(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではない。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0019】
[中空糸膜型医療用具]
図1に示されるように、本実施形態に係る中空糸膜型医療用具1は、略円筒状の筒状容器3と、筒状容器3の長手方向に沿って装填され、両端部5a,5bが筒状容器3の両端部3a,3bに固定されている中空糸膜4の束(以下、「中空糸膜束」という。)5と、筒状容器3の両端部3a,3bの内側で中空糸膜束5の両端部5a,5bを包囲すると共に、中空糸膜束5の両端部5a,5bが埋設されて固定されたポッティング樹脂部7と、を備えている。
【0020】
また、筒状容器3の側面部3cには、流体の出入口となるポート9が設けられており、筒状容器3の両方の端部3a,3bには、それぞれヘッダー10が取り付けられている。
【0021】
本実施形態では、筒状容器3の両方の端部3a,3bそれぞれに取り付けられたヘッダー10は同一の構成からなるため、片側端部3a(
図1で示す上方の端部)のヘッダー10を代表して説明する。
【0022】
図1、
図3〜
図5に示されるように、ヘッダー10は、中空糸膜4の一方(
図1で示す上方)の端面4cに対向するように配置された円形のキャップ状部材である。ヘッダー10は、筒状容器3の片側端部3aの開口を覆う略円形のカバー部10aと、カバー部10aの周縁に沿って円筒状に設けられ、筒状容器3の片側端部3aに外接して筒状容器3に固定される固定部10bと、を備えている。
【0023】
カバー部10aは、中空糸膜4の端面4cに対面する対向面S1と、この対向面S1の周縁部を取り囲む周側面S2とを有している。対向面S1と周側面S2とは、ヘッダー10の内空間Aを画成している。周側面S2は、中空糸膜4の端面4c(対向面S1)に対して、対向面S1の周縁部から外側に中空糸膜4の端面4c側に向かって直線的に傾斜する傾斜面である。すなわち、対向面S1と周側面S2とは、90°以上の所定の角度を成している。カバー部10aの中央部(ヘッダー10の中央部)には、液体の出入口となるノズル11が設けられている。ノズル11は、筒状容器3の軸線CSに沿って延在する。また、ポッティング樹脂部7のカバー部10a側の端面とカバー部10aの周縁との間には、気密性を確保するための環状のシール材13が挟持されている。ヘッダー10と筒状容器3とは、固定部10bの内周面に形成されたねじ部と筒状容器3の片側端部3a,3bの外周面に形成されたねじ部とが螺合することにより固定されている。
【0024】
次に、中空糸膜型医療用具1の各要素について更に詳しく説明し、あわせて中空糸膜型医療用具1の製造方法について説明する。
【0025】
本実施形態に係る中空糸膜4は、形状、寸法、分画特性に関し、特に限定されるものではなく、使用目的に照らして適切に選択することができる。
【0026】
中空糸膜4の材質としては、例えば、セルロース系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子、エチレンビニルアルコール共重合体を含むポリビニル系高分子、ポリアミド系高分子、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子などが挙げられる。
【0027】
中空糸膜4は、従来公知の技術により製造できる。
【0028】
また、中空糸膜4の基材に疎水性高分子を使用する場合は、膜に親水性を付与する為に親水性高分子をブレンドして製膜することが一般的である。
【0029】
親水性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0030】
特に、ポリビニルピロリドンが親水化の効果や安全性の面より好ましいが、特にこれらに限定するものではない。
【0031】
先ず、基材用の高分子材料と親水性高分子とを、共通溶媒に溶解し、紡糸原液を調製する。
【0032】
このような共通溶媒としては、親水性高分子がPVPの場合、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、DMACと称する。)、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の溶媒、あるいは上記溶媒を2種類以上混合した溶媒等が挙げられる。目的とする中空糸膜4の孔径制御のため、紡糸原液には水などの添加物を加えてもよい。
【0033】
中空糸膜4の製膜に際しては、チューブインオリフィス型の紡糸口金を用い、紡糸口金のオリフィスから紡糸原液を、チューブから該紡糸原液を凝固させる為の中空内液と同時に空中に吐出させる。
【0034】
中空内液としては、水、又は水を主体とした凝固液が使用でき、目的とする中空糸膜4の透過性能に応じてその組成等を決定すればよい。一般的には、紡糸原液に使用した溶剤と水との混合溶液が好適に使用される。例えば、0〜65質量%のDMAC水溶液などが用いられる。
【0035】
紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ導入、浸漬して凝固を完了させ、洗浄工程等を経て、湿潤状態の中空糸膜巻き取り機で巻き取り、中空糸膜束5を得、その後乾燥処理を行う。あるいは、上記洗浄工程を経た後、乾燥機内にて乾燥を行い、中空糸膜束5を得てもよい。
【0036】
中空糸膜束5は、筒状容器3の長手方向に沿って装填され、両端部5a,5bが筒状容器3の両端部3a,3bに固定されている。
【0037】
例えば、中空糸膜束5を、流体の出入口となるポート9を有する筒状容器3へ挿入し、中空糸膜束5の両端部5a,5bに、ポッティング樹脂を注入して、筒状容器3の長手方向中心を軸として遠心回転させることにより、中空糸膜束5の両端部5a,5bにポッティング層(ポッティング樹脂部)7を形成して両端をシールすることにより、固定できる。
【0038】
なお、中空糸膜束5を固定した後、余分なポッティング樹脂を切断除去して、中空糸膜4の端面4cを開口させ、ポート9を有するヘッダー10を取り付けることにより、中空糸膜束5が筒状容器3に充填された中空糸膜型医療用具1が製造できる。
【0039】
中空糸膜束5の両端部5a,5bをシールするポッティング樹脂の材質としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0040】
筒状容器3とヘッダー10の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン6樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0041】
特に、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂は、樹脂コストが安価であり、医療用部材の分野での汎用性が高く、高い安全性が確認されているので好ましく、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂が特に好ましいが、特にこれらに限定するものではない。
【0042】
ヘッダー10のノズル11は、例えば、JIS T 3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器及び血液ろ(濾)過器の血液側接続部分)に記載の構造を有している。
【0043】
また、中空糸膜束5は、筒状容器3の内空部Bの容積に対する充填率が55〜70%になっている。
【0044】
[ヘッダー形状の最適化のための条件]
次に、プライミングボリュームの減少と血液の分配性の向上とを両立するためのヘッダー形状の最適化のための条件、つまり、ヘッダー10の最適な高さ(h)と形状とを規定するための第1の条件、第2の条件及び第3の条件について説明する。
【0045】
第1の条件は、ヘッダー10の断面積当りの容積が中空糸膜4の容積の1.0×10
−2以下であるということである。ここで、ヘッダー10の断面積(
図2、及び
図3参照)については、ヘッダー10の内空間Aを筒状容器3の軸線CSに直交する方向にそって切断した場合の断面(横断面)を仮定し、横断面の面積をヘッダー10の断面積として想定している。
【0046】
また、第2の条件は、中空糸膜4にかかる圧力損失に対する、ヘッダー10にかかる圧力損失が1.5〜7.0%となるようにするということである。この場合の中空糸膜4にかかる圧力損失に対する、ヘッダー10にかかる圧力損失の比率は、1.9〜6.9%であればより好ましく、2.0〜6.0%であればさらに好ましい。
【0047】
さらに、第3の条件は、ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2を傾斜面とし、この周側面S2の傾斜角度を15〜70°とすることである。周側面S2の傾斜角度は、30〜60°であればより好ましい。
【0048】
以下、各条件における用語の意味や算出方法などについて、更に詳しく説明する。
【0049】
[ヘッダー断面積当りの容積]
ヘッダー断面積当たりの容積(mL/cm
2)は以下の式(1)で求められる。
【数1】
【0050】
(1)ヘッダー容量
ヘッダー容量は、ヘッダー内に注入した水の重さから求めることができ(第1の算出方
法)る。第1の算出方法は、例えば、筒状容器3に中空糸膜束5を充填し、筒状容器3の両端部3a,3bにヘッダー10を装着した中空糸モジュールに水を充填したときの重さを測定し、中空糸モジュール全体の容積を求め、以下の式(3)で求められる中空糸膜4の容積との差分の1/2を算出することで求まる。
【0052】
(2)ヘッダーの断面積
ヘッダー10の断面積とは、ヘッダー10の筒状容器3側の内径、例えば、カバー部10aの内面が
中空糸膜4、及びポッティング樹脂部7の端面(以下、「ウレタン面」という)に近接する部位の内径をD(
図2、及び
図3参照)とするとき、以下の式(2)で求められる面積(cm
2)である。
【数2】
【0053】
(3)中空糸膜の容積
中空糸膜4の容積とは、中空糸膜4の内径をd、中空糸膜4の長さをL、中空糸膜束5における中空糸膜4の本数をNとするとき以下の式で求められる体積(mL)である。
【数3】
【0054】
[中空糸膜にかかる圧力損失に対する、ヘッダーにかかる圧力損失]
中空糸膜4にかかる圧力損失に対するヘッダー10にかかる圧力損失の比率(%)は以下の式(4)で求められる。
【数4】
【0055】
(1)中空糸膜にかかる圧力損失
中空糸膜4にかかる圧力損失とは、中空糸膜4の内径をd、中空糸膜4の長さをL、中空糸膜4の本数をN、液体の流量を100(mL/min)、液体の粘度を0.0033(Pa・s)とするとき、以下のハーゲン・ポアズイユの理論式(式(5))で求められる(kPa)。
【数5】
【0056】
(2)ヘッダーにかかる圧力損失
ヘッダー10にかかる圧力損失とは、以下の式(6)で求められる(kPa)。
【数6】
【0057】
なお、式(6)における中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失は、例えば、粘度0.0033(Pa・s)に調整したPVP水溶液を中空糸モジュールに通液させたときの、中空糸モジュール前後にかかる圧力損失の差を測定することで求めることができる(kPa)。または、中空糸膜束5の両端部5a,5bにヘッダー10を装着したモデルにおいて、中空糸束5は、中空糸束5にかかる圧力損失をもつ多孔質体とし、粘度0.0033(Pa・s)、密度1.055(g/cm
3)の液体を流量100(mL/min)で通液するときのモデルの入口から出口の間にかかる圧力損失を汎用の流体解析ソフトStar−CCM+を用いてシミュレーションすることで求めることができる。
【0058】
[ヘッダーのカバー部の周側面の傾斜角度]
ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2の傾斜角度は、中空糸膜4の端面4a(流入面)を基準とした角度として設定される。本実施形態では、周側面S2は、中空糸膜4の端面4c(ウレタン面)に対して45°の傾斜角度で傾斜している。具体的には、筒状容器3の軸線CSに沿ってヘッダー10を切断した場合の断面(縦断面)で見た場合に、ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2の傾斜に沿った直線と、中空糸膜4の端面4cとが成す角度が、周側面S2の傾斜角度である。この周側面S2の傾斜角度は、15〜70°であり、30〜60°であればより好ましい。
【0059】
[ヘッダーの高さ]
ヘッダー10の高さ(h)は、筒状容器3の両端部3a,3bにヘッダー10を装着した状態において、ウレタン面からカバー部10aの内面(対向面S1)までの距離(寸法)を意図している。なお、ヘッダー10の高さ(h)は、カバー部10aの全範囲において略同一の高さであると好適であり、この略同一とは、完全な同一の場合のみならず、以下の高さ(h
1)、及び高さ(h
2)が、所定の条件を満足する場合も含まれる。
【0060】
(1)高さ(h
1)
ヘッダー10の筒状容器3側の半径、具体的には、カバー部10aの内面がウレタン面に近接する部位の内径Dの1/2をaとしたとき、ヘッダー10の中心軸(筒状容器3の軸線CS)からa/3離れた位置におけるウレタン面からヘッダー10のカバー部10aの対向面S1までの距離である。
【0061】
(2)高さ(h
2)
ヘッダー10の中心軸(筒状容器3の軸線CS)から2a/3離れた位置におけるウレタン面からヘッダー10のカバー部10aの対向面S1までの距離である。
【0062】
(3)高さ(h
1)、及び高さ(h
2)が満たすべき条件
0.9〜1.0h
1=h
2、又はh
1=0.9〜1.0h
2
【0063】
[ノズルの根本部の曲率半径]
曲率半径とは、円弧を円の一部と仮定したときに、その円の半径として求められる。本実施形態に係るノズル11の根本部11aの曲率半径は、3mm以下になっている。具体的には、筒状容器3の軸線CSに沿ってヘッダー10を切断した場合の断面(縦断面)を見た場合に、ヘッダー10の内空間A側でノズル11の内面とカバー部10aの内面とが屈曲して連絡する部位の曲率半径が、ノズル11の根本部11aの曲率半径であり、その曲率半径が3mm以下になっている。このとき、曲率半径は、2.5mm以下であればより好ましく、2.0mm以下であればさらに好ましい。なお、曲率半径が0.01mm未満は現実的に製造困難であり、略直角であることを意味する。
【0064】
以上、本実施形態に係る中空糸膜型医療用具1によれば、血液の分配性に配慮した上でヘッダー10の高さ(h)と形状とを最適化できるので、ヘッダー10の高さ(h)をできるだけ低く抑えることが可能になってプライミングボリュームの減少が可能である。その結果として、この中空糸膜型医療用具1によれば、プライミングボリュームの減少とヘッダー10内の血液の分配性の向上とを両立できる。
【0065】
なお、ヘッダー10と筒状容器3との固定方法は、ねじ部により螺合する形態に限定されない。
図6及び
図7に示すように、ヘッダー10Aは、カバー部10Aaと、固定部10Abとから構成されており、ヘッダー10Aの固定部10Abと筒状容器3Aとは、溶着により固定されてもよい。この構成の場合には、ヘッダー10Aと筒状容器3Aとの溶着により気密性が確保されるため、ポッティング樹脂部7のカバー部10a側の端面とカバー部10aの周縁との間に、気密性を確保するための環状のシール材13を設けなくてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、具体的な実施例(血液濾過器)と、これとの比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[評価試験について]
ポリビニルピロリドンK90(和光社製)を粘度が3.3mPa・sになるように溶かした水溶液をプールとし、室温で、流量100mL/minで通液させた。血液濾過器手前で100倍に希釈した朱墨(不易糊工業社製)2.5mLを瞬間的に注入し、血液濾過器から排出される液体を5mLずつサンプリングした。得られたサンプリング液の485nmにおける吸光度を測定し、朱墨が血液濾過器を通過する滞留時間分布をプロットした。滞留および偏流がなければ、
図8で示されるような波形を描く。
【0068】
[実施例1]
中空糸膜6300本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器1)を得た。
【0069】
実施例1においては、取り付けたヘッダーの容量を1.8mL、ヘッダーの断面積を9.0cm
2、中空糸膜の容積(以下、「中空糸容量」という)を44mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸容量の9.1×10
−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を2.41kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を2.48kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を2.9%とした。
【0070】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=1.8mm、h
2=1.8mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器1を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図9のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器1の中を流れていることがわかった。
【0071】
[実施例2]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器2)を得た。
【0072】
実施例2においては、取り付けたヘッダーの容量を2.5mL、ヘッダーの断面積を12.9cm
2、中空糸容量を63mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の6.2×10
−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.73kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を3.6%とした。
【0073】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=1.8mm、h
2=1.8mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器2を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図10のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0074】
[実施例3]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器3)を得た。
【0075】
実施例3においては、取り付けたヘッダーの容量を1.2mL、ヘッダーの断面積を12.9cm
2、中空糸容量を63mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の3.0×10
−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.77kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を6.0%とした。
【0076】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=0.7mm、h
2=0.7mmであり、周側面の傾斜角度は30°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器3を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図11のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0077】
[実施例4]
中空糸膜8200本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器4)を得た。
【0078】
実施例4においては、取り付けたヘッダーの容量を3.1mL、ヘッダーの断面積を10.8cm
2、中空糸容量を55mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.0×10
−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を3.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を3.74kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を1.9%とした。
【0079】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=2.7mm、h
2=2.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は2.5mmであった。この血液濾過器4を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図12のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0080】
[実施例5]
中空糸膜11700本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.3m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器5)を得た。
【0081】
実施例5においては、取り付けたヘッダーの容量を2.7mL、ヘッダーの断面積を16.6cm
2、中空糸容量を81mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の4.0×10
−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.30kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.39kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を6.9%とした。
【0082】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=1.7mm、h
2=1.7mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は0.5mmであった。この血液濾過器5を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図13のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0083】
[比較例1]
中空糸膜6300本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器6)を得た。
【0084】
比較例1においては、取り付けたヘッダーの容量を3.6mL、ヘッダーの断面積を9.0cm
2、中空糸容量を44mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.8×10
−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を2.41kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を2.47kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を2.5%とした。
【0085】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=3.7mm、h
2=3.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は3.0mmであった。この血液濾過器6を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図14のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0086】
[比較例2]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器7)を得た。
【0087】
比較例2においては、取り付けたヘッダーの容量を5.1mL、ヘッダーの断面積を12.9cm
2、中空糸容量を63mLとし、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.3×10
−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.72kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を3.0%とした。
【0088】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=3.7mm、h
2=3.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は3.0mmであった。この血液濾過器7を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図15のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0089】
[比較例3]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0m
2のモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器8)を得た。
【0090】
比較例3においては、取り付けたヘッダーの容量を0.7mL、ヘッダーの断面積を12.9cm
2、中空糸容量を63mLとし、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.7×10
−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.81kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を8.4%とした。
【0091】
このとき、ヘッダー内の高さはh
1=0.3mm、h
2=0.3mmであり、周側面の傾斜角度は90°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器8を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは
図16のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0092】
なお、表1では、実施例1〜5、及び比較例1〜3について、中空糸容量に対するヘッダーの断面積当りの容積、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率、曲率半径、及び周側面の傾斜角度をまとめて示している。
【0093】
【表1】