特許第6231633号(P6231633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231633歯茎の屈曲に合うように柔軟な、歯科用物質伝達のためのマイクロニードルおよびその製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231633
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】歯茎の屈曲に合うように柔軟な、歯科用物質伝達のためのマイクロニードルおよびその製作方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20171106BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20171106BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A61M37/00 520
   A61K9/00
   A61K47/34
   A61K47/38
   A61K47/26
   A61K31/167
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-174409(P2016-174409)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-61447(P2017-61447A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0133325
(32)【優先日】2015年9月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516098513
【氏名又は名称】ビーアンドエル バイオテック インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 仁煥
(72)【発明者】
【氏名】成 佶奐
(72)【発明者】
【氏名】白 昇基
(72)【発明者】
【氏名】崔 仁禎
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−532482(JP,A)
【文献】 特表2015−515474(JP,A)
【文献】 特開2015−109963(JP,A)
【文献】 特表2002−542186(JP,A)
【文献】 特表2011−520550(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066763(WO,A1)
【文献】 特開2009−232873(JP,A)
【文献】 Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,2015年 1月10日,Vol.126,p.520-530,http://dx.doi.org/10.1016/j.colsufb.2015.01.005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61L 15/00−33/18
A61K 6/00− 6/10
A61M 37/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードル本体部と、
前記ニードル本体部の表面にコーティングされ、口腔内皮組職に伝達される有効成分を含む有効成分コーティング部と、
前記ニードル本体部に結合され、口腔内部の皮膚形状に沿って曲るベース部と
を備え、
前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つを含
前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に増粘剤が含まれ、前記ニードル本体部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度よりも、前記有効成分コーティング部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度がさらに大きいことを特徴とする、歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項2】
前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つとポリカプロラクトン(PCL)とを1:9〜5:5の重量%の割合で含む、請求項1に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項3】
前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つとポリカプロラクトン(PCL)とを1:9または2:8の重量%の割合で含む、請求項2に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項4】
前記ベース部は、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項2に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項5】
前記ニードル本体部は、口腔内皮組職に伝達される有効成分をさらに含む、請求項1に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項6】
前記ニードル本体部に含まれる増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項7】
前記有効成分コーティング部は、口腔内皮組職に伝達される有効成分をさらに含む、請求項6に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項8】
前記有効成分コーティング部に含まれる増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項7に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項9】
前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれるカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)およびシクロデキストリン(cyclodextrin)のうち少なくとも1つを第1増粘剤とし、
前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれるマルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)およびラクツロース(Lactulose)のうち少なくとも1つを第2増粘剤とするとき、
前記有効成分コーティング部における第1増粘剤に対する第2増粘剤の重量%の割合は、前記ニードル本体部における第1増粘剤に対する第2増粘剤の重量%の割合よりもさらに大きいことを特徴とする、請求項に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項10】
前記ニードル本体部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、1〜7%:1〜10%:1〜10%であることを特徴とする、請求項に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項11】
前記ニードル本体部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、5%:5%:5%であることを特徴とする、請求項10に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項12】
前記ニードル本体部における増粘剤と有効成分の重量%の割合は、2:1〜3:1の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項13】
前記有効成分コーティング部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、1〜10%:1〜30%:1〜30%であることを特徴とする、請求項に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項14】
前記有効成分コーティング部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、3%:30%:30%であることを特徴とする、請求項13に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項15】
前記有効成分コーティング部における増粘剤と有効成分の重量%の割合は、1:1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項13に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項16】
前記第1増粘剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)であり、前記第2増粘剤はマルトース(Maltose)であり、前記有効成分はリドカインであることを特徴とする、請求項10〜15のうちいずれか一項に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項17】
前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれる有効成分は、リドカイン(Lidocaine)、メピバカイン(Mepivacaine)、プリロカイン(Prilocaine)、ブピバカイン(Bupivacaine)、エチドカイン(Etidocaine)、アルチカイン(Articaine)、プロカイン(Procaine)、プロポキシカイン(Propoxycaine)、テトラカイン(Tetracaine)、ロピバカイン(Ropivacaine)、ブタカイン(Butacaine)、ピペロカイン(Piperocaine)、コカイン(Cocaine)、ベンゾカイン(Benzocaine)、クロロプロカイン(Chloroprocaine)、プロパラカイン(Proparacaine)およびジクロニン(Dyclonine)のうち少なくとも1つを含む、請求項5または7に記載の歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【請求項18】
水溶性のニードル本体部と、
前記ニードル本体部の表面にコーティングされ、口腔内皮組職に伝達される有効成分を含む有効成分コーティング部と、
前記ニードル本体部に結合され、歯茎形状に沿って曲るベース部と
を備え、
前記ベース部は、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で混合され、
前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に増粘剤が含まれ、前記ニードル本体部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度よりも、前記有効成分コーティング部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度がさらに大きいことを特徴とする、歯科用物質伝達のためのマイクロニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用物質を伝達するためのマイクロニードルおよびその製作方法に関し、より詳細には、屈曲する表面で形成されている歯茎に付着することができ、歯茎の内部に歯科用物質を伝達することができる、歯科用物質伝達のためのマイクロニードルおよびその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科治療における経皮への薬物投与方法としては、注射器を利用して口腔内皮に貫通させる方式が主に用いられてきた。しかし、このような方式は、患者に、痛みと共に極度のストレスを誘発させるという問題があった。
【0003】
最近では、このような問題を解決するために、新たな経皮伝達方式であるマイクロニードルに関する研究が活溌化している。一般的にマイクロニードルとは、小さなニードルを利用することで、皮膚に刺激を与えたり、皮膚に小さな穴をあけて栄養分を供給したり、薬物を容易に浸透させる装置であって、皮膚への浸透が可能な形態であれば特にその形態に制限はないが、大略1μm〜100μmの直径を有する。
【0004】
特に、このようなマイクロニードルを利用すると、細胞や組職の局部にも痛みを与えることなく薬物を伝達できるうえに、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、DNAなどのように生体膜への浸透が不可能な分子を投与することもでき、治療が難しい部位および身体の特定部位や組職に薬物を標的に伝達するときにも有用である。
【0005】
このようなマイクロニードルには、固体マイクロニードル、コーティングマイクロニードル、溶解性マイクロニードル、中空マイクロニードルなどの4つの種類が存在する。
【0006】
このうち、溶解性マイクロニードルは、皮膚への投与後にマイクロニードル物質が溶解しながら、内包されていた薬物が皮膚内に伝達される方式である。一度の穿刺によって薬物を伝達できるうえに、マイクロニードルが残らないため、汚染の危険性がないという長所がある。
【0007】
しかし、マイクロニードルは、投与後、皮膚内の水分によって溶けるまでにかかる時間が10分以上と長い時間を必要とし、マイクロニードル内部に内包されている有効成分はマイクロニードルの完全な溶融に依存することから、定量の薬物が皮膚に伝達され難いという問題がある。さらに、溶解性マイクロニードルの製造はモールディングを基盤とするため、製造時間が長く、製造温度によって有効成分が変化するという問題もある。
【0008】
この反面、コーティングマイクロニードルの場合には、製造が簡単であるうえに、薬物がニードルの表面にコーティングされているため、薬物を迅速に伝達することはできるが、ニードルが残ることから、汚染の危険性があるという限界がある。
【0009】
従来の溶解性マイクロニードルまたはコーティングマイクロニードルは、主に平たい皮膚に適用されていたため、不規則な屈曲形状を有する口腔内の歯茎への適用には限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、マイクロニードルの基板形状が口腔内部の歯茎形状に対応する形状に曲がるため、屈曲した表面で形成される歯茎に付着することができる、歯科用物質伝達用マイクロニードルおよびその製作方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、薬物を含む水溶性マイクロニードルの上に有効成分が添加された物質をコーティングさせることにより、ニードルを口腔内皮に投与したときに、迅速に定量の有効成分を伝達することができる、歯科用物質伝達のためのマイクロニードルおよびその製作方法を提供することを他の目的とする。
【0012】
また、本発明は、最小回数の投与で、短時間内に定量の有効成分を伝達することができる、マイクロニードルおよびその製作方法を提供することを他の目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、マイクロニードルが水溶性を有するように製作され、皮膚への投与後には一部あるいは全部が溶融するため、歯科治療後に汚染の危険性がない、安全なマイクロニードルおよびその製作方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達用マイクロニードルは、ニードル本体部と、前記ニードル本体部の表面にコーティングされ、口腔内皮組職に伝達される有効成分を含む有効成分コーティング部と、前記ニードル本体部と結合し、口腔内部の皮膚形状に沿って曲るベース部とを備え、前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
また、前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つとポリカプロラクトン(PCL)とを1:9〜5:5重量%の割合で含んでもよい。
【0016】
また、前記ベース部は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つとポリカプロラクトン(PCL)とが1:9〜2:8重量%の割合で含んでもよい。
【0017】
また、前記ベース部は、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5重量%の割合で含んでもよい。
【0018】
また、前記ニードル本体部は、増粘剤と口腔内皮組職に伝達される有効成分とを含んでもよい。
【0019】
また、前記ニードル本体部に含まれる増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
また、前記有効成分コーティング部は、増粘剤と口腔内皮組職に伝達される有効成分とを含んでもよい。
【0021】
また、前記有効成分コーティング部に含まれる増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
また、前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に増粘剤が含まれ、前記ニードル本体部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度よりも前記有効成分コーティング部に含まれる増粘剤の水分に対する溶解度がさらに大きくてもよい。
【0023】
また、前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれるカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinylacetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)およびシクロデキストリン(cyclodextrin)のうち少なくとも1つを第1増粘剤とし、前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれるマルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)およびラクツロース(Lactulose)のうち少なくとも1つを第2増粘剤とするとき、前記有効成分コーティング部における第1増粘剤に対する第2増粘剤の重量%の割合は、前記ニードル本体部における第1増粘剤に対する第2増粘剤の重量%の割合よりもさらに大きくてもよい。
【0024】
また、前記ニードル本体部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、1〜7%:1〜10%:1〜10%であってもよい。
【0025】
また、前記ニードル本体部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、5%:5%:5%であってもよい。
【0026】
また、前記ニードル本体部における増粘剤と有効成分の重量%の割合は、2:1〜3:1の範囲であってもよい。
【0027】
また、前記有効成分コーティング部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、1〜10%:1〜30%:1〜30%であってもよい。
【0028】
また、前記有効成分コーティング部における第1増粘剤:第2増粘剤:有効成分の重量%の割合は、3%:30%:30%であってもよい。
【0029】
また、前記有効成分コーティング部における増粘剤と有効成分の重量%の割合は、1:1〜1:2の範囲であってもよい。
【0030】
また、前記第1増粘剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)であり、前記第2増粘剤はマルトース(Maltose)であり、前記有効成分はリドカインであってもよい。
【0031】
また、前記ニードル本体部および前記有効成分コーティング部に含まれる有効成分は、リドカイン(Lidocaine)、メピバカイン(Mepivacaine)、プリロカイン(Prilocaine)、ブピバカイン(Bupivacaine)、エチドカイン(Etidocaine)、アルチカイン(Articaine)、プロカイン(Procaine)、プロポキシカイン(Propoxycaine)、テトラカイン(Tetracaine)、ロピバカイン(Ropivacaine)、ブタカイン(Butacaine)、ピペロカイン(Piperocaine)、コカイン(Cocaine)、ベンゾカイン(Benzocaine)、クロロプロカイン(Chloroprocaine)、プロパラカイン(Proparacaine)およびジクロニン(Dyclonine)のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0032】
本発明の他の実施形態に係る歯科用物質伝達用マイクロニードルは、水溶性のニードル本体部と、前記ニードル本体部の表面にコーティングされ、口腔内皮組職に伝達する有効成分を含む有効成分コーティング部と、前記ニードル本体部と結合し、歯茎形状に沿って曲るベース部とを備え、前記ベース部は、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で混合してもよい。
【0033】
本発明の他の実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの製作方法は、マイクロニードルの本体部を予め設定された形状に製作する段階と、前記マイクロニードルの本体部が形成されたモールドにペレット(pellet)をのせてベース部を形成する段階と、前記ベース部と前記マイクロニードルの本体部を前記モールドから分離させる段階と、増粘剤と口腔内皮組職に伝達される有効成分を混合したコーティングソリューションを製造する段階と、前記マイクロニードルの本体部に前記コーティングソリューションをコーティングする段階と、前記マイクロニードルの本体部を常温で乾燥させる段階とを含んでもよい。
【0034】
また、前記マイクロニードルの本体部を予め設定された形状に製作する段階は、前記マイクロニードルの本体部をモールディングするためのモールドを準備する段階と、前記マイクロニードルの本体部をモールディングする段階とを含んでもよい。
【0035】
また、前記マイクロニードルの本体部をモールディングする段階では、増粘剤と口腔内皮組職に伝達される有効成分とを溶解して前記モールドに形成された溝に充填させた後、真空処理によって内部気泡を取り除き、前記モールドの溝に収容された溶液だけを残した後に自然乾燥することにより、前記マイクロニードルの本体部を製作してもよい。
【0036】
また、前記マイクロニードルの本体部をモールディングする段階は、カルボキシメチルセルロース(CMC)1〜7%、マルトース(Maltose)1〜10%、有効成分(Lidocaine)1〜10%の重量%の割合で脱イオン水に溶かしたソリューションを前記モールドの溝に充填させてもよい。
【0037】
また、前記モールドは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、モールド使用高分子種、ポリウレタン、金属、アルミニウム生体適合性物質、水溶性高分子および脂溶性/両親媒性高分子のうちいずれか1つを含む構造体であることを特徴とし、前記脂溶性高分子および前記両親媒性高分子は、HPC(hydroxy propyl cellulose)、HPMC(hydroxypropyl methyl cellulose)、PCL(poly capro lactone)、ポリグリコライド(PGA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、PVP(poly vinyl pyrrolidone)、PEG(polyethylene glycol)、PEO(poly ethylene oxide)、PPO(poly propylene oxide)、PVME(poly vinyl methyl ether)、PMA(poly(methyl)acrylate)s、Propylene glycol、Poly(ester amide)、Poly(butyric acid)、acrylamide(acrylic amide)、acrylic acid、HA(hyaluronic acid)およびgelatinからなる群より選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0038】
また、前記マイクロニードルの本体部が形成されたモールドにペレット(pellet)をのせてベース部を形成する段階は、前記モールドに前記ペレットをのせて溶融(melting)処理する段階と、前記溶融処理された前記ペレットを真空処理して気泡を取り除く段階と、気泡除去が確認された後にシート圧縮加工機(sheet pressing machine)によって圧力をかける段階とを含んでもよい。
【0039】
また、前記ペレットは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0040】
また、前記ペレットは、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で混合させて製作してもよい。
【0041】
また、前記コーティングソリューションを製造する段階は、前記増粘剤と前記有効成分を予め設定された割合で混合する段階を含んでもよい。
【0042】
また、前記増粘剤と前記有効成分を予め設定された割合で混合する段階は、カルボキシメチルセルロース(CMC)1〜10%、マルトース(Maltose)1〜30%、有効成分(Lidocaine)1〜30%の重量%の割合で脱イオン水に溶かしたソリューションを生成してもよい。
【0043】
また、前記マイクロニードルの本体部に前記コーティングソリューションをコーティングする段階は、前記マイクロニードルの本体部に前記コーティングソリューションをディップコーティングしてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によると、不規則な形状に屈折しながら形成されている口腔内部の歯茎にもマイクロニードルを付着することにより、口腔内部に歯科用物質を効率的に伝達することができる。
【0045】
また、マイクロニードルを口腔に適用したときに痛みがなく、実際にすべての使用者に痛みがないと判断された。
【0046】
また、マイクロニードルの表面、すなわち、有効成分コーティング部にコーティングされた部分の薬物は迅速に広がり、マイクロニードルの内部、すなわち、ニードル本体部の薬物はゆっくりと広がる方式により、多量の薬物を含むことができる。
【0047】
また、マイクロニードルのベース部がフレキシブルな材質で形成されているため、歯茎の不規則な屈曲面に合わせて効率的に接着させることができる。
【0048】
また、本発明に係るマイクロニードルは、一度の投与により、数秒または数分という短時間内に定量の有効成分を伝達させることができる。
【0049】
また、マイクロニードルの骨組が水溶性物質で製作されており、口腔内皮に投与した後には一部あるいは全部が溶融することから、汚染の危険性をなくすことができる。
【0050】
さらに、水溶性マイクロニードルの製作が容易であり、経済的にも大量生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの製作方法の過程を示したフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの本体部を製作する過程を示したフローチャートである。
図4図4(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルを製作するためのモールドを概略的に示した斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のモールドに、マイクロニードルを製作するための原料物質または生分解性高分子樹脂を溶解した状態で注入する形態を示した図であり、図4(c)は、図4(b)のモールド表面に残っている原料物質または生分解性高分子樹脂を乾燥させた形態を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部が形成されたモールドにベース部を形成する過程を示したフローチャートである。
図6図6(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部が形成されたモールドにペレット(pellet)をのせて溶融(melting)処理する形態を示した図であり、図6(b)は、図6(a)の溶融されたペレット(pellet)を真空処理して気泡を取り除いた後、シート圧縮加工機(sheet pressing machine)によって圧力をかけてベース部を形成することを示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部とベース部をモールドから分離させた形態を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの有効成分が含まれたコーティングソリューションを製造する過程を示したフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係るマイクロニードルのニードル本体部を有効成分が含まれたコーティングソリューションに浸して浸漬させる形状を示した図である。
図10】本発明の一実施形態に係る有効成分コーティング部がコーティングされたマイクロニードルを常温で乾燥させる段階を示した図である。
図11】本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの製作方法の過程を順序どおりに一度に示した図である。
図12図12(a)は、従来の顔または手の皮膚のうちの屈曲した面に使用することができるマイクロニードルの形状を示した図であり、図12(b)は、本発明の一実施形態に係る歯茎の屈曲に沿って柔軟に曲がるマイクロニードルを示した図である。
図13図13(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルが柔軟に曲がる形状を示した図であり、図13(b)は、図13(a)のマイクロニードルの機械的強度を示した図である。
図14図14(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルを歯茎に挿入した形態を示した図であり、図14(b)は、図14(a)のマイクロニードルが歯茎の屈曲面に沿って柔軟に曲がって挿入された形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明の思想がこのような実施形態に制限されてはならず、本発明の思想は、実施形態をなす構成要素の付加、変更、および削除などによって異なるように提案されてもよく、これも発明の思想に含まれる。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの断面図である。
【0054】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、ニードル本体部10、有効成分コーティング部20、およびベース部30を備える。
【0055】
ニードル本体部10は、端部が尖った円錐形状に形成されてもよい。ニードル本体部10は、皮膚に浸透することのできる形態であれば特にその形態に制限はないが、大略1μm〜100μmの直径を有する円錐形状で形成されてもよい。
【0056】
ニードル本体部10は、水に溶解する水溶性材質で形成されてもよい。より詳細には、マイクロニードル1が溶解性マイクロニードルとして使用される場合には、ニードル本体部10は、粘性を有するカルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymethyl cellulose)などの増粘剤とリドカイン(Lidocaine)のような口腔粘膜内に伝達される有効成分(歯科用薬物を含む概念である。以下同じ。)を混合した材質で形成されてもよい。より詳細には、ニードル本体部10は、カルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymethyl cellulose)などの増粘剤によって生成した後に、リドカインなどの有効成分を添加することにより、ニードル本体部10自体が有効成分を含むようになる。ニードル本体部10に増粘剤を含むことにより、ニードル本体部10の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0057】
これとは異なり、マイクロニードル1がコーティングマイクロニードルとして使用される場合には、ニードル本体部10は、PLA(Poly Lactic Acid)またはPLGA(Poly Lactic−co−Glycolic Acid)のような生分解性高分子樹脂で形成されてもよい。
【0058】
ニードル本体部10に含まれる増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくともいずれか1つを含んでもよい。
【0059】
このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン(chitosan)、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、プルラン(Pullulan)、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)およびシクロデキストリン(cyclodextrin)は、水に対する溶解度が相対的に低い増粘剤(第1増粘剤)としてもよく、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)およびラクツロース(Lactulose)は、水に対する溶解度が高い水溶性物質であって、これらの濃度が高くなった場合でも増粘剤としての役割を果たすため、水に対する溶解度が高い増粘剤(第2増粘剤)としてもよい。
【0060】
したがって、ニードル本体部10には、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのように溶解度が低い増粘剤と、マルトースのような水溶性物質であるが、その濃度が高くなると増粘剤としての役割を行う溶解度の高い増粘剤と、リドカインなどの有効成分が主成分として含まれてもよい。
【0061】
ニードル本体部10は、増粘剤と有効成分の混合物をモールド(M)に注入してモールディングさせたり、生分解性高分子樹脂をモールド(M)に注入してモールディングさせる方式によって製作されてもよい。ニードル本体部10の詳しい製作方法およびモールド(M)の具体的な材質については、後述して説明する。
【0062】
有効成分コーティング部20は、ニードル本体部10の表面にコーティングされている。有効成分コーティング部20は、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、マルトース(maltose)などの増粘剤と、リドカインのような有効成分とを予め設定された割合で混合した材質によって形成されてもよい。
【0063】
有効成分コーティング部20に含まれる増粘剤には、マルトース(Maltose)の他にも、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、またはラクツロース(Lactulose)などのように水に対する溶解度が高い増粘剤が含まれてもよく、上述したカルボキシメチルセルロース(CMC)などの溶解度が低い増粘剤も所定の割合で含まれてもよい。
【0064】
ただし、有効成分コーティング部20は、ニードル本体部10に比べ、マルトースなどのような溶解度の高い増粘剤の割合が、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのような溶解度の低い増粘剤に比べて遥かに高くてもよい。
【0065】
このように、例えば歯科用薬物などの有効成分が、ニードル本体部10の表面、すなわち、有効成分コーティング部20に分布することにより、定量の有効成分(薬物)を迅速に口腔内粘膜または歯茎内部に伝達することができる。さらに、有効成分コーティング部20だけではなく、有効成分コーティング部20に比べて大きい体積を有するニードル本体部10にも有効成分が含まれているため、多量の有効成分の伝達が可能となり、長時間に渡って有効成分を伝達できるという効果がある。
【0066】
したがって、口腔内粘膜または歯茎に伝達しなければならない最小限の有効成分は有効成分コーティング部20に含ませることによって迅速に口腔内粘膜または歯茎内部に伝達させ、残りの有効成分はニードル本体部10に含ませることが好ましい。
【0067】
有効成分コーティング部20をニードル本体部10の表面にコーティングおよび乾燥させる詳しい過程については、後述して説明する。
【0068】
有効成分コーティング部20に含まれるマルトースなどの増粘剤は、ニードル本体部10に含まれるCMCなどの増粘剤に比べて溶解度が高い、すなわち溶解速度が速いため、マイクロニードル1が口腔内の歯茎などに適用された後、有効成分コーティング部20に含まれた有効成分(例:リドカイン)は、ニードル本体部10に含まれた有効成分よりも速く歯茎や口腔内粘膜内部に伝達されるようになる。
【0069】
有効成分コーティング部20だけではなく、ニードル本体部10にも、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、またはラクツロース(Lactulose)などのように溶解度が比較的高い増粘剤が含まれているが、ニードル本体部10にこのような増粘剤が含まれる割合は、有効成分コーティング部20にこのような増粘剤が含まれる割合よりも遥かに低いため、有効成分コーティング部20に含まれる有効成分がニードル本体部10に含まれる有効成分よりも速く歯茎や口腔内粘膜内部に伝達されるようになる。
【0070】
これは、マルトースなどのように溶解度が高い増粘剤の割合が高いほど、有効成分の伝達速度が向上するためである。
【0071】
一例として、ニードル本体部10に含まれたマルトースなどのような溶解度の高い増粘剤が含まれた割合が約5%だとすると、有効成分コーティング部20に含まれるマルトースなどのように溶解度の高い増粘剤が含まれる割合は約30%であってもよい。したがって、有効成分コーティング部20に含まれる有効成分の量とニードル本体部10に含まれる有効成分の量を調節する方式により、有効成分が歯茎や口腔内粘膜内部に伝達される速度を調節することが可能となる。例えば、リドカインなどの有効成分が歯茎や口腔内粘膜内部に伝達される速度を速めるためには、有効成分コーティング部20に含まれる有効成分の量をニードル本体部10に含まれる有効成分の量よりも多くしてよく、これとは反対に、有効成分が歯茎や口腔内粘膜内部に伝達される速度を相対的に遅くするためには、有効成分コーティング部20に含まれる有効成分の量をニードル本体部10に含まれる有効成分の量よりも少なくしてよい。
【0072】
また、有効成分コーティング部20およびニードル本体部10に含まれる有効成分は歯科用薬物であってもよく、このような有効成分は、リドカイン(Lidocaine)、メピバカイン(Mepivacaine)、プリロカイン(Prilocaine)、ブピバカイン(Bupivacaine)、エチドカイン(Etidocaine)、アルチカイン(Articaine)、プロカイン(Procaine)、プロポキシカイン(Propoxycaine)、テトラカイン(Tetracaine)、ロピバカイン(Ropivacaine)、ブタカイン(Butacaine)、ピペロカイン(Piperocaine)、コカイン(Cocaine)、ベンゾカイン(Benzocaine)、クロロプロカイン(Chloroprocaine)、プロパラカイン(Proparacaine)およびジクロニン(Dyclonine)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0073】
ニードル本体部10、より正確には、ニードル本体部10の先端部分において、溶解度が相対的に低い増粘剤と、溶解度が相対的に高い増粘剤と、有効成分との割合は、5重量%:5重量%:5重量%であってもよい。一例として、ニードル本体部10の先端部分には、カルボキシメチルセルロース(CMC):マルトース(Maltose):リドカインが、5重量%:5重量%:5重量%の割合で含まれることが好ましい。
【0074】
したがって、ニードル本体部10の場合、増粘剤と有効成分の割合は10:0〜1:9の範囲であり、好ましくは2:1〜3:1の範囲であってもよい。
【0075】
また、有効成分コーティング部20において、溶解度が相対的に低い増粘剤と、溶解度が相対的に高い増粘剤と、有効成分との割合は、5重量%:30重量%:30重量%であってもよい。一例として、好ましくは、有効成分コーティング部20には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC):マルトース(Maltose):リドカインが、5重量%:30重量%:30重量%の割合で含まれることが好ましい。
【0076】
したがって、有効成分コーティング部20の場合、増粘剤と有効成分の割合が9:1〜1:9の範囲であり、好ましくは1:1〜1:2の範囲であってもよい。ベース部30はニードル本体部10と結合し、歯肉、すなわち、歯茎の形状に合うように曲がるように形成されている。より詳細には、ベース部30は、歯根の屈曲に沿って柔軟に曲がるようにフレキシブルな材質で形成されてもよい。
【0077】
ベース部30は、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:Polymethylmethacrylate)、エチレン酢酸ビニル(EVA:Ethylene vinyl acetate)、ポリカプロラクトン(PCL:Polycaprolactone)、ポリウレタン(PU:Polyurethane)、ポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene glycol)、ポリビニルアルコール(PVA:Polyvinyl alcohol)、ポリラクチド(PLA:Poly lactide)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA:Poly(lactic−co−glycolic acid)およびポリグリコライド(PGA:Polyglycolide)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいる。
【0078】
ベース部30は、ポリカプロラクトン(PCL)を除いた他の高分子とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で含んでもよく、より好ましくは、1:9または2:8の割合で含んでもよい。
【0079】
言い換えれば、他の高分子(他の高分子(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)のうちいずれか1つ)とポリカプロラクトン(PCL)とを1:9〜5:5の重量%の割合で含んでもよく、好ましくは、1:9または2:8の割合で含んでもよい。
【0080】
一例として、ベース部30は、割れやすいが機械的強度を維持することのできる乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)と柔軟な性質を有するポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で交ぜ、2つの物質の効果をすべて備えるようにしてもよい。
【0081】
また、ベース部30は、ポリカプロラクトン(PCL)材質だけで形成されてもよい。
【0082】
ベース部30をニードル本体部10と結合させて製作する詳しい過程については、後述して説明する。
【0083】
図2は、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの製作方法の過程を示したフローチャートである。
【0084】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルを製作するためには、先ず、マイクロニードル1のニードル本体部10を予め設定された形状に製作する(S10)。その次に、マイクロニードル1のニードル本体部10が形成されたモールド(M)にペレット(pellet)をのせてベース部30を形成する(S20)。その次に、ベース部30とニードル本体部10をモールド(M)から分離させる(S30)。その次に、ニードル本体部10にコーティングされる有効成分コーティング部20のコーティングソリューションを製造する(S40)。その次に、ニードル本体部10に有効成分コーティング部20のコーティングソリューションを例えばディップコーティングする(S50)。その次に、有効成分コーティング部20のコーティングソリューションがコーティングされたマイクロニードル1を常温で乾燥させる(S60)。
【0085】
以下では、図面を参照しながら、上述したそれぞれの段階について詳しく説明する。
【0086】
図3は、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの本体部を製作する過程を示したフローチャートであり、図4(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルを製作するためのモールドを概略的に示した斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のモールドにマイクロニードルを製作するための原料物質または生分解性高分子樹脂が溶解した状態で注入される形態を示した図であり、図4(c)は、図4(b)のモールド表面に残っている原料物質または生分解性高分子樹脂を乾燥させた形態を示した図である。
【0087】
図3および図4を参照すると、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1のニードル本体部10は、モールディングを基盤にして製造されてもよい。マイクロニードル1のニードル本体部10を予め設定された形状に製作する段階S10は、ニードル本体部10をモールディングするためのモールド(M)を準備する段階S11と、ニードル本体部10をモールディングする段階S12を含んでもよい。
【0088】
ニードル本体部10は、上述したように、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0089】
モールド(M)には、ニードル本体部10の端部が鋭い形状に製作されように、円錐形状の複数の溝が形成されてもよい(図4(a)参照)。
【0090】
このとき、モールド(M)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、モールド使用高分子種、ポリウレタン、金属、アルミニウム生体適合性物質、水溶性高分子、および、脂溶性高分子または両親媒性高分子からなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む構造体であることを特徴とし、前記脂溶性高分子および前記両親媒性高分子は、HPC(hydroxy propyl cellulose)、HPMC(hydroxypropyl methyl cellulose)、PCL(poly capro lactone)、ポリグリコライド(PGA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、PVP(poly vinyl pyrrolidone)、PEG(polyethylene glycol)、PEO(poly ethylene oxide)、PPO(poly propylene oxide)、PVME(poly vinyl methyl ether)、PMA(poly(methyl)acrylate)s、Propylene glycol、Poly(ester amide)、Poly(butyric acid)、acrylamide(acrylic amide)、acrylic acid、HA(hyaluronic acid)およびgelatinからなる群より選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0091】
より詳細には、マイクロニードル1のニードル本体部10をモールディングする段階S12では、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤と口腔内皮組職に伝達される有効成分とを溶解した溶液をPDMSモールド(M)に充填した後、真空処理によって内部気泡を取り除いてもよい。
【0092】
より詳細には、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの第1増粘剤1〜7重量%(5%が適当)、マルトース(Maltose)などの第2増粘剤1〜10重量%(5%が適当)、リドカインなどの有効成分1〜10重量%(5%が適当)を脱イオン水(Deionized water)に溶かしたソリューション(Solution)をPDMSモールドの先端部分(陥没している部分)に充填してもよい。
【0093】
したがって、ニードル本体部10の場合、増粘剤と有効成分の割合は10:0〜1:9の範囲であり、好ましくは2:1〜3:1の範囲であってもよい。
【0094】
その次に、モールド(M)の円錐形状の溝に収容された溶液だけを残してモールド(M)の上面に残っている溶液は取り除いた後、モールド(M)の円錐形状の溝に収容された溶液を自然乾燥させてマイクロニードル1のニードル本体部10を製作してもよい(図4(b)および図4(c)参照)。
【0095】
より詳細には、モールド(M)の円錐形状の溝に収容された溶液を常温(約25℃)で約1時間に渡って乾燥させた後、約70℃のオーブンで約1時間に渡って乾燥させてもよい。
【0096】
このように、モールド(M)の尖った溝に収容された溶液だけを残した後に自然乾燥すると、図4(c)に示すように、モールド(M)に形成された複数の前記溝にニードル本体部10が形成されるようになる。
【0097】
図5は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部が形成されたモールドにベース部を形成する過程を示したフローチャートであり、図6(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部が形成されたモールドにペレット(pellet)をのせて溶融(melting)処理する形態を示した図であり、図6(b)は、図6(a)の溶融したペレット(pellet)を真空処理して気泡を取り除いた後、シート圧縮加工機(sheet pressing machine)によって圧力をかけてベース部を形成することを示した図であり、図7は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの本体部とベース部をモールドから分離させた形態を示した図である。
【0098】
図5図7を参照すると、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1のニードル本体部10が形成されたモールド(M)にペレット(pellet)をのせてベース部30を形成する段階S20は、モールド(M)にペレット(P)をのせて溶融処理する段階S21と、溶融処理後にペレット(p)を真空処理して気泡を取り除く段階S22と、気泡除去の確認後にシート圧縮加工機(sheet pressing machine)によって圧力をかける段階S23とを含んでもよい。
【0099】
ペレット(P)は、ベース部30を形成するための成形用樹脂の粒子状物質であって、このような粒子状物質であるペレット(P)を、ニードル本体部10が既に形成されているモールド(M)にのせてもよい(図6(a)参照)。
【0100】
ペレット(P)は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0101】
ペレット(P)は、ポリカプロラクトン(PCL)を除いた他の高分子とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で含んでもよく、より好ましくは、1:9または2:8の割合で含んでもよい。
【0102】
言い換えれば、他の高分子(他の高分子(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド(PLA)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)およびポリグリコライド(PGA)のうちいずれか1つ)とポリカプロラクトン(PCL)を1:9〜5:5の重量%の割合で含んでもよく、好ましくは、1:9または2:8の割合で含んでもよい。
【0103】
一例として、ペレット(P)は、割れやすいが機械的強度を維持することのできる乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)と柔軟な性質を有するポリカプロラクトン(PCL)とを1:9〜5:5の割合で交ぜて製作してもよく、これにより、ベース部30が2つの物質の効果をすべて備えるようにしてもよい。
【0104】
また、ペレット(P)は、柔軟な性質を有するポリカプロラクトン(PCL)のみで形成されてもよい。
【0105】
モールド(M)上にのせたペレット(P)は、約70〜150℃の温度範囲内で溶融処理してもよい。一例として、モールド(M)上にのせたペレット(P)は、約60〜100℃の真空オーブンで溶融処理してもよい。
【0106】
溶融処理されたペレット(P)は、真空処理して気泡を取り除いてもよく、気泡の除去を確認した後、500gのシート圧縮加工機(sheet pressing machine)によって圧力をかけてベース部30を形成してもよい。前記シート圧縮加工機を使用することにより、モールド(M)上でベース部30を均等に製作することができ、モールド(M)の溝内部に収容されたニードル本体部10とベース部30が互いに結合するようになる。
【0107】
モールド(M)上にベース部30を形成し、ベース部30とニードル本体部10が完全に結合すれば、ベース部30とニードル本体部10をモールド(M)から分離させてもよい(S30)。したがって、ベース部30上には、複数のニードル本体部10が円錐形状で形成されるようになる(図7参照)。
【0108】
図8は、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの有効成分が含まれたコーティングソリューションを製造する過程を示したフローチャートであり、図9は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルのニードル本体部を有効成分が含まれたコーティングソリューションに浸して浸漬させる形状を示した図であり、図10は、本発明の一実施形態に係る有効成分コーティング部がコーティングされたマイクロニードルを常温で乾燥させる段階を示した図である。
【0109】
図8図10を参照すると、ニードル本体部10にコーティングされる有効成分コーティング部20のコーティングソリューションを製造する段階S40は、増粘剤と有効成分を予め設定された割合で混合する段階S41と、マイクロウェル(Micro−wells)にこのような有効成分が含まれたコーティングソリューションを充填する段階S42とを含んでもよい。
【0110】
有効成分コーティング部20のコーティングソリューションを製造する過程において、有効成分と混合する増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリル酸塩(polyacrylate)、エチレン−酢酸ビニル(ethylene−vinyl acetate)重合体、アクリル置換セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、シクロデキストリン(cyclodextrin)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)、セロビオース(Cellobiose)、イソマルトース(Isomaltose)、ツラノース(Turanose)、ラクツロース(Lactulose)、これらの高分子を形成する単量体の共重合体、およびセルロースからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0111】
より詳細には、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの第1増粘剤1〜10重量%(3%が適当)、マルトース(Maltose)などの第2増粘剤1〜30重量%(30%が適当)、リドカインなどの有効成分1〜30重量%(30%が適当)を脱イオン水に溶かしたソリューションをマイクロウェル(Micro well)に充填し、マイクロニードル本体部をディップコーティングしてもよい。
【0112】
したがって、有効成分コーティング部20の場合、増粘剤と有効成分の割合が9:1〜1:9の範囲であり、好ましくは1:1〜1:2の範囲であってもよい。
【0113】
このとき、前記有効成分は、リドカイン(Lidocaine)、メピバカイン(Mepivacaine)、プリロカイン(Prilocaine)、ブピバカイン(Bupivacaine)、エチドカイン(Etidocaine)、アルチカイン(Articaine)、プロカイン(Procaine)、プロポキシカイン(Propoxycaine)、テトラカイン(Tetracaine)、ロピバカイン(Ropivacaine)、ブタカイン(Butacaine)、ピペロカイン(Piperocaine)、コカイン(Cocaine)、ベンゾカイン(Benzocaine)、クロロプロカイン(Chloroprocaine)、プロパラカイン(Proparacaine)およびジクロニン(Dyclonine)からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよいことは、上述したとおりである。
【0114】
このように製造された有効成分が含まれたコーティングソリューションに、モールディングによって製作されたニードル本体部10を、増粘剤および有効成分を混合して生成したコーティングソリューションに浸漬(Dipping)させてコーティング(S50)した後、このようなコーティングソリューションによってコーティングされたニードル本体部10を常温で乾燥させてもよい(S60)。
【0115】
図11は、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの製作過程を順序どおりに一度に示した図である。
【実施例】
【0116】
(1)PDMSモールドを準備する(図11(a)参照)。
【0117】
(2)カルボキシメチルセルロース(CMC)1〜7%(5%が適当)、マルトース(Maltose)1〜10%(5%が適当)、有効成分(Lidocaine)1〜10%(5%が適当)を脱イオン水(Deionized water)に溶かしたソリューション(Solution)をPDMSモールドの先端部分(陥没している部分)に充填させ、常温で約1時間に渡って乾燥させた後、70度のオーブンで約1時間に渡って乾燥させる(図11(b)参照)。実際の実験では、CMC5%+マルトース(Maltose)5%+リドカイン(Lidocaine)5%の条件で実施した。図11(c)は、乾燥が終わった後、PDMSモールドに充填されたニードル本体部の先端(Tip)部分を示した図である。
【0118】
(3)ポリカプロラクトン(PCL:Polycaprolactone)ペレットをモールドの上(ベース部分)にのせ、60〜100度の真空オーブンで減圧と加圧によって気泡を取り除く。実際の実験では、ベースの広さが0.7cm×0.7cmである場合に、ポリカプロラクトン(PCL:Polycaprolactone)ペレットを0.8gのせ、70℃の真空オーブンで気泡を取り除いた(図11(d)参照)。
【0119】
(4)気泡除去が終わると、真空オーブンから取り出し、500gのスチールプレート(steel plate)によって圧力をかけながら冷却させる(図11(e)参照)。
【0120】
(5)冷却したマイクロニードルの本体部を取り出し、マイクロニードルの本体部を完成させる(図11(f))。
【0121】
(6)カルボキシメチルセルロース(CMC)1〜10%(3%が適当)、マルトース(Maltose)1〜30%(30%が適当)、有効成分(Lidocaine)1〜30%(30%)を脱イオン水に溶かしたソリューションをマイクロウェル(Micro well)に充填させ、マイクロニードル本体部をディップコーティングする(図11(g)参照)。実際の実験では、CMC3%+マルトース(Maltose)30%+リドカイン(Lidocaine)30%の条件で実施した。
【0122】
(7)図11(h)は、完成した歯科用物質伝達のためのマイクロニードル(口腔用局部麻酔フレキシブルマイクロニードル)を示した図である。
【0123】
【表1】
<従来のコーティングマイクロニードルと本発明に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの比較表>
【0124】
図12(a)は、従来の顔または手の皮膚のうちの屈曲した面に使用が可能なマイクロニードルの形状を示した図であり、図12(b)は、本発明の一実施形態に係る歯茎の屈曲に沿って柔軟に曲がるマイクロニードルを示した図であり、図13(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルが柔軟に曲がる形状を示した図であり、図13(b)は、図13(a)のマイクロニードルの機械的強度を示した図である。
【0125】
図12および図13を参照すると、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、歯肉の屈曲面に合うように柔軟に曲がるように製作されてもよい。
【0126】
従来のマイクロニードルは、図12(a)に示すように、顔の皮膚または手の皮膚の屈曲した面に沿ってニードル(S)が使用されるものに過ぎず、顔や手の皮膚の屈曲した面に沿って付着して薬物のような有効成分を伝達することができた。従来のニードル(S)は、顔や手の皮膚の屈曲に沿って柔軟に付着するように、約160〜180゜の角度の範囲内で曲るように形成されている。
【0127】
この反面、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、従来のマイクロニードル(S)に比べて曲る角度がさらに大きく、歯肉縁(C)、すなわち、歯茎の屈曲に沿って柔軟に曲がるように形成されてもよい。一例として、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、どのような形状で製作されてもよいが、歯茎の屈曲に沿って約100〜165゜の角度の範囲内で曲るように形成されてもよい。
【0128】
したがって、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、歯茎の屈曲に適する形態の柔軟な材質で形成されることにより、より効果的に歯茎内に歯科用薬物を伝達できるという長所がある。
【0129】
また、図13(b)は、本発明に係るマイクロニードル1の機械的強度を示した図であって、ニードル本体部10にカルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤を含むことによってニードル本体部10の機械的強度が向上し、図13(b)に示すように、歯茎などに容易く挿入させることができ、歯科用薬物を伝達できるという効果がある。
【0130】
図14(a)は、本発明の一実施形態に係るマイクロニードルを歯茎に挿入する形態を示した図であり、図14(b)は、図14(a)のマイクロニードルが歯茎の屈曲した面に沿って柔軟に曲がって挿入された形態を示した図である。
【0131】
図14を参照すると、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、歯茎、すなわち、歯肉の屈曲した面に合うように柔軟に曲がって挿入できるように形成されてもよい。
【0132】
図14(a)を参照すると、マイクロニードル1が歯肉(G)に完全に挿入される前には、ベース部30は平らな状態を維持してもよく、有効成分コーティング部20の端部から歯肉(G)に沿って挿入されてもよい。
【0133】
その次に、歯肉(G)に沿ってニードル本体部10が完全に挿入されると、歯肉(G)の屈曲した面の形状に沿ってベース部30が柔軟に曲がってもよい(図14(b)参照)。特に、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル1は、コーティングマイクロニードルで形成されてもよく、ベース部30が口腔内の歯肉(G)の不規則な屈曲形状に合うように効果的に吸着されるようにフレキシブルな材質で形成されてもよい。
【0134】
以下では、本発明の一実施形態に係る歯科用物質伝達のためのマイクロニードルの作用について説明する。
【0135】
先ず、マイクロニードル1は、モールディング方式を基盤としてニードル本体部10とベース部30を製作してもよい。このとき、ニードル本体部10は、歯肉(G)に吸着して挿入できる程度の機械的強度を有する増粘剤(例:カルボキシメチルセルロース)と有効成分(例:リドカイン)を混合してモールド(M)に溶解された状態で注入された後、真空処理によって気泡が取り除かれた状態で自然乾燥させて製作されてもよい。
【0136】
その次に、ベース部30を形成するために、ペレット(p)をニードル本体部10が形成されたモールド(M)に注入し、溶融処理および真空処理して気泡を取り除いた後、シート圧縮加工機を利用して圧縮してもよい。
【0137】
このように、ベース部30とニードル本体部10をモールド(M)上で結合させた後にモールド(M)から分離させてもよく、分離したニードル本体部10に有効成分コーティング部20をディップコーティングさせて常温で乾燥する過程によってコーティングマイクロニードル1を製作してもよい。
【0138】
特に、マイクロニードル1のベース部30は、口腔内の歯肉の不規則な屈曲面に沿って効果的に吸着されるように、フレキシブルな材質(例:ポリエチレン)で形成されてもよい。
【0139】
したがって、口腔内の歯肉(G)のどこにでも簡単にマイクロニードル1のニードル本体部10を吸着させることができ、ニードル本体部10および有効成分コーティング部20に含まれた有効成分(歯科用薬物)を効果的に伝達することができる。
【符号の説明】
【0140】
1:マイクロニードル
10:ニードル本体部
20:有効成分コーティング部
30:ベース部
M:モールド
P:ペレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14