特許第6231655号(P6231655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231655生体分子相互作用を調整するための側方流動イムノアッセイにおけるpH/温度/イオン勾配の発生およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231655
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】生体分子相互作用を調整するための側方流動イムノアッセイにおけるpH/温度/イオン勾配の発生およびその用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】28
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-501633(P2016-501633)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-511423(P2016-511423A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014024760
(87)【国際公開番号】WO2014165198
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】13/800,328
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】カヴシ,サム
(72)【発明者】
【氏名】アーマド,ハビブ
(72)【発明者】
【氏名】ラング,クリストフ
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/081361(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/147382(WO,A1)
【文献】 特表2015−535341(JP,A)
【文献】 特表2013−508682(JP,A)
【文献】 特表2001−508180(JP,A)
【文献】 特表2008−541017(JP,A)
【文献】 特開2003−161733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子検体を測定するための側方流動アッセイ装置であって、
a)固体支持体と、
b)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
c)それぞれのテストサイトが前記生体分子検体のためのプローブを含む複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分であって、それぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
d)毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
e)それぞれのテストサイトにおいて局所環境パラメーターを制御するための作動要素としての少なくとも1つの電極と、
f)検出要素としての少なくとも1つの電極と、
を含み、
前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、前記サンプル部分b)から前記吸収材部分d)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供し、
前記作動要素としての少なくとも1つの電極は、前記検出要素としての少なくとも1つの電極から取得されるシグナルに基づいてそれぞれのテストサイトにおいて前記局所環境パラメーターを変化させる、装置。
【請求項2】
前記毛細管流動の方向に前記診断部分の上流に、粒子材料を含むコンジュゲート部分をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記生体分子検体のための前記プローブが、前記生体分子検体と相互作用するバインダーを含み、当該プローブ上に固定化されたバインダー−検体/リガンド複合体を形成する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記検出要素としての少なくとも1つの電極が、前記サンプルおよび/または前記生体分子検体のうちの少なくとも1つの測定可能なパラメーターを決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記測定可能なパラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、イオン濃度、pH、色、発光性、蛍光性、導電率、インピーダンス、および磁気モーメントから選択される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記診断部分および/または前記サンプル部分は、流動方向に平行に分割され、1つまたは複数のスペーサ要素によって互いから分離された複数のレーンになっている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記スペーサ要素が、疎水性である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
それぞれのレーンの中で、前記生体分子検体とそれぞれのプローブとの間の相互作用に関する局所環境条件が変化させられる、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
それぞれのレーンが、局所環境パラメーターを制御する1つまたは複数の作動要素を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
それぞれのレーンが、1つまたは複数のテストサイトを含み、当該1つまたは複数のテストサイトに関して、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する前記局所環境条件が、独立して変化させられ得る、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数のテストサイトが、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する前記局所環境条件を修正するために、局所環境パラメーターを制御する作動要素をそれぞれ含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択されるパラメーターである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
それぞれのレーンが、前記サンプルおよび/または生体分子検体の測定可能なパラメーターを決定するための1つまたは複数の検出要素を含む、請求項7から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記測定可能なパラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、イオン濃度、pH、色、発光性、蛍光性、導電率、インピーダンス、および磁気モーメントから選択される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記診断部分が、ニトロセルロースメンブレン、ポリフッ化ビニリデンメンブレン、随意的に電荷修飾されたナイロンメンブレン、および、ポリエーテルスルホンメンブレンから選択されるメンブレンを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも1つの電極が、前記サンプル部分、前記診断部分、および/または前記吸収材部分の上に統合された少なくとも1つの電極対を含む電気的なセンサーである、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
生体分子検体を測定するための側方流動アッセイ装置であって、
a)固体支持体と、
b)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
c)それぞれのテストサイトが前記生体分子検体のためのプローブを含む複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分であって、それぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
d)毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
e)少なくとも1つの電極と、
を含み、
前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、前記サンプル部分b)から前記吸収材部分d)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供し、
前記少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、2つの電極対を含む電気的なセンサーであって、前記診断部分を横切る前記サンプルの流量を決定し、当該電気的なセンサーの少なくとも1つの電極対が、前記サンプル部分、前記診断部分、および/または前記吸収材部分の上に統合された、装置。
【請求項20】
生体分子検体を測定するための側方流動アッセイ装置であって、
a)固体支持体と、
b)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
c)それぞれのテストサイトが前記生体分子検体のためのプローブを含む複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分であって、それぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
d)毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
e)少なくとも1つの電極と、
を含み、
前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、前記サンプル部分b)から前記吸収材部分d)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供し、
前記少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、前記サンプルの前記流路を横切って隣り合わせで配置されている一連の複数の電極対を含む前記電気的なセンサーであって、前記診断部分を横切る前記サンプルの流動形状を決定し、当該電気的なセンサーの少なくとも1つの電極対が、前記サンプル部分、前記診断部分、および/または前記吸収材部分の上に統合された、装置。
【請求項21】
生体分子検体を測定するための側方流動アッセイ装置であって、
a)固体支持体と、
b)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
c)それぞれのテストサイトが前記生体分子検体のためのプローブを含む複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分であって、それぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
d)毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
e)少なくとも1つの電極と、
を含み、
前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、前記サンプル部分b)から前記吸収材部分d)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供し、
前記少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、前記診断部分を横切って流れる前記サンプルの温度を決定するための画定された範囲にある導電性材料抵抗の画定された構造体を含む電気的なセンサーである、装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの電極が、前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分を支持する前記固体支持体の上にプリントもしくは適用されており、または、前記サンプル部分、前記診断部分、および/もしくは前記吸収材部分の上に直接的にプリントもしくは適用されており、または、前記診断部分の上のギャップの中にプリントもしくは適用されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの電極が、前記サンプルおよび/または前記生体分子検体の1つまたは複数のパラメーターを計算するための処理ユニットに接続されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記サンプルおよび/または前記生体分子検体の前記パラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、および、前記生体分子検体の濃度から選択される、請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
生体分子検体を測定するための側方流動アッセイ装置であって、流動方向に平行なレーンに分割された側方流動アッセイ装置は、
a)固体支持体と、
b)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
c)それぞれのテストサイトが前記生体分子検体のためのプローブを含む複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分であって、それぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
d)毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
e)それぞれのテストサイトにおいて局所環境パラメーターを制御するための作動要素としての少なくとも1つの電極と、
f)検出要素としての少なくとも1つの電極と、
を含み、
前記サンプル部分、前記診断部分、および前記吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、前記サンプル部分b)から前記吸収材部分d)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供し、
前記作動要素としての少なくとも1つの電極は、前記検出要素としての少なくとも1つの電極から取得されるシグナルに基づいてそれぞれのテストサイトにおいて前記局所環境パラメーターを変化させる、装置。
【請求項26】
生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法であって、
a)側方流動アッセイ装置を提供するステップであって、生体分子検体と相互作用するための条件は、独立して変化させられ得、当該側方流動装置は、
固体支持体と、
サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
複数のテストサイトを有するマルチサイトアレイを含む診断部分と、
毛細管流動を提供するための吸収材材料を有する吸収材部分と、
それぞれのテストサイトにおいて局所環境パラメーターを制御するための作動要素としての少なくとも1つの電極と、
検出要素としての少なくとも1つの電極と、
を含む、ステップと、
b)前記側方流動アッセイ装置の前記サンプル部分に生体サンプルを適用するステップであって、それによって、当該生体サンプルが、それぞれのテストサイトにおいて、プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、ステップと、
c)前記サンプルと前記プローブとの間の接触に続いて、それぞれのテストサイトにおける前記検出要素としての少なくとも1つの電極のそれぞれからシグナルを取得するステップと、
d)存在する場合には、テストサイトに位置付けされていない前記検出要素としての少なくとも1つの電極のそれぞれからシグナルを取得するステップと、
e)ステップc)およびd)において取得された前記シグナルから前記生体分子検体の前記濃度を決定するステップと、
を含み、
前記作動要素としての少なくとも1つの電極のそれぞれの活性化は、それぞれのテストサイトにおいて、前記局所環境パラメーターを変化させる、方法。
【請求項27】
前記作動要素としての少なくとも1つの電極、および、前記検出要素としての少なくとも1つの電極が、ディスプレイを含む処理ユニットに接続されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記局所環境パラメーターは、前記診断部分を横切る前記サンプルの流量、前記診断部分を横切る前記サンプルの流動形状、前記診断部分における前記サンプルの温度、前記診断部分における前記サンプルのpH、および/または、前記診断部分における前記サンプルのイオン濃度である、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本発明は、2013年3月13日に出願された米国出願第13/800,328号の利益を主張する。この出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[0001]本発明は、バイオセンサーとしての側方流動(LF)アッセイのための装置、そのようなLFアッセイ装置を改善する方法、および、診断方法においてそのようなLFアッセイ装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]最近、予測医学、予防医学、および、とりわけ個別化医療への関心が増加しており、それは、高い再現性、感度、および特異性を有する診断テストを必要とする。側方流動(LF)アッセイ装置は、そのような診断テストを組み込み、ポイント・オブ・ケア(POC)診断において確立した技術である。ELISAおよびPCR/Q−PCRなどのような他の診断技法と比較すると、LFアッセイ装置は、迅速であり、簡単であり、ほとんどが自動化されており、コスト効率が良いという利点を有している。相対的な製造の容易性、長い保存可能期間、および、顧客による使用の容易性は、LFアッセイ装置を非常に魅力的にするいくつかのさらなる利点である。
【0004】
[0003]LFアッセイ装置は、診断装置として使用されることが多く、ここで、主な焦点は、容易なイエスかノーの答えを提供する定性的なシステムである。しかし、現在、より高感度で、定量的で、さらに多重化の測定に対する要求が増加しており、それは、読み取りシステムの実装を必要とする。
【0005】
[0004]LFアッセイ装置の中で使用される最も一般的なセンシング方法は、目視検査によることが多い光学的なセンシングであり、アッセイの結果として、熱量測定の変化、蛍光変化、または他の視覚的変化を検出する。そのような変化を実現するために使用される試薬ラベルは、コロイド金、ラテックス粒子、炭素、蛍光分子、および化学発光分子を含む。酵素的反応が、シグナルを増幅させるためにそれに続いて適用され得る。ラベルの視覚的検出に関連付けられる主な問題は、増幅がないときの検出の限界が比較的に乏しいということ、アッセイから速度論的な(kinetic)情報を取得できないということ、および、アッセイから得られる定量的な情報が欠如しているということである。LFテストをかなり魅力あるものにする、簡単で迅速でコスト効率の良い装置を維持しながら、定量的なリアルタイム分析を提供し得る、視覚的な特性の代替に対する明確な必要性が存在している。
【0006】
[0005]理想的には、LFテストは、精製の必要なしに、患者サンプルを用いて直接的に行われる。その理由は、これが、分析の前の処理に関連した時間、複雑性、およびコストを低減させるからである。残念なことに、生のサンプルの中の多種多様な生体分子は、アッセイにおける非特異的な公差反応性の機会を増加させ、それは、図1に図示されているように、偽陽性の読み取りを引き起こす可能性がある。これは、より良好でより特殊なプローブ分子の開発によって防止され得るが、その開発プロセスは、高価であり、多くの労力を要し、完全に公差反応性を排除することが保証されない。しかし、反応速度論および結合強度は、特異的な結合相互作用と非特異的な結合相互作用との間で異なるということがよく知られている。そのうえ、これらの結合特性は、温度、pH、およびイオン強度を含む、局所環境要因による変化の影響を受けやすい。局所環境パラメーターを制御可能に変化させることによって、検出された相互作用を特異的または非特異的のいずれかであると、より良好に特徴付けることが可能である。
【0007】
[0006]LFアッセイ装置において生成されるシグナルに影響を与えるいくつかの他の重要な要因は、溶液の温度およびイオン強度(pHを含む)、または局所環境を含む。そのような条件を測定し、この条件に影響を及ぼすセンサーおよびアクチュエーターを含むことは、より正確な定性的および/または定量的な診断装置を提供するために、局所環境パラメーターを制御可能に変化させることを可能にする。
【0008】
[0007]複数のサイトテスティングプラットフォームを提供するバイオセンサーは、米国特許出願公開第2011/0091870号で説明されており、そこでは、バイオセンサーの中の複数のサイトが、異なる反応条件を受け、プローブ分子に対する生体分子検体(たとえば、タンパク質)の結合を調整することが可能であった。また、たとえば、4つのサイトを有するバイオセンサーの中で検出されるシグナルも、いくつか、例えば4つの成分を有することが可能である。これらの4つの項は、たとえば、関心のバイオマーカーの濃度と、非特異的に一次抗体サイトに結合し、バイオマーカーが結合することを防止する、サンプル中の検体の濃度と、サンドイッチを形成し、擬似シグナルを作り出す、サンプル中の検体の濃度と、最後に、表面に物理吸着し、擬似シグナルを作り出す、サンプル中の検体の濃度と、に対応する。また、それぞれの項は、結合効率要因aijに比例し、結合効率要因aijは、分子親和性および他のアッセイ条件、たとえば、流速の関数である。それぞれのサイトにおける条件を別々に制御することによって、異なるサイトは、異なる効率要因を示すこととなる。それぞれのサイトにおけるシグナルの正確な測定は、複数の等式および複数の未知数を結果として生じさせることとなる。たとえば、以下の通りである。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、Cagは、ターゲットとされる生体分子検体濃度に対応しており、Cj1、Cj2、Cj3は、図2に示されているように、バックグラウンドシグナルにおいて異なる項を結果として生じさせることとなる、分子の全濃度に相当している。
【0011】
[0008]異なるサイトにおけるアッセイ条件の正確な制御は、結合効率要因の大きな変化を可能にし、それは、データのアレイを結果として生じさせ、それから、関心の生体分子検体の定量的なまたはより正確に定性的な決定が取得され得る。加えて、側方流動アッセイ装置の上で電気的なおよび電気化学的な検出を使用することは、現在のポイント・オブ・ケア診断を著しく改善することが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0009]本明細書では、テストサイトのマルチサイトアレイを有する側方流動アッセイ装置が提供され、装置は、少なくとも1つの電極を含み、それぞれの電極は、作動要素および/または検出要素を含むことが可能である。そのような側方流動アッセイ装置は、1つまたは複数のパラメーターの制御を提供することが可能であり、それは、サンプル内のその濃度を決定するために、サンプルの中の関心の生体分子検体のシグナル強度に影響を与え、関心の生体分子検体のシグナル強度を測定する。側方流動アッセイ装置におけるそのような統合された電極は、たとえば、pH、温度、およびイオン濃度などのような、局所環境パラメーターを制御することが可能であるが、たとえば、装置を横切って流れるときのサンプルの流量、流動形状、温度、またはイオン濃度を含む、そのようなパラメーターを測定することも可能である。また、この側方流動アッセイ装置は、サンプルの中のその濃度を決定するために、マルチサイトアレイの中のそれぞれのサイトにおける関心の生体分子検体からのシグナルを測定することが可能である。
【0013】
[0010]一実施形態では、生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、上記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、上記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)上記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、上記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、上記生体分子検体と上記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)少なくとも1つの電極と
を含み、
上記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、上記プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置が提供される。
【0014】
[0011]本明細書で説明されているラテラルアッセイ装置の形態のバイオセンサーは、たとえば、CMOS、電極アレイ、またはTFTベースのバイオセンサーと統合され、複数のテストサイトのアレイを有する側方流動アッセイ装置の中のテストサイト同士の間に結合効率の変化を発生させることが可能である。加えて、LFアッセイ装置の中の少なくとも1つの電極は、サンプルおよび/または関心の生体分子検体に関連する1つまたは複数のパラメーターを計算するための処理ユニットに接続されている。計算されるパラメーターは、結合された標識付きの生体分子検体複合体からのシグナルの強度に影響を与え、それによって、サンプルの中の検体の濃度の計算に影響を与えるものである。したがって、LFアッセイ装置における統合される電極は、テストサイトの局所環境におけるpH、イオン濃度、および/または温度を調整するだけでなく、たとえば、LFアッセイ装置の診断部分を横切るサンプルの流量および流動形状などのような、サンプルの中の関心の生体分子検体の濃度の正確な決定に影響を与える他のパラメーターを測定することも可能である。
【0015】
[0012]別の実施形態では、生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、上記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するための吸収材材料を含む固体支持体を有しており、流動方向に平行なレーンに分割されており、上記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)上記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、上記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、上記生体分子検体と上記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)作動要素としての少なくとも1つの電極と、
e)検出要素としての少なくとも1つの電極と
を含み、
上記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、上記プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置が提供される。
【0016】
[0013]さらなる別の実施形態では、生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法であって、上記方法は、
a)テストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置を提供するステップであって、上記生体分子検体と相互作用するための条件は、独立して変化させられ得、上記側方流動装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、テストサイトの上記マルチサイトアレイを含む診断部分と、毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、作動要素としての少なくとも1つの電極と、検出要素としての少なくとも1つの電極とを含む、ステップと、
b)上記ラテラルアッセイ装置の上記サンプル部分に生体サンプルを加えるステップであって、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、ステップと、
c)上記サンプルと上記プローブとの間の接触に続いて、それぞれのテストサイトにおけるそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
d)存在する場合には、テストサイトに位置付けされていないそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
e)ステップc)およびd)において取得された前記シグナルから前記生体分子検体の前記濃度を決定するステップと
を含み、
それぞれの作動要素の活性化は、それぞれのテストサイトにおいて、少なくとも1つの局所環境パラメーターを変化させる、生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法が提供される。
【0017】
[0014]サンプルの中の生体分子検体の濃度は、側方流動アッセイ装置の診断部分に結合される生体分子検体のシグナル強度を決定することによって、および、側方流動イムノアッセイ装置の診断部分を横切って流れるサンプルに関して決定されたパラメーターのうちの1つまたは複数を考慮することによって、計算される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0015]公差反応性の問題の説明図である。略図a)は、理想的なシナリオを示しており、そこでは、公差反応が起こっておらず、すべてのシグナルが特定の相互作用の結果である。略図b)は、関心の抗原(ダイヤモンド)以外の分子を示しており、それは、一次抗体または表面に結合することが可能であり、正しくないシグナルを生成させるか、または、抗原がサンドイッチを形成するのを防止するかのいずれかである。
図2】[0016]マルチサイト側方流動システム、および、検出されるシグナルの中の成分の説明図である。下部の2つの概略図は、サイトのうちの2つに対応している。
図3】[0017]側方流動装置の断面の説明図である。電極、作動要素、または検出要素は、バッキング、接着剤、メンブレンの一部であるか、もしくは、メンブレンの上方にあるか、および/または、これらの組合せとすることが可能である。
図4】[0018]チャネル同士の間の横方向に交差する混合を防止するために、一連の制御された流体チャネルを備えるパターン化された側方流動装置の説明図である。
図5】[0019]マルチサイト側方流動システムの例示目的の例を示す図であり、それは、(11)pH(たとえば、pH5)を変更するために緩衝塩がプリントされた領域、または、温度(たとえば、40度)を変更するための領域、または、イオン濃度(たとえば、250mM)を変更するために塩化ナトリウムがプリントされた領域と、(12)pH(たとえば、pH6)を変更するために緩衝塩がプリントされた領域、または、温度(たとえば、30度)を変更するための領域、または、イオン濃度(たとえば、500mM)を変更するために塩化ナトリウムがプリントされた領域と、(13)pH(たとえば、pH7)を変更するために緩衝塩がプリントされた領域、または、温度(たとえば、30度)を変更するための領域、または、イオン濃度(たとえば、750mM)を変更するために塩化ナトリウムがプリントされた領域と、(7)チャネル同士の間の横方向に交差する混合を防止するために流体を制限するようにパターン化された側方流動の上の領域(一例は、固体の疎水性の材料バリアを含むことが可能である)と、(15)テストラインおよび制御ラインと、(16)生理学的パラメーター(たとえば、温度、pH、イオン濃度、流動プロファイル、検体濃度)を決定するセンシング領域とから構成されている。ここで、nは、pH(たとえば、pH1〜12)を変更するために、緩衝塩の単一または複数の領域がプリントされたn番目の領域、または、温度(たとえば、0〜120度)に変更するための領域、または、イオン濃度(たとえば、50〜5000mM)を変更するために塩化ナトリウムがプリントされた領域、または、生理学的パラメーターを決定するために検出要素を備える領域、または、上述の領域の組合せを表している。
図6】[0020]実験プロセスフローを図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0021]電気的なセンサーは、局所環境パラメーターまたは条件を調整するために、および/または、サンプルの測定可能なパラメーターを決定するために、側方流動(LF:ラテラルフロー)アッセイ装置の中に統合され得、そのパラメーターは、そのようなサンプルの中の関心の生体分子検体の濃度を測定するための精度に影響を与える。異なる種類のプリントされた電気的なセンサーが、米国特許出願第13/658,614号にも説明されているような側方流動アッセイ装置(流速センサー、流動形状センサー、温度センサー)の中に統合され得、その出願は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。たとえばスクリーン印刷、グラビア印刷、またはインクジェット印刷など、ならびに、スプレーイング技法またはブラッシング技法などの、ほとんどすべてのプリンティングプロセスが、これらの導電性電極をプリントするために使用され得る。これらの電気的なセンサーのための材料は、たとえば銀、プラチナ、炭素、銅、または金のインクまたはペーストを含む。
【0020】
[0022]導電性材料の溶媒のいくつかは、LFアッセイ装置の診断部分の中に使用されるメンブレン(特にニトロセルロース)を攻撃し得るので、電極は、たとえば、バッキングを通るバッキングアクセスの上のニトロセルロースメンブレンの下方などのような、装置の異なる部分の上に適用され得る。たとえば、LFアッセイ装置の中にプリントされた電極作動要素または検出要素を統合するための特定の代替例が、図3のように示されている。これらは、メンブレンの下方のバッキングまたは支持材料の上に電極をプリントすることを含み、電極は、バッキングまたは固体支持体材料を通してアクセスされ得る。代替的に、電極は、診断部分(診断メンブレン)の上にプリントされるか、または、LFアッセイ装置のそのような診断部分のギャップの中にプリントされる。別の代替例では、電極は、プリントされた電極ではなく、LFアッセイ装置の様々な部分のうちの1つまたは複数に適用されるか、または、それを通して適用された非プリント電極を含む。電極のプリンティングは、固体支持体のサンプル部分、診断部分、および/または吸収材部分のいずれかの上に行うことが可能である。好ましくは、電極は、検体との相互作用のためにバインダー材料を含有する装置の診断部分の上にプリントされる。代替的に、適用される電極は、非プリント電極である。
【0021】
[0023]そのように、生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、上記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、上記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)上記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、上記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、上記生体分子検体と上記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)少なくとも1つの電極と
を含み、
上記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、上記プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置が提供される。サンプルの中の検体(および、コンジュゲート)を、診断部分のテストラインまたはテストサイトの上に位置付けされているバインダーに結合させることは、シグナルが、その場所で発生させられることを結果として生じさせることとなる。発生させられるシグナルの強度は、装置のサンプル部分に適用されたサンプルの中の関心の生体分子検体の濃度の指示値である。テストラインまたはテストサイトにおいて、サンプルの中の関心の生体分子検体とバインダーとの間の相互作用に影響を与える局所環境パラメーターが、制御された様式で変化される、複数のテストサイトから、そのようなシグナルデータを収集することは、サンプルの中の生体分子検体の濃度を計算するために、より正確な測定を提供する。
【0022】
[0024]そのような装置では、サンプル部分、(存在する場合には)コンジュゲート部分、診断部分、および吸収材部分は、単一の固体支持体またはバッキング材料の上に設置され得る。この固体支持体またはバッキング材料は、可撓性とすることが可能であるが、不活性であり、吸収材材料から作製されている様々な部分を通るサンプルの毛細管流動を維持するのに十分な支持を提供する。
【0023】
[0025]LFアッセイ装置の診断部分は、メンブレンを使用して準備され得る。そのような診断メンブレンは、たとえば、ニトロセルロースメンブレン、ポリフッ化ビニリデンメンブレン、随意的に電荷修飾されたナイロンメンブレン、およびポリエーテルスルホンメンブレンから選択され得る。診断メンブレンは、検体のための固定化されたバインダーをさらに含む。そのようなバインダーは、生体分子検体が相互作用する任意の分子または生体分子とすることが可能であり、診断メンブレンの上に固定化されたバインダー−検体/リガンド複合体を結果として生じさせるようになっている。そのようなバインダーの例は、抗体、抗原、タンパク質、酵素またはその一部分、基質またはその一部分、ペプチド、DNA、またはRNAとすることが可能である。
【0024】
[0026]プローブ/生体分子検体複合体(リガンド複合体)が形成または洗浄されるときに存在するpH、温度、および塩濃度は、リガンド複合体の解離定数(K)にかなりの影響を及ぼす。特定の相互作用に関する解離定数の変化は、検体の結合効率の変化を結果として生じさせ、テストラインまたはテストサイトにおいて、リガンド複合体を形成させ、そこから、シグナルが取得され得る。一連のpH、温度、および/または塩修正要素を統合することによって、複数の結合条件は、単一の側方流動装置の上で調査され、測定品質を改善することが可能である。
【0025】
[0027]本明細書で提供されているようなLFアッセイ装置におけるテストサイトのマルチサイトアレイのpHまたはイオン(塩)濃度を変化させるために、米国特許出願第13/543,300号に説明されているような方法が使用され得、それは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれており、その中には、関心の生体分子検体とバイオセンサーの中のLFアッセイ装置の診断部分との間の結合に影響を与えるそのような局所環境パラメーターを変化させることが説明されている。要するに、pHまたはイオン濃度を調整するそのような方法は、LFアッセイ装置の中に作動要素としての電極を提供するステップと、電気化学的な活性剤、酵素、酵素基質、緩衝抑制剤、または、それらの組合せを、サンプル溶液に、または、別々の貯蔵部から加えるステップであって、別々の貯蔵部は、LFアッセイ装置の中のメンブレンと接触しており、それは、サンプルがLFアッセイ装置のメンブレンを横切る流動であるときに係合される、ステップと、電気化学的な活性剤、酵素、酵素基質、または、それらの組合せをテストサイトにおいて反応させ、H+イオンまたはOH−イオンを作り出すステップ、または、緩衝剤とともにH+イオンまたはOH−イオンの拡散を増加させるステップ、または、H+イオンもしくはOH−イオンと緩衝抑制剤を伴う緩衝塩との間の相互作用を抑制するステップとを含む。
【0026】
[0028]したがって、イオン濃度は、電極および/または酵素を使用して、また、プリントされた塩、または、塩が埋め込まれたビーズを使用して、LFアッセイ装置の中で変化させられ得る。具体的には、電極は、ファラデー条件または非ファラデー条件の下で活性化され、側方流動装置の特定の領域において、H+イオンまたはOH−イオンを発生させることが可能である。たとえば、酵素は、表面の上にプリントされ、米国特許出願第13/543,300号に説明されているような酵素的酸化反応の副産物としてH+を作り出すことが可能である。代替的に、イオン性塩、または、イオン性塩とともに埋め込まれているビーズは、LFアッセイ装置の中のニトロセルロースメンブレンの上にプリントされ、可変のイオン濃度のゾーンを生成させることが可能である。図5は、イオン濃度([H]を含む)がチャネル毎のベースで変更される3つのゾーンを備える可能性のある装置を図示している。これらのゾーンの位置が可変であるということを表すために、この領域は、「n」として示されている。作動要素(11)、(12)、および(13)は、ゾーンが位置付けされ得る1つの例を図示しているが、実際には、それらは、テストラインまたは制御ラインの前、後、または、上のいずれにも位置決めされ得る。そのようなゾーンの数および分布は、図に示されているものに限定されず、単一のチャネルが、複数のゾーンを包含することも可能である。
【0027】
[0029]上述の方法では、pHまたはイオン濃度勾配が、マルチサイトアレイLFアッセイ装置の中の様々なテストサイトにおいて取得され得る。LFアッセイ装置のマルチサイトアレイのサブセットにわたる、プローブの近辺の局所的なpHおよび/またはイオン濃度の変化は、プローブと生体サンプルからのテストされることとなる生体分子検体との結合効率を調整することを可能にする。関心の生体分子検体は、プローブと結合されると、たとえば、側方流動イムノアッセイ装置の中にあるような標識二次抗体などのような、検出剤を使用して検出され得る。マルチサイトアレイのサブセットの中の結合効率の調整は、そのような関心の検体の正確な決定のための方法を提供する。
【0028】
[0030]本明細書で説明されているLFアッセイ装置の中にあるようなテストサイトのマルチサイトアレイは、好ましくは、テストサイトの複数の異なるサブアレイ/サブセットを含む。それぞれのテストサイトは、(生体分子)プローブを使用した(生体分子)検体の検出を通して、生体サンプルからの(生体分子)検体の分析を行うためのサイトを表している。サブアレイ/サブセットのそれぞれの中のそれぞれのテストサイトの局所的な環境/分析条件は、変化したシグナルの収集を取得するために変化させられ得、それは、複数の等式および複数の未知数を結果として生じさせることとなり、複数の等式および複数の未知数から、(生体分子)検体の濃度が、(生体分子)検体の正確な測定を取得するために決定され得る。
【0029】
[0031]取得された変化したシグナルの中の複数の未知数は、結合効率要因aij、および、テストサイトにおいて検出される生体サンプル結合の中の様々な分子の濃度に比例する項をそれぞれ含む。複数の未知数を伴う複数の等式は、たとえば、以下のように表すことが可能である。
【0030】
【数2】
【0031】
[0032]ここで、Cagは、ターゲットとされる生体分子検体濃度に対応しており、Cj1、Cj2、Cj3は、バックグラウンドシグナルの中に異なる項を結果として生じさせる分子の全濃度に相当し、複数の等式の収集から、ターゲットとされる生体分子検体の濃度が決定され得る。
【0032】
[0033]サブアレイ/サブセットの数、および、それぞれのサブアレイ/サブセットの中のテストサイトの数は、生体分子検体のそのような正確な測定を取得するために、必要に応じて変化させられ得る。また、これらの分析条件のいくつかは、たとえば温度などのようなパラメーターを含む。たとえば、生体分子プローブおよび生体サンプルの中の関心の検体が相互作用するテストサイトにおける温度は、テストサイトにおける電磁加熱を使用して変化させられ得る。
【0033】
[0034]LFアッセイ装置の中での使用のためのサンプルは、血液、リンパ液、血清、唾液、生体細胞、および尿などのような、人間由来のものとすることが可能であり、または、(それに限定されないが)表流水、食品、および生体サンプルなどのような、人間以外の流体サンプルとすることが可能である。
【0034】
[0035]サンプルの中の濃度がLFアッセイ装置によって決定され得る生体分子検体は、たとえば生体分子、細胞、毒性バイオマーカー、細菌バイオマーカー、ホルモン、ウィルス、および、それらの断片、および、小分子または抗原;具体的には:ビタミン(A、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、D、E、K)、サイトカイン(IFNγ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12IL−15、IL−21、IL−22IL−23、TGFβ、TNFβ、MCP−1)、自己抗体、IgG、IgA、IgE、およびIgM、ならびに、これらの分子のサブクラス、メタロプロティナーゼ、ケモカイン、細菌毒素、重金属、および化学療法薬剤を含む。
【0035】
[0036]電気的な検出のために、純粋に電気的な検出および電気化学的な検出の両方が、統合され得る。より具体的には、容量検出方法、抵抗検出方法、インピーダンス検出方法、ファラデー検出方法、非ファラデー検出方法、およびレドックス検出方法が使用され得る。そのように、LFアッセイ装置の中の少なくとも1つの電極は、検出要素を含む。LFアッセイ装置のテストサイトのマルチサイトアレイの中には、電極または電極の対の形態のそのような検出要素が、それぞれのテストサイトにおいて位置付けされ得る。検出および増幅方法は、光学的方法、酵素的方法、熱量測定の方法、磁気的方法、吸収方法、蛍光方法、および化学発光方法によって、追加的に捕捉され得る。
【0036】
[0037]米国特許出願第13/658,614号(それは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている)に説明されているように、側方流動アッセイ装置の上にパターン化された一連の電極を統合することによって、サンプルの流速および流動プロファイルも決定され得る。そこに説明されているように、毛細管流動の方向に、テストサイトの上流に位置決めされている少なくとも1つの電極対、および、毛細管流動の方向に、テストサイトに、または、テストサイトの下流に位置決めされている少なくとも1つの電極対が、シグナルを提供し、そのシグナルから、テストサイトにおける流速(流量)が決定され得る。そのような電極対のアレイが、毛細管流動に対して垂直に、LFアッセイ装置を横切って位置決めされるとき、取得されるシグナルは、毛細管流動の流動形状の測定を提供することが可能である。
【0037】
[0038]温度測定は、温度の関数として抵抗率を変化させる導電性材料を使用して統合され得る。この読み取り値は、測定値が最適な時間および温度で獲得されていることを確実にするために、データ点として使用され得る。同時に、温度値は、異なる条件下で獲得される他のサンプルとの比較のために、測定値を正規化するために使用され得る。
【0038】
[0039]側方流動システムの中の温度制御は、加熱ブロックまたは赤外放射源を介して開始させることが可能であり、加熱ブロックと赤外放射源の両方は、容易に多重化される。図5は、3つのゾーンを備える可能性のある装置を図示しており、3つのゾーンにおいて、温度は、独立して調節可能であり、テストラインおよび制御ラインの近くの上を流れる流体に影響を与える。温度ゾーンの位置が可変であるということを意味するために、この領域は、「n」として示されている。作動要素(11)、(12)、および(13)のための位置は、ゾーンが位置付けされ得る1つの例を図示しているが、実際には、それらは、テストラインまたは制御ラインの前、後、または、上のいずれにも位置決めされ得る。また、温度ゾーンの数および分布は、図に示されているものに限定されず、単一のチャネルが、複数のゾーンを包含することも可能である。
【0039】
[0040]別の実施形態では、生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、前記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するための吸収材材料を含む固体支持体を有しており、流動方向に平行なレーンに分割されており、前記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)上記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、上記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、上記生体分子検体と上記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)作動要素としての少なくとも1つの電極と、
e)検出要素としての少なくとも1つの電極と
を含み、
上記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、上記プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置が提供される。
【0040】
[0041]LFアッセイ装置は、サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定する方法で使用され得る。そのようなサンプルは、血液、リンパ液、血清、唾液、生体細胞、および尿などのような、人間由来のものとすることが可能であり、または、(それに限定されないが)表流水、食品、および生体サンプルなどのような、人間以外の流体サンプルとすることが可能である。LFアッセイ装置の中のテスティングサイトのマルチサイトアレイの存在は、異なる環境条件において、複数のシグナルの発生を可能にし、それから、関心の生体分子検体の濃度が、より正確に計算され得る。
【0041】
[0042]そのように、さらなる別の実施形態では、生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法であって、上記方法は、
a)テストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置を提供するステップであって、上記生体分子検体と相互作用するための条件は、独立して変化させられ得、上記側方流動装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、テストサイトの上記マルチサイトアレイを含む診断部分と、毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、作動要素としての少なくとも1つの電極と、検出要素としての少なくとも1つの電極とを含む、ステップと、
b)上記ラテラルアッセイ装置の上記サンプル部分に生体サンプルを加えるステップであって、それによって、上記サンプルが、上記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、プローブを横切って流れ、上記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、ステップと、
c)上記サンプルと上記プローブとの間の接触に続いて、それぞれのテストサイトにおけるそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
d)存在する場合には、テストサイトに位置付けされていないそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
e)ステップc)およびd)において取得された前記シグナルから前記生体分子検体の前記濃度を決定するステップと
を含み、
それぞれの作動要素の活性化は、それぞれのテストサイトにおいて、少なくとも1つの局所環境パラメーターを変化させる、生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法が提供される。
【0042】
[0043]サンプルの中の生体分子検体の濃度は、側方流動アッセイ装置の診断部分に結合される生体分子検体のシグナル強度を決定することによって、および、側方流動イムノアッセイ装置の診断部分を横切って流れるサンプルに関して決定されたパラメーターのうちの1つまたは複数を考慮することによって、計算される。
【0043】
[0044]以下の図は、本明細書で説明されているようなLFアッセイ装置のいくつかの態様を提供する。しかし、本明細書で説明されている本発明は、これらの例示目的の図に限定されない。図1では、サンプルの中の生体分子検体の濃度を正確に決定するときに頻繁に問題となる公差反応性の例が提供されている。この例では、プローブ(1)として使用される一次抗体が、固体支持体またはメンブレン(2)の上に固定化されている。生体分子検体または抗原(3)は、一次抗体(1)によって認識され、そのような固定化されたプローブまたは一次抗体(1)の形態のバインダーと相互作用/結合することとなる。この例では、標識二次抗体またはコンジュゲート(4)が、図1aにあるように、生体分子検体または抗原(2)を認識し、それと相互作用し、テストサイトにおいて測定可能なシグナルを提供する。図1bでは、公差反応性が、固定化されたプローブまたは一次抗体(1)と、生体サンプルの中の他の検体(31および32)との間に生じる。これらの他の検体(31および32)は、プローブまたは一次抗体(1)に結合し、関心の生体分子検体もしくは抗原(3)との相互作用を防止することが可能であり、または、それらは、標識二次抗体(4)と相互作用することが可能であり、それによって、生体サンプルの中の関心の生体分子検体(3)に関連しない測定可能なシグナルが取得されることを引き起こす。したがって、取得されるシグナルは、テストサイトにおける生体サンプルの中の生体分子検体(3)の量の正確な反映ではなく、したがって、生体サンプルの中の生体分子検体(3)の濃度の不正確な測定を結果として生じる。
【0044】
[0045]本明細書で説明されている側方流動アッセイ装置は、生体サンプルの中の生体分子検体(3)の濃度をより正確に決定するための手段を提供する。LFアッセイ装置は、図2に示されているように、固体支持体(5)を含み、固体支持体(5)は、サンプル部分、診断部分、および吸収材部分を支持している。このLFアッセイ装置は、テストサイト(8)のマルチサイトアレイを含むことが可能であり、テストサイト(8)は、1つまたは複数のスペーサー(7)によって分離され得る。それぞれのテストサイト(81、82、および83)は、局所環境パラメーターの相違を有することが可能であり、局所環境パラメーターは、生体分子検体(3)、他の検体(31および32)、ならびに、プローブまたは一次抗体(1)、および、標識二次抗体(4)の間の相互作用に影響を与える。結果として、それぞれのテスティングサイトにおける結合効率は、それぞれの検体によって変化し、異なるシグナルを生じさせる。関心の生体分子検体(3)の濃度の計算は、局所環境パラメーターの変化に起因して、異なる検体についての結合効率の変化を考慮して取得される様々なシグナルを使用して、より正確に決定され得る。
【0045】
[0046]図3にあるように、少なくとも1つの電極が、様々な方式で、LFアッセイ装置の上に統合され得る。固体支持体(5)またはバッキングの上に、接着剤層(9)が塗布され得、接着剤層(9)の上に、LFアッセイ装置のたとえば診断部分のメンブレン(2)が適用され得る。診断部分のメンブレン(2)は、スペーサー(7)を使用することによって、別々のレーンに分割され得、スペーサー(7)は、好ましくは疎水性である。作動要素または検出要素の形態の電極(10)は、メンブレン(2)の一部として存在するか、メンブレン(2)の中のギャップの中に位置決めされるか、または、メンブレンの上方もしくはメンブレンの下方に位置決めされるか、および/または、それらの組合せとすることが可能である。また、電極は、LFアッセイ装置のバッキングまたは固体支持体部分(5)の上に存在することが可能である。別々のレーンの中のLFアッセイ装置のそのような分離が、図4に示されており、図4では、レーンが、スペーサー(7)によって分割されており、スペーサー(7)は、好ましくは疎水性である。レーンは、LFアッセイ装置のサンプル部分(50)、診断部分(51)、および吸収材部分(52)の全長にわたって、毛細管流動の方向に走ることが可能であり、または、LFアッセイ装置のそのような部分を部分的にだけ解離させることが可能である。
【0046】
[0047]少なくとも診断部分(51)および吸収材部分(52)がスペーサー(7)を用いて別々のレーンに分割されているLFアッセイ装置が、図5に示されている。様々なレーンの様々な位置において、作動要素(11〜13)が、そのような別々のレーンの中に存在することが可能である。作動要素(11〜13)は、電極の形態とすることが可能であり、作動要素(11〜13)は、テスティングサイトにおいてサンプルの中の検体とバインダーとの相互作用に影響を与える少なくとも1つの局所環境パラメーターを制御する。検出要素(16)は、電極または電極対の形態とすることが可能であり、検出要素(16)から、測定可能なシグナルを得ることが可能である。これらの検出要素(16)は、それぞれのレーンの中のどこか、または、それぞれのレーンの中のテスティングサイト(15)のどこかに設置され得、テスティングサイト(15)は、テスティングサイトのマルチサイトアレイを含有することが可能である。それぞれのレーンは、そのようなテスティングサイト(15)のうちの1つまたは複数を含有することが可能である。LFアッセイ装置の上の様々なテスティングサイトから取得される複数の測定可能なシグナルから、関心の生体分子検体の濃度が計算され得る。
【0047】
[0048]本明細書で説明されている本発明は、電極がリアルタイムでデータを収集することができ、それは、実験の期間を低減させることができるという点において、従来の側方流動アッセイ装置を超える特定の利点を有している。これは、過渡的なシグナル変化を明らかにする利点を有しており、過渡的なシグナル変化は、集められる追加的なデータからの結果の精度を改善するために使用され得る。加えて、電子的なセンシングは、十分に発達した拡張性のある標準化された産業プロセスに基づいて構築される。それは、光学的な検出様式に関連付けされる作業および材料の複雑性を著しく低減させる。しかし、最も重要な利点は、本明細書で説明されているLF装置および方法が、関心の生体分子検体の濃度の決定の際に、非特異的なシグナルおよび他の環境パラメーターの効果の低減を通して、サンプルの中の生体分子検体の濃度をより正確に決定できるということである。
〔態様1〕
生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、前記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、前記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)前記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、前記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)少なくとも1つの電極と
を含み、
前記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、前記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置。
〔態様2〕
前記毛細管流動の方向に前記診断部分の上流に、粒子材料を含むコンジュゲート部分をさらに含む、態様1に記載の装置。
〔態様3〕
前記生体分子検体のための前記プローブが、前記生体分子検体と相互作用するバインダーを含む、態様1または2に記載の装置。
〔態様4〕
少なくとも1つの電極が、局所環境パラメーターを制御するための作動要素から構成される、態様1から3のいずれか一項に記載の装置。
〔態様5〕
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択されるパラメーターである、態様4に記載の装置。
〔態様6〕
少なくとも1つの電極が、検出要素から構成される、態様1から5のいずれか一項に記載の装置。
〔態様7〕
前記検出要素が、前記サンプルおよび/または生体分子検体のうちの少なくとも1つの測定可能なパラメーターを決定する、態様6に記載の装置。
〔態様8〕
前記測定可能なパラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、イオン濃度、pH、色、発光性、蛍光性、導電率、インピーダンス、および磁気モーメントから選択されるパラメーターである、態様7に記載の装置。
〔態様9〕
前記診断部分および/またはサンプル部分は、流動方向に平行に分割され、1つまたは複数のスペーサ要素によって互いから分離された複数のレーンになっている、態様1から8のいずれか一項に記載の装置。
〔態様10〕
前記スペーサ要素が、疎水性のスペーサ要素である、態様9に記載の装置。
〔態様11〕
それぞれのレーンの中で、前記生体分子検体とそれぞれのプローブとの間の相互作用に関する局所環境条件が変化させられる、態様9または10に記載の装置。
〔態様12〕
それぞれのレーンが、局所環境パラメーターを制御する1つまたは複数の作動要素を含む、態様11に記載の装置。
〔態様13〕
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択されるパラメーターである、態様12に記載の装置。
〔態様14〕
それぞれのレーンが、1つまたは複数のテスティングサイトを含み、前記1つまたは複数のテスティングサイトに関して、前記生体分子検体とプローブとの間の相互作用に関する前記局所環境条件が、独立して変化させられ得る、態様12または13に記載の装置。
〔態様15〕
前記1つまたは複数のテスティングサイトが、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する前記局所環境条件を修正するために、局所環境パラメーターを制御する作動要素をそれぞれ含む、態様14に記載の装置。
〔態様16〕
前記局所環境パラメーターが、pH、温度、およびイオン濃度から選択されるパラメーターである、態様15に記載の装置。
〔態様17〕
それぞれのレーンが、前記サンプルおよび/または生体分子検体の測定可能なパラメーターを決定するための1つまたは複数の検出要素を含む、態様9〜16のいずれか一項に記載の装置。
〔態様18〕
前記測定可能なパラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、イオン濃度、pH、色、発光性、蛍光性、導電率、インピーダンス、および磁気モーメントから選択されるパラメーターである、態様17に記載の装置。
〔態様19〕
前記診断部分が、ニトロセルロースメンブレン、ポリフッ化ビニリデンメンブレン、随意的に電荷修飾されたナイロンメンブレン、および、ポリエーテルスルホンメンブレンから選択されるメンブレンを含む、態様1から18のいずれか一項に記載の装置。
〔態様20〕
少なくとも1つの電極が、前記サンプル部分、診断部分、および/または吸収材部分の上に統合された少なくとも1つの電極対を含む電気的なセンサーである、態様1から19のいずれか一項に記載の装置。
〔態様21〕
前記電気的なセンサーが、2つの電極対を含み、前記側方流動イムノアッセイ装置の前記診断部分を横切る前記サンプルの流量を決定する、態様20に記載の装置。
〔態様22〕
前記電気的なセンサーが、前記サンプルの前記流路を横切って隣り合わせで配置されている一連の複数の電極対を含み、前記側方流動装置の前記診断部分を横切る前記サンプルの流動形状を決定する、態様20または21に記載の装置。
〔態様23〕
少なくとも1つの電極が、前記側方流動装置の前記診断部分を横切って流れる前記サンプルの温度を決定するための画定された範囲にある導電性材料抵抗の画定された構造体を含む電気的なセンサーである、態様1から22のいずれか一項に記載の装置。
〔態様24〕
前記少なくとも1つの電極が、前記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分を支持する支持材料の上にプリントもしくは適用されており、または、前記サンプル部分、診断部分、および/もしくは吸収材部分の上に直接的にプリントもしくは適用されており、または、前記診断部分の上のギャップの中にプリントもしくは適用されている、態様1から22のいずれか一項に記載の装置。
〔態様25〕
前記少なくとも1つの電極が、前記サンプルおよび/または生体分子検体の1つまたは複数のパラメーターを計算するための処理ユニットに接続されている、態様1から24のいずれか一項に記載の装置。
〔態様26〕
前記サンプルおよび/または生体分子検体の前記パラメーターが、サンプル流量、サンプル流動形状、温度、および、前記生体分子検体の濃度から選択される、態様1から25のいずれか一項に記載の装置。
〔態様27〕
少なくとも1つの電極が、作動要素を含み、少なくとも1つの電極が、検出要素を含む、態様1から26のいずれか一項に記載の装置。
〔態様28〕
生体分子検体を測定するためのテストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置であって、前記側方流動アッセイ装置は、毛細管流動を提供するための吸収材材料を含む固体支持体を有しており、流動方向に平行なレーンに分割されており、前記側方流動アッセイ装置は、
a)サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、
b)前記生体分子検体のためのプローブをそれぞれ含むテストサイトのマルチサイトアレイを含む診断部分であって、前記マルチサイトアレイのそれぞれのテストサイトにおいて、前記生体分子検体と前記プローブとの間の相互作用に関する条件が、独立して変化させられ得る、診断部分と、
c)毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、
d)作動要素としての少なくとも1つの電極と、
e)検出要素としての少なくとも1つの電極と
を含み、
前記サンプル部分、診断部分、および吸収材部分は、毛細管流動で連通しており、サンプル部分a)から吸収材部分c)に向かう毛細管流動を結果として生じさせ、それによって、前記サンプルが、前記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、前記プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、側方流動アッセイ装置。
〔態様29〕
生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための方法であって、前記方法は、
a)テストサイトのマルチサイトアレイを含む側方流動アッセイ装置を提供するステップであって、前記生体分子検体と相互作用するための条件は、独立して変化させられ得、前記側方流動装置は、毛細管流動を提供するために吸収材材料を含む固体支持体を有しており、サンプルを受け入れるためのサンプル部分と、テストサイトの前記マルチサイトアレイを含む診断部分と、毛細管流動を提供するための吸収材材料の吸収材部分と、作動要素としての少なくとも1つの電極と、検出要素としての少なくとも1つの電極とを含む、ステップと、
b)前記ラテラルアッセイ装置の前記サンプル部分に生体サンプルを適用するステップであって、それによって、前記サンプルが、前記診断部分の中のそれぞれのテストサイトにおいて、プローブを横切って流れ、前記サンプルとそのようなプローブとの間の接触を提供する、ステップと、
c)前記サンプルと前記プローブとの間の接触に続いて、それぞれのテストサイトにおけるそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
d)存在する場合には、テストサイトに位置付けされていないそれぞれの検出要素からシグナルを取得するステップと、
e)ステップc)およびd)において取得された前記シグナルから前記生体分子検体の前記濃度を決定するステップと
を含み、それぞれの作動要素の活性化は、それぞれのテストサイトにおいて、少なくとも1つの局所環境パラメーターを変化させる、生体サンプルの中の生体分子検体の濃度を決定するための、方法。
〔態様30〕
作動要素としての前記少なくとも1つの電極、および、検出要素としての前記少なくとも1つの電極が、ディスプレイを含む処理ユニットに接続されている、態様29に記載の方法。
〔態様31〕
前記局所環境パラメーターは、前記診断部分を横切る前記サンプルの流量、前記診断部分を横切る前記サンプルの流動形状、前記診断部分における前記サンプルの温度、前記診断部分における前記サンプルのpH、および/または、前記診断部分における前記サンプルのイオン濃度である、態様30に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6