(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231580
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】太陽電池用ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池用保護膜
(51)【国際特許分類】
H01L 31/049 20140101AFI20171106BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H01L31/04 562
C08J5/18CFD
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547813(P2015-547813)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2014080284
(87)【国際公開番号】WO2015072560
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-234093(P2013-234093)
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301020226
【氏名又は名称】帝人フィルムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 直子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【審査官】
佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−192790(JP,A)
【文献】
特開2011−211087(JP,A)
【文献】
特開2013−088716(JP,A)
【文献】
特開2010−003900(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/123357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを含有する二軸配向ポリエステル
フィルムであって、該ポリエステルの全酸成分に対するテレフタル酸成分以外の共重合成
分と全アルコール成分に対するエチレングリコール成分以外の共重合成分の合計が1.8
〜2.7モル%の範囲であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる前記フィル
ムのガラス転移温度Tgが74〜77℃であり、該フィルムの重量平均分子量が40,0
00〜61,000かつ末端カルボキシル基濃度が6〜29当量/トンであって、該フィ
ルムを150℃で30分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率が
−0.3%〜1.2%であることを特徴とする太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記共重合成分が、炭素数3〜10の脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂環族ジカルボン酸および脂環族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
示差走査熱量測定(DSC)により求められる前記フィルムの吸熱サブピーク温度Ts
mが195〜222℃である請求項1または2に記載の太陽電池用ポリエステルフィルム
。
【請求項4】
上記フィルムを温度121℃、湿度100%RHで75時間エージングしたときの伸度
保持率が60%以上である、請求項1または2に記載の太陽電池用ポリエステルフィルム
。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用ポリエステルフィルムを用いた太陽電池用
保護膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池用保護膜に関する。さらに詳しくは長期耐熱性および耐加水分解性に優れるとともに、優れた寸法安定性も備える太陽電池用ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池用保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムは、優れた生産性、機械的性質、熱的性質、電気的性質、化学特性および寸法安定性を有するため、包装用、磁気テープ用、電子部品用、保護シート用などに広く使用されている。しかし、大部分のポリエステルフィルムは、高温・多湿の環境で使用すると、ポリエステルが加水分解して機械的性質が低下しやすく、使用期間や使用条件が制限されることがあった。
近年、過酷な自然環境下で使用される太陽電池用途において、その長期信頼性を向上することが要望されており、太陽電池保護膜としてポリエステルフィルムを用いる場合には、優れた耐加水分解性を付与することが必要である。
耐加水分解性を向上させる技術として、ポリエステル樹脂の分子量を上げる技術(例えば特許文献1)、樹脂中のオリゴマー量を下げる技術(特許文献2、3等)、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量を下げる技術(特許文献4〜6等)、さらにエポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等のカルボキシル基末端封止剤を添加する技術(特許文献7、8等)などが開示されている。
しかしながら、これらの方法によって耐加水分解性は従来に比べて改善するものの、ポリエステルの分子量を上げる技術など、多くの技術はポリエステル樹脂の固有粘度が高くなるため、生産性が低下したり、熱収縮率が高くなるといった別の課題を伴うことがあった。また、高い耐加水分解性を得るためにはポリエステル分子の非晶鎖が高配向状態にある方が好ましく、その手法の1つとして、延伸後の熱処理温度を低くし、非晶部の緊張を緩和させない方法が挙げられるが、この方法ではフィルムの熱収縮率が高くなるといった別の課題を伴うものであった。
本発明は上記問題点に注目してなされたものであり、本発明の目的は、高温・多湿の過酷な自然環境下で長時間使用された場合にも機械的性質の低下が少なく、優れた耐熱性と耐加水分解性をそなえるとともに、優れた寸法安定性も有する太陽電池用ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池用保護膜を提供することにある。
【特許文献1】特開2002−26354号公報
【特許文献2】特開2002−100788号公報
【特許文献3】特開2002−134770号公報
【特許文献4】特開2010−158828号公報
【特許文献5】特開2007−204538号公報
【特許文献6】特開2010−161138号公報
【特許文献7】特開2007−302878号公報
【特許文献8】特開2002−187965号公報
【発明の開示】
【0003】
本発明者等は上記実状に鑑み鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレートの共重合
成分を1.5〜3.0モル%のごく限られた範囲内で用いた場合に、長期耐熱性、長期耐
加水分解性と高温での寸法安定性とを両立でき、上述の課題を解決できることを見出し、
本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
1.エチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを含有する二軸配向ポリエステ
ルフィルムであって、該ポリエステルの全酸成分に対するテレフタル酸成分以外の共重合
成分と全アルコール成分に対するエチレングリコール成分以外の共重合成分の合計が
1.
8〜
2.7モル%の範囲であり、示差走査熱量測定(DSC)により求められる前記フィ
ルムのガラス転移温度Tgが74〜77℃であり、該フィルムの重量平均分子量が40,
000〜61,000かつ末端カルボキシル基濃度が6〜29当量/トンであって、該フ
ィルムを150℃で30分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率
が−0.3%〜1.2%である太陽電池用ポリエステルフィルム
によって達成される。
さらに本発明には、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムの好ましい態様として、
2.前記共重合成分が、炭素数3〜10の、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂環
族ジカルボン酸および脂環族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であること
、
3.示差走査熱量測定(DSC)により求められる前記フィルムの吸熱サブピーク温度T
smが195〜222℃であること、
4.上記フィルムを温度121℃、湿度100%RHで75時間エージングしたときの伸
度保持率が60%以上であること、
の少なくともいずれか1つを具備する太陽電池用ポリエステルフィルムも包含される。
また本発明には、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを用いた太陽電池用保護膜
も包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムはエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを含有する二軸配向ポリエステルフィルムである。
該ポリエステルを構成するエチレンテレフタレート成分はポリエステルの全酸成分に対して97モル%〜98.5モル%である。エチレンテレフタレート成分量が下限に満たないと、共重合成分による融点降下を伴い、長期耐熱性が低下したり、結晶性低下による耐加水分解性の低下が生じる。一方、エチレンテレフタレート成分量が上限を超えると、長期耐熱性や耐加水分解性の低下は生じないものの、製膜工程で効率的に寸法安定性を具備させることが困難になる。
本発明において用いられるポリエステルは、該ポリエステルの全酸成分に対するテレフタル酸成分以外の共重合成分と全アルコール成分に対するエチレングリコール成分以外の共重合成分の合計が1.5〜3.0モル%の範囲である必要がある。本発明におけるポリエステルに対し、ごく限られた範囲内で共重合成分を用い、かつ得られたフィルムが後述するガラス転移温度の範囲にある場合に、長期耐熱性、長期耐加水分解性を低下させることなく、製膜工程で効率的に寸法安定性を具備させることができる。共重合成分量が下限に満たないと製膜工程で効率的に寸法安定性を付与し難くなる。また上限をこえる共重合成分量の場合、ガラス転移温度が下限に満たないと長期耐熱性や長期耐加水分解性の低下を伴い、ガラス転移温度が上限を超えていると長期耐熱性や長期耐加水分解性は比較的保持されるものの、製膜工程で効率的に寸法安定性を付与し難くなる。かかる共重合成分の共重合量は、好ましくは1.8〜2.7モル%である。
かかる共重合成分はジカルボン酸成分であってもジオール成分であってもまたはこれら両方であってもよい。共重合成分として用いられるジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が例示される。また、共重合成分として用いられるジオール成分として、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオールが例示される。ここで、ジエチレングリコールなどのようにモノマーのジオール成分の2量体あるいは3量体以上である場合、2量体あるいは3量体以上の状態でそれぞれ1ユニットのジオール成分として共重合量をもとめる。
本発明において好ましく用いられる共重合成分として、炭素数が3〜10である、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂環族ジカルボン酸および脂環族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、本発明の効果が特に高い。特に炭素数が3〜10の脂肪族ジオール成分が好ましい。かかる共重合成分は単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
ポリエステルの重縮合時に用いられる触媒は公知のものを用いることができるが、アンチモン化合物および/またはチタン化合物を重縮合触媒として用いるのが好ましい。
[二軸配向ポリエステルフィルム]
本発明のポリエステルフィルムは上記ポリエステルを用いて形成される二軸配向ポリエステルフィルムである。
かかるポリエステルはフィルムを構成するポリマー成分の重量を基準として90重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95重量%以上である。
また、ポリエステルの含有量はフィルム重量を基準として60重量%以上であることが好ましく、さらに70重量%以上であることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムには、ハンドリング性や耐UV性など、本発明の課題以外の目的に応じてポリマー成分以外に粒子、各種添加剤などを配合してもよい。
粒子としては、有機物、無機物いずれを用いてもよく、無機物の粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、アルミナの粒子を例示することができる。これらの粒子は、板状、球状いずれの形状の粒子であってもよい。また、分散性と滑り性の観点から、平均粒径0.1〜5.0μm、さらに0.2〜4.0μmの平均粒径の粒子を用いるのが好ましい。
また添加剤として、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物を用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて着色してもよく、例えば白色、黒色、青色に着色してもよい。白色に着色すれば太陽電池裏面保護膜として用いる場合にフィルム表面での太陽光の反射を増大させ、太陽電池の電換効率を高めることができる。また、黒色や青色に着色すれば意匠性を重視する建築分野に建築物のデザインに合ったものを提供することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、滑剤、添加剤、着色剤などを含む塗布層を備えてもよい。本発明のポリエステルフィルムを積層構成とする場合は、本発明の特徴を有するフィルム層中に上記粒子、添加剤、着色剤などを添加してもよく、他の層に添加してもよい。
[ガラス転移温度]
本発明のポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)により求められるガラス転移温度Tgが74〜77℃である。ガラス転移温度が上限を超えると、優れた耐加水分解性を得つつ、低い熱固定条件下において寸法安定性を両立させることが難しくなる。他方、ガラス転移温度が下限に満たない場合は本発明の耐熱性、耐加水分解性が十分に得られない。
かかるガラス転移温度は共重合成分の種類と共重合量を制御することで得ることができる。
[重量平均分子量]
本発明のポリエステルフィルムの重量平均分子量は40,000〜61,000であり、好ましくは40,000〜55,000、さらに好ましくは40,000〜50,000である。フィルム中に含まれるポリエステルの重量平均分子量がこの範囲にあることで、良好な長期耐熱性および長期耐加水分解性が発現する。
かかる分子量範囲とするには、フィルムの製造に用いる原料ポリエステルとして例えば固有粘度0.68〜0.95のポリエステルを用いればよい。また、これらの範囲の中でもより高分子量のものを得る方法として、ポリエステル製造時に固相重合を施すこと、公知のカルボキシル基末端封止剤を添加すること等が挙げられる。
[末端カルボキシル基濃度]
本発明のポリエステルフィルムの末端カルボキシル基濃度は6〜29当量/トンであり、好ましくは6〜24当量/トン、さらに好ましくは6〜20当量/トンである。末端カルボキシル基濃度が上限を超えるとフィルムの耐加水分解性が劣り、高温・多湿の条件下において長時間使用する場合にフィルムの機械的性質が低下しやすく好ましくない。他方、下限よりも低い末端カルボキシル基濃度のフィルムを得るためには、それ以上に末端カルボキシル基濃度の低いポリエステル原料を用いる必要があり、原料ポリエステルの重合時間を長くする必要が生じたり、末端カルボキシル基を封止する剤を過剰に添加する必要が生じる。
かかる末端カルボキシル基濃度は、フィルムの製造に用いる原料ポリエステルとして3〜25当量/トンのポリエステルを用いればよく、これらの範囲の中でもより低い末端カルボキシル基濃度のものを得る方法として、ポリエステル製造時に固相重合を施すこと、公知のカルボキシル基末端封止剤を添加すること等が挙げられる。また、フィルム製膜時の溶融温度は高くても300℃、より好ましくは295℃以下とすることにより、溶融時のポリエステルの熱劣化による末端カルボキシル基濃度の増加を抑制できる。
[耐加水分解性]
本発明のポリエステルフィルムは、温度121℃、湿度100%RHの環境下において75時間エージングしたときの伸度保持率が高い方が好ましい。かかる伸度保持率が高いということは、耐加水分解性に優れるということである。具体的な伸度保持率の値は、用途や部材に応じて要求される耐加水分解性によるが、例えば50%以上や55%以上であると通常耐加水分解性が要求される用途や部材に使用可能である。さらに高い耐加水分解性が要求される場合は、伸度保持率が60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。
温度121℃、湿度100%RHの環境下における75時間エージングは加速試験であり、概ね30年間の屋外暴露状態に相当する。本発明のポリエステルフィルムが長期にわたり優れた耐加水分解性を備えることにより、太陽電池の表面保護膜あるいは裏面保護膜として用いた場合に概ね30年間にわたり太陽電池モジュールの最外層部材としての信頼性を維持することができる。
本発明において、かかる長期耐加水分解性特性は、上記ポリエステルの共重合量、分子量特性、末端カルボキシル基濃度特性を具備することに加え、耐熱寸法安定性を制御する熱固定温度を230℃以下で行うことで得られる。
[熱収縮率]
本発明のポリエステルフィルムは、150℃で30分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率がともに−0.3%〜1.2%である。本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルの共重合成分をごく限られた範囲内で用い、かつ延伸後の熱固定温度を低い範囲で行い、さらに後述する延伸倍率、幅方向の弛緩および長手方向の弛緩処理を行うことにより、優れた長期耐熱性、耐加水分解性を損なうことなく、本発明の耐熱寸法安定性も具備するフィルムを得ることができる。かかる熱収縮率は、好ましくは−0.1%〜1.0%、さらに好ましくは0.0%〜0.9%である。150℃での熱収縮率がこの範囲にあることで、ポリエステルフィルムを太陽電池の表面や裏面の保護フィルムとして用いて太陽電池をユニット化する場合に、配線が曲がったり太陽電池素子にズレが発生することがなく、また真空ラミネートで封止剤と貼り合わされたときにはみ出しが生じず生産性が損なわれることがない。
[吸熱サブピーク温度(Tsm)]
本発明のポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)により求められる吸熱サブピーク温度Tsmが195〜222℃であることが好ましく、より好ましくは200〜217℃、さらに好ましくは205〜212℃である。
かかる吸熱サブピーク温度特性は、ポリエステルフィルムの延伸後に行う熱固定温度を制御することにより得ることができる。Tsmが上限を超えると、フィルムの寸法安定性には優れるが耐加水分解性の低下を引き起こすことがある。他方、Tsmが下限に満たないと、耐加水分解性には優れるものの、良好な耐熱寸法安定性が得られないことがある。
[フィルム厚み、層構成、コーティング層]
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは20〜350μm、さらに好ましくは40〜250μm、特に好ましくは50〜200μmである。この範囲の厚みであることによって、良好なハンドリング性と製膜性を得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、単層構成の他、溶融押出機を2台または3台以上用い、いわゆる共押出法により製造される2層または3層以上の積層フィルムであってもよい。層の構成としては、A原料とB原料を用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いたA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。積層構成の場合、少なくとも1層が上記の組成および特性を満たしていればよいが、さらに各層とも上記組成および特性を満たすか、積層フィルム全体で上記組成および特性を満たすことが好ましい。例えば、積層フィルムの厚み100%に対して、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上の厚みに相当する層が上記組成および特性を満たすことが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを保護膜として用いて太陽電池を作成する際、該ポリエステルフィルムのうえに太陽電池素子の封止樹脂が設けられる。この場合にポリエステルフィルムと封止樹脂との接着性を向上させる目的で、本発明のポリエステルフィルムの片面に易接着性のコーティングを施してもよい。
コーティング層の構成材としては、ポリエステルフィルムと封止樹脂であるEVA(エチレンビニルアセテート)の双方に優れた接着性を示す材であることが好ましく、例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂を用いることができ、さらに架橋成分を含有することが好ましい。コーティングには一般的な既知のコーティング方法を用いることができるが、より好ましくは、延伸可能なポリエステルフィルムに前述のコーティング層の構成成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理するインラインコーティング法で行う。このとき、ポリエステルフィルムの上に形成されるコーティング層の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
[太陽電池保護膜]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、太陽電池の保護膜として好適に用いることができ、さらに裏面保護膜として好適に用いることができる。その際、他のフィルムと貼り合わせてもよい。例えば、絶縁特性を向上させる目的で、別のポリエステルフィルムと貼合せて積層体としてもよく、さらに耐久性を向上させる目的でポリフッ化ビニルなどの高耐候性樹脂のフィルムと貼り合せて積層体としてもよい。
また、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを太陽電池裏面保護膜として用いるに際して、水蒸気バリア性を付与する目的で水蒸気バリア層を積層してもよい。この構成の太陽電池保護膜は、JIS Z0208−73に従い測定される水蒸気の透過率が5g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。
水蒸気バリア層としては、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔、無機酸化物の塗布層または蒸着薄膜層を用いることができる。水蒸気バリア性を有するフィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムを例示することができ、箔としては、アルミニウム箔、銅箔を例示することができる。無機酸化物の塗布層または蒸着薄膜層を用いる場合、これらの層は、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムに直接塗布または蒸着してよい。
水蒸気バリア層は、本発明のポリエステルフィルムのEVA接着面の反対側に積層してもよい。また、さらにその外側に別の樹脂フィルムを積層して、複数のフィルムでガスバリア層を挟みこむ態様で太陽電池裏面保護膜としてもよい。
[ポリエステルの製造方法]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを製膜する際に、原料として用いる本発明のポリエステルは、従来公知のポリエステルの製造方法を用いて製造することができ、エステル化反応あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物を更に重縮合反応させることによって製造できる。これらのポリエステルを製造する際にエステル交換触媒、重合触媒、安定剤などを使用することが好ましい。これらの触媒、安定剤などはポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートの触媒、安定剤などとして知られているものを用いることができる。
高い耐加水分解性を備える太陽電池用ポリエステルフィルムを得るためには、原料のポリエチレンテレフタレートとして、極限粘度数が高く、かつ末端カルボキシル基濃度が低いものを用いることが好ましく、得られたポリエステルはペレット化されたのち更に少なくとも1段の固相重合工程で重縮合されることが好ましい。その固相重合方法に関しては従来公知のいずれかの方法を採用してもよい。
[フィルムの製造方法]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、従来公知の製膜法に準拠して製造することができる。以下にその一例を示す。
まず、原料ポリエステルを溶融温度が300℃を超えないように制御しながらスリットダイよりフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、得られた未延伸シートを2軸方向に延伸する。延伸方法は逐次2軸延伸法でも同時2軸延伸法でもよい。
逐次2軸延伸法の場合を例に説明すると、未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、長手方向(縦方向、MD方向)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はTg〜(Tg+70)℃とするのが好ましい。なお、Tgは原料ポリエステルのガラス転移温度である。縦延伸後のフィルムは、続いて、横方向(長手方向と直交する方向、TD方向)の延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸はTgより高い温度から始める。そして(Tg+5)℃〜(Tg+70)℃に昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
延伸倍率は、縦方向、横方向ともに、好ましくは2.8〜4.0倍、さらに好ましくは3.0〜3.8倍である。延伸倍率が下限に満たないか、あるいは上限を超える場合はフィルムに厚み斑が生じることがある他、フィルムの切断が多発したり、生産性が低下することがある。
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま、(Tm−60)℃〜(Tm−30)℃の温度で、定幅または10%以下の幅減少下で、5秒間以上熱固定処理を行う。なお、Tmは原料ポリエステルの融点である。(Tm−30)℃より高い温度で熱処理すると寸法安定性には優れるが、耐加水分解性の低下を伴う。他方、(Tm−60)℃より低い温度で熱処理すると、熱収縮率が大きくなり、本発明の耐熱寸法安定性を得ることができない。熱固定時間の上限は、生産性の観点から例えば60秒間程度、好ましくは30秒間程度である。
さらに縦方向の熱収縮率を本発明の範囲にする方法として、かかる熱固定後、フィルム温度を常温に戻す過程で把持しているフィルムの両端を切り落とし、フィルム長手方向の引き取り速度を調整して長手方向に弛緩させる方法が挙げられる。弛緩させる手段として、テンター出側のロール群の速度を調整する方法が挙げられ、弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、1.0〜3.0%の範囲、好ましくは1.2〜2.5%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して弛緩率をコントロールすることにより、長手方向の熱収縮率を調整することができる。
他の長手方向の弛緩方法として、フィルムを懸垂状態で弛緩熱処理する方法などを用いても構わない。また、幅方向の寸法安定性をさらに高める方法として、両端を切り落とすまでの過程で幅減少させる方法を用いることもできる。
【実施例】
【0005】
以下、実施例により詳細に説明する。評価は以下の方法で行った。
(1)フィルム厚み
フィルム試料をエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルム厚みとした。
(2)重量平均分子量
フィルム試料1mgにHFIP:クロロホルム(1:1)0.5mlを加えて一晩溶解させ、測定直前にクロロホルムを9.5ml加えて、メンブレンフィルター0.1μmでろ過しGPC分析を行った。測定機器、条件は以下のとおりである。
GPC:HLC−8020 東ソー製
検出器:UV−8010 東ソー製
カラム:TSK−gelGMHHR・M×2 東ソー製
移動相:HPLC用クロロホルム
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
注入量:200μl
較正曲線用試料:ポリスチレン(Polymer Laboratories製 EasiCal “PS−1”)
(3)共重合量
試料20mgを重TFA:重クロロホルム=1:1の混合溶媒0.6mlに溶解し、
1H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
(4)末端カルボキシル基濃度
試料10mgをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):重クロロホルム=1:3の混合溶媒0.5mlに溶解してイソプロピルアミンを2滴添加し、
1H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
(5)耐熱性
フィルムの縦方向に170mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、160℃に設定したギアオーブン内に500時間放置する。その後試料片を取り出し、試料の縦方向の破断強度を5回測定し、平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いておこない、チャック間100mm、引張速度100mm/minにて実施した。5点の平均値を放置前の破断強度5点の平均値でわった値を破断強度保持率[%]とし、下記基準にて耐熱性を判定した。なお、耐熱性は破断強度保持率の高いものが良好である。
(6)耐加水分解性
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、温度121℃、湿度100%RHに設定した環境試験機内に75時間放置する。その後試料片を取り出し、試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いておこない、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minにて実施した。5点の平均値を放置前の破断伸度5点の平均値で割った値を破断伸度保持率[%]とし、下記基準にて耐加水分解性を評価した。なお、耐加水分解性は破断伸度保持率の高いものを良好と判断した。
破断伸度保持率[%]
={(処理時間75時間後の破断伸度)/(処理前の破断伸度)}×100
(7)ガラス転移温度(Tg)
フィルム20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入し、TAインスツルメント社製DSC(Q100)を使用して、25℃から290℃まで20℃/minの速度で昇温させ、290℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度DSC測定器に装着し、25℃から20℃/minの速度で昇温し、ガラス転移温度Tg(単位:℃)を測定した。
(8)吸熱サブピーク温度(Tsm)
TAインスツルメント社製DSC(Q100)を使用して、フィルム20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入し、25℃から290℃まで20℃/minの速度で昇温させて、フィルムの吸熱挙動を1次微分、2次微分で解析し、ピークを示す温度を決定し、これを吸熱サブピーク温度とする。この時、吸熱サブピークとは融点のピークではなく、熱固定により形成される構造が部分融解することに起因するピークである。
(9)熱収縮率
JIS C2318に準じて、150℃で30分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率を求めた。
フィルム試料は幅、長さともに350mmとした。フィルム試料の長手方向および幅方向に正確に300mmの評点を5箇所ずつつけ、温度150℃に設定されたオーブン中に無荷重で入れ、30分間静置した。その後、室温に戻してからその寸法変化を読み取った。熱処理前の長さ(L0)と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、下式に従って長手方向および幅方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。各方向の熱収縮率はそれぞれ5箇所の評点の平均値を用いた。
熱収縮率(%)=(ΔL/L0)×100
(10)溶融押出性
押出性は、以下の基準で評価した。
○:押出性問題なし
×:押出負荷が高く、フィルム作成に時間がかかる
(11)固有粘度(IV)
ポリマーを、重量比6:4のフェノール:トリクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度で測定した。
[実施例1]
予め225部のエチレングリコール−テレフタル酸オリゴマーが滞留している反応容器中に、前記オリゴマーを撹拌しながら、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度で供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、4時間にわたり両化合物をエステル化し、その反応を完結させた、このときのエステル化率は98%以上で、生成されたオリゴマー重合度は約5〜7であった。
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.018重量部、安定剤としてトリメチルホスフェート25%濃度のエチレングリコール溶液を0.121重量部投入した。引き続き系内の反応温度を255℃から280℃、また、反応圧力を常圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇および減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしながら確認し、所望の重合度に達した時点で反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は110分であり、得られたポリエチレンテレフタレートペレットの固有粘度は0.52、ジエチレングリコール(DEG)含有量は2.7mol%であった。
このポリエステルペレットを高速撹拌式の流動式結晶化機を用いて、160℃において10分間処理してポリマーを半結晶化させた後、さらに窒素流通下、160℃で4時間処理して結晶化、および乾燥させた。このペレットを充填式固相重合塔に移し、窒素流通下215℃で13時間の固相重縮合工程に供した。このときポリエステルの固有粘度が0.70、末端カルボキシル基濃度が13当量/トンになるように反応時間を調整した。
この原料を回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、1軸混練押出機に供給し290℃で溶融押出し、スリットダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.5倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き125℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(幅方向あるいは横方向)に3.7倍延伸した。その後テンター内で217℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、横方向に4.0%の幅入れを行い、続いて両端を切り落として長手方向に2.2%の弛緩率で弛緩した後室温まで冷やして、厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1および表2のとおりであった。また太陽電池裏面保護膜として組み込んだ太陽電池モジュールについて耐久性加速試験を行ったところ、裏面保護膜にクラック発生も見られなかった。
[実施例2]
実施例1と同様にしてエチレンテレフタレートを主成分とし、ジエチレングリコールを共重合成分とするポリエステルを製造した。ただし、重縮合触媒として、三酸化アンチモン1.3%濃度のエチレングリコール溶液を用い、その投入量を4.83重量部とした。得られたポリエステルは固有粘度は0.52、共重合量は1.8mol%であった。その後の固相重合は実施例1と同様に行い、固有粘度0.70、末端カルボキシル基濃度13当量/トンのポリエステルを得た、その後のフィルム製造も実施例1と同様におこなった。
また太陽電池裏面保護膜として組み込んだ太陽電池モジュールについて耐久性加速試験を行ったところ、裏面保護膜にクラック発生も見られなかった。
[実施例3]
固相重合条件を215℃、22時間にする以外は実施例1と同様におこない、固有粘度0.76、末端カルボキシル基量10当量/トンのポリエステルを得た。フィルムの製造も実施例1と同様におこなった。ただし、熱固定後の横方向の幅入れを5.0%、長手方向の弛緩率は2.6%とした。
また太陽電池裏面保護膜として組み込んだ太陽電池モジュールについて耐久性加速試験を行ったところ、裏面保護膜にクラック発生も見られなかった。
[実施例4、5]
表に示す共重合成分を共重合したポリエステル(固有粘度0.74、末端カルボキシル基量11当量/トン)を用い、実施例3と同様にフィルムを製造した。
[実施例6]
固相重合条件を215℃、25時間にする以外は実施例1と同様におこない、固有粘度0.78、末端カルボキシル基量9当量/トンのポリエステルを得た。フィルムの製造も実施例1と同様におこなった。ただし、熱固定後の横方向の幅入れを5.0%、長手方向の弛緩率は2.8%とした。
[実施例7]
熱固定を205℃、その後の幅入れを5.0%、長手方向の弛緩率を3.0%とする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
[実施例8]
熱固定を225℃、その後の幅入れを3.3%、長手方向の弛緩率を1.7%とする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
[実施例9]
実施例3で得られた固有粘度0.76のポリエステル80重量部に着色剤としてカーボンを20重量部練り込み、チップ化してカーボンマスターを得た。固有粘度は0.55、末端カルボキシル基濃度は20当量/トンであった。
実施例3のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.76)と上記カーボンマスターチップを92.5重量%:7.5重量%の配合比でブレンドし、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後は実施例3と同様にしてフィルムを製造した。
[実施例10]
実施例3で得られた固有粘度0.76のポリエチレンテレフタレート60重量部に平均粒子径0.23μmの酸化チタンを40重量部練り込み、チップ化して酸化チタンマスターを得た。固有粘度は0.53、末端カルボキシル基量は28当量/トンであった。
表層(A)は、実施例3で得られた固有粘度0.76のポリエチレンテレフタレートと上記酸化チタンマスターチップを50重量%:50重量%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃3時間乾燥した後、1軸混練押出機に供給し285℃で溶融押出しした。基材層(B)は、実施例1で得られた固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートと上記酸化チタンマスターチップを95重量%:5重量%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、1軸混練押出機に供給し290℃で溶融押出した。それぞれの押出機で溶融した樹脂組成物を、厚み比率が表層(A):基材層(B)=1:4となるように2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。このシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化し未延伸シートとした後は、実施例1と同様にして二層フィルムを製造した。
得られたフィルムの重量平均分子量は40500、末端カルボキシル基濃度は22当量/トンであった。
[比較例1]
ジエチレングリコールユニットの含有量が表1に示すとおりのポリエステルを用い、実施例1と同様にフィルムを製造した。
[比較例2]
ジエチレングリコールユニットの含有量が表1に示すとおりのポリエステルを用い、実施例1と同様にフィルムを製造した。
[比較例3]
固相重合条件を215℃、7時間にする以外は実施例1と同様におこない、固有粘度0.66、末端カルボキシル基量15当量/トンのポリエステルを得た。フィルムの製造も実施例1と同様におこなった。ただし、熱固定後の横方向の幅入れを3.0%、長手方向の弛緩率は1.8%とした。
[比較例4]
固相重合条件を215℃、40時間にする以外は実施例1と同様におこない、固有粘度0.90、末端カルボキシル基量7当量/トンのポリエチレンテレフタレートを得た。フィルムの製造も実施例1と同様におこなった。ただし、熱固定後の横方向の幅入れを5.5%、長手方向の弛緩率は3.2%とした。
[比較例5]
表1に示す共重合成分を共重合したポリエステル(固有粘度0.76、末端カルボキシル基量10当量/トン)を用い、実施例3と同様にフィルムを製造した。
[比較例6]
押出機での溶融押出温度を305℃とする以外は実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
[比較例7]
熱固定温度を197℃とする以外は実施例7と同様にしてフィルムを製造した。
[比較例8]
熱固定温度を233℃とする以外は実施例8と同様にしてフィルムを製造した。
【表1】
【表2】
発明の効果
本発明によれば、高温・多湿の過酷な自然環境下で長時間使用された場合にも機械的性質の低下が少なく、優れた耐熱性と耐加水分解性をそなえるとともに、優れた寸法安定性も有する太陽電池用ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池用保護膜を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0006】
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、高温・多湿の過酷な自然環境下で長時間使用された場合にも機械的性質の低下が少なく、優れた耐熱性と耐加水分解性をそなえるとともに、優れた寸法安定性も有するため、特に太陽電池用保護膜として好適に用いることができる。