(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6231715
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】物流管理システム
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
B65G61/00 520
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-140511(P2017-140511)
(22)【出願日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年8月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517028199
【氏名又は名称】一般社団法人ロジスティクスHACCP研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】岸 健司
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−307099(JP,A)
【文献】
特開平11−348647(JP,A)
【文献】
特開2009−009294(JP,A)
【文献】
特開2017−058871(JP,A)
【文献】
特開2007−106575(JP,A)
【文献】
特開2003−176030(JP,A)
【文献】
特開2008−015582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
G06F 19/00
G06Q 10/00−10/10
G06Q 30/00−30/08
G06Q 50/00−50/20
G06Q 50/26−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷を必要とする商品の出荷、保冷車による配送および入荷までを管理センタが備えるコンピュータによって一括管理する物流管理システムであって、
前記保冷車は前記管理センタとの間での送受信を行う送受信手段と、保冷車内の温度を測定する通信機能付き温度センサを備え、
前記管理センタのコンピュータは記憶部と、演算部と通信部を備え、
前記記憶部には少なくとも、個々の保冷車ごとの積載商品、出荷元、入荷先、配送スケジュールが記憶され、
前記演算部では少なくとも、保冷車内の経時的温度変化に基づいて商品の鮮度状態を演算し、
前記通信部は少なくとも、前記保冷車の送受信手段から配送できる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に配送開始の指示を送信し、配送中に保冷状態の異常を検出した場合に、当該保冷車の送受信手段にマニュアルに従った指示を送信し、前記入荷先の送受信手段から受入れることができる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に商品受渡しの指示を送信することを特徴とする物流管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物流管理システムにおいて、前記保冷車内の温度を測定する通信機能付き温度センサとは別に商品収納容器内の温度を測定する通信機能付き温度センサを備え、これらそれぞれの温度センサの測定結果を管理センタへ送信することを特徴とする物流管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の物流管理システムにおいて、前記保冷車内の温度を測定する通信機能付き温度センサ及び商品収納容器内の温度を測定する通信機能付き温度センサは近距離無線通信手段を介して、保冷車が備える送受信手段と接続され、この送受信手段を介して管理センタにデータが送信されることを特徴とする物流管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集配所などを含む出荷先から小売店などの入荷先まで温度管理が必要な商品を保冷車で運送する物流管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
出荷元(配送元)、入荷先(配送先)およびこれらの間をつなぐ配送車からなる物流システムにおいて、出荷元および入荷先では通常温度管理がほぼ完ぺきに行なわれている。また、生鮮食品などにあっては配送車に保冷車を用いることで、物流システム全体で、一定温度以下で生鮮食料品を管理するようにしている。
【0003】
しかしながら、保冷車による配送過程では、荷物の積み下ろしの際のドアの開閉や道路の渋滞による配送時間超過などによって、保冷車内の温度が高くなり、食料品の鮮度が落ちるなどの問題が頻繁に生じている。
【0004】
上記の問題を解消するため、特許文献1では配送車全体を冷却するのではなく、生鮮食料品などを小分けして収納できる保冷庫を用意し、この保冷庫に温度センサを取付け、保冷庫内の温度を表示することで異常を検知するようにしている。
【0005】
特に特許文献1では、消費関連情報を取得する手段、具体的に保冷庫を冷却する冷却機を駆動するバッテリの充電量や充電回数の情報を管理センタが取得し、これらの情報に基づき、バッテリの交換時期を知らせることで、搬送中にバッテリの充電不足に陥らないようにしている。
【0006】
特許文献1にあっては、個々の保冷庫に表示部を設け、この表示部に保冷庫内の温度、バッテリ交換の要・不要を表示し、これをドライバが確認して対処するシステムになっている。しかしながら、全ての保冷庫に消費関連情報取得手段、記憶手段及び表示手段などを設けるのはコストが膨大になる。更にドライバの負担も大きくなる。
【0007】
上記の特許文献1の問題を解消するために特許文献2が提案されている。この特許文献2では、保冷容器(保冷庫)の真空断熱パネルの一部に凹部を設け、この凹部内に温度センサ、バッテリの他に通信部を設け、通信部を介して内部温度を管理センタに送信し、管理センタで一括して全ての保冷容器の管理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−322459号公報
【特許文献2】特開2012−171733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1、2の何れも、物流システムのうちの配送車での配送中の不具合を解消するものであり、出荷元と配送車との間、配送車と入荷先との間の商品の受渡しは、当事者間で行われていてトータルで管理していない。
【0010】
そのため、出荷元から配送途中の管理は問題がなく、一部の入荷先の温度管理に不具合が生じた場合でも、他の入荷先に引渡した同一ロット製品全部を破棄しなければならない事態、或いは、出荷元(製造元)での1つのロットに温度管理に不具合があり、搬送中の温度管理に問題がなかった場合であっても、入荷先の別ロットの製品まで廃棄しなければならない事態も生じている。
【0011】
また、出荷元と配送車との間及び配送車と入荷先との間の商品の受渡しの前後における責任の所在があやふやな為、不都合が生じた後の物流システムの回復に時間がかかってしまう。
【0012】
特に、従来の管理システムでは配送中に生鮮食品の鮮度低下などの不都合が起きた場合の対処をドライバに任せているため、却って被害が大きくなることもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る物流システムは、保冷を必要とする商品の出荷、保冷車による配送および入荷までを管理センタが備えるコンピュータによって一括管理する物流管理システムである。
【0014】
特に、前記保冷車は前記管理センタとの間での送受信を行う送受信手段と、保冷車内の温度を測定する通信機能付き温度センサを備える。
【0015】
また、前記管理センタのコンピュータは記憶部と、演算部と通信部を備え、 前記記憶部には少なくとも、個々の保冷車ごとの積載商品、出荷元、入荷先、配送スケジュールが記憶され、前記演算部では少なくとも、保冷車内の経時的温度変化に基づいて商品の鮮度状態を演算し、前記通信部は少なくとも、前記保冷車の送受信手段から配送できる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に配送開始の指示を送信し、配送中に保冷状態の異常を検出した場合に、当該保冷車の送受信手段にマニュアルに従った指示を送信し、前記入荷先の送受信手段から受入れることができる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に商品受渡しの指示を送信する。
【0016】
前記配送できる商品であるか否かの判断は、当該商品配送するドライバが商品の外観上傷がないかなど、一見して判断できる項目を予め管理センタが決めておき、この項目に沿って判断する。
【0017】
前記受入れることができる商品であるか否かの判断は、入荷先(受入先)の担当者の判断による。但し、管理センタが予め入荷先の担当者に判断項目を例示しておくことで、受渡しをスムーズに行える。
【0018】
商品を保冷容器などの収納容器に入れて配送する場合には、前記保冷車に設けた温度センサとは別に、商品収納容器に内部の温度を測定する通信機能付き温度センサを設けてもよい。
【0019】
前記保冷車内の温度を測定する温度センサ及び商品収納容器に内部の温度を測定する温度センサは何れも測定したデータを送信する通信機能を備えている。通信機能としては、クラウド上の管理センタのコンピュータに送信するものでもよいが、Bluetooth(登録商標)などの短距離通信とし、温度センサで測定したデータを保冷車の送受信手段、例えばドライバが保有するスマートホンなどに送信し、このスマートホンから管理センタのコンピュータに送信するようにしてもよい。Bluetooth(登録商標)などの短距離通信とすることで、電力消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、管理センタが、保冷車の送受信手段から配送できる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に配送開始の指示を送信し、また管理センタが、入荷先の送受信手段から受入れることができる商品である旨の情報を受信した場合に、当該保冷車の送受信手段に商品受渡しの指示を送信するため、受渡しの際の管理責任に空白が生じることがなく、システム全体が効率良く運営できる。
【0021】
出荷元から入荷先に至るまでの間に、商品の鮮度低下が生じた場合、どの時点で鮮度低下が生じたか判断することができ、廃棄しなくてもよい商品を廃棄したり、逆に廃棄しなければならない商品をそのまま小売り販売してしまうなどの事故を防ぐことができる。
【0022】
特に、商品収納容器を用意し、この商品収納容器に保冷車内の温度を測定する温度センサとは別の温度センサ設け、それぞれの温度センサからのデータを用いて商品管理を行うことで、きめ細やかな鮮度維持管理ができる。
【0023】
また、万一配送中に商品の鮮度低下などの問題が生じた場合でも、管理センタはリアルタイムでその事態を把握し、且つマニュアルに沿った適切な指示をドライバに遅滞なく指示するため、その時点での最善な処理を行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る物流管理システムの全体構成図。
【
図2】物流管理システムを構成する管理センタのコンピュータの説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す物流管理システムは、インターネットなどのネットワーク1、このネットワーク1に接続される管理センタのコンピュータ2、出荷元から入荷先へ商品を配送する保冷車3、保冷車3内の温度を測定するとともに測定したデータをネットワーク1を介して前記管理センタのコンピュータ2に送信する通信機能付き温度センサ4、ネットワーク1を介して前記管理センタのコンピュータ2との間で送受信が可能な保冷車3に付帯する送受信手段5(例えばドライバが所有するスマートホン)、ネットワーク1を介して前記管理センタのコンピュータ2との間で送受信が可能な入荷先の送受信手段6(例えば入荷先担当者が所有するスマートホン)からなる。
【0026】
前記管理センタのコンピュータ2は、
図2に示すように、記憶部(RAM、ROM)、演算部(CPU)、通信部、キーボードやマウスなどの入力部及び液晶表示装置などの表示部から構成され、これら構成要素がバスで接続されている。
【0027】
前記記憶部には、保冷車ごとの積載商品の詳細が記憶されている。このように保冷車を1単位として商品を管理することで、生鮮食品の鮮度低下などの事故が生じた場合でも、当該保冷車のみの商品を廃棄すればよく、無駄がなくなる。尚、後述するように複数の保冷庫を保冷車に搭載し、保冷庫毎に温度管理を行う場合には、更に無駄がなくなる。
【0028】
また前記記憶部には、商品毎の出荷元、入荷先を含めた配送スケジュールが記憶されている。管理センタでは渋滞などの情報に基づき配送スケジュールを変更し、それを保冷車3の送受信手段5に送信することで、効率のよい配送を行うことができる。
【0029】
また前記記憶部には、商品毎の鮮度許容閾値も記憶している。この閾値は商品の品種毎、例えば生鮮食料品でも卵と野菜毎に異なる。
【0030】
演算部では、配送開始からの時間と温度との履歴グラフに基づき、鮮度劣化値を計算する。具体的には商品の種類毎に基準温度(例えば10℃)を設定し、この基準温度を越えた線の下側面積(図のハッチングの部分)を積分し、この下側面積の合計値が前記閾値を越えた場合に、管理センタから保冷車3の送受信手段5に廃棄の指示を送信する。
【0031】
廃棄の指示を徹底するため、廃棄しなければならないと判断された商品に廃棄シールを貼ることをドライバに指示し、この廃棄シールが貼られたことを管理センタが保冷車3の送受信手段5を介して画像認識できた後に、次の指示を出すようにすることが考えられる。
【0032】
尚、鮮度管理方法としては、管理センタは常時保冷車3内の温度を監視しているので、基準温度よりも若干低めの温度(準基準温度:例えば9℃)を設定し、この温度に到達した時点で、管理センタから保冷車3の送受信手段5に温度を下げる指示を送信するのが好ましい。
【0033】
次に、
図3に基づき配送開始から配送終了までの典型的な流れを説明する。先ず、
図1の出荷元の倉庫内に保冷車3が位置したことをGPSを介して管理センタのコンピュータ2が感知したら、管理がスタートする。
【0034】
管理スタートと同時に通信機能付き温度センサ4からのデータを管理センタのコンピュータ2が受信する。この後、保冷車3のドライバが配送商品を確認し、商品の種類、数量、外観上の問題など定められた項目をチェックし、問題がなければその旨を送受信手段5からネットワーク1を介して管理センタのコンピュータ2に送信する。
【0035】
問題がない旨の通知を受けると、管理センタのコンピュータ2は保冷車3の送受信手段5に配送開始の指示を送信する。この時点以降の商品管理責任は配送会社に移行する。
【0036】
配送開始から入荷先に到着するまでは、管理センタは温度センサ4からのデータを常時受信し、無駄な電力を消費することなく且つ鮮度を維持できる最適な条件で保冷車内の温度管理を行うための指示をドライバに送信する。
【0037】
入荷先に到着した後は、入荷先の担当者が商品を受入れることができるかをチェックし、入荷先の送受信手段6からの受入可の情報を管理センタのコンピュータ2が受信すると、保冷車3の送受信手段5に商品引渡しの指示を送信する。この時点以降の商品管理責任は入荷先に移行する。
【0038】
管理センタは上記の他に付加的な工程管理やドライバ管理を行うことができる。工程管理としては、季節要因を考慮し、夏季には扉の開閉回数および1回の荷降ろし(荷積み)時間をドライバに指示することが可能である。
【0039】
また、ドライバ管理としては個々のドライバ毎に荷降ろし(荷積み)に要する時間、扉の開閉回数が個々のドライバにより異なるので、これらを管理センタが把握することでスキル管理も行える。
【0040】
図4は別実施例を示す図であり、この実施例にあっては入荷先ごとの商品収納容器7を用意し、商品の引渡しは商品収納容器7を単位として行うようにしている。
【0041】
これら各商品収納容器7には、前記通信機能付き温度センサ4とは別の通信機能付き温度センサ8を設け、温度センサ4、8で測定した温度データを短距離通信(Bluetooth(登録商標)など)を利用して、保冷車3の送受信手段5(ドライバのスマートホン)に送信し、送受信手段5からネットワーク1を介して管理センタのコンピュータ2に送信している。
【0042】
尚、短距離通信を使うことで、温度センサ4、8のバッテリの消耗を少なくできるが、ネットワーク1を介して直接管理センタのコンピュータ2に送信するようにしてもよい。
【0043】
このように、2つの温度センサにより保冷車3内の全体的な温度管理と商品の個別の温度管理が可能になる。例えば、保冷車3内でも温度のばらつきがあるので、より低い温度での保存が要求される商品を1つの商品収納容器7に収納し、この商品収納容器7を最も温度が低くなる箇所に置くなどの措置がとれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は保冷車を用いた物流管理システムであるが、配送する商品としては生鮮食料品などの食品に限らず、例えば例えば生花や薬などの温度管理を必要とする商品であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ネットワーク、2…管理センタのコンピュータ、3…保冷車、4、8…通信機能付き温度センサ、5…保冷車が備える送受信手段、6…入荷先の送受信手段、7…商品収納容器。
【要約】
【課題】 配送の際の商品の管理責任の所在が明確になる物流管理システムを提供する。
【解決手段】
保冷車3のドライバが配送商品を確認し、問題がなければその旨を送受信手段5からネットワーク1を介して管理センタのコンピュータ2に送信する。次いで、管理センタのコンピュータ2は保冷車3の送受信手段5に配送開始の指示を送信する。配送開始から入荷先に到着するまでは、管理センタは温度センサ4からのデータを常時受信し、最適な条件で保冷車内の温度管理を行うための指示をドライバに送信する。入荷先に到着した後は、入荷先の担当者が商品を受入れることができるかをチェックし、入荷先の送受信手段6からの受入可の情報を管理センタのコンピュータ2が受信すると、保冷車3の送受信手段5に商品引渡しの指示を送信する。この時点以降の商品管理責任は入荷先に移行する。【選択図】
図1