特許第6231582号(P6231582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231582土木建造物を監視する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231582
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】土木建造物を監視する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20171106BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20171106BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20171106BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G01N27/00 Z
   E02D17/18 A
   E02D5/80
   E02D29/02 302
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-548724(P2015-548724)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-509201(P2016-509201A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】FR2013053169
(87)【国際公開番号】WO2014096706
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年8月20日
(31)【優先権主張番号】1262393
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514277798
【氏名又は名称】ソルタンシュ フレシネ
(73)【特許権者】
【識別番号】512208084
【氏名又は名称】アンスティテュ フランセ デ シアンス エ テクノロジ デ トランスポール,ドゥ ラメナジュモン エ デ レゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】タイヤッドゥ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】オヴァネシアン,ジル
(72)【発明者】
【氏名】フライタグ,ニコラ
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0073408(US,A1)
【文献】 特開2009−008521(JP,A)
【文献】 特開平11−064176(JP,A)
【文献】 特開平09−288070(JP,A)
【文献】 特開昭59−125003(JP,A)
【文献】 特開平08−201324(JP,A)
【文献】 特開平10−115599(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0086197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/24
G01N 33/00−33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化地盤建造物であり、外装(5)を有する土木建造物(10)を監視する方法であって、
上記強化地盤建造物は、
上記建造物の機械的強度を助長する少なくとも1つの第1の金属補強材(1、1’)と、
上記第1の金属補強材と共に2つの導体からなる1つの導体対を形成する基準導体要素(2、2’)とを含み、
上記2つの導体は、それらの長さの一部にわたって誘電体(3)によって分離されており、
上記誘電体は、充填材としての土、砂、又は砂利によって形成されており、
上記補強材は上記外装(5)から主に長手方向(X)に延びているとともに、補強材同士は距離Dの間隔を開けて略平行になっており、
上記補強材は、上記外装(5)に機械的に接続され、
第1の補強材(1)および基準導体要素(2)は、各々、上記外装(5)に接続された電気的に利用可能な第1の端部(11、21)および、反対側の、互いに電気的に結合されていない第2の端部(12、22)を有しており、
上記方法は、
A0‐上記外装の外表面から利用可能な電気接点(70)に、各々の補強材を電気的につなぐ補助導電体(7)を設ける工程と、
A‐第1の補強材(1)の第1の端部(11)と、基準導体要素(2)の第1の端部(21)との間の差として加えられる少なくとも1つの入射電気信号(61)を注入する工程と、
B‐導体に沿って復帰し、第1の補強材(1)の第1の端部と、基準導体要素(2)の第1の端部との間で測定される反射信号(62、63)を収集する工程と、
C‐反射信号を分析し、その結果から、第1の補強材における局在化した潜在的な構造的欠陥(9)の存在と、この欠陥の、第1の補強材に沿った位置とを推定する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
上記工程Cにおいて、上記反射信号を基準信号と比較することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記基準導体要素は、腐食を受けにくい要素から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記基準導体要素は、第2の補強材から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
上記反射信号を、前もって記録した反射信号と比較することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記反射信号を、同じ建造物における他の導体対に関する反射信号と比較することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記反射信号を分析または比較するために、時間反射測定方法を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記入射電気信号は、複数の所定の周波数成分を含み、
反射信号の周波数成分を分析することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記2つの導体の第2の端部(12、22)に通路が備えられ、
導体に沿って上記第2の端部(12、22)に伝達される信号を収集し、上記伝達される信号を、基準導体要素を参照して分析することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記建造物は、その少なくとも一部が外装と接続している補強材の土台と、充填材を充填して圧縮することによって設置された地盤層との、連続物を含み、
上記補強材は、例えば、滑らかな、またはうねのある金属細線であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記補強材は2m〜20mの長さであり、距離Dは0.2m〜3.0mであることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記建造物は、上記第1の補強材を形成する少なくとも1つのプレストレスト金属ケーブル(1’)と、基準導体を形成して充填モルタルによって分離される導電体(2’)とを含む、プレストレス管を含み、
上記導電体は、例えば被覆された電線であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
強化地盤建造物であり、外装(5)を有する土木建造物を監視するためのシステムであって、該システムは、土木建造物および電子装置を備え、
一方では、上記強化地盤建造物は、上記建造物の機械的強度を助長する少なくとも1つの第1の金属補強材(1)と、導体の長さの一部にわたって誘電体(3)によって分離されている2つの導体からなる導体対を第1の補強材と共に形成する基準導体要素(2)とを含み、上記誘電体は、充填材としての土、砂、又は砂利によって形成され、上記補強材は上記外装(5)から主に長手方向(X)に延びているとともに、補強材同士は距離Dの間隔を開けて略平行になっており、上記補強材は上記外装に機械的に接続され、
上記強化地盤建造物はさらに、上記外装の外表面から利用可能な電気接点(70)に、各々の補強材を電気的につなぐ補助導電体(7)を含み、
他方では、上記電子装置(4)は、第1の補強材(1)の第1の端部(11)と、基準導体要素(2)の第1の端部(21)との間の差として加えられる入射信号を放出するように、反対側の第2の端部(12、22)は互いに電気的に結合させずに、2つの導体からなる導体対の第1の端部(11、21)にある端子において測定される反射信号を収集するように、および、反射信号を分析し、その結果から、第1の補強材における局在化した潜在的な構造的欠陥(9)の存在と、この欠陥の、第1の補強材に沿った位置とを推定するように、構成されることを特徴とするシステム。
【請求項14】
上記電子装置(4)は、ネットワークアナライザを含むことを特徴とする請求項13に記載の土木建造物を監視するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、土木建造物を監視するための方法およびシステムに関し、特に、建造物は金属補強材を含む。
【0002】
〔背景技術〕
土木建造物において、金属補強材の使用は非常に一般的である。例えば、ある種のコンクリート建造物の機械的特性を向上させるために、応力付与金属ケーブル(stressed metal cables)が使われる。他の例は、補強地盤型の建造物において設置される金属細線または金属格子である。さらに別の例は、構造若しくは建物を支持するため、または構造若しくは建物に応力を加えるための金属歪キャリアの使用である。
【0003】
鋼から作られた金属補強材は、非常に優れた機械的特性を示すが、腐食攻撃を受けやすいという欠点を有する。鋼から作られたそのような金属補強材を、亜鉛メッキ、金属メッキ、電気防食、または他の不動態化方法若しくは被覆加工方法によって保護することは一般的である。しかしながら、そのような金属補強材、特に使用期間が数十年を超え得る建造物に用いられる金属補強材の健全性を長期にわたって監視することが必要であるように思われる。そのような監視は、非貫入的に、すなわち建造物の本体に直接介入することなく実行できることが好ましい。
【0004】
非貫入的方法は、金属補強材の健全性の監視のために、特に文献FHWA-NHI-09-087に基づき、参照試験片のサンプリングまたは抵抗測定に基づいてすでに提案されている。しかしながら、抵抗測定法は、建造物における1つ以上の補強材に生じ得る、材料の局所的欠損や欠けといった局所的な構造的欠陥を同定することができない。また、参照試験片のサンプリングは断片的な情報を提供するのみであり、かつ、存在する建造物の多くは、そのような試験片を備えていない。
【0005】
それ故に、金属補強材の健全性を監視するための既知の非貫入的手法を改善する必要性、並びに、腐食および/または経年劣化等につながる潜在的な構造的欠陥を検出することができる必要性が出現している。
【0006】
〔発明の概要〕
この目的のために、本研究によれば、土木建造物を監視するための方法を提案する。当該土木建造物は、建造物の機械的強度を助長する少なくとも1つの第1の金属補強材と、基準導体要素とを含む。当該基準導体要素は、第1の補強材と共に2つの導体からなる1つの導体対を形成する。上記2つの導体は、それらの長さの一部にわたって誘電体によって分離されている。上記誘電体は、建造材または充填材によって形成されている。第1の補強材および基準導体要素は、各々電気的に利用可能な第1の端部を有している。上記方法は以下を含む:
A‐第1の補強材の第1の端部と、基準導体要素の第1の端部との間の差として加えられる少なくとも1つの入射電気信号を注入する。
【0007】
B‐導体に沿って復帰し、第1の補強材の第1の端部と、基準導体要素の第1の端部との間で測定される反射信号を収集する。
【0008】
C‐反射信号を分析し、その結果から、第1の補強材における局在化した潜在的な構造的欠陥の存在と、この欠陥の、第1の補強材に沿った位置とを推定する。
【0009】
これらの提供によって、導体に沿った信号における伝播特性が用いられ、以下のことが可能になる。構造的欠陥が非常に局在化した、または補強材の長さを超えた位置に存在したとしても、その構造的欠陥を同定することができる;そのような潜在的欠陥の、補強材に沿った位置を同定することもできる;更には、破壊した部分または全体的に腐食した部分等に起因した、補強材の長さの変化を同定することもできる。
【0010】
本発明の種々の実施形態において、必要であれば、1つおよび/または他の下記条項を、独立してまたは結合して更に利用することができる:
‐反射信号を基準信号と比較する;その結果、基準信号は絶対的な比較要素を使わずに使用される;
‐基準導体要素は、腐食を受けにくい要素によって形成することができる;その結果、この腐食を受けにくい要素は不変の試験片であり、反射信号によって示される潜在的な欠陥は、明らかに第1の補強材に起因し得る;
‐基準導体要素は、第2の補強材によって形成され得る;よって、上記方法は既存の建造物に実施することができ、その場合、この方法で使用するのは、建造物に元々ある金属補強材だけである;
‐反射信号を、前もって記録された反射信号と比較する;よって、建造物の老朽化に応じて変化する補強材の特性および健全性の長期にわたる監視を行うことが可能である。
【0011】
‐反射信号を、他の導体対に関する反射信号と比較する;それにより、建造物の空間を監視することが可能になり、特に、相対的な測定を用いて、複数の補強材の中から最もダメージを受けた補強材を同定することができる。それだけでなく、これらの比較測定の均一性レベルから、建造物の老朽化状態を推定することもできる。
【0012】
‐反射信号を分析または比較するために、時間反射測定方法を使用することができる。それにより、補強材の長さにわたって、構造的欠陥の位置を決定することができる。
【0013】
‐入射電気信号は、複数の所定の周波数成分を含み得る。そして、反射信号の周波数成分を分析する;それにより、そのような周波数分析は、純粋な時間的方法よりもさらに強力な方法である。
【0014】
‐上記方法は、工程Aの前に予備工程を更に含み得る:予備工程A0は、第1の補強材の各々の第1の端部と、基準導体要素の各々の第1の端部との電気的接触を構築するための通路を提供する;それにより、上記方法を、古い建造物を含む既存の建造物に用いることができる。
【0015】
‐上記方法は、相補的な工程を更に含み得る。該相補的な工程において、2つの導体の第2の端部に通路が備えられる。導体に沿って上記第2の端部に伝達される信号をそこで収集し、上記伝達される信号を、基準伝達信号を参照して分析する;それにより、局所的な構造的欠陥の検出は、反射信号の分析と伝達信号の分析との相補性によって、更に信頼性を高くできる。
【0016】
‐建造物は、補強地盤建造物であり、誘電体は地盤によって形成され、補強材は建造物の外装から主に長手方向に延びているとともに、補強材同士は距離Dの間隔を開けて略平行になっている。上記補強材は、例えば地盤工学ツメまたは応力歪キャリア(アンカータイ)である;よって、上記方法を、すでに存在する建造物を含む、多くの補強地盤建造物に適用することができる;
‐建造物は外装および充填材を含み得る。そして、建造物は、その少なくとも一部が外装と接続している補強材の土台と、充填材を充填して圧縮することによって設置された地盤層との、連続物を含み得る。上記補強材は、例えば、滑らかな、またはうねのある金属細線である;それにより、この方法の適用は、外装を基礎とする、充填した地盤による補強地盤建造物に特に適している;
‐補強材は外装に機械的に接続され、補助導電体が、外装の外表面から利用可能な電気接点に、各々の補強材を電気的につなぐことを可能にする; そのため、上記方法の実施が容易になるよう、外装板を前もって準備しておくことができる。
【0017】
‐補強材は2m〜20mの長さであり、距離Dは0.2m〜3.0mである;よって、上記方法は、広範囲の補強材および建造物に用いられ得る。
【0018】
‐建造物は、第1の補強材を形成する少なくとも1つのプレストレスト金属ケーブルと、基準導体を形成して充填モルタルによって分離される導電体とを含む、プレストレス管を含み得、上記導電体は、例えば被覆された電線である;このように、プレストレストコンクリートによる建造物のためのプレストレスケーブルシステムに上記方法を適用することができる。
【0019】
本発明はまた、土木建造物を監視するためのシステムに関する。該システムは、土木建造物および電子装置を備える。一方では、上記土木建造物は、上記土木建造物の機械的強度を助長する少なくとも1つの第1の金属補強材と、導体の長さの一部にわたって誘電体によって分離されている2つの導体からなる導体対を第1の補強材と共に形成する基準導体要素とを含む。上記誘電体は、建造材または充填材によって形成されている。他方では、上記電子装置は、2つの導体からなる導体対の端部に印加される入射信号を放出するように、2つの導体からなる導体対の端部にある端子において測定される反射信号を収集するように、および、反射信号を分析し、その結果から、第1の補強材における局在化した潜在的な構造的欠陥(9)の存在と、この欠陥の、第1の補強材に沿った位置とを推定するように、構成される;それにより、上述の方法を非貫入的に適用して、このような潜在的な欠陥の補強材上の位置を同定することができる。
【0020】
さらに、上記電子装置はネットワークアナライザを含み得る;それゆえ、周波数反射測定による分析を実施し得る。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の、発明を制限しない例としての実施形態についての以下の説明を読むことにより、本発明の他の側面、目的、および利点が明らかになるだろう。本発明はまた、添付の以下の図面と照らし合わせて、より理解できるだろう。
【0022】
図1は、本発明に基づく方法を実施可能な、補強地盤型の建造物の断面概略図である。
【0023】
図2は、図1の建造物を、より詳細に示す図である。
【0024】
図3は、本発明に基づく方法を実施可能な第2の実施形態を表す、プレストレストコンクリート構造型の建造物の概略断面図である。
【0025】
図4は、図3のIV−IV切断線に沿った横断面の詳細を示す図である。
【0026】
図5は、構造的欠陥の影響を受けた補強材を示す図である。
【0027】
図6は、導入した信号のタイミング図の一例を示す図である。
【0028】
図7は、図1の建造物における外装要素の詳細な断面図である。
【0029】
図8は、本発明の対象である方法を示す図である。
【0030】
図9は、本発明に基づく方法を実施可能な第3の実施形態を表す、地質工学的タイロッドにより安定化された建造物の概略断面図である。
【0031】
図10は、本発明に基づく方法を実施可能な第4の実施形態を表す、地質工学的釘固定法により安定化された建造物の概略断面図である。
【0032】
〔発明の詳細な説明〕
異なる図において、同じ参照番号は、同一の、又は同様の部材を意味する。
【0033】
図1は、補強地盤タイプの建造物10を示している。建造物10は、例えばプレハブ式のコンクリートパネル50を基盤にして構成された面(facing)5、及び土、砂、砂利、又は充填領域3を形成することが可能な何れかの建造材によって形成される、充填領域3を備えている。
【0034】
上記の充填領域は、従来知られている金属補強材1によって補強されており、該金属補強材は、公知の方法で、面5と接続できるようになっている。
【0035】
実際には、この種の建造物は、連続的な層によって建造される。すなわち、プレハブ式の外装パネルをある高さに設置し、複数の補強材1を同じ水平レベルで設置する。この水平レベルは補強材の「土台」と呼ばれる。補強材をそれぞれ、向かい合う外装パネルの中に固定する。その後、設置した外装パネルの最上部近くの高さまで、充填材3を、設置した金属補強材の上部に加える。必要であれば、圧縮成型機を用いて、充填材を圧縮する。建造物について計画した高さまで、前述した工程を、何層も繰り返す。
【0036】
この種の建造物は、例として、ダム、堤防、橋脚歯、鉄道線路又は道路の基盤、運河の堤防、様々な流体及び/又は浸出水を放出する物質を保持するための建造物、既存の建造物を広げる又は上昇させるための建造物、外装によって取り囲まれた土手、もしくは、さらに一般的に、他の何れかの土木建造物であってもよい。
【0037】
この種の建造物は、流出液体又は降水が建造物の充填領域3に直接侵入することを防ぐため、被覆30によって建造物の上部が覆われていてもよい。
【0038】
上述した補強材1は、実際には、機械的特性と腐食抵抗性との点について最も良いトレードオフと証明されている亜鉛メッキされた鋼で作られている。しかしながら、この種の建造物は、一般的には非常に長い期間、通常は数十年以上の期間、使用される。このような使用期間では、一般的には、安全レベルは低下しない。しかし、場合によっては、外的要因が補強材の耐久性に悪く影響する可能性がある。
【0039】
亜鉛メッキされた鋼の金属補強材は、その後、建造物の空間及び時間によって異なりうる腐食作用を受けやすくなる可能性がある。特に、外装5に近い領域31は、充填領域の本体よりも、大きな腐食作用を受けやすい可能性がある。同様に、天候状況及び/又は季節に依存して、特に、被覆30が設けられていないまたは被覆30がその役割を正しく果たしていない場合には、建造物は、凍結防止塩又は他の、特に腐食性の化学物質の流出を受けやすい可能性がある。
【0040】
腐食は空間及び時期によって均一でなく、これにより、極めて局在化した欠陥を引き起こすことになる。
【0041】
このため、金属補強材1の状態が、使用期間にわたって建造物の機械的特性を保証することを確かにするために、金属補強材1の良好な状態を監視することが重要になる。
【0042】
有利なことに、本発明によれば、非貫入的な方法によって、補強材の状態を監視する。
【0043】
図2は、建造物に含まれる複数の補強材のうちの隣接する補強材からなる1つの補強材対を示している。図2に示すように、図示した2つの補強材と電気的に接続している電子装置4を使用している。2つの補強材のうち少なくとも1つの補強材は、建造物の機械的強度に寄与している。図示した2つの補強材は、一方が他方の上部にあってもよいし、一方が他方の横にあってもよいし、斜めになっていてもよいし、又は他の配置であってもよいし、お互いに平行でなくてもよいし、又は外装に対して直角になっていなくてもよい。
【0044】
電子装置4は、充填領域内の隣接する補強材からなる1つの補強材対1、2の各末端に、少なくとも1つの入射電気的信号を注入することを目的としており、信号注入は差動モードで優先的に行われる。2つの補強材1、2を分離する充填材3もしくは建造材は、充填材の密度、及び/又は充填剤の湿気、及び/又は他の二次的なパラメータによって比誘電率が変化する誘電体を構成する。
【0045】
例示した例では、2つの補強材1,2はそれぞれ、外装のレベルにおける第1の端部11、12と、第1の端部とは反対側の第2の端部21、22との間で、外装の表面に対して直角に、軸方向Xに伸びており、2つの補強材は充填領域の本体中に配置されている。
【0046】
2つの補強材1、2は、距離Dだけ離れており、典型的には、0.2mから3m、優先的には0.5mから1m、さらにより優先的には0.7mから0.8mの間隔の範囲内で位置している。一旦建造物が建造されると、2つの補強材1、2の相対的な位置は、長期にわたって変化しないことに注意すべきである。
【0047】
2つの補強材1、2は、同じような長さであることが好ましいが、異なる長さであってもよく、いずれの場合においても、上記方法を実行することができる。補強材は、厚みが数ミリメートル(例えば5mm)、幅が数センチメートル(例えば5cm)の、滑らかな、又は、うねのある金属細線の形であってよい。
【0048】
2つの補強材1、2は、導電性を有しており、1つの導体対を形成している。この導体対は、充填領域の誘電材3と共に、反射計法が適用される送電線を形成している。
【0049】
より具体的には、図6を参照して、上記の方法は、通常、以下の工程を含んでいる。
(A)補強材1、2の第1の端部11、21の間に差動的に加えられる入射電気信号61を注入する工程。
(B)上記第1の端部間で測定される、導電体に沿って返ってきた反射信号62、63を受信する工程。
(C)上記反射信号を分析し、その分析から、第1の補強材上の局在化した潜在的な構造上の欠陥9を推定する工程。
【0050】
工程Cにおいて、有利なことに、反射信号は、絶対的な比較要素を用いることなく、基準信号と比較することができる。
【0051】
さらに、分析結果から、第1の補強材上の局在化した潜在的な構造上の欠陥9の存在と、この欠陥の、第1の補強材に沿った位置とを推定することが可能である。
【0052】
1つの補強材に対して信号を注入することによって行われる試みでは十分な結果を得ることができないのに対し、差動モードで、1つの補強材対に対して、すなわち1つの導体対に対して作用させることにより、有益な効果があることがわかった。
【0053】
電子装置4は、例えば時間反射計を使用する場合には、パルス発生器と信号分析器(後工程を加えたデジタルオシロスコープ)とを一体化したものから構成されてもよい。又は、電子装置4は、例えば周波数反射計を使用する場合には、ネットワーク分析器によって形成されていてもよい。
【0054】
工程Cにおいて言及した基準信号は、充填材の複数の比誘電率値に対する、新しい状態の1つの補強材対によって反射した信号に該当してもよい。充填材の複数の比誘電率は、例えば1から80の範囲の値である(例えば、セメントモルタルでは、値は7である)。代替として、上記基準信号は、建造物が最初の状態である期間に、この特定の補強材対上で測定された信号であってもよい。また、以前の結果に基づいた計算又は推定によって、比誘電率のばらつきの影響を考慮に入れてもよい。
【0055】
第2の補強材2は、必ずしも機械的強度に寄与しない基準導電体要素によって形成されてもよい。特定の場合では、この基準導電体は、腐食しないものを選択することができ、これにより、変化しない試験片を形成することができる。このような場合には、すべての欠陥は、疑いなく第1の金属補強材1によるものであろう。
【0056】
時間反射計法に関連したタイミング図の例を示した図6を参照すると、入射電気信号61は、時刻T1に注入される。通常時には、上記補強材対によって反射された信号は、時刻T3に第1の端部へ戻るエコー63を有するだけである。エコー63は、第2の端部12における反射に対応する。図5に示すように、局在した構造上の欠陥9が存在する場合には、示した例においては時刻T2に、一般的には通常のメインのエコーの前に、追加のエコー62(点線で示す)が第1の端部に戻る。時刻T2のエコーの時間的な位置によって、欠陥9の、補強材1に沿った存在を確認でき、また欠陥9の、補強材1に沿った存在位置を見つけることが可能になる。さらに、時刻3のメインのエコーの時間的な位置によって、補強材の(又は2つの補強材の)長さが変化していないことを確認することが可能になる。
【0057】
入射電気信号61は、多くの周波数成分を含む短フレームでもよいし、「ディラック」タイプのパルスのようなものであってもよいし、さらには、一連の単一周波数パルスのようなものであってもよいし、また、ここで挙げたものが全てではない。
【0058】
代替的な周波数反射計法(図示していない)においては、入射電気信号61は、複数の異なった周波数成分を含んでいる。基準スペクトルと比較する、反射信号のスペクトル分析によって、補強材の異常な状態を検知することができ、また、これにより、1つ以上の異常の存在を推定することができる。
【0059】
特に、反射信号の受信は、入射信号の注入と同時に起こってもよい。
【0060】
限定しない一例として、5kHzから9GHzの間の周波数成分を用いることが可能である。誘電体の性質が良く知られている場合や誘電体の性質が長期にわたって変化しない場合には、周波数成分の選択をより正確に行うことができる。
【0061】
欠陥の存在によって、周波数スペクトルの変化が引き起こされる。すなわち、予期される吸収ピークの周波数が移動する可能性がある。又は、新たな吸収ピークが発生する可能性がある。
【0062】
建造物が新しかった時に建造物上で測定された基準スペクトルは、基準の役割を担うことができる。そして、さらに、「単純な」欠陥(割れ目)(break)に関連した典型的なスペクトルの変化も、基準スペクトルのデータベースの中に含めてもよい。
【0063】
予期しないスペクトル線の出現により、潜在的な構造上の欠陥を発見することが可能になる。そして、この予期しない線の強度及び拡がりによって、欠陥9の、補強材1に沿った存在位置を見つけることが可能になる。
【0064】
スペクトルを取得するためには、従来、ネットワーク分析器タイプの装置が使用される。
【0065】
もちろん、実行する測定の正確性を向上させるために、時間反射計法及び周波数反射計法の2つの方法の組み合わせを使用することも可能であろう。
【0066】
上記方法は、最近建てられたまたは築2、3年の、既存の建造物に対して実施することができる。この場合は、充填材に収納された補強材に電子装置4を電気的に接続するために、コンクリートパネル50を、正面からアンカーに到達するまで穿孔することが可能であろう。
【0067】
これに関連する方法は、新しい建造物に適用することもできる。その場合、図7に示すように、コンクリートパネル50の事前の準備を行う。より具体的には、補強材1が、コンクリートパネル50の鋳物に挿入されたアンカー8と機械的に結合するようになっている。さらには、ここでは導体7の形をとる電気的接続部が、アンカー8と、外装5の外正面51近くに配置された接続端子70とを、電気的に接続する。この接続端子70は、環境、特に悪天候から保護されたコネクターに内蔵され得る。このコネクターは、外装5の外表面における穴で受けられるようにすることができる。アンカー8は、ボルト接続部81によって補強材1と電気的に接続される。
【0068】
図3および図4に示す他の実施形態では、上述の方法はプレストレストコンクリート建造物のプレストレス装置への用途に用いられる。プレストレス管6は、複数の金属ケーブルを含み、上記金属ケーブルは被覆されていることも被覆されていないことも可能である。
【0069】
被覆されている金属ケーブルの各々は金属コア1’を備え、該金属コア1’は、適切であれば、合成材料製の保護鞘72、3aの中にある。該保護鞘72、3aは、用途の状況に従って、グリースが充填され得る。プレストレス管6は、少なくとも1つの基準金属導体2’を更に含み、これはここでは、保護用の合成絶縁体で被覆された銅線である。金属ケーブル並びに基準導体若しくは基準導体群の挿入の後、セメントモルタル3bを上記管に注入する。セメントモルタル3bは、所定の時間後に凝固する。そのようなセメントモルタル3bは、もし保護鞘3aがあれば保護鞘3aとともに、絶縁体3’を構成する。該絶縁体3’は、被覆されている金属ケーブル1’と、基準導体または導体群2’とを分離する。
【0070】
プレストレス管6の各々の端部において、ベース・プレート45が配置され、該ベース・プレート45の上には把持システム48が位置するようになっている。把持システム48は、周知の張力付加金属ケーブルに固定されている。
【0071】
本実施の形態では、補強材の第2の端部21、22へのアクセスが可能である。結果として、上記方法は、この第2の端部へと伝達される信号の分析工程を含み得る。ちょうど第1の端部11、12に向かって反射した信号の場合のように、第2の端部21,22へと伝達される信号の分析、特に、基準伝達信号に対する差異の分析は、金属補強材1、2において、潜在的な欠陥の存在を、たとえ該欠陥が高度に局在化していたとしても同定することを可能にする。
【0072】
核閉じ込め封入のような、ある特別の場合において、第2の端部21、22および第1の端部11、12は、近接して位置することができ、これにより、実際に、上記の状況の実現が容易になる。
【0073】
注目すべきは、誘電体3’は補強材の長さにわたって必ずしも均一ではないことである:図3の例では、プレストレス管は、コンクリート46によって囲まれた部分と、空気47によって囲まれた他の部分とを含む。
【0074】
本実施の形態において、明らかに、基準導体2’は金属ケーブルであってもよく、また、上記方法は、建造物にすでに設置されたプレストレス管中の既存のプレストレシング金属ケーブルのどの対にも適用することができる。
【0075】
図9に示す他の実施形態では、地質工学の補強システムが用いられ得る。そこでは、建造物中に、強固にすべき補強材を形成するために、金属タイ92が設置され得る。上記タイは、互いに離間して設置され、必ずしも互いに平行でない;第1の端部は外装の正面または建造物の壁の正面にてアクセス可能である;実際には、上記タイは、ベース・プレートに位置するよう、ボルト止めされている。上記タイの第2の端部の周りにシーリングセメント94が注がれ、凝固によって、上記タイは周辺構造物に固定されることが保証される。
【0076】
図示しない他の実施形態では、上記補強材は、強固にするために、建造物を通過するタイの形状をとり得る。この場合、両方の端部にアクセスすることができ、これによって、プレストレス管の場合にすでに上述したように、反射信号と伝達信号の両方について働くことができる。
【0077】
図10に示す更に別の実施形態では、地盤工学の釘固定法システムが使われ得る。該システムでは、「地盤工学ツメ」(アンカーロッド)と呼ばれる金属棒が設置される;これらのツメは、これまでの例にて説明したものと類似の態様にて金属補強材1、2を形成する。そして、これらのツメは、誘電体を形成する充填材または建造物の本体によって分離される。上記ツメの上に、カラー95が金属棒から放射状に延びて固定される。上記ツメが設置されている空洞に、セメントモルタル97を注入する。外装5の外に圧力プレート96が配置され、このプレートを、ここではナット形式のネジシステム98を用いて外装に対して押圧し、該ナットは、上記ツメの端部11に設けられたネジ切り上にネジ留めされる。
【0078】
注目すべきは、上記補強材の第2の端部21、22同士が電気的に接触していても、本発明を実施するための方法を用いることができることである。
【0079】
注目すべきは、機械的強度に貢献する金属補強材しか用いられていない(不変の指標が用いられていない)場合に、遭遇した欠陥が、考慮されている対のうち、第1の補強材または第2の補強材のどちらに起因し得るかを同定するために、上記方法では、多くの補強材対を逐次比較することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明に基づく方法を実施可能な、補強地盤型の建造物の断面概略図である。
図2図1の建造物を、より詳細に示す図である。
図3】本発明に基づく方法を実施可能な第2の実施形態を表す、プレストレストコンクリート構造型の建造物の概略断面図である。
図4図3のIV−IV切断線に沿った横断面の詳細を示す図である。
図5】構造的欠陥の影響を受けた補強材を示す図である。
図6】導入した信号のタイミング図の一例を示す図である。
図7図1の建造物における外装要素の詳細な断面図である。
図8】本発明の対象である方法を示す図である。
図9】本発明に基づく方法を実施可能な第3の実施形態を表す、地質工学的タイロッドにより安定化された建造物の概略断面図である。
図10】本発明に基づく方法を実施可能な第4の実施形態を表す、地質工学的釘固定法により安定化された建造物の概略断面図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10