【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の先行技術の背景に対して、本発明の目的は、金属コンポーネント、特に軽金属コンポーネントの上にコーティングが生成されることを可能にするコーティング材料を提供することであり、加えてこのコーティングは高い機械的負荷および熱負荷に信頼性高く耐えることができ、かつそのプロセスは機械加工に好適である。加えて、これに対応して構成されたコーティングが少なくとも1つの表面部分に設けられた金属コンポーネントと、こうした金属コンポーネントを製造するための方法とが明示されるはずである。
【0008】
コーティング材料に関して、上記の目的は、請求項1に明示される構成要素を有するエナメル粉末によって、本発明に従って達成される。
【0009】
金属コンポーネントに関して、上記の目的は、請求項6に明示される特徴を有する金属コンポーネントによって達成される。
【0010】
最後に方法に関して、上記の目的は、エナメルコーティングが設けられた少なくとも1つの表面部分を有する金属コンポーネントを製造するときに、請求項12に示される方法ステップを行うことによって、本発明に従って達成される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は従属請求項に明示されており、かつ一般的な発明概念と同様に以下に詳細に説明される。
【0012】
本発明に従うエナメル粉末は、100部のガラス粉末と
、10〜22部の、ガラス粉末粒子よりも大きい粗ガラス顆粒と、0.1〜7.5部のセラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維と、互いに代替的な、または互いに組み合わされた、10〜21部の軽金属の粉状酸化化合物、または1〜5部の重金属の粉末とを含有する混合物として存在する。
【0013】
エナメル技術において通例であるとおり、本明細書において用量の尺度として「部」に言及するとき、それはすべての構成要素に対して同じ単位尺度によって測定された、エナメル粉末に加えられるそれぞれの構成要素の量であると理解され、個々の構成要素に対して本発明に従ってそれぞれ与えられる「部」は、この単位尺度のそれぞれの倍数を示す。したがって、本明細書において用いられる「部」のデータは、たとえばgまたはkgなどのある任意の重量単位に基づく量データである(すなわち体積データではない)。それぞれの重量単位は、それぞれに必要とされる総量の関数として選択され得る。本発明に従うエナメル粉末が1キログラム未満の領域にある少量だけ必要とされるときは、基準単位として「グラム」が選択される。よって、100gのガラス粉末と
、10〜22gの、ガラス粉末粒子よりも大きい粗ガラス顆粒と、0.1〜7.5gのセラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維と、互いに代替的な、または互いに組み合わされた、10〜21gの軽金属の粉状酸化化合物、または1〜5gの重金属の粉末とが混合されて、本発明に従うエナメルが形成される。他方で、500kgのサイズの量が必要とされるときは、本発明に従うエナメル粉末調合物の各「部」に、たとえば「5kg」の量単位が割り当てられてもよい。よって本発明に従って、500kgのガラス粉末と
、50〜110kgの、ガラス粉末粒子よりも大きい粗ガラス顆粒と、0.5〜37.5kgのセラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維と、互いに代替的な、または互いに組み合わされた、50〜105kgの軽金属の粉状酸化化合物、または5〜25kgの重金属の粉末とが混合されて、本発明に従うエナメルが形成される。
【0014】
本発明に従うエナメル粉末の個々の構成要素は、以下の定義を有する。
【0015】
a)ガラス粉末
ガラス粉末は、本発明に従うエナメル粉末の主成分であって、本発明に従って構成され、かつ金属コンポーネントのそれぞれの表面部分において生成されるエナメルコーティングに対するマトリックスを形成し、このマトリックス中にエナメル粉末の他の構成要素が埋め込まれる。
【0016】
先行技術においてこの目的のために一般的に用いられるタイプのガラスが、ガラス粉末として用いられ得る。同時に、各場合に本発明に従うエナメル粉末によって形成されるエナメルコーティングでコートされるべき表面部分を有する基体材料よりも低い膨張係数を有するタイプのガラスからなるガラス粉末が、本発明に対して好適である。エナメルコーティングを焼成する過程で、それぞれの金属基体が損傷または変形することを防ぐために、こうしたタイプのガラスから生成されるガラス粉末は、それぞれの基体材料の溶融温度が存在する温度範囲よりも低い温度で溶融すべきである。
【0017】
軽金属コンポーネントの表面部分に適用されるときの、ガラス粉末の典型的な許容可能溶融温度は480〜650℃、特に540〜580℃または510〜540℃の範囲に存在する。
【0018】
軽金属から製造されるコンポーネントの表面に適用されるとき、こうしたガラス粉末を主成分として生成され、かつ他の点において本発明に従って構成されたエナメルコーティングは、もしそのエナメルコーティングが設けられた表面においてそれぞれのコンポーネントが動作中に露出される温度が、軽金属材料の溶融温度および本発明に従うエナメル粉末から生成された実際のコーティングの溶融温度よりもかなり高ければ、熱負荷および機械的負荷に信頼性高く耐え、かつ軽金属基体を信頼性高く保護することが明らかとなった。よって、本発明に従うエナメル粉末は、使用中に高温の排気ガス流に露出される、特にアルミニウム材料などの軽金属材料から製造された内燃機関に対するコンポーネントの表面をコートするために特に好適である。この種のコンポーネントは、実際には鋳造によって通常製造される。
【0019】
しかし、本発明に従うエナメル粉末は、高温ガス流に露出される表面部分をコートするために好適であるだけでなく、金属コンポーネントの外側にある表面をコートするためにも用いられ得る。動作中に高温に加熱されるコンポーネントの場合、本発明に従うエナメル粉末から形成されるコーティングは、熱放射を低減させる働きをし得る。
【0020】
金属コンポーネントの表面は、本発明に従うエナメル粉末によって均一にコートされてもよく、コートされた後の金属コンポーネントは非常に平滑な表面を有することとなる。こうした表面はたとえば、流体が金属コンポーネントのダクトを通って流れるところ、または動作中に流体の流れに露出されるその他のコンポーネント部分に設けられ得る。
【0021】
本発明に従うエナメル粉末から生成されるコーティングはさらに、攻撃的な環境において、標的とされるやり方で、本発明に従って生成されたエナメルコーティングがそれぞれ設けられた表面を腐食から保護することができる。
【0022】
本発明に従うエナメル粉末の主成分を形成するガラス粉末の粒子の粒径(平均直径)は、典型的に5〜40μmの範囲に存在し、実際には平均25μmの粒径を有するガラス粉末が特に好適であることが判明している。
【0023】
b)粗ガラス顆粒
本発明に従うエナメル粉末から生成されるエナメルコーティングに、クラック形成に対するさらに改善された抵抗性を提供するために、本発明に従うエナメル粉末に10〜22部の粗ガラス顆粒
が加えられ得る。本発明に従うエナメル粉末の主成分を形成するガラス粉末の最大粒子よりも大きいそれらのガラス粒子は「粗ガラス顆粒」と呼ばれる。よって典型的に、40μmを超える平均直径を有するガラス顆粒がこれに含まれる。同時に、本発明に従うエナメル粉末によって本発明に従って生成されるコーティングが過剰に粗くなることを防ぐために、粗ガラス顆粒の平均直径は500μmを超えるべきではない。
【0024】
粗顆粒は体積が比較的大きいために、エナメルコーティングが焼成されるときに完全に溶融せず、基本構造を保持する。もし実際の使用中にエナメルコーティングにクラックが形成されれば、本発明に従うエナメルコーティング中に存在するガラス顆粒が、それぞれのクラックによって克服され得ない一種のバリアとして作用して、クラックのさらなる拡大を妨げる。このやり方で、クラックの進行が阻止され、コーティングのさらなる損傷が防がれる。
【0025】
本発明に従うエナメル粉末と同様に構成されたガラス粒子が、粗ガラス顆粒として用いられてもよい。こうしたエナメル粉末から生成された粗ガラス顆粒は、本発明に従うエナメル粉末から生成されたコーティングの組成および特性に対応する組成および特性を有する。このやり方で、本発明に従って生成されたコーティングが、粗ガラス顆粒の存在にもかかわらず、最大限可能な程度に均一な特性および等しく一貫した挙動を有することが確実にされる。本発明に従うエナメル粉末を製造する過程でフリットとしてすでに添加されていたそれらの粗ガラス顆粒は、本発明に従うエナメル粉末に対して特に好適であることが判明している。こうしたフリット化ガラス顆粒、すなわち完全に溶融されていないガラス顆粒は、本発明に従うエナメル粉末によって生成されるエナメルコーティングにおいてより大きなクラックの形成を防ぐことに関して、特に有効であることが判明している。
【0026】
粗ガラス顆粒の効果を所望の信頼性とともにもたらすために、本発明に従うエナメル粉末はこれらのガラス顆粒を10〜22部含有し、ここで本発明に従うエナメル粉末に少なくとも15部の粗ガラス顆粒が添加されるときに、最適な効果がもたらされる。
【0027】
c)セラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維
本発明に従うエナメル粉末の中に存在する繊維は、特別重要である。これらの繊維は、本発明に従う粉末から形成されるエナメルコーティングが、温度変動によって起こり得る高い応力、および実際の使用中に起こる機械的圧力負荷の存在下でも信頼性高くまとまっていることを確実にする。
【0028】
この機能を実現するために、本発明に従うエナメル粉末中には0.1〜7.5部、特に少なくとも2部または少なくとも3.5〜7.5部のセラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維が存在し、ここでセラミック繊維、ガラス繊維および炭素繊維はそれぞれ別個に加えられてもよいし、混合物として加えられてもよい。本発明に従う粉末中に4〜6部の繊維材料が存在するときに、最適な効果が生じる。
【0029】
原則として、10〜9000μmの繊維長を有するセラミック繊維、ガラス繊維または炭素繊維が、本発明に従うエナメル粉末に対して好適である。繊維長が長いと、本発明に従うエナメル粉末から形成されるエナメルコーティングの粘着に関して有利であることが判明しているが、加工性を損ない得る。10μm未満の繊維長では、強化効果が弱すぎる。10〜1000μmの長さを有する繊維は、十分有効であることが判明しており、同時に良好な加工性を保証することが判明している。
【0030】
炭素繊維に対して、商業的に入手可能な繊維を用いてもよい。セラミック繊維およびガラス繊維についても同様であり、ここでは例として、異なる組成の炭化ケイ素繊維またはガラス繊維を挙げることができる。
【0031】
d)軽金属の酸化化合物または重金属の粉末
それぞれ意図される使用に関して重要でない範囲において、エナメル粉末から形成されるコーティングの溶融点をシフトさせるために、軽金属の粉状酸化化合物または重金属の粉末が、同時または代替的に本発明に従うエナメル粉末中に存在し得る。
【0032】
このやり方で、軽金属コンポーネント上にもエナメルコーティングを生成でき、このエナメルコーティングはそれぞれの軽金属材料の溶融温度に関する非臨界的焼成条件で形成するが、実際の使用中に起こる最高温度に安全に耐えられるほどの温度抵抗性を有する。
【0033】
この効果を達成するために、本発明に従うエナメル粉末は、10〜21部、特に12〜17部の軽金属の粉状酸化化合物、および/または1〜5部、特に2〜4部の重金属の粉末を含有する。
【0034】
本文において、5g/cm
3未満の密度を有する金属は「軽金属」と理解される。特にAl、TiおよびMgが軽金属に含まれる。
【0035】
これらの軽金属の酸化物のうち、Al酸化物は2000℃を超える高い溶融点を有することから、本発明に従うエナメル粉末に用いるために特に好適である。しかし、特に軽金属コンポーネントをコートするときには、たとえばTi酸化物などからなる粉末など、その他の軽金属酸化物粉末が用いられてもよく、各場合の粉末の溶融点はなおも1000℃を超えているため、明らかに軽金属基体の溶融温度範囲よりも上にある。
【0036】
もし軽金属酸化物がエナメル粉末から形成されるアモルファスコーティング材料の量に対して最大30%の量で存在すれば、それぞれに提供される軽金属酸化物は、本発明に従うエナメル粉末から生成されるエナメルコーティングの特性に最適なやり方で影響し得る。
【0037】
5g/cm
3以上の密度を有するすべての金属およびその合金は「重金属」とみなされる。すべての鉄に基づく材料、特に合金鋼からなる金属粉末は重金属に含まれる。高純度の鋼からなる金属粉末、たとえば「V2A」および「V4A」という呼称で公知であり、かつ材料番号1.4301および1.4401によって規格化された鋼X5CrNi18−10およびX5CrNiMo17−12−2などは、特に好適であることが判明している。ここではさらに、焼成プロセスの際に金属粉末の特性が変化しないように、それぞれの金属粉末の溶融点が1000℃よりも高いことが有利であることが判明している。
【0038】
もし重金属またはその合金の金属粉末が、アモルファスコーティング材料の量に対して最大10%の量で存在すれば、金属粉末は、本発明に従うエナメル粉末から生成されるエナメルコーティングの特性に最適なやり方で影響し得る。
【0039】
本発明に従うエナメル粉末に加えられるそれぞれの金属粉末の粒、または軽金属のそれぞれの粉状酸化物の粒の平均直径は、典型的に10〜500μmの範囲に存在すべきである。
【0040】
e)その他の構成要素
前に定義された構成要素に加えて、エナメルコートを生成するために典型的に必要とされるとおり、もちろん任意にその他の添加剤が本発明に従うエナメル粉末中に存在してもよい。たとえばホウ酸、苛性カリ溶液、水ガラス、または脱塩水などがその添加剤に含まれる。
【0041】
本発明に従うエナメル粉末は、特定の量の個々の構成要素を混ぜ合わせて、均一な粉末が得られるまでともに粉砕することによって生成され得る。粗ガラス顆粒は、粉砕プロセスの最後まで完全に微粉砕されずに、粉砕完了した粉末中になおも本発明に従って必要とされるサイズで存在するように、十分遅く粉砕材料に加えられてもよい。同じやり方で、繊維も完全に微粉砕されずに、粉砕プロセスの最後に必要な長さで存在するように、粉砕プロセスのより遅い時点でのみ粉砕材料に加えられてもよい。
【0042】
代替的に、本発明に従うエナメル粉末は、それぞれに必要とされる粒径によって予め別々に製作された構成要素が混合されてもよい。
【0043】
本発明に従うエナメル粉末から生成されるエナメルコーティングの、前に定義された特性を用いて、本発明に従う金属コンポーネントは、実際の使用中に露出される熱負荷および機械的負荷から保護するために、本発明に従うエナメル粉末から形成されるエナメルコーティングによってコートされた表面部分を有する。本発明に従ってコートされたそれぞれの表面が、そこを流れる高温ガス、特に内燃機関の排気ガスの結果としてもたらされる高い熱負荷および機械的負荷に耐える必要があるような金属コンポーネントに対して、本発明は特に有利であることが判明している。
【0044】
本発明に従って構成および生成されるコーティングは無機非金属アモルファス材料であり、その構成要素のために、変動する熱負荷および機械的負荷に対する高い耐久性を有する。このプロセスにおいて、より粗いガラス粒子が存在するために、たとえコーティングにより小さいクラックが形成されたとしても、より大きなクラック形成は起こらずに、コーティングがそれぞれの表面部分に固着し続けることが確実にされる。同時に、本発明に従って提供されるエナメルコーティングに存在する繊維は、エナメルコーティングが高応力下でもまとまっていることを確実にする。
【0045】
本発明に従って構成されたエナメルコーティングは、その構成要素のために、基本的には引っ張り強さよりも圧力抵抗性が高い。したがって、エナメルコーティングによってコートされた表面部分において、エナメルコーティングの膨張係数が金属コンポーネントの膨張係数よりも低くなるように本発明に従って指定された制限内に設定されたエナメル粉末の組成によりエナメルコーティングでそれぞれコートされた表面部分によって、エナメルコーティングがクラックおよびチップを形成する傾向をさらに最小化できる。
【0046】
本発明に従うエナメル粉末は、軽金属または軽金属合金からなる金属コンポーネント上にエナメルコーティングを生成するために特に好適である。これは特に、鋳造によって製造される金属コンポーネントに当てはまる。よって、特に軽金属鋳造部分の表面部分、特にアルミニウム鋳造部分を、本発明に従うやり方でコートできる。経済的および技術的観点から特に重要な、本発明に従うタイプのエナメルコーティングの使用は、内燃機関の構築を行うための軽金属鋳造部分の表面部分のコーティングである。たとえば、排気ガスを排出するシリンダヘッドのダクトおよびターボチャージャハウジングなどの内表面などがこの表面部分に含まれる。
【0047】
本発明に従う金属コンポーネントを製造するための本発明に従う方法は、一般的に以下の製造ステップを含む。
− 金属コンポーネントを提供するステップ、
− 本発明に従うエナメル粉末と、スリップ手段とを用いて形成されたエナメルスリップを、それぞれコートされるべき金属コンポーネントの表面部分に適用するステップ、および
− 金属コンポーネントを構成する材料の溶融温度よりも低い温度でエナメルスリップを焼成することによって、エナメルコーティングを生成するステップ。
【0048】
たとえば脱塩水は、スリップ手段に対して好適である。加えて、たとえば塩化マグネシウム、亜硝酸ナトリウム、ホウ酸、苛性カリ溶液、または水ガラスなどのさらなる添加剤が、セットアップ剤としてエナメルスリップ中に存在し得る。
【0049】
スリップは、たとえば噴霧、フラッディング、または塗り広げることなどによって、それぞれにコートされるべき表面に適用される。狭いダクト、凹みおよび空洞の内表面にエナメルコートを適用するためには、フラッディングが特に好適である。これは、たとえば内燃機関に対するコンポーネントに見出されるものなどの狭い排気ガスダクトなどに当てはまる。コートの厚さは、それぞれの適用に適合され得る。よってその厚さは、必要であれば0.5mmより大きく、特に最大1mmの範囲であってもよい。たとえば300〜600μmなどのコート厚さが、実際に提示される要求に対して十分であることが判明している。しかし、熱負荷および機械的負荷が高い場合には、それぞれの金属基体を、そこに流れる高温のガスの影響から十分に保護するために、より大きなコート厚さを提供することが有利であり得る。こうした場合には、0.6mmを超える厚さのエナメルコーティング、特に最大0.75mmの厚さ、最大1mmの厚さ、最大1.5mmの厚さ、または最大2mmの厚さのエナメルコーティングが有利であり得る。
【0050】
150μm以上の、より大きいコート厚さを有するコーティングは、2つまたはそれ以上のコートを適用することによって形成でき、ここで個々のコートはそれぞれ1つのパスで適用されてもよい。これを行う際に、コート構造が形成されてもよく、その一番上のカバーコートは本発明に従うエナメル粉末から形成され、カバーコートの間に、先行技術においてこれらの目的のためにすでに用いられていた粉砕エナメルからなる1つまたはそれ以上のコートが存在する。機能性コートとしての、本発明に従うエナメル粉末からなるカバーコートは、次いでコーティング全体の外側仕上を形成する。
【0051】
エナメルコーティングが金属コンポーネントのそれぞれの表面部分に最適なやり方で結合することを確実にするために、エナメルコーティングによってコートされるべき金属コンポーネントの表面部分に、エナメルスリップを適用する前に表面処理を受けさせてもよく、ここで表面部分は脱脂および不動態化され、かつ表面部分に存在する表面近くの酸化物層が破壊される。酸化物層は、たとえばブラスティングまたは機械的粗面化などによって破壊され得る。
【0052】
本発明に従うエナメルコーティングが軽金属コンポーネント上に生成されるとき、完全に乾燥せずにまだ湿っているエナメルスリップによって、焼成が最適に行われる。
【0053】
エナメルコーティングの焼成は、各場合に、それぞれコートされるべき表面部分を構成する金属材料の溶融温度よりも低い温度にて行われる。アルミニウムから製造されるコンポーネントの場合には、焼成温度は典型的に480〜650℃、特に510〜540℃の範囲に存在する。
【0054】
焼成は別個の製造ステップとして行われてもよく、各場合のこのプロセスにおいて、適用されるエナメルスリップコートは、ガラスマトリックスが溶融して金属基体に結合することを可能にするために焼成温度まで短時間加熱されるだけでよいため、短時間しか要しない。
【0055】
代替的に、焼成は、それぞれの金属コンポーネントの機械的特性またはその他の特性を定めるために金属コンポーネントが受ける熱処理ステップと組み合わせて行われてもよい。アルミニウム鋳造部分またはその他の軽金属鋳造部分の場合、たとえば多くの適用において必要とされる溶液アニーリングがこのために適切であり、ここでそれぞれの鋳造部分は焼成プロセスのために好適な温度範囲で保持される。
【0056】
本発明に従って生成されるエナメルコーティングの特に有利な点は、こうしたやり方でコートされた金属コンポーネントが、エナメルスリップを焼成した後に、得られたエナメルコーティングが設けられた表面部分の範囲において、エナメルコーティングを破壊することなく機械加工を受け得ることである。
【0057】
例示的実施形態を表す図面の助けによって、以下に本発明をより詳細に説明する。