(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向に分離された排気および吸気ポート(54,56)を持つ少なくとも1つのシリンダ(50)と、前記シリンダのボア(52)内に互いに対向して配置された1対のピストン(60,62)と、1対の接続ロッド(76)とを含み、各ピストンが揺動ジャーナル軸受(74)によってそれぞれの接続ロッドに接続されている、対向ピストンエンジン(49)であって、
前記揺動ジャーナル軸受(74)が、
前記ピストンに取り付けられた軸受支持構造(291)と、
前記軸受支持構造における軸受スリーブ(200)であって、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数の表面セグメント(204)を持つ軸受け面(202)を含む軸受スリーブと、
前記軸受け面における給油溝の一群の配列(マトリクス)であって、周方向給油溝および軸線方向給油溝を含み、各周方向給油溝がそれぞれの隣接表面セグメント間に配置され、軸線方向給油溝が周方向給油溝と交差する、給油溝の一群の配列(マトリクス)と、
前記接続ロッド(76)に取り付けられた揺動ジャーナル(220)であって、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数のジャーナルセグメント(221)を含む揺動ジャーナルと、
前記軸受け面上で揺動振動するように前記揺動ジャーナルを保持する前記軸受支持構造と、
少なくとも1つの油流入路(230)、及び、前記ジャーナルセグメントを介して作用する複数の油流出路(240、242)を具備した、前記揺動ジャーナル内に油を受容するための手段(335、435)と、
を備え、
前記揺動ジャーナルは、ジャーナルセグメント間のジャーナル外面に軸線方向に間隔を置いて配置された少なくとも2つの周方向給油溝を含み、そして、少なくとも1つの油流出路は、前記ジャーナル外面の前記周方向給油溝の各々に開口しており、
前記油を受容するための手段は、前記揺動ジャーナルにおける環状空間(335)およびギャラリ(435)のうちの1つを含む、
ことを特徴とする対向ピストンエンジン。
【背景技術】
【0003】
従来のクランクロッドスライダエンジンの4ストロークサイクルでは、排気行程中にピストンアセンブリの慣性力がリストピン軸受に負(すなわち反対方向)の荷重を与える。この荷重逆転期間中に、リストピンの荷重受け面が分離し、潤滑油がピンと受け面との間の小さい間隙内に浸入する。この油の供給は、圧搾膜の生成および/または部品間の相対運動のため、軸受が完全な流体力学モードで動作するのに不可欠である。
【0004】
2ストロークサイクルエンジン動作の一部の態様では、サイクルの性質上、ジャーナル軸受の荷重逆転は、エンジンの通常の速度および荷重範囲の動作中に起きないことがあり、あるいは荷重逆転の期間は比較的短時間になることがある。例えば2サイクルディーゼルエンジンの動作中に、各サイクルで燃焼事象が発生し、上死点(TC)付近でピストンの冠部に対するガス圧荷重がほとんど常に存在し、それは、高ピストン速度時にさえ、ピストン/クランクシャフト連結装置のクロスヘッド軸受に対するピストンアセンブリの慣性力より大きい。サイクルの他端すなわち下死点(BC)でも、ピストンアセンブリの慣性力は、クロスヘッド軸受に荷重を加え続ける。その結果、ほとんど常に軸受はサイクル中ずっと正の荷重を受ける。したがってクロスヘッド軸受に油を補給することが難しい。さらに、軸受の限定された角振動を考えると、受け面間に導入される油は、軸受に完全に行き渡らない。最終的に、軸受は境界層潤滑モード(「境界潤滑モード」ともいう)で動作し始め、それは過度の摩擦、摩耗、および、その後の軸受の損傷を導く。
【0005】
2ストロークサイクルエンジン構造では、ジャーナル軸受の非逆転荷重は、幾つかの方法で、例えば、1)転がり軸受、2)受け面を分離させて接合部内に強制的に給油させる高圧潤滑、3)表面間に油流を巻き込む分割軸受、4)軸受の圧力を低減させるエンジン荷重の低減、または5)上記項目の一部または全部の組合せを使用することによって、対処されてきた。これらの方策は、中程度の荷重および耐久性要件のエンジンにおける適切な潤滑の必要性には対処することができるが、高荷重で長寿命(10,000+時間)の2ストロークサイクルエンジンに対しては効果が限定される。
【0006】
図1に示す揺動ジャーナル軸受構造は、2ストロークサイクルエンジンのジャーナル軸受における非逆転荷重の問題を軽減するために提案された。この図では、軸受のセグメント間の偏位をより明瞭に提示するために、軸受要素は、相対寸法を誇張して分離された状態で示される。
図1の通り、複数の偏位セグメントを持つ揺動ジャーナル軸受10は、セグメント化された軸受スリーブ12およびそれに対応してセグメント化された軸受ジャーナル20を含む。スリーブ12は、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数の表面セグメントを持つ受け面13を含み、ジャーナルは、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数のジャーナルセグメントを含む。スリーブ12は、第1中心線C1を共有する2つの側方表面セグメント14と、2つの側方表面セグメント14を分離し、かつ第1中心線から偏位した第2中心線C2を有する中央表面セグメント15とを備えた、半円筒形状を有する。ジャーナル20は、第1中心線C1を共有するように配置された2つの側方ジャーナルセグメント21と、2つの側方ジャーナルセグメントを分離し、かつ第2中心線C2を共有するように配置された中央ジャーナルセグメント22とを備えた、円筒形状を有する。ジャーナルセグメントはサイクルの揺動部分中に周期的にスリーブの表面から持ち上げられ、こうして1つ以上のセグメントに対する荷重を軽減する一方で、残りのセグメントの全荷重を維持する。スリーブおよびジャーナルセグメントの分離は、油が接合部へ浸入するための隙間を提供する。
【0007】
ジャーナル揺動は分離をもたらし、受け面間への油の導入を可能にするが、軸受の限定された角振動は、軸受界面間の容積を充填する連続的油膜の形成を損ねる。様々なジャーナルセグメントが持ち上がる軸受サイクルの部分中に、スリーブの合わせ接触領域に低圧領域が形成され、表面膜における潜在的なボイド(void)を導き、かつ適切に充填されなければ潜在的キャビテーションを導く。油充填はこうして揺動ジャーナル軸受の動作および耐久性に実質的な役割を果たす。
【0008】
先行技術では、隣接する表面セグメントとジャーナルセグメントとの間の周方向境界に、セグメントの周縁に油を輸送するための溝が形成される。特定の重負荷2ストロークサイクルエンジンでは、表面セグメントとジャーナルセグメントとの間の界面への油の浸透を増大させるために、表面セグメントに設けられた軸線方向の溝が、表面セグメント間の周方向溝と交差する。しかし、これらの軸受構造では、油は表面セグメントの周方向溝内に給油する慣性作動式チャネルを介して提供され、それは油が軸受界面に提供される圧力を制限する。さらに、エンジン動作中は慣性給油の圧力が変動する。したがって、油は、境界層潤滑を回避するために適切な厚さの連続油膜を維持するには不十分な圧力レベルで、軸受界面に供給されることがあり、それは結果的に、これらの揺動ジャーナル軸受構造の限定された耐久性および短縮された寿命をもたらし得る。
【0009】
揺動ジャーナル界面に油が適切に浸透するには、連続的に利用可能な加圧油の供給を、充填サイクル中に油が軸受界面に塗布されるように適時に、揺動ジャーナル軸受に送達する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】先行技術の揺動ジャーナル軸受の要素を示す略図である。
【
図2】揺動ジャーナル軸受により構築されたリストピン装置を持つ2ストロークサイクルエンジンのシリンダの長手方向断面図である。
【
図3】油溜りを持つ揺動ジャーナル軸受を示す略概念図である。
【
図4】第1揺動ジャーナル軸受構造の受け面要素の斜視図である。
【
図5】第1揺動ジャーナル軸受構造の受け面要素の平面図である。
【
図6】第1揺動ジャーナル軸受構造の揺動ジャーナル要素の斜視図である。
【
図7】第1揺動ジャーナル軸受構造の揺動ジャーナル要素の長手方向図である。
【
図8A】
図7の表示線8A‐8Aに沿って切った
図6および
図7のジャーナルの縦断面図である。
【
図8B】
図7の表示線8B‐8Bに沿って切った
図6および
図7のジャーナルの縦断面図である。
【
図9】
図4および
図6の受け面およびジャーナル要素を持つ揺動ジャーナル軸受装置を含むピストン連結アセンブリの実施形態の分解組立斜視図である。
【
図10】
図9の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図である。
【
図11】
図9の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図である。
【
図12】
図4および
図6の受け面およびジャーナル要素を持つ揺動ジャーナル軸受装置を含む代替的ピストン連結アセンブリの分解組立斜視図である。
【
図13】
図12の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図を示す。
【
図14】
図12の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図を示す。
【
図15】第2揺動ジャーナル軸受構造の揺動ジャーナル要素の斜視図を示す。
【
図16】第2揺動ジャーナル軸受構造の揺動ジャーナル要素の長手方向図を示す。
【
図18】
図15、
図16および
図17の軸受ジャーナル要素を備えた揺動ジャーナル軸受装置を含むピストン連結アセンブリの分解斜視図である。
【
図19】
図18の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図を示す。
【
図20】
図18の組み立てられたピストン連結アセンブリの軸線方向回転縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
2ストロークサイクルエンジンは、クランクシャフトの1回の完全な回転およびクランクシャフトに接続されたピストンの2行程により動力サイクルを完了する内燃エンジンである。2ストロークサイクルエンジンの一例は、1対のピストンがシリンダのボア内に対向配置された、対向ピストンエンジンである。これは、非逆転荷重がリストピンおよび他のジャーナル軸受の弱点である2ストロークサイクルエンジンの好適な実施形態であるが、記載する揺動ジャーナル軸受構造は他のタイプの2ストロークサイクルエンジンに利用することができる。
【0014】
図2に示すように、対向ピストンエンジン49は、少なくとも1つのポート付きシリンダ50を有する。例えば、エンジンは1つのポート付きシリンダ、2つのポート付きシリンダ、3つのポート付きシリンダ、または4つ以上のポート付きシリンダを有することができる。説明を目的として、エンジン49は複数のポート付きシリンダを有すると仮定する。これに関連して、各シリンダ50はボア52を有し、ボアのそれぞれの端部には排気および吸気ポート54および56が形成されている。排気および吸気ポート54および56は各々、1つ以上の周方向の開口配列を含む。排気および吸気ピストン60および62は、それらの端面61および63が互いに対向する状態で、ボア52内に摺動自在に配置される。排気ピストン60はクランクシャフト71に連結され、吸気ピストン62はクランクシャフト72に連結される。各々のピストンは、リストピン74および接続ロッド76によって、その関連クランクシャフトに連結される。シリンダ50のピストン60および62がそれぞれのTC位置またはその近くにあるときに、ピストンの端面61および63の間のボア52に燃焼室が画定される。燃料は、シリンダ50の側壁の開口に配置された少なくとも1つの燃料噴射ノズル100を介して、燃焼室内に直接噴射される。
【0015】
エンジン49は、過給機(スーパーチャージャ)110とターボチャージャ120とを含む空気管理システム51を備える。ターボチャージャは、共通軸123上で回転するタービン121およびコンプレッサ122を有する。タービン121は排気サブシステムに連結され、コンプレッサ122は給気サブシステムに連結される。排気ポート54から導管125内に移される排ガスはタービン121を回転させる。これはコンプレッサ122を回転させ、コンプレッサは吸気を圧縮することによって給気を発生させる。コンプレッサ122によって出力される給気は導管126内を流れ、そこから過給機(スーパーチャージャ)110によって吸気ポート56の開口に圧送される。
【0016】
シリンダ50のようなシリンダを1つ以上持つ対向ピストンエンジンの動作サイクルはよく理解されている。端面61、63間で発生する燃焼に応答して、対向ピストン60、62はシリンダ内でそれらのTC位置から遠ざかる。TCから移動しながら、ピストンはそれぞれのBC位置に接近するまでそれらの関連ポートを閉じたまま維持する。ピストンは、排気および吸気ポート54、56が同調して開閉するように同期して移動することができる。代替的に、一方のピストンは他方のピストンより位相が進むことができ、その場合、吸気ポートおよび排気ポートは異なる開閉時間を有する。ピストンがそれらのBC位置を通過すると、排気ポート54から流出する排出物は、吸気ポート56を介してシリンダ内に流入する給気に取って代わられる。BCに到達後、ピストンは方向を逆転し、ポートはピストンによって再び閉じられる。ピストンがTCに向かって移動し続ける間、シリンダ50内の給気は端面61および63の間で圧縮される。ピストンがシリンダボア内でそれぞれのTC位置に進むにつれて、燃料がノズル100を介して給気中に噴射され、給気と燃料の混合物がピストン60および62の間で圧縮される。混合物が点火温度に達すると、燃料が着火し、ピストンをそれぞれのBC位置に向かって駆動させる。
【0017】
図2に関連して、各ピストンは、ジャーナル軸受として構成されたリストピン74を含む。対向ピストンエンジンの動作サイクル中に、リストピン74は非逆転荷重(nonreversing load)を受け、限定された角振動を被る。エンジンが作動している間にジャーナル表面の分離を達成するために、リストピン構造は揺動ジャーナル軸受を備えている。これは揺動ジャーナル軸受の好適な適用であるが、記載する構造は、2ストロークサイクルエンジンの動作サイクル全体を通して一方向荷重を受ける他のタイプのジャーナル軸受でも利用することができる。
【0018】
図3は、重荷重を支持しかつ軸受の耐久性を高めるのに充分な厚さを持ちかつ充分な範囲に及ぶ連続油膜で揺動軸受界面を潤滑するのに適した圧力で、油を供給し分配することを確実にするために、揺動軸受をいかに構築するかを示す。
図3の通り、ロッカジャーナル軸受150はセグメント化された表面152およびそれに対応してセグメント化されたジャーナル154を含む。ジャーナル154の構造は、軸受界面を潤滑するための油を受容しかつ分配する空間またはキャビティを含む。一態様では、空間またはキャビティは、ポンプ付き油源158から加圧油を供給される油溜り156から構成される。ジャーナル154は、油溜り156への少なくとも1つの入口および油溜りからの複数の出口を含む。幾つかの態様では、油溜り156は、入口開口160を介して加圧油を受容する。入口開口160は、ジャーナル154の振動中に受け面と接触しないジャーナル表面152の部分に開口することが好ましい。
図2に示す幾つかの態様では、加圧油は接続ロッド76の高圧油路77を介して送達される。加圧油は、軸受の振動中に受け面と接触するジャーナル表面の部分を介して作動する、1つ以上の出口162を介して油溜り156によって揺動ジャーナル界面に提供される。幾つかの態様では、油溜り156は、各界面用の出口のみならず、潤滑油供給のための入口をも有する。油溜り156内への加圧油の流入は、エンジンの動作中に軸受への油の連続供給をもたらす。
【0019】
図4および
図6を参照すると、好適な揺動ジャーナル軸受の実施形態は、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数の表面セグメントを持つ受け面202を含む軸受スリーブ要素200と、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数のジャーナルセグメントを含む揺動ジャーナル220とを含む。受け面202は、第1中心線を共有する2つの側方表面セグメント204と、2つの側方表面セグメント204を分離し、かつ第1中心線から偏位した第2中心線を有する中央表面セグメント205とを備えた、半円筒形状を有することが好ましい。
図4および
図5の通り、周方向給油溝207が、受け面の中央表面セグメント205と側方表面セグメント204との間の境界に形成される。場合によっては、1つ以上の周方向に間隔を置いて配置された軸線方向の給油溝209が受け面に形成される。各軸線方向給油溝209は中央表面セグメント205を横切り、少なくとも部分的に各々の側方表面セグメント204内に延びる。他の場合によっては、給油溝210が、受け面202の対向周縁に沿って形成される。給油溝のマトリクス(一群の配列)は、周方向給油溝207が軸線方向および外周給油溝209、210の一方または両方と交差する、受け面202に形成されることができる。
【0020】
図6を参照すると、揺動ジャーナル220は、第1中心線を共有するように配置された2つの側方ジャーナルセグメント221と、2つの側方ジャーナルセグメントを分離し、かつ第2中心線を共有するように配置された中央ジャーナルセグメント222とを備えた、円筒形状を有する。揺動ジャーナル220は、外面223、厚さすなわち各端部の段差内径を持つ側壁224、および円筒状内面228を備えた中空円筒片である。
図6および
図7は、外面223の中央ジャーナルセグメント222と側方ジャーナルセグメント221との間の境界に形成された周方向給油溝226を示す。
図6、
図8A、および
図8Bは、軸受の振動中に受け面202と接触しない、揺動ジャーナルの外面223の非接触部223nを示す。加圧油用の流入路230が、中央ジャーナルセグメント222の半径方向に側壁224を貫通して形成される。流入路230は非接触外面部に開口する。油流入路230の両側で、表面223の非接触部223nに螺刻保持孔231が形成される。
図7、
図8A、および
図8Bは、軸受の振動中に受け面202と接触する、揺動ジャーナル外面223の接触部223cを示す。ジャーナル220の接触面部223cに形成された加圧油用の第1流出路240は、周方向溝226で中央ジャーナルセグメント222の半径方向に側壁224を貫通して延び、内面228に開口する。
図7および
図8Bに最もよく示されるように、油の流入および第1流出路230および240は、軸線方向に間隔を置いて、直径方向に対向して配置される。場合によっては、第2流出路242は周方向溝226の外側に側壁224を貫通して形成され、内面228に開口する。場合によっては、第2流出路242は、各ジャーナルセグメントに位置する少なくとも1つの第2流出路が存在するように、軸線方向アレイ状に配列される。周方向に間隔を置いて配置された少なくとも2つの軸線方向アレイの第2流出路242が存在することが好ましいが、必須ではない。他の揺動ジャーナル軸受構造は、軸線方向給油溝209の有無に関係なく、受け面202に周方向給油溝207だけを含むことができ、あるいは受け面における軸線方向給油溝の有無に関係なく、揺動ジャーナル220の外面に周方向溝226だけを含むことができる。
【0021】
図2の対向ピストンエンジンのリストピン74に非逆転荷重を受ける揺動ジャーナル軸受を潤滑するために加圧油を供給することのできる揺動ジャーナル構造は、揺動ジャーナルに組み込まれた油溜りを含む。
図2および
図9を参照すると、ピストン60および62の各々は、揺動ジャーナル軸受290から構成されたリストピン74によって、接続ロッド76に連結される。場合によっては、揺動ジャーナル軸受290は、
図4および
図6の軸受スリーブ200および揺動ジャーナル220により構築される。
図9および
図10の通り、軸受支持構造はピストン60、62に取り付けられる。場合によっては、軸受支持構造は分離した部片291aおよび291bを含む。軸受スリーブ200は軸受支持構造片291a内に形成される。軸受スリーブ200は、
図4および
図5に係る中央および側方表面セグメントを持つ受け面を含む。揺動ジャーナル220は、接続ロッド76の小端部に取り付けられる。揺動ジャーナルは、
図6および
図7に係る中央および側方表面セグメントを含むことが好ましい。例えば
図9および
図10に示す通り、揺動ジャーナル220は螺刻固締具300により接続ロッドに固定される。場合によっては、軸受支持構造片291aおよび291bは、揺動ジャーナル220の周りに接合され、ピストンの内部構造に螺合着座する固締具302によってピストン60、62の内部に固定される。
図9および
図10に示す通り、軸受構造支持片291bの開口292は接続ロッド76を受容する。
図10および
図11に関連して、組み立てられたときに、軸受支持構造291は、開口292内での接続ロッド76の円弧状振動によって引き起こされる受け面202上での揺動ができるように、揺動ジャーナル220を保持する。
【0022】
揺動ジャーナルにおける油溜りは、ジャーナルセグメントを介して作用する少なくとも1つの流入口および複数の流出口を含む。例示的油溜り構造は、
図9、
図10および
図11を参照して理解することができる。円筒状シャフト320は、揺動ジャーナル220の円筒状内面228に受容される。フランジ322はシャフト320の一端に固定される。シャフトの他端は別のフランジ324を受容する。保持リング326は、シャフト320の外面の周方向溝と、揺動ジャーナルの端部の段差直径によって形成されたショルダ(肩部)における溝との間で、シャフト320を揺動ジャーナル220の円筒状内面228と同軸上に整列して保持するように働く。
図10および
図11で示されるように、シャフト320のより小さい直径は、結果的に、それ自体と内面228との間の環状空間335を形成する。
図10は、環状空間335が第1流出路240と流体連通することを示す。
図11によって示される通り、空間335はまた、揺動ジャーナル220のセグメントに設けられる数の第2流出路242とも流体連通する。
図10および
図11は、環状空間335が流入路230と流体連通し、かつ流入路230が接続ロッド76に穿孔された高圧油路77と流体連通することを示す。油は、接続ロッド76の大きい端部の1つ以上の周方向溝79から高圧油路77内に流入する。
【0023】
図10および
図11の通り、潤滑油は、クランクシャフト用の油供給源のような高圧源から圧力下で高圧油路77に流入する。油路77を流れる加圧油は、流入路230を介して揺動ジャーナル220に提供される。流入路230を流れてきた加圧油は、油溜り空間335に受容される。空間335に受容された加圧油は、上述した方法で、複数の流れで第1(および(もしあれば)第2)流出路を介して揺動ジャーナル軸受界面に提供される。
【0024】
図12、
図13および
図14は、
図9、
図10および
図11に関連して記載したように構築され、かつ動作する、油溜りを持つ揺動ジャーナル軸受を示す。しかし、この場合、揺動ジャーナル軸受290は、軸受支持構造391がピストン60、62に取り付けられた状態で構築される。これらの図から明白であるように、軸受支持構造391は、揺動ジャーナルがそこを介して受容されるアパーチャ(開口)392を持った単体部片(一体の部品)を含む。
【0025】
図15および
図18を参照すると、別の揺動ジャーナル軸受の実施形態は、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数の表面セグメントを持つ受け面402を含む軸受スリーブ要素400、並びに、軸線方向に間隔を置いて偏心配置された複数のジャーナルセグメントを含む揺動ジャーナル420を備えている。受け面402は、第1中心線を共有する2つの側方表面セグメント404と、2つの側方表面セグメント404を分離し、かつ第1中心線から偏位した第2中心線を有する中央表面セグメント405とを備えた、半円筒形状を有することが好ましい。
図18の通り、周方向給油溝407が、受け面の中央表面セグメント405と側方表面セグメント404との間の境界に形成される。場合によっては、
図4および
図5に関して記載したように、1つ以上の周方向に間隔を置いて配置された軸線方向給油溝を受け面402に形成することができる。他の場合によっては、
図4および
図5に関して記載したように、受け面402の対向周縁に沿って、給油溝を形成することができる。さらに他の場合には、
図4および
図5に関して記載したように、受け面402に給油溝のマトリクス(一群の配列)を形成することができる。
【0026】
図15、
図16および
図17を参照すると、揺動ジャーナル420は、第1中心線を共有するように配置された2つの側方ジャーナルセグメント421と、2つの側方ジャーナルセグメントを分離し、かつ第2中心線を共有するように配置された中央ジャーナルセグメント422とを備えた、円筒形状を有する。揺動ジャーナル420は、外面423と、厚さを持つ側壁424と、各端部においてくり抜き空間425とを備えた円筒状部片である。周方向給油溝426が、外面423の中央ジャーナルセグメント422と側方ジャーナルセグメント421との間の境界に形成される。
図15および
図17は、軸受の振動中に受け面402と接触しない、外面423の非接触部423nを示す。加圧油用の流入路430は、中央ジャーナルセグメント422の半径方向に側壁424を貫通して形成される。流入路430は非接触外面部423nに開口する。表面423の非接触部423nの油流入路430と共有する中央セグメントの直径上に螺刻保持孔431が形成される。
図16および
図17は、軸受の振動中に受け面402と接触する揺動ジャーナル外面423の接触部423cを示す。ジャーナル420の接触表面部423cに形成される加圧油用の流出路440は、周方向溝426内において、中央ジャーナルセグメント422の半径方向に側壁424を貫通して延びる。
図17に最も良く示すように、油流入および流出路430および440は軸線方向に間隔を置いて、直径方向に対向して配置される。一部の態様では、
図7および
図8Bに関して記載したように、側壁224に他の流出路242を形成することができる。
【0027】
図18を参照すると、ピストン60および62の各々は、揺動ジャーナル軸受490から構成されるリストピンによって接続ロッド76に連結される。場合によっては、揺動ジャーナル軸受490は軸受スリーブ400および揺動ジャーナル420により構成される。
図18および
図19の通り、単体の軸受支持構造491はピストン60、62に取り付けられる。軸受スリーブ400は、軸受支持構造491内にブローチ加工された保持スロット409内に挿入される薄いシェルとして形成される。揺動ジャーナル420は接続ロッド76の小さい方の端部に取り付けられる。例えば
図18および
図20に示す通り、揺動ジャーナル420は螺刻止めねじ
433により接続ロッドに固定される。代替的に、揺動ジャーナル420は、接続ロッド76の製造中に接続ロッドの小端部に形成することができる。場合によっては、軸受支持構造491は、ピストンの内部構造に螺合着座する止めねじ432によって、ピストン60、62の内部に固定される。
図18および
図19に示す通り、軸受支持構造491の開口492は接続ロッド76を受容する。
図18に示す通り、構造491は軸受スリーブ400が保持スロット409内に着座した後、揺動ジャーナル420を受容するアパーチャ(開口)493を有する。
図19および
図20を参照すると、軸受支持構造491は、組み立てられたときに、開口492における接続ロッド76の円弧状振動によって受け面402における揺動振動が引き起こされるように、揺動ジャーナル420を保持する。
【0028】
図15、
図16および
図17の揺動ジャーナルにおける油溜りは、接触表面部423cを裏支えする側壁424の部分に長手方向に穿孔された細長い空間、ギャラリ(gallery、通路)、または通路(passage)435を含む。通路435は436で塞がれる。
図17は、細長い通路435が周方向溝426の流出路440と流体連通していることを示す。通路435は、揺動ジャーナル220のセグメントに設けることのできるどの追加流出路とも流体連通するように構成することができる。
図17は、通路435が流入路430と流体連通していることを示し、かつ
図17および
図19は、流入路430が接続ロッド76に穿孔された高圧油路77と流体連通していることを示す。油は、接続ロッド76の大きい端部の1つ以上の周方向溝79から高圧油路77内に流入する。
【0029】
図19および
図20の通り、潤滑油は、クランクシャフトのような高圧源から圧力下で高圧油路77内に流入する。油路77を流れた加圧油は、流入路430を介して揺動ジャーナル420に提供される。流入路430を通過した加圧油は、通路435に受容される。通路435に受容された加圧油は、上述した方法で複数の流れで流出路を介して揺動ジャーナル軸受界面に提供される。
【0030】
[設計上の考慮点および産業上の適用(利用性)]
揺動軸受ジャーナル構造の一部の態様は、図面を参照して理解することができる。これに関して、揺動ジャーナル軸受が組み立てられたとき、ジャーナル220、420は、ジャーナル表面223、423の接触部223c、423cが受け面202、402と接触しながら振動するように、軸受スリーブ200、400に対して回転するように保持される。ジャーナル220、420が公称中心線を有すると仮定すると、ジャーナルの2つの外側セグメント221、421は互いに同軸であり、ジャーナルの中心線から変位される。軸受の中央セグメント222、422は、ジャーナル中心線から反対方向に変位される。2つのセグメント中心線(
図1のC1およびC2に対応する)の変位は、接続ロッド76の振動運動に応じて、等しい場合と等しくない場合がある。したがって、2つの軸受中心線は互いに偏心し合う。直径が50ないし100mmの軸受を適用する場合、この偏心率は0.1ないし1mm程度とすることができる。軸受の偏心率は、
図11に示すように、接続ロッド76が左右に振動するときに、受け面202、402の交互の側部からのジャーナル220、420の機械的持上げをもたらす。ジャーナル220、420を接続ロッド76の小端部に固定することにより分離がもたらされ、加圧油がジャーナル220、420の油溜り空間335、435から1つ以上の受け面の給油溝を介して、受け面間のボイド内に浸入することが可能になる。一部の態様では、
図11、
図14および
図20に示す揺動ジャーナル軸受は、TC(上死点)でごく短時間、中央セグメントおよび2つの外側セグメントがセグメント化された受け面と完全に接触するように設計される。クランクシャフト位置が変化するにつれて、ジャーナルの外側セグメントは開き(表面の外側セグメントとの接触から離れ)始める。90+度のクランク位置で、外側ジャーナルセグメントは閉じ(外側受け面セグメントに向かって移動し)始め、中央ジャーナルセグメントは荷重を受ける。クランクが180度(BC(下死点))に達すると、ごく短時間、全ての受け面は完全に接触するが、軽荷重を受ける。180+度で中央ジャーナルセグメントは270度まで開き始め、270度に達したときに、完全に開き、外側ジャーナルセグメントが荷重を受ける。360度(TC)で、全ての受け面は瞬間的に完全に接触するが、重荷重を受け、サイクルは繰り返される。
【0031】
図に示す通り、接続ロッドは、軸受支持構造で振動する揺動ジャーナルに堅固にボルト止めされる。受け面自体は2つのタイプ、すなわち
図4および
図5に示すように金属母材型、または
図18に示すように薄いシェルのバイメタルまたはトリメタル軸受型とすることができる。薄いシェルは、その表面を軸受の動作上の必要性に合わせて調整することができる、交換可能な軸受の利点を提供する。加えて、エンジンの試運転期間中に軸受は設計条件に「慣らされる」ので、軸受設計の公差の緩和を可能にするように、軸受の外面に摩耗性コーティングを使用することができる。
【0032】
2ストロークサイクルエンジンのピストン/クランクシャフト連結装置に使用される揺動ジャーナル軸受の受け面および揺動ジャーナル要素における給油溝および流出路の数および配置は、本願に記載しかつ図示する実施形態によって限定されることを意図するものではない。溝/通路の設計は、いかに完全に軸受界面を油膜で被覆するかだけでなく、いかに適切に油膜が荷重を操作するかについても、考慮すべきである。それに関連して、膜密度比(FDR)すなわち膜に空洞が生じる傾向を示す比率と、最小油膜厚さ(MOFT)との間でトレードオフが行われる。これに関して、軸受アセンブリの主荷重担持領域に油を提供するために配置された流出路または給油溝は、油膜の完全性を確実にするが、境界条件として供給圧力が課せられるため、軸受の荷重担持能力を低下させる。
【0033】
給油溝および流出路の数および配置の解析中に、動作パラメータを考慮する必要がある。1つのデューティサイクルに適した構成は、他のデューティサイクルでは問題を生じることがある。比較的低いエンジン速度の場合、充填よりMOFTを重視するように、孔および溝の数を少なくし、あるいはいずれかの配置を変えることができる一方、逆に高速動作の場合、MOFTより充填を重視するように、異なる位置により多くの孔および溝が必要になることがある。最終結果として、孔および溝は、用途に応じて、ジャーナルおよび/またはスリーブの表面のどこにでも配置することができる。
【0034】
一部の態様では、外側ジャーナルセグメントの端部の表面に対向面取部を設けることが望ましい。これに関して一例を
図12に示す。ここで、揺動ジャーナル220の接触面と非接触面との間に位置する各外側ジャーナルセグメントの端部の表面に、少なくとも1つの面取部229が形成されている。好ましくは、各外側ジャーナルセグメント221の端部の表面に対向面取部が形成される。面取りされた端部は支持構造391の円筒状構造とよく適合し、かつ揺動ジャーナルとスリーブとの間の表面接触を、
図9および
図18に示した面取りされない揺動ジャーナルより大きくすることができ、有利である。
【0035】
ピストン構成部品は4140合金鋼から製造することができ、接続ロッドは4140または4340合金鋼から製造することができ、好ましくは、軸受構成部品は8620合金鋼から製造することができる。
【0036】
このように、好適な実施形態を参照して、揺動ジャーナルに油溜り、ギャラリ、および他の油受け空間を備えた揺動ジャーナル軸受装置を説明したが、本明細書および図面に記載した原理から逸脱することなく、様々な変形を施すことができることを理解されたい。したがって、これらの原理に具現される本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。