特許第6231733号(P6231733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231733
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】中空糸膜型医療用具
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/18 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   A61M1/18 517
   A61M1/18 513
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-111472(P2012-111472)
(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-6018(P2013-6018A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-115109(P2011-115109)
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】助川 威
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】内 幸彦
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−126286(JP,A)
【文献】 特開平08−057266(JP,A)
【文献】 特開平09−108338(JP,A)
【文献】 特開平4−200561(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/024902(WO,A1)
【文献】 特開平10−80477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状容器と、
当該筒状容器の長手方向に沿って装填され、両端部が前記筒状容器の両端部に固定されている中空糸膜の束と、
前記筒状容器の両端部の内側で前記中空糸膜の束の両端部を包囲すると共に、前記中空糸膜の束の両端部が埋設されて固定されたポッティング樹脂部と、
前記筒状容器の両端部にそれぞれ設けられると共に、前記中空糸膜の端面に対向し、且つ流体の出入口となるノズルを有するヘッダーと、
前記筒状容器の側面部に設けられ、流体の出入口となるポートと、を備えた中空糸膜型医療用具であって、
前記ヘッダーの内空間を前記筒状容器の軸線に直交する方向にそって切断した場合の断面積を前記ヘッダーの断面積と仮定したとき、
前記ヘッダーは、前記ヘッダーの断面積当りの容積が前記中空糸膜の容積の1.0×10−2/cm以下であり、かつ前記中空糸膜にかかる圧力損失に対する、前記ヘッダーにかかる圧力損失が1.5〜7.0%とな
前記ヘッダーの前記内空間は、前記中空糸膜の端面に対面する対向面と、当該対向面の縁部を取り囲む側面とにより画成されており、
前記側面は、前記軸線の方向にそった断面で見たときに、前記対向面の縁部から外側に向かって傾斜する傾斜面であり、前記中空糸膜の端面に対して15〜70°傾斜しており、
前記ヘッダーの内径の半径をa、前記ヘッダーの中央部から前記筒状容器の軸線に直交する方向にa/3離れた位置における前記端面と前記対向面との距離である前記ヘッダーの高さをh、前記ヘッダーの中央部から前記筒状容器の軸線に直交する方向に2a/3離れた位置における前記端面と前記対向面との距離である前記ヘッダーの高さをhとすると、
前記端面と前記対向面との距離である前記ヘッダーの高さ(h)は、
0.9〜1.0h=h、又は、
=0.9〜1.0h
を満たす、中空糸膜型医療用具。
【請求項2】
前記ノズルは前記ヘッダーの中央部で、前記筒状容器の軸線に沿って配置され、かつ前記ノズルの根本部の曲率半径が3mm以下である、請求項1記載の中空糸膜型医療用具。
【請求項3】
前記中空糸膜の束は、前記筒状容器の内空部の容積に対する充填率が55〜70%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の中空糸膜型医療用具。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載の中空糸医療用具を構成するヘッダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜型医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析、血液濾過、血液濾過透析などの中空糸膜分離技術を利用した多くの血液浄化療法が考案されている。これらの血液浄化療法は、慢性腎不全患者のみならず急性腎不全患者、うっ血性心不全患者等にまで適用され、近年では救命救急やICU等でも広く施行されるに至っている。
【0003】
中空糸膜モジュールは筒状容器と、当該筒状容器の長手方向に沿って装填され、両端部が前記筒状容器の両端に固定されている中空糸膜の束とを有している。また、前記中空糸膜の束を、前記筒状容器の両端で包埋固定しているポッティング樹脂部を有している。また、前記中空糸膜の両端面に対向し、前記筒状容器の両端部に設けられており、それぞれ流体の出入口となるノズルを具備するヘッダーと、前記筒状容器の側面部に設けられており、流体の出入口となるポートとを有している。
【0004】
中空糸膜束に取り付けられたヘッダーのノズルは軸方向に向いており、流路の軸も中空糸膜束の中心を通っている。一般的に、液体は抵抗の最も少ない領域を流れるため、ヘッダー内では液体は外周部まで円滑に行き渡らず、血液の偏流および滞留が生じることが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ヘッダーのテーパーの角度を高くし、ヘッダー内の抵抗を下げることにより、ヘッダー内の外周部まで液体を行き渡らせる方法が開示されている。しかし、この方法ではヘッダー内の容量が大きくなり、患者に対して大きな負担を与える結果となる。
【0006】
例えば、特許文献2では、ヘッダー内部のノズルの根本部の広がりを絞ることにより、ヘッダー内の偏流および滞留の発生を低減させる方法が開示されている。また、特許文献3では、ヘッダー内部を薄く偏平にすることにより、ヘッダー内の偏流および滞留の発生を低減させる方法が開示されている。しかしながら、引用文献2及び3に記載の方法では、ヘッダー内の抵抗が高くなりすぎて、ヘッダーの外周部まで液体が円滑に行き渡らず、ヘッダー内で血液が鬱滞してしまい、分配性は悪くなる結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−305229号公報
【特許文献2】特開平09−108338号公報
【特許文献3】特許第2554958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血液の偏流を防止、すなわち分配性を向上させるためには、一般的には、中空糸膜側の抵抗値(圧力損失)に対してヘッダー内の圧力損失を下げればよい。ヘッダー内の圧力損失を下げるためには、ヘッダー内の空間を広げればよく、結果として容積の大きなヘッダーが有利となる。しかしながら、容積の大きなヘッダーではプライミングボリュームが増大し、プライミング処理時間および単価が上がり、施行上不利になるという問題がある。逆に、プライミングボリュームを減らすために容積の小さいヘッダを採用した場合、ヘッダー内の抵抗値が上がり、結果として血液の分配性が悪くなる。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、上記の2つの相反する課題を解決し、プライミングボリュームの減少と血液の分配性の向上とを両立できるヘッダー形状を備えた中空糸膜型医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記のヘッダー形状を最適化するための条件を見出し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明は、筒状容器と、当該筒状容器の長手方向に沿って装填され、両端部が筒状容器の両端部に固定されている中空糸膜の束と、筒状容器の両端部の内側で中空糸膜の束の両端部を包囲すると共に、中空糸膜の束の両端部が埋設されて固定されたポッティング樹脂部と、筒状容器の両端部にそれぞれ設けられると共に、中空糸膜の端面に対向し、且つ流体の出入口となるノズルを有するヘッダーと、筒状容器の側面部に設けられ、流体の出入口となるポートと、を備えた中空糸膜型医療用具であって、ヘッダーの内空間を筒状容器の軸線に直交する方向にそって切断した場合の断面積をヘッダーの断面積と仮定したとき、ヘッダーは、ヘッダーの断面積当りの容積が中空糸膜の容積の1.0×10−2以下であり、かつ中空糸膜にかかる圧力損失に対する、ヘッダーにかかる圧力損失が1.5〜7.0%となる高さhを有し、ヘッダーの内空間は、中空糸膜の端面に対面する対向面と、当該対向面の縁部を取り囲む側面とにより画成されており、側面は、軸線の方向にそった断面で見たときに、対向面の縁部から外側に向かって傾斜する傾斜面であり、中空糸膜の端面に対して15〜70°傾斜している。中空糸膜にかかる圧力損失に対する、ヘッダーにかかる圧力損失は、1.9〜6.9%であればより好ましく、2.0〜6.0%であればさらに好ましい。また、側面の傾斜角度は、中空糸膜の端面に対して、30〜60°であればより好ましい。
【0012】
さらに、ヘッダーの内径の半径をa、ヘッダーの中央部から筒状容器の軸線に直交する方向にa/3離れた位置でのヘッダーの高さh、ヘッダーの中央部から筒状容器の軸線に直交する方向に2a/3離れた位置でのヘッダーの高さhとすると、ヘッダーの高さhは、0.9〜1.0h=h、又は、h=0.9〜1.0h、を満たすと好適である。
【0013】
さらに、ノズルはヘッダーの中央部で、筒状容器の軸線に沿って配置され、かつノズルの根本部の曲率半径が3mm以下であると好適である。このとき、曲率半径は、2.5mm以下であればより好ましく、2.0mm以下であればさらに好ましい。
【0014】
さらに、中空糸膜の束は、筒状容器の内空部の容積に対する充填率が55〜70%であると好適である。
【0015】
また、本発明は、上記の中空糸医療用具を構成するヘッダーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘッダーの高さを最適化できる結果として、プライミングボリュームの減少とヘッダー内の血液の分配性の向上と、を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る中空糸膜型医療用具の概略を示す縦断面図である。
図2図1のII−II線に沿った横断面図であり、特に、ヘッダーの断面積を算出する際の基礎となる内空間の断面を示している。
図3】ヘッダーを拡大して示す断面図である。
図4図3に示すヘッダーの構成をより詳細に示す断面図である。
図5図4に示すヘッダーを示す斜視図である。
図6】他の形態に係るヘッダーを拡大して示す断面図である。
図7図6に示すヘッダーを示す斜視図である。
図8】ヘッダー内での流体の理想的な滞留時間分布を示すグラフである。
図9】第1実施例に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図10】第2実施例に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図11】第3実施例に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図12】第4実施例に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図13】第5実施例に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図14】比較例1に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図15】比較例2に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
図16】比較例3に係る血液濾過器の滞留時間分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではない。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0019】
[中空糸膜型医療用具]
図1に示されるように、本実施形態に係る中空糸膜型医療用具1は、略円筒状の筒状容器3と、筒状容器3の長手方向に沿って装填され、両端部5a,5bが筒状容器3の両端部3a,3bに固定されている中空糸膜4の束(以下、「中空糸膜束」という。)5と、筒状容器3の両端部3a,3bの内側で中空糸膜束5の両端部5a,5bを包囲すると共に、中空糸膜束5の両端部5a,5bが埋設されて固定されたポッティング樹脂部7と、を備えている。
【0020】
また、筒状容器3の側面部3cには、流体の出入口となるポート9が設けられており、筒状容器3の両方の端部3a,3bには、それぞれヘッダー10が取り付けられている。
【0021】
本実施形態では、筒状容器3の両方の端部3a,3bそれぞれに取り付けられたヘッダー10は同一の構成からなるため、片側端部3a(図1で示す上方の端部)のヘッダー10を代表して説明する。
【0022】
図1図3図5に示されるように、ヘッダー10は、中空糸膜4の一方(図1で示す上方)の端面4cに対向するように配置された円形のキャップ状部材である。ヘッダー10は、筒状容器3の片側端部3aの開口を覆う略円形のカバー部10aと、カバー部10aの周縁に沿って円筒状に設けられ、筒状容器3の片側端部3aに外接して筒状容器3に固定される固定部10bと、を備えている。
【0023】
カバー部10aは、中空糸膜4の端面4cに対面する対向面S1と、この対向面S1の周縁部を取り囲む周側面S2とを有している。対向面S1と周側面S2とは、ヘッダー10の内空間Aを画成している。周側面S2は、中空糸膜4の端面4c(対向面S1)に対して、対向面S1の周縁部から外側に中空糸膜4の端面4c側に向かって直線的に傾斜する傾斜面である。すなわち、対向面S1と周側面S2とは、90°以上の所定の角度を成している。カバー部10aの中央部(ヘッダー10の中央部)には、液体の出入口となるノズル11が設けられている。ノズル11は、筒状容器3の軸線CSに沿って延在する。また、ポッティング樹脂部7のカバー部10a側の端面とカバー部10aの周縁との間には、気密性を確保するための環状のシール材13が挟持されている。ヘッダー10と筒状容器3とは、固定部10bの内周面に形成されたねじ部と筒状容器3の片側端部3a,3bの外周面に形成されたねじ部とが螺合することにより固定されている。
【0024】
次に、中空糸膜型医療用具1の各要素について更に詳しく説明し、あわせて中空糸膜型医療用具1の製造方法について説明する。
【0025】
本実施形態に係る中空糸膜4は、形状、寸法、分画特性に関し、特に限定されるものではなく、使用目的に照らして適切に選択することができる。
【0026】
中空糸膜4の材質としては、例えば、セルロース系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子、エチレンビニルアルコール共重合体を含むポリビニル系高分子、ポリアミド系高分子、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子などが挙げられる。
【0027】
中空糸膜4は、従来公知の技術により製造できる。
【0028】
また、中空糸膜4の基材に疎水性高分子を使用する場合は、膜に親水性を付与する為に親水性高分子をブレンドして製膜することが一般的である。
【0029】
親水性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0030】
特に、ポリビニルピロリドンが親水化の効果や安全性の面より好ましいが、特にこれらに限定するものではない。
【0031】
先ず、基材用の高分子材料と親水性高分子とを、共通溶媒に溶解し、紡糸原液を調製する。
【0032】
このような共通溶媒としては、親水性高分子がPVPの場合、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、DMACと称する。)、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の溶媒、あるいは上記溶媒を2種類以上混合した溶媒等が挙げられる。目的とする中空糸膜4の孔径制御のため、紡糸原液には水などの添加物を加えてもよい。
【0033】
中空糸膜4の製膜に際しては、チューブインオリフィス型の紡糸口金を用い、紡糸口金のオリフィスから紡糸原液を、チューブから該紡糸原液を凝固させる為の中空内液と同時に空中に吐出させる。
【0034】
中空内液としては、水、又は水を主体とした凝固液が使用でき、目的とする中空糸膜4の透過性能に応じてその組成等を決定すればよい。一般的には、紡糸原液に使用した溶剤と水との混合溶液が好適に使用される。例えば、0〜65質量%のDMAC水溶液などが用いられる。
【0035】
紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ導入、浸漬して凝固を完了させ、洗浄工程等を経て、湿潤状態の中空糸膜巻き取り機で巻き取り、中空糸膜束5を得、その後乾燥処理を行う。あるいは、上記洗浄工程を経た後、乾燥機内にて乾燥を行い、中空糸膜束5を得てもよい。
【0036】
中空糸膜束5は、筒状容器3の長手方向に沿って装填され、両端部5a,5bが筒状容器3の両端部3a,3bに固定されている。
【0037】
例えば、中空糸膜束5を、流体の出入口となるポート9を有する筒状容器3へ挿入し、中空糸膜束5の両端部5a,5bに、ポッティング樹脂を注入して、筒状容器3の長手方向中心を軸として遠心回転させることにより、中空糸膜束5の両端部5a,5bにポッティング層(ポッティング樹脂部)7を形成して両端をシールすることにより、固定できる。
【0038】
なお、中空糸膜束5を固定した後、余分なポッティング樹脂を切断除去して、中空糸膜4の端面4cを開口させ、ポート9を有するヘッダー10を取り付けることにより、中空糸膜束5が筒状容器3に充填された中空糸膜型医療用具1が製造できる。
【0039】
中空糸膜束5の両端部5a,5bをシールするポッティング樹脂の材質としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0040】
筒状容器3とヘッダー10の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン6樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0041】
特に、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂は、樹脂コストが安価であり、医療用部材の分野での汎用性が高く、高い安全性が確認されているので好ましく、スチレン・ブタジエン共重合体樹脂が特に好ましいが、特にこれらに限定するものではない。
【0042】
ヘッダー10のノズル11は、例えば、JIS T 3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器及び血液ろ(濾)過器の血液側接続部分)に記載の構造を有している。
【0043】
また、中空糸膜束5は、筒状容器3の内空部Bの容積に対する充填率が55〜70%になっている。
【0044】
[ヘッダー形状の最適化のための条件]
次に、プライミングボリュームの減少と血液の分配性の向上とを両立するためのヘッダー形状の最適化のための条件、つまり、ヘッダー10の最適な高さ(h)と形状とを規定するための第1の条件、第2の条件及び第3の条件について説明する。
【0045】
第1の条件は、ヘッダー10の断面積当りの容積が中空糸膜4の容積の1.0×10−2以下であるということである。ここで、ヘッダー10の断面積(図2、及び図3参照)については、ヘッダー10の内空間Aを筒状容器3の軸線CSに直交する方向にそって切断した場合の断面(横断面)を仮定し、横断面の面積をヘッダー10の断面積として想定している。
【0046】
また、第2の条件は、中空糸膜4にかかる圧力損失に対する、ヘッダー10にかかる圧力損失が1.5〜7.0%となるようにするということである。この場合の中空糸膜4にかかる圧力損失に対する、ヘッダー10にかかる圧力損失の比率は、1.9〜6.9%であればより好ましく、2.0〜6.0%であればさらに好ましい。
【0047】
さらに、第3の条件は、ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2を傾斜面とし、この周側面S2の傾斜角度を15〜70°とすることである。周側面S2の傾斜角度は、30〜60°であればより好ましい。
【0048】
以下、各条件における用語の意味や算出方法などについて、更に詳しく説明する。
【0049】
[ヘッダー断面積当りの容積]
ヘッダー断面積当たりの容積(mL/cm)は以下の式(1)で求められる。
【数1】
【0050】
(1)ヘッダー容量
ヘッダー容量は、ヘッダー内に注入した水の重さから求めることができ(第1の算出方法)る。第1の算出方法は、例えば、筒状容器3に中空糸膜束5を充填し、筒状容器3の両端部3a,3bにヘッダー10を装着した中空糸モジュールに水を充填したときの重さを測定し、中空糸モジュール全体の容積を求め、以下の式(3)で求められる中空糸膜4の容積との差分の1/2を算出することで求まる。
【0052】
(2)ヘッダーの断面積
ヘッダー10の断面積とは、ヘッダー10の筒状容器3側の内径、例えば、カバー部10aの内面が中空糸膜4、及びポッティング樹脂部7の端面(以下、「ウレタン面」という)に近接する部位の内径をD(図2、及び図3参照)とするとき、以下の式(2)で求められる面積(cm)である。
【数2】

【0053】
(3)中空糸膜の容積
中空糸膜4の容積とは、中空糸膜4の内径をd、中空糸膜4の長さをL、中空糸膜束5における中空糸膜4の本数をNとするとき以下の式で求められる体積(mL)である。
【数3】
【0054】
[中空糸膜にかかる圧力損失に対する、ヘッダーにかかる圧力損失]
中空糸膜4にかかる圧力損失に対するヘッダー10にかかる圧力損失の比率(%)は以下の式(4)で求められる。
【数4】
【0055】
(1)中空糸膜にかかる圧力損失
中空糸膜4にかかる圧力損失とは、中空糸膜4の内径をd、中空糸膜4の長さをL、中空糸膜4の本数をN、液体の流量を100(mL/min)、液体の粘度を0.0033(Pa・s)とするとき、以下のハーゲン・ポアズイユの理論式(式(5))で求められる(kPa)。
【数5】
【0056】
(2)ヘッダーにかかる圧力損失
ヘッダー10にかかる圧力損失とは、以下の式(6)で求められる(kPa)。
【数6】
【0057】
なお、式(6)における中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失は、例えば、粘度0.0033(Pa・s)に調整したPVP水溶液を中空糸モジュールに通液させたときの、中空糸モジュール前後にかかる圧力損失の差を測定することで求めることができる(kPa)。または、中空糸膜束5の両端部5a,5bにヘッダー10を装着したモデルにおいて、中空糸束5は、中空糸束5にかかる圧力損失をもつ多孔質体とし、粘度0.0033(Pa・s)、密度1.055(g/cm)の液体を流量100(mL/min)で通液するときのモデルの入口から出口の間にかかる圧力損失を汎用の流体解析ソフトStar−CCM+を用いてシミュレーションすることで求めることができる。
【0058】
[ヘッダーのカバー部の周側面の傾斜角度]
ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2の傾斜角度は、中空糸膜4の端面4a(流入面)を基準とした角度として設定される。本実施形態では、周側面S2は、中空糸膜4の端面4c(ウレタン面)に対して45°の傾斜角度で傾斜している。具体的には、筒状容器3の軸線CSに沿ってヘッダー10を切断した場合の断面(縦断面)で見た場合に、ヘッダー10のカバー部10aの周側面S2の傾斜に沿った直線と、中空糸膜4の端面4cとが成す角度が、周側面S2の傾斜角度である。この周側面S2の傾斜角度は、15〜70°であり、30〜60°であればより好ましい。
【0059】
[ヘッダーの高さ]
ヘッダー10の高さ(h)は、筒状容器3の両端部3a,3bにヘッダー10を装着した状態において、ウレタン面からカバー部10aの内面(対向面S1)までの距離(寸法)を意図している。なお、ヘッダー10の高さ(h)は、カバー部10aの全範囲において略同一の高さであると好適であり、この略同一とは、完全な同一の場合のみならず、以下の高さ(h)、及び高さ(h)が、所定の条件を満足する場合も含まれる。
【0060】
(1)高さ(h
ヘッダー10の筒状容器3側の半径、具体的には、カバー部10aの内面がウレタン面に近接する部位の内径Dの1/2をaとしたとき、ヘッダー10の中心軸(筒状容器3の軸線CS)からa/3離れた位置におけるウレタン面からヘッダー10のカバー部10aの対向面S1までの距離である。
【0061】
(2)高さ(h
ヘッダー10の中心軸(筒状容器3の軸線CS)から2a/3離れた位置におけるウレタン面からヘッダー10のカバー部10aの対向面S1までの距離である。
【0062】
(3)高さ(h)、及び高さ(h)が満たすべき条件
0.9〜1.0h=h、又はh=0.9〜1.0h
【0063】
[ノズルの根本部の曲率半径]
曲率半径とは、円弧を円の一部と仮定したときに、その円の半径として求められる。本実施形態に係るノズル11の根本部11aの曲率半径は、3mm以下になっている。具体的には、筒状容器3の軸線CSに沿ってヘッダー10を切断した場合の断面(縦断面)を見た場合に、ヘッダー10の内空間A側でノズル11の内面とカバー部10aの内面とが屈曲して連絡する部位の曲率半径が、ノズル11の根本部11aの曲率半径であり、その曲率半径が3mm以下になっている。このとき、曲率半径は、2.5mm以下であればより好ましく、2.0mm以下であればさらに好ましい。なお、曲率半径が0.01mm未満は現実的に製造困難であり、略直角であることを意味する。
【0064】
以上、本実施形態に係る中空糸膜型医療用具1によれば、血液の分配性に配慮した上でヘッダー10の高さ(h)と形状とを最適化できるので、ヘッダー10の高さ(h)をできるだけ低く抑えることが可能になってプライミングボリュームの減少が可能である。その結果として、この中空糸膜型医療用具1によれば、プライミングボリュームの減少とヘッダー10内の血液の分配性の向上とを両立できる。
【0065】
なお、ヘッダー10と筒状容器3との固定方法は、ねじ部により螺合する形態に限定されない。図6及び図7に示すように、ヘッダー10Aは、カバー部10Aaと、固定部10Abとから構成されており、ヘッダー10Aの固定部10Abと筒状容器3Aとは、溶着により固定されてもよい。この構成の場合には、ヘッダー10Aと筒状容器3Aとの溶着により気密性が確保されるため、ポッティング樹脂部7のカバー部10a側の端面とカバー部10aの周縁との間に、気密性を確保するための環状のシール材13を設けなくてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、具体的な実施例(血液濾過器)と、これとの比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[評価試験について]
ポリビニルピロリドンK90(和光社製)を粘度が3.3mPa・sになるように溶かした水溶液をプールとし、室温で、流量100mL/minで通液させた。血液濾過器手前で100倍に希釈した朱墨(不易糊工業社製)2.5mLを瞬間的に注入し、血液濾過器から排出される液体を5mLずつサンプリングした。得られたサンプリング液の485nmにおける吸光度を測定し、朱墨が血液濾過器を通過する滞留時間分布をプロットした。滞留および偏流がなければ、図8で示されるような波形を描く。
【0068】
[実施例1]
中空糸膜6300本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器1)を得た。
【0069】
実施例1においては、取り付けたヘッダーの容量を1.8mL、ヘッダーの断面積を9.0cm、中空糸膜の容積(以下、「中空糸容量」という)を44mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸容量の9.1×10−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を2.41kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を2.48kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を2.9%とした。
【0070】
このとき、ヘッダー内の高さはh=1.8mm、h=1.8mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器1を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図9のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器1の中を流れていることがわかった。
【0071】
[実施例2]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器2)を得た。
【0072】
実施例2においては、取り付けたヘッダーの容量を2.5mL、ヘッダーの断面積を12.9cm、中空糸容量を63mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の6.2×10−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.73kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を3.6%とした。
【0073】
このとき、ヘッダー内の高さはh=1.8mm、h=1.8mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器2を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図10のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0074】
[実施例3]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器3)を得た。
【0075】
実施例3においては、取り付けたヘッダーの容量を1.2mL、ヘッダーの断面積を12.9cm、中空糸容量を63mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の3.0×10−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.77kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を6.0%とした。
【0076】
このとき、ヘッダー内の高さはh=0.7mm、h=0.7mmであり、周側面の傾斜角度は30°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器3を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図11のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0077】
[実施例4]
中空糸膜8200本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器4)を得た。
【0078】
実施例4においては、取り付けたヘッダーの容量を3.1mL、ヘッダーの断面積を10.8cm、中空糸容量を55mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.0×10−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を3.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を3.74kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を1.9%とした。
【0079】
このとき、ヘッダー内の高さはh=2.7mm、h=2.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は2.5mmであった。この血液濾過器4を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図12のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0080】
[実施例5]
中空糸膜11700本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.3mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器5)を得た。
【0081】
実施例5においては、取り付けたヘッダーの容量を2.7mL、ヘッダーの断面積を16.6cm、中空糸容量を81mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の4.0×10−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.30kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.39kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を6.9%とした。
【0082】
このとき、ヘッダー内の高さはh=1.7mm、h=1.7mmであり、周側面の傾斜角度は45°であった。また、ノズル根本部の曲率半径は0.5mmであった。この血液濾過器5を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図13のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線に近く、偏流や滞留が発生することなく、血液濾過器の中を流れていることがわかった。
【0083】
[比較例1]
中空糸膜6300本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器6)を得た。
【0084】
比較例1においては、取り付けたヘッダーの容量を3.6mL、ヘッダーの断面積を9.0cm、中空糸容量を44mLとすることで、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.8×10−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を2.41kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を2.47kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を2.5%とした。
【0085】
このとき、ヘッダー内の高さはh=3.7mm、h=3.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は3.0mmであった。この血液濾過器6を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図14のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0086】
[比較例2]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器7)を得た。
【0087】
比較例2においては、取り付けたヘッダーの容量を5.1mL、ヘッダーの断面積を12.9cm、中空糸容量を63mLとし、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.3×10−2とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.72kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を3.0%とした。
【0088】
このとき、ヘッダー内の高さはh=3.7mm、h=3.7mmであり、周側面の傾斜角度は60°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は3.0mmであった。この血液濾過器7を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図15のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0089】
[比較例3]
中空糸膜9100本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積1.0mのモジュールを成型した。筒状容器の両端部に以下の仕様となるようなヘッダーを取り付け、γ線(25kGy)による照射滅菌を行い、血液濾過器(血液濾過器8)を得た。
【0090】
比較例3においては、取り付けたヘッダーの容量を0.7mL、ヘッダーの断面積を12.9cm、中空糸容量を63mLとし、ヘッダーの断面積当りの容積は中空糸膜の容積の1.7×10−3とした。また、中空糸膜にかかる圧力損失を1.67kPa、中空糸膜型医療用具全体にかかる圧力損失を1.81kPaとし、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率を8.4%とした。
【0091】
このとき、ヘッダー内の高さはh=0.3mm、h=0.3mmであり、周側面の傾斜角度は90°であった。また、ノズルの根本部の曲率半径は1.2mmであった。この血液濾過器8を用いて、前記滞留時間分布の評価を行った。その結果、プロットは図16のようになり、滞留時間分布は理想的な曲線とは異なり、ピークの割れが観測され、偏流や滞留が発生していた。
【0092】
なお、表1では、実施例1〜5、及び比較例1〜3について、中空糸容量に対するヘッダーの断面積当りの容積、中空糸膜にかかる圧力損失に対するヘッダーにかかる圧力損失の比率、曲率半径、及び周側面の傾斜角度をまとめて示している。
【0093】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の中空糸膜型医療用具は、各種医療用具に幅広く利用可能である。例えば、血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器、持続血液透析濾過器、持続血液濾過器、血漿分離器、血漿成分分画器、血漿成分吸着器、ウイルス除去器、ウイルス吸着器、血液濃縮器、血漿濃縮器、腹水濾過器、腹水濃縮器、等が挙げられ、中空糸膜の持つ、濾過特性、選択吸着特性(被吸着物質と相互作用をなすリガンドを中空糸膜に固定したものを含む)を利用した各種医療用具に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1…中空糸膜型医療用具、3…筒状容器、3a,3b…筒状容器の端部、3c…筒状容器の側面部、4…中空糸膜、4c…中空糸膜の端面、5…中空糸膜の束、5a,5b…中空糸膜束の端部、7…ポッティング樹脂部、9…ポート、10…ヘッダー、11…ノズル、11a…ノズルの根本部、A…ヘッダーの内空間、B…筒状容器の内空部、CS…筒状容器の軸線、h,h,h…ヘッダーの高さ、S1…対向面、S2…周側面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16