(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明によるロール仕上げ機の一実施の形態を示す図である。
図1はロール仕上げ機1の概略構成を示す模式図である。ロール仕上げ機1は、チェストロール仕上げ部10と、その後段に設けられたカレンダロール仕上げ部20と、チェストロール仕上げ部10に洗濯物(以下では、被洗物と呼ぶことにする)を投入するための投入部30を備えている。
【0010】
投入部30には、ローラ300に掛け回された投入ベルト301が設けられている。ローラ300は不図示のモータにより回転駆動され、投入ベルト301が矢印方向に走行駆動される。この投入ベルト301上に被洗物2を載置すると、その被洗物2は投入ベルト301により図示右方向に送られ、チェストロール仕上げ部10に投入される。
【0011】
チェストロール仕上げ部10は、チェストロール100、チェスト101およびスクレイパー102を備えている。さらに、ロール仕上げ機1は、吸引ボックス103a、排気装置104、ダクト104aおよび受け渡しベルト106を有する吸引剥がし装置を備えている。チェスト101は加熱装置とも呼ばれ、半円筒状の金属製凹面を有しており、内部に加熱用のオイルや蒸気を通す空間が設けられている。
【0012】
図1に示すチェスト101はフレキシブルチェストと呼ばれるもので、板状の凹曲面はチェストロール100の押圧によって凹曲面がチェストロール100の表面形状に倣うように変形する。変形した凹曲面は、円筒状のチェストロール100のほぼ下半分と同様の形状となり、チェスト101の入口側端部101aおよび出口側端部101bは、チェストロール100の軸芯を通る水平面とほぼ同一の高さとなる。なお、本実施の形態では、チェスト101がフレキシブルチェストの場合を例に説明しているが、チェスト101はフレキシブルチェストに限定されない。
【0013】
チェストロール100は不図示のモータにより矢印方向に回転駆動される。なお、チェストロール100は不図示のエアシリンダ等により上下方向に移動することができ、装置使用時にはチェスト101に押圧され、装置停止時には上方に移動される。
【0014】
脱水を行った後の被洗物2は、投入ベルト301により搬送されてチェストロール100とチェスト101の間に投入される。被洗物2は、チェストロール100の回転に伴い、チェストロール100とチェスト101との間に挟まれた状態でチェスト101の入口側端部101aから出口側端部101bへと移動する。このように、被洗物2がチェストロール100により高温のチェスト101に圧接されつつ摺動することで、乾燥および皺延ばし(アイロンがけ)が行われる。
【0015】
一般的に、チェストロール100の表面にはフェルト層100aが設けられており、チェストロール100の回転によりフェルト層100aがチェスト101の凹面に摺接する。そのため、チェスト101に対するチェストロール100の滑りが低下しないように、定期的に被洗物2の代わりにワックス布をチェストロール仕上げ部10に投入するようにしている。
【0016】
チェストロール仕上げ部10の入口側には、スクレイパー102と、そのスクレイパー102を移動するためのスクレイパー駆動部105を備えている。また、チェストロール仕上げ部10の出口側には、被洗物2をチェストロール100から引き剥がすための吸引ボックス103aが設けられている。上述したように、吸引ボックス103aは空気を吸引するための開口が多数形成されており、吸引ボックス103a内の空気は排気装置104により排気される。チェストロール仕上げ部10の筐体10aの上部に設けられた排気装置104は、ダクト104aによって吸引ボックス103aに接続されている。
【0017】
吸引ボックス103aには受け渡しベルト106が掛け回されている。後述するように、受け渡しベルト106には全面に亘って複数の貫通孔が形成されており、吸引ボックス103aの吸引面上を走行する。受け渡しベルト106は、不図示のモータにより回転されるローラ107によって矢印方向に走行駆動される。受け渡しベルト106はカレンダロール仕上げ部20の内部まで延在し、チェストロール100から引き剥がされた被洗物2を後段のカレンダロール仕上げ部20に搬送する搬送ベルトとしても機能している。
【0018】
カレンダロール仕上げ部20の入口側には、受け渡しベルト106に接するように押さえベルト201が設けられている。受け渡しベルト106に載置された被洗物2は、受け渡しベルト106と押さえベルト201とで挟持された状態で第1カレンダロール202の入口方向に送られる。第1カレンダロール202には、その周囲に巻回されるように搬送ベルト204が設けられている。第1カレンダロール202は不図示のモータにより矢印方向に回転駆動される。第1カレンダロール202が回転すると、第1カレンダロール202との摩擦力により搬送ベルト204が矢印方向に走行駆動される。
【0019】
受け渡しベルト106によって第1カレンダロール202に投入された被洗物2は、第1カレンダロール202と搬送ベルト204とに挟持されながら第1カレンダロール202の出口側に移送される。第1カレンダロール202の出口側の搬送ベルト204は、第2カレンダロール203の入口側まで延びている。第1カレンダロール202から排出された被洗物2は、搬送ベルト204により第2カレンダロール203の入口まで搬送され、第2カレンダロール203に投入される。
【0020】
第2カレンダロール203には、その周囲に巻回されるように搬送ベルト205が設けられている。第2カレンダロール203は不図示のモータにより矢印方向に回転駆動される。第2カレンダロール203が回転すると、第2カレンダロール203との摩擦力により搬送ベルト205が矢印方向に走行駆動される。搬送ベルト204により第2カレンダロール203に投入された被洗物2は、第2カレンダロール203と搬送ベルト205とに挟持されながら第2カレンダロール203の出口側に移送される。第2カレンダロール203の出口側の搬送ベルト205は、カレンダロール仕上げ部20の排出口206まで延びている。第2カレンダロール203から排出された被洗物2は、搬送ベルト205により排出口206まで搬送される。
【0021】
第1および第2カレンダロール202,203は加熱シリンダとも呼ばれ、例えば、ロール内部に加熱用蒸気が供給されることで加熱されている。カレンダロール仕上げ部20に投入された被洗物2は、第1および第2カレンダロール202,203と搬送ベルト204,205とに挟まれるように第1および第2カレンダロール202,203を通過することにより、仕上げ乾燥が行われる。
【0022】
図2は、チェストロール仕上げ部10の吸引ボックス103aの部分を拡大して示した断面図である。また、
図3は、吸引ボックス103aの一部を示す斜視図である。
図2に示すように、吸引ボックス103aは断面形状が略長方形のボックスを構成しており、吸引ボックス103aの紙面奥行き方向の長さはチェストロール100の軸方向長さと略同一となっている。
【0023】
図2に示すように、吸引ボックス103aの側面にはダクト104aが接続され、排気装置104はダクト104aを介して吸引ボックス103a内の空気を排気する。チェストロール100に対向する部分は、複数の開口111が形成された吸引面110が設けられている。吸引面110は、ほぼ鉛直方向に延在する平面(以下では鉛直面と呼ぶ)110aと、鉛直面110aの上端に接続している凸状の湾曲面110bとから成る。なお、
図3では鉛直面110aと湾曲面110bとの接続部分を破線1110で示しているが、実際には一枚の板材によって鉛直面110aと湾曲面110bとが連続的に形成されている。
【0024】
図2に示すように、チェストロール仕上げ部10から排出された被洗物2を後段のカレンダロール仕上げ部20まで搬送する受け渡しベルト106は、吸引面110上を滑るように走行する。
図3では、受け渡しベルト106を二点鎖線で示した。受け渡しベルト106には、複数の貫通孔106aが全面に亘って形成されている。受け渡しベルト106が吸引面110上を走行し、受け渡しベルト106の貫通孔106aと吸引面110の開口111とが一致すると、矢印Aのように外部の空気が吸引ボックス103a内に吸引される。
【0025】
上述したようにチェストロール100の外周面にはフェルト層100aが形成されており、フェルト層100aがチェスト101の凹曲面に摺接している。なお、
図2では、分かりやすいようにチェストロール100とチェスト101との間に隙間を設けて図示している。チェストロール100とチェスト101との間に挟まれた被洗物2は、チェストロール100が反時計回りに回転すると、チェストロール100の回転に追従するようにチェスト101の出口側端部101bに移動する。
【0026】
チェストロール100と共に回転移動する被洗物2は、その回転移動の間は常にチェストロール100のフェルト層100aに押圧されている。そのため、被洗物2はチェスト101の出口側端部101bから出た後も、二点鎖線で示すようにチェストロール100のフェルト層100aに付着したまま回転移動しようとするが、本実施の形態では、吸引剥がし装置が被洗物2をチェストロール100から引き剥がす。
【0027】
上述したように、受け渡しベルト106は吸引ボックス103aの吸引面110上を滑るように走行しているので、貫通孔106aが吸引面110の開口111と重なった時に空気が吸引ボックス103a内に吸引される。このとき、空気と共に被洗物2も吸引面方向Aに吸引されることになる。その結果、
図2に示すように、チェストロール100のフェルト層100aに付着していた被洗物2は吸引力により剥ぎ取られ、実線で示すように吸引面110上を走行する受け渡しベルト106に吸い付けられる。被洗物2は、受け渡しベルト106の走行に伴って、後段のカレンダロール仕上げ部20方向へ搬送される。
【0028】
図1に示したようにチェストロール仕上げ部10からカレンダロール仕上げ部20に至るまでの途中から、押さえベルト201が受け渡しベルト106に密着し、受け渡しベルト106と共に走行している。そのため、被洗物2は、受け渡しベルト106と押さえベルト201との間に挟まれた状態でカレンダロール仕上げ部20の方向に移動する。
【0029】
上述のように、本実施の形態のロール仕上げ機1における吸引剥がし装置は、吸引力によってチェストロール100に付着した被洗物2を剥ぎ取る構成となっているが、吸引力によるはぎ取りを効果的に行わせるためには、以下のような構成とするのが好ましい。
【0030】
(吸引面110の説明)
まず、吸引ボックス103aの吸引面110に関して、
図4を参照しながら説明する。
図4において、一点鎖線100jは、チェストロール100の軸芯を通る水平面を示している。上述したように、チェストロール100がチェスト101の凹曲面に押圧されると、凹曲面の形状がチェストロール100の外周面に倣うように変形する。変形後のチェスト101の出口側端部101bの上端位置は、水平面100jとほぼ同じ高さとなるように設定される。
図4に示す例では、出口側端部101bの上端位置は水平面100jよりも若干上方位置となっている。そして、鉛直面110aの下端はチェスト101の出口側端部101bの上方近傍に配置される。
【0031】
鉛直面110aの下端と出口側端部101bとの間の垂直方向(y方向)寸法y1は、被洗物2を吸引する観点から可能な限り小さい方が好ましい。また、鉛直面110aの下端の位置は、受け渡しベルト106の走行スペースを確保できる程度に、出口側端部101bの上方近傍とされる。さらに、鉛直面110aとチェストロール100との隙間寸法(すなわち、x方向の隙間寸法)は、チェスト101の出口側端部101bの内周面からチェストロール外周面(外周面と水平面100jとが交わる位置)までの寸法x1と同程度とされる。より詳しく言えば、被洗物2は、厚さ寸法がほぼx1の状態でチェスト101の出口側端部101bから出てくるので、鉛直面110aとチェストロール100との隙間寸法x1はx1+δのように設定される。δはδ>0であって、鉛直面110aの上を走行する受け渡しベルト106の厚さ、および受け渡しベルト106と被洗物2との間の隙間を考慮して設定される。
【0032】
また、鉛直面110aの鉛直方向(y方向)の寸法L1に関しては、被洗物2に対する吸引効果を考えると寸法L1が大きいほど好ましい。一方、鉛直面110a上における鉛直方向(y方向)位置が高くなるほど、鉛直面110aとチェストロール100の表面との距離が大きくなる。すなわち、鉛直面110aのy方向寸法をむやみに大きくしても、大きくしたほどには吸引効果の向上が得られない。また、鉛直面110aのy方向寸法を大きくして吸引面の面積を大きくすると、開口111の総面積が増え、逆に吸引力が低下してしまうおそれがある。
【0033】
そこで、鉛直面110aの鉛直方向(y方向寸法)を規定する方法の一つとして、「
図4に示す寸法Δxを、吸引力の低下が許容できる範囲内で最も大きな値に設定する」方法がある。例えば、寸法Δxが、チェスト101の出口側端部101bとチェストロール100との隙間寸法x1の20〜50%程度となるように、寸法L1を設定する。
【0034】
ここで、
図7のようにチェストロール100の直径をD[mm]とし、チェスト101の出口側端部101bが、チェストロール100の軸芯を通る水平面100jと同一高さであった場合を考える。その場合、鉛直面110aの高さ寸法L1[mm]は、次式(1)のように表せる。
L1=(D/2)・sinθ
=(D/2)√(1−cos
2θ)
=(D/2)√(1−(D/2−Δx)
2/(D/2)
2)
=√((D/2)
2−(D/2−Δx)
2)
=√(D・Δx−Δx
2) ・・・(1)
【0035】
チェストロール100の直径DをD=1200[mm]、そしてx1をx1=10[mm]と仮定し、Δx/x1を20〜50%(すなわち、Δx=2〜5[mm])とした場合、L1はL1=49〜77[mm]となる。例えば、L=100[mm]とした場合、L1は(1/2)L〜(2/3)L程度となる。一方、湾曲面110bのy方向寸法L2は(1/3)L〜(1/2)L程度となり、受け渡しベルト106が走行する湾曲面として十分な面積を確保できる。
【0036】
(スクレイパー102の説明)
次に、チェストロール仕上げ部10の投入側に設けられているスクレイパー102について説明する。一般的にチェストロール仕上げ機(本実施の形態のチェストロール仕上げ部10に相当する装置)においては、チェスト101に対するチェストロール100の滑りを良くするために、定期的にワックス布をチェストロール仕上げ機に通す必要がある。すなわち、被洗物2をロール仕上げする場合と同様に、ワックス布をチェストロール仕上げ部10に投入して、チェスト101の入口側端部101aから出口側端部101bへとワックス布を通過させる。
【0037】
チェストロール仕上げ機のみを単体で、または、複数のチェストロール仕上げ機を直列に配置して使用する場合には、ワックス布をチェストロール仕上げ機の出口側から排出しても何ら問題は生じない。しかし、本実施の形態のロール仕上げ機のように、チェストロール仕上げ部10の後段にカレンダロール仕上げ部20を設けた構成では、チェスト101の出口側端部101bから排出されたワックス布は、受け渡しベルト106によって後段のカレンダロール仕上げ部20に投入されてしまうことになり、ワックス布がカレンダロール仕上げ部20も通過してしまうことになる。
【0038】
上述したように、カレンダロール仕上げ部20においては、搬送ベルト204,205は、第1および第2カレンダロール202,203の外周に掛け回され、第1および第2カレンダロール202,203との摩擦力により走行駆動されている。そのため、ワックス布がチェストロール仕上げ部10からカレンダロール仕上げ部20に投入されて、第1および第2カレンダロール202,203を通過すると、ワックスの付着によって第1および第2カレンダロール202,203と搬送ベルト204,205との間の摩擦力が低下し、搬送ベルト204,205の走行に不都合が生じる場合がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、カレンダロール仕上げ部20の投入側にスクレイパー102を設けると共に、スクレイパー102および吸引剥がし装置を以下のように制御することで、チェストロール仕上げ部10を通過したワックス布を、カレンダロール仕上げ部20を通さずに回収できるようにした。
【0040】
図5は、スクレイパー102が設けられたチェストロール仕上げ部10の入口側の拡大図である。スクレイパー102は、スクレイパー駆動部105によって図示左右方向に駆動される。スクレイパー駆動部105によりスクレイパー102をチェストロール100側に移動すると、
図5に示すように、スクレイパー102の先端がチェストロール100の表面(フェルト層100aの表面)に接触する。この位置を接触位置と呼ぶことにする。一方、
図5に示す状態(接触位置)から、スクレイパー駆動部105によりスクレイパー102を左側に移動すると、スクレイパー102の先端がチェストロール100から離れる。この位置を退避位置と呼ぶことにする。このように、スクレイパー駆動部105は、スクレイパー102を接触位置と退避位置との間でスライド移動させることができる。
【0041】
図6は、ワックス布投入時の動作を説明するためのブロック図である。
図1では図示を省略したが、ロール仕上げ機1には制御部50、操作部40が設けられている。操作部40には、装置の起動・停止を指示するための操作ボタン401や、ワックス布を投入する際の動作を指示するための操作ボタン402などが設けられている。オペレータが操作部40を操作すると、操作指令が制御部50に入力される。制御部50は、操作指令に応じてロール仕上げ機1の動作を制御する。操作部40の表示部(表示ランプ403,404)には、ロール仕上げ機1の状態が表示される。なお、ここでは表示部を表示ランプ403,404としたが、例えば、液晶表示装置などを表示部としても良い。
【0042】
オペレータは、ワックス布をチェストロール仕上げ部10に投入する前に、操作部40の操作ボタン402を操作する。操作ボタン402を操作することにより、操作部40からワックス布投入指令が制御部50に入力される。制御部50はワックス布投入指令が入力されると、排気装置104を停止すると共に、スクレイパー駆動部105を制御してスクレイパー102を退避位置B1から接触位置B2まで移動させる。排気装置104を停止させ、スクレイパー102を接触位置B2へ移動させたならば、制御部50は、操作部40の表示部にワックス布投入を許可する表示(表示ランプ404の点灯)を行う。なお、表示ランプ404が点灯された後に再び操作ボタン402を操作すると、ワックス布投入指令が解除され表示ランプ404が消灯する。
【0043】
オペレータは、ワックス布投入を許可する表示(表示ランプ404の点灯)を確認したならば、チェストロール仕上げ部10にワックス布を投入する。投入されたワックス布3はチェストロール100の回転に従ってチェスト101の入口側端部101aから出口側端部101bに向けて移動する。ワックス布3は、チェストロール100とチェスト101との間に挟まれフェルト層100aに押圧されるため、被洗物2の場合と同様に、フェルト層100aに付着した状態でチェスト101の出口側端部101bから引き出される。
【0044】
ところで、被洗物2を投入する場合には排気装置104が動作しているので、被洗物2は吸引ボックス103aの吸引作用によってチェストロール100から引き剥がされ、受け渡しベルト106によって後段のカレンダロール仕上げ部20に搬送される。しかしながら、ワックス布3を投入する際には排気装置104が停止されるので、チェストロール100に付着したワックス布3は吸引ボックス103aによって吸引されず、付着状態が維持されることになる。
【0045】
チェストロール100に付着した状態のワックス布3は、チェストロール100の回転に従ってチェストロール仕上げ部10の入口側に戻ってくる。この場合、スクレイパー102の先端は
図5の示したようにチェストロール100の表面(フェルト層100a)に接触しているので、ワックス布3がチェストロール100から剥ぎ取られる。オペレータは剥ぎ取られたワックス布3を取り除いた後に、操作部40(
図6参照)の操作ボタン402を再度操作してワックス布投入指令を解除する。ワックス布投入指令の解除により、制御部50は、排気装置104を起動すると共に、スクレイパー駆動部105を制御してスクレイパー102を接触位置から退避位置に移動させ、その後、表示ランプ404を消灯する。オペレータは、表示ランプ404の消灯を確認したならば、再び被洗物2の投入を開始する。
【0046】
なお、スクレイパー102は常時接触状態としても良い。しかし、常時接触状態とすると、チェストロール100のフェルト層100aがスクレイパー102によって削られてしまうという欠点がある。そのため、上述した実施例では、スクレイパー非使用時にはスクレイパー102を接触位置B2から退避位置B1へスライド移動させるようにしたが、接触位置と退避位置との間でスクレイパー102を揺動駆動するような構成としても良い。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態の発明のロール仕上げ機1は、凹曲面を有する加熱装置としてのチェスト101と、凹曲面の入口側端部101aから投入された被洗物2を、凹曲面に圧接しながら回転搬送して凹曲面の出口側端部101bから搬出する回転ロールであるチェストロール100と、凹曲面の出口側端部101bから搬出された被洗物2をチェストロール100から剥がす吸引剥がし装置(103a,104,104a,106)と、を備える。そして、吸引剥がし装置(103a,104,104a,106)は、被洗物2をチェストロール100から吸引剥がしする複数の開口111を有する吸引面110と、複数の開口111から空気を吸引させるための排気装置104と、吸引面110の面上を走行し、チェストロール100から剥がされた被洗物2を搬送する通気性の受け渡しベルト106と、を有する。吸引面110は、凹曲面の出口側端部101bの近傍位置であって、出口側端部101bからの凹曲面の延長方向の位置において、チェストロール100のロール表面に対向する平面部としての鉛直面110aを有する。
【0048】
鉛直面110aは、出口側端部101bからの凹曲面の延長方向の位置において、チェストロール100のロール表面に対向する平面部なので、従来のような曲面である場合と比べ、チェスト101の出口側端部101bから出た後の被洗物2と吸引面110との距離の増加を抑えることができる。その結果、吸引剥がし装置による吸引効果の低下を押さえることができ、被洗物2をチェストロール100から確実に剥がすことができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、吸引面110の平面部が鉛直面である場合を説明したが、これは、
図4に示すようにチェスト101の出口側端部101bがチェストロール軸芯を通る水平面100jの近傍にある場合には、出口側端部101bからの凹曲面の延長方向がほぼ鉛直面方向となるからである。そのような場合には、平面部は鉛直面方向に沿った鉛直面とするのが好ましい。例えば、
図4において出口側端部101bが水平面100jから下側に離れている場合には、出口側端部101bからの凹曲面の延長方向は鉛直方向から図示右側に若干傾いた方向となる。そのような場合には、平面部を、その傾いた方向に沿うような平面としても構わないし、鉛直面としても構わない。
【0050】
さらに、吸引面110は、被洗物2の搬送方向における平面部である鉛直面110aの端部に連なり、ロール表面から離れるように凸状に湾曲した湾曲面110bを有し、吸引面110の鉛直面110aは、ほぼ鉛直方向に延在するように構成されている。このような構成とすることで、ロール表面から剥がされた被洗物2の受け渡しベルト106上への載置を効果的に行うことができる。
【0051】
さらに、回転する加熱ロールとしてのカレンダロール202と、カレンダロール202の周面の一部に掛け回されてカレンダロール202の回転に従動して走行し、チェストロール100から剥がされた被洗物2をカレンダロール202との間に挟持して該カレンダロール202に押圧する走行ベルトとしての搬送ベルト204と、チェストロール100の表面に付着した付着物を剥ぎ取るスクレイパー102と、オペレータ操作に応じて、排気装置104の停止指令および駆動指令を出力する操作部40と、操作部40からの停止指令により排気装置104の動作を停止させ、前記操作部からの駆動指令により排気装置104の動作を行わせる制御部50と、を備え、操作部40が駆動指令を出力しているときには、被洗物2がチェストロール100から吸引剥がし装置によって剥がされて、カレンダロール202に搬送され、操作部40が停止指令を出力しているときには、スクレイパー102がチェストロール100に付着した付着物を剥ぎ取り、付着物は、凹曲面の入口端から投入されたワックス布3である。
【0052】
ワックス布3をロール仕上げ機1に投入する場合に、オペレータ操作により操作部40から停止指令が制御部50へ出力されると、排気装置104による吸引が停止し、ワックス布3はチェストロール100に付着したまま、チェストロール100の回転に従って入口側端部101a方向へと移動する。そして、入口側端部101a方向へと移動したワックス布3はスクレイパー102によって剥ぎ取られる。その結果、ワックス布3が後段のカレンダロール仕上げ部20を通過するのを防止することができる。
【0053】
さらに、スクレイパー102は、チェストロール100のロール表面に接触する第1の位置である接触位置B2と、ロール表面から離間する第2の位置である退避位置B1との間で移動可能であって、停止指令によりスクレイパー102を接触位置B2に移動させ、駆動指令によりスクレイパー102を退避位置B1に移動させるようにしても良い。このように、ワックス布3をロール仕上げ機1に投入する場合にのみスクレイパー102をチェストロール100に接触させることで、スクレイパー102によりロール表面が削られるのを低減することができる。
【0054】
さらに、吸引剥がし装置により剥がされた被洗物2を、後段の処理装置であるカレンダロール仕上げ部20まで搬送し、その被洗物2をカレンダロール仕上げ部20に投入する構成としてもよい。それにより、受け渡しベルト106にチェストロール100からカレンダロール202に被洗物2を搬送する機能を兼用させることができ、搬送系の簡略化およびコスト低減を図ることができる。
【0055】
また、ロール仕上げ機の他の態様においては、凹曲面を有する加熱装置としてのチェスト101と、凹曲面の入口側端部101aから投入された被洗物2を、凹曲面に圧接しながら回転搬送して凹曲面の出口側端部101bから搬出する回転ロールであるチェストロール100と、回転する加熱ロールとしてのカレンダロール202と、カレンダロール202の周面の一部に掛け回されてカレンダロール202の回転に従動して走行し、投入された被洗物2をカレンダロール202との間に挟持して該カレンダロール202に押圧する搬送ベルト204と、凹曲面の出口側端部101bから搬出された被洗物2をチェストロール100から剥がす吸引剥がし装置(103a,104,104a,106)と、を備える。そして、吸引剥がし装置(103a,104,104a,106)は、被洗物2をチェストロール100から吸引剥がしする複数の開口111を有する吸引面110と、複数の開口111から空気を吸引させるための排気装置104と、吸引面110の面上を走行し、チェストロール100から剥がされた被洗物2をカレンダロール202の被洗物入口(
図1のカレンダロール202と搬送ベルト204とが接触する位置の直前)まで搬送する通気性の搬送ベルトとしての受け渡しベルト106と、を有する。
【0056】
この場合も、吸引剥がし装置により剥ぎ取られた被洗物2が、受け渡しベルト106によってカレンダロール202まで搬送される構成であるため、受け渡しベルト106はチェストロール100からカレンダロール202に被洗物2を搬送する機能を兼用している。その結果、搬送系の簡略化およびコスト低減を図ることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、チェストロール100を1本有するチェストロール仕上げ部10を例に説明したが、チェストロール仕上げ部10に複数のチェストロール100が設けられていても良い。ただし、複数のチェストロール100を有する場合には、各チェストロール100間において被洗物2を受け渡すための受け渡し機構が必要である。一方、上述のように直径が1000[mm]を超える大径のチェストロール100を用いることによって、1本のチェストロール100で複数のチェストロール100を設ける場合と同等のロール仕上げを行うことができると共に、複数の場合に必要な上記受け渡し機構を必要とせず、チェストロール仕上げ部10の装置構成の簡素化および設置面積の低減を図ることが可能である。
【0058】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。