(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231724
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】眼科用レンズアセンブリと組立て方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/117 20060101AFI20171106BHJP
A61B 3/13 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
A61B3/10 G
A61B3/12 A
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-516512(P2017-516512)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公表番号】特表2017-529931(P2017-529931A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】US2015052192
(87)【国際公開番号】WO2016049438
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】62/056,083
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517098435
【氏名又は名称】ヴォルク オプティカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Volk Optical Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】チェック,スティーヴン ディー
(72)【発明者】
【氏名】ピザーチュク,ジョン
【審査官】
九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−546020(JP,A)
【文献】
特開2011−062325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ素子と保護カバーとを備えるレンズアセンブリであって、
前記レンズ素子が、コンタクトレンズ表面と、ファセット部分および遠位部分を含む、ファセット光学体とを備え、
前記ファセット部分が、前記コンタクトレンズ表面と前記遠位部分との間に配置されており、
前記ファセット部分が、夫々1以上の内部光反射ファセットと、前記内部光反射ファセットの夫々の反対側に配置された1以上の外部ファセットとを含む、1以上のミラーファセットを備え、
1以上の前記内部光反射ファセットが、夫々の1以上の内部全反射(TIR)表面を備え、
1以上の前記内部光反射ファセットと前記コンタクトレンズ表面とで、TIR作用のための経路を形成し、
前記保護カバーが、前記コンタクトレンズ表面を受け入れるように成形されたコンタクト開口と、把持部分と、内側表面を含みかつ前記コンタクト開口および前記把持部分の間に配置された、ファセット収容部分とを備え、
前記保護カバーの前記コンタクト開口が、前記コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持し、
前記保護カバーの前記把持部分が、前記レンズ素子の前記遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持し、さらに、
1以上のTIR誘発空隙が、前記保護カバーの前記ファセット収容部分によって、前記保護カバーの前記ファセット収容部分の前記内側表面と前記ファセット光学体の前記ファセット部分の前記1以上の外部ファセットとの間で画成されていることを特徴とするレンズアセンブリ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズ表面が、眼の角膜の湾曲表面の一部に接触するように成形されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項3】
前記保護カバーの前記ファセット収容部分に、1以上の前記TIR誘発空隙と連通させて配置された、1以上の通気孔をさらに備えている請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項4】
前記TIR誘発空隙が、圧縮把持力を受けたときに、前記TIR表面を照明するとTIR作用が起こるよう空気と前記レンズ素子との間の一貫した屈折率の差を維持するようなサイズであることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項5】
圧縮把持力を受けたときに、前記TIR表面を照明するとTIR作用が起こるよう空気と前記レンズ素子との間の一貫した屈折率の差を維持するようなサイズで、前記TIR誘発空隙を維持するのに十分な剛性を、前記保護カバーの前記内側表面が有していることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項6】
前記一貫した屈折率の差が、0.45から0.6の範囲であることを特徴とする請求項5記載のレンズアセンブリ。
【請求項7】
前記レンズ素子が、電磁スペクトルの可視範囲で光学的に透明な、ポリマー材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項8】
前記レンズ素子が少なくとも、屈折率が1.45から1.60の範囲の光学材料から作製されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項9】
前記レンズ素子が、医療用アクリルから作製されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項10】
前記コンタクトレンズ表面および前記ファセット光学体が、互いから取外し可能であることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項11】
前記コンタクトレンズ表面および前記ファセット光学体が、射出成形によって一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項12】
前記レンズアセンブリが、単回使用のアセンブリであることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項13】
前記保護カバーが、圧縮把持力を受けたときに、前記保護カバーの前記内側表面と前記1以上の外部ファセットとの間で前記TIR誘発空隙を維持するのに十分な剛性を有する、弾性および弾力性のある材料から作製されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項14】
前記保護カバーが、前記保護カバーの前記把持部分が前記遠位側の流体密封を維持しながら前記レンズ素子の前記遠位部分に十分に接触するよう、適切な程度の、剛性および圧縮性のうちの少なくとも一方を画成するものであることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項15】
前記レンズ素子の前記遠位部分が円筒状であることを特徴とする請求項14記載のレンズアセンブリ。
【請求項16】
前記保護カバーが、医療用シリコーンエラストマーを用いて成形されていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項17】
前記1以上のミラーファセットがコーティングされていないことを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項18】
前記ファセット光学体が、前記ファセット光学体の前記ファセット部分の周縁の回りに配置された、4つの等距離のミラーファセットを備えていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項19】
前記4つの等距離のミラーファセットの前記内部光反射ファセットの前記TIR表面が、照明を眼の前眼房内へと反射し、さらに前記前眼房によって反射された光を、外部ソースから見える、前記眼の外部の方向へと向け直すことを特徴とする請求項18記載のレンズアセンブリ。
【請求項20】
前記ファセット光学体が、眼の中央網膜の観察専用の中央網膜ミラーファセットと、眼の前眼房の観察専用の前眼房ミラーファセットと、眼の周辺網膜の観察専用の周辺網膜ミラーファセットとを含む、3つのミラーファセットを備えていることを特徴とする請求項1記載のレンズアセンブリ。
【請求項21】
眼科用レンズアセンブリを組立てる方法において、
夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセットを含むレンズ素子の回りに、保護カバーを配置するステップであって、
前記レンズ素子のコンタクトレンズ表面が、前記保護カバーのコンタクト開口を通じて受け入れられ、
前記保護カバーが、前記コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持し、
前記保護カバーが、前記レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持し、
前記1以上のミラーファセットを含む前記レンズ素子のファセット部分が、前記コンタクトレンズ表面と前記レンズ素子の前記遠位部分との間に配置されており、さらに、
1以上のTIR誘発空隙が、前記保護カバーによって、前記保護カバーの内側表面と前記レンズ素子の前記1以上のミラーファセットとの間で画成される、ステップを含み、
前記眼科用レンズアセンブリは、前記レンズ素子の前記コンタクトレンズ表面を、眼の角膜の湾曲表面の一部に接触させた状態で置いたときに、前記TIR表面を介して照明を前記眼の中へと反射させ、さらに該眼によって反射された光を、前記TIR表面を介して外部から見るための方向へと向け直す、方法。
【請求項22】
前記保護カバーの前記内側表面を含むファセット収容部分に配置された1以上の通気孔から、該通気孔の夫々に位置合わせされた夫々のTIR誘発空隙内に滅菌剤を拡散させるように、該滅菌剤を適用するステップをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記滅菌剤がエチレンオキサイドガスであることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセットを含むレンズ素子の回りに、保護カバーを配置するステップによって、眼科用レンズアセンブリを組み立てる方法において、
前記レンズ素子のコンタクトレンズ表面が、前記保護カバーのコンタクト開口を通じて受け入れられ、
前記保護カバーが、前記コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持し、
前記保護カバーが、前記レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持し、
前記1以上のミラーファセットを含む前記レンズ素子のファセット部分が、前記コンタクトレンズ表面と前記レンズ素子の前記遠位部分との間に配置されており、さらに、
1以上のTIR誘発空隙が、前記保護カバーによって、前記保護カバーの内側表面と前記レンズ素子の前記1以上のミラーファセットとの間で画成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2014年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/056,083号(VOL 0096 MA)の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、眼の状態の診断および処理に使用される眼科用レンズアセンブリに関し、特に保護カバーと鏡面仕上げされた眼科用レンズ素子とを備えた眼科用レンズアセンブリに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の主題によれば、レンズアセンブリが、レンズ素子と保護カバーとを備え得る。レンズ素子は、コンタクトレンズ表面と、ファセット部分および遠位部分を含む、ファセット光学体とを含み得る。ファセット部分は、コンタクトレンズ表面と遠位部分との間に配置されている。ファセット部分は、夫々1以上の内部光反射ファセットと、各内部光反射ファセットの反対側に配置された1以上の外部ファセットとを含む、1以上のミラーファセットを含み得る。1以上の内部光反射ファセットは、夫々の1以上の内部全反射(TIR)表面を含み得る。1以上の内部光反射ファセットとコンタクトレンズ表面とで、TIR作用のための経路を形成する。保護カバーは、コンタクトレンズ表面を受け入れるように成形されたコンタクト開口と、把持部分と、内側表面を含みかつコンタクト開口および把持部分の間に配置された、ファセット収容部分とを備え得る。保護カバーのコンタクト開口は、コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持することができる。保護カバーの把持部分は、レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持することができる。1以上のTIR誘発空隙が、保護カバーのファセット収容部分によって、保護カバーのファセット収容部分の内側表面とファセット光学体のファセット部分の1以上の外部ファセットとの間で画成され得る。
【0004】
本開示の一実施の形態によれば、眼科用レンズアセンブリを組立ておよび使用する方法は、夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセットを含む、レンズ素子の回りに、保護カバーを配置するステップを含み得る。レンズ素子のコンタクトレンズ表面が、保護カバーのコンタクト開口を通じて受け入れられ得る。保護カバーは、コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持することができる。保護カバーは、レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持することができる。1以上のミラーファセットを含むレンズ素子のファセット部分が、コンタクトレンズ表面とレンズ素子の遠位部分との間に配置され得る。1以上のTIR誘発空隙が、保護カバーによって、保護カバーの内側表面とレンズ素子の1以上のミラーファセットとの間で画成され得る。この方法は、レンズ素子のコンタクトレンズ表面を眼の角膜の湾曲表面の一部に接触させた状態で置くステップと、TIR表面を介して照明を眼の中へと反射させ、さらに眼によって反射された光を、TIR表面を介して外部から見るための方向へと向け直すステップとをさらに含み得る。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセットを含む、レンズ素子の回りに、保護カバーを配置することによって眼科用レンズアセンブリを組み立てる方法であって、レンズ素子のコンタクトレンズ表面は、保護カバーのコンタクト開口を通じて受け入れられ得る。保護カバーは、コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持することができる。保護カバーは、レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持することができる。1以上のミラーファセットを含むレンズ素子のファセット部分が、コンタクトレンズ表面とレンズ素子の遠位部分との間に配置され得る。1以上のTIR誘発空隙が、保護カバーによって、保護カバーの内側表面とレンズ素子の1以上のミラーファセットとの間で画成され得る。
【0006】
本開示の概念を、隅角鏡検査で使用されるものなどの眼科用レンズアセンブリを主に参照して本書では説明するが、これらの概念は、例えば制限するものではないが人間または他の種の検眼に利用されるものなど、任意のタイプのレンズアセンブリへの適用性を享受すると意図されている。
【0007】
本開示の特定の実施形態に関する以下の詳細な説明は、同様の構造を同じ参照番号で示した以下の図面と併せて読むと、最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本書で図示および説明する1以上の実施形態による、レンズ素子および保護カバーの概略分解斜視図
【
図2】本書で図示および説明する1以上の実施形態による、
図1に示されているレンズ素子および保護カバーを組み立てた、レンズアセンブリの概略斜視図
【
図3】本書で図示および説明する1以上の実施形態による、別のレンズ素子および
図1の保護カバーの概略分解斜視図
【
図4】本書で図示および説明する1以上の実施形態による、
図3に示されているレンズ素子および保護カバーを組み立てた、別のレンズアセンブリの概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に
図1〜2を参照すると、レンズアセンブリ100(
図2)が、レンズ素子200および保護カバー300を備えている。レンズ素子200は、コンタクトレンズ表面202とファセット光学体204とを備えている。コンタクトレンズ表面202は、眼の角膜の湾曲表面の一部に接触するように成形されている。例えばコンタクトレンズ表面202は、使用時に患者の角膜に直接接触させた状態で配置できる、凹状の第1の光学表面を有している。
【0010】
ファセット光学体204は、ファセット部分206と遠位部分208とを備えている。レンズ素子200の遠位部分208は円筒状でもよいが、他の適切な形状が本開示の範囲内であることを理解されたい。ファセット光学体204のファセット部分206は、コンタクトレンズ表面202とファセット光学体204の遠位部分208との間に配置されている。ファセット部分206は1以上のミラーファセット210を備え、各ミラーファセット210は、夫々の内部光反射ファセット212(
図2)と、各内部光反射ファセット212の反対側に配置された外部ファセット214とを備えている。各ミラーファセット210の、各内部光反射ファセット212および夫々の対向する外部ファセット214は、共に位置合わせされた平面上にある。これらのミラーファセット210(および以下でさらに本書において説明される他の実施形態のミラーファセット)は平坦な傾斜したミラー表面を備えることで、患者の眼の特定のエリアから、例えば検眼士などのアイケア提供者が操作する観察機器によって反射光が結像され得る方向へと、光を向け直す。この観察機器は、例えば細隙灯顕微鏡でもよい。
【0011】
図1〜2を参照すると、内部光反射ファセット212は、夫々の内部全反射(TIR)表面を有している。内部光反射ファセット212およびコンタクトレンズ表面202で、TIR作用(この作用は本書において、単に「TIR」としても参照される)のための経路を形成する。特に、ミラーファセット210および1以上のTIR誘発空隙404が協働して、以下でより詳細に説明するようにTIR作用を誘発する。TIR誘発空隙により、「コーティングされていない」、すなわち反射コーティング層でコーティングされていない、ミラーファセット210の使用が可能になる。従って、光の反射を生じさせるために反射金属コーティングを利用する必要がない。こういったコーティングは一般に、レンズ素子の製造時の複雑さおよびコストを増加させる。こういった比較的高価なコーティングを含んでいなければ、レンズアセンブリ100を単回使用のレンズアセンブリとして導入することがはるかに現実的になる。
【0012】
レンズアセンブリ100の製造に関して、レンズ素子200は、射出成形を用いて、および/または機械加工および研磨作業を用いて加工することができる。コンタクトレンズ表面202およびファセット光学体204は、一体的に形成され得ると意図されている。例えばコンタクトレンズ表面202およびファセット光学体204を、射出成形を用いて一体的に形成してもよい。代わりの実施形態では、コンタクトレンズ表面202およびファセット光学体204を別個の部品として形成してもよく、これを形成後に互いに接着してもよいし、あるいは他のやり方で互いに取り付けてもよい。この別個の部品が互いから取外し可能であるように、この取付けを調整してもよい。例えば、この別個の部品は射出成形によって形成されて、次いで取外し可能な形で互いに取り付けられ得ると意図されている。
【0013】
レンズ素子200を、電磁スペクトルの可視範囲で光学的に透明な、ポリマー材料を用いて形成してもよい。レンズ素子200は少なくとも、屈折率が約1.45から1.60の範囲の光学材料から作製され得る。非限定的な例として、レンズ素子200は医療用アクリルから作製される。
【0014】
ファセット光学体204は、ファセット光学体204のファセット部分206の周縁の回りに配置された、4つの等距離のミラーファセット210を備えている。一例として、制限するものではないが、レンズ素子200は4ミラーの「サッスマン」様式またはタイプのレンズなどの、眼科用レンズでもよい。実施形態において4つの内部光反射ファセット212のTIR表面は、照明を眼の前眼房内へと反射し、さらに前眼房によって反射された光を、外部ソースから見える、眼の外部の方向へと向け直す。
【0015】
保護カバー300は、コンタクトレンズ表面202を受け入れるように成形された、コンタクト開口302を備えている。保護カバー300は、把持部分304と、内側表面308(
図2)を備えかつコンタクト開口302および把持部分304の間に配置された、ファセット収容部分306とをさらに備えている。
【0016】
保護カバー300のコンタクト開口302は、コンタクトレンズ表面202の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封400を維持する。保護カバー300の把持部分304は、レンズ素子200の遠位部分208の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封402を維持する。
【0017】
1以上のTIR誘発空隙404が、保護カバー300のファセット収容部分306によって、保護カバー300のファセット収容部分306の内側表面308とファセット光学体204のファセット部分206の外部ファセット214との間で画成される。実際には、保護カバー300がレンズ素子200の回りに配置されると、TIR誘発空隙404は空気に占有される。以下でさらに詳細に説明するが、レンズ基材と空気との既定の一貫した屈折率の差が、TIR誘発空隙404内で維持されると、空気によってTIR作用を起こすことができる。
【0018】
保護カバー300は、通常の使用下で保護カバー300の内側表面308と外部ファセット214との間のTIR誘発空隙404を維持するのに十分な剛性を有する、弾性および弾力性のある材料から作製され得る。例えば保護カバー300は、圧縮把持力を受けたときに前述の空隙を維持することができる、十分な弾力性を有するものであるべきと意図されている。本書で説明される「圧縮把持力」とは、本書で意図されているタイプの眼科用レンズアセンブリの取扱いに典型的に関連する、力の範囲に入るものとして定量化され得る。例えば圧縮把持力は、人間のユーザがレンズアセンブリを患者の眼の近くに位置付けかつ使用するために把持するときに加えられる、力に相当することが多い。本書で説明される「圧縮把持力」は、レンズアセンブリを患者の眼の近くに位置付ける際に検眼士を助けるために機械が使用される場合、この機械に典型的に関連する力の範囲に入るものとして定量化され得ることも意図されている。保護カバー300は、保護カバー300の把持部分304が遠位側の流体密封402を維持しながらレンズ素子200の遠位部分208に十分に接触するように、適切な程度の剛性および/または圧縮性を画成する。いくつかの実施形態において、保護カバー300は医療用シリコーンエラストマーを用いて成形される。
【0019】
TIR誘発空隙404のサイズは、圧縮把持力を受けたときに、TIR表面を照明するとTIR作用が起こるよう空気とレンズ素子200との間の一貫した屈折率の差を維持するようなサイズである。圧縮把持力を受けたときに、TIR表面を照明するとTIR作用が起こるよう空気とレンズ素子200との間の一貫した屈折率の差を維持するようなサイズでTIR誘発空隙404を維持するのに十分な剛性を、保護カバー300の内側表面308は有している。実施形態において、この一貫した屈折率の差は約0.45から約0.6の範囲である。
【0020】
さらに1以上の通気孔310を、保護カバー300のファセット収容部分306に、1以上のTIR誘発空隙404と連通させて配置してもよい。滅菌剤を用いて、潜在的に有害な生きている有機体などの有機体を、レンズの空洞を画成する表面に存在させないようにすることができるよう、この通気孔310から、各TIR誘発空隙404によって画成されるレンズ空洞内へと滅菌剤を拡散および移動させることができる。通気孔310は、レンズアセンブリ100を形成するために保護カバー300がレンズ素子200の回りに配置されたときに、1以上のTIR誘発空隙404に出入りする滅菌剤の拡散を助けることができるような、十分に大きいサイズとされる。さらに通気孔310は、流体、油、小片、および/または引っ掻き傷がレンズ素子200のミラーファセット210に影響を与えるのを、保護カバー300によって防ぐことができるよう、十分に小さいサイズとされ、かつ保護カバー300のファセット収容部分306を画成する壁に沿って十分に高く位置付けられる。
【0021】
ここで
図3〜4を参照すると、レンズアセンブリ100に類似したレンズアセンブリ120(
図4)が示されている。レンズアセンブリ120は、レンズアセンブリ120のレンズ素子220が、レンズアセンブリ100のレンズ素子200の4ミラーファセット構造ではなく3ミラーファセット構造を含んでいるという点で、本書で説明したレンズアセンブリ100とは異なる。従って、レンズアセンブリ100に類似して、レンズアセンブリ120はレンズ素子220と保護カバー300とを備え、またレンズ素子220はコンタクトレンズ表面222とファセット光学体224とを備えている。単一のミラーファセットまたは複数のミラーファセット(二面のミラーファセット構造、または5以上のミラーファセット構造など)を有するレンズ素子が、本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0022】
さらに同様に、ファセット光学体224はファセット部分226と遠位部分228とを備えている。ただし、ファセット部分226は、1以上のミラーファセット230a、230b、230cを備えている。各ミラーファセット230a、230b、230cは夫々、内部光反射ファセット232、234、236と、各内部光反射ファセット232、234、236の反対側に配置された外部ファセット242、244、246とを備えている。各ミラーファセット230a、230b、230cの、各内部光反射ファセット232、234、236および夫々の対向する外部ファセット242、244、246は、共に位置合わせされた平面上にある。一例として、制限するものではないが、レンズ素子220は3ミラーの「ゴールドマン」様式またはタイプのレンズなどの、眼科用レンズでもよい。
【0023】
図3〜4を参照すると、内部光反射ファセット232、234、236は夫々のTIR表面を有している。各ミラーファセット230a、230b、230cの内部光反射ファセット232、234、236およびコンタクトレンズ表面222で、TIR作用のための経路を形成する。特に、ミラーファセット230a、230b、230cおよび1以上のTIR誘発空隙404’が協働して、TIR作用を誘発する。いくつかの実施形態において、ミラーファセット230a、230b、230cはコーティングされていない。非限定的な例として、ファセット光学体224は、眼の中央網膜の観察専用の中央網膜ミラーファセット230aと、眼の周辺網膜の観察専用の周辺網膜ミラーファセット230bと、眼の前眼房の観察専用の前眼房ミラーファセット230cとを含む、3つのミラーファセット230a、230b、230cを備えている。内部光反射ファセット232およびその外部ファセット242は、コーティングされていない中央網膜ミラーファセット230aの一部である。内部光反射ファセット234およびその外部ファセット244は、コーティングされていない周辺網膜ミラーファセット230bの一部である。内部光反射ファセット236およびその外部ファセット246は、コーティングされていない前眼房ミラーファセット230cの一部である。
【0024】
保護カバー300のコンタクト開口302は、コンタクトレンズ表面222の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封400’を維持する。保護カバー300の把持部分304は、レンズ素子220の遠位部分228の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封402’を維持する。1以上のTIR誘発空隙404’が、保護カバー300のファセット収容部分306によって、保護カバー300のファセット収容部分306の内側表面308とレンズ素子220のファセット光学体224のファセット部分226の外部ファセット242、244、246との間で画成される。実施形態において、保護カバー300のファセット収容部分306に配置された1以上の通気孔310は、1以上のTIR誘発空隙404’と連通している。
【0025】
一例として、制限するものではないが、眼の状態の診断および処理などのための眼科用レンズアセンブリ100、120を組立ておよび使用する方法は、夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセットを含む、レンズ素子の回りに、保護カバーを配置するステップを含む。レンズ素子のコンタクトレンズ表面が、保護カバーのコンタクト開口を通じて受け入れられる。保護カバーは、コンタクトレンズ表面の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封を維持する。保護カバーは、レンズ素子の遠位部分の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封を維持する。
【0026】
例えば
図1〜4を参照すると、夫々TIR表面を有する1以上のミラーファセット210または1以上のミラーファセット230a〜230cを夫々含む、レンズ素子200または220の一方の回りに、保護カバー300が配置されている。レンズ素子200、220のコンタクトレンズ表面202、222は、保護カバー300のコンタクト開口302を通じて受け入れられる。保護カバー300は、コンタクトレンズ表面202、222の周縁の回りに伸縮嵌合して、近位側の流体密封400、400’を維持する。保護カバー300は、レンズ素子の遠位部分208、228の回りに伸縮嵌合して、遠位側の流体密封402、402’を維持する。1以上のミラーファセット210、230a〜230cを含む、レンズ素子200、220のファセット部分206、226が、コンタクトレンズ表面202、222とレンズ素子200、220の遠位部分208、228との間に配置されている。1以上のTIR誘発空隙404、404’が、保護カバー300によって、保護カバー300の内側表面308とレンズ素子200、220の夫々1以上のミラーファセット210、230a〜230cとの間で画成される。レンズ素子のコンタクトレンズ表面202、222を眼の角膜の湾曲表面の一部に接触させた状態で置き、TIR表面を介して照明を眼の中へと反射させ、さらに眼によって反射された光を、TIR表面を介して外部から見るための方向へと向け直す。
【0027】
この方法は、保護カバーの内側表面を含むファセット収容部分に配置された、1以上の通気孔から、各通気孔に位置合わせされた夫々のTIR誘発空隙内に滅菌剤を拡散させるように、滅菌剤を適用するステップをさらに含み得る。例えば、保護カバー300の内側表面308を含むファセット収容部分306に配置された、1以上の通気孔310から、各通気孔310に位置合わせされた夫々のTIR誘発空隙404、404’内に滅菌剤を拡散させるように、滅菌剤を適用してもよい。滅菌剤は例えば、エチレンオキサイドガスでもよい。
【0028】
保護カバー300などの保護カバーと共にレンズアセンブリを作り出す、レンズ素子200または220などのレンズ素子によるTIR作用は、実際には、レンズ素子のミラーファセットの表面が涙、食塩水、光結合溶液などを通じて流体および微粒子によって濡れた場合、複雑なものとなり、および/または制限される。例えば流体要素が存在していると、レンズアセンブリ内の屈折率の差が、TIR作用に適さない可能性のあるレベルへと調整されてしまう。従って、レンズアセンブリ内の屈折率の適切な差を維持することができるよう、保護カバー300とレンズ素子200、220との間に作られた流体密封が、TIR作用が起こり得るようにレンズ素子200、220のミラーファセットの濡れを防ぐ。保護カバー300とレンズ素子200または220との間のこの流体密封は、さらにレンズ素子の汚染および/または損傷を防ぐ。さらに、レンズ素子200、220のミラーファセットを例えば反射金属コーティングでコーティングするのではなく、レンズ素子200、220の反射ミラーファセットの表面付近に密封されたゾーンを生成する本書のレンズアセンブリの実施形態で説明したようなTIR誘発空隙に頼って、TIR作用を誘発することができると、反射金属コーティングを塗布した場合よりも、レンズ素子と従ってレンズアセンブリ全体での製造費用が安価になる傾向があり、単回使用の使い捨て用途に適するものとなる。共有の複数回使用のレンズアセンブリが使用され得る患者または人間に、このような単回利用のものを用いると、二次汚染の可能性が減少する。
【0029】
本書での「少なくとも1つ」の構成要素、成分などといった記述は、単なる単数形が代わりに使用されたときに単一の構成要素、成分などに限定されるべきであると推測させるために、使用されるものではないことにさらに留意されたい。
【0030】
本発明を説明および定義するために、「実質的に」、「およそ」、および「約」という用語は、任意の定量比較、値、測定値、または他の表現に起因し得る、固有の不確実さの程度を表すために本書で利用されることに留意されたい。この「実質的に」、「およそ」、および「約」という用語は、論じている主題の基本的機能に変化をもたらすことなく、記載した基準から定量的表現が変化し得る程度を表すためにも本書で利用される。例えばこれらの用語を利用して、記載した基準から定量的表現が妥当な公差の範囲内で変化する程度を表すことがある。
【0031】
本開示の主題を詳細にかつその特定の実施形態を参照して説明してきたが、本書で開示される種々の詳細は、特定の要素が本説明に添付の各図面に示されている場合でさえ、これらの詳細が本書で説明される種々の実施形態の不可欠な構成要素である要素に関するものであるということを示唆していると取られるべきではないことに留意されたい。さらに、限定するものではないが添付の請求項において画成される実施形態を含む、本開示の範囲から逸脱することなく、改変および変形が考えられることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本書で好ましい、または特に有利なものと識別されるが、本開示は必ずしもこれらの態様に限定されないと意図されている。
【0032】
以下の請求項の1以上で、「特徴とする」という用語が移行句として使用されることに留意されたい。本発明を定義するために、この用語は構造の一連の特性に関する記述を導入するために使用される、オープンエンドの移行句として請求項に取り込まれ、より一般に使用されるオープンエンドの前文の用語「備えている」と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0033】
100、120 レンズアセンブリ
200、220 レンズ素子
202、222 コンタクトレンズ表面
204、224 ファセット光学体
206、226 ファセット部分
208、228 遠位部分
210、230a、230b、230c ミラーファセット
212、232、234、236 内部光反射ファセット
214、242、244、246 外部ファセット
300 保護カバー
302 コンタクト開口
304 把持部分
306 ファセット収容部分
308 内側表面
310 通気孔
400、400’ 近位側の流体密封
402、402’ 遠位側の流体密封
404、404’ TIR誘発空隙