【課題を解決するための手段】
【0009】
課題は、少なくとも1つの色中心を有する第1のダイヤモンド基材を含むセンサであって、センサが、第1の圧磁または圧電一次素子をさらに含み、一次素子が、第1のダイヤモンド基材の色中心と相互作用するように配置される、センサを提供することにより解決される。換言すれば、ダイヤモンド基材と圧磁または圧電素子とのハイブリッドデバイスが提供される。ダイヤモンドは、合成ダイヤモンドまたは天然ダイヤモンドでありうる。本発明の文脈における色中心は、ダイヤモンド格子における局在欠陥であり、この欠陥は、1つまたは複数の電子により満たされ、電磁放射線を吸収および放射できる。
本発明は、圧磁または圧電素子の変化がダイヤモンドの色中心の対応する変化を伴うように、圧磁または圧電素子がダイヤモンドの色中心と相互作用できるという事実を利用する。したがって、課題はまた、第1の圧磁または圧電一次素子の変化が、第1のダイヤモンド基材の少なくとも1つの色中心の対応する変化を検出することにより検出され、色中心が第1の一次素子と相互作用する、方法により解決される。
【0010】
本発明の文脈において、「第1の」という用語は、下でより詳細に論じるとおり、本発明のいくつかの実施形態において、第1のダイヤモンド基材または第1の一次素子に加えて、さらなる基材または一次素子がそれぞれ存在するという事実を表現する。「一次素子」という表現は、やはり下でより詳細に論じるとおり、本発明のいくつかの実施形態において、1つまたは複数の一次素子に加えて、1つまたは複数の二次素子もまた存在するという事実を示す。
第1の一次素子が圧磁性である場合、本発明は、圧磁素子または圧磁素子の位置の温度に対する外部からの作用、たとえば力の作用が、圧磁素子の磁区の磁化に影響を及ぼすという事実を利用できる。これはひいては、特に素子の浮遊磁場を介して、色中心、特に色中心の基底状態スピンのエネルギー準位に影響を及ぼしうる。したがって、一次素子が圧磁性である本発明の実施形態において、検出される一次素子の変化は、一次素子の磁気特性の変化である。
【0011】
同様に、一次素子が圧電性である場合、本発明は、圧電素子または圧電素子の位置の温度に対する外部からの作用、たとえば力の作用が、圧電素子における電荷分布に影響を及ぼすという事実を利用できる。これはひいては、特に浮遊電場を介して、色中心、特に色中心の基底スピンのエネルギー準位に影響を及ぼしうる。
したがって、一次素子が圧電素子である本発明の実施形態において、検出される一次素子の変化は、一次素子の電気特性の変化である。
センサが直接的に、一次素子とダイヤモンド基材において提供される色中心との間の相互作用を介して、一次圧磁または圧電素子の磁気または電気特性にそれぞれ影響を及ぼす機械力、温度または他のパラメータを感知できることは、本発明の達成可能な一利点である。本発明の文脈において、機械「力」へのどの言及も、それが分配される単位面積当たりの力である圧力もまた含むことが意図されている。
【0012】
発明の好ましい実施形態
単独でまたは組み合わせて適用できる本発明の好ましい特徴を、従属請求項において論じる。
好ましい第1のダイヤモンド基材は、いくつかの色中心を含む。本発明の文脈内で、「いくつかの」および「複数の」という用語は、「2つ以上の」という意味で互換的に使用される。第1の一次素子は、第1のダイヤモンド基材の1つのみまたはいくつかの色中心と相互作用するように配置できる。必須ではないが好ましくは、それは、第1のダイヤモンド基材のすべての色中心と相互作用するように配置される。第1の一次素子が2つ以上の色中心と相互作用する場合、これは有利には、センサの感度を高めることができる。さらに、色中心の空間分布に対応する空間分解能を達成できる。なぜなら、各色中心は主に、色中心に最も近い一次素子の部分の変化、または複数の一次素子の場合には、一次素子の変化の影響を受けるからである。センサの空間分解能は、典型的には約1nmである色中心の電子波動関数の範囲により制限されると考えられる。換言すれば、一次素子の複数の位置での変化、および/または複数の一次素子の場合には、異なる一次素子での変化を区別できることは、いくつかの色中心を有する本発明の実施形態の達成可能な一利点である。いくつかの一次素子を有するセンサの場合が、さらに下でより詳細に論じられる。
【0013】
本発明の典型的な実施形態において、いくつかの色中心は、規則的に、たとえば1つもしくはいくつかの直線に沿って、または2次元アレイで配置される。典型的な規則的配置において、色中心は、少なくとも1方向に互いに本質的に等距離に置かれる。好ましくは、色中心は、広範な面積にわたって、特に好ましくは、本質的に共通平面内に分布し、この面積の広さにわたった空間分解能を実現する。そのことにより、有利には、表面積にわたって物理的パラメータ、たとえば力(圧力を含む)、温度または電場もしくは磁場の分布を測定する表面センサが得られる。
【0014】
第1の一次素子と色中心との間の相互作用が十分に強力であることを保証するため、色中心は、好ましくは、第1のダイヤモンド基材の表面から、いくつかの色中心の場合には、好ましくは第1のダイヤモンド基材の同一表面から20nm(ナノメートル)の距離に位置する。さらに、いくつかの色中心の場合には、これらは好ましくは、第1のダイヤモンド基材内の共通平面に配置され、この平面は好ましくは、第1のダイヤモンド基材の表面と平行である。表面は好ましくは、第1の一次基材へと向けられたまたはそれと隣接した表面である。
好ましくは、いくつかの色中心の場合には、色中心は、優越方位を有する。この文脈において、「優越方位」は、窒素と中心の空孔とをつなぐベクトルとして定義される各色中心の方位が平行であることを意味する。
【0015】
本発明による好ましいセンサは、いくつかのダイヤモンド基材を含み、各基材は、少なくとも1つの色中心を含む。本発明のこの実施形態において、一次素子はまた、センサのさらなる基材の1つまたはいくつかの、好ましくはすべての色中心と相互作用しうる。さらなる基材がいくつかの色中心を含む場合、好ましくはさらなる基材のそれぞれにおけるこれらの色中心は、第1の基材における好ましい配置として上述のとおり配置される。
本発明による好ましいダイヤモンドは、合成ダイヤモンドである。本発明に好適な合成ダイヤモンドは、たとえば、当技術分野においてよく知られているとおり、化学蒸着(CVD)、爆轟またはより大きな結晶のミリングにより製造できる。合成ダイヤモンドは、
12Cについて濃縮し、色中心スピンのより長いコヒーレンス時間を可能にしうる。さらに、合成ダイヤモンド材料は、費用をかけずに平面形状に合成でき、これは、たとえば化学蒸着(CVD)による他の材料の表面上へのダイヤモンドの堆積を含む。
【0016】
本発明が、同位炭素の天然存在度を有するダイヤモンド基材を使用して実施できる一方で、好ましいダイヤモンド基材は、99.9%を超える、より一層好ましくは99.99%を超える
12C同位体濃度で濃縮される。マイクロ波プラズマ補助化学蒸着による、99.99%を超える
12C同位体濃縮を伴う直径30mmまでの合成ダイヤモンド基材を得るのに好適な方法が、Junichi Isoya et al., "Chemical Vapor Deposition of 12C Isotopically Enriched Polycrystalline Diamond", Jpn. J. Appl. Phys. 2012, vol. 51, pp. 090104に記載されている。この刊行物の1〜2ページにわたる「実験手順」セクションは、参照により本開示に組み込まれる。
好ましいダイヤモンド基材はナノダイヤモンドであり、すなわち、基材は少なくとも1空間方向で1000nmより小さい。好ましいダイヤモンド基材は、2空間次元、より一層好ましくは3空間次元すべてで1000nmより小さい。特に好ましいナノダイヤモンド基材は、1空間次元、より好ましくは2空間次元、より一層好ましくは3空間次元すべてで400nmより小さい。より一層好ましいナノダイヤモンド基材は、1空間次元、より好ましくは2空間次元、より一層好ましくは3空間次元すべてで100nmより小さい。本発明のこの実施形態の達成可能な利点には、センサのサイズを低減でき、ナノスケール空間分解能を達成できることが含まれる。
【0017】
好ましいセンサは、ダイヤモンド基材の色中心と相互作用するように配置される、1つだけではないいくつかの圧磁または圧電一次素子を含みうる。それぞれのさらなる一次素子は、必要な変更を加えて、本明細書において第1の一次素子に関して有利と記載された特性および配置を有しうる。一実施形態において、いくつかの圧磁または圧電一次素子は、センサの同じ、典型的には唯一の(すなわち第1の)だが、必ずしも唯一のではないダイヤモンド基材の色中心と相互作用するように配置される。代わりに、いくつかの基材の場合には、2つ以上の、好ましくはすべてのいくつかの基材がそれぞれ、1つの、または本発明のいくつかの実施形態においてはいくつかの、それぞれの基材の色中心と相互作用するように配置される一次圧磁または圧電素子とともに提供されうる。
本発明の典型的な実施形態において、いくつかの一次素子は、規則的に、たとえば1つもしくはいくつかの直線に沿って、または2次元アレイで配置される。典型的な規則的配置において、一次素子は、少なくとも1方向に互いに本質的に等距離に置かれる。好ましくは、一次素子は、広範な面積にわたって、特に好ましくは、本質的に共通平面内に分布し、この面積の広さにわたった空間分解能を実現する。そのことにより、有利には、表面積にわたって物理的パラメータ、たとえば力(圧力を含む)、温度または電場もしくは磁場の分布を測定する表面センサが得られる。
【0018】
好ましい色中心は、NV中心とも呼ばれる窒素空孔中心である。NV中心において、窒素原子は炭素原子を置換し、ダイヤモンドの結晶格子に空孔をもたらす。他の色中心、たとえば、2つの隣接する炭素原子を欠き、1つのケイ素原子が一方または他方の空孔を占める、ケイ素空孔中心も好適である。好ましくは、色中心において検出される変化は、色中心の電子スピンの変化である。好ましくは、色中心の電子スピンの基底準位のエネルギーの変化が測定される。好ましい方法において、この目的のため、電子スピンは、光ポンピングにより偏極される。好ましくは、検出される色中心の変化は、たとえばスピンの基底状態における光検波磁気共鳴(ODMR)法による、色中心の蛍光の変化である。
【0019】
本発明による特に好ましい方法において、マイクロ波場が色中心に印加される。そのことにより、好適な色中心の電子スピンをマイクロ波場でコヒーレントに操作できることを、有利には利用できる。好ましくは、スピンは、マイクロ波場により、2つの基底スピン副準位のコヒーレントな重畳状態へと準備される。結果として、基底スピン副準位が動的な相対位相を獲得するということを達成可能であり、この位相は、たとえば、さらなるマイクロ波場とそれに続く色中心スピンの光学的蛍光を介して測定できる。代わりに、色中心スピンのコヒーレント操作を、低温、NV中心の場合には好ましくは10K未満での光学的ラマン場により達成でき、これは、光学的励起状態を介して基底電子スピン状態を結合する。好ましくは、色中心基底スピン状態の読み出しは、スピン依存性蛍光測定により実施される。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、圧磁または圧電一次素子は、基材の色中心と磁気的または電気的に相互作用するように配置される。換言すれば、一次素子により生成される磁場もしくは電場またはかかる電場もしくは磁場の変化が、検出可能な形で色中心に影響を及ぼす。この目的のため、好ましくは、圧磁または圧電一次素子は、それが相互作用する色中心を含有するダイヤモンド基材と直接接触する。色中心は、好ましくは、強力な相互作用を保証するために、一次圧磁または圧電素子から20nmを超えて離れてはいない。
【0021】
一次素子と色中心との間の相互作用を促進するために、一次素子は、好ましくは、ダイヤモンド基材と直接接触する。本発明の代替的一実施形態において、一次素子は、一次素子とダイヤモンド基材との間の電場または磁場に透過性の材料を介して、間接的に接触しうる。
本発明のいくつかの実施形態において、一次素子、またはいくつかの一次素子を有するセンサの場合には、これらのいくつかの一次素子の1つもしくは複数は、固体フェライト材料を含むか、好ましくはそれからなる圧磁素子である。好ましい固体フェライトは、Tb
0.27 Dy
0.73 Fe
2(テルフェノールD)である。他の圧磁性材料もまた好適である。好ましい圧磁性材料は、300Kを超える、より好ましくは500Kを超える、より一層好ましくは650Kを超えるキュリー温度を有する。センサが非常に高温で動作できることは、本発明のこの実施形態の達成可能な利点である。有利には、窒素空孔中心は、高温でも必要な検知プロトコルを可能にするのに十分な、良好な特性を有する。センサの動作温度は、通常は、キュリー温度により制限される。
【0022】
好ましくは、バイアス磁場が圧磁一次素子に印加され、センサを最適な作動体制に調整する。好ましくは、バイアス磁場の磁束密度は1Tより小さく、より好ましくは0.1Tより小さい。磁場は、好ましくは、NV中心の軸に沿って整列させられる。好ましくは、磁場は、永久磁石または冷却に依存しない電磁石により提供される。
本発明のいくつかの実施形態において、一次素子、またはいくつかの一次素子を有するセンサの場合には、これらのいくつかの一次素子の1つもしくは複数は、合成セラミック材料を含むか、好ましくはそれからなる圧電素子である。好ましい合成セラミックは、Pb[Zr
xTi
1-x]O
3(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、および圧電セラミック、たとえばチタン酸ビスマスBi
4Ti
3O
12の群からの材料である。他の圧電性材料もまた本発明に好適である。好ましくは、バイアス電場が圧電一次素子に印加され、センサを最適な作動体制に調整する。
【0023】
センサがいくつかの一次素子を含む場合には、それは、圧磁および圧電一次素子の両方を含みうるのであり、かかるセンサにおいて、好ましくは、バイアス磁場およびバイアス電場の両方が印加される。代わりに、すべての素子が、同じ圧磁性または圧電性材料を含み、好ましくはそれからなる。
好ましいセンサにおいて、第1の一次素子の少なくとも一部、好ましくは全部が、第1のダイヤモンド基材の表面の少なくとも一部、好ましくは表面全体にわたって層として延在する。「層」という用語は、ダイヤモンド基材へと向けられる第1の一次素子の表面の最大断面積が、この表面と垂直な第1の一次素子の延在よりも大きいことを示すことが意図されている。同様に、第1のダイヤモンド基材は、好ましくは、層の形態を有する。いくつかの一次圧磁または圧電素子および/またはいくつかのダイヤモンド基材の場合には、各一次素子の好ましくは少なくとも一部、好ましくは全部が、それが相互作用する各ダイヤモンド基材の少なくとも一部、好ましくは全部にわたって層として延在する。
【0024】
第1の圧磁または圧電一次素子に加えて好ましいセンサには、第1の一次素子と相互作用するように配置される第1の二次素子が含まれる。やはり、「第1の」は、下でより詳細に論じるとおり、本発明のいくつかの実施形態において、第1の二次素子に加えて、さらなる二次素子が存在することを意味する。好ましくは、第1の一次素子および第1の二次素子は、以下では歪みとも呼ばれる機械力が一次素子と二次素子との間で伝達されうるという意味で、機械的に相互作用する。より好ましくは、二次素子により一次素子上に及ぼされる力またはかかる力の変化は、色中心に対する一次素子の作用を検出可能な形で変化させるように一次素子に影響を及ぼす。
二次素子と一次素子との間の機械的相互作用を容易にするために、二次素子は、好ましくは、一次素子と直接接触する。本発明の代替的一実施形態において、素子は、二次素子と一次素子との間の力の伝達を媒介する材料を介して、間接的に接触しうる。
【0025】
センサは、それぞれが一次素子と相互作用するように配置されるいくつかの二次素子を含みうる。それぞれのさらなる二次素子は、必要な変更を加えて、本明細書において第1の二次素子に関して有利と記載された特性および配置を有しうる。一実施形態において、いくつかの二次素子は、同じ、典型的には唯一の(すなわち第1の)だが、必ずしも唯一のではない一次素子と相互作用するように配置される。代わりに、いくつかの一次素子の場合には、2つ以上の、好ましくはすべてのいくつかの一次素子がそれぞれ、1つの、または本発明のいくつかの実施形態においてはいくつかの、それぞれの一次素子と相互作用するように配置される二次素子とともに提供されうる。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、二次素子は、第1の一次素子上にアイランドを形成する。いくつかの一次素子および/またはいくつかの二次素子の場合には、好ましくは各二次素子は、唯一の(すなわち第1の)一次素子においてもしくはその上に、または、いくつかの一次素子の場合には、いくつかの一次素子のうちの1つにおいてもしくはその上に、アイランドを形成する。「アイランド」という用語は、二次素子が、一次素子の凹部または開いたもしくは閉じた空隙内に提供され、凹部または空隙を部分的に、より好ましくは完全に満たすことを意味する。この配置は、二次素子と一次素子との間の機械的相互作用を容易にする。
本発明の典型的な実施形態において、いくつかの二次素子は、規則的に、たとえば1つもしくはいくつかの直線に沿って、または2次元アレイで配置される。典型的な規則的配置において、二次素子は、少なくとも1方向に互いに本質的に等距離に置かれる。好ましくは、二次素子は、広範な面積にわたって、特に好ましくは、本質的に共通平面内に分布し、この面積の広さにわたった空間分解能を実現する。そのことにより、有利には、表面積にわたって物理的パラメータ、たとえば温度または電場の分布を測定する表面センサが得られる。
【0027】
好ましい二次素子は、圧電性である。本発明のこの実施形態において、二次素子が電場または電場の変化を感知でき、電場または電場の変化に反応してその形状を変化させることを利用できる。一次素子との機械的相互作用を通じて、それは一次素子の変化、たとえば一次素子磁気または電気特性の変化を誘導できる。これらはひいては、上で論じたとおりダイヤモンド基材における色中心に検出可能な形で影響を及ぼしうる。圧電二次素子は、合成セラミック材料を含み、好ましくはそれからなる。好ましい合成セラミックは、Pb[Zr
xTi
1-x]O
3(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、および圧電セラミック、たとえばチタン酸ビスマスBi
4Ti
3O
12の群からの材料である。他の圧電性材料もまた本発明に好適である。好ましくは、バイアス電場が圧電一次素子に印加され、センサを最適な作動体制に調整する。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態において、二次素子は、第1の素子との相互作用を通じた温度または温度変化が第1の素子の変化を誘導しうるという意味で熱感受性である。好ましくは熱感受性素子は、一次素子の位置での温度変化に反応してその形状を変化させる。これは、機械的相互作用を通じて、一次素子の変化を誘導しうる。好ましい熱感受性アイランドは、大きな熱膨張係数および/またはヤング弾性率を有する材料から構成される。好適な材料には、金属および合金、たとえばアルミニウム、銅および鋼が含まれる。他の熱感受性材料もまた本発明に好適である。本発明の好ましい一実施形態において、熱膨張係数とヤング弾性率とのの積(熱的に誘導される力を決定する)は、1.5MPa K
-1より大きく、より好ましくは、2MPa K
-1より大きく、より一層好ましくは、2.5MPa K
-1より大きい。
【0029】
センサがいくつかの二次素子を含む場合には、それは、圧電および熱感受性二次素子の両方を含みうるのであり、かかるセンサにおいて、好ましくは、バイアス電場が印加される。代わりに、すべての素子が、好ましくは圧電性または熱感受性である同じ材料を含み、好ましくはそれからなる。
本発明による好ましいセンサは、10μm(マイクロメートル)未満、好ましくは1μm未満、より好ましくは100nm未満、たとえば10〜100nmの間の直径を有する。より好ましくは、直径は、30nm未満、たとえば10nmである。直径は、ダイヤモンド基材と一次素子との間の界面と平行な平面において測定される。本発明のこの実施形態では、NV中心スピンが、小さなスケールで、特にナノダイヤモンド、すなわちダイヤモンド基材の直径が1μm未満であるダイヤモンドの場合には、良好なスピンコヒーレンス特性を有することを利用でき、これは、それらがきわめて小さな電場および磁場を感知することを可能にする。有利には、本発明のこの実施形態では、圧力および他の物理的パラメータを、ナノスケール空間分解能で測定できる。好ましいセンサは、ナノスケールで、たとえば生細胞の内部で動作できる。さらに、一体型感知デバイスを創出できる。
【0030】
センサが、空間分解感知のためのいくつかの色中心を含む場合には、センサ面積は、好ましくは、0.1mm
2(平方ミリメートル)より大きく、より好ましくは、1mm
2より大きく、たとえば1mm
2〜100mm
2の間である。センサ面積は、センサの色中心が分布する面積である。
本発明による好ましい一実施形態において、センサは、非毒性材料、たとえば具体的な一例として、ポリエチレンイミン(PEI)でのポリマーでコーティングされる。有利には、コーティングは、インビボでの適用において、ダイヤモンドおよびピエゾ素子層のより高い生体適合性をもたらす。
本発明による好ましい方法において、色中心のスピンのエネルギー、より好ましくは色中心の基底スピン副準位が測定される。好ましい色中心は、NV中心である。好ましくは、たとえば光検波磁気共鳴(ODMR)測定で、好ましくは強力レーザにより、色中心のスピン依存性蛍光が測定される。
【0031】
より好ましくは、スピンは、光ポンピングにより、好ましくはレーザで偏極される。スピンは、好ましくは、マイクロ波場により達成されるパルス感知スキームで測定される。好ましくは、パルス感知スキームは、NV中心の電子の基底スピン副準位ms=−1および+1が使用される。温度不安定性および電子ノイズのNVスピンに対する直接効果が、これら2つのスピン副準位のエネルギーを等しくシフトし、それゆえ脱位相を誘導しないことは、この方法の達成可能な利点である。これは、かかるダイヤモンドスピンセンサの長いコヒーレンス時間を伴う。
本発明による好ましい方法は、12Kを超える温度で実施される。より好ましくは、この方法は、77Kを超える、より好ましくは200Kを超える、より一層好ましくは273Kを超える、最も好ましくは300Kを超える温度で実施される。本発明のこの実施形態において、ダイヤモンド基材の電子スピンを偏極するために極低温が必要とされないことを利用できる。
【0032】
本発明は、ダイヤモンドにおける色中心およびピエゾ活性層に基づくハイブリッドセンサの原理を提案する。本発明で、室温条件下および大気圧または高圧下を含む様々な周囲条件下での高感度を達成できる。さらに、本発明で、ナノスケール空間分解能を達成可能である。また、悪条件下でも安定的に動作する高度に一体化されたデバイスが得られる。
特に、本発明は、弱い圧力および力を測定する高度に感度の高いデバイスを提供する。精度は、kPa Hz
-1/2以下(圧力測定について)、ピコニュートン(fN)Hz
-1/2以下(力測定について)、(V cm
-1)Hz
-1/2以下(電場測定について)、およびmK Hz
-1/2以下(温度測定について)を超えうる。ナノスケールサイズを有する本発明によるセンサは、10nmよりも良好な空間分解能を提示できる。さらに、基本圧力センサユニットの一体化は、表面圧収集に適用可能なデバイスに、たとえば双方向入力制御デバイスおよび電子皮膚のための、顕著に増強された感度および反応時間を提供できる。
本発明を、図面を用いてさらに詳細に示す。