(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明は、燃料が、適切なポンプによって高圧蓄圧器(「コモンレール」)に供給され、蓄圧器から機関の燃料噴射器へ送出されるタイプのディーゼル内燃機関のシリンダに燃料を送出する際に使用される燃料噴射器に関する。燃料噴射器のノズルは、作動後、機関の各シリンダに燃料を送出するように配置される。
【0003】
このような燃料噴射器は、一般的に、本体を通して高圧燃料供給管路からの燃料の流れを制御するために、本体内で摺動可能であり、ニードル弁座と係合可能であるニードルを含む。
【0004】
燃料噴射器内の最大噴射圧力は、180MPa(1800バール)程度またはそれ以上となる可能性があり、その結果、噴射器のニードルを上げるために克服されるべき力は大きいものである。したがって、かなりの高電流が使用されない限り、電磁アクチュエータを使用して噴射器を直接的に制御することはできない。したがって、噴射器は、噴射器ニードルの上に位置する制御室の加圧または放出を制御する弁装置によって間接的に制御される。
【0005】
このような噴射器の例は欧州特許出願公開第0647780号に開示されており、ここでは、弁座から離れたニードルの端部は室内に延在し、当該室は、制限器を通して供給管路から燃料を受け入れるように配置される。使用時に、噴射は、制御室内の圧力を変えることによって制御される。ソレノイドアクチュエータは、制御室と低圧排水管との間の流路を開かせるように、弁装置に対して作用する。圧力が制御室の範囲内にあると、ニードルは、弁座に隣接したニードルの一部に対して作用する圧力によって、ニードル弁座を離れる。一般のコモンレール噴射系の範囲内では、圧力平衡弁装置(釣り合い弁とも呼ばれる)、および、圧力不平衡弁装置といった、2つのタイプの弁装置が既知である。
【0006】
圧力平衡弁装置では、ボア内に位置する弁棒は、制御室の高圧域と低圧排水管の低圧域との間の流路を開閉するために、電磁アクチュエータの作用下で摺動可能である。閉構成では、弁装置は、弁座と接触し、実質的に液圧的釣り合い状態にあり、弁装置は、弁装置に対するばねの作用によって閉位置に保持される。電磁アクチュエータを作動させると、ばね力は克服され、弁装置はその弁座から離れて移動することによって、低圧排水管へ、棒とボアとの間で燃料を移動させることができる。釣り合いベースの弁装置は、ある程度の静的漏れを明示する傾向がある。換言すると、閉位置でも、高圧燃料は、低圧排水管へと、弁装置のボアと弁棒との間で画定される流路に沿って漏れることになる。
【0007】
圧力不平衡弁装置では、弁は、その着座位置および閉位置において、系内の高圧燃料の圧力によって保持される。したがって、このような弁装置は、実質的に、閉位置で液圧的釣り合い状態になく、その結果、開くために、より大きな作動力を必要とする。しかしながら、このような圧力不平衡弁装置内の静的漏れの程度は、圧力平衡弁装置のものより小さい。
【0008】
したがって、上述した2つのタイプの弁装置は、比較的高い割合の静的漏れによる低い作動力要件(圧力平衡弁装置)、または、比較的低い割合の静的漏れによる高い作動力要件(圧力不平衡弁装置)のどちらかを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低い作動力要件を有するが、ニードルに対して直接作用することによって静的漏れ性能を改善させた、改善された噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、内燃機関において使用するための燃料噴射器が提供される。燃料噴射器は、ボア(穴)を含む噴射器本体と、ボア内に位置し、噴射器出口からの燃料噴射を制御するためにニードル座部と係合可能な噴射器ニードルと、噴射器ニードル上の電機子座部と係合可能である電機子部材とを備え、噴射器ニードルの一部および電機子部材の一部が制御室を画定しており、制御室内の燃料圧力変動がニードル座部に対する噴射器ニードルの移動を制御するように、制御室内の燃料圧力を制御するように配置されるアクチュエータ装置を備え、アクチュエータ装置は、電機子部材が電機子座部に係合する着座位置から、電機子部材が電機子座部に対して移動した離座位置まで、電機子部材を移動させることができるように配置されることで、制御室を低圧排水管と流体連通させる。
【0011】
本発明は燃料噴射器を提供する。燃料噴射器では、噴射器ニードルの上げ作用および噴射器ニードルの開閉作用は、電機子の移動後、アクチュエータ装置によって駆動されることによって直接的に制御される。
【0012】
既知の噴射器は、(ある期間にわたって磁力を増大させてからばね力が克服可能であることを伴う)制御弁の開閉、制御弁内の流出オリフィスと弁座との間の圧力の解放(または増大)、ニードルに対する不平衡な圧力による力をもたらすために固定された入口を通したニードル制御室内の圧力の解放(または増大)、および、不平衡な力に応じた噴射器ニードルの移動といった、一連の事象を介して扱われる。
【0013】
それと対照的に、本発明の噴射器によると、噴射器ニードルの移動は、噴射器ニードルの最上部と直接接触する電機子部材(アーマチュア部材)の位置によって制御される。本発明は、噴射器本体内の流出制御オリフィスまたはノズル進路オリフィスの必要性を取り除く、または、少なくとも実質的に避ける。本発明の実施形態による噴射器は、既知の噴射装置より早く動作可能であり、特にマルチ噴射モードにおいてより効率的な動作をもたらすことができる。
【0014】
便宜上、噴射器本体内のボアは環状通路を含むことができる。当該通路は、高圧穿孔を介して蓄圧器容積部と流体連通することができる。噴射器ニードルは軸方向穿孔を含むことができ、軸方向穿孔は、第1の端部で高圧燃料源と流体連通し、第2の端部で制御室と流体連通することができる。
【0015】
便宜上、軸方向穿孔は、高圧燃料源から制御室内への燃料の流れを制御するための制御室充填オリフィスを含むことができる。
【0016】
軸方向穿孔は、噴射器本体のボア内の環状通路と流体連通してもよい。当該通路は、高圧穿孔を介して蓄圧器容積部と流体連通する。
【0017】
噴射器は、電機子部材を電機子座部の方へ偏倚させるように配置される電機子ばね部材をさらに含むことができる。噴射器はまた、噴射器ニードルを弁座の方へ偏倚させるように配置される噴射器ニードルばね部材をさらに含むことができる。
【0018】
電機子座部は、噴射器ニードルの一端に位置してもよく、便宜上、電機子座部を含む噴射器ニードルの端部は、実質的に、噴射器ニードル端部外郭を画定する截頭円錐形であってよい。電機子座部は、端部外郭上に位置する。電機子座部を含む噴射器ニードルの端部は、1つ以上の端部外郭を含むことができる。
【0019】
便宜上、噴射器ニードルの第2の端部は、弁座に係合するように配置されてよい。
【0020】
好ましくは、アクチュエータ装置は、電機子部材が電機子座部に係合する着座位置からパイロット噴射位置まで移動するように配置されてよく、低圧排水管までは、パイロット噴射位置より主要噴射位置での方が大きい。
【0021】
特定の実施形態では、アクチュエータ装置は、噴射器出口とは反対側の噴射器の末端上に配置される。これによって、高圧燃料に耐えることができる、10cm
3を超える内部リザーバを配置することが可能になる。
【0022】
本発明がより容易に理解され得るように、ここで例として添付図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1、
図2、および、
図3に示される既知の燃料噴射器1は噴射器/弁本体10を備えており、噴射器/弁本体10は、比較的狭い直径の第1の領域(噴射器ノズル8)と、第2の拡大領域とを含む。噴射器本体10(ノズル保持体という時もある)は、第1の領域(ノズル8)および第2の領域両方を通して延在するボア(穴)11を備える。当該ボアは、第1の領域の自由端から間隔をあけた位置で終端している。細長い噴射器ニードル(噴射器弁体)12はボア内を摺動可能である。噴射器ニードル12は、先端領域14を備えており、先端領域14は、ボアの盲端に隣接した噴射器本体10の内面によって画定される噴射器ニードル座部に係合できるように配置されている。噴射器本体10の噴射器ノズル8は、ボアと連通する1つまたは複数の開口部15を備える。当該開口部は、噴射器ニードル座部との先端14の係合によって、その開口部を通して噴射器本体10から流体が漏れないように位置決めされており、先端14がニードル座部から上げられた時、流体は開口部を介して送出可能である。
【0025】
図1に示されるように、噴射器ニードル(噴射器弁体)12は、噴射器本体10の噴射器ノズル8内に延在するその領域が、噴射器ニードル12と噴射器本体10の内面との間で流体が流れることができるように、ボア(穴)より小さい直径を有する。噴射器本体10の第2の領域内では、噴射器ニードル12は、実質的に、噴射器ニードル12と噴射器本体10との間で流体が流れないように、より大きい直径を有する。
【0026】
噴射器本体10の第2の領域では、環状通路16が設けられ、環状通路16は、関連する燃料送出系の蓄圧器から高圧燃料を受け入れるように配置されている燃料供給管路18と連通する。燃料が、当該通路16から噴射器本体10の第1の領域まで流れることができるようにするために、噴射器ニードル12は溝付き領域を備える。溝付き領域は、燃料が、環状通路16から噴射器本体10の噴射器ノズル部分8まで流れることができるようにし、また、噴射器本体10内での噴射器ニードル12の横方向の移動を規制するが軸方向の移動を規制しないように作用する。
【0027】
制御室22は、噴射器本体10の第1の領域から離れた位置において噴射器本体10の第2の領域内に設けられている。制御室22には、ボア11の盲端に隣接する噴射器本体10の内面によって画定されるニードル座部の方へニードル12を偏倚させるために圧縮ばね30(
図1には図示せず、
図2/
図3を参照)が設けられている。
【0028】
図1の噴射器は、弁装置50の上に位置する電磁アクチュエータ装置44をさらに含む。スペーサ構成部品52が、弁装置50の下にかつニードル12の上に設けられている。スペーサ52によって、制御室22と、噴射器の動作を可能にする3つの較正オリフィス(54、56、58)とが、一体化されている。
【0029】
弁装置50は、弁棒部分60を備え、弁棒部分60は当該棒部分の一端において電機子62を担持する。棒部分はボア64内で摺動可能である。弁棒部分は多数の減圧溝を担持し、棒部分の電機子端部に、ボアの端部で座部68と係合可能な封止面66がある。封止面を座部と接触させると、圧力シールをなして接触する。弁ばね46が、電機子の上に位置し、封止面をその電機子の座部と係合させるように作用する。
【0030】
スペーサ構成部品52内には、噴射供給オリフィス58(ノズル進路オリフィスまたはNPOとも言う)と、制御室放出オリフィス54(流出オリフィスまたはSPOとも言う)と、制御室充填オリフィス56(入り口オリフィスまたはINOとも言う)とが設けられている。
【0031】
制御室22は、制御室充填オリフィス56を通して高圧燃料管路18と連通する。
【0032】
図1に示されるように、ソレノイドアクチュエータ44は、軸方向止まりボア44bを含む全体的に円筒状の芯材44aと、芯材44aに巻き付けられ、適切な制御装置に接続される(
図1に示されない)巻線と、芯材44aおよび巻線44bの周りに延在する(
図1に示されない)円筒状ヨークとを備えている。弁装置50に面しているヨークの面と芯材44aの面は、磁極面を画定する。 弁ばね46は、弁装置50に閉鎖力をもたらし、また、弁が閉じられた時に弁座に対する接触圧を維持することに留意されたい。
【0033】
燃料供給管路18は、燃料を、高圧燃料ポンプ(図示せず)から噴射器ノズル8およびばね室22へ供給する。弁装置50はまた、INOおよびSPOオリフィスを介して燃料供給管路18と流体連通する。
【0034】
弁装置50が閉じられた時、ばね室22と低圧燃料戻り管路27との間の流体連通はない。したがって、噴射器ノズル8およびばね室22における燃料圧力は等しくなり、ばね30は、噴射器ニードル12をノズルボアが閉じられる着座位置へ偏倚させる。
【0035】
反対に、弁装置50が開かれた時、低圧燃料戻り管路27と流体連通するばね室22を設置する進路が形成されることで、ばね室22における燃料圧力が低減する。噴射器ノズル8における燃料圧力は、ばね室22における燃料圧力より高く、噴射器ニードル12に加えられる圧力による力は、ばね30の偏倚を打ち負かす(克服する)。噴射器ニードル12は、
図3に示されるように、その着座位置から上がり、ノズルボアを開き、燃料が燃焼室内に噴射されることを可能にする。
【0036】
ソレノイドコモンレール噴射器上で、弁装置50は、燃料漏れを制御する際に重要な役割を果たす。漏れによってエネルギーが損失されることになり、このことは、噴射器1を使用する車両のCO
2(二酸化炭素)の排出に直接的な影響を及ぼす。使用時、燃料噴射器1は、次の2つの形式の漏れを経験することになる。
【0037】
(a)動的漏れ−これらは、噴射中に制御弁装置50の開放から生じる漏れである。
【0038】
(b)静的漏れ−これらは、制御弁装置50が閉じられ、燃料噴射器1が噴射していない時の制御弁部材60と弁ボア64との間の漏れである。
【0039】
制御弁が開かれるよりも閉じられる時の方が多いため、静的漏れはより著しい。静的漏れが起因する要因は、案内すきま、案内長、噴射器および機関(エンジン)組立品のすきまの増加、および、圧力によるすきまの増加を含む。
【0040】
圧力による制御弁装置50内の静的漏れが、燃焼室内へ噴射される燃料のより高い動作圧(例えば2200〜3000バール(220〜300MPa))が継続する傾向を考慮すると、特に関係がある。弁装置内の高圧燃料によって、弁装置50内のさまざまな構成部品に半径方向荷重がかかる可能性があり、これによって当該構成部品をゆがませる可能性がある。これらの構成部品のゆがみによって制御弁装置50内のすきまが大きくなる可能性があり、これによって、静的漏れが大きくなり得る。
【0041】
図2および
図3は、
図1の既知の噴射器内の噴射プロセスを示す。
図1と
図2とで同様の特徴は同様の参照符号で示される。
【0042】
ここで、
図2および
図3を参照して、噴射器の動作を簡単に説明する。
【0043】
図2では、弁装置50は閉じられ、封止面66は座部68と係合する。したがって、制御室22は、コモンレール内の圧力を受ける。高圧燃料はニードル12の最上部に力を及ぼし、その力は、ニードル12の圧力面に作用する燃料の圧力を超える(圧力面70は本図に示される。燃料の圧力は、最大ニードル直径と、ニードル12の座部/先端領域14の直径との間の環状圧力面に作用する場合もある)。したがって、ニードルは閉じられたままであり、それによって、オリフィス15を通る噴射がないようにする。
【0044】
図3において、アクチュエータ44は、励磁されて電機子62を上げることで、弁装置50がその開位置にあるようにし、その開位置において、封止面66はその座部68から上がる。ここで、制御室22内に収容される燃料は、流出制御オリフィス54(SPO)を通って低圧排水管への流路を有し、その結果、燃料は制御室22から流れる。最初に、制御室22内の燃料および噴射器ばね30によってニードル12の最上部に及ぼされる圧力は、圧力面70に及ぼされる圧力を超える。
【0045】
しかしながら、燃料によって圧力面70に及ぼされる圧力が、制御室22における燃料によって及ぼされる力とばね力とを超えるとすぐに、
図3のように、ノズル進路オリフィス58を通ってコモンレールから燃料が流れるため、ニードル12は上がり、オリフィス15を通る燃料の噴射が始まる。
【0046】
噴射を停止するために、電磁アクチュエータ44は無励磁にされ、(
図2に示されない)弁ばね46が弁装置50を閉じる。高圧燃料は供給管路18から制御室充填オリフィス56(INO)を通り、噴射が終わるまで制御室22内の圧力は上昇する(その時点で噴射器は
図2に示される位置に戻っている)。
【0047】
図4に移ると、本発明の実施形態による燃料噴射器100が示されている。図内の同様の特徴は同様の参照符号で示される。
【0048】
図1、
図2、および、
図3のように、噴射器は、ボア(穴)11を画定する噴射器本体10を含む。噴射器ニードル12が、ボア(穴)11内で摺動可能となっている。噴射器本体10内の環状通路16は、蓄圧器容積部(
図4に示されない)から高圧燃料を受け入れるように配置される高圧燃料供給管路18と流体連通する。
【0049】
先端14から離れた噴射器ニードル12の端部102は、ほぼ截頭円錐形となっている。制御室104は、噴射器ニードルの截頭円錐形端部102の表面と、噴射器ニードル12とソレノイドアクチュエータ44との間に位置する電機子部材106とによって、部分的に画定されている。したがって、制御室104は、ニードル12の端部102の上に設けられている。
図4に示されるように、電機子部材106は、噴射器ニードルの截頭円錐形端部102の表面上で電機子座部105と係合している。
【0050】
図4の噴射器ニードル12は、第1の端部110が制御室104内に開く軸方向穿孔108を含む。穿孔108の第2の端部112は、1つまたは複数の横断穿孔114(明確にするためにそのうちの1つのみが
図4に示される)を介して環状通路16と流体連通する。
【0051】
制御室充填オリフィス116(入口オリフィスまたはINOとも言う)が、軸方向穿孔108内に位置する。単一の横断穿孔114がある場合には、オリフィス116は穿孔114に設けても良いことに留意されたい。
【0052】
制御室内の流体の圧力は、アクチュエータ装置44を励磁する/無励磁にすることによって制御できる。ソレノイドアクチュエータ44が励磁されると、電機子部材106が電機子座部105から無励磁にされ、かつ、制御室104を低圧容積部/低圧排水管118と流体連通させるように、電機子部材106は上げられる。アクチュエータ44が励磁される時に電機子部材106と電機子座部105との間で広がるすきまは、
図1、
図2、および、
図3における制御室放出オリフィス54(流出オリフィスまたはSPO)の機能を果たす。
【0053】
電機子部材106は、内面が制御室106を部分的に画定する円筒状部120と、円筒状部の長手方向の軸線に対し実質的に垂直に(また、燃料噴射器の長手方向の軸線124に対し実質的に垂直に)突出する電機子突出部122とを含む。
【0054】
ソレノイド44のボア内の電機子ばね126は、電機子部材106を、アクチュエータ装置44が無励磁にされると電機子座部105と係合するように戻す。ソレノイドのボア(穴)内に位置するさらなる圧縮ばね128は、噴射器ニードル12をその弁座の方へ偏倚させる。
図4の装置において、電機子ばね126および圧縮ばね128は、互いに対して同軸状に配設される。
【0055】
ここで、
図4〜
図7を参照して、本発明の実施形態による燃料噴射器の動作について説明する。
【0056】
図4では、噴射器は閉じられ、噴射器ニードルは、燃料が噴射器本体10における開口部15を流れることができないように、弁座と係合する。燃料の圧力は、実質的に、ニードル12の最上部、および、ニードル12の底部で同じである。ニードルの最上部の表面積は、ニードルの底部より広く、先端14の方への力が生成される。この力は、電機子ばね126および圧縮ばね128によって生成された力と共に作用して、噴射器ニードル12をその弁座上に保持する。
【0057】
図5では、噴射器開放命令が、制御系(図示せず)からソレノイドアクチュエータ44へ送られる。ソレノイドアクチュエータが励磁されると、電機子部材106は、電機子座部105から上がり、それによって、流路140が制御室104と低圧域118との間で開かれる。制御室104内の高圧流体は、低圧域へと流出し始める。供給経路18および通路16内の高圧燃料は、軸方向位穿孔108を通って制御室104内へと引き込まれる。しかしながら、高圧燃料の流れは、制御室充填オリフィス116によって制限される。
【0058】
ソレノイドアクチュエータ44によって電機子部材106に及ぼされる磁力は、電機子ばね126力より大きく、その結果、電機子部材は、噴射器ニードル12上のその座部から上げられる。電機子部材106が上げられた後の、制御室104内の圧力は、ニードルの底部上の圧力より低い。圧縮ばね力128を超える押上げ力が噴射器ニードル上で生成されるため、ニードルはまた上がり始める。
【0059】
図6は、噴射器ニードル12の継続した開放段階、および、噴射の開始を示す。噴射器ニードル12がその弁座から上がると、燃料は、噴射器ニードルの下先端14付近の領域に進入し、開口部15を通過して、燃焼容積部(図示せず)内への噴射142が生じることができる。噴射器ニードルは、電機子部材106上に再び着座するようになるまで、上昇し続けることになる。噴射器ニードルが電機子部材に対して着座すると、制御室内の圧力は再び上昇し始める。制御室104内の圧力が十分なレベルまで上昇すると、ニードルの最上部および底部における燃料圧力は、ニードルばね128および圧力による力が噴射器ニードルを下方へ押し動かし、噴射器ニードル12が電機子部材106から離れるような釣り合い状態に達する。
【0060】
噴射器ニードルが下方へ移動すると、制御室は低圧域に再び曝され、燃料は制御室から低圧排水管の方へ移動する。制御室における圧力が再び低下すると、噴射器ニードルの底部と最上部との間の圧力不平衡は再び、噴射器ニードルを上方へ押し動かす。次いで、噴射器ニードルは「釣り合い状態」に入り、ここで、噴射器ニードルは、電機子部材上に着座される位置と、電機子座部から遠ざかった位置との間で「浮動する」。この「浮動」の振る舞いは、ソレノイドアクチュエータが無励磁にされるまで継続する。
【0061】
図7は、噴射器ニードルの閉鎖を示す。
図7では、ソレノイドアクチュエータ44は、電機子部材106がもはやアクチュエータの方へ磁力で吸引されないように、無励磁にされる。アクチュエータばね部材126はその後、電機子部材106をアクチュエータ座部105と係合させるように作用する。制御室104は、次いで軸方向穿孔/オリフィス108を介した燃料送り込みによる充填を開始する。
【0062】
制御室104が加圧し始めると、ニードル12の最上部と底部との間の圧力差は、噴射器ニードル12およびアクチュエータ部材106がアクチュエータばね部材126および弁ばね128の作用下で、弁座の方へ移動可能となるまで、減少する。噴射器ニードルが閉じると、噴射口15は遮断され、噴射サイクルは終わる。制御室104および環状の嚢状体16内の圧力は、高圧穿孔内の圧力に戻る。
【0063】
図8および
図9は、ニードル12の截頭円錐形の端部102の外郭がどのように変わり得るかを示す。
【0064】
図8では、截頭円錐形の端部は、単一外郭150を有する。
図9は、代替装置を示し、この装置では、噴射器ニードル12の端部102は2つの異なる外郭152、154を含む。噴射器ニードル端部に可変の外郭を付けることで、電機子座部105に対して電機子部材106が上がるのに応じて、制御室104を異なる割合で排出させることができる。
【0065】
図9の例では、最初の「パイロット」噴射命令は、ソレノイドアクチュエータ44に送ることができる。それによって、比較的少ない量だけ、電機子座部105から離れるように電機子部材106を上げることができる。しかしながら、主要噴射命令がアクチュエータ44に送られた場合には、電機子部材はその座部からさらに移動することができる。ある時点で、電機子部材は、ニードル先端の端部102の外郭が変化する点156より高く移動することになる。噴射器ニードルがこの点を通過すると、より大量の燃料が低圧排水管へ流出し得る。このようにして、ソレノイドアクチュエータが十分なレベルまで励磁された場合、比較的多量の燃料が低圧排水管へ流出され得る。さらには、これによって、より多量の燃料を、ノズルオリフィスを介して噴射させることができる。
【0066】
図10は、本発明の代替的な実施形態を示す。この代替的な実施形態では、制御室104のサイズは、電機子装置106の円筒状部120の断面積を増すことによって変えられている。
図10は、1つの装置の断面積がもう1つのものより大きい(A>B)2つの異なる装置(「A」および「B」とラベル表示される)を示す。
【0067】
装置Aでは、制御室104が充填され、電機子部材106が電機子座部105上に着座された時、噴射器ニードル12の最上部の圧力は、装置Bのものより高くなる。さらには、このことは、噴射器ニードルの最上部における燃料の圧力が高くなることによって、噴射器ニードルの開放速度に影響を及ぼすことになる(AはBより遅い)。
【0068】
図11および
図12は、本発明による噴射器10の別の実施形態を示す。特徴が特定の特性を有する場合でも先に説明した実施形態からの参照符号がそのまま示されている。
図11上で見えるように、アクチュエータ装置44は、ノズル8および噴射器出口15とは反対側の端部において噴射器100の頂点に配置される。前記アクチュエータ装置44は、先の実施形態のものと同様の構造を有し、制御室104内の圧力を制御するために、比較的平坦なソレノイドが電機子106と協働する。図示されているように、制御室104は、ニードル12の最上部と、電機子106の円筒状内部容積部とによって画定されている。
【0069】
この最上部に装着された装置は、ノズル8の出口15を通して燃料を噴射するまたは噴射しないために、ソレノイド装置44がニードル12の変位を直接的に制御することを可能にする。このような最上部に装着された装置によって、噴射器本体10内に、ニードル12が軸方向に延在する大型のリザーバ130を備えることが可能になる。前記リザーバ130は10cm
3を超えて保持可能である。
【0070】
動作時、高圧燃料をリザーバ130に完全充填し、燃料噴射設備の構造に対するさらなる柔軟性を可能にする。例えば、当該設備のそれぞれの噴射器10はそれ自体の高圧リザーバ130を備え、当該設備はレールがないタイプのものであってよい。この場合、コモンレールに集中させる代わりに、高圧リザーバが噴射器全体に分散される。
【0071】
上記で説明した実施形態が、例としてのみ示され、本発明を制限することは意図されず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲において画定されることは理解されたい。説明した実施形態が個々にまたは組み合わせて使用可能であることも理解されたい。