(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
床面に敷設された左右のレール上に載置された輪軸の車輪を係止する係止部と自走用の駆動モータとを備え地下ピット内を同期して往復移動する左右一対の搬送台車によって、前記輪軸を前記レールに沿って移動させる輪軸搬送装置であって、
前記左右一対の搬送台車には、レール方向に光伝送する移動側光伝送装置をそれぞれ備え、前記地下ピット内には、前記移動側光伝送装置との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置をそれぞれ備え、前記移動側光伝送装置と前記固定側光伝送装置とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて前記駆動モータを同期制御することを特徴とする輪軸搬送装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の台車検査ラインでは、輪軸を台車から分解する分解工程から、分解した輪軸を検査する検査工程に搬送するため、床面に敷設されたレールに沿って輪軸を搬送する輪軸搬送装置が設置されている。従来の輪軸搬送装置は、輪軸の重量が約1トン程度あって、作業者が手押しで搬送することは作業環境上好ましくないので、床面に敷設された左右のレール上に載置された輪軸を係止する係止爪を備えた左右一対の搬送台車によって、輪軸を係止しながらレールに沿って移動させる装置が知られている。また、作業者の安全確保のため、床面をカバーするとともに、各搬送台車は、自走用の駆動モータをそれぞれ備え、レールに沿って地下ピット内を同期して往復移動する。また、各搬送台車には、駆動モータのエンコーダ情報や位置情報等を地上側制御装置と通信するために、ケーブルベア(登録商標)やケーブルリール又はトロリー設備等が付設されていた。したがって、従来の輪軸搬送装置では、ケーブルベアやケーブルリール又はトロリー設備等を収容する相当のスペースが地下ピット内に必要となり、各搬送台車が往復移動する地下ピットを必要以上に大きくせざるを得なく、地下ピットの省スペース化が課題であった。
【0003】
上記課題を解決する発明として、例えば、搬送装置の衝突防止制御装置の発明が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された搬送装置の衝突防止制御装置100は、
図11に示すように、同一の直線軌道101上を往復動する自機102及び他機103の搬送装置にそれぞれ搭載され、自機102と他機103の離隔距離Xを非接触かつリアルタイムに直接検出する距離センサ104(レーザ距離計)と、自機102と他機103の目的位置(Y1、Y2)、移動方向、移動距離を排他的かつリアルタイムに相互通信する相互通信装置105(パラレル光伝送装置)と、自機102と他機103の離隔距離X等から、自機102と他機103の衝突を防止するように自機102と他機103を制御する走行制御装置106とを備えている。
【0004】
上記搬送装置の衝突防止制御装置100によれば、自機102及び他機103の搬送装置には、相互通信装置105(パラレル光伝送装置)を備えているために、ケーブルベアやケーブルリール又はトロリー設備等を付設する必要がなく、搬送装置を地下ピット内で往復動させる場合でも、地下ピットを省スペース化することは可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記搬送装置の衝突防止制御装置100では、同一の直線軌道101上を往復動する自機102と他機103とにそれぞれ装着した距離センサ104(レーザ距離計)によって、両者の離隔距離X等を算出し、その離隔距離X等に基づいて自機102と他機103とを停止させる目的位置(Y1、Y2)を算出する方法であるので、左右のレールに沿って左右同期して往復移動する左右一対の搬送台車を、上記方法によって制御することは困難であった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、床面に敷設された左右のレールに沿って輪軸を搬送する左右一対の搬送台車が往復移動する地下ピットの省スペース化が可能であり、当該搬送台車を左右同期して移動できる輪軸搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る輪軸搬送装置は、以下の構成を備えている。
(1)床面に敷設された左右のレール上に載置された輪軸の車輪を係止する係止部と自走用の駆動モータとを備え地下ピット内を同期して往復移動する左右一対の搬送台車によって、前記輪軸を前記レールに沿って移動させる輪軸搬送装置であって、
前記左右一対の搬送台車には、レール方向に光伝送する移動側光伝送装置をそれぞれ備え、前記地下ピット内には、前記移動側光伝送装置との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置をそれぞれ備え、前記移動側光伝送装置と前記固定側光伝送装置とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて前記駆動モータを同期制御することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、左右一対の搬送台車には、レール方向に光伝送する移動側光伝送装置をそれぞれ備え、地下ピット内には、移動側光伝送装置との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置をそれぞれ備え、移動側光伝送装置と固定側光伝送装置とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータを同期制御するので、搬送台車にケーブルベアやケーブルリール又はトロリー設備等を付設することを不要とし、地下ピットの大きさを縮小させることができる。また、移動側光伝送装置と固定側光伝送装置とが互いにレール方向に光伝送するので、地下ピット内の狭い空間を利用して駆動モータを同期制御する入出力情報を走行しながら常に交信することができる。また、移動側光伝送装置と固定側光伝送装置とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータを同期制御するので、左右一対の搬送台車を左右同期して往復移動させることができる。
【0010】
よって、本発明によれば、床面に敷設された左右のレールに沿って輪軸を搬送する左右一対の搬送台車が往復移動する地下ピットの省スペース化が可能であり、当該搬送台車を左右同期して移動できる輪軸搬送装置を提供することができる。
【0011】
(2)(1)に記載された輪軸搬送装置において、
前記左右一対の搬送台車は、前記輪軸を上流側の投入位置から受渡し位置まで搬送する左右一対の上流側搬送台車と、前記輪軸を前記受渡し位置から下流側の取出し位置まで搬送する左右一対の下流側搬送台車とでそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、左右一対の搬送台車は、輪軸を上流側の投入位置から受渡し位置まで搬送する左右一対の上流側搬送台車と、輪軸を受渡し位置から下流側の取出し位置まで搬送する左右一対の下流側搬送台車とでそれぞれ構成されているので、搬送台車の移動距離を上流側と下流側とで分割することができ、移動時間の短縮を図ることができる。また、下流側における輪軸の取出しタイミングを待たなくても、上流側から連続的に輪軸を搬送してレール上に保管することができる。例えば、1つの台車から分解される2つの輪軸を連続的に搬送して受渡し位置と取出し位置との間に設けた待機位置に保管し、下流側の取出しタイミングに応じて供給することができる。そのため、台車の分解工程や輪軸の検査工程における作業効率を大幅に向上させることができる。
【0013】
(3)(2)に記載された輪軸搬送装置において、
左右それぞれの前記搬送台車における前記上流側搬送台車に備える移動側光伝送装置の光軸と前記下流側搬送台車に備える移動側光伝送装置の光軸とが、前記レール方向に対して互いに平行に離間して配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、左右それぞれの搬送台車における上流側搬送台車に備える移動側光伝送装置の光軸と下流側搬送台車に備える移動側光伝送装置の光軸とが、レール方向に対して互いに平行に離間して配置されているので、上流側搬送台車の移動範囲と下流側搬送台車の移動範囲とをレール方向でラップさせることができ、ラップさせた場合においても、上流側搬送台車と下流側搬送台車とが、互いに衝突するのを防止しながら、左右同期して移動させることができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された輪軸搬送装置において、
前記搬送台車にアンテナを装着し、前記アンテナと通信可能に形成され前記搬送台車のレール方向の位置情報を予め記憶させたRFタグを前記搬送台車の移動範囲に配置したことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、搬送台車にアンテナを装着し、アンテナと通信可能に形成され搬送台車のレール方向の位置情報を予め記憶させたRFタグを搬送台車の移動範囲に配置したので、駆動モータのエンコーダ情報(エンコーダのパルス値)とRFタグに予め記憶させた搬送台車のレール方向の位置情報とを照合することによって、搬送台車のレール方向における現在位置を同定させ、その位置情報を搬送台車の制御部に保存させることができる。そのため、突然の停電が生じた場合でも、搬送台車の制御部に保存された位置情報とRFタグの位置情報とを比較することによって、搬送台車の運転を迅速に再開させることができる。その結果、重量物である輪軸を作業者の手作業で搬送するような作業環境上好ましくない行為を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、床面に敷設された左右のレールに沿って輪軸を搬送する左右一対の搬送台車が往復移動する地下ピットの省スペース化が可能であり、当該搬送台車を左右同期して移動できる輪軸搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る輪軸搬送装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る輪軸搬送装置の各構成を説明した上で、本輪軸搬送装置を構成する上流側搬送台車及び下流側搬送台車の動作方法を説明する。
【0020】
<本輪軸搬送装置の構成>
まず、本実施形態に係る輪軸搬送装置の各構成について、
図1〜
図8を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る輪軸搬送装置の概略平面図を示す。
図2に、
図1に示す輪軸搬送装置の概略側面図を示す。
図3に、
図1に示すA−A断面図を示す。
図4に、
図3に示すD矢視図を示す。
図5に、
図2に示すB部詳細側面図を示す。
図6に、
図2に示すC部詳細側面図を示す。
図7に、
図6に示す輪軸固定装置の詳細部分側面図を示す。
図8に、
図1に示す搬送台車の制御ブロック図を示す。
【0021】
(装置の全体構成)
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る輪軸搬送装置10は、床面FLに敷設された左右のレール1上に載置された輪軸Wの車輪Sを係止する係止部2と自走用の駆動モータ3とを備え地下ピットP内を同期して往復移動する左右一対の搬送台車4によって、輪軸Wをレール1に沿って搬送方向F2へ移動させる装置である。また、本輪軸搬送装置10は、輪軸Wを台車から分解する分解工程と、分解した輪軸Wを検査する検査工程との間で、左右のレール1(1R、1L)に沿って長尺状に配置されている。
【0022】
搬送台車4は、左右一対の上流側搬送台車41R、41Lと、左右一対の下流側搬送台車42R、42Lとで構成されている。矢印f1の方向へ往復動する上流側搬送台車41R、41Lは、搬送方向F2の後端部に装着された係止部2(21R、21L)によって輪軸Wを係止して上流側の投入位置T1から中間の受渡し位置T2まで搬送する。また、矢印f2の方向へ往復動する下流側搬送台車42R、42Lは、搬送方向F2の前端部に装着された係止部2(22R、22L)によって輪軸Wを係止して受渡し位置T2から下流側の取出し位置T3まで搬送する。なお、取出し位置T3に輪軸Wが存在するときには、下流側搬送台車42R、42Lは、途中の第1待機位置T4又は第2待機位置T5に輪軸Wを仮置きすることもできる。上流側搬送台車41R、41Lを自走させる駆動モータ3(31R、31L)は、搬送方向F2の前端部に装着され、下流側搬送台車42R、42Lを自走させる駆動モータ3(32R、32L)は、搬送方向F2の後端部に装着されている。
【0023】
投入位置T1には、矢印F1の方向から搬送された輪軸Wを載置して矢印Q1の方向へ90度回転する投入用回転盤81が設置されている。また、取出し位置T3には、矢印F3の方向に輪軸Wを検査工程へ搬送するため、輪軸Wを載置して矢印Q2の方向へ90度回転する取出し用回転盤82が設置されている。投入用回転盤81には、上流側搬送台車41R、41Lの後端部に装着された係止部2(21R、21L)が進入できるように形成され、取出し用回転盤82には、下流側搬送台車42R、42Lの前端部に装着された係止部2(22R、22L)が進入できるように形成されている。
【0024】
また、左右一対の搬送台車4(上流側搬送台車41R、41L、下流側搬送台車42R、42L)には、搬送方向F2であるレール方向に光伝送する移動側光伝送装置5(51R、51L、52R、52L)をそれぞれ備え、地下ピットP内の本体装置17には、移動側光伝送装置5との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置6(61R、61L、62R、62L)をそれぞれ備え、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータ3を同期制御する。すなわち、左右一対の上流側搬送台車41R、41Lの間で、両駆動モータ3(31R、31L)同士を同期制御し、また、左右一対の下流側搬送台車42R、42Lの間で、両駆動モータ3(32R、32L)同士を同期制御する。移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6との間では、赤外線による双方向の光空間伝送の通信が行われる。
【0025】
また、左右それぞれの搬送台車4における上流側搬送台車41R、41Lに備える移動側光伝送装置51R、51Lの光軸KJ1と下流側搬送台車42R、42Lに備える移動側光伝送装置52R、52Lの光軸KJ2とが、レール方向に対して互いに平行に離間して配置されている。すなわち、上流側搬送台車41R、41Lに備える移動側光伝送装置51R、51Lと固定側光伝送装置6(61R、61L)との間で光伝送する光軸KJ1と、下流側搬送台車42R、42Lに備える移動側光伝送装置52R、52Lと固定側光伝送装置6(62R、62L)との間で光伝送する光軸KJ2とが、それぞれ交差しないように、レール方向に対して互いに平行に離間して配置されている。また、各光軸KJ1、KJ2は、途中で遮光されないように、地下ピットP内の下方空間を走行している。
【0026】
(本体装置の構造)
図2、
図3に示すように、本輪軸搬送装置10の本体装置17は、地下ピットP内に配置され、それぞれレール1(1R、1L)方向に延設された右支持フレーム172と、中央支持フレーム173と、左支持フレーム174と、それぞれレール1(1R、1L)方向と直交する方向に延設され、右支持フレーム172と中央支持フレーム173と左支持フレーム174とを下端で連結する複数の連結フレーム171と、を備えている。連結フレーム171は、地下ピットPの床面に固定されている。
【0027】
右支持フレーム172は、
図3に示す右側のレール1(1R)と右側の搬送台車4(41R、42R)を案内する案内レール13を支持するように形成されている。中央支持フレーム173は、
図3に示す右側の搬送台車4(41R、42R)を案内する案内レール14及び左側の搬送台車4(41L、42L)を案内する案内レール15を支持するように形成されている。左支持フレーム174は、
図3に示す左側のレール1(1L)と左側の搬送台車4(41L、42L)を案内する案内レール16を支持するように形成されている。
【0028】
また、右支持フレーム172、中央支持フレーム173、左支持フレーム174の上端には、床面FLと同一面状に形成された床部材18が固定されている。床部材18には、左右のレール1(1R、1L)に当接する輪軸Wの車輪Sの鍔部Sbが進入できる逃し溝181、182が形成されている。右支持フレーム172の左側面には、右側の搬送台車4(41R、42R)に隣接して長尺状の支持ブラケット175が水平状に固定されている。また、左支持フレーム174の右側面には、左側の搬送台車4(41L、42L)に隣接して長尺状の支持ブラケット176が水平状に固定されている。各支持ブラケット175、176上面には、搬送台車4の移動範囲にわたって駆動チェーン34が水平状に固定されている。
【0029】
また、
図3、
図4に示すように、各支持ブラケット175、176の側面には、RFタグ72が、搬送台車4の停止位置に対応して複数個装着されている。具体的には、投入位置T1に対応する投入用タグ721と、原位置T0に対応する原位置用タグ722と、受渡し位置T2に対応する受渡し用タグ723と、第1待機位置T4に対応する第1待機用タグ724と、第2待機位置T5に対応する第2待機用タグ725と、取出し位置T3に対応する取出し用タグ726とが、各支持ブラケット175、176にそれぞれ装着されている。なお、投入位置T1、原位置T0、受渡し位置T2、取出し位置T3、第1待機位置T4、第2待機位置T5には、それぞれ輪軸Wを検出する検出器(図示しない)が配置されている。
【0030】
(搬送台車の構造)
図3、
図5、
図6に示すように、搬送台車4には、本体フレーム40と駆動モータ3と係止部2と移動側光伝送装置5とアンテナ71とを備えている。本体フレーム40は、略矩形状断面でレール方向に沿って長尺状に形成されている。本体フレーム40の側面には、各案内レール13、14、15、16の上下面と当接する上下ガイドローラ42、42と、各案内レール13、14、15、16の側面と当接する水平ガイドローラ43とが回動可能に支持されている。搬送台車4は、本体フレーム40が上下ガイドローラ42と水平ガイドローラ43とを介して各案内レール13、14、15、16に支持され、搬送方向F2(
図1を参照)に水平移動することができる。移動側光伝送装置5は、本体フレーム40の下面に固定され、連結フレーム171の上面に固定された固定側光伝送装置6との間で光伝送する光軸KJ2(KJ1)が、レール方向に沿って略水平状となるように配置されている。
【0031】
また、駆動モータ3には、本体装置17の支持ブラケット175、176に固定された駆動チェーン34と係合するスプロケット33が減速機を介して装着されている。駆動モータ3は、サーボモータであって、回転数等を演算し、出力するエンコーダ装置を備えている。また、駆動モータ3の近傍で本体フレーム40の側面には、アンテナ71が各1つ装着されている。各アンテナ71は、支持ブラケット175、176に装着されたRFタグ72と非接触の通信を行い、各搬送台車4(41R、41L、42R、42L)のレール方向の位置情報が予め記憶されたRFタグ72より、その位置情報を受信する。アンテナ71とRFタグ72との間では、マイクロ波(電波)によって交信する。
【0032】
また、
図6に示すように、係止部2は、車輪Sの鍔部Sbに前後から当接する係止爪(ローラ体)212を備え、輪軸Wを搬送するときには、係止爪(ローラ体)212が車輪Sの鍔部Sb外周に当接して輪軸Wを係合(規制)しながら搬送する。輪軸Wを所定位置に搬送した後、係止爪(ローラ体)212を下方に移動させて、輪軸Wとの係合状態を解除する。
【0033】
例えば、係止部2には、一端211aが本体フレーム40に軸支され矢印r1の方向に回動するL字状爪部211と、L字状爪部211の他端211bに軸支され車輪Sの鍔部Sbに当接するローラ体212と、上端213bがL字状爪部211の湾曲部に軸支され下端213aが本体フレーム40の水平案内面40aに案内されて矢印r2の方向へ移動可能に形成された支持片213と、支持片213に連結されたワイヤ214と、ワイヤ214を矢印r3の方向へ巻き取る巻取り装置215と、支持片213を巻取り装置215の巻取り方向に対して反対方向へ付勢するばね部材216とを、車輪Sの軸心を通る垂線Scに対して対称となる位置に備えている。
【0034】
そして、搬送台車4が輪軸Wをレール1に沿って搬送するときには、巻取り装置215のワイヤ214を緩め、ばね部材216の付勢力によって支持片213を垂直状に起立させる。支持片213が垂直状に起立すると、L字状爪部211の他端211bに軸支されたローラ体212がレール1の上端より上方へ移動して、ローラ体212を車輪Sの鍔部Sb外周に当接せしめる。一方、輪軸Wを所定位置(受渡し位置T2等)に仮置きして、搬送台車4が元の位置に移動するときには、巻取り装置215がワイヤ214を巻取り、支持片213を水平状に倒伏させる。支持片213が水平状に倒伏すると、L字状爪部211の他端211bに軸支されたローラ体212がレール1の上端より下方へ移動して、ローラ体212を車輪Sの鍔部Sbから離間せしめる。
【0035】
また、
図6、
図7に示すように、例えば、受渡し位置T2まで搬送した輪軸Wをレール1上に仮置きするとき、輪軸Wを仮固定する輪軸固定装置19が、右支持フレーム172及び左支持フレーム174の上端でレール1(1R、1L)近傍に配置されている。輪軸固定装置19は、投入用回転盤81及び取出し用回転盤82にも配置されている。輪軸固定装置19は、起立したとき、車輪Sのレール当接部Saに前後から当接する止め爪191を備えている。止め爪191は、倒伏したとき、車輪Sのレール当接部Saから離間してレール1の上端より下方へ移動する。
【0036】
例えば、輪軸固定装置19には、一端が車輪Sのレール当接部Saに当接する止め爪191と、止め爪191の他端と軸部193bを介して連結されたアーム部193と、軸部193bを回動自在に支持する軸受け部192と、アーム部193の下端に係止された係止ピン193aを水平移動可能に挿通する挿通長孔194aを有するケース194と、ケース194内に嵌装され係止ピン193aを水平方向に付勢する引張ばね195と、ケース194に締結されたシリンダロッド196aを有するシリンダ体196と、シリンダ体196を支持する支持部材197とを、車輪Sの軸心を通る垂線Scに対して対称となる位置に備えている。
【0037】
そして、シリンダ体196のシリンダロッド196aが矢印h2の方向へ短縮すると、引張ばね195に引っ張られてアーム部193が回動する。アーム部193の回動に伴って、止め爪191が矢印h1の方向へ回動して起立し、止め爪191の一端が車輪Sのレール当接部Saに当接する。これによって、輪軸Wを所定位置(受渡し位置T2等)に仮固定することができる。一方、輪軸Wを開放するときには、シリンダ体196のシリンダロッド196aを伸長することによって、止め爪191を倒伏させる。なお、止め爪191が起立した状態であっても、引張ばね195を伸長させることによって、止め爪191を倒伏させることができる。
【0038】
(搬送台車の制御部)
また、
図8に示すように、搬送台車4の制御部9は、各搬送台車4(41R、41L、42R、42L)に搭載された移動側制御部91と、地上に設置された固定側制御部92とを備えている。移動側制御部91には、駆動モータ3とアンテナ71と移動側光伝送装置5とに接続されたリモートI/F(リモート・インターフェース)91aを備えている。また、固定側制御部92には、RFタグ72と固定側光伝送装置6とに接続されたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)92aを備えている。移動側制御部91と固定側制御部92との間では、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6との光伝送によって、CC−リンクシステムを構築し、搬送台車4の同期移動に伴う大容量の入出力情報を高速度で通信することができる。
【0039】
例えば、左右一対の搬送台車4を同期移動させるために、各駆動モータ3のエンコーダ情報を移動側制御部91から光伝送によって固定側制御部92へ送信すると同時に、固定側制御部92から同期に必要な制御指令を光伝送によって、それぞれの移動側制御部91へ送信することができる。
【0040】
また、駆動モータ3のエンコーダ情報であるパルス値は、非常に高速で短時間に変化するので、PLC92a内の不揮発記憶領域にエンコーダ情報であるパルス値を書き込むと、停電時に位置ズレが起こる可能性がある。すなわち、停電時には、電源が遮断されたと同時に駆動モータ3のエンコーダ情報であるパルス値が途絶するが、搬送台車4の機械側が空走することによって、パルス値との位置ズレが生じる恐れがある。搬送台車4の位置情報は、その位置ズレを回避するため、RFタグ72に予め位置情報を記憶させておき、アンテナ71によりRFタグ72よりその位置情報を受信し、固定側制御部92のPLC92a内の不揮発記憶領域に最新の位置情報として記憶される。また、固定側制御部92は、RFタグ72より読みだした位置情報とエンコーダ情報に基づいて、搬送台車4の移動速度や停止位置の制御指令を光伝送によって各移動側制御部91に送信する。固定側制御部92は、上流側搬送台車41R、41Lと下流側搬送台車42R、42Lとの衝突を防止する制御指令も、光伝送によって各移動側制御部91に送信する。
【0041】
なお、移動側制御部91には、リモートI/Fを備えるだけで、通信用のPLCを備える必要がないので、プログラミングの省力化等も可能である。また、突然の停電が生じ、エンコーダ情報が消去等された場合でも、RFタグ72に記憶された位置情報とPLC92a内の不揮発記憶領域に保存されている最新の位置情報とを比較することにより、エンコーダ情報の誤りを判別し訂正することができ、その結果、搬送台車4の運転を迅速に再開させることができる。
【0042】
<搬送台車の動作方法>
次に、本実施形態に係る輪軸搬送装置10における搬送台車4の動作方法を、
図9、
図10を用いて説明する。
図9に、
図1に示す上流側搬送台車の動作フロー図を示す。
図10に、
図1に示す下流側搬送台車の動作フロー図を示す。
【0043】
(上流側搬送台車の動作フロー)
図9に示すように、はじめに、上流側搬送台車41R、41Lは、投入位置T1に隣接した原位置T0で待機し、投入位置T1に輪軸Wが有るか無いかを確認する(ステップS1)。投入位置T1に輪軸Wが有る場合、上流側搬送台車41R、41Lは、投入位置T1へ移動し輪軸Wをクランプする(ステップS2)。輪軸Wのクランプは、係止部2の係止爪(ローラ体)212が車輪Sの鍔部Sb外周に当接することによって行う。係止部2に対するクランプ指令は、上流側搬送台車41R、41Lが投入位置T1に到着した位置情報を投入用タグ721から固定側制御部92が取得すると、固定側制御部92から移動側制御部91を経由して、直接に係止部2へ指令される。なお、投入位置T1に輪軸Wが無い場合、上流側搬送台車41R、41Lは、原位置T0で待機する(ステップS3)。
【0044】
次に、受渡し位置T2に下流側搬送台車42R、42L及び輪軸Wが有るか無いかを確認する(ステップS4)。受渡し位置T2に下流側搬送台車42R、42L及び輪軸Wが無い場合、上流側搬送台車41R、41Lは、輪軸Wを受渡し位置T2へ搬送する(ステップS5)。上流側搬送台車41R、41Lの搬送指令は、固定側制御部92から移動側制御部91を経由して、直接に駆動モータ3へ指令される。なお、受渡し位置T2に輪軸Wが有る場合、上流側搬送台車41R、41Lは、一旦、輪軸Wを原位置T0へ搬送する(ステップS6)。投入位置T1に輪軸Wが有ると、分解工程から輪軸Wを投入することができず、分解工程の作業効率が低下するからである。
【0045】
次に、上流側搬送台車41R、41Lが輪軸Wを受渡し位置T2へ搬送した後、輪軸Wをアンクランプし、輪軸固定装置19が受渡し位置T2に輪軸Wを仮固定する(ステップS7)。輪軸Wの仮固定は、車輪Sのレール当接部Saに前後から当接する輪軸固定装置19の止め爪191を起立(クランプ)させることによって行う。輪軸Wのアンクランプは、係止部2のクランプ状態を解除することによって行う。なお、受渡し位置T2の輪軸Wを検出し、上流側搬送台車41R、41Lが受渡し位置T2に到着した位置情報を受渡し用タグ723から固定側制御部92が取得すると、固定側制御部92は、輪軸固定装置19へクランプ指令すると同時に、移動側制御部91を経由して直接に係止部2へアンクランプ指令する。
【0046】
次に、上流側搬送台車41R、41Lは、係止部2のクランプ状態を解除したまま、原位置T0へ移動する(ステップS8)。上流側搬送台車41R、41Lは、以上の動作を繰り返すことによって、輪軸Wを投入位置T1から中間の受渡し位置T2まで搬送する。
【0047】
(下流側搬送台車の動作フロー)
図10に示すように、はじめに、下流側搬送台車42R、42Lは、受渡し位置T2で待機し、取出し位置T3に輪軸Wが有るか無いかを確認する(ステップS9)。取出し位置T3に輪軸Wが無い場合、取出し位置T3に近い輪軸Wをクランプし、取出し位置T3へ搬送する(ステップS10)。例えば、受渡し位置T2、第1待機位置T4、第2待機位置T5のいずれの位置にも輪軸Wが有る場合には、取出し位置T3に最も近い第2待機位置T5の輪軸Wを先に搬送する。その後、第1待機位置T4の輪軸W、受渡し位置T2の輪軸Wの順番で搬送する。下流側搬送台車42R、42Lの搬送指令は、固定側制御部92から移動側制御部91を経由して、直接に駆動モータ3へ指令される。
【0048】
なお、取出し位置T3に輪軸Wが有る場合、下流側搬送台車42R、42Lは、一旦、輪軸Wを第1待機位置T4又は第2待機位置T5へ搬送する(ステップS11)。第1待機位置T4及び第2待機位置T5に輪軸Wが無い場合には、取出し位置T3に近い第2待機位置T5へ先に搬送する。受渡し位置T2に輪軸Wが有ると、上流側搬送台車41R、41Lの稼働率が低下するからである。
【0049】
次に、下流側搬送台車42R、42Lが輪軸Wを取出し位置T3へ搬送した後、輪軸Wをアンクランプし、輪軸固定装置19が取出し位置T3に輪軸Wを仮固定する(ステップS12)。輪軸Wの仮固定は、車輪Sのレール当接部Saに前後から当接する輪軸固定装置19の止め爪191を起立(クランプ)させることによって行う。輪軸Wのアンクランプは、係止部2のクランプ状態を解除することによって行う。なお、取出し位置T3の輪軸Wを検出し、下流側搬送台車42R、42Lが取出し位置T3に到着した位置情報を取出し用タグ726から固定側制御部92が取得すると、固定側制御部92は、輪軸固定装置19へクランプ指令すると同時に、移動側制御部91を経由して直接に係止部2へアンクランプ指令する。
【0050】
次に、下流側搬送台車42R、42Lは、係止部2のクランプ状態を解除したまま、受渡し位置T2へ移動する(ステップS13)。下流側搬送台車42R、42Lは、以上の動作を繰り返すことによって、輪軸Wを受渡し位置T2から取出し位置T3まで搬送する。以上詳細に説明したように、上流側搬送台車41R、41Lと下流側搬送台車42R、42Lとが、互いに連携して、輪軸Wを投入位置T1から取出し位置T3まで効率的に搬送する。
【0051】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る輪軸搬送装置10によれば、左右一対の搬送台車4には、レール方向に光伝送する移動側光伝送装置5をそれぞれ備え、地下ピットP内には、移動側光伝送装置5との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置6をそれぞれ備え、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータ3を同期制御するので、搬送台車4にケーブルベアやケーブルリール又はトロリー設備等を付設することを不要とし、地下ピットPの大きさを縮小させることができる。また、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6とが互いにレール方向に光伝送するので、地下ピットP内の狭い空間を利用して、駆動モータ3を同期制御する入出力情報を、走行しながら常に交信することができる。また、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータ3を同期制御するので、左右一対の搬送台車4を左右同期して往復移動させることができる。
【0052】
よって、本実施形態によれば、床面FLに敷設された左右のレール1(1R、1L)に沿って輪軸Wを搬送する左右一対の搬送台車4が往復移動する地下ピットPの省スペース化が可能であり、当該搬送台車4を左右同期して移動できる輪軸搬送装置10を提供することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、左右一対の搬送台車4は、輪軸Wを上流側の投入位置T1から受渡し位置T2まで搬送する左右一対の上流側搬送台車41R、41Lと、受渡し位置T2から輪軸Wを下流側の取出し位置T3まで搬送する左右一対の下流側搬送台車42R、42Lとでそれぞれ構成されているので、搬送台車4の移動距離を上流側と下流側とで分割することができ、移動時間の短縮を図ることができる。また、下流側における輪軸Wの取出しタイミングを待たなくても、上流側から連続的に輪軸Wを搬送してレール上に保管することができる。例えば、1つの台車から分解される2つの輪軸Wを連続的に搬送して受渡し位置T2と取出し位置T3との間に設けた待機位置(例えば、第1待機位置T4、第2待機位置T5)に保管し、下流側の取出しタイミングに応じて供給することができる。そのため、台車の分解工程や輪軸Wの検査工程における作業効率を大幅に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、左右それぞれの搬送台車4における上流側搬送台車41R、41Lに備える移動側光伝送装置51R、51Lの光軸KJ1と下流側搬送台車42R、42Lに備える移動側光伝送装置52R、52Lの光軸KJ2とが、レール方向に対して互いに平行に離間して配置されているので、上流側搬送台車41R、41Lの移動範囲と下流側搬送台車42R、42Lの移動範囲とをレール方向でラップさせることができ、ラップさせた場合においても、上流側搬送台車41R、41Lと下流側搬送台車42R、42Lとが、互いに衝突するのを防止しながら、左右同期して移動させることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、搬送台車4にアンテナ71を装着し、アンテナ71と通信可能に形成され搬送台車4のレール方向の位置情報を予め記憶させたRFタグ72を搬送台車4の移動範囲に配置したので、駆動モータ3のエンコーダ情報(エンコーダのパルス値)とRFタグ72に予め記憶させた搬送台車4のレール方向の位置情報とを照合することによって、搬送台車4のレール方向における現在位置を同定させ、その位置情報を搬送台車4の制御部9に保存させることができる。そのため、突然の停電が生じた場合でも、搬送台車4の制御部9に保存された位置情報とRFタグ72の位置情報とを比較することによって、搬送台車4の運転を迅速に再開させることができる。その結果、重量物である輪軸Wを作業者の手作業で搬送するような作業環境上好ましくない行為を低減させることができる。
【0056】
<変形例>
以上、本実施形態の輪軸搬送装置10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、左右一対の搬送台車4は、輪軸Wを上流側の投入位置T1から受渡し位置T2まで搬送する上流側搬送台車41R、41Lと、受渡し位置T2から輪軸Wを下流側の取出し位置T3まで搬送する下流側搬送台車42R、42Lとでそれぞれ構成されているが、必ずしも、上流側搬送台車41R、41L(2台)と下流側搬送台車42R、42L(2台)とで構成する必要はない。例えば、左右一対の搬送台車4(2台のみ)が、輪軸Wを上流側の投入位置T1から下流側の取出し位置T3まで搬送する構成でもよい。この場合でも、左右一対の搬送台車4(2台のみ)が同期して往復移動することによって、レール途中の待機位置(例えば、第1待機位置T4、第2待機位置T5)に輪軸Wを保管することができる。
【課題】床面に敷設された左右のレールに沿って輪軸を搬送する左右一対の搬送台車が往復移動する地下ピットの省スペース化が可能であり、当該搬送台車を左右同期して移動できる輪軸搬送装置を提供する。
【解決手段】床面FLに敷設された左右のレール1上に載置された輪軸Wの車輪Sを係止する係止部2と自走用の駆動モータ3とを備え地下ピットP内を同期して往復移動する左右一対の搬送台車4によって、輪軸Wをレール1に沿って移動させる輪軸搬送装置10である。左右一対の搬送台車4には、レール方向に光伝送する移動側光伝送装置5をそれぞれ備え、地下ピットP内には、移動側光伝送装置5との間でレール方向に光伝送する固定側光伝送装置6をそれぞれ備え、移動側光伝送装置5と固定側光伝送装置6とが互いにレール方向に光伝送する入出力情報に基づいて駆動モータ3を同期制御する。