2重結合を有しない。炭素数2〜8の直鎖アルキル鎖部分を有するカルボン酸から誘導され、ヒドラジンの片側の窒素原子にアシル基か結合したカルボン酸アミドであり、特に本願で用いたものはアルキル鎖部分に、直接または窒素原子を介して、5員環部分の炭素又は窒素で結合したベンズイミダゾール基やグアニジン基を有するものを用いる。また、該ベンズイミダゾール基の炭素原子や窒素原子上の水素原子が、炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基やハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基で置換されていてもよい。具体的な化合物としては2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミノ]アセトヒドラジド、2−(2−アミノ−ベンゾイミダゾール−1−イル)アセトヒドラジド等が挙げられる。
【0031】
(B)ビスマレイミド化合物、(C)アルキリデンヒドラジド化合物、(D)ジスルファン化合物、(E)カルボン酸ヒドラジド化合物から少なくとも1つが選択されるカーボンブラックカップリング剤の合計配合量は、ゴム成分100重量部に対して、0.05〜20重量部であることを特徴とする。0.05重量部未満では効果が期待できず、20重量部を超えると、発熱性が著しく悪化する。2〜20重量部でも発熱性の改善において、低下傾向はあるが、耐亀裂性は改善されるので、両者のバランスの点からは20重量部以下で用いることは、許容される。0.05〜2重量部で用いるのが好ましい。これら(B)〜(E)から少なくとも1つが選択されるカーボンブラックカップリング剤は、粒度分布において、ΔD10、ΔD80の条件を満たす(A)カーボンブラックを、ゴム組成物に配合して混練する際に、共に配合することが好ましい。この際に、(A)カーボンブラックを、ゴム組成物に配合する際の方法に合わせて、カーボンブラックカップリング剤も配合タイミングや、一括又は分割配合等を、適宜選んで添加することが好ましい。
【0032】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム(NR)単独、または、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などから選ばれる合成ゴムを、天然ゴム50〜100重量部及び/または合成ゴム0〜50重量部からなる、ゴム100重量部となるように、適宜配合して用いることができる。天然ゴム80〜100重量部が好ましい。
【0033】
本発明のゴム組成物は、上記、ゴム成分と、粒度分布においてΔD10、ΔD80の条件を満たすカーボンブラックに加え、ゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、種々の成分として、充填剤(例えば、シリカ等の補強性充填剤;並びに炭酸カルシウム及び炭酸カルシウムなどの無機充填剤);加硫促進剤;老化防止剤;酸化亜鉛;ステアリン酸;軟化剤;及びオゾン劣化防止剤等の添加剤を挙げることができる。なお、加硫促進剤として、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド)及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤;TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤;並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
【0034】
さらに、硫黄をゴム成分100重量部に対して1〜10重量部の範囲で配合することができ、1〜7重量部の範囲が好ましく、2〜4重量部の範囲がより好ましい。
【0035】
本発明のカーボンブラックを用いたゴム組成物は、上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練することにより、製造することができ、従来のゴム組成物と比較して低発熱性、高耐久性をはっきすることからトラック、バス、重機等の大型タイヤの、軟スティフナー部として好適に使用できる。
【0036】
図2は、大型車両用のタイヤの半部分断面図である。図2に示すような、本実施の形態のタイヤ1にあっては、ビード4を巻き返している折返しプライコード5aの外側に隣接し、且つタイヤ高さHの半分以下、該ビード4より上方の領域7の一部又は全部に配置される軟スティフナーゴム組成物が、ゴム成分100重量部中、天然ゴムが50重量部以上であるゴム成分に対し、上記述べてきたような、ΔD10、ΔD80の条件を満たすカーボンブラック20〜110重量部、並びに(B)〜(E)から少なくとも1つが選択されるカーボンブラックカップリング剤を0.05〜20重量部で配合したものである。
【0037】
即ち、本実施の形態のタイヤ1にあっては、一般的な大型車両用タイヤと同様に、トレッド部2と、その両側に連なる一対のサイドウォール部3、及び一対のビード4からなる。これらの各部は埋設したビード4と、図示しない他方のビード4との相互間に架装されるカーカス5と、そのカーカス5の外側でトレッド部3を強化する複数のスチールコードからなるベルト層6を備えている。そして、カーカス及びベルトはスチールコード等の金属補強部材に被覆ゴムを被覆してなるカーカスプライ層及びベルトプライ層からなっている。また、被覆ゴムは、スチールコード等の金属補強部材の表面を直接被覆し、或いは金属コード等が織物化した周囲をコーティングして使用される。
ここで、本願発明にあっては、タイヤのリム径が25インチ以上、更には、40インチ以上の大型重荷重用のタイヤとすることが良く、この場合の折り返しプライコード5aとタイヤ表面までの厚みの最大部分(図2の8の長さ)、即ち最大ゲージが30mm以上、特に、40mm以上のものに対してより好適に作用する。
上記ゴム組成物からなる軟スティフナーゴム7は少なくとも50体積%以上を占めることが望ましく、特に、60体積%以上を占めることが望ましい。
【0038】
このような上記軟スティフナーゴムを備えて構成されるタイヤにあっては、軟スティフナーゴムの発熱性、耐亀裂性が向上する。例えば重荷重での走行後のゴムの歪みなどが起こらず、耐亀裂性が向上し、タイヤの走行耐久性及びその安全性が改善される。このため、大型車両用、重荷重用タイヤに好適である。尚、本発明のタイヤの内部には空気のほかに、窒素等の不活性ガスを充填することができる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0040】
軟スティフナーゴムとして天然ゴム及び/又は合成ゴムからなるポリマー100重量部に対して、表1に示した、様々なΔD10、ΔD80の条件を満たすカーボンブラックをはじめとする内容で、ゴム組成物を処方し、145℃、60分の条件で加硫して、タイヤサイズ4000R57のタイヤを作成した。得られた各々の試作タイヤについて軟スティフナーゴム部位7の発熱性、耐久性について下記評価方法にて評価した。
[発熱性の評価]
製品タイヤの第2リムライン部の、折り返しプライ外側の軟スティフナーゴム部分で、折り返しプライから1mm外側のゴムを採取、スペクトロ測定機にて粘弾性を測定し、5%tanδでもって比較を行った。実施例1〜17と比較例1〜6は比較例1の値を100とする指数で表し、実施例18〜30と比較例7〜9は比較例7の値を100とする指数で表したものであり、数値が大きいほど良好である。
[耐久性の評価]
上記と同様に、製品タイヤの軟スティフナーゴムを採取し、得られたゴムサンプルを用いて、繰返し疲労試験機により、破断に至るまでの破断回数で以って比較を行った。実施例1〜17と比較例1〜6は比較例1の値を100とする指数で表し、実施例18〜30と比較例7〜9は比較例7の値を100とする指数で表したものであり、数値が大きいほど良好である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
合成ゴム
SBR:スチレン−ブタジエンゴム
BR:ブタジエンゴム
カーボンブラックカップリング剤
化合物a:N,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド、三井化学(株)製
化合物b:3−ヒドロキシ−N−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド
化合物c:3−ヒドロキシ−N−(1−メチルエチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド
化合物d:N,N’−ジ(1−メチルエチリデン)−イソフタル酸ジヒドラジド
化合物e:N−(1−メチルエチリデン)−イソニコチン酸ヒドラジド
化合物f:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド
化合物g:N,N’−ジ−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−2,2’−ジスルファンジイルエタンアミン
化合物h:N,N’−ジ−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−3,3’−ジスルファンジイルジプロパンアミド
化合物i:ビス[3−(2−アミノ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−3−オキソプロピル]ジスルファン
化合物j:ビス[6−(2−アミノ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−6−オキソヘキシル]ジスルファン
化合物k:ビス[2−(2,3−ジフェニルグアニジノ)エチル]ジスルファン
化合物m:2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミノ]アセトヒドラジド
化合物n:2−(2−アミノ−ベンゾイミダゾール−1−イル)アセトヒドラジド
共通成分の内訳と各々の配合部数(合計で9.05質量部)
ステアリン酸:2質量部
酸化亜鉛:3質量部
老化防止剤:大内新興化学工業製、ノクラック6C、0.95質量部
加硫促進剤:大内新興化学工業製、ノクセラーCZ、0.8質量部
(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
硫黄:2.3質量部
(A)カーボンブラック
・実施例は旭カーボン社製のASTM規格において、N660とN330に相当するカーボンブラック2種をブレンドして作成。
【0044】
表1において、天然ゴムを用い(A)カーボンブラックがΔD10、ΔD80の条件を満たさず、分散改良剤を用いない比較例1、2では発熱性と耐亀裂性の両立が難しい。(A)カーボンブラックが条件を満たしても、カーボンブラックカップリング剤を用いない比較例3は、発熱性と耐亀裂性が両立した改善は難しい。カーボンブラックがΔD10、ΔD80の分布幅の条件を満たし、カーボンブラックカップリング剤である(B)マレイミドを添加した実施例1と2は、発熱性、耐亀裂性の向上効果が認められる。さらに、カーボンブラックが分布幅に加えΔD10中心値の条件もみたし、(B)マレイミドを少量であっても添加した実施例3では、発熱性と耐亀裂性ともに向上傾向が見られ、添加効果が認められる。さらに(B)マレイミド類を、より好適な量で用いた、実施例4〜6では低発熱性、耐亀裂性ともに優れている。(B)マレイミド類が適量ながら、過剰気味の実施例7、さらにそれを超えた実施例8も、低発熱性はピークを越えているが、許容できる範囲であり、特に、カーボンブラックカップリング剤を用いないと、改善が難しい耐亀裂性の向上が見られる。カーボンブラックカップリング剤として(C)アルキリデンヒドラジド類を好適量用いた実施例9〜12でも、低発熱性、耐亀裂性とも両立して良好な改善が見られる。特に実施例9はΔD80分布幅の狭い(A)カーボンブラクックをもちいた例である。ゴム成分に合成ゴムを添加した場合も、カーボンブラックが条件を満たさない比較例4〜6は、カーボンブラックカップリング剤の有無にかかわらず、耐亀裂性の向上が難しい。(A)カーボンブラックが条件を満たし、カーボンブラックカップリング剤が好適量である、実施例16と17はやはり、低発熱性、耐亀裂性とも良好である。
【0045】
次に、表2において(A)カーボンブラックにおいてΔD10、ΔD80の分布幅の条件に加えΔD80の中心値の条件の効果を中心に検討したところ、カーボンブラックカップリング剤を用いていない比較例7を基準として、特に、(A)カーボンブラックがΔD80の分布幅、中心値とも条件を満たさない比較例8と9については、比較例9で、カーボンブラックカップリング剤を用いても、発熱性と耐亀裂性のバランスの良い向上が見られなかった。(A)カーボンブラックがΔD10、ΔD80の条件に加えΔD80の中心値が条件を満たし、カーボンブラックカップリング剤の配合量を適宜加減しながら、(C)アルキリデンヒドラジド、(D)ジスルファン、(E)カルボン酸ヒドラジドと変えて検討した、実施例18〜28はいずれも、発熱性、耐亀裂性のバランスが良いことが示された。ΔD80の分布幅が小さい実施例29でも特に、発熱性の向上が見られた。一方、ΔD80の分布幅をさらに小さくしたところ、ΔD80中心値が好適範囲から外れた実施例30では、カーボンブラックカップリング剤を増量すると耐亀裂性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明を利用すれば、異なる粒度の成分からなる、低発熱性と耐亀裂性の改善効果に優れた、カーボンブラックが得られ、さらに、(B)〜(E)から少なくとも1つが選択されるカーボンブラックカップリング剤を併用することで、耐亀裂性とのバランスを維持しながら、超低発熱性のゴム組成物、並びにそれを軟スティフナー部に用いた重荷重用タイヤが得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス(プライコード)
5a 折り返しプライコード
6 ベルト
7 軟スティフナー設置領域
8 最大ゲージ
図1
図2